☆ この物語はフィクションです。 採集場所・登場人物・団体等は架空のもので実在のものとは一切関係がありません。

※ 採集には子供だけでは行かず,必ず大人と一緒にいきましょう。



第1話 ヴォイニッチワールド1

ワクのわくわく冒険記シリーズ



ワク君は少年昆虫団と一緒に公営住宅の

一角にある公園でサッカーをしていました。







トシ君がボールを変な方向に飛ばしてしまい,

ワク君が取りに行くはめになりました。



ワク君が草むらの中でボールを探していると,トシ君がやってきました。



「ごめん,ごめん。ボールはあった?」

「ったく・・・。ノーコン野郎が・・・!」



二人でしばらく探しているとボールは見つかりました。



「よし,みんなのところへ戻ろう!」



その時です。急に二人は倒れこみました。



「頭が痛い!!」





「ぐああぁ,なんだこれ〜!!痛いよ〜!」



あまりの頭痛に二人は気を失ってしまいました。



どれくらいの時間が立ったのでしょうか。

二人はほぼ同時に目を覚ましました。



「いてぇ・・・。まだ頭がクラクラする・・・。」



ワク君は頭を抑え込みました。



「オイラも・・・。」



やっとのことで二人は起き上がりました。



ワク君は近くに落ちていたサッカーボールを拾うと,

先ほどまでサッカーをしていた公園まで戻りました。



トシ君もゆっくりと歩きながら公園へ向かいます。



「あれ?みんながいない?」



なんとそこには先ほどまで一緒に遊んでいた

少年昆虫団の姿がありませんでした。



ようやく追いついたトシ君も異変に気づきます。



「もう帰っちゃったのかな?」



トシ君はイヤコムで連絡を取りますが,反応はありませんでした。



「なんか・・・変だな・・・?」



ワク君は公園の中心であたりを見渡しました。

しかし,そこは先ほどまで遊んでいた公園と変わりはありませんでした。



そこで,公園の外に出てみました。



たくさんの公営住宅が立ち並んでいましたが,

先ほどまで見ていた景色と変わりはありませんでした。



「なんか・・・。人気(ひとけ)が少なくない・・・?」



建物などの景色に変わりはありませんが,誰一人いません。



公園で遊んでいた人たちも,道を歩いていた

人たちも,消えてしまったかのように・・・。



「なんだ・・・。何がどうなっているんだ・・・?」



ワク君は近くにあった定食屋の看板を見て,その表情を一変させました。



「な・・・。」

「どうしたの?」



トシ君がワク君の顔を覗き込み,尋ねます。



「あの看板・・・。」

「看板?」



トシ君はその看板に目をやりました。







「え?」



そこには日本語でもなく,英語,フランス語,中国語,どこの世界の文字でもない,

まったく意味不明な文字が奇妙に並んでいたのです。



一体,何がどうなっているのでしょうか。








第2話 ヴォイニッチワールド2

ワクのわくわく冒険記シリーズ



風景は変わらないのに,看板にある文字は

全く見たことがない世界・・・。



ワク君とトシ君は戸惑っていました。



「なんだ・・・さっきの頭痛と関係があるのか・・・?」

「いや〜たぶん,看板屋さんが間違えてつけっちゃったんでしょ!

それか何かのドッキリでしょ!?」




トシ君がそう答えても,ワク君は考え込んだままでした。



「でも,あの文字,どこかで見たことが

あるような気もするんだよな・・・。」




すると,何か音が聞こえてきました。

パトカーのサイレンに近い音でした。



やがてその正体がわかります。

公園の前にサイレンをならした一台の車が止まりました。



形はパトカーに似ていましたが,よく見ると違うようにも見えます。



中から二人の人物がでてきました。

全身を緑色の服装でまとっているように見えました。







「(あいつらは一体・・・。まるで植物みたいな格好だな・・・。)」



彼らは何か話しているようでしたが,二人には理解できませんでした。



その二人の人物は話しながら近づいてきて,

ワク君とトシ君の前で立ち止まりました。



そしてその人物たちは再び何かを話し合っています。



「なんだ,こいつらの言葉は・・・!?

