リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第145話~第148話

2016/8/27

第145話 あの神主と再開
夏の暑い日差しが照りつけていました。

こんな日に少年昆虫団は大須へ来ていました。



どうやらだぬちゃんが欲しいものがあったようです。



そして買い物が終わり,帰りに

県図書館に寄りました。イツキ君の希望です。



「さすがにここは本の種類が多い。」



彼はコンピュータで電子図書のデータベースを

検索しながら満足げになっていました。



「ここはつまらないところですね~。」

「同感。」



二人にとっては退屈な場所のようです。



リク君は入り口にあるソファーでくつろいでいました。



「ああ~,いい気持ち。」



すると後ろから声をかけられました。



「ん?」



そこには見覚えのある姿がありました。



「あれ,あんたは・・・。」



リク君のもとにやってきたイツキ君が

その人物に声をかけました。





赤神「やあやあ,こんな場所でまた会うとは。奇遇だな。」



この人物は以前,二宮神社で出会った神主でした。



「えっと,確か赤神さんでしたっけ?

どうしてここに?」




赤神「いや~,ちょっとこの近くで神主の寄合

みたいなものがあってね。そのついでさ。」



赤神氏はそう答えました。



まさらちゃん,トシ君,だぬちゃんもやってきました。



「あ,こんにちは。」



赤神「やぁ,こんにちは。」



赤神氏はまさらちゃんに笑顔で答えました。



赤神「君たちはどうしてここに?

図書館なら地元にもあるだろう。」



「だぬの買い物のついでだよ。

俺が寄りたいって行ったんだ。」




イツキ君が答えました。



赤神「えっと,君は確かイツキ君だったかな。」



赤神氏は少年昆虫団の名前を憶えていたようです。

実は前回出会ったときに自己紹介をしていたのです。



赤神「図書館といえば,地元の中野木図書館で,

変わった書物を見つけたことはないかい?」



「え?」



一瞬,全員が静まりました。



「さぁな。」



イツキ君がそっけなく答えます。



赤神「そっか。変なことを聞いてすまなかったね。それじゃ。」



そう言って赤神氏は奥のエレベータから

上の階に上がっていきました。



「あの人が言っていた書物って・・・。」

「ああ,ノアの書のことかもしれない。」



少年昆虫団の皆には,なぜ赤神氏が

“ノアの書”のことを知っているのかわかりませんでした。



「あの人の袴(はかま)って灰色だったよね。」



リク君が思い出したようにつぶやきました。



「そうでしたね。今日はさすがに

スーツのようでしたけど。」




リク君には何か考えがあるようでしたが,

それ以上は口にしませんでした。



そして,みんなは図書館から帰宅しました。



第146話 ゼッタイゼツメイトシ① ワクのわくわく冒険記
これはいつ誰の身にも起こり得る現実の物語



愛知県知多半島の先端付近にある某市市某町の浜辺にて



この町の海水浴場は海で泳ぐ人以外にも,

海岸でバーベキューや魚釣りもできるとあって,

たくさんの人たちが訪れていました。





その海水浴場にリク君の弟であるワク君とトシ君がいました。



どうやらみんなでバーベキューをする予定でしたが,

残りの少年昆虫団のメンバーはバスに

乗り遅れてしまい,後から合流するようです。



時間はお昼前,非常に日差しの暑い日でした。

二人は,バーベキューの準備をしていました。



バーベキュー用のコンロや着火剤などの

基本的な道具はありましたが,食料などは

残りのメンバーが持っていました。



なので,二人は自分たちが飲む最低限の飲料水と,

飯ごう用のお米くらいしかもっていませんでした。



トシ君が荷物を持つ係で,色々と

バーベキューセットを出して準備をしています。



「しかし,なんでみんな乗り遅れるかな~。」

*ワク君は今回からこの色での表示となります



ワク君は少し不満そうです。





「まぁいいや。先にできることをやっておこう。

トシ,飯ごうの準備をしよう!」




ワク君は年上のトシ君を呼び捨てにして声をかけました。



「はいはい。」



トシ君は何も文句を言わず,飯ごうをワク君に渡しました。



その時でした。突然,大きな揺れがおきました。



「わわ・・・!?」



地震です。



トシ君は持っていた飯ごうを思わず砂浜に落としてしまいました。



揺れはすぐに止みました。



「最近,地震多いよね・・・。」



今の地震はそれほど大きな揺れでなかったので,

トシ君はそれほど心配していませんでした。



落ちた飯ごうを広い,海水で洗いに行きました。



トシ君たちがバーベキューしようとしている場所は

波打ち際から50mほど離れていました。



トシ君が飯ごうを洗い,ふと水平線を見ました。



その時,水平線の向こうが眩く光りました。



「うわっ,なにこれ!?」



その直後のことです。



ゴゴゴゴゴゴ・・・・



ドスン!



