ワクのわくわく冒険記シリーズ

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目次





バトルヤバイヤロ3限目 第1~4話

第1話 バトルヤバイヤロ3限目 1

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




ワク君とトシ君はヴォイニッチワールドで

元の世界へ帰るつもりが別の世界に来てしまいました。



そこでは,学校の中で命がけのデスゲームが行われていました。



1時間目の社会,2時間目の特別活動を終え,

3時間目は体育の授業になっていました。



2時間目を生き残った人たちは体操服に着替え,

運動場に集合させられていました。



放送「それでは,3時間目は体育の授業だ。全員,整理体操!」



音楽が流れてきました。



「従わなければ・・・。」



???「きっとドカンだねぇ・・・。」



隣を見るとワク君よりも少し背の

高い少女がいました。



ワク君と目が合うと,



リサ「アタシはリサ。よろしくね。

君って小さいね。小学生だよねー?」



リサ 14歳



リサちゃんは満面の笑みで話しかけてきました。



「うん。そうだけど・・・。君もあの

デスゲーム"大富豪"の生き残りなんだよね?」




彼女の笑顔からはとても死線を潜り

抜けてきたようには見えませんでした。



リサ「うん,そうだよー。アタシはね,こう見えて頭いいんだー。」



話し方は賢そうには見えませんでしたが,

あのデスゲームを勝ち抜いたということは

そこそこ頭の切れる少女なんだなとワク君は思いました。



リサちゃんは,中学2年生で髪の毛はブロード色でした。

父親が外国人のハーフのようです。



日本人離れしたその瞳と顔立ちは

とても可愛らしく,大人びて見えました。



体操をしながら二人は会話を続けました。



リサ「君はどうしてここに連れてこられたの?」



「君じゃない,ワクだ。こっちはトシ。」



ワク君は自己紹介とヴォイニッチワールドの

ことやこれまでのいきさつを説明しました。



リサ「ええー。なんかウソっぽーい。」



「ワク君,ちゃんと体操しないと殺されちゃうよ!」



ワク君の後ろにいたトシ君が忠告しました。



「わかってるよ!」



全員は準備体操を終えました。



山岡「一体,何を始めるつもりなんだろうねぇ・・・。

ワタシャもう年だし,運動なんて何年もやってないからできやしないよぉ・・・。」



ワク君の斜め前にいた主婦の山岡さんは

腰をひねりながらそう言いました。



「きっと,大丈夫ですよ。」



ワク君の言葉に,山岡さんは後ろを振り返り,



山岡「そうだね!ここまで来たんだから

今度だってクリアしてやるよ!」



と自信満々にそう言いました。



放送「3時間目は鬼ごっこをやるよ!」



「え,それってさっきの学活と一緒じゃん!?」



思わずトシ君が突っ込んでしまいました。



放送「これはれっきとした,体育の授業だよ!

体力も知力も度胸も育てることができる立派な競技さ!」



大音量に流れる放送に皆は何も言えませんでした。



「そうかなぁ・・・。鬼ごっこなんてただの遊びじゃん・・・。」



トシ君はブツブツとつぶやいていました。



放送「それでは競技の説明をするからよく聞くように!」



一体,どんなルールなのでしょうか。



第2話 バトルヤバイヤロ3限目 2

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




放送「今から60分間の間,鬼から逃げ回ってもらうよ!

逃げ切った人は次の授業に出ることができます!」



風花「ってことは逃げ切れなかった奴は・・・死ぬのか・・・!?」



風花さんがこぶしを握り締めて怒りをあらわにしていました。



放送の内容から分かったルールは次のようでした。



・最初の10分間は逃げる時間。10分後にゲーム開始でその後の60分間を逃げ切れば勝ち
・鬼は最初は2人。10分ごとに3人ずつ増える
・鬼に背中をおとなしく3回たたかれると捕まる。少しでも抵抗すると反撃モードになり命の保証はない
・鬼は返り討ちにしてもよい
・捕まった人は牢屋に自動的に移されることになる。鬼も一緒についていくので鬼は再び牢屋からスタートする
・牢屋では10分ごとに処刑タイムがある(つまり開始9分に捕まった人は1分後に処刑される)
・牢屋に捕まった人を助けることもできる
・鬼を倒すと牢屋のカギを落とすことがある。ただし,一つのカギで牢屋を開けられるのは1回のみ
・移動できる範囲にはいくつか宝箱が設置されている。中には役立つものが入っている
・60分過ぎた時点で牢屋に入っていない人は生き残りとなる
・隠れるエリアは指定された範囲。先ほどまでいた校舎の中に入ることはできない
・エリアはビオトープエリア,巨大アトラクション遊具エリア,実験棟エリアの3つ
・牢屋は校舎前に設置される
・逃げる生徒の数は1年生の生き残りA組8人,B組5人,C組3人,

さらに別の教室で生き残ったD組6人,E組5人,F組5人の合計32人


「よし,ルールはわかった。」

「まったくわからん!」



トシ君が自信満々に言いました。



リサ「なんか,トシ君って面白い子だねー。

それに比べて,ワク君はなかなか頭が良さそうね。」



リサちゃんはワク君の実力を見抜いているようでした。



放送「それでは始めるよー!今から10分以内に好きな場所に移動してね!

10分後に最初の鬼が登場してから60分間逃げ続けるんだよー!

みんな,がんばれー!先生は心の底から応援しているよ!」



真木「・・・。本当にふざけている・・・。」



近くにいた大学生の真木氏もこのゲームの

理不尽さに嫌気がさしていたようです。



「真木さん,一緒に逃げましょうか。」



ワク君が誘いました。



真木「そうだね。僕も君たちがいると心強いよ。」



近くにいた女子高生のアヤネ,IT社長の白馬,

主婦の山岡さんもワク君たちに同行することにしました。

OLの風花さんはすでに見当たりませんでした。



さらに山岡さんと仲良くなったという,

1-Bと1-Cから生き残った人たちも合流しました。



1-Bからは田村,青山,宮川,1-Cからは優香とそれぞれ名乗りました。

田村氏は肥満体型で額にずっと汗をかいていました。



田村



青山氏は30代前半の男性で若いころは

ボクシングをやっていたらしく,腕には自信があるようでした。





青山



宮川氏は大学院生で本来なら司法試験を受ける予定だったそうです。





宮川



優香さんはまだ若干二十歳ほどで,容姿端麗,長い髪をストレートにおろし,

所作はお嬢様のように美しく,とても育ちの良い女性に見えました。



新しいメンバーを4人と今までの6人,リサちゃんを合わせ,11人となりました。



「それじゃあ,行きましょう。時間もそんなにありません。」



田村「おいおいおいおい,なんでこんな

小学生が仕切っちゃっているの!?」



脂性の田村氏が額に汗をかきながら文句を垂れました。



山岡「まぁまぁ。田村さん落ち着いて。」

真木「彼はこう見えて,非常に優秀な少年なんですよ。

とりあえず彼のいうとおりにしてみませんか。」



真木氏もフォローしました。



優香「いいんじゃないですか。

今はケンカしている場合ではありませんよ。」



彼女がそう言うと特に男性たちは

これ以上何も言えませんでした。



果たして彼らはどこに隠れるつもりでしょうか。



第3話 バトルヤバイヤロ3限目 3

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




ワク君一行は実験棟の前に来ていました。

ここは運動場から一番遠い場所にある建物でした。



高さは5階建てで入り口は正面と裏口の二つがありました。



扉を開けて中に入っていきました。

中にはエレベーターもついていました。



田村「おいおいおいおい,エレベータが

あるじゃん!これで5階まで行こうよ!」



宮川「しかし,かなり小さなエレベータなので,

全員が一度には乗れないんじゃないでしょうか。」



宮川という男は頭は良いみたいですが,

それをひけらかすようなことはせず,常に低姿勢でした。



田村「わかっているよ,宮川さん。順番に上っていこう。」



その時,放送が入りました。



放送「10分経ちましたので,ただいまより鬼ごっこを開始します!

