第213話 踊る!昆虫大捜査線



真夏の炎天下の中,少年昆虫団は六町公園で警察ごっこをしているようです。

どうやら警視総監の娘が誘拐され,犯人が立てこもっている設定みたいです。



リク君は警察官のリク島,イツキ君は管理官のムロイツキ,

まさらちゃんは警視総監の娘,トシ君は犯人役,

ワクはリク島の直属上司和久さん,だぬちゃんはキャリア官僚局長の役でした。







「俺は和久さん役をやるためだけに呼ばれたのか・・・?・・・で忙しいのに・・・。」



何やらわく君が呟いていました。



「警視総監の娘さんが監禁されている場所を見つけました。今から突入します。」



リク君がおもちゃの無線を使って熱演しています。



「待て,リク島。本部の指示を待て。」



ドーム型の遊具が本部になっています。



「事件はドームで起きているんじゃない!ジャングルジムで起きているんだ!」



犯人のトシ君はビルに見立てたジャングルジムで

警視総監の娘のまさらちゃんを人質に立てこもっています。



リク島はジャングルジムに単騎突入しようとしました。



「・・・。」



ムロイツキ氏は眉間にしわを寄せて考え込んでいます。

そこに局長のだぬちゃんが声をかけました。



「わかっていると思うが,部下のミスは出世に響くよ。」

「わかっている。」



ムロイツキ氏は立ち上がりました。



「どこへ行く?」



少し間をおいてから答えました。



「現場・・・だ。」



一方,リク島は直属の上司である,

和久さんに止められていました。



「早く誘拐犯を捕まえないと!本部の指示なんて聞いていられないっすよぉ!」

「リク島よ・・・。正しいことがしたかったら,偉くなれ。なぁんてな・・・。」



しかし,リク島は和久さんの制止を振り切って突入しました。



「確保〜!」



リク島は犯人トシを羽交い絞めにして捕まえ,

まさら娘さんを無事に保護しました。



その時,犯人トシはおもちゃのナイフでリク島を後ろから刺しました。



「うぉぉぉ!」

「ぐぁぁぁ・・・。」



そこにムロイツキさんが到着しました。



「リク島〜!!!」

「捜査員が一人,刺された・・・。どうして現場に血が流れるんだ・・・。」



和久さんがムロイツキ氏につかみかかりました。



「あんた達が大理石の階段を駆けあがっている時に,

俺たちは地べたはいずりまわっているんだ。よく覚えておけ。」


「青島〜!じゃない・・・リク島〜!」



ムロイツキ氏は本部にいる局長に連絡を取りました。



「連絡します。警視総監の娘は無事に保護しました。」



本部では多くのキャリアが会議をしているという設定だったので,

だぬちゃんが一人で何役もこなし,歓声をあげ,

拍手をして喜びを演じていました。

それはまるでこっけいな姿でした。



「いや〜,よかった,よかった。」

「しかし,捜査員の一人が負傷しました。」



ムロイツキ氏は少し取り乱しながら,報告を続けました。



「いや〜,本当によかった,よかった。さぁ,

今日は事件解決の宴だ。良い店を用意したよ。」




そう言って,会議室から全員が出て行った様子をだぬちゃんは一人で演じきりました。



「局長,聞いていますか。捜査員が一人刺されました!」



しかし,すでにそこには誰もいません。



「局長!局長!!」



ムロイツキ氏の声が電話を通して,

むなしく会議室に響いています。



「兵隊は・・・犠牲になってもいいのか・・・。」



「ああ・・・,俺は大丈夫っすよ・・・。眠たいだけなんで・・・。」



こうして事件は幕を閉じました。



<おまけ>

「これ,ただ,某刑事もののパロディしたかっただけじゃないですか・・・。苦情きますよ!」

「むちゃくちゃだな・・・。昆虫大捜査線って昆虫なんて1回もでてないじゃねぇか・・・。」

「え〜ん,今回台詞がないよぉぉ・・・。(口をふさがれている設定でした)」






第214話 いつもの緑地公園にて



今日は,いつもの緑地公園で昆虫採集をしています。





レオンさんも一緒にいました。



「住んでいる家のすぐ近くにカブクワが採集できる

場所があるなんて,恵まれているよね。」




レオンさんはイツキ君と並んで緑地公園の

散歩道を歩きながらそう言いました。



「まぁね。」



リク君は2本の捕虫網と飼育ケース,

懐中電灯を持って,先頭を歩いています。



「相変わらず,やる気ですね・・・。」



だぬちゃんとトシ君は最後尾を歩いていました。



5分も歩くと採集場所に到着しました。



「今回は,普通のカブクワ採集なんだよね?」

「う〜ん。そうなんだけど,たまには珍しいクワガタでもいないかな・・・。」



リク君はクヌギの木を懐中電灯で照らしてみました。



