第225話 菊の幹部達F

菊の華シリーズ第2章




赤神「俺は主に組織の運営と情報の統括が仕事だから,

特別な情報を捜査で得たとかはないぞ。」



彼は,急に高いテンションで話し始めました。



「そうなんですか。」



とまさらちゃん。



赤神「俺からも1つ質問してもいいかな?」



赤神さんがそう言うと,リク君は,



「うん,なんでも聞いて。」



と明るく答えました。



赤神「最初に神社で俺と会ったとき,俺のことをジッと

見ていたけど,何を怪しんでいたんだい?」



「オイラはその現場にいなかったけど,赤神さんのテンションが

高すぎて怪しまれたんじゃないですか?」




レオンさんが珍しくツッコミました。



赤神「いやいや,それを言うならお前の顔のほうが怪しいだろ!」



赤神さんも負けずにやり返しました。



「ああ,あれはね・・・。」



リク君は一度イツキ君と顔を見合わせました。



「まぁ,こちらも色々と聞きたいわけだし,

話してもいいんじゃないか。」




とリク君を促しました。



「実は僕たちの周りを嗅ぎまわっているJFの

人間がいることがわかっているんです。」




赤神「何!?」



それを聞いて,彼の表情がひきつった状態になったのがわかりました。



「海猫の今村っていう人物の部下で大西って言うみたいなんだけど,

組織の中ではグレイって呼ばれているんだって。」




赤神さんは理解しました。



赤神「それで俺がそのグレイじゃないか疑っていたのか。」



「まぁ,そういうことだ。俺もリクに

聞いて後で知ったんだけどな。」




するとだぬちゃんが,



「でも赤神さんをどうして疑ったんですか?」



と聞きました。



「グレイってことは灰色ってことでしょ。

だから灰色の袴を着ていた赤神さんを少し疑ったんだ。」




赤神「じゃあ,俺の疑いはもう晴れたわけだな。昨日も言ったけど,

あれは借り物で色に特に意味はない。」



さらっと自分は潔白だと宣言しました。



「でも,赤神さんがグレイじゃないとすると一体誰が怪しいんだろ・・・?」

「僕はグレイかもしれない人物は3人の中のだれかだと思っている。」



リク君は確信をもっていました。



「一人は赤神さんだとして後の二人は?

オイラには見当もつかないよ。」




「でしょうね。」



と,だぬちゃんは当然のようにツッコミました。



「堤防で魚釣りをしていた時に出会った老人と

カブクワキングでバイトをしている灰庭さんだよ。」


「ええ〜!?」



まさらちゃんは大声をあげました。



「あの老人は髪の毛を灰色に染めていたでしょ。

灰庭さんは単純に名前に灰が入っているからね。」


「それだけで灰庭さんがグレイだっていうの!?」



さらにヒートアップしています。



「普通に考えれば,俺たちのことを探りに来たんなら一度だけしか

出会っていない老人がグレイとは考えられないな。

赤神サンでもないとすると,消去法であのバイトがグレイってことだろ。」




イツキ君が丁寧に説明しましたが,

まさらちゃんの耳には入っていないようでした。







「そんな・・・。イケメンだったのに・・・。

悪い人の仲間だったなんて・・・。」


「まぁまぁ。まだその人がグレイだと決まったわけじゃないんだろ?」



と,さりげなくフォローをしました。



「まぁね。ただの推測だし,何も証拠がないのに問い詰めても

絶対に認めないだろうから,しばらくは様子見にしよう。」




リク君は灰庭さんがグレイだと思っているようですが,

確信がないのでしばらく相手の出方をうかがうようです。



「そうだな。それよりも緊急の案件があるな。」



イツキ君は菊に潜むスパイのことを言っているようです。








第226話 レオンの過去 前編

菊の華シリーズ第2章




赤神さんは少し,“グレイ”のことを

気にしている様子でした。



それを気にしたレオンさんが,



「赤神さん。とりあえず,その灰庭って人はリク君たちに任せてみませんか。

我々は組織の全貌を突き止めるほうが先だと思います。」




と提案しました。



赤神「そうだな。そうしよう。それにお前も一緒なら安心だ。」



赤神さんも同意しました。



「これで一通り聞きたいことは終わったかな?」



とみんなに聞きました。



「いや,まだ終わっていないよ。」



とリク君。



「リク・・・?」



イツキ君がリク君の顔を見ました。



「レオンさんからも話を聞きたいな。」

「なるほど。オイラが残っていたか。いいけど,

だいたいのことは話したと思うけどなぁ。」




と髪を掻きながら言いました。



「レオンさんって警視庁,つまり東京から来たんだよね。

どうして名古屋に潜入捜査に来たの?」




リク君の質問に,レオンさんは,



「ちょっと昔話をしようか。」



と言いました。



その表情は少し悲しそうでした。



まさらちゃんはたまらず,



「ひょっとしてお父さんの死が関係あるんじゃ・・・。」



皆はレオンさんが父の復讐のために

闇組織JFを壊滅させようとしているのは知っていました。



トシ君とだぬちゃんも珍しく真剣な表情で

レオンさんの後姿を見つめていました。



「ああ,いかん。マジな表情を続けすぎて戻らなくなった!」



もはや誰もツッコミませんでした。



「オイラは元々東京育ちなんだ」



みんなは初めて聞くレオンさんの

過去話を真剣に聞いていました。



「研究者だった父の姿に憧れて帝東大学(通称:帝大)

