第573話 マーボー,ヤンキーと出くわす マーボーシリーズ
リク君達の友人であるパクちゃんの
叔父さんにマーボーという人物がいました。
彼は祖母が残した莫大な遺産を相続したのですが,
とある理由で一文無しになってしまいました。
その後は定職に就かず,
ウーチューバーの配信を
するなどで日銭を稼いでいました。
しかし,そんな日も長くは続きません。
一度は大金を手に入れて,
豪遊生活を味わってしまったのです。
その快適だった日々の事が
いつまでも忘れられなかったのです。
マーボー「ああ,最近なんだか配信の
視聴数も落ちてきたし,
どうしようかなぁ・・・。」
そんなことをつぶやいていると,
すでに夜の11時を過ぎていました。
彼は小腹がすいたようで,
近くのコンビニまで夜食を
買いに行くことにしました。
マーボー「引きこもりには,コンビニまで
行くのってハードル高いんだけどなぁ・・・。」
文句だけは立派に言えるようでした。
彼がコンビニで買い物を終えて自宅付近まで戻ってくると,
そこには数人の若者がたむろしていました。
近くは街頭しかないような道で,人気も全くなく,
彼らの騒いでいる声だけが響き渡っていました。

マーボー「なんかやばいやつらがいるなぁ・・・。
でもあそこを通らないと家に帰れないし・・・。」
すると向こう側からこちらへ向かってきた一人の青年が
数人のヤンキーたちの前を通り過ぎようとすると・・・。
なんと,彼らにその青年がからまれているようでした。
マーボー「やっぱりやべぇやつらだった・・・!
関わらないようにしないと。」
するといつの間にかマーボーの隣に立っていた
一人のおばあさんがマーボーに話しかけます。
「あんた,彼を助けてあげなさいよ。」
マーボー「え?何?急に出てきて!?
誰?というかなんで俺が?」
マーボーはいきなり話しかけられて
かなり混乱していました。
「あいつらはおそらくナイフを持っているよ。
出ていったらきっと刺されるね。」
マーボー「じゃあ,余計に助けになんて行きたくないよ!」
「あんたもナイフをもって
いけばいいじゃないか。」
そう言って,おばあさんは懐から彼女の手には
似つかないごついナイフを取り出しました。
マーボー「いやいや,持っていても無理でしょ!
というかなんで俺が見ず知らずの人を
助けにいかなくちゃならんのだ!?」
「あんたもちょっとくらい社会の役に立ったらどうだい?
どうせ,1日中ネットを見て陰謀論でも書き込みながら,
ウーチューブの配信で小銭を稼ぐみじめな生活を送っているんだろう。」
なぜかこのおばあさんはマーボーの
生活がわかっているようでした。
マーボー「ぐっ・・・。
なぜそれを・・・。」
「ほら,さっさと行って,刺し違えてこい!」
おばあさんはマーボーに
ナイフを握らせ,背中を押しました。
マーボー「そんなことしたら俺が
死んじゃうかもしれないでしょ!?」
「はぁ!?あんたはまだ生きたいのかい?
いつまで生(せい)にしがみつくつもりだい?」
マーボー「いやいやいや!
なんで俺が生きたらまずいんだよ!」
彼はあたかも正論を
おばあさんにぶちこみますが・・・。
「少しは人の役に立ってから死ねば,
あんたが生きた意味もあるってもんだ。」
マーボー「むちゃくちゃだ!」
そんな押し問答をしている間に,
ヤンキーに絡まれていた青年は身ぐるみはがされ,
たまたま彼らが持っていたチェーンで電柱に縛られ,
サンドバッグのように殴られていました。
そのうちに,彼はぐったりとして動かなくなりました。
ヤンキーの中にいた女は,
その様子を嬉々として撮影して
動画をネットにアップしていました。
向こう側には人影が見えました。
おそらく誰かが同じようにこの場を
通りすぎるのをためらっているのでしょう。
マーボーはおばあさんを振り払い,来た道を戻り,
かなり遠回りをして自宅へ帰っていきました。
その後,そこが殺人事件の現場となった事は
彼にとってどうでもいいことだったのです。
しかし,あのおばあさんは何者だったのでしょうか。
なおこの物語は事実を元にしたフィクションです。
☆ 次回の更新は11月22日(土)を予定しています。