第341話 プロローグ  

冥界の悪魔シリーズ 第2章




闇組織JFは警察公安"菊水華"の幹部,

小早川レオンを暗殺する計画を立てていました。



彼らの拠点である名古屋駅のツインタワー,

通称"バベル"にてその作戦の最終確認が行われています。



時刻は20時を過ぎていました。



タワー最上階の会議室に組織の幹部である

山本,源田,今村,アヤが集結していました。



彼らは角が丸くなった細長い

机を囲むように座っています。



豪勢な椅子に深々と腰掛け,打ち合わせをしています。



山本「いよいよ,明日だ。小早川暗殺作戦を実行する。」

アヤ「楽しみ。」





<ユニット藪蛇R “魔性のアヤ”>



アヤはとても上機嫌でした。



源田「ぬかるなよ。」



源田は山本にそう言いました。



山本「いくつか,確認をしておきたい。

まず,源田サンの“森熊”から3部隊ほど借りる。」

源田「ああ。それと俺の直属の

部下も連れて行け。必ず役に立つ。」



直属の部下とは"冥界の悪魔(キラー)"のことでした。



山本「それから,"大西(グレイ)"だったか。

奴の動きが重要だ。いいな,今村?」



山本は今村へ視線を向けました。



今村「ふぉっふぉっ。わかっていますよ。結局,山犬と

海猫が手を組んで作戦を行うことになりましたねぇ。」





<ユニット海猫R “仏の今村”>



山本「勘違いするな。必要なのは

大西だけだ。アンタの指示は必要ない。」




大西というのはグレイのことでした。



山本「もう一度聞くが,なぜ,また手を貸す気になった?前回の会議では

山犬だけで作戦を行おうとしたら『抜けがけは許さない』と言っていよな。」

今村「すぐに撤回して『手を引く』と言ったじゃないですか。」(第286話参照)







彼は相変わらずニコニコと笑い,つかみどころがありませんでした。



山本「それが気になった。あの後,思い返してみればアヤが“平成の

ファーヴル”の名前を出した直後に撤回した。お前,あのガキ共と何か

あるのか?まさかガキを殺るのを躊躇しているんじゃないだろうな。」



今村「何を言っているのか私にはさーっぱりわかりませんねぇ・・・。

憶測で物を言うのは止めていただきたいですねぇ・・・。ふぉっふぉっ。」



山本は今村が何か企んでいると睨んで

いましたがそれ以上は追及しませんでした。



今村「それよりも大西君ですが,彼も元々,秘密主義の人間であまり

連絡をしてこないんですよねぇ。はっきりわかっていることは,彼は

ずっと小早川氏と例の子供たちの周辺に潜み,接触していたってことです。」

アヤ「ホントなんなの!?諜報活動を任されているアタシが源田

に頼まれて直々に連絡したのに全く音沙汰なしだったんだから!」(第318話参照)



山本は椅子の背もたれに身を寄せながら腕を組んだ状態で,



山本「まぁ落ち着け。大西が奴らと接触していると

聞いたから作戦に急きょ組み込んだ。奴らとつながりが

あるんなら利用しない手はないからな。」



と言いました。



源田「しかし,なぜ,詳細な居場所を報告してこない?」

今村「まだ正確な居場所はわからないみたいです。

しかるべき時が来たらきちんと報告するそうです。」



グレイは影(シャドー)と同じく,リク君やレオンさんと接触

しながら,居場所について詳細な報告はしていないようでした。



山本「まぁいい。奴に"あの場所"まで誘い出してもらう。

報告によると奴らは明日,岐阜のキャンプへ向かうらしいからな。

“あの場所”ほど今回の作戦にふさわしいところはない。」



源田「そうだな。今回の作戦は今後の

“あの壮大な計画”への第一歩だ。」



彼のその表情から今回の作戦の重大さが読みとれました。



また,“あの壮大な計画”とは一体・・・。



山本「もう一つ確認しておくが,今回の

作戦の指揮はうちの南雲に執らせる。」




源田とアヤは少し不快な顔をしました。



源田「どういうつもりだ?

