第269話 バトルヤバイヤロ3限目 1

ワクのわくわく冒険記シリーズ



*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。






ワク君とトシ君はヴォイニッチワールドで

元の世界へ帰るつもりが別の世界に来てしまいました。



そこでは,学校の中で命がけのデスゲームが行われていました。



1時間目の社会,2時間目の特別活動を終え,

3時間目は体育の授業になっていました。



2時間目を生き残った人たちは体操服に着替え,

運動場に集合させられていました。



放送「それでは,3時間目は体育の授業だ。全員,整理体操!」



音楽が流れてきました。



「従わなければ・・・。」



???「きっとドカンだねぇ・・・。」



隣を見るとワク君よりも少し背の

高い少女がいました。



ワク君と目が合うと,



リサ「アタシはリサ。よろしくね。

君って小さいね。小学生だよねー?」



リサ 14歳



リサちゃんは満面の笑みで話しかけてきました。



「うん。そうだけど・・・。君もあの

デスゲーム"大富豪"の生き残りなんだよね?」




彼女の笑顔からはとても死線を潜り

抜けてきたようには見えませんでした。



リサ「うん,そうだよー。アタシはね,こう見えて頭いいんだー。」



話し方は賢そうには見えませんでしたが,

あのデスゲームを勝ち抜いたということは

そこそこ頭の切れる少女なんだなとワク君は思いました。



リサちゃんは,中学2年生で髪の毛はブロード色でした。

父親が外国人のハーフのようです。



日本人離れしたその瞳と顔立ちは

とても可愛らしく,大人びて見えました。



体操をしながら二人は会話を続けました。



リサ「君はどうしてここに連れてこられたの?」



「君じゃない,ワクだ。こっちはトシ。」



ワク君は自己紹介とヴォイニッチワールドの

ことやこれまでのいきさつを説明しました。



リサ「ええー。なんかウソっぽーい。」



「ワク君,ちゃんと体操しないと殺されちゃうよ!」



ワク君の後ろにいたトシ君が忠告しました。



「わかってるよ!」



全員は準備体操を終えました。



山岡「一体,何を始めるつもりなんだろうねぇ・・・。

ワタシャもう年だし,運動なんて何年もやってないからできやしないよぉ・・・。」



ワク君の斜め前にいた主婦の山岡さんは

腰をひねりながらそう言いました。



「きっと,大丈夫ですよ。」



ワク君の言葉に,山岡さんは後ろを振り返り,



山岡「そうだね!ここまで来たんだから

今度だってクリアしてやるよ!」



と自信満々にそう言いました。



放送「3時間目は鬼ごっこをやるよ!」



「え,それってさっきの学活と一緒じゃん!?」



思わずトシ君が突っ込んでしまいました。



放送「これはれっきとした,体育の授業だよ!

体力も知力も度胸も育てることができる立派な競技さ!」



大音量に流れる放送に皆は何も言えませんでした。



「そうかなぁ・・・。鬼ごっこなんてただの遊びじゃん・・・。」



トシ君はブツブツとつぶやいていました。



放送「それでは競技の説明をするからよく聞くように!」



一体,どんなルールなのでしょうか。








第270話 バトルヤバイヤロ3限目 2

ワクのわくわく冒険記シリーズ



*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。






放送「今から60分間の間,鬼から逃げ回ってもらうよ!

逃げ切った人は次の授業に出ることができます!」



風花「ってことは逃げ切れなかった奴は・・・死ぬのか・・・!?」



風花さんがこぶしを握り締めて怒りをあらわにしていました。



放送の内容から分かったルールは次のようでした。



・最初の10分間は逃げる時間。10分後にゲーム開始でその後の60分間を逃げ切れば勝ち
・鬼は最初は2人。10分ごとに3人ずつ増える
・鬼に背中をおとなしく3回たたかれると捕まる。少しでも抵抗すると反撃モードになり命の保証はない
・鬼は返り討ちにしてもよい
・捕まった人は牢屋に自動的に移されることになる。鬼も一緒についていくので鬼は再び牢屋からスタートする
・牢屋では10分ごとに処刑タイムがある(つまり開始9分に捕まった人は1分後に処刑される)
・牢屋に捕まった人を助けることもできる
・鬼を倒すと牢屋のカギを落とすことがある。ただし,一つのカギで牢屋を開けられるのは1回のみ
・移動できる範囲にはいくつか宝箱が設置されている。中には役立つものが入っている
・60分過ぎた時点で牢屋に入っていない人は生き残りとなる
・隠れるエリアは指定された範囲。先ほどまでいた校舎の中に入ることはできない
・エリアはビオトープエリア,巨大アトラクション遊具エリア,実験棟エリアの3つ
・牢屋は校舎前に設置される
・逃げる生徒の数は1年生の生き残りA組8人,B組5人,C組3人,

さらに別の教室で生き残ったD組6人,E組5人,F組5人の合計32人


「よし,ルールはわかった。」

「まったくわからん!」



トシ君が自信満々に言いました。



リサ「なんか,トシ君って面白い子だねー。

それに比べて,ワク君はなかなか頭が良さそうね。」



リサちゃんはワク君の実力を見抜いているようでした。



放送「それでは始めるよー!今から10分以内に好きな場所に移動してね!

