ワクのわくわく冒険記シリーズ

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目次



アフター

ワクのわくわく冒険記 アフター 前編
ワク君とトシ君は二人で,

中村区にある超高層ビルの前まで来ていました。



二人は訝(いぶか)しげにそのビルを見上げました。



ワク君はおもむろに,

ポケットから手紙を取り出しました。



そして書かれている内容を,

じっと見つめました。



「でもなんであの子は,

こんなところにオイラたちを,

呼びだしたんだろうね。」




彼が言うあの子とは・・・。



「ああ,まったくわからん・・・。」



ワク君は考え込みましたが,

思い当たる節が全く見当たりませんでした。



しばらく待っていると,

後ろから声をかけられました。



リサ「やっほ!」





<春夏冬(あきない) リサ 14歳>



そこにはバトルヤバイヤロから一緒に脱出してきた,

リサちゃんが立っていました。



「やぁやぁ,相変わらずカワイイね!」



リサ「相変わらず口うるさいよねぇ!

しゃべらないでくれる?

アタシは頭がいい子が好きなんだ,

クソデブさん!」



トシ君に厳しい態度を取るのは変わりませんでした。



「それにしても手紙なんて,

何時の間に住所交換していたのさ。

そもそもなんで手紙?

イヤコムでもよかったのに。」


「そういえば指切りした後に,

住所を伝えていたっけ。」




ワク君は先日,

リサちゃんと別れた時のことを思い出しました。



「この手紙に書かれていることは本当なのか?」



ワク君は手紙をリサちゃんの前に差し出して,

中身を確認させました。



リサ「うん。

知っていることを全部話すよ。」



「わかった。」



ワク君はうなずきました。



「ねぇねぇ。

どんなことが書いてあるの?」




リサ「頭が悪い子は黙っていてくれるかな?

話が進まないから。」



彼女は笑顔でそう言いました。



「あ,オイラ発言権がないってやつね・・・。」

「ここには,

ヴォイニッチワールドについて知っていることを話す,

と書いてある。」




彼女に視線を向けると,



リサ「そう書いたら来てくれると思って・・・。

ちなみにここなんだ。」



「ん?」



トシ君は首をかしげました。



そして質問をしようとしましたが,

また口をさえぎられると思い止めました。



「まさか。」



リサ「アタシがヴォイニッチワールドへ,

迷い込んだ場所がこのビルだったんだ。」



なんとリサちゃんはこの場所を訪れた時に,

頭に強烈な痛みを感じて意識を失い,

気づいたらあのバトルヤバイヤロをさせられた世界へ,

さまよいこんでいたようです。



リサ「このビルの通っている塾があるの。

塾なんて行く必要ないんだけど,

親がどうしても行けって言うからね・・・。」



「はいはい,

優秀でよかったね。」




トシ君が先ほどのお返しと,

言わんばかりの嫌味を言いました。



「じゃあ,

友達も同じように別世界に?」




リサ「ううん。どうやらアタシだけだったんだ。」



どうやらリサちゃんは,

このビルにある塾に通おうとした際に,

ヴォイニッチワールドへ行ってしまったようです。



リサちゃんはさらにあの時,

帰り際に話せなかったことを伝えようとしました。



その内容とは・・・。



ワクのわくわく冒険記 アフター 後編
リサちゃんの口からはヴォイニッチワールドへ,

迷い込んだ時の記憶が語られました。



リサ「アタシは授業が始まるまでビルの屋上にいたの。

休憩所として開放されていたの。」



「え?屋上?危なくないの。」



リサちゃんはトシ君の質問をスルーして,



リサ「周りには誰もいなかったかな。

もうすぐ授業が始まりそうだったから。

そして塾の教室へ戻ろうとしたら急に頭が痛くなったの。

ものすごい痛さだったのを覚えている。」



と,話を続けます。



「なるほど,

オレたちと症状は同じだ。

急な頭痛の後で意識を失った。」


「そうそう。

それで目が覚めたらあの世界にいたんだよね。」




彼もそのあたりのことは覚えていたようです。



リサ「だからこのビルの屋上に一緒に行ってくれれば,

何か分かるかもしれないの。」



「それでオレを呼んだのか。」



そこにはトシ君は頭数には入っていませんでした。



三人はビルの入り口から入ったすぐ近くにある,

エレベーターに乗って屋上まで行きました。



屋上につくと,

トシ君はいの一番に外へ出て行きました。



そこは高い柵に囲まれ,

安全対策はしっかりとしてあり,

プラスチックでできた机とイスが,

いくつも置いてありました。



花壇や小さな木もあり,

休憩するにはもってこいの場所でした。



ワク君は屋上のふちまで来て,

そこから景色を見渡しました。



「(絶景だな。

名駅も近くて,

高いビルに囲まれているが,

負けていない高さだ。)」





このビルは高層ビルに分類され,

見晴らしは相当良かったのです。



三人はそこでヴォイニッチワールドへ,

行ってしまった手がかりを探しました。



しかしどれだけ探しても,

それらしい証拠は見つかりませんでした。



屋上にいた他の塾生や社員が,

少し怪訝(けげん)そうな顔で,

その様子を見ていました。



「何もそれらしいものはないよー!」



リサ「無能なお方は黙ってくださいます?」



リサちゃんは相当イライラが,

たまっていました。



「でも,

トシの言うとおり,

これ以上ここを探しても,

仕方ない気がする。」




リサ「そっかぁ・・・。

絶対何か分かると思ったのに。」



彼女は今度はすごく,

落胆している様子でした。



「他に気付いたことはない?

例えば倒れた時と起きた時で,

何か身の回りに変化があったとか。」




リサ「あるある!

目が覚めた時は,

ワク君のそばにいたこと!」



彼女はさらに興奮気味に続けます。



リサ「あの時は異世界に迷い込んで,

そこでみんなと一緒になったから,

戻った時も一緒だったのかなって,

思っていたけど。」



彼女は倒れた時と,

目が覚めた時の場所が,

違っていたようです。



「それはかなり気になるな・・・。」



ワク君は真剣な表情で考えていました。



「まぁまぁ,

ここから見える景色を見て気を休めようよ。

良い景色じゃない!

こっち側はセントラルタワーがあるから,

ちょっと見晴らしが悪いけどさ。」


「・・・。」



三人はビルの入口まで戻ってきました。



リサ「アタシは諦めないよ!

絶対に何かあるんだ!

じゃなきゃ納得できない!」



「たしかにな。

この科学文明の時代に,

異世界に飛んだなんてありえない。」




ワク君は考え込みました。



「これ以上気にしても仕方ないよ!

リク君に相談でもしてみようよ。」


「とりあえずはオレたちの問題だ。

リク兄に頼るのはまだ早い。」




ワク君は自分のプライドにかけて,

この謎を解いてみたくなりました。



ワク君はリサちゃんとイヤコムのID交換を行い,

いつでも連絡をとれるようにしました。



リサ「じゃあ,何か分かったらすぐに教えてね。

こっちも色々と調べておくから。」



「わかった。

でも無理をしないようにな。」




リサちゃんの方が一回りも年上でしたが,

ワク君は同級生のように会話をしていました。



果たしてあの世界は何だったんでしょうか。



本当に異世界があって,

そこに迷い込んでしまったのでしょうか。



彼らがこの謎の真相にたどりついた時,

衝撃の事実が待ち受けることになるのですが,

それはまだ少し先のお話でした。







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