稲川淳姫の怪談シリーズ

シリーズ別へ

TOPページへ

目次




稲川淳姫の怪談 1~4

稲川淳姫の怪談
これは夏休みに入る前,終業式前日のお話です。

リク君たちは学年集会の最中で先生たちのお話を聞いていました。



まずは,一番若い,栗林先生が勉強についてのお話をしました。



A組の先生は産休に入りお休みなので代わりの先生がお話をしました。

続いて安井先生が夏休み中の生活の仕方などについて熱く語りました。



あまりにも熱く語るので体育館は余計に暑くなり,

話も予定時間を超えてしまい,みんな辛そうでした。



「(勘弁してくださいよ~。話が長いですよ~。)」

スナ「(相変わらず話が長いですよ…。早く虫取りに行きたいのに…。)」



そして,最後に学年主任の稲川先生

(年齢45・独身男性)のお話が始まりました。





稲川 淳姫(じゅんき) 年齢45・独身男性



稲川「はぁぁい。では今から先生のお話を始めます。」

「…。」



稲川「夏休みに向けて一つ,怪談話をしようと思います…。」

「いや~。怖い~!」



 「なんでだよ…。」



稲川「みんなは百物語を知っているかな?

怖い話を1つするたびにろうそくを1本消していくんだ。」

「…。」



稲川「そして,最後に100本目のろうそくを消したら霊界の扉が開き,

多くの妖怪や幽霊が現れるんだよ。」



「…。」



稲川「今回は先生が100話の怪談噺をしてあげようね。

うひひひひひひひ。」

「…。」



稲川「うお~うお~。」



しばらく稲川先生の怪談噺が続きます。



稲川「そしたら,後ろに誰もいないんですよぉ。

でも声が聞こえるんですよね。『助けて~,助けて~』って。」



「く~く~。」



「ひぃぃぃぃぃ。いや,幽霊はいない!」



チャイムがなってしまい大掃除の時間になりましたが,

稲川先生は構わず怪談噺を続けます。



稲川「『ぎゃあぁぁぁぁ。』…と叫び声があがります。」



そしてついに100話目の話が終わりました。

「ぐお~ぐお~。」



稲川「これで100話の物語が終わりました。

100本目のろうそくを消しましょう。」



「本当に幽霊が出たりしないよね…。」



稲川「しかし,みんなもダメですね~。これを消したら本当に幽霊が現れ,

君たちを霊界に連れ去ってしまうんですよ?」



みんな「え!?」



稲川「途中で止めるべきでしたね~。うひひひひひひ。」

「うそ…。」



稲川「では,消しましょう…。」

「リク君,寝てる場合じゃないよ!?幽霊出ちゃうよ。」



「ん?終わったの…?」



稲川「ちょうど今,終わるところですよ。そして幽霊が本当に出るのです。」

「なるほど。」



おもむろにリク君は立ち上がり,説明を始めました。



「今回の学年集会の話のテーマは

怪談なんかじゃないですよね?稲川先生。」




稲川「え?」



「真のテーマは"正しい情報を見極める能力"についてのお話さ。」



稲川「え?」



「つまり誤った情報に惑わされることなく,

適切な行動ができるようになって欲しいと先生はいっているんだ。」




稲川「え?まぁね・・・。」



彼は少したじろぎました。



稲川「(ただ,夏だから得意な怪談噺をしただけなんだが…。)」



「本当かな…。」



