☆ この物語はフィクションです。 採集場所・登場人物・団体等は架空のもので実在のものとは一切関係がありません。

※ 採集には子供だけでは行かず,必ず大人と一緒にいきましょう。



第1話 レオンのおしゃれな休日 

冥界の悪魔シリーズ 第1章




夏の暑い日差しを遮って木々の生い茂る並木道をまっすぐ歩いていくと,

ピンク色の看板に「カフェ・オーシャン」と書かれた,

ブルースカイを基調としたとてもおしゃれなカフェがありました。



先週,新規開店したばかりですが,すでに平日の昼間から

ビジネスマンや大学生の憩いの場となっていました。



そんなカフェに一人の青年が英字新聞を読みながら

熱いコーヒーの香りと味を嗜んでいました。



彼の名前は翠川レオン。



中野木大学の院生で昆虫学を専攻しています。



しかし,それは仮の姿で本当は東京の

警視庁から派遣された警察官でした。



警視庁公安,闇組織JF対策の“菊水華”と

呼ばれるチームに所属していました。



彼は組織を壊滅させるため,闇組織JFの

本拠地がある名古屋にやってきたのです。



「優雅に一人で飲むコーヒーはまた格別にうまい。

こんな時は大学のレポートのことも忘れゆっくりしたいものだ。」




レオンさんは初めて訪れたこの店の

コーヒーをたいそう気に入ったようです。



「しかし現実は,潜入捜査で大学に潜り込んだだけなのに

学生と同じようにレポートの提出をしないといけない・・・。」




レオンさんが一人でぶつぶつと言っていると,

可愛らしい店員が声をかけてきました。



店員「あの,お客様,先ほどから何か独り言をつぶやいていますけれど,

当店のことで何か気になることがございますか。」



店員の胸につけられたプレートには

「立花 馨(かおる)」と書かれていました。



「いえいえ,ちょっと現実逃避していただけなのでお気になさらずに。

あれ,貴方って先日,オイラにこのお店のパンフを渡してくれた人ですよね。」






<カフェの店員 立花 馨(かおる)>



かおる「あ,そういえば!新規開店したばかりなので人が足りなくてマスターと

他のバイトの方と一緒に商店街で宣伝していたんです。」



どうやらレオンさんは街中を歩いていたところ,

たまたまこのお店のパンフをもらい,やってきたようです。



かおる「私,馨(かおる)と言います。

どうぞゆっくりしていってくださいね。」



とても笑顔が素敵な店員でした。



「あ,はい。それじゃあお言葉に甘えて・・・。」



レオンさんが再び英字新聞を読もうとしたとき,

店の入り口から少年たちが声をかけてきました。



それは少年昆虫団のみんなでした。



「あれ,みんな・・・。なんでここに?」



リク君たちはレオンさんの座っている席までやってきました。



「今日はまさらちゃんの長い

買い物に付き合う日だったんだよ。」


「悪かったわね。長い買い物で!」



まさらちゃんは後ろからリク君の背中を小突きました。



「レオンさん,髪型ちょっと変えたんですか?」

「あ,わかる?」







レオンさんは現役の大学生にしか見えませんでした。



「というか,なんかイケメンになりすぎじゃね!?

最初に会った時はもっと,ロン・・・。」(第31話参照)




トシ君はそこまで口に出し,飲み込みました。



「店の前を通ったらたまたまレオンさんが

中にいるのを見かけたから入ってみたんだ。」


「ああ,そういうことね。」



レオンさんは英字新聞を折りたたみ,店員さんを呼びました。



かおる「はい,お待たせしました。」



かおるさんが笑顔でやってきました。



レオンさんは昆虫団のためにジュースを注文してあげました。

オーダーを受けるとかおるさんは店の奥に戻って行きました。



「なんか,可愛い店員さんですね。さっきも何か

デレデレしながら話をしていましたよね。」


「いやいや,別にデレデレなんかしてないよ!」



彼は耳が赤くなり,目が泳いでいました。

動揺していることは火を見るより明らかでした。



リク君が何かに気付いたのか,

レオンさんの体をクンクンとかぎ始めました。



「ちょっと,何してるのよ!?」



するとリク君は,



「いや,なんかちょっと線香の匂いがすると思って。」



と言いました。



「ああ,午前中はちょっと

墓参りに行っていたもんだからね。」


「それってお父さんの墓か?」



イツキ君が聞きました。



「う〜ん・・・。」



レオンさんの返事はいまいち曖昧でした。



「まぁまぁ,そんなことよりも追加で

このスイーツも食べたくなったよ!」




トシ君が空気を読まずに勝手なことをしゃべりだしました。



結局,レオンさんは昆虫団と

小一時間ほどカフェで過ごしました。



「実はオイラもこの後,君たちに連絡を

しようと思っていたところだったんだ。」


「ああ,いよいよ明日キャンプだもんね!」



リク君が言いました。



「それもあるんだけど,相談したいことがあったのさ。

それとカブクワキングだっけ?