鬼が2匹登場します!くれぐれも捕まらないようにご注意を!」



青山「おっ。いよいよか。俺の力が試せる。

どっからでもかかってこいや!」



青山氏は握りこぶしを作り,それを振り上げて威嚇しました。



アヤネ「とうとう始まった・・・。」



不安そうにしているアヤネの肩を白馬がそっと抱き,

白馬「大丈夫だよ,君は僕が守るから。」



その言葉にアヤネはホッとした

気持ちになり,心が落ち着きました。



「あれ,アヤネちゃんってさっきまで

彼氏が一筋って言っていたような・・・。」




空気を読まないトシ君がボソッと

つぶやいたので,後ろからワク君が蹴り飛ばしました。



「いってぇぇ・・・。」

「空気を読め。このクソ野郎・・・。

アヤネちゃんは1時間目に彼氏を亡くしたばかりなんだぞ!」




ワク君の提案により,田村,優香,山岡,アヤネの4人が

エレベータを使い,残りは階段で最上階まで行くことにしました。



田村氏はどうしても歩きたくないというので

女性たちに混じってエレベーターを使うことになりました。



リサちゃんは階段で上に行くことにしたようです。



階段で上に上る途中,リサちゃんはワク君に向かって,

リサ「あんたって本当に冷静で頭の切れるタイプねー・・・。」



宮川「どうしてそう思うんでしょうか?

失礼ながら私にはただの小学生にしか見えませんが・・・。」



ワク君は何も答えませんでした。



リサ「少しでも生き残る確率をあげるために,二手にわかれたんだよねー?

エレベーターなんて鬼に見つかれば逃げ場がないよねぇ。

他を囮にして自分はちゃっかり階段で上って生存率をあげようとした。違う?」



「さぁね。どのみち,女性にはこの階段はキツイ。

だから君にもエレベーターを勧めたんだけどね。

それに,いざとなったときに,少しでも体力を

温存してもらうために,エレベーターを使ってもらったんだよ。」




ワク君の返しにリサはさらに感心したようで,

リサ「いいねぇー。アタシ,頭のいい子って

大好きなんだー。バカは嫌い!」



そう言い放ってトシ君を睨みつけました。



「バカな奴かー。そうだよねー。

バカっていうのは嫌だよねー。話が通じないしさー!」




その場にいた全員が,「お前のことだよ!」と

思いましたがなんとかこらえました。



上る途中,窓から下を眺めると全身真っ黒な

恰好をして頭に2本の黄色い角を生やした鬼が

この建物に向かってきていました。







真木「なぁ,ひょっとしてあれが・・・鬼・・・!?」



鬼は1匹だけでした。



ただ,この実験棟に入ってきたようです。



「早いな・・・。」



5階につくと,エレベーター組はすでに到着していました。



アヤネ「ハハハ,お先!」



白馬「どうやら,笑っている場合ではないみたいだ・・・。

鬼が1匹,この建物の中に入ってきたのを確認した。」



その場に緊張感が走りました。



第4話 バトルヤバイヤロ3限目 4

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




実験棟の最上階は,東側にエレベーターホールがあり,そこに便所もありました。



廊下が2本あり,いくつかの実験部屋が連なっていました。



一番奥は非常用の階段だけで,裏口につながっているようです。



ワク君はトシ君と一緒に便所でおしっこを済ませました。



田村「ガキのションベンを待っている間に,

鬼が来たらどうすんだよー!?」



田村氏はいら立ちを隠せません。



「お待たせー!」



すっきりとしたようです。



真木「最上階に来たのはいいけど,これから

どうするんだい?鬼がもうすぐここへやってくるかも。」



「う~ん,それはどうかな。」



ワク君の意見に皆が注目していました。



「鬼は階段で上ってくる。1匹しか来ていない状態でエレベーターが

動いていないからね。なら,何階に俺たちがいるかわからないから,

各部屋をしらみつぶしに探しているところだと思う。」




真木「なるほど。」



ワク君がさらに話を続けます。



「今回のテーマはいかに長く生き残るか。つまり,

なるべく鬼に無駄な時間を使わせることが大事でしょ。

だから序盤は部屋がたくさんあって,隠れるところが多いこの場所を選んだんだ。」




優香「そうだったんですか。本当にワクさんってすごい方なんですね。素敵です。」



優香さんにそう言われてワク君はちょっぴり照れていました。



田村氏はどうも優香さんがワク君を

ほめることが気に食わないようです。



田村「ふん・・・。それくらい俺だって

思いついたさ。鬼が出たって返り討ちにしてやるよ!」



田村氏が大声でそう叫びました。



山岡「田村さん,そんな大声を

出したら鬼に聞こえちゃうよ・・・!?」



青山「大丈夫だって!俺のプロ並みのパンチで

鬼なんてすぐにダウンさせてやるよ!」



青山氏はシャドーボクシングをやってみませました。



アヤネ「期待しているよ!」



その時,階段の下から足音が聞こえました。



「まずい,今の声を聞かれた!?

鬼が来るぞ。みんな逃げよう!」




廊下を渡って非常階段から

下に逃げることにしました。



階段からは鬼がものすごい速さで追いかけてきました。



田村「ひぃぃぃ,鬼が来てるぅぅぅ~!?」



一番足が遅いのはトシ君ではなく,

脂性で太った田村氏でした。



「みんな,後ろを見るな。とにかく逃げろ!」



田村氏は懸命に逃げましたが,

非常階段の入り口で鬼に捕まってしまいました。



田村「何もしない!?抵抗しないから殺さないでぇぇ!?」



大人しく背中を見せ,鬼に3回たたかれました。

すると,田村氏と鬼はスッとその場から消えてしまいました。



4階まで降りかけていたトシ君とワク君はしっかりとその様子を確認しました。



「はぁはぁ・・・。本当に人が消えた・・・。

なんなんだ,この世界は・・・!?」


「みんなぁ・・・。田村さんが捕まって消えちゃったよ!?」



トシ君は前を走る大人たちに大声で伝えました。



バトルヤバイヤロ3限目 第5~8話

第5話 バトルヤバイヤロ3限目 5

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




田村氏以外の全員が実験棟の入り口まで降りてきました。



途中でいくつかカギがかかって開いていない部屋や

100人は収容できる講堂なども確認しましたが,

丹念に調べている暇はありませんでした。



唯一発見できたのは,実験室の奥に置かれていた宝箱でした。



トシ君が恐る恐る中を開けてみると,双眼鏡が入っていました。





その双眼鏡で実験棟の入り口から遠く離れた

校舎前の牢屋をのぞいてみると,確かに田村氏が収容されていました。



「本当にワープしたんだ・・・。」



白馬「信じられないな・・・。でもこれが現実で

そういうゲームってことなんだな・・・。」



みんなは,この世界はどこか現実世界とは

何かが違うようだと感じていました。



「あ・・・。」



ワク君が思わず声を上げたので,

みんなはワク君に注目しました。



アヤネ「どうしたんだい?」



ワク君は双眼鏡を覗きながら,



「田村さんが・・・。牢屋の中で・・・

頭を吹き飛ばされて・・・処刑された・・・。」




と言いました。



真木「なんだって!?」



すると,どこからかスピーカ越しの声が聞こえてきました。



放送「開始から10分がたったよ!処刑されたのは二人!

残りは30人だよ!みんな,がんばれ!先生は応援しているぞ!

でも,鬼がさらに3人増えるから気をつけるんだぞ!」



「くそ・・・。」



ワク君は持っていた双眼鏡を降ろしました。

ヒモがついていたので首にかけておくことにしました。



山岡「田村さん以外にも捕まった人が

いたんだねぇ・・・。なんてこったい・・・。」



実験棟の目の前は高い木や草木が茂っており,

校舎からは直接,鬼にみられることはなさそうでした。



青山「もとはといえば,こんなところに

逃げてきたから田村は死んだんじゃないのか!?」



青山氏がワク君を睨みつけました。



「俺のせいだっていいたいのか?

そいつは的外れな見解だぞ。」




ワク君はひるむことなく言い返しました。



リサ「そうねぇ,アタシもそう思う。

ここに来たのは間違いじゃないでしょ~。」



リサちゃんがワク君の肩を持ちました。



青山「ふんっ。やってられるか!こんなガキどもが

仕切るようなグループにいたら命がいくつあっても足りねぇ!」



山岡「まぁまぁ・・・。青山さん,落ち着いて・・・。」



山岡さんがなだめます。



アヤネ「じゃあ,こういうのはどう?

ここで二手に別れて逃げるっていうのは!」



青山「そうだな。それがいい。

俺は俺の隠れたい場所へ行く。」



青山氏がそう切り出しました。



アヤネ「あ,じゃあ,アタシは青山君についていくね!