失敗は許されない作戦だぞ。」



源田もそれには賛成しかねているようでした。



山本「責任は俺が取る。あいつには今のうちに経験を積ませて

おきたい。いずれ今回の経験が役に立つ時が来るはずだ。」



山本は半ば強引に了承を取り付けました。



そのあと,いくつか細かい事案を

打ち合わせ会議は終了したようです。



その直後,今村は携帯電話を取り出し,

大西(グレイ)に連絡を取りました。



彼はすぐに電話に出ました。



今村「大西君(グレイ)ですか?明日の

作戦について確認しておきますね。」



グレイ「ええ。お願いします。」



電話の相手は・・・。



・・・。



・・・。



なんと,カブクワキングの

バイトであった灰庭健人氏でした。





<ユニット海猫準幹部 大西(グレイ)>



やはり,リク君たちの予想通り彼こそが

闇組織JFの準幹部“グレイ”だったのです。








第342話 キャンプへ前編  

冥界の悪魔シリーズ 第2章




少年昆虫団はレオンさん,灰庭氏と一緒に岐阜の

板取川にあるキャンプ場へ行くことになっていました。



一緒に行動する灰庭氏は

闇組織JFの一員でした。



彼はリク君たちの動向を探りつつ,今回のレオンさん暗殺計画を

実行に移すために一緒についていくことにしたのです。



待ち合わせ場所はカブクワキングの

すぐ裏にあるレオンさんのアパートでした。



すでに少年昆虫団は全員がそろって

おり,あとは灰庭氏だけでした。



お昼には向こうでバーベキューをする予定

なので出発は朝の8時となっていました。



すでに7時50分を過ぎていました。



皆は車の前で灰庭氏を待ち

ながら雑談をしていました。



「まだかなぁ。灰庭さん・・・。」



まさらちゃんが腕時計を見ながら

少し不安そうにしていました。



「まさらちゃん,わかっているとは思います

けど,あの人はJFのスパイかもしれないんです

からね。気を許さないようにしてくださいよ。」




だぬちゃんが隣で警告しました。



「前も言ったけど,あたしは

信じていないからね!」




まさらちゃんはご立腹でした。



「でもさぁ,JFのスパイかもしれ

ない人をなんでキャンプへ誘ったのさ?」




トシ君がリク君に聞きました。



「え?だって行きたいっていうからさ。」



リク君の答えはあまりにも拍子抜けでした。



「見え透いた嘘はよせ。キャンプへ一緒に連れていき,

怪しい行動をしないか見極めようとしているんじゃないのか?

山奥なら奴らも派手な動きはできないと考えているんだろ。」




イツキ君がリク君に代わって灰庭さんを誘った根拠を説明しました。

しかし,彼らにとって今回のキャンプは格好の舞台になるようです。



レオンさんは車に荷詰めしながら

皆の雑談を聞いていました。



5分ほどたって灰庭氏がやってきました。



灰庭「ごめん,ごめん。用意に思ったより時間が

かかってしまって。今日はよろしくお願いします。」



「なんか眠そうだね?」







まさらちゃんは灰庭氏の眼の下にクマが

できているのを見逃しませんでした。



灰庭「ちょっと,夜通し運転したり,

買い出しに行ったりしていたからね。」



そういうと,買い込んだ大量の花火を見せてくれました。



「なんか,スモーク花火が多いな。好きなのか・・・。」



灰庭氏は,屈託のない笑顔で,



灰庭「盛り上がると思ってさ!」



と言いました。



「そこに置いてある段ボールの中身はなんですか?」

「ああ,僻地(へきち)へ行く時はいつも持ち歩いている物なんだ!」



みんなは少し気になりましたが深くは考えませんでした。

全ての荷物が積み込み終わりました。



みんなはレオンさんが運転する車に乗り込みました。



灰庭「いい車ですね。広くて全員が乗っても

スペースに余裕があるくらい快適です。」



レオンさんはこの日のためにレンタカーを借りてきたようです。



普段乗っている車では全員が入らなかったみたいでした。



「まぁね。いい車はみんな日本製ですから。」

「でもこの車,外国製じゃないですか・・・。

ひょっとしてレオンさんはあまり車には詳しくないんですか・・・。」




だぬちゃんの指摘は図星だったようで

レオンさんは苦笑いするしかありませんでした。



「この車はドイツ製メルセデスベンキ社の

Cクラシコじゃないですか。よくこんな車,借りられましたね。」


「あ,うん・・・。(経費で無理やり

落としたなんて言えんな・・・。)」




レオンさんは車を発進させて国道41号線に出ました。



「そういえばJFの山本たちが

乗っている車も外車でしたね。」




後部座席に座っただぬちゃんがそう言いかけると,



「おい!」



イツキ君がたしなめました。



灰庭さんにあまり聞かれたくなかったのです。



灰庭「なんだい,そのJFって・・・?

