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第601話 夏の終わりの虫の声
八月中旬の夜。
昼間の暑さがまだ残る雑木林へ,
少年昆虫団の5人が昆虫採集にやってきました。
森の中は昼間とは別世界です。
木々の間を吹き抜ける風は少し涼しく,
空には夏の星が輝いています。
まだ遠くではセミが鳴いていました。

「ミーン,ミーン……。」
けれど,草むらから聞こえてくるのは,
セミとは違う音でした。
「リーン,リーン……。」
「……今の何の虫?」
「スズムシだね。」
まさらちゃんは足を止めて,
鳴き声のする草むらを見つめました。
夏の盛りにはセミの声ばかりだった林も,
いつの間にか少しずつ秋の虫の声が混ざっています。
「もう秋の虫が鳴いてるんだな。」
「八月中旬だからね。
まだ夏だけど,秋の虫も出てくる時期なんだよ。」
5人は虫を探しながら,
ゆっくりと林の中を歩いていきました。
木の葉が風に揺れ,
遠くからセミの声が聞こえてきます。
その合間に,草むらから小さな虫の声が聞こえてきました。
「リーン……。」
「なんだか,いいね。」
「昼間とは全然違うな。」
まさらちゃんは懐中電灯を消しました。
暗闇の中で耳を澄ますと,
虫たちの声がよりはっきり聞こえてきます。
だぬちゃんはというと,
少し離れたところで退屈そうに立っていました。
「虫を探しに来たのに,
ずっと音を聞いてるだけですね。」
「こういうのも昆虫採集の楽しみだよ。」
その横では,トシ君がお菓子を食べています。
「オイラはこっちのほうが楽しい。」
「また食べてるんですか。」
そんな二人をよそに,
リク君たちは再び草むらへ目を向けました。
すると,今度は別の鳴き声が聞こえてきました。
「コロコロコロ……。」
「これはコオロギね。」
その声を聞きながら,
5人はしばらく歩きました。
夏の夜の蒸し暑さの中に,
ほんの少しだけ秋の気配が感じられます。
まだセミは鳴いている。
でも,草むらでは秋の虫たちが鳴き始めている。
少年昆虫団の5人は,
そんな季節の変わり目を感じながら,
夜の雑木林を歩いていました。
そのときです。
「ジー……ジー……。」
「ん?」
トシ君が突然,
鳴き声のする方向を指差しました。
「これ,何??」
「ケラだね。」
夜の雑木林に,再び虫たちの声が響きます。
「なんだ。地中ゼミかと思った。」
「そんな昆虫は存在しない。」
夏と秋の入り混じった夜を楽しみながら,
ゆっくりと家路につきました。
☆ 次回の更新は9月12日(土)を予定しています。