第165話 ヴォイニッチワールド1

ワクのわくわく冒険記シリーズ



ワク君は少年昆虫団と一緒に公営住宅の

一角にある公園でサッカーをしていました。







トシ君がボールを変な方向に飛ばしてしまい,

ワク君が取りに行くはめになりました。



ワク君が草むらの中でボールを探していると,トシ君がやってきました。



「ごめん,ごめん。ボールはあった?」

「ったく・・・。ノーコン野郎が・・・!」



二人でしばらく探しているとボールは見つかりました。



「よし,みんなのところへ戻ろう!」



その時です。急に二人は倒れこみました。



「頭が痛い!!」





「ぐああぁ,なんだこれ〜!!痛いよ〜!」



あまりの頭痛に二人は気を失ってしまいました。



どれくらいの時間が立ったのでしょうか。

二人はほぼ同時に目を覚ましました。



「いてぇ・・・。まだ頭がクラクラする・・・。」



ワク君は頭を抑え込みました。



「オイラも・・・。」



やっとのことで二人は起き上がりました。



ワク君は近くに落ちていたサッカーボールを拾うと,

先ほどまでサッカーをしていた公園まで戻りました。



トシ君もゆっくりと歩きながら公園へ向かいます。



「あれ?みんながいない?」



なんとそこには先ほどまで一緒に遊んでいた

少年昆虫団の姿がありませんでした。



ようやく追いついたトシ君も異変に気づきます。



「もう帰っちゃったのかな?」



トシ君はイヤコムで連絡を取りますが,反応はありませんでした。



「なんか・・・変だな・・・?」



ワク君は公園の中心であたりを見渡しました。

しかし,そこは先ほどまで遊んでいた公園と変わりはありませんでした。



そこで,公園の外に出てみました。



たくさんの公営住宅が立ち並んでいましたが,

先ほどまで見ていた景色と変わりはありませんでした。



「なんか・・・。人気(ひとけ)が少なくない・・・?」



建物などの景色に変わりはありませんが,誰一人いません。



公園で遊んでいた人たちも,道を歩いていた

人たちも,消えてしまったかのように・・・。



「なんだ・・・。何がどうなっているんだ・・・?」



ワク君は近くにあった定食屋の看板を見て,その表情を一変させました。



「な・・・。」

「どうしたの?」



トシ君がワク君の顔を覗き込み,尋ねます。



「あの看板・・・。」

「看板?」



トシ君はその看板に目をやりました。







「え?」



そこには日本語でもなく,英語,フランス語,中国語,どこの世界の文字でもない,

まったく意味不明な文字が奇妙に並んでいたのです。



一体,何がどうなっているのでしょうか。








第166話 ヴォイニッチワールド2

ワクのわくわく冒険記シリーズ



風景は変わらないのに,看板にある文字は

全く見たことがない世界・・・。



ワク君とトシ君は戸惑っていました。



「なんだ・・・さっきの頭痛と関係があるのか・・・?」

「いや〜たぶん,看板屋さんが間違えてつけっちゃったんでしょ!

それか何かのドッキリでしょ!?」




トシ君がそう答えても,ワク君は考え込んだままでした。



「でも,あの文字,どこかで見たことが

あるような気もするんだよな・・・。」




すると,何か音が聞こえてきました。

パトカーのサイレンに近い音でした。



やがてその正体がわかります。

公園の前にサイレンをならした一台の車が止まりました。



形はパトカーに似ていましたが,よく見ると違うようにも見えます。



中から二人の人物がでてきました。

全身を緑色の服装でまとっているように見えました。







「(あいつらは一体・・・。まるで植物みたいな格好だな・・・。)」



彼らは何か話しているようでしたが,二人には理解できませんでした。



その二人の人物は話しながら近づいてきて,

ワク君とトシ君の前で立ち止まりました。



そしてその人物たちは再び何かを話し合っています。



「なんだ,こいつらの言葉は・・・!?

