*物語に変更がない程度に一部の文章の修正,文字の訂正などを行って再掲載しています。



稲川淳姫先生の怪談1



これは夏休みに入る前,終業式前日のお話です。

リク君たちは学年集会の最中で先生たちのお話を聞いていました。



まずは,一番若い,栗林先生が勉強についてのお話をしました。



A組の先生は産休に入りお休みなので代わりの先生がお話をしました。

続いて安井先生が夏休み中の生活の仕方などについて熱く語りました。



あまりにも熱く語るので体育館は余計に暑くなり,

話も予定時間を超えてしまい,みんな辛そうでした。



「(勘弁してくださいよ〜。話が長いですよ〜。)」



スナ「(相変わらず話が長いですよ・・・。早く虫取りに行きたいのに・・・。)」



そして,最後に学年主任の稲川先生

(年齢45・独身男性)のお話が始まりました。





稲川 淳姫(じゅんき) 年齢45・独身男性



稲川「はぁぁい。では今から先生のお話を始めます。」



「・・・。」



稲川「夏休みに向けて一つ,怪談話をしようと思います・・・。」



「いや〜。怖い〜!」

 「なんでだよ・・・。」



稲川「みんなは百物語を知っているかな?

怖い話を1つするたびにろうそくを1本消していくんだ。」



「・・・。」



稲川「そして,最後に100本目のろうそくを消したら霊界の扉が開き,

多くの妖怪や幽霊が現れるんだよ。」



「・・・。」



稲川「今回は先生が100話の怪談噺をしてあげようね。

うひひひひひひひ。」



「・・・。」



稲川「うお〜うお〜。」



しばらく稲川先生の怪談噺が続きます。



稲川「そしたら,後ろに誰もいないんですよぉ。

でも声が聞こえるんですよね。『助けて〜,助けて〜』って。」



「く〜く〜。」

「ひぃぃぃぃぃ。いや,幽霊はいない!」



チャイムがなってしまい大掃除の時間になりましたが,

稲川先生は構わず怪談噺を続けます。



稲川「『ぎゃあぁぁぁぁ。』・・・と叫び声があがります。」



そしてついに100話目の話が終わりました。



「ぐお〜ぐお〜。」



稲川「これで100話の物語が終わりました。

100本目のろうそくを消しましょう。」



「本当に幽霊が出たりしないよね・・・。」



稲川「しかし,みんなもダメですね〜。これを消したら本当に幽霊が現れ,

君たちを霊界に連れ去ってしまうんですよ?」



みんな「え!?」



稲川「途中で止めるべきでしたね〜。うひひひひひひ。」



「うそ・・・。」



稲川「では,消しましょう・・・。」



「リク君,寝てる場合じゃないよ!?幽霊出ちゃうよ。」

「ん?終わったの・・・?」



稲川「ちょうど今,終わるところですよ。そして幽霊が本当に出るのです。」



「なるほど。」



おもむろにリク君は立ち上がり,説明を始めました。



「今回の学年集会の話のテーマは

怪談なんかじゃないですよね?稲川先生。」




稲川「え?」



「真のテーマは"正しい情報を見極める能力"についてのお話さ。」



稲川「え?」



「つまり誤った情報に惑わされることなく,

適切な行動ができるようになって欲しいと先生はいっているんだ。」




稲川「え?」



「こんな話がある。数年前この国で集団的自衛権が閣議決定された時・・・。」



この後,みんなはリク君のまじめなお話が聞きますが,

それはまた別の機会にしましょう。



「バカなマスコミ(マスゴミ)の情報に流されないことが大切。

そう言いたかったんですよね,先生。」




稲川「え・・・あ・・・うん,

じゃあ・・・そう・・・かな・・・?

