第361話 謎解きはキッチンクマーの中で 後編  

冥界の悪魔シリーズ 最終章




キッチンクマーという学食で青山と

いう読書会所属の男性が苦しみ出して倒れました。



救急車を呼んだのは一緒に席にいた

摩耶野というフリーの記者でした。



彼は事件だと騒ぎたてましたが,レオンさんの

見立てにより事故だと判明しました。



摩耶野「根拠を聞きたいね。」



「この人は苦しそうに自分の首を

抑えているだろう。これはチョークサインといって

気道異物が起きた時にとっさに取る行動なんだ。」




確かに青山氏にはチョークサインが見られました。



そして,まもなく救急隊員が到着し,

彼は病院へと運ばれていったのです。



読書会のメンバーは全員,

病院へつきそって行ったようです。



「あなたはどうして大学に?何かの取材ですか?」



だぬちゃんが彼に聞くと,



摩耶野「ああ,さっきまで彼らと一緒に食事をしながら

取材をさせてもらっていたんだ。大学生に人気の本についてね。」



彼は,持っていた取材手帳を手に取って見せてくれました。



「それで,ご飯を食べていたら

急にあの人が苦しんで倒れたんですね。」




と,まさらちゃん。



摩耶野「いつもの癖でてっきり事件だと勘違い。

恥ずかしい場面をお見せしてしまった。」



姫色「気にしなくていいんじゃない。ミスは誰にだって

あるし。くぅなんて1日何回ミスっていることやら」



姫色さんが茶かすと,



久遠「なにを〜!」



プンスカと怒り始めました。



かおる「でも,殺人未遂事件とかじゃなくて良かったですよね。

ホントに人が目の前で死んじゃったらどうしようかと思いました。」



かおるさんは持っていたお盆を胸に当て,少しおびえていました。



「大丈夫ですよ。人の死なんて滅多に

見られるもんじゃありません。暗殺者でもない限り・・・ね。」




その言葉を聞いて,彼女は少し落ち着きを

取り戻したように見えました。







レオンさんの発言に,



摩耶野「君,なかなか面白いこと言うね!」



彼が食いつきました。



「(おいおい一般人相手に何を言っているんだ・・・。

昨日まで"冥界の悪魔"達の暗殺から逃れていたから

そう言いたくなる気持ちもわからんではないが・・・。)」




ちなみにさっきから一言もしゃべっていないトシ君は

すでに自分の席に戻りずっと昼食に夢中でした。



記者はレオンさんに名刺を渡しました。



摩耶野「君たちに興味がわいたよ。また別の機会に

ぜひ,取材させていただきたい。」



「いや,それはちょっと・・・。」



レオンさんが断ろうとしましたが,すでに

彼はその場から去って行ってしまいました。



「なんだったんだろ,あの人・・・。」



摩耶野氏はリク君から離れたところ

まで来ると,イヤコムの電源を入れました。



摩耶野「こちら,摩耶野。首尾よく目標に

接触しました。引き続き監視にあたります。」



どうやらフリーの記者というのは,仮の姿で

摩耶野氏にはもう一つの顔があるようです。



イヤコムの相手とは・・・。

彼のターゲットは誰なのか・・・。



そしてこの摩耶野という人物の正体はいかに・・・。








第362話 灰色の疑念  

冥界の悪魔シリーズ 最終章




レオンさんは久遠さんに徹夜で仕上げたレポートのデータを渡し,

姫色さんと紫織さんに次の授業を欠席することを伝えて別れました。



「授業サボったらダメなんだよ。」



「はは,そうだね・・・。まぁ一応単位は

足りているからさ。じゃなくて,自分は仕事で来ているの!」




レオンさんが弁解しました。



歩いて話をしていたらいつの間にか

校内にある図書館の前まで来ました。



図書館から一人の青年が出てきました。



「あっ!」



だぬちゃんが驚きました。

出てきた青年とは灰庭氏だったのです。



「グレイ!?」



イツキ君が警戒しました。



「まだ決まったわけじゃないでしょ!」」



まさらちゃんは灰庭氏をかばいましたが,



彼は闇組織JFの一員,グレイだったのです。

しかし,リク君たちには確証がありませんでした。



「それにしても今日は色々な人と会いますね。さすが大学ってことですか。」



灰庭「あれ?みんな!それに翠川さん。昨日は大変でしたね。」





彼は昨日,リク君たちと共に行動して,

あの暗殺計画に一枚かんでいたのです。



「いえいえ。大学内で会うのって珍しいですね。」



