第365話 グレイ 前編  

冥界の悪魔シリーズ 最終章




少年昆虫団は灰庭さんに気付かれないように

距離を取りながら後をつけることにしました。



まず,リク君とイツキ君が彼を見失わないようにし,

さらにその後ろから3人が追いかけるようにしました。



「大学から出るつもりはないみたいだね。」

「ああ,ただ単にやっぱり

授業をさぼって一休みするだけか?」



灰庭さんは大学の入り口から

一番遠い棟へ入って行きました。



誰も使っていない教室を見つけ,中に入って行きました。



リク君たちは外からそっと様子を伺います。



灰庭さんはポケットからレオンさんが持っているような

古いタイプの折りたたみ式携帯電話を取り出しました。



そしてどこかへ連絡をするようです。



「え,何々?どうなっているの?」



まさらちゃんは体を起こして教室の中を覗こう

としましたが,イツキ君に止められました。



「じっとしてろ。気づかれる!」



灰庭「もしもし。こちらグレイ。定期連絡を入れます。」



灰庭氏はどうやら闇組織JFへ

連絡をしているようです。



「やはりっ・・・!」



少年昆虫団は驚きと戸惑いを隠せませんでした。



「そんなっ・・・。」



ついに少年昆虫団は灰庭氏が

グレイだと気づいてしまったのです。



「リク君の推理通りでしたね・・・。」

「リク君,どうするの・・・?」



トシ君が後ろから話しかけました。



「もう少し様子を見よう。」



灰庭「ええ・・・。そうなんです・・・。

僕がグレイだと気づかれました。」



その会話を聞き,さらに驚きました。



「まずいっ。尾行が完全にばれてた!」



思わず大声を出してしました。



灰庭「入っておいでよ。少年昆虫団のみんな。」



灰庭さんの視線は完全に

こちらを向いていました。



勢いよくドアを開けたのはリク君でした。



「尾行には自信があるほうだったんだけどな。」



リク君はすでに背中の捕網虫

“天照”を左手に持っていました。



今日は“月読”を持ってきていなかったのです。



灰庭「尾行に自信のある小学生なんて

日本中探しても君だけだろうね。」



「そんな・・・。そんな・・・。あの灰庭さんが

悪いやつらの仲間だったなんて・・・。」



まさらちゃんは廊下に

座り込んで泣いてしまいました。



それをトシ君が慰めていました。



「尾行に気づいていながらこんな人気のないところへ

連れてきたってことはここでボクたちを始末するつもりだったんだね。」



灰庭「ふふふ。」



不敵な笑みを浮かべています。



「だけど,それは失敗だよ。なぜなら灰庭さん・・・。

いや,グレイはここでオレが倒す!イツキ君,レオンさんに連絡を!」


「さっきからやっているんだが,応答がないんだよ。」



どうやらレオンさんと連絡がつながらないようです。



しかし,誰もいないとはいえ,教室には

たくさんの机といすが並んでいます。



戦うには邪魔が多い場所です。



灰庭「こんなところで戦うつもりかい?どうやって?」



あくまで余裕の態度を変えません。



「こうやるんだよ!」



リク君は一足飛びに灰庭さんとの間合いを詰めました。



−大空一刀流 闇夜の月(ムーンナイトウォーク)−





まるで三日月のような斬撃が

灰庭さんの体を切り裂きます。



ザクッ!!!



しかし,斬れたのは机だけでした。



灰庭「なるほど。制空権は君のものか。」



闘いの火蓋が切られました。








第366話 グレイ 後編  

冥界の悪魔シリーズ 最終章




リク君は空き机の上に着地するとすぐに机と机を

ジャンプしながら移動をし,再び攻撃態勢を取ります。



灰庭「こらこら。机の上には乗ったら

だめでしょ。先生に怒られるぞ。」



そう言いながら,灰庭さんも机の上に乗り,リク君と

一定の距離を取りながら机から机へと飛び移ります。



「あの,加勢しなくていいんでしょうか・・・。」



だぬちゃんがリク君の心配すると,



「あいつの邪魔をしたらだめだ。」

「でも,あいつ組織の幹部みたいなもんでしょ?