稲川「え~,みなさん,それでは夏休みをしっかり楽しんできてくださいね。

私も来週から北海道へ長期旅行に行ってきますので,

しばらく会えません。また2学期に会いましょう~!」



 「なんだそれ…。」



この日の夜,リク君達にちょっとした出来事が起こるのですが

それはまた別の機会にお話しましょう。



ともかく,こうしてリク君たちの夏休みが始まるのでした。



稲川淳姫の怪談2
出校日の学年集会のことです。



稲川先生は北海道に旅行に行っていたため,

事前に録画した自らの怪談噺を流すように指示してありました。



この時の栗林先生は影(シャドー)の変装でしたが,

まだ正体を明かしてはいませんでした。



栗林「それでは,稲川先生からのビデオメッセージです。

よく聞きましょう。」



「ビデオメッセージって・・・。どうせ怪談噺だろ・・・。」



画面に稲川先生が映し出されました。







稲川「みなさん,こんにちは。今日はとっておきのお話をしましょう。」



「やっぱり・・・。」

「またですか・・・。」



ある若い男Aさんが古いアパートに引っ越してきました。

彼は値段さえ安ければ古くても気になりませんでした。



引っ越し作業を終えたとき,すっかり夜になっていました。

疲れてしまったAさんはそのまま眠りにつきました。







どれくらい時間が経ったでしょうか。

ふと目が覚めると隣の部屋から若い男女の話声が聞こえます。



とても楽しそうに談笑しています。

「そういえば,お隣さんにあいさつするのを忘れていたな。明日にでも行くかな。」

そんなことを思いながらウトウトし始めました。



すると,突然,若い男女が何か言い合いを始めました。

どうやらたわいもないことでケンカになったようです。



「うるさいなぁ・・・。寝かせてくれよ。」

Aさんはふとんに潜って眠ろうとしました。



男女のけんかの声はだんだんとエスカレートしていきました。

そしてついに・・・。



女の声が聞こえなくなりました。

Aさんは何事かと思って壁に耳をあてて,様子をうかがってみました。



男が何かつぶやいています。

「やべぇ・・・。やっちまった・・・。」



Aさんは何やら嫌な予感がしましたが,再び布団にもぐりました。



しばらくすると隣の部屋からこんな音が聞こえてきました。



ギーコ・・・。



ギーコ・・・。



まるでのこぎりで何かを切断するような音です。



「ちょっと,この話,やばいやつじゃ・・・。」



すでに学年の子供たちは震えていました。



さらに稲川先生のお話は続きます。



Aさんは耳をふさぎ,聞かないようにしました。



音が止んでほっとしていると,

今度は何かを洗い流すような音が聞こえてきました。



ピシャピシャピシャ・・・。

ジャバジャバ・・・。



ジャー・・・。



そしてまた,



ギーコ・・・。



ギーコ・・・。



この繰り返しが明け方まで続きました。



「昨日の嫌な音はなんだったんだろう・・・。」



朝,Aさんは隣の部屋の前に行き,扉をノックしました。

しかし返事はありません・・・。



そこで大家さんを呼んで事情を説明しました。



すると・・・。



大家「音が聞こえた?そんなはずはないよぉ。」



「いやいや,本当なんですって!