下から突き上げるような強烈な力を受けて,二人は倒れこみました。



先ほどとは比べ物にならないほどの大きな揺れが襲いかかります。

二人も海岸で遊んでいる多くの人たちも

誰一人立ち上がったり,動いたりできないような激しい揺れです。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!!!



「やばい,これは・・・。」

「死ぬっ,死ぬっ~!」



海岸はパニックになり,たくさんの悲鳴が聞こえてきます。

時間にすればわずかですが,そのとてつもない揺れは

何分も続いたように感じられました。



二人は何が起きたのか理解できませんでした。



揺れが収まったかと思うとさらにもう一度揺れ始めました。



海岸沿いに植えてあった樹木が倒れ,

海に流れ込む川の水が激しく波を立てています。



周囲から何かが崩れる音や悲鳴など混乱した様子が伝わってきます。



そしてようやく揺れは収まりました。



二人は震えて動けません。かつて経験したことが

ないほどの激しい揺れは二人を混乱させるには十分でした。



しかし,二人に訪れる本当の恐怖はこれから始まるのでした・・・。



第147話 ゼッタイゼツメイトシ② ワクのわくわく冒険記
被災 1日目 10:56 



突如起きた大地震



海水浴場のある浜辺に来ていたワク君とトシ君は

初めて訪れた大地震の恐怖で体が動けません・・・。



しかし,二人はなんとかして体を

起こし,周りを見渡しました。



「なんてことだ・・・。」

「あっあれ!」



トシ君は波打ち際で声を出してワク君を呼びました。



ワク君はトシ君の近くまで行きました。



トシ君が海辺に対して直角方向を指差しました。



その場所には崩れ落ちた沢山のテトラポットがありました。



先ほどまでたくさんの人たちがこの上から魚釣りを楽しんでいた場所です。

二人が近くまで駆け寄るとその悲惨な光景に目を覆いたくなりました。



「ぐっ・・・。」



多くの人がテトラポットに押しつぶされて死んでいました。



釣りをしている最中に地震の被害にあってしまったようです。



押しつぶされた人たちの体はもはや,ぐちゃぐちゃです。



「なんでこんなことに・・・。」



二人が崩れたテトラポットの前でうろたえていると

その奥からかすかな声が聞こえました。



「まだ,奥に誰かいる!?助けなくちゃ!」



トシ君はテトラポットの隙間を覗き込みました。



「よせ!危ない!」



ワク君はトシ君を制止しようとします。



「ほら,奥に人がいるよ!」



ワク君も慎重に覗き込んでみました。



「だめだ・・・。下半身が完全に

つぶされている。助からないよ・・・。」


「でも,助けなきゃ!オイラたちにできることやろう!」



トシ君はどうやら目に見える困った人たちを

全て助けなくてはという使命感があるようです。



「やめるんだ!ほら,はやくこっちへ!」



ワク君は力づくでトシ君をテトラポットから引き離します。



その時でした。



またしても大きな揺れが襲ってきました。



「うあぁぁぁ。」



上部に残っていたテトラポットがさらに崩れてきました。



二人は間一髪のところで難を逃れることができました。



しかし先ほど助けを求めていた人の声はもう聞こえません・・・。



「いいか,トシ!俺たちにできることは,

まず自分が生き残ることだ!

