第293話 闇の騎士の正体A

 菊の華シリーズ 最終章




各務原山の中腹にある広場に少年昆虫団と

菊水華のメンバーが集まっていました。



広場の奥手には黄金原氏と羽音々氏が,向かい合うようにリク君,

その後ろにレオンさんと少年昆虫団,残りの菊のメンバーが並んでいました。



黄金原氏は羽音々氏が闇組織JFのスパイである旨の

発言をしたところ,リク君は不敵な笑みを浮かべました。



「闇の騎士の正体・・・。それはアンタだよ!!」



リク君は大声で目の前にいる人物を

指さしました。それは羽音々氏ではなく・・・。



黄金原「なっ!!」



黄金原氏をまっすぐに指さしていました。



黄金原「何を言い出すんだい!?」





「黄金原,いや闇の騎士,観念するんだな。

アンタがスパイだって事はもうわかっているんだ。」




レオンさんもリク君の発言をフォロー

するようにそう言いました。



赤神氏は黄金原氏をずっと睨み付けていました。



黄金原「俺が敵のスパイ?何を根拠にそんなことを言うんだ!」



「根拠ならあるよ。アンタが闇の騎士だという証拠を教えてやる。」



イツキ君やだぬちゃんもリク君

の話を真剣に聞いていました。



「あのピエロが闇の騎士だったとはな・・・。」

「一昨日からずっと引っかかっていることがあったんだ。

それはね,アンタと羽音々さんがJFの精鋭部隊に拉致されたときのことだ。」




みんなは固唾をのんで話を聞いていました。



「あの時,二人の乗っている車の前の車が

急停車して仕方なくブレーキをして,

停車したところを無理矢理,車から引きずり

出され拉致されたと思っていた。」




リク君は話を続けます。



「そして,邪魔が入らないように

拉致部隊とは別の人間がレオンさんと

僕たちが乗っている車を狙撃して妨害した。」




黄金原「そう。まさにその通りだ。何がおかしいんだ?」



彼は額にうっすらと汗をかいていました。



「実はそうじゃなかった。最初から僕たちの車を狙撃できるように

アンタが運転する車は停車位置が決められていたんだ。

前の車が止まればレオンさんの車も止まるしかないからね。」




リク君は自分の推理を続けます。



「その証拠をそこにいる桃瀬さんが見つけてくれたよ。」



桃瀬氏は先ほど現場で見つけた証拠について説明しました。



桃瀬「この写真をみて。」



そう言って,部下の片岡が持っていた黒の鞄の

中から一枚の現場写真を取り出しました。



そこには,道路標識が写っており,

ポールの下の方に黒色の印がついていました。



おそらくラッカーでつけられたものでした。



桃瀬「最初はただのいたずらかなと思ったんだけど,

この黒色の塗料,暗闇で光る蛍光塗料だったんです。」





青山「なるほど,その辺のガキの悪戯じゃあないわな・・・。

ただの落書きならそんな手の込んだ事をやる必要はないからな。」



青山氏はたばこを口にくわえながら,

桃瀬氏の写真をまじまじと見ていました。



「つまり,これは“この場所で止まれ”

という組織からの合図だったんだ。

おそらく羽音々さんには“猫が横切った”とか

言って急ブレーキをかけてごまかしたんだろうね。」




黄金原氏の顔色がだんだんと悪く

なっているように見えました。



だぬちゃんは持っていた懐中電灯を写真に

照らして自分も証拠写真を見てみることにしました。



「確かに,これは決定的ですね・・・。」



黄金原氏はどう弁解するつもりなのでしょうか。








第294話 闇の騎士の正体B

 菊の華シリーズ 最終章




黄金原氏が闇の騎士であるという

証拠を突きつけられました。



「オイラからも彼が闇の騎士だと確信した

"あるやりとり"について説明させてほしい。」




黄金原氏はレオンさんから視線をそらしました。



「JFに拉致された黄金原を助け出したとき,オイラは何気なく

“闇の組織JFが狙っているのは黄金原さんなんだ”と言ってしまったんだ。」


「え,それの何がおかしいの?」



まさらちゃんがレオンさんに聞きました。



「あの時は,オイラもちょっと油断して

いたからだと思うんだけど,あの時点では,

JFが菊の幹部を暗殺しようとしている

なんて事は誰も知らないはずなんだよ。」


「あ,そっか。」



トシ君もようやく理解できたようです。



「そう。それなのに,君はオイラのその

言葉に対して"ああ,そうだな"と言ったんだよ。

まるで最初から闇組織JFが菊の幹部を暗殺

する計画だと知っているかのようにな。」




黄金原「それが,どうした。たまたまお前に話を合わせただけだ!