知り合いに外車に乗っている人がいるのかい?」



灰庭さんが聞いてきまいたが,



「うん,そうなんだ。だぬちゃんの親せきで

JFって会社に勤めている人が外車なんだって!」




慌ててリク君が適当な話をでっちあげ,その場をしのぎました。



しかしグレイである灰庭氏には

全て把握している内容でした。



だぬちゃんは軽はずみな発言を

みんなから攻められました。



高速道路の入り口まで来ました。

ETCを使い,そのまま順調に進んでいきます。



岐阜へ入り,外の景色がだんだんと

街から山や畑に変わっていきます。





昆虫団は談笑したり,目を閉じて体を休めたり,

各自で好きなことをやっていましたが,

レオンさんはやたらとミラーを気にしていました。



後ろの車が気になるようです。



果たしてそれはJFの手先なのでしょうか・・・?








第343話 キャンプへ後編  

冥界の悪魔シリーズ 第2章




途中で1度だけパーキングエリアで休息を10分ほど

取り,岐阜県の板取川キャンプ場近くまでやってきました。



山を切り開いて作られた国道を順調に走らせていると,

灰庭氏が何かに気付いたようで大声を出しました。



灰庭「危ない!」



レオンさんは急ブレーキを踏みました。



その直後,目の前に大量の岩が

大きなを音を立てて落ちてきました。



落石のようです。全員けがはなく無事でしたが,

いきなりの出来事に戸惑っていました。



「怖い・・・。灰庭さんが気付いて

くれなかったら全員潰されていたかも・・・。」


「危なかったなぁ・・・。」



レオンさんは車の外に出て様子を確かめに行きました。

リク君,イツキ君も外に出てレオンさんについて行きました。





「駄目だな・・・。道が完全に

ふさがれている。これは復旧に時間がかかるぞ。」


「そうだな・・・。どうする・・・?」



イツキ君が聞きました。



「火薬のにおいがする・・・。」



リク君がかすかに漂う異変に気付いたようです。



「確かに・・・。もしかしてこの落石は

人為的に起こされたものなのか・・・?」


「おいおい。もしかして,レオンさんが

狙われているんじゃないのか!?」




イツキ君は動揺しています。



「とりあえず車に戻ろう。」



三人は車の中に戻りました。



「これじゃあ,キャンプ場へ

いけませんよね。どうしましょう。」




灰庭氏は「待っていました」

と言わんばかりに代案を提案しました。



実は,彼の仕事の一つが闇組織JFの

運営するキャンプ場へ誘導することでした。



灰庭「それなら,ここから少し戻って別の道から僕の知っている

キャンプ場へ行ってみませんか?今なら予約なしで入れるはずです。」



「うん,いいかも!みんな,そうしようよ!」



まさらちゃんが賛成しました。



「そうだね。そうしようか。このまま

ここにいても通れそうもないしね。」


「・・・。」



レオンさんは,落石の件を通報し,道を引き返すことにしました。



灰庭氏の案内でジャファリゾートが経営するキャンプ場へ到着しました。



周囲は山にかまれ,コテージがいくつか点在して

いましたが,彼ら以外に利用客はいませんでした。



作戦のためにあらかじめ他の客を入れないようにしていたようです。

車を砂利で敷き詰められた駐車場に止め,荷物を下ろしました。



「いつの間にか,後ろをつけていた

車がいなくなっているな・・・。」




レオンさんが周囲を見渡すと例の

気配が消えていることに気付きました。



みんなは協力して荷物をコテージへ運び込みました。



灰庭「(全ては作戦通りか・・・。)」



灰庭氏は彼らの様子をじっと見ていました。



「じゃあ,お昼ごはんを

作るための準備をしようか。」




コテージのすぐ目の前にかまどとバーベキューができるテーブルが

設置されていたのでそれを利用して昼食を作ることにしました。



「よーしっ!張り切って作るぞ!

お昼をしっかり食べて,自然を満喫したら昆虫採集へ行こう!」


「いやいや,こんな山奥はまずいでしょ!