まったく言っていることがわからない・・・。」


「英語とかなんじゃないの・・・?」



トシ君はあまり気にしていませんでした。



「あれが,英語な訳ないだろ・・・。フランス,ドイツ,スペイン,

イタリア,ペキン語・・・。どれも違う。あんな言語聞いたこともない・・・。」




人物1「###&%#$&%#&&**|*|#$|〜<>_¥」



「え?なんて言ってるんだ??」



突然,もう一人の男がスタンガンのようなものを

取り出し,ワク君の体に押し付けました。



「ぐわっ!?」



ワク君は気を失ってしまいました。



ビビッているトシ君も同じように

気絶させられてしまいました。



次に目を覚ますと,そこは警察の拘置所のような場所でした。







手足は拘束されていなかったので,体の自由はききます。

しかし,頑丈な鉄格子の中に入れられ,出ることはできませんでした。



「もうわけがわかんないよぉ〜!?

サッカーやっていたら,頭痛がして,気が付いたら,

意味不明な世界にいるし,変な人たちに気絶させられて,

変なところに閉じ込められるし・・・。」


「焦るなよ・・・。落ち着けって・・・。」



ワク君は頑張って状況を整理しようとしましたが,中々難しいようです。



まず,外の光が入ってこないので今が昼なのか夜なのかわからないのです。



時計もないので時間すらわからない状況です。



食事はおなかがすいたタイミングに持ってきてもらい,

トイレも室内でできるようになっていたので不自由はありませんでした。



二人はどれくらいの時間その中で過ごしたのでしょうか。



「なんか1週間くらいここに拘束されているよな。」

「そうかな?なんでわかるの?」



トシ君は聞き返します。



「時間になると天井の照明が暗くなるだろ。

たぶん俺たちが寝やすいようにしてくれて

いるんだろう。それが今日で7回目だからな。」




トシ君はなるほどと思いました。とすると今は8日目のお昼くらいでしょうか。



しばらくすると謎の人物が近づいてきました。

中心にいた人物は中年で見た目は研究者のようでした。



扉を開けると,二人を外へ連れ出しました。ワク君は小声でトシ君に話しかけます。



「まだ,逃げようとするなよ・・・。余計,

騒ぎになるかもしれない。少し様子を見よう。」


「お,おう。」



二人は病院の手術室のような場所に連れてこられました。

真ん中に2台のベッドが置かれています。



中年に見えるその人物は二人にベッドの上で

横になるようにと合図しているように見えました。



二人が横になると,ベッドからベルトが出てきて,手足を拘束してしまいました。



「あれ,これじゃあ,動けないんだけど・・・。

こいつら何をする気・・・」


「(やば・・・。やっぱりさっき逃げるべきだったか・・・。

でもサッカーボールは拘置所の中だしな・・・。)」




手術室のベッドに寝かされ,拘束されてしまった二人・・・。

いったいどうなってしまうのでしょうか。



そして彼らに何が起きているのでしょうか。








第3話 ヴォイニッチワールド3

ワクのわくわく冒険記シリーズ



二人がベッドの上で暴れていると,先ほどの中年男性が

注射器のようなものをワク君に近づけました。



「おい,何をする気だ・・・!?」



その注射器を耳の穴に差し込みました。



「やっやめろ〜!?ぎゃぁぁぁぁ」



ものすごい激痛がワク君を襲います。

ワク君はそのまま,気を失ってしまいました。



トシ君にも同様の作業が行われました。



二人が再び目を覚ますと,先ほどの拘置所のような場所の中でした。



「一体,なんだったんだ・・・。とりあえず生きてるな・・・。」



体のどこにも異常がないことを確認します。



???「お目覚めのようですね。我々の言っていることが理解できますか?」



突然,天井に備え付けられていた

スピーカから声がしました。



しかも,意味が通じます。



「お!なんかちゃんとした日本語だよ!話が通じる人がいるみたいだよ!」

「そうみたいだな。」



二人に希望がわいてきました。



???「どうやら通じるみたいですね。先ほどの手術は我々の言葉を

理解できるようになるためのものなのです。」



スピーカからはさらに声が届きます。



???「間もなく,君たちを担当するものがそちらに向かいます。