を目指したんだが,結局は法学部に進学した。」






「ええ,超エリートじゃないですか!?」



意外な学歴に驚いていました。



「卒業後,国家試験1種に合格して警察に入庁。その後,警視庁に配属。

研究者を目指していたはずが,いつの間にか官僚になっていたよ。」




レオンさんは自分の経歴を語りだしました。



「子供のころの夢がそのまま続くとも限らないしね。」



リク君は納得していました。



レオンさんのその表情は暗いままでした。



「父親のことも話しておこう。父はオイラが子供の

ころからずっと研究一筋の研究者だった。」




みんなは黙って話を真剣に聞いていました。



「母はオイラが小さいころに病気で亡くなってしまって,

オヤジは男で一つでオイラを育ててくれたんだ。」




少し間をおいて,



「でも,父の研究はあまりうまくいかなくて,オイラが高校生の時,

ついに研究資金も打ち切られてしまい,生活ができなくなってしまった。」




まさらちゃんが悲しげな瞳でレオンさんを見つめていました。



「そんな時,父の研究に目を付けたのがジャファコンツェルンの生物工学研究所だった。

奴らは家族の生活を保障する代わりにそこで働かないか声をかけてきたんだ。」




話はさらに続きました。



「父は喜んでその話を受けた。だが,研究を続けていくうちに,あることに気づいたそうだ。」



「どんな?」



とイツキ君が質問しました。



「その組織が行っている研究は現在の倫理観と照らし合わせても到底

許されることはない研究をしていると言っていた。

当時はそれ以上聞いても答えてくれず,よくわからなかった。」




「それが,“漆黒の金剛石”,つまり“神の遺伝子”を

使った何かの研究だってことだね。」




と,言うリク君に対し,



「ああ,つい最近になってその事実を知った。」



レオンさんは



「少し休憩しよう。」



と言って,壁にもたれかけました。






第227話 レオンの過去 後編

菊の華シリーズ第2章




レオンさんは自分の過去を少し話し,一旦休憩しました。

しばらくすると再び話を始めました。



「どこまで話したかな。ああ,父がジャファに騙されて

闇の研究に手を染めたところまでだったね。」




みんなは頷きました。







「父はジャファに再就職が決まった時,すごく喜んでいたのを覚えている。

オイラは大学進学を志望していて学費のことも心配してくれていた。

別に就職でも良かったのに,父は無理をしてくれた・・・。」




赤神氏も黙ってレオンさんの話を聞いていました。



「父は本当に悪い研究を手伝わされているとは知らなかったようだ。

つい最近まではそういう研究に手を染めていなかったんだろう・・・。」




「つまり,悪い研究をするように言われたのは最近で,それまでは

普通の研究者として働いていたってことなのかな?」




と,まさらちゃん。



「おそらくね。それまでは東京の施設で研究をしていたんだが,

1年前に名古屋の研究所に転勤になった。オイラも1年前は警視庁の勤務で

忙しかったから父とはしばらく連絡を取っていなかったんだ。」




レオンさんの話はさらに続きます。



「あれは,半年くらい前だったかな。久しぶりに父から電話がかかってきたんだ。

その時は忙しくてゆっくりと話せなかったんだが,何やら仕事のことで悩んでいたみたいだった。」




「きっとその時にはもう神の遺伝子の研究に関わっていたんですね。」



さすがのだぬちゃんも話が見えてきたようです。



「ああ。今思えばあの時もっとオイラがしっかりと話を聞いてあげれば良かった・・・。

そうすれば一人で悩むこともなく,死ぬことにもならなかった・・・。」




レオンさんの表情から相当悔しい思いが伝わってきました。



「父はおそらく研究から抜けたくても抜けられなかったんだと思う。

奴らはおそらく息子のオイラの素性も調べていたはず。」


「なるほど。レオンさんの身分を盾にとって,

ジャファはレオンさんの父親を脅していたかもしれないってことか。」




イツキ君が頷きながらそう言いました。



「イツキ君の言う通りだ。父はオイラの事を心配して研究から

抜け出したくても抜け出せない日々が続いたんだと思う。」




レオンさんの推測の部分もあるようですが,みんなはきっとその通りなんだと確信していました。

なぜならそれが闇組織ジャファのやり方であると知っていたからです。



「でも,レオンさんの父親である小早川教授って“神の遺伝子”の研究を

まとめたノアの書を持って逃げだしたんだよね。どんな心境の変化があったのかな?」




リク君の疑問に対し,レオンさんは答えました。



「実は父がノアの書を持ち出す3日前に電話をしたんだ。」



「何の話を?」



一応トシ君も会話に加わろうと努力していました。



「菊の華が闇組織ジャファを壊滅させるために本格的に動き出したこと,

そのためにオイラは大学院生と身分を偽って潜入捜査をすることを話したんだ。

もう少ししたら名古屋に向かうからそうしたら久しぶりに会おうと言った。」