それをその足りない脳みそに

しっかりと叩き込んでおけ!いいな!」




ワク君は兄のリク君よりもかなり口が悪いようです。



「でも・・・。」



トシ君は納得がいかないようでしたが,

それ以上は口にしませんでした。



地震が発生したら絶対に崩れやすい場所へ

近づいてはいけません。

気をつけましょう。



二人は荷物が置いてある場所まで

戻ってくると,ある異変に気づきました。



「なんだこれ・・・。」

「どうしてこんなことが起こるんだい・・・?」



二人が目にしたものは,先ほどまで確かに

そこに存在した,“海”が消えていたのです。





「これは・・・まずいぞ・・・。」



この先二人に何が起きるのでしょうか。



第148話 ゼッタイゼツメイトシ③ ワクのわくわく冒険記
被災 1日目 11:00 



二人が目にしたものは,先ほどまで

確かにそこに存在した,“海”が消えていたのです。



「これは・・・まずいぞ・・・。」

「なんでこんなことに・・・?」



トシ君には何が起こっているのか理解できませんでした。



「あ,あれ!あれを見てよ!」



トシ君は水平線を指しました。



「なんか,たくさんの人たちがいるよ!あんなに遠くに!」



よく見るとかなり離れた場所まで人が流されていました。



「海が引いて,泳いでいた人たちがあそこまで流されたんだ。

残念だけど,どうしようもない・・・。」


「助けに行こう!一人でも救わなくちゃ!」



トシ君は先ほどワク君に言われたことをもう忘れているのでしょうか。



「このクソ野郎!いいか,よく聞け。今から何が起こるか教えてやる。」



そういいながら,持っていた荷物を片付けました。



「津波だよ!それも超でかいやつが来る・・・!」

「えええ!?津波ってあの・・・。」



浜辺にいて流されずにすんだ人たちも避難を始めていました。

こんな状況でもバーベキューなどを続けている人たちも少数ですがいました。



「じゃあ,せめて残っている人たちに声をかけながら逃げようよ。」

「そんな時間はない!津波は時速70km以上で襲ってくるんだ!

それにああいう連中には何を言っても無駄だ!

