第285話 見上げてごらん夜空の星を



本日は,星空が綺麗なことで有名な道の駅に来ていました。



どうやら昆虫採集が終わり,時間に余裕があったので

レオンさんの車で連れて行ってもらったようです。



車から降り,真上を見上げるとそこはあたり一面が星空で,

その美しさは都会のそれとは比較になりませんでした。





「すごいな・・・。

空に吸い込まれそうだ。」




イツキ君がそう言えば,まさらちゃんは,



「本当に素敵。まるで

宝石が散らばっているみたい。」




と感想をもらします。



一方のトシ君は,



「流れ星来ないかなー。来たら,富,名声,力,

この世の全てを手に入れたいと願うのになー。」


「どこの世界の海賊王ですか・・・。」



リク君は天体にも詳しかったので

みんなに解説をしてくれました。



「あそこに見える明るい星がこと座のベガだよ。」



ほぼ真上に近い星を指差して説明しました。



「そこから少し北東にある星がはくちょう座のデネブ,

もう少し南東にある星がわし座のアルタイル。この3つを結ぶと・・・。」


「あ,知っている!夏の大三角でしょ!」



まさらちゃんが代わりに答えを言いました。



「うん,その通り。じゃあ,

あの南にある赤い星の名前はわかるかな?」




それは赤く,少し不気味に映る星でした。



「ウキキ・・・。あれは・・・。」

「あ,レオンさんは答えたらだめ!」



リク君は彼が答えようとするのを制止しました。



「答えはアンタレス。

さそり座にある星だよ。」




その後も,みんなはリク君の分かりやすい

解説を感心しながら聞いていました。



「でも,これだけ宇宙が

広いときっと宇宙人だっていそうですよね。」


「いや〜,オイラは実際に

見たり聞いたり・・・。ヴォイニッチワー・・・。」




そこまでトシ君が話したところでイツキ君がさえぎって,



「どうかな?案外,この宇宙に存在する

知的生命体は人間だけかもよ。」


「実は,最近の観測で太陽系以外にも

多くの系外惑星が見つかっているんだよ。

中にはハビタブルゾーンといって,生命が存在可能な

範囲に惑星があることもわかってきている。」




系外惑星の中にはホットジュピターといって恒星の近くを回る木星クラスの星や,

エキセントリックプラネットといって,軌道がものすごく長く傾いている星,

スーパーアースと呼ばれる地球よりも質量の大きい星などが見つかっているのです。



「きっと,いるんじゃないかな。

オイラはその方がロマンがあって好きだな。」


「まぁ,確かにそうかもな。」



みんなはそれからもしばらく

寝転がりながら星を眺めていました。



その時,流れ星が流れてきました。



「お,来た!えっと・・・。」



しかし,一瞬で消えてしまいました。



「トシ君は欲が深いんですよ。

それじゃあ一生願い事なんて叶わないですよ。」




たまには夏の夜に星を眺めてみるのもいいですね。




第286話 プロローグ

 菊の華シリーズ 最終章




日本警察が闇組織JFを壊滅させるために

警視庁公安部はJF対策特別

チームとして"菊水華"を立ち上げました。



通称"菊"と呼ばれています。



JFは菊の幹部を暗殺する計画を立てているようです。

しかし,この事をレオンさん以外の菊の幹部は知りません。



そんな中,菊のメンバーである黄金原氏と

部下の羽音々氏がJFに拉致されましたが,

間一髪のところで少年昆虫団とレオンさんに救われました。



リーダーの赤神氏は事態を重く見て,黄金原氏と

