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第537話 天照と月読の秘密 後編
リク君は二本の捕虫網を上手に使いこなし,
木の高い所にあるカブトムシを採集しました。
降りる時は,同じようにボタンを押すと,
長く下に伸びて地面に刺さった捕虫網を活用しました。
まるでエレベーターのようにゆっくりと縮み,
地上まで戻ってきました。
「相変わらずすごいね!」
まさらちゃんが驚いています。
「前から聞こうと思っていたんだけど,
いったいどこでそのアミを手に入れたんだい?」
レオンさんがずっと疑問に
思っていたことを質問しました。
「これは,僕が小学一年生の夏にある人からもらったんだ。」
彼は天照と月読をぎゅっと握りしめました。
「そうだっけ?」
「うん。」
彼らは先ほどの採集ポイントを離れて
別の場所へ向かうことにしました。
リク君たちは歩きながら会話を続けます。
「それって確か性能が違うんだよね?
前にそんなことを言ってなかったっけ?」
こういう時だけ記憶力のいいトシ君でした。
「そうなんだ。天照の方が
新型タイプで月読は旧型みたい。
ほとんど機能は同じなんだけど,
一部だけ月読にはできないことがある。」
「えっと,具体的にはどんなことなんです?」
だぬちゃんが今度は質問をします。
「僕がいつも使っている技は知っているよね?」
「陸と空でしたっけ?
よくわからないですけど,
いつも何か叫んでますよね?」
だぬちゃんが少し小ばかに
したような言い方をしました。
リク君は気にすることなく,
「そう。だけど本当は・・・。」
そこまで言いかけた時,
突然大きな羽音が響きわたってきました。
「こっこの音はー!!!」
トシ君が大声を出します。
「まさかハチか!?」
ブブブゥゥン!!
「しかも,オオスズメバチだ!」
みんなはハチの群れに
囲まれてしまったようです。
「このままじゃまずい・・・!」
「きゃぁぁぁ!!」
みんなはパニックになりかけていました。
「みんな僕の後ろに隠れて!」
リク君は捕虫網を2本とも平行に持ち構えます。
「(自分の力量不足と新型の網が1本しかない状況で
どこまでやれるかわからないけど・・・。)」
彼が天照を大きく振りかぶると・・・。
突如大きな旋風が巻き起こり,
ハチの群れを散らしていきます。
わずかにできた隙間から
一斉に逃げ出しました。
必死で走っていき,
なんとか全員無事に
下山することができました。
「ぜぇぜぇ・・・。」
「ハチ怖い・・・。
もう嫌だ・・・。」
みんなぐったりとしています。
「何とかなってよかった・・・。」
「さっきのは一体なんなんだ・・・?」
イツキ君がリク君に聞きました。
「ああ,あれはね・・・。」
突然のハプニングにより昆虫採集は中断となり,
この日はお開きになりました。
次回の更新は11月2日(土)を予定しています。