第257話 真夏のサンタクロース4



愛知県東部の山奥にあるとあるキャンプ場。



ここは冬になるとサンタクロースの休憩地ということで

多くの客が集まるリゾート地でもありました。



さらにスキーを楽しむ客やクリスマスをロマンチックに

過ごせるコテージもあり,とても人気でした。



さらに,夏の間はキャンプ場として開放され,賑わっていました。

そこに男女11人の若者が遊びに来ていました。



ほとんどがカップルでしたが一人の

青年だけはそうではありませんでした。



彼の名前は三田クリス。見た目は地味で頬にはソバカスがあり,

髪の毛もクセ毛で,イケメンとは程遠い存在でした。



性格は気弱でパシリ体質,嫌なことが

あっても堂々と主張できないような青年です。



ただ,敬虔なクリスチャンで人を恨んだり,

悪さをしたりするようなことはしません。



そんな彼は今回のキャンプでも他の友人から

いいようにこき使われています。



青年1「おい,クリス。そこの荷物をテントの中に運んで置け!」

クリス「うん,わかったよ・・・。」



他のメンバーはキャンプファイヤーの準備をしたり,

自然に触れ合ったりと楽しんでいる中で,

クリス青年だけは,荷物を運んだりとした

雑用を押し付けられていました。



女1「なんか,クリスってどんくさい

やつだよねー・・・。なんでつれてきちゃったの?」

青年2「しょうがないだろう。同じサークル

なんだし,荷物持ちとしては役に立つだろう。」



ベンチに座って,二人の男女がクリスを馬鹿にしていました。

クリスは聞こえないふりをして,黙々と荷物を運び続けました。



すると,誰が言い出したのか,クリスにいたずらを

して怖い目にあわせてやろう,となりました。



ちょっと驚かしてやるつもりだったようです。

10人の若者はクリスを湖に連れて行きました。





そして,その湖に置いてあった二人が乗れる

くらいの小さなボートにクリスを乗せました。



クリス「いったい,何をするつもりなんだよ。」



一緒にボートに乗った青年は,

青年3「なんか,明美が湖の真ん中に珍しいものが

見えたっていうからさ,一緒に確認してもらおうと思ってよ。」



と,適当なことを言ってクリスを

なんとかボートに乗せ,漕がせました。



湖の真ん中に来たところで,クリスに湖の中を確認させました。

しかし,ボートの上からでは水が濁っており,良く見えません。



体を乗り出して確認しようとしたところ・・・。

急にボートが揺れ始めました。



残りの4人の若者が下からボートを揺らしていたのです。

彼らは後ろからこっそりと泳いでついてきていたようです。



クリス「わわ・・・。」



クリスのあわてた様子に湖の湖岸から見ていた

女子もケタケタと笑って馬鹿にしています。



その時,クリスはバランスを崩してボートから落ちてしまいました。



クリス「わぁぁ・・・。助けて・・・。僕は泳げないんだよぉ・・・。」



しかし,ボートにいた青年もいたずらを

した青年たちも助けようとはしません。



クリスは湖の底に沈んでいきました。



青年4「おい,そろそろ助けないとやべぇんじゃない?」

青年3「そうだな。お前たち,潜って拾い上げてこいよ。」



湖中にいた青年たちは潜って,クリスを

探しますが,なかなか見つかりません。



青年5「いないぞ!?これってまずいんじゃないの・・・?」



彼らもあせり始めています。



ボートの上にいた青年も一緒に探し始め,1時間ほど捜索を

続けましたが,クリスはとうとう見つかりませんでした。



全員は諦めて湖岸に戻りました。



青年2「これってやばいやつだよな・・・。

警察に言わないといけないんじゃないかな・・・。」



一人の青年がこの状況を危惧していました。



青年1「まぁ,まて・・・。ひょっとしたら自力で逃げ出して

どこかで休んでいるのかもしれない。連絡するのは明日にしよう。」

女2「そだねー・・・。ヘタに通報してアタシらが

やったと思われたら面倒だしー・・・。」



こうして,その日は警察に連絡をすることなく,夜を迎えました。



湖からは全身がびしょぬれの状態の男がゆっくりと這い上がってきました。

その顔はすでに生気がなく,この世のものとは思えませんでした。