後は彼の指示に従うようにしてください。決して悪いようにはしません。」



それだけ言うとスピーカからは声が聞こえなくなりました。



やがて,二人を担当するという人物が拘置所の前までやってきました。



s「やぁ。君たちの担当,sという。よろしく。」







「s?」



ワク君が聞き返します。



s「言葉はしっかりと通じるようになったようだ。

こちらの世界には君たちのような名前という概念が無いんだ。

とりあえず,君たちにわかりやすくするためにsと名乗らせてもらうよ。」



そのsと名乗る人物は見た目は20代前半で

背も高く,なかなか整った顔立ちをしていました。



服装は全身が緑色に近く,ワク君やトシ君が

見たこともないような不思議な素材でできているようでした。



「えっと,ここは何?オイラたち,どうなるの!?」



トシ君が鉄格子に手をかけながら,問いかけます。



s「そうだな。色々説明してあげたいところだけど・・・。

とりあえずここから出してあげよう。」



そう言って,鉄格子の扉の鍵を開けました。



s「今から,向こうの世界に帰る手続きを行う。

安心していい。だから,逃げようとしないことだ。」



ワク君はサッカーボールを持って外に出ました。

拘置所があった場所を出ると,先ほど手術室に向かう時に

とおった細い廊下が続いていました。



「いったいなんなんだここは・・・。」



ワク君は小声でトシ君に話しかけました。



「どうしたの・・・?」





「ここから逃げよう。」



二人は長い廊下を渡り,道が二股に分かれている場所まで歩きました。



「いくぞ!」



ワク君が声をかけるとトシ君も走り出しました。

二人はs氏から逃げ出しました。








第4話 ヴォイニッチワールド4

  ワクのわくわく冒険記シリーズ



二つに分かれた道の左側を選び,二人は走り出しました。



s「まったく,仕方のない連中だ・・・。」



s氏は何か機械を取り出すことなくつぶやき始めました。

どうやらどこかに連絡を取っているようでした。



しばらく走ると,奥に扉が見えました。

扉を開けてその中に入るとそこには沢山の本棚がありました。



どうやらこの部屋は図書館のようです。







「なんだここ,ものすごい数の本だ・・・。」



ワク君は周りを見渡しながらそう言いました。



「うむむ・・・。」



するとs氏と護衛の者たちが部屋に入ってきました。

二人は逃げ場をなくしてしまいました。



「くそ・・・。人数が多いな・・・。トシ,何人いける?」

「せいぜい5,6人。」



トシ君は虚勢を張りました。



「俺もだよ・・・。ずいぶん数が余るな・・・。」



二人は観念したようです。



s「どうして逃げるんだ!?」



s氏はやや声を荒げながら問い詰めました。



「当たり前だろ!こんなわけのわからないところに迷い込んで,

長いこと拘置所みたいな所に入れられるし,変な手術もされる。

この次は何をされるかわかったもんじゃない!」




s「仕方ないだろう。あちらの住人を受け入れる

ためには手続きが必要で時間もかかる。

手術は会話をするための手段だ。

それにさっきも言ったが,君たちはちゃんと

自分たちの世界に帰してやる。」



今度は,なだめるように話します。



「そんなこと信じられないね。」



ワク君はいざとなったらサッカーボールで

得意のシュートを放ち,ここから逃げる算段でした。



s氏はそんな思惑を読み取ったのか,

周りにいた護衛たちを部屋の外まで下げました。



s「これでどうだ?何も警戒しなくていい。そこで座って話をしよう。」



s氏はすぐそばにあるテーブルとイスを指さしました。



ワク君がしぶしぶそこに座るとトシ君も隣に座りました。



s「さて,何から話せばいいか,迷うところだが・・・。」



「子供だと思って気にする必要はねぇよ。

どんな難しい内容だって理解する

自信は俺にはある。こいつにはない。」




ワク君はトシ君を指さしました。



「何を〜!」



s「ハハハハハ。結構だ。では,順を追って説明しよう。」



s氏はイスにかけ,手を組み,机の上に置いた状態で話を始めました。



s「まず,ここは君たちが住んでいる世界とはまったく別の次元,空間にある世界だ。」



「(やはり,ここはパラレルワールドなのか?

