第101話 影(シャドー)のその後 前編

〜ノアシリーズ 第2.5章〜





各務原山で正体を見破られた“影(シャドー)”は,

その足で組織のボスである御前の所へ行きました。



その帰りに,ユニットリーダーである今村に呼び出されました。



ここは眠らない街,栄の一角。



組織の幹部以上が入ることが許されるVIPバーがあります。



そのバーの名前は―



―リ・セ・ッシュ―



影(シャドー)が中に入ると,今村がカウンターに座っていました。



今村「ふぉっふぉっ。会うのはこれが初めてですね。」



影「ええ,初めまして。」

今村「お疲れ。影(シャドー)君。まずは一杯どうですか。」

影「いえいえ。それよりもご用件をお聞きしたいのですが?」



今村は用件を切り出しました。



今村「例の少年たちの追跡はどうですか?」



今村は任務の進行状況を確認したかったようです。



影「ええ,順調ですよ。」



彼は平然と嘘をつきました。



今村「そうですか。私はあなたが彼らの追跡に失敗し,

少年たちに正体を暴かれたものだと思っていましたよ。

そしてそれをなぜか御前に直接報告しに行った。違いますか?」



影はあわてる様子もなく切り返します。



影「何のことでしょう?任務は極めて順調です。」



今村は話を続けます。



今村「そうですか。それでは現在わかっていることを報告してください。」

影「それが,まだ何も収穫がないんですよ。」



これは半分当たっていました。



彼は少年昆虫団の居場所は突き止めていたが,

肝心のノアの書は手に入れることができていなかったからです。



今村「困りましたねぇ。居場所さえわかれば・・・。」



どうやら影は少年昆虫団の居場所を

今村に報告するつもりがないようです。



今村「わかっているとは思いますが,我々の任務は・・・。」

影「"漆黒の金剛石"の探索,ですよね。それは承知していますよ。」

今村「ふぉっふぉっ。」

影「(組織内にある6つのユニットのうち,

半分の3ユニットをその探索に割り当てている。

いかに組織が漆黒の金剛石を使った

"あの研究"に力を入れているかがわかる・・・。)」



闇組織ジャファには6つのユニットがあるようです。



それは山犬,海猫,川蝉,そして以前,石井軍医が

名をあげていた,森熊,藪蛇もそのユニットのようです。 (第69話参照)



今村「まぁ,私は君のことを信頼しているんですけどね。

彼が言うことをきかないんですよ。」

影「彼というのはまさか・・・。」

今村「ええ,大西君のことです。」



大西とは影と同じく牟田と山下の代わりに

入った今村の部下のようです。(第29話参照)










第102話 影(シャドー)のその後 後編 



〜ノアシリーズ 第2.5章〜





影「彼というのはまさか・・・。」

今村「ええ,大西君のことです。」



大西とは影と同じく牟田と山下の

代わりに入った今村の部下のようです。
(第29話参照)




