2013/9/1
第9話 ブラック・インパクト
~漆黒の金剛石に手が届く瞬間 序章~
夜,旭森林公園へ採集に向かう途中…
「ねぇ,ここってどこ??」
「おかしいな?道,迷ったかな…。」
「看板に大幡緑地って書いてあるぞ…。」
「そんなぁ…。」
「戻って大きい道に出よう。」
「待って。せっかくなんだから少し見ていこう。
何か採れるかも。」
「いつも言いますが,どうせ取れませんよ。」
「だぬの言うことも一理ある。それに,下見もせず入るのは危険だ。」
「そっかなぁ~。せっかくなのにな~…。」
「あ,あそこに車があるよ!?他にも誰かいるのかな!」
「やっぱり,そうだよ!大幡緑地もカブクワが採れるんだよ!」
「ちょっちょっと,これ見てください!」
「きゃぁ,何これ!?」
「気味が悪いですよ。帰るのが一番だとだぬは思うよ!」
「うん,それがいいと思う!怖いよぉ!」
「しょうがない…。旭森林公園に向かうか。」
―リク君達が去った後…―
山下「今村さん,残しておいた印はありました?」
今村「ええ。山下君,この傘ですね。」
山下「そうです。その木です。」
今村「しかし,漆黒の金剛石はいないようですねぇ。ふぉっふぉっ。」
山下「そうですか…。なかなか見つからないものなんですね…。」
牟田「当たり前だ。そんな簡単にいくか。
山本率いる“山犬”や東條率いる“川蝉”だって見つけてないんだ。」
山下「そうだな…。」
今村「そういえば,その山犬・川蝉と合流して,
総力探索を行うことが決定しましたよ。」
牟田「え,いつですか!?」
今村「2週間後です。場所は,各務原山です。」
山下「結構先ですね。それまでどうします?」
今村「そうですね。もう少し西方面を探索してみましょうか。」
牟田「了解です。」
どうやら彼らも“漆黒の追跡者”のメンバーのようです。
一方,リク君達は無事に旭森林公園に着いたようです。
そして,山本達と出会うことになるのです。
第10話 ブラック・インパクト
~漆黒の金剛石に手が届く瞬間①~
―岐阜県各務原山のふもとにて―
漆黒の追跡者達が何やら山のふもとで話し込んでいます。
山下「遅いですね。奴ら…。」
今村「もう少し待ってみましょうか。」
1時間後…
牟田「いくらなんでも遅すぎる!“山犬”や“川蝉”はまだか!?」
山下「まさか,今村さん!?俺達は出し抜かれたんじゃ!?」
今村「ふむ。どうやらそのようですね。」
牟田「くそっ!舐めやがって…!」
山下「俺達もすぐ,山に入りましょう。このままじゃ奴らに先を越されます。」
今村「そうですね,では,いきますか。」
―その頃―
「今日こそ大物をとるぞ!」
「くどいようですけど,どうせ取れませんよ。
それに今日の天気予報だと,このあと雨が降るようでしたよ。」
「ねぇねぇ,“漆黒の金剛石”について何かわかった?」
「色々調べたり,お父さんにも聞いたりしたんだけどね。」
「じゃあ,わかったんだね!」
「ううん。お父さんは自分で調べなさいって。だから調べたんだ。」
「ふんふん。」
「おそらく“漆黒の金剛石”っていうのは…。
“オオクワガタ”のことだと思う。」
「オオクワガタですか~。」
「うん,一昔はオオクワガタはとても高い値段で取引されていたんだって。
だから,黒いダイヤモンドって言われることもあったらしい。」
「なるほど。」
「そっかぁ。じゃあ私達も採れるといいね。オオクワガタ!」
「そんな,簡単には採れないよ。
だからあの漆黒の追跡者達だって必死に探しているんだろうから。
きっとあいつらはオオクワガタをたくさん捕まえてお金儲けするつもりなんだよ。」
「怖い人たちはむりだなぁぁぁ。」
「しっ!誰かいるぞ!?」
第11話 ブラック・インパクト
~漆黒の金剛石に手が届く瞬間②~
「誰もいないじゃない?」
「いたんだよ。あの恰好は以前見たことが…。 」
「虫も怪しい人も怖いよぉぉぉぉ…!」
「でっ出たぁ,トシの愚王の威厳!!」
「大きすぎでしょ!?デイダラボッチ!?」
「そうですよ、これで相手を威嚇すれば!!」
「ダメだよ。愚王の威厳は相手の恐怖心を利用したもの。
子供を恐れない大人には無意味なんだ。」
「何だぁ…。本当に役に立たないですね~!」
「いつきが見た怪しい人ってのが気になるな…。」
ゴロゴロゴロゴロ…。
雲行きが怪しくなってきました。嵐の予感です。
南雲「他を出し抜いて本当に良かったんですかね。」
山本「かまわねぇさ。」
南雲「そうですか。」
山本「東條も同じ考えだろうしな。」
古賀「じゃ,今村さん達はふもとでずっと待っているんですか。」
山本「さぁな。牟田はともかく,今村は馬鹿じゃねぇ。
とっくに俺達の行動なんて見抜いているだろうな。」
古賀「怒られないですかね。今村さんに…。」
山本「今の奴は腑抜けだ。心配ない。」
南雲「腐っても“仏の今村”ってことですかい。」
南雲「降り出す前になんとか見つけましょう。」
第12話 ブラック・インパクト
~漆黒の金剛石に手が届く瞬間③~
山道を歩き続ける人影が見えます。
どうやら“漆黒の追跡者”達のようです。
何やら声が聞こえます。
南雲「そういえば“例の会社”なんですが,潰れてしまったらしいですよ。」
山本「オランダの“あの会社”が買収を仕掛けったって話は本当だったか。」
古賀「怖い話ですね…。」
山本「…。」
古賀「そのオランダの会社が,腕利きの“暗殺者”を雇ったとか。」
山本「俺達の邪魔をしに来たか。」
南雲「それより,ちょっと一服を…。」
山本「捨てるんじゃねぇぞ,山火事になる。」
南雲「わかってますよ。それに大丈夫ですって。
もうすぐ,降り出しそうですし。雨が消してくれますよ。」
こちらは,少年昆虫団です。
しばらく歩いているとわかれ道を見つけたようです。
「あれ?どっちに行くんだっけ?」
「山頂か展望台かぁぁぁ。」
「下見に行った時は,確か山頂に行ったと思いましたよ。」
「そうだっけ?」
「そんなことより,もう帰りませんか?暑すぎですよ~…。」
「確かに暑い…。」
「頑張って採集しようよ!」
「心頭を滅却すれば火もまた涼し!」
ごぉぉぉぉぉぉ…・。
「でっ出たぁ!いつき君の氷結人間(アイス・マン)!!」
「寒い,寒いよ~!何これ!?」
「これは,いつき君がクールな事を言って,
周囲の空気を冷やし,瞬間冷凍地獄にするんだ」
「これじゃ寒すぎだよぉぉぉ。」
「これはこれでいいとだぬは思うよ。」
「よし,山頂へ行こう!」
少年昆虫団は,山頂に向かって再び歩き出したようです。
南雲「わかれ道ですね。どっちに行きます?」
山本「そうだな…。」
古賀「山頂も展望台も下見済みですのでどちらでも大丈夫ですよ。」
山本「…。」
南雲「展望台から行ってみますか?」
山本「…。」
南雲「山本さん?」
古賀「どうかしました?」
彼は不気味に笑った後,こう言いました。
山本「山頂だ。」
一歩,一歩,少年昆虫団に“漆黒の追跡者”達の手が迫っているようです。