まったく言っていることがわからない・・・。」


「英語とかなんじゃないの・・・?」



トシ君はあまり気にしていませんでした。



「あれが,英語な訳ないだろ・・・。フランス,ドイツ,スペイン,

イタリア,ペキン語・・・。どれも違う。あんな言語聞いたこともない・・・。」




人物1「###&%#$&%#&&**|*|#$|〜<>_¥」



「え?なんて言ってるんだ??」



突然,もう一人の男がスタンガンのようなものを

取り出し,ワク君の体に押し付けました。



「ぐわっ!?」



ワク君は気を失ってしまいました。



ビビッているトシ君も同じように

気絶させられてしまいました。



次に目を覚ますと,そこは警察の拘置所のような場所でした。







手足は拘束されていなかったので,体の自由はききます。

しかし,頑丈な鉄格子の中に入れられ,出ることはできませんでした。



「もうわけがわかんないよぉ〜!?

サッカーやっていたら,頭痛がして,気が付いたら,

意味不明な世界にいるし,変な人たちに気絶させられて,

変なところに閉じ込められるし・・・。」


「焦るなよ・・・。落ち着けって・・・。」



ワク君は頑張って状況を整理しようとしましたが,中々難しいようです。



まず,外の光が入ってこないので今が昼なのか夜なのかわからないのです。



時計もないので時間すらわからない状況です。



食事はおなかがすいたタイミングに持ってきてもらい,

トイレも室内でできるようになっていたので不自由はありませんでした。



二人はどれくらいの時間その中で過ごしたのでしょうか。



「なんか1週間くらいここに拘束されているよな。」

「そうかな?なんでわかるの?」



トシ君は聞き返します。



「時間になると天井の照明が暗くなるだろ。

たぶん俺たちが寝やすいようにしてくれて

いるんだろう。それが今日で7回目だからな。」




トシ君はなるほどと思いました。とすると今は8日目のお昼くらいでしょうか。



しばらくすると謎の人物が近づいてきました。

中心にいた人物は中年で見た目は研究者のようでした。



扉を開けると,二人を外へ連れ出しました。ワク君は小声でトシ君に話しかけます。



「まだ,逃げようとするなよ・・・。余計,

騒ぎになるかもしれない。少し様子を見よう。」


「お,おう。」



二人は病院の手術室のような場所に連れてこられました。

真ん中に2台のベッドが置かれています。



中年に見えるその人物は二人にベッドの上で

横になるようにと合図しているように見えました。



二人が横になると,ベッドからベルトが出てきて,手足を拘束してしまいました。



「あれ,これじゃあ,動けないんだけど・・・。

こいつら何をする気・・・」


「(やば・・・。やっぱりさっき逃げるべきだったか・・・。

でもサッカーボールは拘置所の中だしな・・・。)」




手術室のベッドに寝かされ,拘束されてしまった二人・・・。

いったいどうなってしまうのでしょうか。



そして彼らに何が起きているのでしょうか。








第167話 ヴォイニッチワールド3

ワクのわくわく冒険記シリーズ



二人がベッドの上で暴れていると,先ほどの中年男性が

注射器のようなものをワク君に近づけました。



「おい,何をする気だ・・・!?」



その注射器を耳の穴に差し込みました。



「やっやめろ〜!?ぎゃぁぁぁぁ」



ものすごい激痛がワク君を襲います。

ワク君はそのまま,気を失ってしまいました。



トシ君にも同様の作業が行われました。



二人が再び目を覚ますと,先ほどの拘置所のような場所の中でした。



「一体,なんだったんだ・・・。とりあえず生きてるな・・・。」



体のどこにも異常がないことを確認します。



???「お目覚めのようですね。我々の言っていることが理解できますか?」



突然,天井に備え付けられていた

スピーカから声がしました。



しかも,意味が通じます。



「お!なんかちゃんとした日本語だよ!話が通じる人がいるみたいだよ!」

「そうみたいだな。」



二人に希望がわいてきました。



???「どうやら通じるみたいですね。先ほどの手術は我々の言葉を

理解できるようになるためのものなのです。」



スピーカからはさらに声が届きます。



???「間もなく,君たちを担当するものがそちらに向かいます。

後は彼の指示に従うようにしてください。決して悪いようにはしません。」



それだけ言うとスピーカからは声が聞こえなくなりました。



やがて,二人を担当するという人物が拘置所の前までやってきました。