昨日の南雲って奴と同じくらい強いんじゃ・・・。」



トシ君もさすがに心配なようです。



「いざとなったら俺も加勢する。少しは力になれるはずだ。

だが,もし二人ともやられるようなことがあったら,

すぐにこの場を離れてレオンさんを探せ。いいな!」



二人は頷きました。



まさらちゃんはお山座りをして

グスグスと泣きながらうつむいていました。



二人が激突するたびに教室内の窓ガラスが

振動し,机が崩れていきます。



灰庭氏は武器を持っていませんでした。



しかし,絶妙な間合いでリク君の攻撃をかわします。











それでもかわしきれないと判断した時は,

手の甲や肘で攻撃を受けて耐えます。



「(なんだ・・・。この戦い・・・。これはまるで・・・。)」



リク君はいつの間にか教室の

端まで追い込まれていました。



しかしひるむことなく壁を蹴って反転し,

そのまま灰庭氏に突っ込みました。



大地一刀流 ―獅子奮迅(シーザー・ショット)―



この攻撃も難なくかわされます。



勢いよく教室の端の壁に

激突してしまいました。



「くそっ・・・。」



灰庭氏が机の上を走って

こちらに向かってきます。



そして大きくジャンプしてリク君の頭上へ・・・。

彼のかかと落としを天照で防ぎます。



「ぐっ・・・。うぉおおおおおお!!!」



リク君はやられてばかりでいらないと,

思いっきり彼の攻撃をはじき返しました。



灰庭「さすがだよ!組織が危険視するわけだ!」



彼はバク中しながら

受け身を取りました。



「(グレイ・・・。なんだこの

余裕・・・。全然本気じゃない・・・?)」


「なんだ・・・。この違和感・・・。

俺たちは何かを見落としていないか・・・。」



イツキ君もこの戦いを見て何か違和感があるようです。



「どういうことですか?」

「わからない。ただ,グレイはまるで

本気を出していないように見える。」



まさらちゃんが顔をあげました。



目は真っ赤にはれ,頬には

涙の痕がくっきり残っています。



「でも本気を出していないのはリク君も同じじゃ

ないですか?そもそもアミだって1本しかないわけだし。」


「奥義だって出してないしね。」



みんなは二人の戦いを見守っています。



灰庭「どうしたんだい?もっと本気でぶつかってきていいんだよ。

それとも丸腰の人間相手に本気にはなれないのかな?」



彼はリク君を軽く挑発しているようでした。



「あんたを倒してから色々聞こうと

思ったけど止めた。今聞いておく。」



リク君は3mほど離れた場所で腕を組んで

立っている灰庭さんに“天照”を突き出しました。



灰庭「ふふん。何かな?」



灰庭さんはカラカラと笑っていました。



リク君が聞いておきたかったこととは・・・。








第367話 灰色の正体 前編  

冥界の悪魔シリーズ 最終章




「それは・・・。」



リク君が話を続けます。



「なんで・・・なんで・・・組織の仲間なんだ・・・。

僕たちとキングや昆虫採集で一緒だった時は,本当に

楽しかった。まさらちゃんもあんたのことを・・・。」



そこまで言いかけて止めました。



灰庭「・・・。」



「・・・。」



リク君は“天照”をぐっと握りしめました。



「本当に・・・灰庭さんって

悪い人なんですよね・・・!?」


「ちがうっ!灰庭さんは悪い人なんかじゃない!

それはあたしが一番よくわかっているの!この前だって昆虫採集の

時に転んでけがをした時,心配して声をかけてくれたんだもん!!」



まさらちゃんが貯め込んだ何かを吐き出すように叫びました。



「(待てよ・・・。待てよ・・・。オレ達は何か

大きなことを見落としていないか・・・。)」



この間も灰庭さんから攻撃を仕掛けてくる

ようなそぶりは見せませんでした。



「(組織から俺たちのことを探るために送り込まれた

スパイ・・・それがグレイ・・・。)」



リク君は必死にこの違和感の正体を

探ろうと頭を働かせていました。



「(グレイ・・・。灰色・・・だから灰庭。

組織では確か大西と呼ばれている・・・。)」




リク君の頭脳がフル回転していました。







「(大西・・・大西・・・。)」



灰庭さんはリク君の様子をじっと見つめていました。



「まさかっ!!!!!」

「何かわかったのか!?」



イツキ君が教室の外から

リク君に問いかけました。



「そんなことがありえるのか・・・!?」



自問自答しているようでした。



灰庭「何かわかったのかな?確かめてみようか?」



灰庭さんは背中に隠し持って

いた警棒を取り出しました。

(第364話のイラスト参照)