だってボクシングやってたんでしょ!?

それなら鬼だって返り討ちにしてくれるじゃん!」



青山「おう,任せろ!少なくとも

そんなガキどもよりかは役に立つぜ!」



ワク君は何も反論しませんでした。



白馬「ちょっと待って,僕もついていくよ。アヤネさんが心配だ。」



結局,主婦の山岡さんも青山氏についていくとになりました。



「ワク君,いいの?あんな,勝手なことをさせて・・・。」

「まぁ,仕方ないだろう。」



その時です。茂みがごそごそと動きました。

果たしてそれは・・・。



第6話 バトルヤバイヤロ3限目 6

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




実験棟の目の前にある,茂みがごそごそと動きました。



次の瞬間,その茂みから鬼が2匹も

飛び出してきたのです。



頭には2本の角が生えていました。



白馬「おっ鬼だ!?鬼が来たぞ!!」

アヤネ「きゃぁぁ・・・!!」



アヤネは思わず白馬氏に抱きつきました。



白馬「アヤネちゃん!?大丈夫だよ,

君は僕が守って見せる!」



アヤネは抱きつきながらニヤッと笑いました。

その様子をワク君は見逃しませんでした。



「とにかく,逃げよう!」



1匹の鬼はワク君たちを追いかけてきました。

もう1匹は青山氏のグループをターゲットにしたようです。



ワク君たちを追いかけてきた鬼は

みるみるうちにその距離を縮めます。



とっさに,真木さんが体を前に出し,

ワク君たちを守ろうとしました。



真木「君たちだけでもなんとか逃げるんだ!僕のことはいいから!!」



鬼は真木さんの背中を3回たたきました。

そして,鬼と真木さんはその場から一瞬で姿を消しました。



「そんな・・・。真木さん・・・。」



優香「ああ,なんてこと・・・。」



優香さんも悲しみに暮れています。



「くそっ!!真木さんに

身代わりになってもらうなんて・・・。」




しかし,ワク君達には悔やんでいる時間はありません。



「誰か,今の時間がわかる人っている!?」



優香「あ,わかります。今は・・・

ゲーム開始から12分経過しています。」





<優香>

「あと,8分か・・・。急いで鬼を倒して牢屋のカギを

探し出そう。その前に,行くときに見かけた,器具庫によらせてほしい。」




リサちゃんが,



リサ「そんなところによってどうするのー?」



と聞きました。



「あ,そっか。サッカーボールだね。」

「ああ,それさえあれば,某名探偵並みに

強い威力のシュートを鬼にお見舞い出来る!」




ワク君たちは周辺に気を配りながら,実験棟から200m

離れたところにある平屋の建物までやってきました。



その一角に,器具庫とプレートに

書かれたスペースがありました。



中からサッカーボールを見つけると,

持ち運び用のネットに入れて方に背負いました。



「これで,よし。」



喜びもつかの間,ワク君たちは近くに

いた鬼に見つかってしまいました。



宮川「ワク君,鬼が・・・鬼が・・きます!!」



宮川氏は完全におびえていました。



「ちょうどいい。こいつでもくらいな!!」



ワク君が思いっきり,ボールを蹴ると見たことも

ないような速さで回転しながら飛んでいきました。



ドゴォォォ!!!



ボールは鬼のみぞおちに決まりました。

鬼は泡を吹いて倒れました。



すると不思議なことに,鬼の体は消えていきました。

地面には牢屋のものと思われる古臭い感じの

真ちゅうでできたカギが落ちていました。



「ホントに鍵が出てきた!」



リサ「へぇ~。本当にサッカーボールで鬼を倒しちゃった。

頭がいいだけじゃなく,腕もたつんだね~。

ますます好きになっちゃったよ。」



ワク君はリサちゃんの冗談なのか

本気なのかわからないその発言に少し戸惑っていました。



宮川「助かった・・・。本当に,

死ぬかと思ったよ・・・。」



宮川氏は腰を抜かして震えていました。



第7話 バトルヤバイヤロ3限目 7

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




ワク君たちのグループとは別行動をとることにした,

青山氏たちのグループも鬼に追われていました。



何mか走った後,青山氏が立ち止まりました。



青山「にげてばかりいても仕方ない!

こっちから鬼を倒してやる!」



運動場の片隅に避難していた,女子高生のアヤネとIT社長の白馬,

主婦の山岡さんはその様子をかたずをのんで見守っていました。



アヤネ「青山君,がんばって~!鬼をやっつけて!」



青山氏は間合いに気をつけながら,

ファイティングポーズをとりました。



青山「さぁ,どこからでもかかってきな!」



退治する鬼は角が2本ありました。



全身真っ黒なタイツをはいているような肌で,

顔には目もなく,のっぺらぼうなようなもので,

当然,表情もなく,とても生き物とは思えない存在でした。



鬼は少しずつ近づいてきます。



どうやら,捕獲モードから対戦モードへ切り替えたようです。



青山「俺の殺人パンチで死ねやぁぁぁぁ!!!」



青山氏が強力な右ストレートを

鬼の顔面にぶつけました。



しかし,鬼はびくともせず,青山氏の動きをまねて,

右ストレートをくり出しました。



ボムッ!!!



鬼のパンチはその威力は尋常ではなく,

直撃した彼の顔面は破壊され,

脳や目玉があたりに飛び散りました。



アヤネ「いやぁぁぁぁ!!!!」



アヤネ氏が思わず声をあげました。



鬼はその場から消えました。



どうやら対戦が終わると勝っても負けても

その場から消える仕組みのようでした。



アヤネ「ちょっと・・・!?

なんで簡単に死んじゃってんのよ!?

青山君にせっかくついてきたのに

やられてんじゃないわよ!

どこが,元ボクサーなのよ!くそったれ!」



頭部を破壊された死体の前で

アヤネちゃんはわめき散らしています。



以前のアヤネちゃんとは思えないような

セリフに白馬氏は少し戸惑っていました。



しかし,目の前で人が残酷な死に方をしてしまい,

動揺しているんだと思うようにしました。



白馬「アヤネちゃん。大丈夫だよ,

必ず僕が君を守るよ。だから,安心して。」



白馬氏は優しい声でアヤネちゃんに寄り添いました。



山岡「おーおー。若いっていうのは

いいねぇ。青春だねぇ・・・。」



場面は再びワク君のグループ・・・。



ワク君は鬼を倒した直後,

後ろから別の気配を感じました。



振り向くと,自分たちと同じ逃亡者のグループでした。



「あんた達も鬼におわれていたのか?」



ワク君が聞きました。



グループは男が2人,女が2人の4人で構成されており,

それぞれ,雄太,黒山,メイ,サエと名乗りました。



黒山は20代前半,雄太はまだ中学生くらいの少年でした。

メイとサエは幼馴染で小学4年生でした。



黒山「ええ,先ほどまで鬼に追われていました。

しかし,鬼をやっつけることができるなんてすごいね!

俺たちもさっきまで鬼に追われていて仲間が一人捕まってしまったんだよ。」



「そうなんだ。オイラたちと同じだね。

だから今からその仲間を助けに行くんだよ。」




トシ君が状況を説明しました。



雄太「それなら,俺たちも一緒に連れて行って

もらえませんか?俺たちも仲間を助けたいんです。」



宮川「そうですね,それがいい。そちらのリーダーは,

えっと・・・黒山君でよかったのかな?」



黒山氏は首を横に振り,



黒山「彼が,このグループのリーダーだ。」



と言って,雄太の肩に手をやりました。





<雄太>

雄太「あ,えっと,一応そういうことに

なっていますけど,全然何もできていないんで・・・。」

メイ「何,言ってんのよ!雄太お兄ちゃんが

いなかったら,今頃,私たちは全滅していたよ!」



メイという可愛らしい女の子が言いました。



サエ「そうだよ!このグループの

リーダーはゆう兄しかいないよ!」



もう一人の女の子も同様に雄太君の

ことをほめちぎりました。



黒山「年長の自分が情けないっていうのも

あるんですが,雄太君には本当に助かっています。」



黒山氏は苦笑いしながらそう言いました。



このメンバーたちと仲間が捕まっている牢屋を目指すことになりました。



第8話 バトルヤバイヤロ3限目 8

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




つい先ほど,仲間を同じように捕らえられてしまった

雄太,黒山,メイ,サエの4人グループと合流しました。



彼らとともに牢屋を目指します。



次の処刑まで,残された時間はあと5分ほどです。



ワク君たちはなるべく運動場の隅を通りながら,

少しずつ校舎前に設置された牢屋へ近づいていました。



牢屋の大きさは,教室1つ分ほどの広さで,

天井には例の殺人ビームが目を光らせていました。



牢屋から100mほどまで近づいたところで,

花壇の裏に隠れ,様子を伺うことにしました。



鬼はカギのかかった入り口に一体,

その周辺を警備している鬼が2体いました。



リサ「全部で鬼は3体かー・・・。ワク君,

どうやって真木さんを助けるつもり?」



ワク君は目をつぶって何かを考えています。



黒山「みんなでわざと捕まりに行って,鬼が一時的に

姿を消した隙に鍵を開けるっていうのはどう?」



<黒山>

優香「なるほど。それは名案かもしれませんわね。」



その時,別のグループが牢屋に近づいていくのが見えました。

どうやら黒山氏と同じアイデアを実行しようとしているようです。



3人が牢屋に近づき,鬼が彼らを発見しました。



サエ「これってチャンスなんじゃない?