(ただ,夏だから怖いお話をみんなにしたかっただけ

とは言えなくなっちゃった・・・。)」



「本当かな・・・。」



稲川「え〜,みなさん,それでは夏休みをしっかり楽しんできてくださいね。

私も来週から北海道へ長期旅行に行ってきますので,

しばらく会えません。また2学期に会いましょう〜!」



 「なんだそれ・・・。」



この日の夜,リク君達にちょっとした出来事が起こるのですが

それはまた別の機会にお話しましょう。



ともかく,こうしてリク君たちの夏休みが始まるのでした。








稲川淳姫の怪談2





出校日の学年集会のことです。



稲川先生は北海道に旅行に行っていたため,

事前に録画した自らの怪談噺を流すように指示してありました。



この時の栗林先生は影(シャドー)の変装でしたが,

まだ正体を明かしてはいませんでした。



栗林「それでは,稲川先生からのビデオメッセージです。

よく聞きましょう。」



「ビデオメッセージって・・・。どうせ怪談噺だろ・・・。」



画面に稲川先生が映し出されました。







稲川「みなさん,こんにちは。今日はとっておきのお話をしましょう。」



「やっぱり・・・。」

「またですか・・・。」



ある若い男Aさんが古いアパートに引っ越してきました。

彼は値段さえ安ければ古くても気になりませんでした。



引っ越し作業を終えたとき,すっかり夜になっていました。

疲れてしまったAさんはそのまま眠りにつきました。







どれくらい時間が経ったでしょうか。

ふと目が覚めると隣の部屋から若い男女の話声が聞こえます。



とても楽しそうに談笑しています。

「そういえば,お隣さんにあいさつするのを忘れていたな。明日にでも行くかな。」

そんなことを思いながらウトウトし始めました。



すると,突然,若い男女が何か言い合いを始めました。

どうやらたわいもないことでケンカになったようです。



「うるさいなぁ・・・。寝かせてくれよ。」

Aさんはふとんに潜って眠ろうとしました。



男女のけんかの声はだんだんとエスカレートしていきました。

そしてついに・・・。



女の声が聞こえなくなりました。

Aさんは何事かと思って壁に耳をあてて,様子をうかがってみました。



男が何かつぶやいています。

「やべぇ・・・。やっちまった・・・。」



Aさんは何やら嫌な予感がしましたが,再び布団にもぐりました。



しばらくすると隣の部屋からこんな音が聞こえてきました。



ギーコ・・・。



ギーコ・・・。



まるでのこぎりで何かを切断するような音です。



「ちょっと,この話,やばいやつじゃ・・・。」



すでに学年の子供たちは震えていました。



さらに稲川先生のお話は続きます。



Aさんは耳をふさぎ,聞かないようにしました。



音が止んでほっとしていると,

今度は何かを洗い流すような音が聞こえてきました。



ピシャピシャピシャ・・・。

ジャバジャバ・・・。



ジャー・・・。



そしてまた,



ギーコ・・・。



ギーコ・・・。



この繰り返しが明け方まで続きました。



「昨日の嫌な音はなんだったんだろう・・・。」



朝,Aさんは隣の部屋の前に行き,扉をノックしました。

しかし返事はありません・・・。



そこで大家さんを呼んで事情を説明しました。



すると・・・。



大家「音が聞こえた?そんなはずはないよぉ。」



「いやいや,本当なんですって!