何かを切るような音とそれを洗い流すような音が・・・。」



大家「絶対にそんなはずはない。だって・・・。」



大家さんは持っていた管理用のカギで隣の部屋の扉をあけました。



大家「この部屋は空き部屋だよ。誰も住んでないんだから・・・。」



「そんなばかな・・・。昨日確かに聞こえたのに・・・。」



大家「実は,1年前にこの部屋でバラバラ殺人事件があってね。

殺されたのは恋人の女。そのあと,ここに住んでた犯人の男は逃げたんだけど,

逃げている途中で交通事故にあったみたいでね。

両方死んでしまって,それ以来この部屋は誰も住んでいないんだよ。」



Aさんは背筋が凍りつきました。

昨日,自分が聞いた音は昔ここで起きた殺人事件のやりとりだったのです。



その後Aさんはすぐにそのアパートを引っ越したそうです。



稲川「おしま~い。」



「きゃぁ!この話怖すぎでしょ!むちゃくちゃ怖いよ!」



クラスメイトの出川君もビビッていました。



出川「やばいよ,やばいよ!この話リアルガチだよ!」



みんなはものすごく怖がっていました。

「(よくもまぁ毎回,毎回,くだらない話を考えるもんだ・・・。)」



最後に稲川先生からのメッセージが流れてきました。



稲川「みんな,今夜は早く寝て疲れをとってくださいね!」



「こんな怖い話聞いて寝れるか!」



稲川 淳姫の怪談3
これは稲川先生が1学期に入ってすぐの学年集会で語った怪談噺です。



心臓が弱い方はご注意を・・・。



稲川「それでは新学期になり,最初の学年集会です。

しっかり聞くようにしてくださいね。」



そう言うと稲川先生は静かに語りだしました。



もう何年も前の話になるんだけど,

同窓会で久しぶりに再会した友人と飲んでいた時。



話が盛り上がって心霊スポットに行こうって話になった。

で,酒を飲まなかったAがドライバーになった。



車は中古であったが,結構人気の車種で,

この前も親戚の小学生に羨ましがられたらしい。



ほっておくとずっと車に触っているよう

だったので,注意したこともあるそうだ。



それはともかく,その車で山神トンネルって

いう場所へ出かけたんだ。



メンバーは私とドライバーのAと

幽霊など信じていないBの3人だった。



Bは幽霊が出たら,捕まえてやると意気込んでいた。



ダラダラと深夜のドライブをしている内に,

噂のトンネルの近くまで来たんだ。





お互いにいい大人だし,いまさら心霊スポットなんて,と

私は思ったが,話のネタにって感じのノリで盛り上がっていた。



いよいよ入り口まで来ると,中は暗いが

オレンジのランプはついていて,



幅は車2台が通れるほどの広さで,長さは

入り口から出口がなんとか見える程度だった。



近くに川が流れているようで,暗闇に響く,

水の音がなんとも不気味だったことを憶えている。



ドライバーのAはふざけてトンネル内で

クラクションを鳴らし,ゆっくりと進んでいった。



途中まで進んだところでAが異変に気付いた。

外で何か変な音がすると言い出した。



車を止めて,3人は車から降りた。

しかし,特に異変はない。



私は何もないじゃないかと言った。



しかし,Aは確かに変な音が聞こえたという。



Bは笑いながらAの肩に手をかけていた。

どうやら心配するなと言いたいようだった。



しかし,3人が車に戻ろうとした時,全員がその場で凍りついた。



なんとボンネットに真っ赤な手の跡が多数ついているのである。





Aが悲鳴を上げた。さすがのBも一気に酔いが

覚めたらしく表情は青ざめていた。



私がすぐに,車を出せと行った。



無我夢中で車を走らせ,しばらく進んだ先のコンビニで

車を止めて,再びボンネットを確認してみた。



しかし,そこにはどこにも手の跡などついていなかったのである。



それでは,私を含め,3人がトンネルで見たあの手の跡は

いったいなんだったんだろうか。



一説にはあのトンネルは昔,小さい子が事故に会い,

未だに成仏できずにさまよっているという噂もあるらしい。



稲川「皆さんもトンネルを通るときは十分に注意してくださいねぇぇ。

ふっと横を見ると真っ赤な手の跡が窓ガラスに

ついているなんてこともあるかも知れませんよぉぉ・・・。」



この時点で2年生に進級したばかりの児童のほぼ全員が

泣くか凍りついて固まっていました。



稲川「それでは今度の遠足では

そのトンネルを通ります。楽しみですねぇぇぇ。」



みんな「楽しみなわけあるか!!!」



「あの主任めちゃくちゃですね・・・。

ひょっとしてこれからも

こんな話ばかり聞かされるんでしょうか。」




だぬちゃんの予想は当たっていました。



この後,稲川先生がこの学年に語った怪談噺は

100を超えるといわれています。



次回はどんな怪談噺を聞くことができるのでしょうか。



栗林「(はぁ・・・。なんかこんな学年集会でいいのかな・・・。)」



安井「(しゃぁないな~。)」



子どもたちはへとへとになっていましたとさ。



稲川淳姫の怪談4
中野木小学校では定期的に学年集会が行われていました。

そこでは毎回稲川先生という学年主任が怪談噺をすることになっていました。



稲川「それでは始めましょうか。」



稲川先生は静かな口調で怪談噺を始めました。



昔,昔,那古屋に清州新衛門という男が大きな屋敷に住んでいました。



ある日,この清州が大事にしていたお皿を

おさよという女中が割ってしまいました。



清州「なんということをしてくれたんだ!