羽音々氏を当分の間,署内のみの勤務としました。



ここは眠らない町,栄の一角に

あるJF専用のバー,リ・セッ・シュ。



そこに闇組織JFの幹部がカウンターで酒を飲んでいました。



真ん中に山犬のユニットリーダー山本。



そして右側に海猫のユニットリーダーの今村,

左側に藪蛇のユニットリーダーのアヤがいました。





山本「本日の作戦だが,おおむねうまくいった。

そして計画通り,南雲に下っ端の掃除をさせておいた。」

今村「南雲クンもだいぶ殺しになれてきたのですね。」



今村がウォッカを飲みながらそう言いました。



山本「ああ,この一週間で二けたの人間を殺させたからな。

多少は慣れてきたんだろう。だがまだ足りねぇな。」



山本もグラスをあおって酒を飲み干しました。



山本「これで例の計画を実行に移せる。

御前の許可はすでに出ている。

こちらが練った計画案も完成した。

あとはXデーに実行するだけだ。」



アヤ「いよいよね。闇の騎士(ダークナイト)からの報告だと一応,

警戒は続けているみたいだけど,まだこ表立った動きはないわ。」



藪蛇は諜報活動を主な任務としているユニットです。

菊の中にJFのスパイを潜り込ませて情報を搾取していました。



そのコードネームが闇の騎士(ダークナイト)でした。



今村「それよりもこちらのスパイが潜入していることは

菊には感づかれてはいませんか?それが心配です。」



今村はフォッフォッと笑いながらアヤに聞きました。



アヤ「それは大丈夫だと思うわ。あの子は完璧主義者だから

きっとヘマはしない。ただ,ちょっと気になるのは・・・。」



アヤは一回ため息をついてから,



アヤ「貴方が昨日言っていた

平成のファーヴルっていう子供のこと。」



子供という言葉に山本が反応しました。



山本「どうかしたのか?」



現実には令和に元号が変わりましたが,この世界では

いまだに平成時代が続いているという設定です。



アヤ「なんか,とてつもない強さらしいっていう報告が上がってきたわ。

アタシは何かの間違いじゃないのって言っておいたんだけどね。」



今村「フォッ〜フォッ〜!おそらく間違いではないでしょう。

彼は相当な実力者だと思います。実は大西(グレイ)君からも

同じような報告があったんですよ。これは面白くなってきましたね。」



今村は顔がにやけていました。



アヤ「本当に我々の脅威になりうるっていうの?

そんな馬鹿な!信じられないわ。」



アヤはそう言われても半信半疑のようでした。



今村「そうそう,昨日の会議でもお伝えしましたが

今回の暗殺計画は山犬に譲りますからね。」



山本「最初は抜けがけをするなと言ったり

急に譲ると言ったり,どういうつもりだ。」

(菊の華シリーズ第二章 プロローグ参照)



山本は今村を睨みつけました。



今村「いやいや,何も変なことは企んでいませんよ。

ただ,すでにあの各務原山で東條君は

"漆黒の金剛石"を再発見しました。

今度は山犬が手柄を立てる番じゃないですかね。」



山本は黙ったままです。



今村「それにこのことは東條君の

了承もいただいています。

どうやら彼は御前から別件で

動くように指示が出てるようですし。」



なんと,すでに漆黒の金剛石は東條と呼ばれる

組織の幹部によって発見され,探索を終えていたようです。



リク君達はこの事実をまだ知りません。



山本「アンタに手柄を譲られるつもりはないが,

もし菊のターゲットと一緒に現れたらまとめて始末してやる。」



アヤ「あら,闇の騎士(ダークナイト)