何かを切るような音とそれを洗い流すような音が・・・。」



大家「絶対にそんなはずはない。だって・・・。」



大家さんは持っていた管理用のカギで隣の部屋の扉をあけました。



大家「この部屋は空き部屋だよ。誰も住んでないんだから・・・。」



「そんなばかな・・・。昨日確かに聞こえたのに・・・。」



大家「実は,1年前にこの部屋でバラバラ殺人事件があってね。

殺されたのは恋人の女。そのあと,ここに住んでた犯人の男は逃げたんだけど,

逃げている途中で交通事故にあったみたいでね。

両方死んでしまって,それ以来この部屋は誰も住んでいないんだよ。」



Aさんは背筋が凍りつきました。

昨日,自分が聞いた音は昔ここで起きた殺人事件のやりとりだったのです。



その後Aさんはすぐにそのアパートを引っ越したそうです。



稲川「おしま〜い。」



「きゃぁ!この話怖すぎでしょ!むちゃくちゃ怖いよ!」



クラスメイトの出川君もビビッていました。



出川「やばいよ,やばいよ!この話リアルガチだよ!」



みんなはものすごく怖がっていました。



「(よくもまぁ毎回,毎回,くだらない話を考えるもんだ・・・。)」



最後に稲川先生からのメッセージが流れてきました。



稲川「みんな,今夜は早く寝て疲れをとってくださいね!」



「こんな怖い話聞いて寝れるか!」






稲川 淳姫の怪談3



これは稲川先生が1学期に入ってすぐの

学年集会で語った怪談噺です。



心臓が弱い方はご注意を・・・。



稲川「それでは新学期になり,最初の学年集会です。

しっかり聞くようにしてくださいね。」



そう言うと稲川先生は静かに語りだしました。



もう何年も前の話になるんだけど,

同窓会で久しぶりに再会した友人と飲んでいた時。



話が盛り上がって心霊スポットに行こうって話になった。

で,酒を飲まなかったAがドライバーになった。



車は中古であったが,結構人気の車種で,

この前も親戚の小学生に羨ましがられたらしい。



ほっておくとずっと車に触っているよう

だったので,注意したこともあるそうだ。



それはともかく,その車で山神トンネルって

いう場所へ出かけたんだ。



メンバーは私とドライバーのAと

幽霊など信じていないBの3人だった。



Bは幽霊が出たら,捕まえてやると意気込んでいた。



ダラダラと深夜のドライブをしている内に,

噂のトンネルの近くまで来たんだ。





お互いにいい大人だし,いまさら心霊スポットなんて,と

私は思ったが,話のネタにって感じのノリで盛り上がっていた。



いよいよ入り口まで来ると,中は暗いが

オレンジのランプはついていて,



幅は車2台が通れるほどの広さで,長さは

入り口から出口がなんとか見える程度だった。



近くに川が流れているようで,暗闇に響く,

水の音がなんとも不気味だったことを憶えている。



ドライバーのAはふざけてトンネル内で

クラクションを鳴らし,ゆっくりと進んでいった。



途中まで進んだところでAが異変に気付いた。

外で何か変な音がすると言い出した。



車を止めて,3人は車から降りた。

しかし,特に異変はない。



私は何もないじゃないかと言った。



しかし,Aは確かに変な音が聞こえたという。



Bは笑いながらAの肩に手をかけていた。

どうやら心配するなと言いたいようだった。



しかし,3人が車に戻ろうとした時,全員がその場で凍りついた。



なんとボンネットに真っ赤な手の跡が多数ついているのである。





Aが悲鳴を上げた。さすがのBも一気に酔いが

覚めたらしく表情は青ざめていた。



私がすぐに,車を出せと行った。



無我夢中で車を走らせ,しばらく進んだ先のコンビニで

車を止めて,再びボンネットを確認してみた。



しかし,そこにはどこにも手の跡などついていなかったのである。



それでは,私を含め,3人がトンネルで見たあの手の跡は

いったいなんだったんだろうか。



一説にはあのトンネルは昔,小さい子が事故に会い,

未だに成仏できずにさまよっているという噂もあるらしい。



稲川「皆さんもトンネルを通るときは十分に注意してくださいねぇぇ。

ふっと横を見ると真っ赤な手の跡が窓ガラスに

ついているなんてこともあるかも知れませんよぉぉ・・・。」



この時点で2年生に進級したばかりの児童のほぼ全員が

泣くか凍りついて固まっていました。



稲川「それでは今度の遠足では

そのトンネルを通ります。楽しみですねぇぇぇ。」



みんな「楽しみなわけあるか!!!」



「あの主任めちゃくちゃですね・・・。

ひょっとしてこれからも

こんな話ばかり聞かされるんでしょうか。」




だぬちゃんの予想は当たっていました。



この後,稲川先生がこの学年に語った怪談噺は

100を超えるといわれています。



次回はどんな怪談噺を聞くことができるのでしょうか。



栗林「(はぁ・・・。なんかこんな学年集会でいいのかな・・・。)」



安井「(しゃぁないな〜。)」



ちなみにこの後,安井先生の長い話があり,

子どもたちはへとへとになっていましたとさ。








稲川淳姫の怪談4



中野木小学校では定期的に学年集会が行われていました。

そこでは毎回稲川先生という学年主任が怪談噺をすることになっていました。



稲川「それでは始めましょうか。」



稲川先生は静かな口調で怪談噺を始めました。



昔々,那古屋に清州新衛門という男が大きな屋敷に住んでいました。



ある日,この清州が大事にしていたお皿を

おさよという女中が割ってしまいました。



清州「なんということをしてくれたんだ!

我が家の家宝を割ってくれるとは・・・!」



おさよ「申し訳ありません。」



おさよは土下座をして謝りますが,清州の怒りはおさまりません。

まるでその場で切り捨てる勢いでしたが,屋敷の側近たちに止められました。



その夜,おさよが庭の木で首を吊っている姿で発見されました。





それからでした。毎晩のように清州の枕元におさよの幽霊が現れたのです。



そして1ヶ月後,清州新衛門は原因不明の病で死んでしまいました。

その後,屋敷は廃れ,清州が首をつった木だけが残りました。



時代は流れ,昭和21年。あの戦争は終わり,

復興に向けて国中が頑張っていた時代です。



激しい空襲でもあの木は燃えずに立っていました。

焼け野原になった街を再興するための都市計画が進められました。



そして,あの木が邪魔だという結論になり,切ることが決まりました。



すると,どうでしょう。



その木を切ろうとした業者や役人が次々と謎の死を遂げました。



ついにその木はおさよの呪いの木として切られることはありませんでした。



さらに月日が流れ,現代。



その木は未だに切られることなく,道路の真ん中に立っています。



この木の呪いに興味を持った霊能力者がいました。

深夜遅く,その霊能力者がその木の前に立って霊視を行いました。



霊能力者「むむむ・・・。これは・・・。」



すると,首を吊ったおさよの姿が見えました。



霊能力者「確かに,女中が首を吊っている。

やはり,これは彼女の呪いか・・・。」



と,思った次の瞬間・・・。



手首が見えました。彼女を吊りあげる手首が・・・。



霊能力者「どういうことだ,これは・・・。

彼女は自殺じゃないのか・・・。」



次の瞬間,その霊能力者の体が宙に浮きました。

恐ろしいほどの力で首がしまっていきます。



霊能力者「ぐおおお・・・。くっ苦しい・・・。」



次の日,霊能力者がその木の下で死んでいました。

首には縄で首を吊ったような痕が残っていました。



一体,霊能力者が見た手首はなんだったのでしょうか・・・。

そしてその手首が霊能力者を殺したのでしょうか・・・。



謎が深まるばかりの呪われた木が名古屋には

確かに存在するのです。これからもずっと・・・。



話が終わると,子どもたちはみんな泣いていました。



「いやぁぁ・・・。今回も怖いよぉ・・・。」



特に女子たちは泣き叫んでいました。



「・・・。」

「オチがよくわからないし・・・。手首がなんなんだよ・・・。」



学年集会の稲川先生のお話はこれで終わりました。



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