あの人たちに便乗してアタシたちも行きましょ!」



しかし,雄太がもう少し様子を

見ようといい,ワク君もそれに同意しました。



鬼はさきほどの3人にものすごい速度近づくと,

有無を言わさず,彼らの頭をかみ砕きました。



鬼には口がないと思われていましたが,

実は強力な牙を持った大きな口を隠していたのです。



3人はあっという間に絶命し,鍵を持っていた

残りの一人はその場から死に物狂いで去っていきました。



「牢屋に近づくものは容赦なく殺しに来るのか・・・。」



リサ「あぶなー・・・。もし今の作戦を実行していたら,

死んでたのはアタシたちだったねー・・・。」



リサちゃんは胸をなでおろしました。



残酷なシーンを見ても

特に気にしていない様子でした。



小学生のサエとメイはさすがにショックを受けて

いるらしく,震えながら雄太に身を寄せていました。



「優香さん,次の処刑までの

残り時間はわかりますか?」




優香「はい,わかります。あと3分と20秒です。」



優香さんが時計を見ながら答えました。



「トシ,お前ならあの鬼を食い止めることくらいできるよな?」

「ええ!?ああ・・・。おお・・・,やってやんよ!?」



少し動揺しながらもやれるといいました。



「手前の鬼を1体だけでいいから止めてくれ。

もう1体はボールで俺がやっつける。

手元に戻ったボールでさらに奥の扉の前の鬼をやる。

救出した後に,足止めした鬼をやっつけてやる。」




宮川「いくらなんでもそれは無茶では・・・。」



宮川氏が怪訝な顔をしました。



「こいつはな,頭は空っぽだが,

体力と運だけはある。こいつに任せておけば大丈夫だ。」




ワク君はトシ君のことを少しずつ

認めるようになってきました。



雄太「まってくれ,俺も足止めに参加

させてほしい。少しでも役に立ちたいんだ。」



「でも大丈夫なの?何が起きても責任はとれないよ?」



ワク君は少し心配をしましたが,止めても無駄だと

感じたのか,それ以上何も言いませんでした。



残り時間は1分を切っていました。



「行くぞー!」



3人は隠れていた花壇の裏から

勢いよく飛び出して敷きました。



鬼はその声を聞き逃しませんでした。



手前の2体がものすごい速さで

ワク君たちに向かってきました。



果たして救出作戦は成功するのでしょうか。



ババトルヤバイヤロ3限目 第9~12話

第9話 バトルヤバイヤロ3限目 9

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
牢屋につかまってしまった真木さんを

助けるためにワク君とトシ君,

新しくグループに合流した中学生の雄太の

3人が牢屋に向かって走り出しました。



それに気づいた牢屋を守る2体の鬼が

ものすごい速さで突っ込んできました。



トシ君は腰を下ろし重心を下げました。

そして,相撲取りのような構えを取りました。



「どっからでもこぉい!!」



1体の鬼がトシ君にぶつかりました。

しかし,トシ君はひるむことなく鬼を押し返します。



「うぉぉぉぉぉ!!!」



雄太「俺も手伝います!!」



雄太もトシ君の体を支え,鬼の力に対抗します。

残ったもう1匹の鬼がワク君に近づいてきました。



「悪いが,時間がないんだ。消えてくれ!」



ワク君はサッカーボールを地面に

置くと黄金の左足でシュートしました。



その軌道は弧を描きながら鬼の顔面に直撃しました。



ボッコォオン!!!



鬼はその場に倒れこみました。



鬼「グゥギギ・・・・・。」



「よし,あとは牢屋の前の1体だけだ。」



ワク君はサッカーボールを回収すると

牢屋めがけて走り出しました。



そして,ボールを空中に

高く放ち,自らも飛び上がりました。



「これでもくらえ!!」



見事なオーバーヘッドシュートが鬼にさく裂しました。



先ほどの鬼と同じくその場に倒れこみました。



真木「ワク君・・・。なんでこんな

危険なことをするんだ・・・!?」



「真木さんを助けるために決まっているでしょ。

今カギをあけるから・・・。」




ガチャン・・・。



先ほど拾ったカギを牢屋の鍵穴に

入れると,檻は簡単に開きました。



中から真木さんと雄太君のグループの仲間が出てきました。

出てきたのは雄太君と同じ中学生の女の子でした。



雄太「アンリ!!」



「ぐぬぬぬ!!ワク君,早く

こっちの鬼もなんとかして~!!」




ワク君はさらにもう1発,サッカーボールを蹴り放ちました。



ドッコ~ン!!



ワク君のシュート精度は優秀で

確実に鬼の急所に当ててきました。



アンリ「雄太!!」





<アンリ>



アンリと名乗る雄太と同年齢の

少女は雄太に抱きつきました。



サエ「アンリおねえちゃん!

よかった,無事だった!!」



サエとメエも嬉しそうにしています。



「あの,雄太っていう人,すごいな・・・。

何か別次元の力を感じたぞ・・・。」




黒山「よかった,君が捕まった時は

どうなるかと思ったが,無事で何より。」



その時,放送が入りました。



放送「みなさん~,お知らせがあります~。

なんと,牢屋から脱獄に成功した生徒が2名います!

おめでとうございます!ご褒美として鬼の数を

脱獄した人数分だけ増やしてあげま~す!!」



全員の表情が固まりました。



「なんだそれ!?そんなルール聞いてないぞ!!」



放送「とにかく,今から1分後に鬼が2体増えます!

