リクの少年昆虫記-最新話-

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第509話 庄外川の大戦①

エピソード0シリーズ 第2章
庄外(そうげ)川の土手下から慎重に陣を動かし,

先方隊が土手の頂上まで来たとき向こうの

対岸にはいくつかの光が見えました。



それはファザー率いる1000人近い

メンバーが発していた光でした。



歌仙「連絡します!すでに敵は万全の

迎撃態勢で待ち構えています!」





<秋田御米隊 リーダー:歌仙乙女>


"市城一九尾(いちしろいちくび)"という先鋒隊による

伝令がマザーや幹部らにすぐさま伝えられました。



彼女たちはまだ土手から数十メートル

離れた場所にいました。



そのころリク君とイツキ君は第一陣の

メンバーたちと一緒にいました。



第一陣の中で有力とされていたのは規模150人を誇る

"清涼納言連合"の配下チームである"阿須撃隊"がいました。



他にも同じく配下の"六出梨レディース"の

厩殿水滸(うまやどのすいこ)や

"秋田御米隊"の生井妹子も

士気の高いレディースのチームでした。





<秋田御米隊 リーダー:生井妹子>


光「いっておくがこれは俺たちの戦いだ。

マザーが参戦を認めたらしいが,

俺たちは別にお前たちの戦力など期待していない。」



先鋒を務める"光源氏隊"のリーダーは

自分たちの実力に絶対の自信を

持っているようでした。



「さっきリクにやられたくせに

その自信はどこから来るんだ・・・。

初めからお前たちと馴れ会うつもりも

味方になったつもりもない。」


「そうそう。

それぞれの利害が一致したから

今ここにこうしているんでしょ。」



リク君はまだ天照と月読をしまったままです。



「本当にそのアミで

戦うつもりか?」



イツキ君はすでにリク君の実力を

知っていましたが,改めて聞きました。



「こうみえて,

僕って殴り合っても

けっこう強いんだよ!」



二かっと笑いながらそう答えました。



「そりゃあ楽しみだ。」



マザーの名の下に参謀であるリアは,

先鋒の"シュワル・ツェ・ネッガ"と"阿須撃隊",

"光源氏隊"に川を渡って突撃するように命じました。



さらに相手へのかく乱として"六出梨(ろくでなし)レディース"と

"秋田御米(あきたおこめ)隊"には橋を渡って

敵の陣形を横から攻撃するように指示を出しました。



"市城一九尾(いちしろいちくび)隊"はリーダーの歌仙を中心に,

情報収集と他の陣営への伝令として川の手前に配置されました。



先鋒隊である第一陣はこの6部隊と

数十名のさらに小さい下位組織で構成されていました。



各陣営は配置につき,イヤコムによる

号令の合図で行動に移りました。



三大悪童のマザー陣営約900人,

ファザー陣営約1000人が

うなりをあげて衝突を始めました。



これがのちに不良界で伝説の戦いと語られる

"庄外川の大戦(そうげがわのおおいくさ)"です。



阿須撃隊が川を中ほどまで

渡ったところで,敵の投石が始まりました。



この部隊は魚鱗の陣の先端に

配備されていました。



先鋒隊の中では最も攻撃力が

ある部隊が担うポジションなのです。



この川はこの時期は水深が浅く,

平均してひざ下程度しかなく,

多少速度が遅くなるものの

渡河(とか)には支障がありませんでした。



田宮「投石とは卑怯な連中だ。」





<シュワル… リーダー:田宮根津>



シュワルのリーダーである

田宮が投石に苦戦しながらも

歩みを進めます。



佐藤「しかし,そんなことはお見通しだよ。」



<阿須撃隊 Wリーダー:佐藤慎太>



四橋「その通りだ,相棒!」



<阿須撃隊 Wリーダー:四橋猛>



阿須撃隊のダブルリーダーである

佐藤と四橋もひるむことなく進みます。



マザーの渡河先鋒隊はほぼ全員が

プラスチックや金属でできた

簡易の盾を装備していました。



投石に効果が見られないことがわかると,

ファザーの先鋒隊も川に入り,

突撃を開始しました。



阿須撃隊の斜め右後ろに

配備されていたのが光源氏隊でした。



この部隊のリーダーである光源治(ひかるげんじ)が

先に飛び出して相手に掴みかかりました。



どうやら一番槍は彼の手柄のようです。



川の流れに足を取られながら,

接近戦の喧嘩が始まりました。



他のメンバーも相手を見つけ,

取っ組み合いを開始しました。



あちこちで相手を罵倒しあう声と,

うめき声が聞こえてきます。



それぞれが必要最低限のライトを持っていたので

相手を見失うことはありませんでした。



周囲には電灯も多く,

視界は開けていました。



マザーの様々な部隊に川岸から投石が来るので,

渡河作戦は非常に危険が伴う任務となっていました。



リク君とイツキ君はしばらく

堤防の上から様子をうかがっていました。



「とりあえず,

相手の幹部を一人捕まえて,

ファザーの陣形と居場所を聞き出すのが早いか。」



「そうだね。

そうしようか。」



二人は川の渡河を回避し,

橋から正面突破で敵の陣形の

中に向かって行くことにしました。



いよいよ二人もこの戦いに

参戦していくことになるのです。



次回の更新は4月20日(土)を予定しています。







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