久しぶりにあの店に行ってみたいんだ。」


「相談?」



リク君はいまいち見当がつきませんでした。



「あんなところに何の用事があるのさ。」



イツキ君が聞くと,



「ほら,オイラは一応,昆虫学の院生でしょ。レポートを

書かないとだめなんだよねー・・・。そのネタに

なりそうなものを探しに行きたいわけ。」




みんなは潜入捜査も大変なんだな,

と思いながらも納得していました。



この後は,キングに向かうようです。








第2話 レオンのゼミ仲間 

冥界の悪魔シリーズ 第1章




レオンと少年昆虫団がカフェを出ようと席を

立つと,レオンさんのイヤコムに着信が入りました。



「おっと。こっちはプライベート用か・・・。」



レオンさんはイヤコムの通話ボタンを押し,会話に出ました。



「え?レポートのことで相談したい?オイラも今から材料を

集めようと思っていたところなんだけど・・・。

え?今どこにいるかって?地元に新しくできたカフェ・オーシャンだけど。」




レオンさんの相手はどうやら同じ大学の学生のようでした。



「え?近くにいるから今から店まで来るって?

いいよ,来なくて。え?もうすぐ着くって・・!?」




相手はいきなりイヤコムを切りました。



「相変わらず,マイペースな人だ・・・。

ヤバイ,まじで来るつもりか・・・。」


「なんか,大学院生に成りきって

捜査をするって大変なんだな。」




イツキ君が同情しました。



店の扉が開いて,誰かが入ってきました。



すぐにレオンさんを見つけ,

手を振りながらこっちに向かってきました。



それは,とても大学生には見えないような幼い顔した女性でした。



髪型はセミロングで目がクリっとしていて

とてもキュートな容姿をしていました。



彼女は“一 久遠(にのまえ くおん)”といいました。



久遠「レオン君〜!お待たせっだよ!

一緒にレポートを書こうっ!

あ,なんかいいにおいがする。

くおんも何か食べたーい!」



久遠さんはホットドックを注文しました。

程なく料理が届くとパクパクと食べ始めました。





<レオンのゼミ仲間 一 久遠(にのまえ くおん)>



久遠「くおん,コレ大好きなんだー!」



どうやらかなりマイペースな性格のようです。



久遠「さぁレポートだよ!レ・ポ・オ・ト!!一緒に書くんだよっ。

ってかこの子達はレオン君のお知り合い?」



久遠さんはリク達とお互いに自己紹介をしました。



「いや,だからオイラは別に自分一人でも書けるんだって!!」



少年昆虫団はそのやりとりを面白そうに見ていました。



「ははぁん!レオンさんって意外にプレイボーイなんだね。」

「いや,なんでそうなんの!?オイラ,

これでも結構困っている状況なんですけど。」




小声でまさらちゃんにツッコミました。



「いいじゃないですか。可愛い女性が同じ

ゼミにいるなんて。羨ましい限りです。」




「そう,言っていられるのも今のうちだよ・・・。

彼女,ちょっと変わっているから色々と大変なんだよ。」




今度はだぬちゃんにむかって苦言を呈しました。



「でも,この前,大学に行ったときには,

いませんでしたよね?蟷螂(カマキリ)っていう

教授だけしか部屋にいなかったと思うんですけど。」




久遠「ああ,え〜っとね。う〜んと,あの時はぁ・・・。」



大げさなしぐさで何かを思い出そうとしています。



「いや,別にたいしたことじゃないんで

無理して思い出さなくてもいいです。」




久遠「ああ,そうそう。あの日はね,

料理研究部の人たちと料理を作っていたんだぁ!!!」



久遠さんは何かを思い出したようです。



「わぁ,すごい!何を作っていたんですか?楽しそう!!