でもそんなことがあり得るのか・・・?)」




ワク君は黙ってうなずきました。



s「実は君たちの住む世界と我々の世界は様々な場所でつながっているんだ。

普通の人間はたとえ入口があっても入れないんだが,

たまたま波長が合ってしまうと,こちらの世界に入ってしまう。」



「じゃあ波長があった俺とトシだけがこっちの世界に来てしまったのか・・・。」



ワクは少しずつ状況の整理ができてきました。








第5話 ヴォイニッチワールド5

ワクのわくわく冒険記シリーズ



s氏とワク君,トシ君は図書館の一室にある机を囲んで話をしていました。



s「ここは君たちとはまったく別の住人たちの世界なんだ。」



「でも,見た目はあまりオイラたちとかわらないよね?」



トシ君がs氏にそう言いました。



s「それは,そう見えるように我々がしているからだ。

私たちは君たちの世界でいう,植物が進化した

存在だと思ってもらえればいい。」



s氏は見た目はワク君たちが住む世界の人間と変わりがありませんでした。



しかし,ワク君はs氏がどこか

植物的な要素もある,と感じていました。



「最初に訪れた時,街の見た目は元の世界と変わらなかったのに,

どうしてその植物の住人がいなかったんだ?」




ワク君は最初に抱いた疑問をぶつけました。



s「ここが元の世界と同じ町に見えたのは,幻覚のようなものなんだ。

向こうの世界からこちらの世界に来るとき,体に大きな負荷がかかるようでね。

その副作用なものさ。住人はさきほども言ったように,

植物が進化した存在なので,君たちにはわからなかったんだろう。」



s氏は腕を組みながら説明を続けました。



s「飲み物を用意させよう。」



s氏は指をパチンと鳴らすと机から液体の入ったコップが出てきました。



「うおっ!?すげぇ。魔法だ!」



トシ君は思わず声を出してしまいました。



「(俺たちの世界の常識が通用しない世界なんだ・・・。)」



s「毒なんて入っていないから安心していいよ。」



s氏はそう言って,自分の目の前にあるコップの飲み物を飲み干しました。



それを見て,二人も恐る恐るコップに手をやりました。



味は甘くもなく酸っぱくもない,水に近い液体でした。



「それで,俺たちをどうやって返してくれんだ?」



s氏は少し沈黙した後,ゆっくりと口を開きました。



s「しっかりとした手順を踏めば戻れることは証明されている。

そのためにはもう少し時間がかかる。」



二人はs氏がうそを言っているようには思えませんでした。



「仕方ない。時間が来るまで,暇でもつぶすか。」



ワク君は立ち上がり,本棚のほうへ向かいました。







「ここにある本は読んでもいいんだよな?」



s「かまわないが,多分読めないよ。完全に同化しなければ,

話すことはできても読み書きはできない。」



ワク君は少し残念そうな表情をしましたが,ためしに本を手に取ってみました。



「どう?読める?」

「いや・・・。なんて書いてあるかさっぱりだ・・・。」



ワク君は首を横に振りました。ためしにもう何冊か

手に取ってみましたが,結果は同じでした。



しかし,ワク君はどこかでここに書かれた文字を見たことがあると感じました。



「(なんだ,この頭に引っかかる嫌な感じは・・・。)」

「どうしたの?変な文字や絵ばかり描いてあるのを見ていたら頭が痛くなった?」



トシ君はたまたま手に取った本をワク君に見せました。



「ね?なんか変な絵ばかり描いてあるでしょ。」



ワク君の表情が固まりました。



ありえないはずの本がここにあったのです。



その本とは・・・。