彼は昼間に溺れてしまったクリスなのでしょうか・・・。



*このお話の続きは2019年のクリスマスにて・・・






第258話 お寺で昆虫採集



今日は愛知県一宮北部の岐阜県との

県境にある虎古寺に来ていました。



カブクワキングの灰庭さんの車で

連れてきてもらったようです。



灰庭さんがインターネットでカブクワスポットだと

調べてくれて,少年昆虫団を誘っていたのです。



「灰庭さんありがとう!わざわざ

カブクワスポットを調べてくれて!」






灰庭「いやいや,君たちもいろいろと

新しい場所で昆虫採集をしたいんじゃないかと思ってね。」



いつもは神社や雑木林が多いのですが,

珍しくお寺が昆虫採集場所になっていました。



このお寺は本堂を中心に周囲が500mほど

あり,かなり広いお寺となっていました。



囲いの中には杉やクスノキに混ざり,

クヌギやブナの木が植えられていました。



「へぇ〜,こんなところで

カブクワが採集できるんだね!」




まさらちゃんも初めての場所での

昆虫採集に少しわくわくしていました。



一方のトシ君は,



「いやぁ,もう帰ろうぜ・・・。なんか

向こうのほうに墓とか見えるんですけど・・・!」




かなりビビっている様子でした。



「寺なんだから墓だってあるだろう。

何をびびっているんだよ。」


「いやいや,びびってなんかいないって!」



そういいながらも足はガタガタ震えていました。



「情けないですね。だぬは全然怖くないですよ。」



リク君は一人で勝手に奥のほうへ

進んでいき,採集を始めていました。



その後を灰庭さんが追いかけていきました。

イツキ君はジッと灰庭さんの後ろ姿を見つめていました。



「イツキ君どうしたの?早く

いかないと置いてかれちゃうよ?」


「ああ,でもあいつってもしかしたら

闇組織JFのスパイ“グレイ”かもしれないんだろ。」




イツキ君たちは先に行った二人に

追いつくために歩き始めました。



「確かに・・・。その可能性が高いって言って

いましたよね。レオンさんも否定していなかったですよ。」


「そういえば,レオンさんはどうして来ていないの?

昆虫採集に行くって言えばだいたい一緒に来ていたのに。」




トシ君がイツキ君に聞きました。



「なんでも,大学の研究で遅くなるらしい。

潜入捜査とはいえ,奴らの目をごまかすためには

そっちの仕事もしっかりやる必要があるんだとさ。」


「なるほどー。さすがレオンさん。」



だぬちゃんは感心しながら納得していました。



「でも,残念だなー・・・。レオンさんも一緒に

来ればイケメンさんが二人になるのに!」




まさらちゃんの中ではレオンさんも

イケメン扱いになっているようです。



「あれ,でもレオンさんと灰庭さんって

一緒に昆虫採集したことないですよね?

どちらかが来るとどちらかはいないですよね?」


「!?」



だぬちゃんの発言にイツキ君は

何か嫌な予感がしました。



「たまたまだよ,たまたま!大人っていうのは

忙しくてそうそう都合がつくものじゃないんだよ!」


「まぁ,そうかもね。」



イツキ君だけは黙ったまま何かを考えこんでいます。



そんな会話をしている間にリク君と灰庭さんが

昆虫採集をしている木までおいてきました。



「みんな,遅いよー!ホラ,

カブトとノコギリのオスを見つけたよ!」




リク君は嬉しそうにしています。



その時です。



お寺の鐘がゴーン,ゴーンとなり始めました。



「あれ?なんで鐘の音が聞こえるのかな?」



灰庭「ここのお寺は,毎日夜21時から

鐘を鳴らすことになっているんだ。」



みんなはその鐘の音に耳をやりました。



「なんか,除夜の鐘のようですねー。今年も

これで終わりかーっていう気分になってきましたよ。」


「何を言っているんだよ!?

まだ夏休みは始まったばかりでしょー!

年末まではだいぶ先だよ!」




リク君がにっこりとしながらそう言いました。



「わかっていますよ・・・。本当に年末なんて

くるのかな・・・。だぬは疑問に思うよ・・・。」




お寺の鐘の音を聞きながらこの日の昆虫採集は終了しました。








第259話 トシの家でゲーム再び!