影「やはり,グレイですか。」

今村「大西君は“沼蛭(ぬまびる)”では

そう呼ばれていたのですか。

彼とは確か,昔からの知り合いでしたよね?」



影「ええ,“沼蛭”にいたころからの同期ですよ。」



沼蛭というのが6つ目のユニットのようです。



影「本人がそう呼んで欲しいそうで。“グレイ”と・・・。」



今村「ふぉふぉっ。そうですか,彼は“グレイ”ですか。」

影「何か気になることでも?」

今村「いえいえ,なんでもありません。」



二人の会話が続きます。影は高級ブランデーを飲みながら。



今村「沼蛭は“彼”が死んでから,

リーダー不在の期間が3か月ほどありましたね〜。

残った貴方と大西君が可哀そうだったので

御前にお願いして私の部下に組み込ませていただいたのです。」



沼蛭というユニットのリーダーは

何らかの理由ですでに死亡しているようです。



影「ええ,それについては感謝していますよ。」

今村「ふぉっふぉっ。」

影「そのグレイがしびれを切らしたわけですか。」





今村「ええ,例の少年昆虫団は自分が探し出すといっていました。」

影「余計なことを・・・。今村さん,任務は私が必ず達成しますのでご安心を。」

今村「期待していますよ。・・・。おや?」



今村は影の首の後ろ側の襟に

何かついているのを見つけたようです。



今村「これはなんでしょう?」

影「何!?」



それは盗聴器でした。



影「(いつの間に!?まさか各務原山で

煙幕を張って逃げた時につけられたのか・・・。)」



今村「盗聴器ですね〜,これは。」



影はその小型盗聴器を握りつぶしました。



影「安心してください。おそらくグレイが

我々の会話を聴くために取り付けたものでしょう。」



今村「そうですか,しかし一応,念には念を入れておきましょう。」



今村はどこかに電話をかけ始めました。



影「それでは私はこれで失礼します。」



影は消え去るようにその場から去りました。



一方,レオンと少年昆虫団は

この会話をバーの近くに止めた車の中で聴いていました。



「盗聴器は壊されちゃったけど色々と収穫ありだね。」

「大西,“グレイ”と呼ばれる人物が動き出すのか・・・。」

「その前に影(シャドー)がもう一度何か企んでくるかもしれないな。」

「でも御前との会話は盗聴できなかったですね。雑音ばかりでしたよね。」

「仕方ないさ。電波が拾えない場所で会話していた可能性もあるからね。」



まさらちゃんも影と今村との会話の内容をしっかりと聴いていたようです。



「大西っていうのが本名でグレイがあだ名なんだね。」

「う〜ん,正確には違うんだな。」

「え?どういうこと?」

「これは組織に潜入している協力者から

得た情報だから確かなんだけどね・・・。」


「もったいぶらずに早く話せよ。」



イツキ君はレオンに対しても厳しいようです。



「奴らが名乗っている苗字はすべてコードネームなんだよ。

組織では“通り名”と呼ばれている。」


「え!?そうなんだ!さっき影と話していた“今村”っていうのも!?」

「そう,すべてそうだよ。そして幹部以上の人間が

御前から“通り名”を与えられることになっているらしい。

だから例えば山犬の山本は“山本”っていう通り名なんだ。本名じゃない。」




今回の盗聴で闇組織ジャファの正体が

少しずつ明らかになったようです。



ちなみに翌日,彼らがそのバーに

行ってみるとすでに閉店していました。



どうやら今村が手を回し,

バーを他の場所に移転させたようです。



これでジャファへの手がかりは

再び無くなってしまいました・・・。












第103話 熱血神主登場!





今日の採集場所は二宮神社です。



ここはサイズの大きいカブトやノコギリ,コクワが



採集できる時もあれば,全く何も採集できな日も



あるという当たり外れの大きい場所です。



いつものように少年昆虫団が採集をしていると

後ろから声をかけられました。



みんなが振り返ると灰色の袴をはいた神主がいました。



神主「こんな時間にこんなところで何をやっているんだい?」





彼は神主らしからぬ容貌の持ち主でした。



「だ,誰!?(この人,なんで

灰色の袴なんて着ているんだ・・・。)」




少年昆虫団は警戒して

リク君とイツキ君の後ろに隠れました。



「あんたこそ,こんな時間に何をしているんだ」



赤神「俺は,この二宮神社の神主だよ。赤神竜太という。」



「前,来たときはこんな人いなかったですよね。

今日はいるんですね,神主さん。」


「ボクたちはここで昆虫採集を

しているんです。怪しいものじゃないよ。」




赤神「はははは。別に怪しいと思って声を

かけたんじゃないよ。心配して声をかけたんだ。」



「それなら,心配無用だな。」



赤神「じゃあ,せっかくだからこの二宮神社の

カブクワ穴場スポットを紹介しようか。」



この赤神という男はカブクワにも興味があるようです。



「本当によく捕れるんですか?」



赤神「捕れるさ!まず必ず採集をするぞ!