第6話 ヴォイニッチワールド6

ワクのわくわく冒険記シリーズ



「どうして・・・こんなものが・・・こんなところに・・・。」



ワク君が驚いた真意とは・・・。



「思い出した・・・。ここの世界の文字はどこかで見たことが

ある文字だとずっと思っていたが・・・。この本がその答えを教えてくれた。」




ワク君はその本をわなわなと震える手で持っていました。



「これが一体なんなの?」



s「・・・。」



s氏はじっとワク君を見つめていました。



「これは・・・。」



ワク君はトシ君に目をやりました。



「ヴォイニッチ手稿だ・・・。」

「なにそれ?」



予想通りの反応でした。



「いいか。この手稿はな,1912年にイタリアで発見されたんだ。

ヴォイニッチと呼ばれる人物が発見したからヴォイニッチ手稿と呼ばれている。

しかし,中世に書かれたということはわかっているんだが,内容は全く不明。

解読不明の文字と絵が並んでいる。まさにこの本だ!」








ワク君は興奮した様子で説明しました。



「あれ?じゃあなんでこっちの世界にこのなんとか手稿があるの?」



トシ君はようやく状況が呑み込めてきたようです。



「だから,ありえないって言っているんだ,このくそ野郎!」



しばらく話を聞いていたs氏が立ち上がって二人のもとに近づいてきました。



s「そうか,これが君たちの世界にも存在するのか。いや,当然といえば当然か。」



「どういうことなんだ?」



ワク君はs氏に説明を求めました。



s「この本を書いた人物は,もともと君たちと同じ世界からきた人間なんだ。

違うのは君たちよりも非常に長い間こちらで生活をした。

するとだんだん,同化と言って,我々の文字の読み書きができるようになる。」



「俺たち以外にもここに来た人がいたのか・・・。

そういえばさっきそんなことも言ってたな。

元の世界に戻れることは証明されているって・・・。」




s氏は説明を続けました。



s「そして,ここで学んだことを本にまとめた。つまりそこに書いてある

内容が君たちの世界では理解できなくて当然なんだ。」



「そうか,どうりでこの手稿は植物が多く描かれているのか・・・。

この世界の真理や仕組みをこちらの文字で表していた・・・。

“ヴォイニッチワールド”とでも呼ぶべき世界・・・。」




ワク君はこの真相にまだ驚愕して震えが止まらないようです。



一方トシ君はおしっこがしたくて震えが止まらないようです。



「やべ,漏れる・・・。」



s氏はトイレの場所を指さすと,トシ君は急いで駆け込みました。



s「この人物はここで様々な書物を出版していった。

そして,元の世界に帰るときに,一冊持ち帰っていった。

それが後世になってそちらの世界で発見されたんだろう。」



トシ君はトイレを済ませ戻ってきました。



「ふ〜,すっきり。」

「その人物がここに来たのって何年前なんだ?

あんたも当然生まれてないはずだよな。」




s「難しい質問だな。そもそも君たちと我々とでは時間の概念も軸も違う。」



ワク君は一瞬反応に困りましたが,理解しました。



「つまり,俺たちにとっては何百年の時間でもあんたたちにとっては違うってことか。」



s「まぁそんなところだ。その本を書いた人物が

ここに迷い込んでしばらく生活をしていたが,

我々にとってはつい先ほどのことだという認識だ。」



s氏は時間の概念について非常に難しい話をしてくれました。

はたしてワク君はともかく,トシ君には理解できるのでしょうか。








第7話 ヴォイニッチワールド7

ワクのわくわく冒険記シリーズ



「これを書いた人物のことをもっと詳しく教えてくれよ!