その木には,ゴキブリやスズメバチ,ガ,

カナブンなどがいましたが,カブクワはいませんでした。



「いねぇな・・・。まぁ,帰るか。」



イツキ君は早く帰りたそうです。



「いやいや,まだ来たばかりじゃない。あれ?トシは?」



さきほどまで,だぬちゃんと一緒に歩いて

いたトシ君の姿がありませんでした。



「あれ?さっきまでそこにいたのに?おしっこですかね?」



だぬちゃんがあたりを見渡しました。



みんなはその場でしばらく待っていました。

するとトシ君が茂みの中から出てきました。



「勝手に離れるなよ・・・。」

「ごめん,ごめん。おしっこがしたく

なっちゃって・・・。でも,その木にクワガタがいたよ。」




トシ君がそう言うのでみんなはそこまで行ってみました。



「この木の根元がぬれているのは・・・。」

「ああ,それはオイラのおしっこだから踏まないようにね。」



と,トシ君。



「ひぃいい,汚い・・・。」



レオンさんがすぐにクワガタに気付きました。



「トシ君が見つけたクワタガはこれだね。

これはノコギリクワガタだ。」




ノコギリクワガタを止まっていたクヌギの木から

そっと取り外し,持っていたかごの中にいれました。



「持って帰るの?」



リク君が不思議そうに聞きました。



「ああ,ちょっと飼育してみたくなってね。」



その後も,採集を続け,コクワオスやカブトムシを何匹か見つけました。



緑地公園の入口まで戻り,今日の採集は終わりました。

だぬちゃんとまさらちゃんとトシ君は先に帰って行きました。



レオンさんは入口付近にある,石膏で来た球体のオブジェに腰かけました。



「何か聞きたいことがあるんだろ?

だからみんなと一緒に帰らなかった。」


「聞きたいことっていうか,気になることだよ。

例のJFのスパイが誰かわかったのか?」




レオンさんは首を横に振って



「いや,まだわからない。」



と答えました。



「そっか・・・。じゃあメンバーのことで

何か気になる動きとかがあったら,教えてね。」


「ああ,約束するよ。」



こうしてその日はお開きとなりました。








第215話 オオスズメバチの一生



少年昆虫団は大幡緑地に来ていました。



時間は夜の8時過ぎです。

すでに採集をする木の前にいました。



「ここは結構カブクワが採集できるみたいだね。

でも,そこそこ広いから大変だ。」




彼はあまりここに来たことはないようでした。



「おっと,オオスズメバチがいるね・・・。」

「やべぇ,ハッチーさんだ。

いや,ハッチー先輩だ!すぐに逃げよう。」








さっそくトシ君が過剰反応をし始めました。



「大丈夫だよ。たしかにこのオオスズメバチは日本最大の蜂で

強力な牙と針を持つハンターだけど,こちらが危害を加えなければ

襲ってくることは少ないんだよ。」


「ええ,でも毎年何人も死んでいるんじゃ・・・。」



今度はまさらちゃんが不安そうな声で言いました。



「確かに,蜂のテリトリーに侵入した者に対しては

容赦なく攻撃をする習性があるからね。」


「レオンさんはハチに詳しいんだね。」



リク君が聞きました。



「まぁ,一応大学で昆虫学を研究して

いることになっているからね。」




「警察の仕事が本職じゃないのかよ。

なんか楽しんで大学に潜入していないか。」




レオンさんは特に否定せず笑っていました。



「これってオスなんですかね?」

「いや,働き蜂は基本的に全てメスなんだよ。オスは肉団子を集めることもなければ,

巣を守ることもないので,針をもっていないんだよ。」




この事実にみんなは驚いていました。



「へぇ,そうなんですか。じゃあ,こいつらが来年卵を産むんですか?」

「確か,働き蜂は一生卵を産むことがないんだよね?

巣に1匹だけいるっていう女王蜂のために働くんでしょ。」




リク君が蜂を指さしてそう言いました。



「さすがに良く知っているね。基本的にはそういうことだね。

ただ,時々,巣の中で女王殺しというのが行われるらしい。

そうすると,働き蜂の中から新しい女王蜂を選ぶことになるんだって。

そうするとその働き蜂は産卵できるようになる。」




オオスズメバチの話をしているうちに,ハチはどこかへ飛んで行きました。



「ああ,怖かった・・・。」

「しかし,ハチも一生働き続けないといけないなんて大変だな・・・。」



とイツキ君。



「それは人間も変わらないよ。中にはハチよりも大変な待遇で

働いている人たちだっている。それこそ奴隷のようにね・・・。」




この国の深刻な労働環境について危惧しているようでした。



「どうして,そんなことになっちゃうんだろうね?