我が家の家宝を割ってくれるとは・・・!」



おさよ「申し訳ありません。」



おさよは土下座をして謝りますが,清州の怒りはおさまりません。

まるでその場で切り捨てる勢いでしたが,屋敷の側近たちに止められました。



その夜,おさよが庭の木で首を吊っている姿で発見されました。





それからでした。毎晩のように清州の枕元におさよの幽霊が現れたのです。



そして1ヶ月後,清州新衛門は原因不明の病で死んでしまいました。

その後,屋敷は廃れ,清州が首をつった木だけが残りました。



時代は流れ,昭和21年。あの戦争は終わり,

復興に向けて国中が頑張っていた時代です。



激しい空襲でもあの木は燃えずに立っていました。

焼け野原になった街を再興するための都市計画が進められました。



そして,あの木が邪魔だという結論になり,切ることが決まりました。



すると,どうでしょう。



その木を切ろうとした業者や役人が次々と謎の死を遂げました。



ついにその木はおさよの呪いの木として切られることはありませんでした。



さらに月日が流れ,現代。



その木は未だに切られることなく,道路の真ん中に立っています。



この木の呪いに興味を持った霊能力者がいました。

深夜遅く,その霊能力者がその木の前に立って霊視を行いました。



霊能力者「むむむ・・・。これは・・・。」



すると,首を吊ったおさよの姿が見えました。



霊能力者「確かに,女中が首を吊っている。

やはり,これは彼女の呪いか・・・。」



と,思った次の瞬間・・・。



手首が見えました。彼女を吊りあげる手首が・・・。



霊能力者「どういうことだ,これは・・・。

彼女は自殺じゃないのか・・・。」



次の瞬間,その霊能力者の体が宙に浮きました。

恐ろしいほどの力で首がしまっていきます。



霊能力者「ぐおおお・・・。くっ苦しい・・・。」



次の日,霊能力者がその木の下で死んでいました。

首には縄で首を吊ったような痕が残っていました。



一体,霊能力者が見た手首はなんだったのでしょうか・・・。

そしてその手首が霊能力者を殺したのでしょうか・・・。



謎が深まるばかりの呪われた木が名古屋には

確かに存在するのです。これからもずっと・・・。



話が終わると,子どもたちはみんな泣いていました。



「いやぁぁ・・・。今回も怖いよぉ・・・。」



特に女子たちは泣き叫んでいました。



「・・・。」

「オチがよくわからないし・・・。手首がなんなんだよ・・・。」



学年集会の稲川先生のお話はこれで終わりました。



稲川淳姫の怪談5~8

稲川淳姫の怪談5
稲川「さて,今回はある廃屋に訪れた

若者達の恐怖体験をお話しましょう。」



特別教室の教卓の上に置かれたスクリーン

ごしに稲川先生がしゃべっています。



彼はまだ旅行中だったので出先から

カメラを通して話しかけています。



おどろおどろしい雰囲気の特別教室に

集められた中野木小学校2年生の児童たち。



今日は夏休みなのに学校に来て

怪談噺を聞くことになっていました。



そして背筋も凍る怪談噺が始まりました。

怪談噺が始まる前にイツキ君が一言つっこみました。



「これ,そのうちPTAやら教育委員会で問題視されるぞ・・・。」



ある山奥に一軒の廃屋がありました。

ホテル経営に失敗して,経営者が自殺をし,

その後,解体されないまま何十年も残ったままでした。







その廃墟に男女4人の若者が肝試しに来ていました。



A「本当に幽霊なんてでるんかな?」



懐中電灯を持ち,先頭を歩く男性Aは

後ろを振り返ってそう呟きました。



B「えー,やだー。怖いー。」



すぐ後ろを歩く,女性Bは大げさに怖がって見せました。



C「やっぱ,やめようよ,こんなこと。

絶対に何か出るよ・・・。」



すでに女性Cは入口を入ってすぐのところで帰りたがっていました。



D「Cは臆病だな。大丈夫だよ,何も出やしないって!」



4人は奥まで進むと階段を見つけました。

手すりは取れ,床にはごみが散乱していました。



階段を上ったところに,赤い花が廊下に飾られていました。

その花は誰が飾ったのかわかりませんが,

枯れることなく綺麗な赤い色をしていました。



そんな赤い花を横目に一行は2階の一番奥まで進んで行きました。



そこは大浴場でした。



すでにタイルははがれ,ボロボロの状態でした。

ふと,男性Aが振り向くと,人数が一人足りません。



A「あれ?Dは?」



いつの間にか,Dがいなくなっていました。



C「え,さっきまで私の後ろにいたよ!」

B「あいつ,アタシ達を脅かそうと思って

どこかにかくれているんじゃない?」



あたりを探してみましたが,どこにもいません。



C「ねぇ,もう帰ろうよ!」

A「そうだな,帰ろう。」



大浴場を後にし,いくつかの

部屋の前を通り過ぎました。



B「ねぇ,Cがいない!?」



突然,Bが声をあげました。



A「え?」



懐中電灯をもっていたAが周辺を照らしました。



A「おい,Cちゃん!?どこだー!?」



声が空しく響くだけで,反応はありません。



B「もう私,怖くてどうかなりそうだよ!早く出よっ!」



カシャーン!