興味があるんだ。一体,この人物はここで何を感じて

何を思ってこんなものを書いたんだ!?」




s「う〜む。申し訳ないが私はこの人物の担当

ではなかったので,詳しいことはわからない。」



s氏は首を横に振りました。



「そうか・・・。気になるんだけどな・・・。

まぁ,でもなんか謎が一つ解けた気がするよ。」




ワク君は自分で納得したようです。そして続けて話し続けます。



「確認したいんだが,俺たちはここで数日過ごしているはずだ。

元の世界に帰ると一体,何日たっていることになるんだ?」




ワク君は話を自分たちのことに戻しました。



s「君たちがここに訪れた日以降であれば,どの時間軸に返すことも可能だ。

こちらの世界にはそれができる技術が確立されているからね。」



「じゃあ,いなくなった瞬間にもどれば,

周りの人にはまるで何もなかったかのように思われるのか。」




トシ君もそこは理解できたようです。



「まてよ。どの時間軸でもってことは,遠い未来にも行けるって

ことじゃないのか?そんなことしたらその世界に矛盾が生じてしまうだろう。」




s「その場合は,元いた世界とは非常に似ているが

別世界ということになる。君たちの世界でいう,パラレルワールドだ。」



s氏は指をぱちんとならしました。

そして,今説明したことを図に表示しました。







s「どうだい?イメージとしてはこんな感じだ。」



「なるほど・・・。いなくなった瞬間の時間軸に戻れば元の世界に帰れるが,

少しでも未来に行ってしまうとそれはもう別の世界ってことか・・・。」




s「そうだ。君たちは世界が一つしか存在しないと

考えているようだがそれは違う。本来この次元には無限の

世界が存在する。君たちが住んでいる世界はその中の一つでしかない。」



s氏はそう説明しました。



ワク君はふと新たな疑問がわいてきました。

その疑問をs氏にぶつけてみました。



「なぁ,この世界に来た人間は過去に何人もいるんだよな。

ひょっとして,同じ人間が何度もここへ来たりできるもんなのか?」




s氏は一瞬沈黙した後,口を開きました。



s「君は本当に鋭いな。波長があう人間でもだいたい一度しか来れない。

だいたいは巻き込まれて偶然こちらの世界に迷い込むんだが,

意図的にこちらの世界と向こうの世界を行き来できる人物がたった一人いたな・・・。」



「その人物って・・・。」



s「さぁな。我々は君たちの世界でいう名前というものが存在しないからな。」



「でも,なんて名乗っていたかは覚えているだろ?」



s氏は少し考え込みました。



s「私は立場上,君たちのような迷い込んできた人間を管理し,

無事に返す役割を担っている。膨大なデータの中に残っているかもしれない。」



s氏は再び指を鳴らし,目の前にそのデータを映し出しました。

空気中にバーチャル映像のようになってよくわからない文字が並んでいます。



「なんかこれ,すごいね。全然読めないけど。」



s「ここには向こうの世界から迷い込んできた

すべての住人の記録が残っている。君たちは向こうの

世界ではワクとトシと呼ばれていたようだな。」



二人はびっくりしました。



なぜなら自分たちの名前を

名乗った覚えはなかったからです。



s「どうやらこれだな。わかったぞ。何度もこちらと

向こうを自由に行き来した人物の名前が・・・。」



「・・・。」



s氏はこの後,衝撃的な人物の名前を挙げることになるようです。








第8話 ヴォイニッチワールド8

 ワクのわくわく冒険記シリーズ




s「その人物の名前は・・・。」



「名前は・・・?」



s氏は口を開きました。



s「ノストラ・・・ダムスと書かれている。」



「なっなんだって〜!!?」







ワク君は某ミステリー調査班の

メンバーのようなリアクションで驚きました。



「あれ,その人って昔話題になった人だよね。

確か予言ができるとかで世紀末に

盛り上がっていたらしいじゃん。」








トシ君でも彼の名前は知っているようでした。



「そういうことか・・・。

彼は予言ができたんじゃない・・・。

未来の世界に自由に行くことができたんだ。

この“ヴォイニッチワールド”を利用して!」




ワク君は納得がいったようでした。



s「ふむ。あの人物は確かに色々な次元の世界に行っては,戻ってきたな。」



「なるほどな・・・。なんか謎がもう一つ解けた気がするよ・・・。

戻ったら彼の書物でも読んでみるかな。」




ワク君は本を元の位置に戻しました。



「じゃあ,元の世界に戻れる準備ができるまでは待つとするか・・・。」



こうして二人はもうしばらくこの世界にとどまりました。



そしていよいよ元の世界に戻る準備が整ったようです。



二人は最初に迷い込んだ場所まで連れてこられました。

しかし,そこは最初に見た風景とは全く違い,

たくさんの植物が生息するジャングルのような場所でした。



「本当にここが最初に来た場所なの?ただの森じゃない!」



s「だから前に説明しただろう。それは体が慣れていないせいで

見てしまう幻覚だと。この景色が本来のものなんだ。

さて,ゆっくりお話をしている場合じゃない。準備はいいかな。」



二人はうなずきました。



「これって元の世界に戻ったら記憶とかなくなるのか?

しゃべったらまずいことも色々とあるだろう?」




s「こちらから強制的に記憶を消すことはない。

何をしゃべろうと我々に不都合はない。

ただ,移動の衝撃で記憶がなくなることがあるかもしれない。」



s氏は指を1回鳴らしました。



s「さぁ,目をつぶるんだ。」



s氏はさらにもう一度指を鳴らしました。



「う・・・。頭が・・・痛い!!!ぐわぁぁぁ・・・!?」



猛烈な痛みに気を失ってしまいました。



気が付くと二人は元の公園にいました。



少し離れた場所では少年昆虫団のみんなが何やらジェスチャーをしています。

どうやら早くボールを持って来いと催促しているようです。



「戻ってきたのか・・・。トシ,記憶・・・あるか・・・?」

「うん・・・。なんとかワールドに行って,帰ってきた・・・。」



二人の記憶は残ったままのようです。



「ちゃんと元の世界なんだろうな・・・。

実は別の次元の世界に飛ばされていた,なんてことはないよな。」




ワク君はサッカーボールを持ってみんなのところへ駈け出して行きました。



そして,明日はみんなで海水浴場へ遊びに行くことにしたそうです。



・・・。



はたして本当にここは元いた世界なんでしょうか・・・。



それとも・・・。



それは誰にもわかりません・・・。