台風の時に用水路を見に行って死ぬ連中と同じだ!ほっとけ!」




ワク君は徹底した現実主義(リアリスト)でした。

自分の行動に責任が持てないことをする人たちには

厳しい意見の立場だったのです。



「とても小学1年生とは思えないね・・・。」



ワク君はトシ君を説得しながら海岸の端にある堤防まで走って来ました。

その時です。水平線の向こうから何やら黒い影が押し寄せてきます。



「来たっ!津波だ!」



急いで防波堤にある隙間から国道へ出ました。



幸いこの防波堤はヒビが入る程度で壊れてはいませんでした。

その防波堤の先は国道があり,さらに向こうには民宿などが広がっていました。





それほど高い場所には作られていなかったので,避難するには

さらにその奥にある小高い展望台がある丘までいく必要がありました。



「この防波堤の裏にいれば大丈夫なんじゃないの?これ,3mはあるよ!」

「だめだ,俺の予想が正しければ,これは東海地震か,南海地震,

東南海地震のどれか,または複合して起きた可能性が高い!」




ワク君は地震に対する知識がかなりあるようです。



「なんじゃそりゃ~。」



トシ君は少しパニックになっていました。



「もし,そうだとしたら,この地域でも津波は5mを

超える可能性がある!とにかくあの小高い丘まで登って行こう!」




ワク君は民宿が並ぶわきの小道を指差しました。



ここから展望台までいけるようです。



「わかった!」



二人が小道に差し掛かった時,津波はもう間近まで迫っていました。







第149話~第152話

2016/9/22

第149話 ゼッタイゼツメイトシ④ ワクのわくわく冒険記
ワク君とトシ君は小高い丘にある

展望台に続く小道を走っていました。



まるで黒い怪物のような動きをする津波は先ほど,

バーベキューの準備をしていた場所まで来ていました。



トシ君は後ろを振り返りました。



「なんか,まだ,道路に車が走っていたりするんだけど大丈夫かな。」



そうつぶやくのが早いか,津波は一瞬で

防波堤を超え,国道に流れ込みました。



そして,多くの車をも飲み込んでいきました。





その勢いはとどまることをしらず,民家も飲み込んでいきます。

その勢いは留まることを知らず、丘を駆け上がってきます。



「やばい,急げ!もうすぐだ!」



ギリギリのところで津波が届かない場所まで避難することができました。

先ほど浜辺にいた多くの人たちも避難をしていました。



他にも近くに津波が届かない場所があるようで,

そちらにも多くの人が避難しているようでした。



下を見下ろすと先ほどまで楽しく遊んでいた海岸は一変していました。

黒く渦巻く巨大な海竜のような津波は全てを破壊し,飲み込みました。



「お~い,助けてくれ~。」



ふと先ほど通ってきた小道を見ると,一人の老人が倒れこんでいました。

どうやらたどり着く直前で足をくじいてしまったようです。



「助けに行くよ!」



そういって,トシ君はその老人を背負い,

展望台まで連れてきました。



津波はすぐそこまで来ている状況でしたが,

なんとか救出することができました。



「ほっとけなくてさ。」



トシ君は不機嫌そうにしているワク君にそう言いました。



「いや,別に俺だって助けられる命なら助けた方がいいと思っている。

今のトシの行動を責めるつもりはないさ。」




トシ君は年下のワク君にそう言われてちょっと嬉しくなりました。



体を休めている間,地元の人が持っていた携帯ラジオに耳を傾けました。



ザザザ・・・本日起きた・・ザザ・・地震はッザザ・・・

東海地震・・と・・が連動・・・で被害は戦後最悪・・・ッザザ

名古屋をはじめ・・・ッザザ・・

多くの地域で甚大なる被害が出ている模様・・・

ザザザ・・・死傷者は・・・ザザ・・・



電波が届きにくい場所なのか聞き取りづらいですが,

かなりの広範囲で大きな被害出ているようです。



「やはり,東海地震が起きてしまったか・・・。ついに・・・。」



トシ君はその地震がどれほどの規模で起きたのか想像もつきませんでした。



一方,ワク君は展望台に置いてあったこの地域の地図を手に入れました。



「よし,もう少し高い所へ行こう。」

「ええ,ここまでくれば安全でしょう!?」



ワク君は首を横に振りました。



「いや,そうとも限らない。ここをさらに登って行こう。

そのあとは下りになっていて,その開けた場所にこの地域の中心と

なる町があるみたいだ。そこまで行かなくちゃ。」


「ええ,なんで~!?」



トシ君は疲労もあり,不満そうです。



「理由はあとで説明するから。」



そこにいた他の人たちも同じように移動を始めました。



「いいか,このままではあそこは沈むかもしれない。

さっき,慰霊碑を見つけてね。過去の地震であの場所まで津波が来たことが書かれていたんだ。」




「ええ,そうなんだ。」



過去の教訓が残されている慰霊碑や書物,

歌などは現代にも残されています。



先人の教訓を生かした避難を心がけたいものです。

二人が山道を登っていくとさらなる危機に直面します。



第150話 ゼッタイゼツメイトシ⑤ ワクのわくわく冒険記
被災 1日目 16:15



 

先ほどまでいた展望台は津波で沈んだことが発覚します。

二人の行動は正しかったのです。



二人は安全な場所などないことは分かって

いましたが,どこかで休む必要がありました。



現在いる場所は,周りは木ばかりの山の中のようなものです。



しかも地震で多くの木が倒れていたり,

倒れそうになったりしていてゆっくりとは

休んでいられませんでした。



「この後,問題になってくるのは食糧だ!

特に,水!これがないと生きていけない。」


「ええ!?そうなの!?でも町に下りれば,

避難所があってなんとかなるんじゃない!?