灰庭「そうですね。昨日のことも気にはなって

いるんですが,またゆっくりとお話できたらと思います。」



灰庭さんは少し焦っていました。



灰庭「講義に遅れそうなんで失礼します。午後はずっと講義なので・・・。」



小走りに少し奥にある本館へと向かっていきました。

彼は教授の手伝いで学生に講義をしているようです。



「ねぇ?彼って本当に悪い人なのかな?」



イツキ君がトシ君に対して少しキレ気味に,



「当たり前だろ!!レオンさんの

お父さんを殺した連中の仲間だぞ!!」


「まぁまぁ,落ち着いてよ。トシ君も悪気が

あって言ったわけじゃないだろうし。」




みんなは図書館の前にある

ベンチに並んで座りました。



「なんか考えないといけない

ことが沢山増えてきたよねぇ・・・。」




「そうかな?」



トシ君が首をひねると,



「まぁ,君は最初から何も考えていないですから。」



と,一言。



「何をー!!」



イツキ君とリク君が近くの自販機で

人数分のジュースやお茶を買ってきました。



ベンチは木陰になっているとはいえ,時刻は午後13時30分を

過ぎたところで,気温は35度を超えています。



みんなは汗をかきながらジュースを

飲みほし,のどの渇きを満たしました。



一息ついたところで,レオンさんが,



「まさらちゃんの言うとおり。ここで

情報を整理しておいた方がいいかもね。」


「そのために,俺たちをこんな所へ呼んだのか?」



イツキ君の読みに,



「まぁね。ここなら人が多いし,冥界の悪魔の目からも

逃れた状態で皆と話ができると思ってね。」


「一つ目の懸念事項はまさにそれだよね。

冥界の悪魔(キラー)がレオンさんを狙っている。」




と言うリク君の話を聞いて,



「今もレオンさんをつけ狙っている気配を感じるの?」



まさらちゃんが心配しました。



「いや,今は何も感じない。周囲にオイラを

探っている人物はいないと思う・・・。」




それを聞いて少年昆虫団は少しホッとしました。



「レオンさんは昨日,キラーと

戦ったんだろ?何か気付くことはなかったの?」




イツキ君の質問にレオンさんの答えは・・・。








第363話 冥界の悪魔はすぐそこに  

冥界の悪魔シリーズ 最終章




昨日の冥界の悪魔との対決を振り返り,



「とにかく,隙がなかった。まさに暗殺のプロだと思う。

かなり距離を取って対峙していたからほとんど姿は見ていないんだ。」


「ボクも声は少し聞こえてきたんだけど,

遠かったし,低くこもった声で,よくわからなかった。」




二人を記憶をたどりながら昨日の

死闘について振り返りました。



「戦ったら勝てそうだったのか?」



リク君は,



「わからない。山犬の南雲ですら強敵だった。」



と,思い出すようにそう答えました。



みんなはもう一度最近起きたことを振り返り,

情報をまとめることにしました。



暑い日差しの照りつける中,話を続けます。



「二つ目の懸念事項は,灰庭さんが

JFのグレイじゃないかってことだよな。」




みんなは頷きました。



ただ,レオンさんだけは

訳ありな顔をしているようでした。



「うーん・・・。さっきも言った

けど悪い人には見えないんだよね。」


「賛成―!」



まさらちゃんとトシ君の意見が合いました。



「はは・・・。」

「それは灰庭さんがまさら

ちゃんの好きなイケメンだからでしょ。」




この発言がまさらちゃんの逆鱗にふれたようです。



「なにそれー!ちがうもん!」



まさらちゃんはポカポカと

だぬちゃんの背中を叩いて否定しました。



一つのベンチにまさらちゃんを真ん中に

左側にトシ君,右側にだぬちゃんが座っていました。



もう一つのベンチにイツキ君,

リク君,レオンさんの順に座っていました。



「実際,暗殺されかかった時,途中で

いなくなったのは怪しすぎる。絶対に何かあるぞ。」




イツキ君が鋭い指摘をしました。



リク君は隣に座っていたレオンさんと目が合いました。



「何か思いついたことがあるのかい?」

「いや,特には・・・。レオンさんこそあの人と同じ

大学に通っているわけだし,何か気付いたことがないのかなって?」




レオンさんはジュースを飲み干すとすぐ隣に

設置されていたごみ箱に投げ入れました。



「むしろ,あの人がグレイかもしれないのに,

あまり突っ込んで調べようとしていないんじゃない?」


「そっそうかな・・・?」