あたりが真っ暗になりました。



B「え!?」



足元に転がった物体を拾い上げました。

それはついさっきまでAが持っていた懐中電灯でした。



B「A君?」



A君が見当たりません。



そして懐中電灯の電源を入れよう

としても明りがつきません。



Bは恐怖のあまり,無我夢中で

叫びながら1階への階段を探しました。



そして,暗闇の中,階段をみつけ,

急いでかけ下りました。



B「はぁはぁ・・・。」



月明かりが廃屋内を照らしました。

するとそこには赤い花が飾ってありました。



B「あれ,あの花って2階に飾ってあった・・・。」



ふと,下を見ると階段がありました。



B「確かに階段を下りて1階に来たはずなのに・・・。」



もういちど階段を下りました。

しかし廊下を見ると赤い花がかざってあり,

下を見ると階段が続いています・・・。



B「何よこれ!?どうなっているのー!?」



その後,何がどうやって出られた

のかは定かではありませんが,

女性Bは何とか逃げだせたそうです。



ただ,残りの3人は未だに見つかってはいないそうです。



また,その後,女性Bも何かに取りつかれた

ように様子がおかしくなり,ついには自殺

してしまったということです。



稲川「いったい,この廃墟はなんだったんでしょうね。

そして,行方不明になってしまった3人は

どこへ行ってしまったんでしょうか。」



教室の中は泣き叫ぶ児童で阿鼻叫喚でした。



「(・・・。この話って・・・。)」



リク君は話を聞きながら何か気になることがあったようでした。



稲川「それではまだまだ始まったばかり

の夏休み!十分に楽しんでくださいね!」



真夏の怪談噺・・・。



それは稲川先生の生きがいでした。

たまにはひんやりする夏もいいのかもしれません・・・。



稲川淳姫の怪談6
稲川「待ちに待った,稲川淳姫の怪談噺。

今回はどんな怖~いお話か,興味があるよね。」



体育館に集められた児童は,半分呆れかえっていましたが,

中には怖い話を楽しみにしている子もいるようでした。



「この前も言ったが,絶対にあのセンセー,

問題教師として世間から吊るしあげられるぞ・・・。」




稲川「それでは,始まり,始まり・・・。」



とある大学の登山部がまだ雪解け

間もないX山に登ることにしました。



登山部は男性で構成され,準備を

万端に整え,山のふもとまでやってきました。



この山に入るには入山料が必要だったので入口の受付で

代表のAがまとめて支払うことにしました。



入山料は一人550円となっていました。



受付「それじゃあ,入山料をいただきます。」



Aは3千円を渡し,おつりを受け取りました。



A「それじゃあ,山頂まで気を引き締めて登って行こう。

この時期はまだ結構,雪が残っているから気をつけよう。」

B「おう,Aこそ滑るんじゃないぞ。」



ムードメーカーのBがそう言いました。



一行は順調に登山ルートを進んで行きました。

しばらくすると,山の中腹に休憩小屋がありました。



ここが最後の休憩場所で,この先は山頂までなにもありません。



休憩場所へ立ち寄り,体を休めていると,

施設のオーナーが串団子を皿に乗せて提供してくれました。



C「へぇ,こんなサービスして

くれるんですね。ありがとうございます。」



礼儀正しいCは深々とお辞儀をしました。

皿には団子が5本ありました。



D「これって,全部食べていいんですよね。」



串団子をぺろりと食べ,お腹もふくれた

ところで,再び出発することにしました。



しかし,この後,彼らに試練が待ち受けます。



登山ルートから外れてしまい,遭難してしまったのです。

すでに太陽は沈み,気温もかなり下がってきました。



雪は降っていないとはいえ,

このままでは確実に凍死してしまいます。



A「まずいな・・・。なんとか,先ほどの

休憩小屋まで戻れるといいんだが・・・。」

B「おい,あそこに見える小屋って

さっきの休憩小屋じゃないか!?」



しかし,よく見るとその小屋は先ほどの

休憩小屋ではなく,ただのコテージでした。



この際,暖をとるためならそこでも

構わないということになり,お邪魔することにしました。



電気は通っていなかったので真っ暗な中,

一つの部屋の中心に固まって寒さをしのごうとしました。



C「でも,この寒さの中,寝たら確実に凍死しちゃいますね・・・。」



そこでリーダーのAが凍死しないためのある方法を提案しました。



それは,4人が部屋の角に立ち,最初の合図で一人が隣の角まで走ります。

その一人が角に立っている人にタッチします。



タッチされた方は同じように隣の角まで走ります。



これを右回りで繰り返していけば,眠らずにすむというわけです。



B「面白そうじゃないか。さっそくやってみようぜ。」



こうして,真っ暗な闇の中で,一晩中,

部屋の中をぐるぐると走り回りました。



次の朝,救助隊が駆け付け,彼らは大病院で

検査入院することになりました。



入院した部屋は5人ベッドの多部屋でした。



みんなは一気に疲労が出て,

その日の夜まで眠ってしまいました。



目を覚ましたのは夜中の12時過ぎでした。

誰とともなく,昨日の事を語り出しました。



D「なんとか,助かってよかったですね。

Aさんのアイデアのおかですよ!」

A「そうだろ~。」



しかし,Cは下を向きうつむいた

ままで顔色が良くありませんでした。



B「どうしたんだ,せっかく助かったのによ!?」

C「あの,ちょっと気になることがあるんです・・・。

昨日の夜,僕たちって部屋の中をずっと回っていましたよね。」



全員がCに注目しました。



C「あれって,ここにいる4人じゃできないですよね・・・。」



全員が凍りつきました。



確かに,4人では1周した時点で

部屋の角には誰もいないので終わってしまいます。



しかし,彼らはずっと一晩中回り続けていたのです・・・。



D「ずっと気になっていたんですけど,どうして僕たちって

5人部屋に案内されたんですかね?

