第1話 影(シャドー)のその後 前編

〜ノアシリーズ 第2.5章〜





各務原山で正体を見破られた“影(シャドー)”は,

その足で組織のボスである御前の所へ行きました。



その帰りに,ユニットリーダーである今村に呼び出されました。



ここは眠らない街,栄の一角。



組織の幹部以上が入ることが許されるVIPバーがあります。



そのバーの名前は―



―リ・セ・ッシュ―



影(シャドー)が中に入ると,今村がカウンターに座っていました。



今村「ふぉっふぉっ。会うのはこれが初めてですね。」



影「ええ,初めまして。」

今村「お疲れ。影(シャドー)君。まずは一杯どうですか。」

影「いえいえ。それよりもご用件をお聞きしたいのですが?」



今村は用件を切り出しました。



今村「例の少年たちの追跡はどうですか?」



今村は任務の進行状況を確認したかったようです。



影「ええ,順調ですよ。」



彼は平然と嘘をつきました。



今村「そうですか。私はあなたが彼らの追跡に失敗し,

少年たちに正体を暴かれたものだと思っていましたよ。

そしてそれをなぜか御前に直接報告しに行った。違いますか?」



影はあわてる様子もなく切り返します。



影「何のことでしょう?任務は極めて順調です。」



今村は話を続けます。



今村「そうですか。それでは現在わかっていることを報告してください。」

影「それが,まだ何も収穫がないんですよ。」



これは半分当たっていました。



彼は少年昆虫団の居場所は突き止めていたが,

肝心のノアの書は手に入れることができていなかったからです。



今村「困りましたねぇ。居場所さえわかれば・・・。」



どうやら影は少年昆虫団の居場所を

今村に報告するつもりがないようです。



今村「わかっているとは思いますが,我々の任務は・・・。」

影「"漆黒の金剛石"の探索,ですよね。それは承知していますよ。」

今村「ふぉっふぉっ。」

影「(組織内にある6つのユニットのうち,

半分の3ユニットをその探索に割り当てている。

いかに組織が漆黒の金剛石を使った

"あの研究"に力を入れているかがわかる・・・。)」



闇組織ジャファには6つのユニットがあるようです。



それは山犬,海猫,川蝉,そして以前,石井軍医が

名をあげていた,森熊,藪蛇もそのユニットのようです。 (第69話参照)



今村「まぁ,私は君のことを信頼しているんですけどね。

彼が言うことをきかないんですよ。」

影「彼というのはまさか・・・。」

今村「ええ,大西君のことです。」



大西とは影と同じく牟田と山下の代わりに

入った今村の部下のようです。(第29話参照)










第2話 影(シャドー)のその後 後編 



〜ノアシリーズ 第2.5章〜





影「彼というのはまさか・・・。」

今村「ええ,大西君のことです。」



大西とは影と同じく牟田と山下の

代わりに入った今村の部下のようです。
(第29話参照)




影「やはり,グレイですか。」

今村「大西君は“沼蛭(ぬまびる)”では

そう呼ばれていたのですか。

彼とは確か,昔からの知り合いでしたよね?」



影「ええ,“沼蛭”にいたころからの同期ですよ。」



沼蛭というのが6つ目のユニットのようです。



影「本人がそう呼んで欲しいそうで。“グレイ”と・・・。」



今村「ふぉふぉっ。そうですか,彼は“グレイ”ですか。」

影「何か気になることでも?」

今村「いえいえ,なんでもありません。」



二人の会話が続きます。影は高級ブランデーを飲みながら。



今村「沼蛭は“彼”が死んでから,

リーダー不在の期間が3か月ほどありましたね〜。

残った貴方と大西君が可哀そうだったので

御前にお願いして私の部下に組み込ませていただいたのです。」



沼蛭というユニットのリーダーは

何らかの理由ですでに死亡しているようです。



影「ええ,それについては感謝していますよ。」

今村「ふぉっふぉっ。」

影「そのグレイがしびれを切らしたわけですか。」





今村「ええ,例の少年昆虫団は自分が探し出すといっていました。」

影「余計なことを・・・。今村さん,任務は私が必ず達成しますのでご安心を。」

今村「期待していますよ。・・・。おや?」



今村は影の首の後ろ側の襟に

何かついているのを見つけたようです。



今村「これはなんでしょう?」

影「何!?」



それは盗聴器でした。



影「(いつの間に!?まさか各務原山で

煙幕を張って逃げた時につけられたのか・・・。)」



今村「盗聴器ですね〜,これは。」



影はその小型盗聴器を握りつぶしました。



影「安心してください。おそらくグレイが

我々の会話を聴くために取り付けたものでしょう。」



今村「そうですか,しかし一応,念には念を入れておきましょう。」



今村はどこかに電話をかけ始めました。



影「それでは私はこれで失礼します。」



影は消え去るようにその場から去りました。



一方,レオンと少年昆虫団は

この会話をバーの近くに止めた車の中で聴いていました。



「盗聴器は壊されちゃったけど色々と収穫ありだね。」

「大西,“グレイ”と呼ばれる人物が動き出すのか・・・。」

「その前に影(シャドー)がもう一度何か企んでくるかもしれないな。」

「でも御前との会話は盗聴できなかったですね。雑音ばかりでしたよね。」

「仕方ないさ。電波が拾えない場所で会話していた可能性もあるからね。」



まさらちゃんも影と今村との会話の内容をしっかりと聴いていたようです。



「大西っていうのが本名でグレイがあだ名なんだね。」

「う〜ん,正確には違うんだな。」

「え?どういうこと?」

「これは組織に潜入している協力者から

得た情報だから確かなんだけどね・・・。」


「もったいぶらずに早く話せよ。」



イツキ君はレオンに対しても厳しいようです。



「奴らが名乗っている苗字はすべてコードネームなんだよ。

組織では“通り名”と呼ばれている。」


「え!?そうなんだ!さっき影と話していた“今村”っていうのも!?」

「そう,すべてそうだよ。そして幹部以上の人間が

御前から“通り名”を与えられることになっているらしい。

だから例えば山犬の山本は“山本”っていう通り名なんだ。本名じゃない。」




今回の盗聴で闇組織ジャファの正体が

少しずつ明らかになったようです。



ちなみに翌日,彼らがそのバーに

行ってみるとすでに閉店していました。



どうやら今村が手を回し,

バーを他の場所に移転させたようです。



これでジャファへの手がかりは

再び無くなってしまいました・・・。







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