本日はあいにくの雨でした。

少年昆虫団はトシ君の家に集まっていました。





トシ君の家はマンションの2階にあり,部屋の広さは3LDKで

一番奥の日当たりのよい部屋がトシ君の子供部屋になっていました。



「それじゃあ,今日はゲームをやって遊ぼう!」



どうやら今日はみんなでゲームをやるようです。



「あ〜あ,昆虫採集がしたかったなぁ・・・。」

「雨だから仕方ないですよ!

たまにはゲームもいいじゃないですか。」




だぬちゃんは嬉しそうに言いました。



突然,リク君はトシ君がふだん,使っているベッドに飛び込みました。



「ちょっと,何をやってるの!?」



リク君はたまに突拍子もないことをしてみんなに呆れられることがありました。



「いや〜,ふかふかなベッドが

あったもんだから,つい・・・。」




リク君はそのままゴロゴロと寝転んでいました。

そしてそのまま本当に眠ってしまいました。



「人んちのベッドで勝手に寝るなよ・・・。」



イツキ君もあきれ気味でした。



リク君は寝てしまったので,4人で“ワンテンドー”という

メーカーの“ホイッチ”というハードで遊ぶことにしました。



「これなら,4人で遊べるから

ちょうどいいね。リク君が起きたら,交代でやろう!」




トシ君はかなりのゲーマーであったので,生き生きとしていました。



「まぁ,普段は昆虫採集で連れ回されて

いるからな。たまにはトシも息抜きが必要だろう。」




4人は“スラッシュシスターズ”という場外に相手のキャラクターを

吹き飛ばせば勝ちというシンプルなゲームを夢中で楽しみました。



「いや〜,おかしいな。このコントローラ,

壊れているんじゃないんですかね!?」




負け気味のだぬちゃんが文句を言いだしました。



「いやいや,純正のコントローラだし,

この前買ったばかりだから壊れているわけないよ!」




さすがに,トシ君はやり慣れていたので上手でした。

ゲームはお昼すぎから始め,気づけば夕方になっていました。



「なんか,ちょっと疲れちゃったー・・・。」



まさらちゃんは肩がこってしまったようです。



「ちょっと休憩にするか。」



すると,まさらちゃんが床に落ちていたゲームソフトを拾い上げ,



「これは何てゲームなの?」



パッケージが派手で少し気になっていました。



「ああ,それは“レジェンドオブ中世”

シリーズですよ。最新作が昨日発売されたんですよ。」




だぬちゃんが代わりに解説しました。



「ふーん。面白いのか?」

「トシ君,このシリーズはクソゲーとか

言いながら,結局買ったんですか!?だぬも買いましたけどね。」




以前,トシ君はこのシリーズのことを馬鹿にしていました。 (第111話参照)



「まぁ,一応買うだけ買ってみた。攻略本も同時発売だから,

一緒に買ったぜ。でも,まだプレイしていないな!他にもやるゲームが多すぎてさ。」




どうやらこのシリーズはソフトと同時に攻略本も発売されるそうです。



トシ君は発売日にゲームソフトを買っていながらまだプレイしていないようでした。



「じゃあ,別に発売日に買わなくても

いいじゃねぇか・・・。ていうか,お前ゲーマーだろ。」




と呆れていました。



「いやいや,ちげぇよ。ゲーマーじゃねぇよ!」



イツキ君は別のソフトに目がいきました。



「お,“ヨゾミヤ”じゃないか。俺はこのゲームは結構やりこんだぞ。」

「ああ,これは面白かったですね。登場人物たちの複雑な

人間関係とその重厚なストーリー。そして,理不尽なほど難しい難易度が一部のマニアには

大受けでしたね。ただ,リク君はただの面倒臭いゲーム扱いをしていましたけどね。」




だぬちゃんもそのヨゾミヤというゲームを高く評価しているようでした。



「ついていけないや・・・。」



まさらちゃんは半分呆れていました。



「ふぁ〜・・・。よく寝た・・・。」



リク君がようやくおきました。



「ひとんちのベッドでよく寝れるな・・・。なんというずうずうしさ・・・。」



リク君はそんな苦言も気にせず,



「さて,そろそろ雨やんでいないかな。」



窓から外をのぞくといつの間にか雨はやんでいました。



「よし,夜は昆虫採集ができそうだね。じゃあ準備してから行こう!」



こうして,ゲームは終わり,この日の夜も

昆虫採集に行くことになりました。








第260話 まさらちゃんのイケメンショッピング1



今日はまさらちゃんのお買い物のお付き合いで

中野木の商店街に来ていました。



だぬちゃんとトシ君は急用でこれなくなってしまったので,

リク君,イツキ君そしてまさらちゃんの3人です。



「う〜ん,どのお店にしようかなぁ・・・。」



どうやら新しいお洋服を探しているようです。



「そんなの,どこでもいいじゃん・・・。」

「だめだよー!まずはお店選びから!