みんなは納得しました。



「そうか,その話を聞いて,父親はこれ以上,

レオンさんに迷惑をかけられないと思ったのか・・・。」


「ああ・・・。しかし,そのために父は組織に殺された・・・。」



会議室の空気は非常に暗くなり,誰もが下を向いていました。



「でも,レオンさんとレオンさんのお父さんの

ことを聞かせてもらえて良かったよ。」




最初に口を開いたのリク君でした。



「ああ,そうだな。」



イツキ君が続きます。



「みんな・・・。」



「今の話を聞いてはっきりしたよ。」



リク君は力強く言いました。



「何をだい?」



レオンさんが聞きました。



「レオンさんは僕たちの味方で闇組織ジャファを

壊滅させたいと思う正義の心の持ち主だってことがさ。」




リク君はにこっと笑って言いました。



それを聞いていた他のみんなも笑みを浮かべて頷きました。



「なんだよ。まだ疑っていたのかぁ!

だから最初から言っているでしょ!

オイラは少年昆虫団の一員だって!」




レオンさんは少し明るい表情になりました。



そして日が暮れてきました。








第228話 動き出す闇の騎士

菊の華シリーズ第2章




少年昆虫団はいったん赤神氏と別れました。

彼はこの後も県警本部で仕事があるそうです。



何かあればいつでも連絡してかまわないと言われたので,

リク君は赤神氏の直通番号を教えてもらいました。



県警本部を離れ,地元へ戻ってきました。

時間は夜の7時を回っていました。



後部座席に座っていたまさらちゃんのお腹がグーっとなりました。



「なんか,お腹が空かない?」



おなかがなったまさらちゃんは,

少し恥ずかしそうにしていました。



「そうだね。ご飯でも食べに行こうか。

おうちの人にはオイラから連絡しておくよ。」




みんなはお腹がペコペコでした。



レオンさんの運転で近くの外食チェーン店

“ビックリクリクドンキー”というお店に

行くことになりました。



「ここは,ドリンクバーがあって,長く居座るのにはいいですが,

料理はいまいちなんですよね。特にハンバーグがまずい。」




と,だぬちゃんは文句を言っていましたが,

“ワチキモビックリクリクリハンバーグ”を

注文したイツキ君はうめぇうめぇと言って食べていました。



「あちゃー,味オンチですね。」



とだぬちゃんが言いましたが,イツキ君は,



「いや,違うよ。」



とそっけない返事でした。



みんなは食事を終えるとドリンクバーに向かい,

お茶やジュースを持ってきました。



「いや〜食った食った!

ワチキモビックリステーキを

3人前も食べちゃったよ。」




支払いはレオンさん持ちだったので,

ちょっと涙目になっていました。



「いいよ・・・。成長期だからね・・・。

どんどん食べてね(経費でコレ落ちるかな・・・)。」




食事もひと段落したところで,

レオンさんがリク君に聞きました。



「今日1日,菊の幹部の人たちに話を聞いたけど,

誰がジャファのスパイである“闇の騎士(ダークナイト)”か見当はついた?」




リク君はコーラを飲みながら首を横に振りました。



「だよなぁ・・・。レオンさんが本当に味方だってわかったことくらい。

まぁ俺はリクと違って最初から信じていたけどな。」




少し皮肉交じりに言いました。



「いや,別に疑っていたわけじゃないよ。

ただ,ありとあらゆる可能性を想定していただけさ。」


「つまり,闇の騎士は残りの4人の中の誰かなんですよね?」



だぬちゃんが確認をしました。



「まぁ,そうなるね・・・。」



一方,リク君たちが食事をしている頃・・・。



名古屋最大のツインタワービル,通称“バベル”。





このビルの上層部はジャファ専用のホテルとなっていました。



その一室に藪蛇のアヤと山犬の山本がいました。



山本はシャワーを浴びた後で,タオルを

頭から覆い被り,上半身は裸になっていました。



その体つきは細身だが,非常に筋肉質でアスリートのようでした。



アヤは窓越しに最高級ワインを嗜んでいました。



アヤ「いい夜ね。でもこの景色も見飽きたわ。」



下には無数のネオンとビルの光が輝くきれいな夜景でした。



すると,アヤの携帯電話に着信が入りました。

その場でアヤは電話を手に取りました。



アヤ「あら,アタシの愛しい愛しい

闇の騎士(ダークナイト)。

どうしたの,こんな時間に。」




電話の相手はあの“闇の騎士”でした。



闇の騎士「今日,再び例の少年たち,それに小早川の息子と接触しました。

どうやら奴らは菊の中にスパイが潜り込んでいることに感づいているようです。」



山本はじっとそのやり取りを聞いていました。



アヤは聞いた内容を山本の耳元でそっと伝えました。



山本「面白いじゃねぇか。それなら先手を打つまでだ。

闇の騎士とやらに伝えろ。動き出せ・・・と。」



山本はタオルで顔を覆っていたので,

表情は読み取れませんでしたが,

口元がわずかに笑っていました。