そんなにお仕事をがんばらないと暮らしていけないの?」


「僕の親なんて1日中家でゴロゴロしているか

パソコンに向かっているけどなぁ・・・。」




レオンさんは少し考えてから,



「色々と理由はあるけれど,仕事の効率化ができていない企業が多いんだろうね。

例えば仕事が早く終わっても上司がいるから帰れない,

どうせ,帰れないなら仕事をダラダラやろうって思ったり,

無駄な研修や幹部の視察なんかをやったりして,

そのための残業をする。全てが悪循環だね。」




と,持論を述べました。



「ああ,なんか気分が憂鬱になってきました。

将来そんな仕事に就いたらどうしようとだぬは思うよ・・・。」


「ドイツなんかは朝7時過ぎから仕事して3時過ぎにはさっさと

仕事を終えて帰宅する人が多いらしいよ。

彼らはプライベートをとても大事にするから

職場での飲み会なんてのもない。

自分の仕事が終われば上司がいようが帰宅するのが基本なんだって。」




日本と外国の労働環境は全然違います。



日本ももっと見習うところがあるのかもしれません。



「あれ,スズメバチの生態の話じゃなかったっけ??途中から眠くなってたよ!」



こうしてこの後も採集を続けました。








第216話 真夏のサンタクロース3



*このお話は2017年のクリスマス前後に掲載する予定でしたが,

諸事情に掲載時期がずれたため,今週公開となりました。




今回は真夏に現れる殺人鬼,真夏のサンタクロースのお話です。

都市伝説だと思われていた真夏のサンタは実在しました。



ついに,犠牲者が出たのです。

それは公園でランニングをしていた男性でした。



首をナタかオノのような刃物ではねられたようです。

周囲は警戒態勢がとられました。



公園では警察官が現場検証をしているので

一般人は中に入ることができませんでした。



少年昆虫団はキープアウトと張られた

テープの外側で様子をうかがっていました。



「なんか殺人事件があったみたいだよ・・・。

お父さんが言っていたんだ・・・。」


「噂では真夏のサンタクロースの犯行だそうですよ。」



とだぬちゃん。



「それは都市伝説だろ。」

「そうそう。そんな奴は実在しないよ。」



二人は真夏のサンタクロースの存在に否定的でした。



「じゃあ,オイラ達で犯人を探してみればいいんじゃない?

ホラ,オイラ達って結構そういう事件に巻き込まれたりしてるじゃん?」




トシ君が提案しました。どうやら少年昆虫団は過去にも

殺人事件に巻き込まれたことが何度かあるようですが,

それはまた別の機会にお話しすることになりそうです。



「事件を解決するのはリク君やイツキ君が中心で

トシ君はいつも何もしていないじゃないですか。」




いつもの突っ込みが入りました。



「まぁ,トシの言うとおり,殺人犯を野放しに

するわけにもいかない。僕たちで犯人を見つけよう。」


「でも,大丈夫かな・・・?相手は凶悪な殺人犯なんだよ・・・。」



まさらちゃんが不安そうに言いました。



「大丈夫だろ。そんな奴は俺がぼこぼこにしてやる。」



と言って指をポキポキと鳴らしました。



「なんか,二人ともしれっと言ってますけど,

発言がどう考えても小学生離れしていますからね!」




少年昆虫団は現場には入れないので,

周辺の公園や人通りの少ない場所で聞き込みを開始しました。



2時間後,有力な情報を得ました。



「この公園でサンタの格好をした怪しい人を見たって目撃情報があった。」



そう言って,普段はあまり遊ばない赤髭公園に向かいました。



「いいか,いきなり襲ってくるかもしれないから気をつけろよ・・・。」



ジェイジェイジェイジェイジェイ…ハッハッハッハッ・・・(例の音)



すでに周辺は暗くなっていてライトなしでは前も見えない状態になっていました。



「なんかいやな予感がするよぉ・・・。」



ジェイジェイジェイジェイジェイ…ハッハッハッハッ・・・(例の音)



突然,草むらから人影が現れました。



「なんかいるっ・・・!」



と叫びました。



髭を生やしてサンタクロースの格好をした

人物がナタで襲いかかってきました。







「やっぱり,真夏のサンタクロースはいたんですよぉぉ!!

早く逃げないと殺されますよ!死にますよ!」


「死なねぇよ!」



ドヤ顔をして捕虫網を背中から抜きました。



真夏のサンタが振り下ろしたナタをイツキ君が

蹴りをサンタの腕に当てて止めました。



ナタが真夏のサンタの手から離れました。

真夏のサンタはヴゥヴゥヴゥ・・・と唸っています。



その隙にリク君が真夏のサンタに攻撃を仕掛けました。



―大地一刀流 神速の打突―



ズシュッ!!!



伸びた捕虫網"アマテラス"が

真夏のサンタの喉元に突き刺さりました。



真夏のサンタはうめき声をあげながら倒れました・・・。



「ふぅ・・・。思ったよりたいしたことないな・・・。」



しかし,倒れたと思っていた場所に真夏のサンタはいませんでした。



「あれ,どこに行ったんだろ・・・。」

「逃げられたか・・・。」



イツキ君は少し悔しそうでした。



「あの,ここは警察に連絡してもう帰りませんか?」

「まぁ,そうだね。そうしよう・・・。」



この後,警察に連絡をして周辺を捜索してもらいましたが,

真夏のサンタを見つけることはできませんでした。



彼はどこへ行ってしまったのでしょうか・・・。



それはまたいずれわかることになるようです・・・。