あそこのベッドってずっと空いたままですよね・・・。」



B「よく考えたら,なんで休憩所で

団子を5人分出されたんだ・・・?」



しばしの沈黙が流れました・・・。



A「そういえば,入山料も一人550円で4人分なら2200円なのに,

確かあの時,2750円取られていたな・・・。

おつりをよく確認しなかった自分が悪いんだが・・・。」



もう一度,空いたはずのベッドを見ました。



なんとベッドに横たわっている人影が見えました。



C「ヒィッ!?だっ誰かいますよ・・・!?」



その人影はベッドからすっと下に落ち,

床を張ってゆっくりとこちらへ向かってきます。



ヒタ・・ヒタ・・・ヒタ・・・



うぁぁぁぁぁぁ・・・。



病院には大きな悲鳴が響き渡りました・・・。



稲川淳姫の怪談7
  日本には行ってはいけない村がある。その村の名前は-



どこかで聞いたようなキャッチコピー。

これは稲川先生の怪談噺・・・。



稲川先生はご自身の怪談噺をデータ化して

オンライン上で公開することにしました。



もちろん中野木小学校2年生の児童しか閲覧できない

ように専用のIDとパスワードを設定してあります。



ちなみに稲川先生の怪談噺は怖すぎて

ほとんど誰もアクセスしませんでした。



そこで彼は「生活科」の宿題として稲川先生の

怪談噺を聞いて感想を書くように指示しました。



今回はそんなデータ化された怪談噺の中で

特に話題になったお話を紹介しましょう。



日本には行ってはいけない村がある。



その村の名前は-猫鳴村-







その村は「入ったら出てこられない」,「死者への入り口」などと

口コミで噂され,どこにあるのかもわかっていない。



ただ,この日本のどこかに確かに存在する村だと伝えられている。



数多くのオカルトマニアや心霊研究者などがその存在を探したが,

誰一人としてその村をつきとめた者はいなかった。



ある大学のオカルト研究会のメンバーが

この村の存在を突き止めようと準備を進めてきた。



メンバーは全部で15人。



男性が10人で女性が5人であった。



メンバー一行は古い文献を隅々まで熱心に調べていた。



有力候補だった説が猫鳴トンネルをくぐるとその先に,

「日本国憲法,このさきつうじず」という立て札があり,

さらに進むとそこに猫鳴村があるというのだ。



さっそく,猫鳴トンネルを探してみるとすぐに見つかった。



某県某市に旧猫鳴トンネルという

今は使われていないトンネルが見つかった。



メンバー一行は深夜0時を過ぎた頃,

このトンネルの中へ入っていった。



入口付近に1匹の黒猫が彼らのすぐ前を横切っていった。



その猫は道の端まで来ると彼らがトンネルに入っていく

様子をじっと眺めながら「ニャァ・・・。」と小さく鳴いた。



そしてしばらくすると,彼らは何事もなかったようにトンネルから戻ってきた。

トンネルの反対側の端はブロックが積み上げられ,

先に進むことはできなくなっていたが,隙間からは反対側の景色が見えた。



国道も通っており,そこには都市伝説の

村は存在していないように見えた。



彼らは,ほどなくしてその場を離れた。



結局,猫鳴村を見つけることはできなかったのだ。



彼らがトンネルの一番奥で見たブロックの

一番左端に小さく赤い文字が書かれていた。



「禍」という文字が・・・。



ほどなくして彼らの通う大学で

原因不明の病がはやり出した。



トンネルに入ったメンバー一行は

次々と謎の死を遂げていった。



原因不明の病死だ。



大学での死者はさらに増え続け,彼らと関わった友人や教授,

ゼミ仲間,他の部活動の人間なども次々に死んでいった。



結局この大学では原因不明の死亡者が122人も出た。



大学は当面の間,休校となり,警察や大学病院も

原因を突き止めようとしたが分からずじまいだった。



巷では猫鳴村の呪いとして恐れられた。



そして噂が噂を呼び,退学者や翌年の

入学者が激減し,この大学は閉校となった。



閉校後の校舎内に一人の男性が立っていた。



彼は,オカルト研究会メンバーの唯一の生き残りであった。



彼だけが生き残ったので,当初は警察も

彼のことを疑ったが,何も証拠は出てこなかった。



「猫鳴村の呪い・・・か・・・。クククク・・・。」



彼は突然,闇夜の中で笑いだした。



「こんなことになるなんてなぁ・・・。」



何やら独り言をつぶやいています。

この原因不明の真相を語り出しました。