から連絡が来たわ。ちょっと失礼。」



アヤは携帯電話を手に取りました。



闇の騎士「この後,例の計画を実行し,菊の指令系統をかく乱します。

その混乱に乗じて,ターゲットの暗殺をそちらの実行部隊の

ほうでよろしくお願いします。ちなみに担当するのは穴熊の源田さんですか?」



アヤ「ええ。兵隊の管理と指揮は源田でしょうけど,実働部隊は山犬よ。

東條クンは別件があるみたいで動けないみたい。」



闇の騎士とアヤのやりとりは数分で終わりました。



そして,その内容を二人に伝えるとアヤは店を出ていきました。

いよいよ,菊の幹部を暗殺するための作戦が動き出すようです。








第287話 突然の告白

 菊の華シリーズ 最終章




愛知県警本部の資料室にて・・・。



一度闇組織JFに命を狙われた黄金原と羽音々は当面の間,

県警本部内で仕事をすることになっていました。



そこで彼らに関する資料をここで集めていました。



羽音々「なかなか,見つからないですね。

よほど徹底して地下に潜り込んだ組織なんですね。」

黄金原「う〜ん,そういうもんなのかな〜。」



羽音々(はおとね)が本棚から気になった資料に手を

かけたとき,突然,上からたくさんの資料が落ちてきました。



羽音々「きゃっ。」



彼女は手で資料を防ぎ,態勢を崩してしまいました。



倒れそうになった彼女を黄金原氏が

そっと受け止めてあげました。



その時,羽音々氏の手と彼の手が触れてしまいました。

思わず彼女は頬を赤らめました。



黄金原「大丈夫かい。気を付けないと危ないよ。」



黄金原氏は倒れそうになった羽音々氏を

そっと抱きかかえてあげました。



羽音々「あ,あの・・・。その・・・。」



羽音々氏は態勢を整えて立ち上がりました。

そして髪の毛についた埃を手で払いました。



黄金原「どうしたんだい?」



それは突然の告白でした。

彼女はついその言葉を口に出してしまったのです。





羽音々「ずっと前から好きでした。先輩の一生懸命に

仕事をがんばる姿が素敵です。」



ほんの数秒間の沈黙が彼女に

とっては1時間にも思えました。



黄金原「その,ちょっと突然でびっくりしたかな。

そんな風に思われているなんて考えていなかったから。」



黄金原氏はそのあとどうしていいかわからない

感じであたふたしているように見えました。



羽音々「先輩が仕事一筋だってことはわかっています。

だから大丈夫です。私,いつまでも待っていますから。」



黄金原「あ,ありがとう。そうだ,資料を探している

途中だったよね。早くやらないと赤神さんが戻ってきた時に色々と

小言を言われちゃうからさ。さっさとやってしまおうよ。」



再び二人は仕事を始めました。

そのあとも,彼女は彼の横顔が気になって

仕事に集中できませんでした。



一方,赤神氏は捜査本部の

デスクで電話をしていました。



相手はレオンさんでした。



赤神「なるほど・・・。JFの幹部を盗聴した時に,我々の暗殺計画を

実行に移そうとしていたことを聞いたわけか。

それなら黄金原が狙われた理由も納得だ。

しかし,なぜそれをあの少年昆虫団と

引き合わせた場で言わなかったんだ。」



「すみません,なぜなら我々の中に闇組織JFのスパイが

潜り込んでいるかもしれなかったから言えなかったんです。」




レオンさんは真剣なトーンでその事実を伝えました。



赤神「まさか,そんなことがありえるのか!?