10分後に最初の鬼が登場してから60分間逃げ続けるんだよー!

みんな,がんばれー!先生は心の底から応援しているよ!」



真木「・・・。本当にふざけている・・・。」



近くにいた大学生の真木氏もこのゲームの

理不尽さに嫌気がさしていたようです。



「真木さん,一緒に逃げましょうか。」



ワク君が誘いました。



真木「そうだね。僕も君たちがいると心強いよ。」



近くにいた女子高生のアヤネ,IT社長の白馬,

主婦の山岡さんもワク君たちに同行することにしました。

OLの風花さんはすでに見当たりませんでした。



さらに山岡さんと仲良くなったという,

1−Bと1−Cから生き残った人たちも合流しました。



1−Bからは田村,青山,宮川,1−Cからは優香とそれぞれ名乗りました。

田村氏は肥満体型で額にずっと汗をかいていました。



田村



青山氏は30代前半の男性で若いころは

ボクシングをやっていたらしく,腕には自信があるようでした。





青山



宮川氏は大学院生で本来なら司法試験を受ける予定だったそうです。





宮川



優香さんはまだ若干二十歳ほどで,容姿端麗,長い髪をストレートにおろし,

所作はお嬢様のように美しく,とても育ちの良い女性に見えました。



新しいメンバーを4人と今までの6人,リサちゃんを合わせ,11人となりました。



「それじゃあ,行きましょう。時間もそんなにありません。」



田村「おいおいおいおい,なんでこんな

小学生が仕切っちゃっているの!?」



脂性の田村氏が額に汗をかきながら文句を垂れました。



山岡「まぁまぁ。田村さん落ち着いて。」

真木「彼はこう見えて,非常に優秀な少年なんですよ。

とりあえず彼のいうとおりにしてみませんか。」



真木氏もフォローしました。



優香「いいんじゃないですか。

今はケンカしている場合ではありませんよ。」



彼女がそう言うと特に男性たちは

これ以上何も言えませんでした。



果たして彼らはどこに隠れるつもりでしょうか。








第271話 バトルヤバイヤロ3限目 3

ワクのわくわく冒険記シリーズ



*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。






ワク君一行は実験棟の前に来ていました。

ここは運動場から一番遠い場所にある建物でした。



高さは5階建てで入り口は正面と裏口の二つがありました。



扉を開けて中に入っていきました。

中にはエレベーターもついていました。



田村「おいおいおいおい,エレベータが

あるじゃん!これで5階まで行こうよ!」



宮川「しかし,かなり小さなエレベータなので,

全員が一度には乗れないんじゃないでしょうか。」



宮川という男は頭は良いみたいですが,

それをひけらかすようなことはせず,常に低姿勢でした。



田村「わかっているよ,宮川さん。順番に上っていこう。」



その時,放送が入りました。



放送「10分経ちましたので,ただいまより鬼ごっこを開始します!

鬼が2匹登場します!くれぐれも捕まらないようにご注意を!」



青山「おっ。いよいよか。俺の力が試せる。

どっからでもかかってこいや!」



青山氏は握りこぶしを作り,それを振り上げて威嚇しました。



アヤネ「とうとう始まった・・・。」



不安そうにしているアヤネの肩を白馬がそっと抱き,

白馬「大丈夫だよ,君は僕が守るから。」



その言葉にアヤネはホッとした

気持ちになり,心が落ち着きました。



「あれ,アヤネちゃんってさっきまで

彼氏が一筋って言っていたような・・・。」




空気を読まないトシ君がボソッと

つぶやいたので,後ろからワク君が蹴り飛ばしました。



「いってぇぇ・・・。」

「空気を読め。このクソ野郎・・・。

アヤネちゃんは1時間目に彼氏を亡くしたばかりなんだぞ!」




ワク君の提案により,田村,優香,山岡,アヤネの4人が

エレベータを使い,残りは階段で最上階まで行くことにしました。



田村氏はどうしても歩きたくないというので

女性たちに混じってエレベーターを使うことになりました。



リサちゃんは階段で上に行くことにしたようです。



階段で上に上る途中,リサちゃんはワク君に向かって,

リサ「あんたって本当に冷静で頭の切れるタイプねー・・・。」



宮川「どうしてそう思うんでしょうか?