彼は事前に一人で猫鳴トンネルへ行き,

そのブロックを乗り越えて奥へ進んでいました。



そこには,本当に猫鳴村が存在していたのです。



彼は何らかの方法でかつてその村を

壊滅させた殺人ウイルスを手に入れました。



彼はオカルト研究会の中でいじめを受けていました。



そこで,猫鳴トンネルから帰ってきた直後に,

このウイルスを使って復讐を実行しました。



「しかし,奴らが死ねばそれで良かったのに

あんなにたくさん死ぬとはなぁ・・・。」



その時です・・・。



「グッ・・・。なんだ・・・。苦しい・・・。」



彼は血を吐いてその場に倒れこみました。



「なぜ・・・こんな・・・はずじゃ・・・なかった・・・」



彼もまた謎の死を遂げました。



これこそ猫鳴村の呪いなのか・・・。



死者は123人となった。



のちに原因が未知のウイルスだと正式に結論づけられた。

このウイルスを人々は123(ヒフミン)ウイルスと呼んだ。



このウイルスはしばらく影を潜めることになるが

・・・70年後の現代,それは突然訪れた・・・。



稲川「今回のお話はここまで。

宿題がんばって書いてねぇ・・・。」



みんなはこんな話聞いて感想を

書くなんて嫌だと心底思いましたとさ。



稲川淳姫の怪談8
今回の怪談噺も稲川先生がオンライン上で中野木

小学校の児童に向けて公開している内容から・・・。



オムニバス形式で二つ紹介します。



少し前からドローンと呼ばれる手軽に

空撮ができるロボットが活躍しています。



これは,ある住宅街で実際に起きたお話です。



住宅街の一角にあるマンションでドローンが

飛んでいる姿がよく目撃されていました。



その最上階に住んでいる主婦が洗濯物を

干しているとドローンが目の前に現れました。



しばらくすると隣へ進んで行き,数秒間ホバリングしたり,

同じ階のベランダを行ったり来たりしていました。



その住人はもしかして新手の覗き

ではないかと思ったそうです。







事件が起きたのは1週間後・・・。



その住人の隣の部屋で強盗殺人事件が起きたのです。



犯人はまだ見つかっていません。



もしかしたらあの時のドローンは

強盗に入りやすい部屋を物色していたのか。



あるいは恨みのある人間の

住みかを探していたのか・・・。



この事件の後,ドローンがその住宅街を

飛ぶことはなくなったそうです・・・。



この動画を見ていたまさらちゃんが,



「えーん・・・。怖いよぉ・・・。こういうリアルに怖い話

ぶっこんで来るの止めてよ・・・!怪談関係ないじゃん!!!」




もっともな突っ込みを画面に

向かって入れていました。



そしてもう一つのお話は・・・。



あるアパートの1階角部屋に

住んでいる男の大学生がいました。



この部屋の一室の窓にはカーテンのサイズがあっておらず,

隙間があいて外の駐輪場が見える状態になっていました。



つまり外からも中の様子が少しわかってしまうのですが,

つい面倒臭がって交換していませんでした。



実は以前からこの出窓がとても不気味に感じる時がありました。



眠りつこうと目を閉じると,窓の方から誰かから見られているような

気配を感じたり,深夜外から不気味な音が聞こえることがありました。



ある日,いつものように電気を消して眠りに

つこうとすると,出窓から異音が聞こえてきました。



ガリ,ガリ,ガリ・・・と爪で

壁を削るような嫌な音です。



気になって窓の方を見ると,カーテンの隙間から

不気味な目がこちらを覗いているのです。



その瞬間,彼は大声をあげて電気をつけました。



出窓に近づいて確かめようとすると

すでにその「目」はありませんでした。



慌てて外の駐輪場に出て辺りを

見渡してもそこには誰もいません。



彼は勘違いだったのかと思い,ホッとしました。



そして何気なく,出窓のカーテンの隙間から自分の部屋の中を

のぞくとそこにはこちらをみつめる二つの目が見えたのです。



大学の友達に話しても誰も信じてくれませんでした。



今でも時々,不気味な気配を感じることがあります。



その時は,近くの寮に住む友達の

家に泊めてもらうことも・・・。



稲川「今回の噺はここまで・・・。宿題もやってくださいね。」



稲川淳姫の怪談 9~

稲川淳姫の怪談9
今回も稲川先生の怪談噺はデジタル配信。

さてさてどんなお話なのでしょうか・・・。



皆さんは,地球上で人間を一番多く,

殺している生き物は何かご存知ですか?