そういう大学生活ってなんか憧れるなぁ・・・。」




まさらちゃんはうっとりしています。



久遠「えっとねぇ!ゴキブリのチョコレートフォンデュ!

メタリックな色とチョコの色が上手いこと調和して最高なんだよね!」



「チーン!」



まさらちゃんはその場に倒れこみました。



「あたしのあこがれ大学キャンパス

ライフのイメージを返して・・・。」


「まさらちゃん,大丈夫・・・?気持ちはわかるぞ!」



もちろんゴキブリっていってもその辺に生息する

ものではなく,海外から輸入した食用ゴキブリだそうです。



久遠「あとはね,ゲンゴロウのスープ!

これもまた漢方薬みたいな味がしておいしいんだなぁ!」



「それは美味しいというのか・・・。」



今度はイツキ君があきれながらそう言いました。



久遠「あとはねぇ・・・。」



「もういいから・・・。わかったよ,

一緒にレポートを書く,書くから・・・。」




レオンさんはすでに疲れ切っていました。



「な,この人・・・結構大変だろ・・・。」



レオンさんの発言に少年昆虫団は全員同意しました。








第3話 灰庭とレオンと久遠 

冥界の悪魔シリーズ 第1章




レオンと昆虫団はカフェを出て,商店街から少し歩いたところにある,

伊藤店長が経営するカブクワ専門店のキングにやってきました。





レオンさんのゼミ仲間である,

一 久遠(にのまえ くおん)さんも

一緒についていくことになりました。



伊藤「おお,リク君。今日も来たのか。いいねぇ,飽きないで!」



店長の威勢のいい掛け声に,



「うん,ここのカブクワはみんな

元気で毎日見ていても飽きないんだ!」




と元気よく答えました。



伊藤店長の胸にはタグがかけられており,

「伊藤 整二(いとう せいじ)」と書かれていました



伊藤「あれ,後ろの人は・・・。」



「裏のアパートに住んでいる翠川レオンです。

ここへは以前も来たことがあると思います。

前回もこの子たちとご一緒したと思うんですが,

その時は,バイトの方が対応してくださったような・・・。」




すると,奥からまりんちゃんと

灰庭さんが出てきました。



まりんちゃんのタグには「海野 真凛(うみの まりん)」,

灰庭さんは「灰庭 健人(はいば けんと)」

とそれぞれ書かれていました。



まりん「みんな来てくれたんだ。でも,ごめんね。

今,ちょっと忙しくて遊んであげられないんだ。」



どうやらまりんちゃんはまたしても

新商品の棚卸のため忙しいようです。



灰庭「たしか,小早川さんでしたよね。またお会いしましたね。」



「ええ,そうでしたね。リク君から聞いたんですけど,

あなたも中野木大学に通っているんですよね。」




レオンさんが彼に近づき,話しかけました。



灰庭「そうです。僕の場合は,教授のお手伝いをしているだけですけどね。

ただ貴方とは学部が違うみたいなのでなかなかお会いする機会がありませんね。」



久遠「あ,くおんも同じ大学ー!一緒だねぇ!!

なんかすっごいイケメンさんだね!同い年かな!?」



久遠さんが二人の間に入ってきました。



灰庭「ボクはこう見えて結構,おじさんなんですよ。年は30歳です。」



久遠「ええぇ!うっそぉ!そうは見えない!!

なんかすっごいアンチエイチングやっているの??」



久遠さんは一人で勝手にテンションが上がっています。



久遠「年上の男性すごーい!かっこいい!!

素敵すぎてほわわんになってしまうかも。」



「(え,何を言っているんだろう,この人は・・・。)」



まさらちゃんもだんだんついていけなくなってきたようです。



「あれ?確かレオンさんも30だったよね。同い年ってことか?」

「しっ!久遠さんには一応23歳だと

言ってあるので,そのことは内密にね。」




イツキ君は,ああそうだったと納得しました。



「え?久遠さんも23歳なんですか?

全然そうは見えないですね。」




久遠「そっかなぁ?よく言われるけどなんでだろぉ。

あ,そっか!普段から昆虫食ばかり食べているから

美容にいいのかも!?まさらちゃんだっけ?今度一緒に食べてみる!?」



バタッ・・・。



「チーン・・・。」



まさらちゃんは再びその場に倒れこみました。



灰庭「それで今日はどんな御用で?