s「やぁ。君たちの担当,sという。よろしく。」







「s?」



ワク君が聞き返します。



s「言葉はしっかりと通じるようになったようだ。

こちらの世界には君たちのような名前という概念が無いんだ。

とりあえず,君たちにわかりやすくするためにsと名乗らせてもらうよ。」



そのsと名乗る人物は見た目は20代前半で

背も高く,なかなか整った顔立ちをしていました。



服装は全身が緑色に近く,ワク君やトシ君が

見たこともないような不思議な素材でできているようでした。



「えっと,ここは何?オイラたち,どうなるの!?」



トシ君が鉄格子に手をかけながら,問いかけます。



s「そうだな。色々説明してあげたいところだけど・・・。

とりあえずここから出してあげよう。」



そう言って,鉄格子の扉の鍵を開けました。



s「今から,向こうの世界に帰る手続きを行う。

安心していい。だから,逃げようとしないことだ。」



ワク君はサッカーボールを持って外に出ました。

拘置所があった場所を出ると,先ほど手術室に向かう時に

とおった細い廊下が続いていました。



「いったいなんなんだここは・・・。」



ワク君は小声でトシ君に話しかけました。



「どうしたの・・・?」





「ここから逃げよう。」



二人は長い廊下を渡り,道が二股に分かれている場所まで歩きました。



「いくぞ!」



ワク君が声をかけるとトシ君も走り出しました。

二人はs氏から逃げ出しました。








第168話 ヴォイニッチワールド4

  ワクのわくわく冒険記シリーズ



二つに分かれた道の左側を選び,二人は走り出しました。



s「まったく,仕方のない連中だ・・・。」



s氏は何か機械を取り出すことなくつぶやき始めました。

どうやらどこかに連絡を取っているようでした。



しばらく走ると,奥に扉が見えました。

扉を開けてその中に入るとそこには沢山の本棚がありました。



どうやらこの部屋は図書館のようです。







「なんだここ,ものすごい数の本だ・・・。」



ワク君は周りを見渡しながらそう言いました。



「うむむ・・・。」



するとs氏と護衛の者たちが部屋に入ってきました。

二人は逃げ場をなくしてしまいました。



「くそ・・・。人数が多いな・・・。トシ,何人いける?」

「せいぜい5,6人。」



トシ君は虚勢を張りました。



「俺もだよ・・・。ずいぶん数が余るな・・・。」



二人は観念したようです。



s「どうして逃げるんだ!?」



s氏はやや声を荒げながら問い詰めました。



「当たり前だろ!こんなわけのわからないところに迷い込んで,

長いこと拘置所みたいな所に入れられるし,変な手術もされる。

この次は何をされるかわかったもんじゃない!」




s「仕方ないだろう。あちらの住人を受け入れる

ためには手続きが必要で時間もかかる。

手術は会話をするための手段だ。

それにさっきも言ったが,君たちはちゃんと

自分たちの世界に帰してやる。」



今度は,なだめるように話します。



「そんなこと信じられないね。」



ワク君はいざとなったらサッカーボールで

得意のシュートを放ち,ここから逃げる算段でした。



s氏はそんな思惑を読み取ったのか,

周りにいた護衛たちを部屋の外まで下げました。



s「これでどうだ?何も警戒しなくていい。そこで座って話をしよう。」



s氏はすぐそばにあるテーブルとイスを指さしました。



ワク君がしぶしぶそこに座るとトシ君も隣に座りました。



s「さて,何から話せばいいか,迷うところだが・・・。」



「子供だと思って気にする必要はねぇよ。

どんな難しい内容だって理解する

自信は俺にはある。こいつにはない。」




ワク君はトシ君を指さしました。



「何を〜!」



s「ハハハハハ。結構だ。では,順を追って説明しよう。」



s氏はイスにかけ,手を組み,机の上に置いた状態で話を始めました。



s「まず,ここは君たちが住んでいる世界とはまったく別の次元,空間にある世界だ。」



「(やはり,ここはパラレルワールドなのか?

でもそんなことがあり得るのか・・・?)」




ワク君は黙ってうなずきました。



s「実は君たちの住む世界と我々の世界は様々な場所でつながっているんだ。

普通の人間はたとえ入口があっても入れないんだが,

たまたま波長が合ってしまうと,こちらの世界に入ってしまう。」



「じゃあ波長があった俺とトシだけがこっちの世界に来てしまったのか・・・。」



ワクは少しずつ状況の整理ができてきました。