そんなことよりも,ここに罪を認めている女がいるんだぞ!

これこそが何よりの証拠じゃないか!!違うか!?」



黄金原氏は声を荒げて反論しました。



「羽音々さん,もう全てわかっているんです。

本当のことを話してください。」




リク君は彼女に対しては優しく話しかけました。



「貴方はこの男の事を本当に愛していた。だからこそ,

彼のやっていたことを知ったとき,ショックだったはずです。」




羽音々さんは顔をあげました。



「そして彼のことを庇うべきか悩んだ。

でも,それは正しいことじゃないと思います。好きだからこそ,

彼の罪を白日の下にさらすべきだと思います。」




菊の幹部たちはとても小学二年生が

口にする内容とは思えないと感心していました。



しばらくの沈黙の後,彼女は口を開きました。



羽音々「朝,私は長年の想いを彼に伝えました。

振られたようなものでしたが,悲しくはありませんでした。

もっと彼の力になりたい。役に立ちたいと

思う気持ちが強くなりました。」



告白されたその男は横で静かに聞いていました。



羽音々「数日前に彼のPCに小型の情報記憶媒体が

刺したままになっていました。その時は,

ただ抜き忘れただけだと思い,翌日に

お返ししようとしたんですが・・・。」



しかし,仕事の忙しさや本人たちがJFに襲われるという事件も重なり,

返すタイミングを逃してしまったそうです。



羽音々「そして,赤神さんからの報告があり,万が一と思って,

その記憶媒体の中身を見てしまいました。中は我々,

警察内部の機密情報で絶対にそんな媒体に

入れて保管してはいけない内容ばかりでした。

私は気が動転して自分のデスクの引き出しにしまい込みました。」



「そうか。奴はそれがないことに気づき,慌てて探したんだな。

そうしたら羽音々サンの引き出しから見つかった。」




とイツキ君。





羽音々「はい,そうです・・・。」



そして,彼はそのことを問い詰めるため,

彼女を別室に呼び出したのです。








第295話 闇の騎士の正体C

 菊の華シリーズ 最終章




羽音々氏は偶然,黄金原氏が機密情報を

持ち出そうとしていることに気づいてしまいました。



彼女は気が動転して,それを自分のデスクに隠しました。



彼はそのことに気づき,彼女を問い詰める

ため,別室に呼び出したのです。(第289話参照)



黄金原「実は見つかったらまずいブツが

なくなっていてね。自分の机にはなかった。」



羽音々氏は少し涙ぐんでいました。



黄金原「悪いが君のデスクを探らせてもらったよ。」

羽音々「・・・。」



彼女はうつむいたまま返事をしませんでした。



黄金原「そしたら,これが見つかった。これって,

"菊"の機密情報データが入った媒体だよね。」



彼はポケットからUSBのような小型の

記録媒体を取り出し,彼女の前でちらつかせました。



羽音々「そうです。どうしてこんな

ものを貴方が持っているんですか!?

私は貴方のことが好きでした・・・。

なのにどうして・・・。今でも

信じられません・・・!?」



黄金原「そうか,君だったんだね,

これを勝手に俺の机から持ち出したのは・・・。

がっかりだ・・・。君はもっと優秀な

部下だと思っていたのにな。

まさか,最初から俺の正体に気づいていたのか。

今朝の告白は何のつもりだったんだ・・・。

俺を油断させるためか!?」



黄金原は彼女に言い寄りました。



羽音々「あっあれは・・・。本当の自分の気持ちです。」



そして,彼女は部屋を飛び出したのでした。



羽音々「なんとなくこの山まで逃げてきましたが,

結局この場所で追いつかれてしまいました。」



まさらちゃんは彼女が弱々しく

話す姿を見ていられませんでした。



「そして,あんたは彼女にこう言ったんじゃないのか?