失礼ながら私にはただの小学生にしか見えませんが・・・。」



ワク君は何も答えませんでした。



リサ「少しでも生き残る確率をあげるために,二手にわかれたんだよねー?

エレベーターなんて鬼に見つかれば逃げ場がないよねぇ。

他を囮にして自分はちゃっかり階段で上って生存率をあげようとした。違う?」



「さぁね。どのみち,女性にはこの階段はキツイ。

だから君にもエレベーターを勧めたんだけどね。

それに,いざとなったときに,少しでも体力を

温存してもらうために,エレベーターを使ってもらったんだよ。」




ワク君の返しにリサはさらに感心したようで,

リサ「いいねぇー。アタシ,頭のいい子って

大好きなんだー。バカは嫌い!」



そう言い放ってトシ君を睨みつけました。



「バカな奴かー。そうだよねー。

バカっていうのは嫌だよねー。話が通じないしさー!」




その場にいた全員が,「お前のことだよ!」と

思いましたがなんとかこらえました。



上る途中,窓から下を眺めると全身真っ黒な

恰好をして頭に2本の黄色い角を生やした鬼が

この建物に向かってきていました。







真木「なぁ,ひょっとしてあれが・・・鬼・・・!?」



鬼は1匹だけでした。



ただ,この実験棟に入ってきたようです。



「早いな・・・。」



5階につくと,エレベーター組はすでに到着していました。



アヤネ「ハハハ,お先!」



白馬「どうやら,笑っている場合ではないみたいだ・・・。

鬼が1匹,この建物の中に入ってきたのを確認した。」



その場に緊張感が走りました。






第272話 バトルヤバイヤロ3限目 4

ワクのわくわく冒険記シリーズ



*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。




実験棟の最上階は,東側にエレベーターホールがあり,そこに便所もありました。



廊下が2本あり,いくつかの実験部屋が連なっていました。



一番奥は非常用の階段だけで,裏口につながっているようです。



ワク君はトシ君と一緒に便所でおしっこを済ませました。



田村「ガキのションベンを待っている間に,

鬼が来たらどうすんだよー!?」



田村氏はいら立ちを隠せません。



「お待たせー!」



すっきりとしたようです。



真木「最上階に来たのはいいけど,これから

どうするんだい?鬼がもうすぐここへやってくるかも。」



「う〜ん,それはどうかな。」



ワク君の意見に皆が注目していました。



「鬼は階段で上ってくる。1匹しか来ていない状態でエレベーターが

動いていないからね。なら,何階に俺たちがいるかわからないから,

各部屋をしらみつぶしに探しているところだと思う。」




真木「なるほど。」



ワク君がさらに話を続けます。



「今回のテーマはいかに長く生き残るか。つまり,

なるべく鬼に無駄な時間を使わせることが大事でしょ。

だから序盤は部屋がたくさんあって,隠れるところが多いこの場所を選んだんだ。」




優香「そうだったんですか。本当にワクさんってすごい方なんですね。素敵です。」



優香さんにそう言われてワク君はちょっぴり照れていました。



田村氏はどうも優香さんがワク君を

ほめることが気に食わないようです。



田村「ふん・・・。それくらい俺だって

思いついたさ。鬼が出たって返り討ちにしてやるよ!」



田村氏が大声でそう叫びました。



山岡「田村さん,そんな大声を

出したら鬼に聞こえちゃうよ・・・!?」



青山「大丈夫だって!俺のプロ並みのパンチで

鬼なんてすぐにダウンさせてやるよ!」



青山氏はシャドーボクシングをやってみませました。



アヤネ「期待しているよ!」



その時,階段の下から足音が聞こえました。



「まずい,今の声を聞かれた!?

鬼が来るぞ。みんな逃げよう!」




廊下を渡って非常階段から

下に逃げることにしました。



階段からは鬼がものすごい速さで追いかけてきました。



田村「ひぃぃぃ,鬼が来てるぅぅぅ〜!?」



一番足が遅いのはトシ君ではなく,

脂性で太った田村氏でした。



「みんな,後ろを見るな。とにかく逃げろ!」



田村氏は懸命に逃げましたが,

非常階段の入り口で鬼に捕まってしまいました。



田村「何もしない!?抵抗しないから殺さないでぇぇ!?」



大人しく背中を見せ,鬼に3回たたかれました。

すると,田村氏と鬼はスッとその場から消えてしまいました。



4階まで降りかけていたトシ君とワク君はしっかりとその様子を確認しました。



「はぁはぁ・・・。本当に人が消えた・・・。

なんなんだ,この世界は・・・!?」


「みんなぁ・・・。田村さんが捕まって消えちゃったよ!?」



トシ君は前を走る大人たちに大声で伝えました。