さらに通常ルールとして時間経過でも鬼が増えるので注意してね!」



せっかく真木さんを助けることが

できてもさらなる試練が待っているようでした。



第10話 バトルヤバイヤロ3限目 10

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
ワク君が先ほど倒した鬼は意識を

取り戻したらしく起き上がってきました。



その様子を確認した瞬間,

みんなは急いで牢屋から離れました。



「なんで,あいつら死んでないの!?」

「多分,鬼の中でもかなり強い部類なんだろう。

牢屋を守る鬼だから当然といえば当然か。」




走りながら会話を続けました。



雄太「ひょっとして鬼の頭に生えている

角の数に関係しているのかも・・・。」

サエ「ゆう兄,どういうこと?」



サエちゃんは足が遅いため,

雄太君におんぶされて逃走しています。



ちなみにメイちゃんは黒山氏が背負っていました。



メイ「はぁ・・・。あたしもあっちがよかったなぁ・・・。」

黒山「人に背負わせておいて

そりゃないでしょ・・・。メイちゃん・・・。」



黒山氏はちょっとへこんでいました。



雄太「真木さんやアンリを襲った鬼には2本の角が生えていた。

そしてワク君のボールでやっつけることができた。

でも牢屋の前にいた鬼には角が3本生えていた。

こちらは倒してもすぐに起き上がってきたんだ。」



「なるほど,同じ強さで蹴ったボールを食らっても

角の数が多い鬼は生き残っているわけか・・・。」




話をつづけながら逃亡をしているうちに,

牢屋からかなり離れた巨大な

アスレチックワールド付近までやってきていました。



宮川「はぁはぁ・・・。ここまでくればさすがに

牢屋の鬼も襲ってこないと思いますが・・・。」



普段は知りなれていないのか息が上がっていました。



すると,向こうから人影が近づいてきました。

運動場の砂が風によって巻き上げられ,よく見えませんでした。



「だれか来る・・・。それも複数いるみたい・・・。」



全員が警戒していると,砂煙の中から

現れたのは見覚えのある人物でした。



「あんたは,確か・・・梶田・・・。」



梶田「これは,これはワク君じゃないか。それに親友のトシ君も。

あとは,最初の教室で僕と同じだった人も

いれば知らない人も一緒にいるみたいだね。」





<梶田>



梶田のグループは全部で4人いました。

途中で何人か捕まってしまったようです。



「この人って確か・・・。」

「ああ,同級生を見殺しにしたサイテー野郎なんだ。」



梶田の後ろに立っていた人物が

ワク君に手を出そうとしました。



梶田「まぁ,待ちたまえ。」



梶田氏はワク君に近づいてきました。



梶田「ところで,君たちはこれからどこへ向かうんだい?」



「そんなこと,俺たちの勝手だろう。」



ワク君は梶田氏を睨みつけました。



梶田「おやおや,どうやら相当恨まれているらしい。

それはともかく,君も興味がないかな?」



「あ?何をだよ。」



後ろで優香さんがそのやりとりを

心配そうに見つめていました。



梶田「この世界の謎について,だよ。

僕はそれを解き明かそうと思っている。」



「この世界の・・・謎・・・だと・・・?」



ワク君はその言葉に反応しました。

果たして梶田氏の言っている意味の真意とは・・・。



第11話 バトルヤバイヤロ3限目 11

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
さかのぼることゲーム開始直後の出来事・・・。



場面はOLで元レディースの風花は

ワク君たちと合流できず一人でいました。



行く当てもなかったので,とりあえず

ビオトープがある場所へ向かってみることにしました。



するとすぐ目の前にあの郷田が歩いていました。



郷田は後ろに風花が歩いてついてきていることに

気づきましたが特に声をかけることはしませんでした。



風花「あんたもビオトープへ向かうつもりか。」



風花がそう切り出すと,



郷田「ああ。」





<郷田>

と,そっけない返事をしました。



風花「はっきり言ってアタシは

あんたのことが気に入らない。」



郷田は聞く耳を持たず,そのまま歩き続けました。



風花「できたら,ちがう場所へ逃げてくれないか?

行く先が同じなんて反吐がでるよ。」



郷田「俺は俺の行きたいところへ行く。

貴様はあのワクってガキと一緒に逃げればいいだろう。」



ようやく郷田が立ち止まり,振り返ってそういいました。



風花「そうしたいところだったんだけど,はぐれちまったんだよ。」



郷田は再び歩き始めました。



すると突然,風花は何者かに後ろから

口と手を押さえつけられました。



風花「なっ!?」



後ろには二人の若者がいました。



若者1「おい,そこのお前。」



若者の一人が郷田に向かって声をかけました。

郷田が振り向くと,



若者2「この女はあんたの彼女か?

悪いが借りていくぜ。」

風花「何をふざけたことを言ってやがる!」



と,声に出そうとしましたが,

口を押さえられてうまくしゃべれません。



そこで風花は,



風花「おりゃあ!!」



相手の手を取ると見事な一本背負いを決めました。



若者1「ぐわっ・・・!?」



油断した若者はその場に倒れこみました。



若者2「女にやられているんじゃねぇよ!?

これからこいつを使って鬼の身代わりに使うつもりだったのによ。」



それを聞いて風花はさらに激怒しました。



風花「元レディース総長のアタシをなめるなよ!」



風花が回し蹴りを放つと

若者はかろうじてそれをかわしました。



若者2「ふざけやがって!もう勘弁ならねぇ!」



その若者がポケットから折り畳み式の

ナイフを取り出してちらつかせました。



風花「卑怯な男,このクソ野郎!」



その言葉に若者が抑えきれない感情を

ぶつけ,ナイフを彼女に突き立てようとしました。



それを横で見ていた郷田が

若者の腕をつかんで押さえました。



若者2「イテテテ・・・!?」



郷田はつかんだ腕にさらに力をこめます。



若者が反対側の手で郷田に殴りかかろうと

しましたが,返り討ちにあいました。



若者2「ぐふ・・・。」

風花「・・・。助けてくれたのか・・・。ありがとう。」



さすがの風花も自分が刺されそうになり,

少しだけ動揺していました。



郷田「俺はこのままビオトープへいく。

この空間を徹底的に調べ,このふざけた世界の謎を解く。」



風花はやっとの思いで立ち上がりました。



風花「待ってよ。アタシも行くよ。

アンタに借りを作ったままじゃかっこ悪いからね。」

郷田「・・・。」



こうして二人は開始まで残りわずかな

時間でビオトープへ向かいました。



第12話 バトルヤバイヤロ3限目 12


ワクのわくわく冒険記シリーズ



*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。




場面は再びワク君たち・・・。



ワク君たちはあの梶田率いる

グループと対峙していました。



「この世界の謎だって?どういう意味だ。」



思わず聞き返してしまいました。



梶田「そのままの意味さ。そもそもどうして僕たちはこんな世界にいるのか。

どうしてこんなデスゲームをしなくてはいけないのか。

放送から流れてくる彼らの正体は何か。

それを全て明らかにするのさ。」



「なるほど・・・。そんなこと考えてもみなかったな。」



トシ君に対して,リサちゃんが,



リサ「それはアンタだけよ。アタシはずっと

同じことを考えていたよ。おそらくワク君も。」



梶田と一緒に行動する古岡と名乗る青年が,



古岡「梶田さん,本当にあの実験棟に

行けばこの世界の謎がわかるんですか?」



と聞きました。



真木「あそこは最初に行ったけど

何もなかったと思うけど・・・。」

梶田「それは君たちが見落としているだけだ。

僕ならあの場所を隅々と調べ,

この世界の謎をつかんでくることも可能だ。」



ワク君はじっと黙ったままでした。



優香「ワク君,私たちはどうしてこんなゲームを

させられているんでしょうか。」



「わからない。ただ,この学校を運営する連中が

いることは確かだ。奴らの正体が誰なのか・・・。」




ようやくワク君が口を開きました。



その時,放送が入ります。



放送「さぁ,ゲーム開始から30分経ったよ!残り半分!

最後まで生き残れば次の授業に参加できるから

がんばってね!鬼も増えるからねー!ガンバレ!」



筒井「まったくふざけてやがる!」



<筒井>



梶田のグループで筒井と名乗る中年男性が

吐き捨てるように言いました。



梶田「彼は元の世界では医者だったみたいなんだ。

それがこんなところへ連れられて来てしまい不憫だよねー。」



雄太「えっと,梶田さんですよね。

最初のクラスで同じだった雄太です。覚えていますか?」



雄太が前に出てきて梶田に話しかけました。



梶田「ああ,いたね。正義感が強くとても

優秀で絶対に生き残ると思っていたよ。」



梶田が雄太の頭をなでながらそう言いました。

雄太は梶田の後ろにいたメンバーに対して,



雄太「みなさんはどうして彼と行動を共にしているんですか?