そうです,人間です。



人間こそが戦争などによって人間を,

たくさんたくさん殺しているのです。



では,人間以外の生き物の中で,

人間を最も殺している生き物は何でしょうか。



正解は,蚊です。





蚊はマラリアなど様々な病気を媒介し,

多くの人を苦しめる昆虫なのです。



そんな蚊にまつわる都市伝説をお話しましょう。



とある国ではバイオ研究が盛んで,

様々な生物兵器や遺伝子工学の研究などを行っていました。



その国のある研究施設で作られた蚊は,

ただの蚊ではありませんでした。



恐ろしいことに未知の病原菌を保有したまま培養し,

生物兵器として利用するつもりでした。



しかし,研究と管理に失敗し,

その蚊が国中に広がってしまいました。



そして,多くの死者を出すことになりました。



一説によると,

ある時期に世界中でパンデミックを起こした,

“とある病気”もその“蚊”が原因だとか。



信じるか信じないかは君たちしだいだよ。



こうして稲川先生の怪談噺は終わりましたが,

すでにアクセススは激減して見ている児童はほとんどいませんでした。



しかし,イツキ君は暇つぶしにこの動画配信を見ていました。



「相変わらず,どこで仕入れてきたのか,

わかんないような情報を垂れ流すのが好きだなぁ。」



画面の前であきれ返っていました。



しかし,彼はこの後,今まで聞いた,

稲川淳姫先生の怪談噺に隠された,

“謎”を解くことになるのですが,

それはまた“別のお話”・・・。



稲川淳姫の怪談10
もはや定番となった

怪談噺のデジタル配信。



稲姫先生はどんな内容を

更新したのでしょうか。



呪いのゲーム・・・。



それは少年たちの間でまこと

しやかにささやかれる噂のゲーム・・・。



そのゲームは普通のゲームソフトに

紛れ込んでいて外見では見分けがつかない。



一度そのゲームを始めてしまったら

クリアしないと呪い殺されてしまう。



そのゲームはクリアの過程で大きな

謎が隠されており,

その謎も解かなければいけない。



呪いのゲームは途中で

やめることもできない。



とある地域では小学生の間で

このような噂がささやかれていた。



小学5年生のA君はゲームが

大好きなどこにでもいる小学生だった。



特に好きなジャンルはRPGだった。



友人のB,C君とともに

いつもゲームの話ばかりしていた。



A「呪いのゲームって知っているか?

隣町の小学生がやったらしい。」

B「聞いたことがあるな。

それでその子はどうなったんだ?」



C「クリアできずに,

呪いで意識不明の状態らしい・・・。」



C君もその噂を聞いたことがあるようだった。



学校から帰宅後,

A君はいつものように

ゲームを起動した。



今はほぼすべてがダウンロードとなっているので

ソフトをいちいちハードに入れる必要はなかった。



しばらくは普通のゲームだったのだが,

突然画面が赤くなり不気味な黒い文字が映し出された。



書いてある内容はこの世の言葉では

ないようで,まったくわからなかった。





A「うわっ!なんだこれ!

まさかこれが呪いのゲーム!?」



彼はコントローラを投げ捨てようとしたが,

手が思うように動かない・・・。



家族も出かけているので

この部屋にいるのは彼一人・・・。



助けを呼ぶこともできない。



なぜか声もうまく出せないようだ。



A「クリアするしかないのか・・・。」



画面には主人公と思われる

キャラクターが表示された。



A「えっと,この・・・。」



画面にはおそらく地名を表していると

思われる文字がたくさん並び,

いくつかの道も表示されていた。



相変わらず基本の色は赤でその他は

灰色と黒しか使われていない

不気味なゲーム画面だった。



A「こんなのクリアできないよ・・・。

誰か助けてー・・・!」



彼の家族が帰宅するとリビングで

生気を失ったAを発見した。



残念ながら彼の意識は

今も失ったままだ・・・。



一説にはゲームばかりやっている子供に

呪いのゲームはやってくるという・・・。



みんなもゲームのやりすぎには

十分に注意しよう・・・。



今回の動画配信も

アクセス数はほぼありませんでした。



「うーん・・・。

ほんとによくこんな話を

おもいつくよなぁ・・・。

今度どうやってネタ集めを

しているのか聞いてみよ・・・。」



イツキ君が画面の前でブツブツと

つぶやいていたとさ・・・。







シリーズ別へ

TOPページへ