レオンさんのその反応には

何か含みがあるような気がしました。



「でも,今は灰庭さんよりやっぱり

“冥界の悪魔”から身を護る方が先じゃないですかね。」




だぬちゃんがまっとうなことを言う

ものだからトシ君が少しやっかんでいました。



レオンさんはもう1本冷たいお茶を買ってきました。



彼が戻ると,先ほどの話題に戻っていました。



「冥界の悪魔はすぐ近くにいる。これは確実だろう。

その対策は菊の重要案件としてこの後,対策するつもりだから心配ないよ。」




レオンさんはできるだけ皆を安心させようとしました。



「あと心配なことは・・・。」

「次の暗殺計画がいつ実行されるかってことだな。」



昨日の計画は山犬の南雲が指揮官として

作戦を実行しましたが,失敗に終わりました。



おそらく次の暗殺計画がすでに

立案されていると警戒をする必要がありました。



「今日かもしれないし明日かも,1ヶ月後

かもしれない。確実なことはわからないね。」


「じゃあさ,レオンさんの協力者って

人に聞いたらどうなのかな?」




まさらちゃんはレオンさんには闇組織JFに

潜入している協力者がいることを思い出したのです。



レオンさんはまさらちゃんの提案を聞き・・・。








第364話 小東との接触  

冥界の悪魔シリーズ 最終章




レオンさんには闇組織JFに潜入

している協力者がいるようです。



その人物は小東という名前でした。



小東は警察関係者ではなく,あくまでレオンさんの個人的な

協力者のため,菊のメンバーもその存在を知りませんでした。



そのため,菊に潜入していた黄金原氏から

組織にそのことが漏れることもありませんでした。



少年昆虫団は謎に包まれたその人物に

ついて詳しく聞こうとしました。



「小東か・・・。よし,連絡を取ってみよう。」



レオンさんはまさらちゃんの

提案を受け入れました。



「レオンさんの個人的な知り合いみたいだけど,

どんな人なの?詳しく教えてもらってなかったよね。」




リク君が聞きました。



少し間をおいて,



「かなり暑くなってきたね。空いている教室に移動しよう。」



レオンさんは図書館ではなく,東館にある

空き教室を探し,そこに皆を招き入れました。



廊下にはたくさんの学生がいました。



どうやら午後一つ目の講義が終わったようです。



次の講義に向けて多くの

学生が教室の移動をしています。



「なんか,見ているとみんな大変そう

だけど,やっぱり大学生っていいよね!憧れる!」




まさらちゃんは楽しそうに会話を

している学生を見てそう呟きました。



レオンさんはいつも使っている

携帯とは別の携帯を取り出しました。



それは一昔前の二つ折りになった

とても古臭いタイプのものでした。



「以前,レオンさんの家で見た機種と違うね。」

「あれは,菊のメンバーとやりとりすものだからね。」



レオンさんが番号を打ち込み,

メッセージを書き込み,送信しました。



「これでその小東って人と連絡が取れるのか?」

「うーん,すぐに返事が

来るかどうかはわからないね・・・。」



レオンさんは携帯電話の画面を見つめていました。



リク君がふと廊下を見てみるとすでに

次の講義が始まったのか,人の出入りがなくなっていました。



「どうやら取り込み中みたいだね。

連絡が来るまで待つしかない。」



するとレオンさんのポケットから振動がしました。



どうやらもう一つの

携帯電話に着信が入ったようです。



「こっちは,菊の赤神さんからだ。何だろう・・・。」



レオンさんはみんなにここで待っていて

ほしいと伝え,その場を離れていきました。



「なんか忙しそうだな。」

「あ,あれ?灰庭さんだ。」



まさらちゃんが指差す方に

灰庭さんが歩いていました。





「あれ?午後はずっと講義をするって

言っていませんでしたっけ?」


「さぼったんじゃないのー。」



トシ君が鼻をほじりながらそう言うと,



「トシ君じゃあるまいし・・・。でも教授のお手伝いなら

抜け出しても問題にはならないのかもしれませんね。」



とだぬちゃんがトシ君を馬鹿に

しながら自分の見解を述べました。



「よし,後をつけてみよう。」

「いいの?レオンさんを待っていなくて。」



リク君もイツキ君の意見に賛成のようです。



「大丈夫だろ。あとでイヤコムで連絡入れておけばさ。」



みんなは灰庭さんの後をつけることにしたようです。