はっきり言って,いままで見てきた彼の行動はあまり

勧められるようなことをしていませんでした。

なのになぜ,一緒にいるんですか!?」



急に雄太がそんなことを言い出す

ので梶田の顔が曇りました。



水元「そっそれは・・・生き残るためよ!彼は頭もいいし,

行動力もある。リーダーとしてふさわしいと思って

いるからみんなついて行っているのよ。」



水元という25歳の女性がそう言いました。



彼女は元の世界ではパティシエを

やっていてお菓子作りは得意のようです。



リサ「ふ~ん,本当かな。ねぇ,ワク君,どうでもいいんじゃない。

私たちはこの奥の巨大アスレチック場に行くってことにしたんだから,

さっさと向かおうよ。あそこなら隠れるところも多そうだしさ。」



リサちゃんがワク君の手を引きました。



梶田「それでは,また。きっとどこかでまた会おう。」



彼らはその場から去っていきました。

一方のワク君たちもアスレチック場の前までやってきました。



残り時間はあと25分・・・。



バトルヤバイヤロ3限目 第13~14話・午後 第1~2話

第13話 バトルヤバイヤロ3限目 13

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
アンリ「ねぇ,雄太。」

雄太「何?」



巨大なアスレチック場を目の前に

みんなはどこに隠れるべきか悩んでいました。





アンリ「あの,ワク君っていう少年と一緒に私と

真木さんって人を助けてくれたんだよね。」



「あれ,オイラは?」



さりげなくトシ君が活躍をアピールしました。



「ああ,今回はお前もがんばったよ。」



ワク君にそう言われてトシ君は

少しうれしそうでした。



雄太「そうだよ。全てワク君のおかげさ。

後でちゃんとお礼を言っておけよ。」



どうやら二人は幼馴染で塾の帰りに一緒に

この世界に連れてこられたようです。



この巨大アスレチック場は木と木の間にできた木の板や

ロープなどが複雑に組み合わさり,

大人でも楽しめるような作りになっていました。



黒山「でも,ここって囲まれたら

逃げ場が無いですよね・・・。」



真木「確かに・・・。ワク君,

どうするつもりだい?」



真木さんはワク君に話を振りました。



「とりあえず,上りましょうか。」



そう,促してみんなをアスレチック場に誘導しました。



メイ「結構いい眺めだねー!校舎が見えるよ!」



メイちゃんとサエちゃんははしゃいでいました。



雄太「おいおい,落ちるなよー。」

サエ「大丈夫だって!」



ワク君は高い位置から鬼がどの辺りに

いるのかを把握しようとしていました。



そして,時間が過ぎるたびに鬼が

増えていく様子が見られました。



途中何匹かの鬼が近づいてきましたが,

ワク君が上からシュートを放ち,

それを下で見張っていたトシ君が拾い,

ワク君に渡す,という作業を繰り返し,難を逃れました。



場面はここで再び梶田たちのグループに変わります。

彼らは実験棟の中をくまなく探している様子でした。



このグループの中に白鳥氏とあやねちゃんも加わっていました。



どうやら梶田たちはワク君たちのグループと

別れた後すぐに,この二人を自分たちの

グループに取り込んだようです。



アヤネ「(何がなんでも生き残っていやる。

そのためになら誰にでもつくわ・・・!)」



白鳥「アヤネちゃんは僕が守るよ。」



と彼女の耳元でささやきましたが,



アヤネ「うるせぇよ!アンタなんか役に立たないんだよ!」



アヤネちゃんはここに来て,だんだんと

精神が壊れ始めているようです。



その時,梶田が何かをみつけたようです。

その部屋はコンピュータが机に

たくさん並んでいた部屋でした。



梶田「なるほど,そういうことか。だんだんこの世界の謎がわかってきたぞ。

ククク,やはりこの世界で生き残るのは僕だ!」



一方の郷田とOLの風花はビオトープに来ていました。



郷田「さっき,すれ違った連中は,

やたらとこの中を探し回っていたな。」

風花「そうみたいだね。一体何をしていたんだろう。」



ビオトープとはできるだけ自然の状態で

生き物を飼育する場所のことです。



あたりには小川や小さな湿地,雑木林が生えていました。



郷田「もし,あの中のリーダーが馬鹿じゃないのなら,

ここから出る方法を探していたはずだ。」

風花「え?それってどういう・・・?」



第14話 バトルヤバイヤロ3限目 14

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
ビオトープに来ていた郷田と風花は少し前まで

ここにいたグループのことを思い出していました。





そのグループとはあの梶田たちのグループのことでした。



郷田「もし,あの中のリーダーが馬鹿じゃないのなら,

ここから出る方法を探していたはずだ。」



郷田もこの世界の謎を解くためのカギを探し始めました。

しかし,それらしい手掛かりは見つかりません。



風花「本当にそんなものがあるのか?」



二人はビオトープの隅までやってきました。

そこはつまり学校内の一番はじにありました。



校内全体は少し高い塀で囲まれていましたが,

よじ登って外を見ることができました。



恐る恐る外を見てみましたが,

そこは真っ暗な世界で文字通り何もない世界でした。



風花「これってどういうこと?ただ暗いんじゃなくて,何もないよ?」

梶田「なるほど,そういうことか・・・。」



二人はコンクリートの塀に沿って歩き始めました。



郷田「お,もしかしてこれは・・・。」



郷田がコンクリートの塀から延びる

何かを見つけたようです。



郷田「あいつらもこれは見落としていたのか。」



それはチューブのような太いパイプで塀から1mほど伸び,

そのまま地面に刺さりどこかへつながっているようでした。



そのチューブを眺めていた郷田は,ニヤッと笑い,



郷田「ここから出るのは俺だ。」

風花「おいおい,アタシも一緒だよ。」



そして,ここで制限時間の60分が

経過したチャイム音が鳴り響きました。



郷田「よし,次の時間が勝負だ。

この世界を創り出した"誰か"をぶっ潰してやる!」

風花「え?それってどういうこと・・・?」



場面はワク君たちに戻ります。



先ほど,同じように終了のチャイムを聞きました。



「よし,なんとか切り抜けた・・・。全員無事だよね?」



ワク君は少し離れた場所にいた全員に声をかけました。



その後,放送が入り,生き残った人は全員が

ランチルームに集合することになりました。



今回のデスゲームで生き残ったのは・・・。



ワク君たちのグループからは



ワク君,トシ君,リサちゃん,真木,黒山,

宮川,雄太,サエ,メイ,優香。



梶田のグループからは



梶田,アヤネ,白鳥,筒井,水元,吉岡。



あとは郷田と風花の合計18人でした。



ランチルームは社員食堂のようで,たくさんの机が並べられ,

正面には食事の受け渡し口があり,そこから好きな食事を注文できました。



生き残った18人は放送の指示に従い,食事をとりました。

中には毒が入っていることを警戒する

人もいましたが,全員が食べ終わりました。



それぞれのグループが固まって食事をしていましたが,

梶田とその取り巻きがワク君に近づいてきました。



「あれ?アヤネちゃん,こいつと一緒にいたんだ。

他の人はどうなっちゃったの?」




トシ君が聞くと,



アヤネ「全員死んだわよ!アンタたちが頼りないせいでね!

だからアタシはこの人についていくの!?

こんなところで死にたくないからね!」



梶田「そう,彼女と白鳥君は自ら進んで

僕たちのグループに合流したんだよ。

そんなことよりも・・・。」



梶田はワク君に,



梶田「君はこの世界のことを少しでも理解できたかい?」



と言いました。



「いや,全然。」



その会話を聞いて郷田と

風花も近づいてきました。



第1話 バトルヤバイヤロ午後 1

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
郷田「その会話に興味があるな。俺も混ぜな。」



梶田はどうぞと言わん

ばかりに,彼を呼び寄せました。



梶田「先ほど,実験棟のコンピュータ室を見てきたんだ。

白鳥君はIT企業の社長だから詳しいんだよね。説明してあげて。」



白鳥「はい。PCの中にデジタルワールド

マニュアルというファイルがありました。」



白鳥さんはその場にあった携帯用の小型デジカメで

その記録を映し出し,内容を説明し始めました。



白鳥「簡単にまとめると,ここはデジタルワールドという

AI(人工知能)が作ったコンピュータの中の世界らしいんです。」





郷田「やはりそうか。だからここは学校しかないんだ。

外は真っ暗で本当に何もない。創っていないんだから何もないわけだ。」



郷田と風花は先ほど見てきた内容を話しました。



さらに外部につながっていたコードは,

どうやら電源の供給源だったと結論づけました。



梶田「この世界を作ったAIを仮に"神(ゴッド)AI"としよう。

何らかの方法で我々の精神だけをデジタルな世界に

取り込んで何かをしようとしているんだと思われる。」

サエ「なんか急にそんなことを言われてもちょっと信じられないなぁ・・・。」



サエちゃんには少し難しい話のようでした。



真木「でも,そう考えるだけの根拠があるわけか・・・。」

「いや,ありえない話じゃない。

おそらくここに集まったみんなもそれぞれ別の

パラレルワールドから集められたんだろう。

だからもし,ここから出られても一緒の

場所に帰れるわけじゃないと思う。」




ワク君はヴォイニッチワールドのことを

知っていたのでそれとなく,そう説明してみました。



黒山「でも,どうやったらここから出られるんだろう。」

「確か,学校なら校舎内にもPC室があるはずだ。

そこに行ってみれば何か手掛かりがつかめるかも。」




ワク君がそう提案してみました。



リサ「さすが,ワク君!今からみんなで行ってみようよ。」



食堂の扉には鍵がかかっておらず,

すんなりと出ることができました。



しかし,全員が扉をくぐったところで放送が入りました。



放送「あれれ?給食の時間に勝手に外に出たらだめなんだよぉ!