俺のことが好きならすべての罪をかぶってくれって。」


「最低なヤローだな。」



すでに全員が,黄金原氏が闇の騎士

であると確信を持っていました。



桃瀬「残念よ・・・。あなたは優秀な仲間だと思っていた。」

青山「しかし,まさに道化のように裏では

闇組織に俺たちの情報を流していたわけか。」



二人の幹部も裏切られてしまった気持ちを

今にもぶつけたい衝動に駆られていました。



黄金原「くははははっ!?」



急に彼が笑い出しました。



黄金原「後ちょっとだったのになー・・・。」



全員が身構えました。



黄金原「そうだよ。闇の騎士(ダークナイト)は僕です。」





リク君は背中の捕虫網に手をかけました。



黄金原「しかし,まさかこんな子供に見破られることになるとは。

組織の幹部の人たちが"油断するな"といっていた理由がわかったよ。」



彼が一歩前に出ました。



黄金原「そして,君には本当にがっかり

させられた。残念な部下だったよ。」



次の瞬間,彼は隠し持っていた大きなナイフ,

ダガーで音羽々氏の背中を一突きしました。



音羽々「がはっ・・・!?」



ナイフを引き抜くと背中から大量の

血が飛び散り,彼女はそのまま倒れこみました。



「きゃぁぁぁぁ!?」

まさらちゃんはショックで意識を失いそうになりました。

倒れそうになる彼女をレオンさんが支えました。



「なっ・・・。なんてことを・・・。」

黄金原「朝は笑いをこらえるのに必死だったよ。

急に俺のことが好きだって言ってくるんだからさ。

何を考えているんだかねぇ・・・。でも,それを

利用できないかずっと考えていた。うまくいくと思ったんだが,

土壇場ですべてを台無しにしてくれた。死んで償うんだね。」



赤神「貴様!?なんてことをしてくれたんだ!?」



彼の残虐な振る舞いにリク君が・・・。








第296話 激高のファーヴル

 菊の華シリーズ 最終章




黄金原氏は隠し持っていたナイフで

羽音々氏の背中を一突きしました。



青山「今,救急車を呼んだ。山のふもとまで運ぶ。」



青山氏と百瀬氏はそれぞれ自分の部下に

指示を出して慎重に羽音々氏を運ばせました。



黄金原「無駄だよ!どうせすぐに死ぬ!」



「死ぬのはお前だ。」



気づくとリク君が黄金原氏の間合いに入っていました。



―大地一刀流 奥義 愛・地球博―





強烈な居合の一撃が黄金原氏を襲います。



ズバァァァァン!!!!!



黄金原「ゴボァァァァ!!!???」



打ちのめされた彼の体が上空に舞った時,



―大地一刀流 墜なる一撃(ファイナルショット)―





大きく振りかぶった捕虫網を上から思いっきり叩き込みます。



黄金原「ゲボァァァァ!!!???」



その一撃は脳天を直撃し,そのまま

地面にたたきつけられました。



彼は胃の内容物を全て吐きだし,転げ回り,

苦しみ,のたうちまわっています。



それは時間にしてわずか5秒足らずのことでした。



そこにいたレオンさん以外の菊の幹部は

今起きたことが一瞬わかっていませんでした。



赤神「何が起きた・・・?」



赤神さんもリク君の実力を

その目で見るのは初めてでした。



黄金原「あ・・・うっ・・・。」



よろめいて立ち上がる黄金原・・・。



―大地一刀流 神速の打突―





超速で伸びる捕虫網の先が黄金原を襲います。



彼の眉間にまるで一流スナイパーが放つ銃弾が

命中したかのような衝撃が走りました。



黄金原「グハッ・・・。」



再び彼はその場に倒れこみます。



黄金原はやっとの思いで立ち上がり,

持っていたダガーナイフを振りかざします。



「そのナイフでお前は・・・。」



リク君が力強く捕虫網を握りしめます。



「自分のことを大切に想って

くれている人を刺したのかっ!!」




黄金原のナイフがリク君の胸に届く

より先に,捕虫網が突き刺さります。



彼は強烈な勢いで背後の木まで

吹き飛んでいきました。



黄金原「あ・・・ううっ・・・。」



すでに黄金原は虫の息でした。



赤神「圧倒的だ・・・。」



と感想を漏らすと,



青山「俺は夢でも見ているのか・・・。」

桃瀬「黄金原は弱くない。それは私たちが

一番よく知っている・・・。

でも今起きていることは何・・・?」



仁王立ちで立ちつくす少年とすでに半死の状態の男が

必死にその場から逃げ出そうとしていました。



黄金原「無理だ・・・。こんな話は・・・聞いて・・・

いないぞ・・・。なんだ・・・あのガキは・・・。」



「平成のファーヴルだよ。時に俺は修羅にさえ・・・なる。」



地面にはいつく張りながら,逃げようとする

彼の背後から強烈な一撃をお見舞いしました。



―大地一刀流 闇の夜月(ムーンライトナイト)―



ボキボキボキ・・・・!!



どうやら背中のあらゆる骨が折れたようです。



リク君の戦闘能力は菊のスパイをも

圧倒するレベルだったのです。