伸ばすと1m程の長さになりました。



灰庭「僕も気になるな。君が何に気付いた

のか。確かめるにはこれしかないね!」



今まで守りに徹した彼が攻勢に出ました。



灰庭「言っておくが,生半可な攻撃じゃ防げないよ。」



まるで居合のように警棒を左の腰に

当て半身になってリク君に向かってきます。



リク君は奥義の構えをとりました。



「望むところだぁ!!ケガしても

知らないからなっ!!!」



左足を半歩前に出し・・・。



「大地一刀流奥義・・・。」



灰庭氏はまるでワープしたような早さでリク君と

の間合いを詰め,警棒で斬りあげようとします。



警棒がリク君の首筋を掠めようとしその瞬間・・・。



リク君は攻撃態勢を刹那の

瞬間,解除しました。



「何やっているんですか!?死んじゃいますよ!!」

「リク君―!!!いやぁぁぁ!!!」



まさらちゃんは手で

顔を覆い隠しました。



しかし,教室には爆音も斬撃も

響き渡りませんでした。



あるのはただの静寂のみ・・・。



灰庭さんはリク君の首筋ぎりぎり

で警棒を寸止めしていました。



「どういうことだ・・・?」

「これが灰庭さんの正体だ・・・。」








第368話 灰色の正体 後編  

冥界の悪魔シリーズ 最終章




リク君は灰庭さんの本当の

正体に気付いたようです。



「どういうことだ・・・?

なんで攻撃を止めた・・・。」



灰庭さんは警棒を下ろしました。



「これが灰庭さんの正体だ・・・。」



まさらちゃんがリク君の近くまで駆け寄りました。



「どういうことなの・・・?」



リク君は机の上に乗ったまま,

彼の正体について語り始めました。



「グレイ・・・。組織では大西って呼ばれて

いるんだよね・・・。仏の今村とかいう幹部の部下だ。」



灰庭「組織の情報って筒抜けだね。その通りだよ。」



灰庭さんは感心していました。



「大西・・・大西・・・。この名前がずっと

気になっていた。大西という漢字の反対語は・・・。」



「どういうこと?」



トシ君が首をひねりました,



「まさか・・・。“大”の反対は“小”・・・。

“西”の反対は“東”・・・。つまり”大西”の反対は・・・。」



「小東!!!」



まさらちゃんが叫びました。



「あれ?どっかで聞いた

名前じゃないですか・・・?」



「ああ・・・。以前レオンさんが言っていただろ・・・。」



リク君が話を続けます。



「レオンさんの協力者の名前が小東

だって・・・。灰庭さんはレオンさんの協力者だ。」



まさらちゃんはまだ半信半疑でした。



「レオンさん,そうでしょ!!」



するとイヤコムからレオンさん

の声が聞こえてきました。



「詳細はそこについてから話すよ。

君たちには申し訳ないことをした。」



数分後レオンさんが皆の元へ駆けつけました。



「リク君大丈夫だったか・・・!」

「レオンさん,さっきの

リクの推理は本当なのか!?」



イツキ君がレオンさんに聞きました。



「ああ・・・。その通りだ。

彼はオイラの協力者なんだ。」



灰庭「ふふ。ついにばれちゃったね。」



灰庭さんは悪びれる様子もありませんでした。



「なんでこんなことをしたんだ!?

いずれお前のことはみんなに話すつもりだったんだ。」



レオンさんは灰庭さんに駆け寄り

声を荒げてそう言いました。



灰庭「いやぁ・・・。本当に組織に定期連絡を入れるつもりだったんだよ。

だけど彼らの尾行に気づいちゃったからさ。確かめたくなっちゃってね。

本当にあの悪魔の闇組織“JF”と戦える少年なのかね。」



灰庭さんが弁解をしました。



「じゃあ,さっき組織にかけていた電話は・・・。」



灰庭「大丈夫だよ。あれはフェイクさ。

君たちの事は一切組織には伝えていない。」







皆はそれを聞いて一安心しました。



「ちょっと待てよ・・・。つまり灰庭さんは

二重スパイってことか!?」


「そういうことなんだ。表向きは組織の準幹部グレイで

オイラ達に探りを入れている。だけど裏ではオイラと

つながっていて組織の情報を流してもらっているんだ。」



ついに灰庭さんの本当の正体が

判明した瞬間でした。



彼は二重スパイだったのです。