どんな虫がいるかわからない!」




トシ君は必死に拒否しましたが,リク君によって却下されました。








第344話 各々タイム  

冥界の悪魔シリーズ 第2章




お昼は大自然の中でバーベキューを行い,

おいしいお肉をみんなでたくさん食べました。



飛騨牛は灰庭氏の差し入れでした。



コテージの中は2階建てになっていて,1階でリク君や

レオンさん達の男性陣,2階をまさらちゃんの寝室にしました。



荷物を整理して,この後,何をして遊ぶか決めることにしました。



話し合いの結果,トシ君はコテージの外に設置された

ハンモックで昼寝,だぬちゃんとまさらちゃんと

灰庭さんは近くの小川で水遊び,リク君とイツキ君と

レオンさんはコテージ奥に続く森の中を散歩することにしました。



「ねぇねぇ,早く水遊びしようよっ!!」





まさらちゃんは小川に足を入れ,二人を呼びました。





「そんなに慌てなくても川は逃げていきませんよ。」



だぬちゃんと灰庭氏も少し冷たい

小川へとはいって行きました。



リク君はすでに森の中へ入ってどんどん

進み,すでに姿は見えませんでした。



「レオンさん,その箱,何が入っているんだ?

というか,そんなものを持ってきてどうするつもりだ?」




レオンさんは両手で段ボールの箱を

大事そうに持ちながら歩いていました。



「ふふふっ。何が入っているかは,

使う機会があれば教えてあげるよ。」




レオンさんはもったいぶって中身に

ついて教えてくれませんでした。



「まぁいいや・・・。ここって結構入り

組んでいる・・・。というか深い森だな。」


「そうだね。迷ったら危ないね。あとで他の

みんなにも注意するように言っておこう。」




三人はどんどん奥へ進んでいきます。



「それで,何を話したいんだ?」



イツキ君が突然リク君に聞きました。



「何のこと?」

「とぼけるな。何か,大事な話があったから,

灰庭さんにあいつらを預けてから森に入ったんだろ。」




イツキ君には何もかもお見通しだったようです。



「バレたか・・・。重要な話っていうか闇の騎士(ダークナイト)の

ことで気になっていたことがあってさ。」


「なんだろう?」



レオンさんも気になるようです。



「あの日,羽音々さんがもし黄金原が闇の騎士だって

気付かなかったらあいつはどういう作戦を実行するつもりだったんだろう。」


「確かに。あの出来事で彼の作戦は大きく狂ってしまい,

挙句の果てに冥界の悪魔(キラー)に始末されてしまった。」




三人は大きなクヌギの木の下で足を止めました。



「そもそも黄金原が自作自演で冥界の悪魔(キラー)に

狙われたり,精鋭部隊に拉致されたりしたのは疑いの目を自分から

そらすためだよな。その上で菊の幹部暗殺作戦を実行しようとしたのか・・・?」


「おそらくそうだよね。そして,その幹部って

いうのがレオンさんの可能性が高い。」




リク君がレオンさんの顔をちらっと見て言いました。



「ああ,オイラの後をつけ狙っている気配を

感じるからね。そいつが冥界の悪魔(キラー)なんじゃないかな。」


「結局あの男はこちらの指令系統をかく乱

させるためのピエロだったんだろうね。暗殺の本命は

冥界の悪魔(キラー)。そいつがレオンさんの命を全力で狙ってくる・・・。」




リク君の推理は半分当たって,半分外れていました。



今回の菊幹部暗殺計画に冥界の悪魔(キラー)も

参加することになっていましたが,

主な作戦実行部隊は山犬が行うことになっていました。



リク君はクヌギの木に特製の蜜を塗っておくことにしました。

合わせて目印に水性の蛍光塗料を塗っておきました。



レオンさんは段ボールをそのクヌギの木の幹に置きました。



もう少し奥へ進み,一通りカブクワが集まって

きそうな木をチェックしてコテージへ戻っていきました。



レオンさんだけはさらに奥へ行ってみたいと言うことで

リク君たちだけ先に戻り,彼は後から戻ってきました。



少しずつ日が落ちてきました。



辺りの木でヒグラシが物静かに鳴き続けています。



カナカナカナカナ・・・・・。



リク君達が夕食の準備をしている間にも

彼らの魔の手が近づいているのでした。