そういう生徒たちには教育的指導が必要だね!」



郷田「まずいぞ!何かやらかすつもりだ!

てめぇの身はてめぇで守れよ!」



郷田は廊下を駆け出しました。

風花もそのあとを追いかけます。



雄太「あ,いっちゃった・・・。」



雄太も追いかけようとしたとき,その肩をつかまれました。



後ろにいたのは黒山氏でした。



黒山「あ・・・。なんか,背中がいたい・・・。」



黒山氏が雄太に背を向けるとそこには体長50センチ

ほどの真っ黒な小鬼が張り付いていました。



メイ「きゃぁぁぁ,あれ何!?」



次の瞬間,その小鬼が

勢い良く膨らみ,爆発しました。



黒山「あぐ・・・。」

その衝撃で黒山氏の胸には

ぽっかりと大きな穴が開き,即死しました。



放送「君たちには教育的指導として,先ほどとは違うタイプの鬼を用意したよ。

捕まったら,5秒後にドカン!即死しちゃうから気を付けてね!」



「なんてこった。あ,梶田たちも

いつの間にかいなくなってる。」




どうやらワク君たちのグループは

出遅れてしまったようです。



トシ「すぐに追いかけよう。」

彼らは校舎のどこかにある

はずのPC室を探し始めました。



―残り17人―



第2話 バトルヤバイヤロ午後 2

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
校舎は4階建てでランチルームは2階にありました。

ワク君たちは突き当りの階段を上に上がっていきました。



先にランチルームを出た梶田たちの

グループも3階でPC室を探していました。



小鬼は天井や教室の窓ガラスを

割って彼らに襲い掛かってきました。



パティシエの水元が犠牲になりました。



水元「お菓子ならいくらでも作って

あげるから助けてぇ・・・。」



ボンッ!!!



その声もむなしく,死亡しました。



梶田「くそ,どうも先ほどの鬼よりも動きが早く,

数が多いみたいだな。一刻も早く見つけなければ。」



続いて,医者の筒井,吉岡も小鬼捕まり

身動きが取れなくなってしまいました。



吉岡「梶田さん,助けてください!」

必死で逃れようとします。



梶田「白鳥君,行くよ!この世界から出る

ためには君の力が必要みたいだからね。」

アヤネ「まって,アタシも置いていかないで!」



ガッシャーン!。



廊下の窓から小鬼が飛び出してきました。



アヤネ「いやっ!こっちにくるんじゃねぇよ!」



懸命に抵抗しますが,足を

つかまれてしまいました。



白鳥「アヤネちゃん!君は僕が守る!」



白鳥氏がアヤネちゃんにとりついた

小鬼を外そうと近づいた時,



梶田「聞こえなかったかい?

君は僕と一緒にPC室へ行くんだよ。」

白鳥「何を言ってる。彼女を置いてはいけない。」



白鳥はその手を振り払い,

彼女のもとへ駆けつけましたが・・・。



アヤネ「いやっ!いやぁぁぁぁ!!」



ボッカァン・・・。



アヤネちゃんは見るも無残に

粉々になってしまいました・・・。





白鳥「そんな・・・。そんな・・・。」



白鳥氏はその場にうずくまり,泣き叫びました。



階段から足音が聞こえてきました。

ワク君たちのグループが追いついたようです。



周辺の惨劇を目の当たりにし,

何が起こったのかを理解しました。



「アヤネちゃんも犠牲になったんだね・・・。」



真木「そんな・・・。」



真木氏も1限目からの顔見知りなので

ショックを隠せませんでした。



トシ君がそっと白鳥氏の肩に手をやりました。



梶田「ここでのんびりしている暇はないよ。

あいつらはどんどんやってくる。」



雄太「でも,これだけ鬼が多いってことは

この階にPC室があるのかもね。」



そういって,雄太は先頭に立って先に進みました。

突き当りを右に行ったところにPC室はありました。



雄太「ここだよ。」



雄太達が合流してからは途中で鬼に

襲われることもなく,無事にPC室につきました。



中は明かりがついており,

すでに郷田と風花がいました。



郷田「おそかったじゃねぇか。」

梶田「小鬼に襲われちゃってね。

生き残ったのはこれだけさ。」



宮川氏は恐る恐る,



宮川「私なんかが生き残ってしまい,あの若い女の子が

死んでしまうなんて・・・。なんとも言えない気持ちです。」



としんみりしていました。



「で,何かわかったの?」



ワク君はPCの画面をみました。



そこには難しいプログラムが並んでいました。



「この言語は,最新のマザーズ言語じゃないか。

なんでこんなものがこのPCに入っているんだ?」






どうやらワク君はPCについて

プロ顔負けの専門知識があるようです。



白鳥「・・・。頑張って解析してみるよ。」



まだ立ち直れない白鳥氏も懸命に

がんばっています。



―残り13人―



バトルヤバイヤロ午後 第3~6話

第3話 バトルヤバイヤロ午後 3

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
白鳥「これはこの世界を維持するために組み込まれたプログラムだね。