という気持ちが大事なんだ!とにかく気持ちだ!気持ち!」



「なんかこの人,暑苦しいぞ・・・。」



そして穴場スポットに向かいました。

しかしカブクワはいません・・・。



「いないね・・・。」



すると赤神神主はその木をよじ登っていきました。



「何をやっているんですか?」



赤神「木を揺らすんだよ。上から揺らしたほうが

たくさんカブクワが落ちてくるに違いない!」



「そんなやばいことよくできるなぁ・・・。」



赤神「とにかく根性だ,根性!根性が

あればカブクワは採集できるんだ!!」



「熱血過ぎてうざいな・・・。

それにいまどき根性論って・・・。」




結局,赤神神主のおかげでカブトムシが少し採集できたようです。



「じゃ,帰ろうか。」

「赤神さん,ありがとうございました。さようなら。」



赤神「おう!またな!いつでもおいでよ〜!

熱い気持ちがあればいつでも昆虫採集はできるよ〜!」



少年昆虫団がその場からいなくなった直後,

赤神神主の携帯電話に着信が入りました。



赤神「おう。そうか―。・・・。

ああ,今,さっき会ったよ―・・・。」



彼は電話で誰かと会話を始めました。



一方リク君たちは帰り道で歩きながら何やら話をしています。



「さっきの人,なーんか怪しいなぁ・・・。」

「そうね。ちょっと熱苦しいもんね。」

「いや、そうじゃなくて袴の色がね・・・。」

「?」

「まぁ、いいや。今はあまり気にしないでおこう。」



こうしてリク君たちはおうちに帰りました。








第104話 新人バイトが来る〜!





少年昆虫団のみんなはカブクワキングに来ていました。



今日は珍しく,たくさんのお客でにぎわっていました。



店長「やぁ,この前はなんか大変そうだったけど大丈夫だったのかい?」



「あ,うん。心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。」



リク君は適当にごまかしました。



「へぇ,ここがみんながよくいくペットショップか〜。

なかなか品ぞろえがいいね。」




レオンさんも誘われて一緒に来ていました。



「(俺はこいつのこと認めてないからな・・・。)」



店長「えっと,そちらさんは確か・・・。」



「「あ,キングの裏のアパートに住んでいるお兄さんで,

この前,仲良くなったんだ。」






店長「へぇ・・・。そうなんだ。」



リク君たちが話をしていると奥の方から声が聞こえてきました。



「あれ?あそこにいる彼は新人バイトさんですか?」



「だれかいるんですか?」



まりん「そうそう,昨日から新しくバイトが入ったのよ!」



よく見るとたくさんのお客にまじって

新人バイトがせっせと働いていました。



「・・・。」

「へぇ〜,この店にそんな余裕があったんですね。」



店長「まぁな。これからが一番忙しくなる時期だしな。」



そういうと店長は奥から新人を連れてきました。



店長「新人の灰庭(はいば)君だ。」





灰庭「灰庭健人(はいばけんと)です。

よろしくおねがいします。」



現れたのは整った顔立ちの礼儀正しい好青年でした。



「わぁ,イケメンさんだ。」

「いやいやいや,おいらの方がイケメンだろう。」

「話にならんですね。」



新人バイトの灰庭はリク君に声をかけました。



「あ,よろしく。」



それからレオンにも声をかけました。



「初めまして。」



レオンは手を出して握手を求めました。



灰庭「初めまして,よろしくお願いします。」



レオンを見て,にこやかに笑い握手を返しました。



そして彼は奥の持ち場に戻っていきました。



「ねぇ,レオンさんってここに来たのは初めてなんだよね?」

「ん?もちろんそうだよ?」



イツキ君はさっきの新人バイトが気になるようです。



「なんか変わったやつだな。」



まりん「でも仕事も早いし,助かるわ〜。」



まさらちゃんは小声で店長に話しかけました。



「あんなイケメンさん雇ったら,

まりんさん取られちゃうんじゃないの??」




店長「ぎくっ・・・。実は俺としては

雇いたくなかったんだが,

まりんがどうしてもっていうから・・・。」



「はっきり断らないからですよ!」



伊藤店長はしゅんとしていました。

この後,彼らはいつものように昆虫採集に出かけましたとさ。