何か欲しいカブクワでも決まっていますか?」



灰庭さんが接客スマイルで聞いてきました。



レオンさんはしばらく店内を見渡し,

ある昆虫の前で足を止めました。



その昆虫とは・・・。








第4話 キャンプへ行く約束  

冥界の悪魔シリーズ 第1章




レオンさんはミヤマクワガタの入って

いるケースの前で立ち止まりました。





「う〜ん・・・。やはり虫は怖い・・・。」



灰庭「おや,ミヤマですか。好きなんですか?」



「ええ。ミヤマってなんかかっこいいですよね。

せっかくだからコレでレポートでも書こうかな。」




レオンさんはレポートの研究素材を探しているようでした。



久遠「へぇ,面白そうだね!くおんは,

何に何に何にしようかなぁ〜しようかなぁ〜。」



彼女の同じ言葉を繰り返すしゃべり方に,

だぬちゃんもだんだんとイライラしてきました。



「好きにすればいいと思いますよ・・・。」



灰庭さんはケースを目の前に持ってきてくれました。



店長「ちょっと,ここは任せるぞ〜。俺は他の客の接客をしてくる。」



店長はそう告げると,その場から離れていきました。



灰庭「僕もミヤマが大好きなんですよ。

でも名古屋じゃなかなか採集できないですよね。」



「そうなんですよね。」



二人はミヤマの話で盛り上がり始めました。



「あ,でもさ,明日行くキャンプ場の周辺

だったら採集できるんじゃない?

ガイドマップにそう書いてあったと思うよ。」


「そういえば,そうだったね。

じゃあ明日の夜はミヤマ採集ができそうだ!」




レオンさんは嬉しそうにしていると,



灰庭「へぇ,キャンプへ行かれるんですか?どちらまで?」



リク君が場所を告げました。



灰庭「面白そうですね。しかも

ミヤマまで採集できるとは興味深い。」



「なんなら灰庭さんも一緒についてくる?

一人くらい増えてもコテージだから平気だよ!」




まさらちゃんが灰庭さんをキャンプに誘ってみました。



「おい,いいのか!?あいつは“闇組織JF”の

スパイ,“グレイ”かもしれないんだろ?」




イツキ君がリク君だけに

聞こえるように言いました。



「そうなんだけど・・・。でもこうやって

みていると,とても悪い人には見えないんだよなぁ・・・。」




そんなことを言っていると,灰庭さんが



灰庭「え?いいのかい?」



乗り気になってきました。



久遠「はいはい〜!くおんも

一緒について行きまーす!」



久遠さんが横から立候補してきました。



「いや,今回は久遠さんはちょっと・・・。

また今度,どこかへ連れていってあげますから。」




久遠「ええ〜!なんかくおんだけ

仲間外れ〜!?ずるいよぉ〜!」



久遠さんはしばらくダダをこねていました。



「まぁ,仕方ないわな・・・。いくらなんでも彼女でも

ない女を泊まりで連れて行くわけにはいかんからな。」




イツキ君は相変わらず大人目線での発言ができる少年でした。



しかし,レオンさんの真意は別にありました。



この面倒臭いゼミ仲間とこれ以上,

深くかかわりたくなかったのです。



「え?レオンさんって彼女さんいるのかな?

久遠さんじゃないんだよね?」


「知らないよ。でもあの人は彼女じゃないだろ・・・。

あんなのがレオンさんの彼女だったら俺は泣くぞ・・・。」




レオンさんの女性関係は謎のままです。



灰庭「それでは僕も明日,ご一緒させてもらってもよろしいですか?

もちろん余分にかかる費用はお出ししますので。」



イツキ君は少し渋りましたが,結局,

灰庭さんも参加することが決定しました。



どうやら明日からのキャンプは

灰庭さんも加わり,大賑わいになりそうです。



「久遠さん,レポートの件はキャンプから帰ってきてからでいいかな?

フィールドワークした内容を必ずまとめて報告するからさ。」




久遠「う〜ん,仕方ないなぁ・・・。

そのかわり,またあのカフェでデートしようね!」



久遠さんがレオンさんに顔を近づけ,

にっこりとほほ笑みかけました。



「ああ,わかったよ。だから今日は,お開きにしよう!」



久遠「うん,わかった!また連絡するね!」



久遠さんは,その足で自宅へと帰って行きました。







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