というと,幹部か準幹部の中に!?」



「以前,黄金原さんからの報告にあがっていた,闇の騎士(ダークナイト)と

いう人物が諜報活動をしているのではないかと推測しています。」




しばらくの沈黙の後,



赤神「しかし,あの時,せめて暗殺計画だけ

でも伝えてくれれば,黄金原と羽音々(はおとね)が

けがをすることもなかったんだぞ。」



電話越しにレオンさんが

謝っているのがわかりました。



「赤神さん,今の事実を他の三人の幹部に確実に

伝えてもらっていいですか。できたら,この後,すぐに。」




赤神「ああ,そうだな。にわかには信じられないが,

俺も誰がスパイなのかそれとなく探ってみるとしよう。」



レオンさんは話題を変えました。



「ところで,あの二人はどうしています?」



レオンさんは黄金原氏と羽音々さんのことを気にしていました。



赤神「ん?ああ,今日も本部内で勤務をしているよ。

外には出ていない。しかし,なんか二人ともよそよそしくてな。

若手の女性警察官が言うにはなんでも羽音々のやつ黄金原に

自分の気持ちを伝えちまって振られたんだとよ。」



「え?そうなんですか?自分たちが命を

狙われているのに何やっているんですかね・・・。」




レオンさんが聞き返しました。



赤神「はははは。若いっていうのはいいことじゃねぇか。

しかし,あんなかわいい子を振るなんて黄金原の奴,もったいねぇよなぁ〜。」



「あ,この会話,昆虫団のみんなが聞いてますので・・・。」



レオンさんはオヤジ丸出しの

赤神さんに少し呆れていました。



赤神「あ?なんだ,あの子たちと一緒にいるのかよ。」



「それでは,先ほどの件と,引き続き,二人の様子を

しっかりと見ておいてください。よろしくお願いします。」




そう言って,電話を切りました。



レオンさんが盗聴した内容を全て伝えた真意とは・・・。








第288話 急展開な予感

 菊の華シリーズ 最終章




もうすぐお昼の12時になろうとしていました。



少年昆虫団はレオンさんの自宅で前回終わらなかった

キャンプの打ち合わせの続きをしていました。



「やっぱ,岐阜の坂取川方面がいいよー。」

「あたしは,絶対に海がいいー!」



それぞれが自分の意見を出し合い,盛り上がっていました。



レオンさんは赤神さんと電話をしていました。

みんなが会話の内容を聞けるように

スピーカーモードにしてくれていました。



そして会話が終わりました。



「そっかぁ!やっぱり告白しちゃったんだ。

いいなぁ。大人の恋ってステキ。」




まさらちゃんは顔を真っ赤にして何かを妄想していました。



「しかし,こんな時に,何をやっているんだか・・・。」

「レオンさん,良かったんですか。

盗聴した内容を全て伝えてしまって。」




だぬちゃんが少し心配そうに言いました。



「実際に黄金原さんの命が

1日に2回も狙われてしまったからね。

全員に伝えることにしたよ。ついでにもしかしたら

菊の中にスパイが紛れ込んでいるかも

しれないっていうことも伝えた。」




レオンさんはちらっとリく君を見ました。

どうやらこの決定にリク君も関わっているようです。



「ねぇねぇ,キャンプの打ち合わせしなくていいのー。

なんか全然,決まってないよー。」




トシ君が話題をキャンプに戻しました。



「そうだね。とりあえず山に行ったほうがカブクワも

取れるだろうし,そっち方面で考えてみようか。」




レオンさんがお昼ごはんにオムライスを作ってくれました。



彼はひとり暮らしが長いので一通りの料理ができるようでした。



「うまいな・・・。」



イツキ君はパクパク食べていました。



「味オンチのイツキ君でもこの

オムライスのうまさがわかるんですね。」






「いや,ちがうよ。」



そのあとも打ち合わせを続け,来週に岐阜県の

郡上方面へキャンプへ行くことになりました。



時間は午後4時になっていました。



すると突然,レオンさんの携帯電話が鳴りました。



「はい・・・。はい・・・

え・・・なんですって!?わかりました・・・。

ええ,まだリク君たちも一緒です。

わかりました。すぐ探します!」




レオンさんは電話を切りました。



「赤神さんからか?」

「ああ。なんか大変なことになってきたみたい。」



レオンさんは外出の支度をしました。



「一体何があったの?」



トシ君が聞きました。



「黄金原さんと羽音々さんが

署内からいなくなってしまったらしい。」




レオンさんは車を駐車場から出しました。



全員がそこに乗り込みました。



「じゃあ,急いだほうがいいんじゃないですか。」

「そうだね。青山さんと桃瀬さんもすでに

捜索に向かっているみたい。オイラたちも急ごう。」




レオンさんは車を急発進させました。

彼らの身にいったい何が起きたのでしょうか。