いいお店でいいお洋服を買うの!」




まさらちゃんの張り切る姿を

リク君とイツキ君が遠い目で見ていました。



「まぁ,今日は時間もあるし,いいんじゃないか。」



数十分は歩き回り,ようやく目当てのお店を見つけたみたいです。



「あ,しまった。買い物袋持ってくるの忘れちゃった・・・。」

「じゃあ,これを使いなよ。」



リク君は持っていた少し大きめの布でできたカブトムシの

イラストが描かれた袋をまさらちゃんに渡しました。



「ありがとう。借りていくね!」



まさらちゃんは2階にある女性向けの衣服が

置いてあるコーナーに入っていきました。



「なんで,あんな袋を持ってきたんだよ。」

「いやぁ,この後カブクワキングで

色々と買いたいものがあってさぁ!」




イツキ君は呆れていました。



二人は歩き回って疲れたみたいで,1階の

休憩エリアで待っていることにしました。



「あ,アイスがあるじゃん!」



彼はアイスの自販機を見つけ,

アイスを買って食べ始めました。



「うめぇ,うめぇ。やっぱチョコチップが最強だよねー。」

「じゃあ,俺はミントにしようかな。」



アイスを食べながらまさらちゃんの

買い物が終わるまで待ち続けています。



一方,2階に上がっていったまさらちゃんは,

自分好みのお洋服を探していました。



そして,どうやら気に入った服を

購入することができたようです。



買い物を終えて,1階に戻ろうとした時,

見覚えのある人物を階段付近で見かけました。



「あ,もしかして間宮先輩じゃないですか?」



まさらちゃんに声を掛けられ振り

向いた少年は間宮という人物でした。



間宮「あれ?ひょっとしてまさらちゃん?

偶然だねー,こんな所で出会うなんて!」



「はい!先輩が小学校を卒業して以来ですよね!」



間宮の後ろにいた少年が,



少年1「お前の知り合い?」



と聞きました。



間宮「ああ,去年まで俺が通っていた小学校の後輩で,

全学年ダンス交流会で一緒に踊ったんだよ。」



間宮少年はまさらちゃんが好きそうなさわやかなイケメンでした。



彼女は間宮少年がサラサラな髪を少し茶色に染め,

体もずいぶんがっちりして,すっかり中学生らしく

なっていたその姿に目を輝かせていました。





<間宮少年>



間宮「あ,そうだ。せっかく再開したんだし,ちょっと

付き合わない?近くのカフェでおやつでも食べに行こうよ。」



「あ,はい。行きたいです!」



まさらちゃんはリク君とイツキ君の存在を

すっかりと忘れ,間宮少年についていくことにしました。



ちょうど間宮少年とまさらちゃんが店を出る時,リク君と

イツキ君の二人はトイレに行って,気づくことができませんでした。



トイレを終えて再び簡素なベンチが置いて

あるだけの休憩所エリアに戻ってきました。



二人はそこでもうしばらくまさらちゃんを待ち続けます。



しかし,いくら待っても戻ってこないので,



「なぁ,いくらなんでも遅すぎじゃないか?」

「う〜ん,確かに長すぎるね・・・。2階に行ってみようか。」



しかし,2階にもまさらちゃんの姿は見えません。



仕方なく,店員に聞いてみました。



すると,小学生低学年の女の子がすでに買い物を終えて,

中学生くらいの少年たちと下に降りて行ったといわれました。



「どういうことだ?」

「う〜ん・・・。わからん・・・。」



二人は店を出て,イツキ君の持っていたイヤコムで

まさらちゃんに呼び掛けてみましたが,返答はありませんでした。



「イヤコムを家に置いてきたか・・・?」

「かもね・・・。」



二人はまさらちゃんを探すことにしました。