だからこいつを解析して書き直してやれば元の世界に戻れるかもしれない。」

梶田「さすがだね。君を連れてきて正解だった。

今まで隠してきたけど,僕はSE(システムエンジニア)なんだ。

だから君と僕で力を合わせればこいつを解析できるはずだよ。」



梶田は得意げに語りました。



「このプログラムなら俺も読める。俺も手伝うよ!」



白鳥「頼む。モニターはそこに

もう1台あるから,それを使って!」



ワク君は白鳥さんに耳元で何かを囁きました。

彼はそれを聞いて頷きました。



三人はモニターを見ながらキーボードを

カタカタと打ち始めました。





その時,PC室の扉がぶち破られました。

目の前には小鬼が4体もいました。



郷田「おい,あとどれくらいかかるんだ!?」



白鳥「まずは解析を終えないと・・・。

3人でやっても30分はかかるよ!?」



小鬼が少しずつ近づいてきます。



郷田「そんなに待てるか!5分でやれ!」



郷田が叫びました。



梶田「僕も死にたくないからね。

精一杯やっているよ。だからそっちは任せたよ。」



1匹の小鬼が郷田にとびかかりました。

郷田はそれをかわし,渾身の力を込めた拳でたたき伏せました。



鬼は脳ミソぶちまけ死にました。



郷田「おい戦える奴は前に出ろ。さっきの

鬼よりも弱い!時間を稼ぐんだ!」

真木「ちょっと僕は無理かも・・・。」



真木氏は躊躇しています。



「わかった!」



トシ君と雄太が前にでました。

風花は前に出ようとしましたが,

郷田が制止しました。



残る小鬼は3匹です。



トシ君は小鬼がとびかかる前に

思いっきり踏みつぶしました。



彼の体重は相当な重さなので

小鬼はぺちゃんこになって死亡しました。



残りの1匹は雄太にとびかかりました。



雄太「わっ!?」



雄太はとっさに手を振り払い小鬼をよけました。

しかし,小鬼が振り払った先には・・・。



宮川とサエ,メイがいました。



雄太「しまった!?」



小鬼はサエに抱きついて離れませんでした。

サエ「ヤダ!雄兄~!助けて!!」



雄太は小鬼に飛びつきました。

次の瞬間,小鬼は爆発しました。



しかし,間一髪,雄太とサエは無事でした。

メイ「え,何!?何が起きたの!?」



ただ,爆発の巻き添えを食らってしまった,

宮川氏は首が吹き飛び,死亡していました。



「宮川さん・・・。」



ワク君はキーボードをひたすら打ち込みながら

その様子をただ見ているしかありませんでした。



優香「宮川さんが犠牲に・・・。でも雄太君のおかげで

メイちゃんとサエちゃんは無事だった・・・。」

雄太「ああ,僕のせいで二人を犠牲にする

わけにはいかないからね・・・。」



雄太は下を向いてそう言いました。



梶田「やはり僕は天才だ。見つけたぞ。

この世界から出るためのプログラム修正箇所を!」



全員が梶田に注目しました。



「こっちも見つけた。」



白鳥「僕もだ。」



―残り12人―



第4話 バトルヤバイヤロ午後 4

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
ワク君,梶田,白鳥はここから出るための

プログラムをみつけたようです。



彼らはすぐに修正プログラムを組み始めました。



梶田「(ここまでくればもはやこいつらに用はない。

とにかく僕一人だけが助かればいいんだからね。)」

白鳥「あれ?梶田さん,その部分を書き換えてしまったらだめですよ。

それじゃあ脱出する人数に制限がかかってしまう。」



白鳥氏が気付きました。



梶田「これでいいんだ。助かるのは僕だけでいい。

君たちとはここでお別れだ。」

風花「何をわけのわからないことを言ってやがる!?」



風花が回し蹴りを梶田に食らわせようとしましたが,

寸前のところで止めてしまいました。



彼はポケットから拳銃を取り出し,

風花に向けました。



風花「なんでそんなモンを持っているんだよ・・・。」

梶田「3限目の鬼ごっこで実験棟を

探索している時に見つけたんだよ。」



郷田が間合いを詰めようとしましたが,



梶田「おっと,動かないでよ。この中では君とワク君がくせものだからね。

もし変な動きをしたら,女の子から死んでいくことになるからね。」



梶田は片手で拳銃を構えたまま,

もう一方の片手でキーボードを打ち続けました。



「どうしよう,このままじゃ,あいつだけ逃げちゃうよ。」

「・・・。」



ワク君はすぐ隣でキーを打つ彼を

じっと睨みつけていました。



「こうなったら,神AIに出てきてもらって

助けてもらうしかないかもね・・・。」


白鳥「何を言っているんだい?

そんなことありえないよ。」



白鳥氏がその発言を否定しました。



優香「そうですよ。神AIって先ほどまで

流れていたあの放送の人ですよね?

とても助けてくれるようには思えません。」



「あれはおそらく最初からプログラムしてあっただけの人工音声だと思うよ。

本当の神AIは俺たちのすぐ近くにいたんじゃないかな?」




ワク君は話を続けます。



「そうだよね・・・。」



ワク君は一人の少年に目をやりました。



「雄太。君は本当は実在する人間ではなく,

神AIによって作られた人工プログラムなんじゃない?」






雄太は下を向いたままでした。



リサ「え?どういうこと?雄太が神AI??そんなことって・・・。」



雄太「やはり,君はするどいね。君の推測通り,私は君たちが神AIと呼ぶ存在です。

あなた達を間近で観察するためにこの姿をしていました。」



雄太の声が先ほどまでと違う声になっていました。



「ワク君,どうして彼が神AIだって気付いたの?」



「先ほどの小鬼の爆発でケガがなかっただろう。

あれは自分のミスで二人を殺さないために急遽,

自分でプログラムを書き換えて

被害を抑えたんじゃないかって思ったんだ。」




ワク君の推理に,



梶田「なるほど。素晴らしい。さすがワク君だ。」



「それに,俺たちの中で,この部屋を最初に

見つけたのも雄太だ。

それとなくヒントをくれていたんだね。」




なんと雄太はこの世界を

創った神AIだったようです。



第5話 バトルヤバイヤロ午後 5

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
なんと雄太はこの世界の神AIだったのです。



アンリ「その話は本当なの!?それなら本物の雄太は!?」



雄太「安心していいよ。彼のデータだけ参考に

しただけだから本物は元の世界にちゃんといます。」



その言葉を聞いてアンリさんは少し安堵しました。



梶田「よし。プログラム修正が完了した!

神AIだか何だか知らないが,この世界とはおさらばだ!」



梶田がキーボードのエンターキーを勢いよく押しました。



その瞬間,PCもろとも大爆発を起こし,

彼の体は粉々に飛び散りました。



梶田「な・・・ぜ・・・。」



「やはり,ブービートラップか。

悪意のある修正をした場合に,その人物に報いがいく仕掛けだね。」




ワク君の説明に郷田が近づいてきて,



郷田「つまり,どういうことなんだ!?

ここから出られるのか!?出られないのか!?」



「それは雄太,いや神AIに直接聞いたほうがいいよ。」



ワク君は雄太を指さしました。



サエ「ほんとに雄兄が,神AIなんだね・・・。信じられないよ。」



雄太「皆さんは,私の壮大な実験のために選ばれました。

それはある隔離空間の中に精神だけを閉じ込め,

極限状態に陥れることでどんな状態になるのか,

その行動実験結果のデータが欲しかったのです。」



雄太が機械的に説明します。



「ふざけんなぁっ!!」



ワク君は雄太を思いっきり

殴り飛ばしました。



真木「ワク君っ!?」



真木氏がワク君に駆け寄りました。



「どれだけの人間が死んだと思ってるんだよ!?」



雄太「残念ながらそういう,

感情は持ち合わせていません。

私が欲しいのはデータでした。

そしてその目的もすでに達成しました。

あなた達を開放しましょう。」



彼が目を閉じて何かをつぶやき始めました。



すると周りの空間が溶け出すように消えていき,

上も下もない真空のような空間に変わりました。



優香「本当にコンピュータの中の世界だったんですね。」

風花「信じられないな・・・。」



雄太「もう間もなく自分たちのいた世界に戻ることができます。

ただし,ここでの記憶は一切失われるように設定してあります。」



すでに雄太の姿は見えませんで

したが声だけは聞こえました。



その時,バチバチバチ・・・と音がしました。



雄太「・・・!?これは・・・!?」

白鳥「これだけの犠牲が出たんだ・・・。

僕の大切な人もお前は奪った!」



白鳥氏が真っ暗な空間の中で叫びました。

すると神AIが現れました。



まるで映画のスクリーンから飛び出すCGで

できた人の顔のアップに見えました。



神AI「一体に,お前たちは何をした!?」



「梶田が一人で作業をしている間に,

俺と白鳥さんでこの世界の破壊プログラムを仕込んだんだよ!」




この怪しい音と時空の乱れは

ワク君と白鳥氏によるものでした。





神AI「そんなことができるはずが・・・。」

「予め作っておいたプログラムを梶田が

爆発した直後に組み込んだんだよ。だから気付かれなかった。」




神AIはどうやら自己修復機能を実行しようとしていました。



神AI「自己修復機能ON!再生プログラム・・・。」



白鳥「そんなことはお見通しだよ!

IT企業の社長をなめるな!」



空間の乱れが最大に達した時,

神AIの断末魔が聞こえました。



そこからしばらく,意識のない状態に陥りました。

目を開けるとそこは・・・。



第6話 バトルヤバイヤロ午後 6<完結>

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
ワク君が目を覚ますと,隣にはトシ君が倒れていました。

そこはいつもサッカーをするグラウンドの草むらの中でした。



「おい,トシ起きろ!」



ワク君がトシ君の体を揺らすと,



「あ,いてて・・・。」



トシ君も起き上がりました。



「なぁ,記憶・・・あるよな・・・。」

「そうだね・・・。覚えているよ・・・。」



どうやら二人は記憶を失っていなかったようです。



「おそらく神AIが自己修復に失敗してデリートされたから

俺たちの記憶も消されずにすんだのかもしれないな。」




トシ君はあたりを見渡し,



「本当にここが元居た世界なのかなぁ・・・。」

「そうだと,信じたいが・・・。」



二人に近づく影がありました。



「誰だ!?」



振り向くとそこには・・・。



リサ「やっと,目が覚めたんだ。よかった!」



なんとリサちゃんが目の前にいました。



「なんで,君がこの世界に!?

元の世界に帰ったはずじゃ!?」




リサ「だから,ここがもともと

アタシがいた世界なんだって!」



どうやらワク君たちとリサちゃんは同じ世界から

あのデジタルワールドへ飛ばされていたようです。



「そうだったんだ!じゃあ,

これからも一緒に遊べるね!」




リサ「アタシはね,知的レベルが

近い子と遊ぶのが好きなの!」



リサちゃんは相変わらずトシ君に

対しては手厳しいようです。



「よかった・・・。戻ってきたんだ・・・。」



リサ「アタシは一度,家に帰るけど,

戻ったら必ず連絡ちょうだいね!約束だよ!」



ワク君はリサちゃんと

指切りの約束をしました。



「他のみんなもそれぞれの世界に

無事戻れているといいんだけどね。」






彼は沈みゆく夕日を眺めながらそうつぶやきました。



こうしてワク君とトシ君の生死をかけた

デスゲームの旅は終わりを告げました。



いつかまた,ヴォイニッチワールドの扉が開く時,

彼らはどこか別の世界に行ってしまうのでしょう。



しかし,それはまたいつか別の機会に・・・。







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