それに自衛隊だって来てくれているでしょ!」




トシ君の考えは多くの一般的な国民の考えと同じでした。



しかし,ワク君は違いました。



「いや,そんな甘いもんじゃないと思うぞ。

まず自衛隊が出動するためには,市区町村の要請が

知事にいき,その後,大臣に災害派遣要請が出されてからだ。

これほどの大規模の地震ではその手順が簡潔化されるらしいが,

どこまで早く部隊が派遣されるかはわからない。」




トシ君はそれを聞いてがっかりしました。



「まずは,名古屋などの大都市が優先されるだろうから,

このあたりの地域にまで手が伸びるのはまだ先だろう。

少なくもて今日中には無理な話だ。」」




「それじゃあ,学校などの避難所に

食糧があるのでは!?それを頼ろうよ!」






トシ君は避難所への避難を提案しました。



「名古屋市ほどの大きな都市でも備蓄食料は

被災した人たちの1回分の食料しかない・・・。」

これが現実なんだよ。」




ワク君は絶望的な数字をトシ君に出しました。

しかし,これは事実なのです。



「じゃあ,どうすれば!国がなんとかしてくれんでしょ!?」



ワク君は動揺するトシ君にさらに追い打ちをかけます。



「なんでも国に頼るな!そんなことじゃ生き残れないぞ!」

「ええ、そうなの・・・!?」



ワク君はトシ君にこの国の現状を語り始めました。



「この国の国民は何かあればすぐに

国に頼る習慣がついてしまっている。

確かに政治家や官僚がそういうシステムを

作ってしまったことも問題だが・・・。」




ワク君はまずは自分ができることをするべきだと主張しました。



「確かに,情報や移動手段として頼らないと

仕方ない部分もあるが,食糧くらいは自分たちで何とかしよう。」


「でも、どうやって・・・?」



ワク君はリュックに入っていた荷物を全部出しました。



「とりあえず、持ち物の確認をしよう。トシのも出して。」



トシ君も荷物を取り出しました。



二人の荷物の中身は全部でこのようになっていました。



懐中電灯×1 飯ごう×2 米×3合 水2?ペットボトル×3本



新聞紙×1日分 手ふきタオル×2枚 使い捨て用の紙皿×10枚 ラップ×1本



割りばし×10本 ライター×1本



着火剤×3つ レジャーシート大×1枚 小刀×1本 ラップ×1ロール



食糧はあるようですが,果たして何日持つのでしょうか。



第151話 ゼッタイゼツメイトシ⑥ ワクのわくわく冒険記
ワク君とトシ君は持っていた荷物を確認しました。

浜辺にバーベキューに来ていたので,

少しの食糧とナイフなどの道具はあるようです。



「なんで,懐中電灯なんてもってきてるの・・・?」

「兄貴が夜,昆虫採集に行くっていうから一応持ってきたんだよ。」



いつ地震が起きるかわからない山の中で二人は荷物確認を続けます。



するとトシ君のおなかが「ぐ~っ」となり始めました。



「おなかがすいてきたよ・・・。結局お昼にお肉とか

食べる予定だったのに,何も食べていないし・・・。」


「そうだね,このあたりでご飯でも作って少し休憩しよう。」



ワク君はそう言うと飯ごうを取り出しました。



そして,トシ君に少し大きめの石を集めてくるように指示しました。

どうやら即席のかまどを作ってご飯を炊くようです。



「でも,お米をとぐのにお水を使ったら,飲み水がなくなるのでは?」

「これは無洗米だからとがなくて大丈夫だよ。」



無洗米とはあらかじめ工場で洗米してあるので

水でとぎなおす必要がないお米です。災害時には水の節水が

求められますので,無洗米は役に立つことが多いようです。



被災1日目 18:20



かまどを作る石探しに時間がかかったようで,

ご飯が炊けたのは午後6時過ぎでした。



出来立ての白米を飯ごうから皿に移します。



「うまい!ただのご飯なのに!うまい!」



トシ君はバクバクと食べていきます。



「おかわり!」

「ないよ!残りは明日以降の食事だ!

貴重なお米だから少しずつ使わないと!」




トシ君にはかなり物足りないようです。

ワク君もゆっくりかみしめながら白米を味わっていました。



この国の日常では,食べ物に困ることなく毎日生きています。



飽食の時代は突如崩壊する―



その時,一体何人の人間が国の力に頼ることなく生きることができるのでしょうか。



二人は片づけを行い,少し休息しました。

そしてこの後は,この場所で寝ることにしました。



山の中なので周囲は木に囲まれています。

しかし,他に休める場所もないのです。



被災1日目 20:30



「寝るときは下にシートや新聞紙を引いて寝るんだぞ。

直接地面に体をつけると体温が奪われやすくなって

体調が悪化するからね。冬の場合は最悪,凍死。」


「まじかー。夏なのに体が冷えることがあるのかー。」



二人は今日起こった出来事を頭の中で何度も

振り返りながら眠っていきました。極度の緊張と

疲れのため,一瞬で眠りに落ちました。



被災2日目 8:10



二人は疲れた体を起こし,水分補給を行いました。

そして,昨日作った残りのご飯を食べました。



「午前中に,山を下りて町に出よう。」



「その後はどうするの?」



トシ君が聞きました。



「町に出れば,避難所がどこかにあるはずだ。

そこまでいけば,後は家まで帰宅できるはずだ。」


「おお~!」



帰宅という言葉を聞いて元気が出てきたようです。

はたして二人は無事,帰ることができるのでしょうか。



第152話 ゼッタイゼツメイトシ⑦ ワクのわくわく冒険記
高い場所から町を見下ろすと煙が

あちこちに立ち昇り,燃えているようでした。



町の奥には川があるようですが,

この場所からではよく見えませんでした。



二人は慎重に山をおり,町のふもとまで来ました。

すると二人は強い風にあおられてしまいました。



「なんだ~!?」

「まずいぞ,これは・・・まさか。」



周囲は火災だらけで多くの民家が燃えています。

まだ,消火活動もできない状況なのです。



二人がふと,空を見上げるとそこには旋風を纏った炎がありました。





「これは,火災旋風だ・・・。巻き込まれたら即死だぞ・・・!逃げよう!」



そう言って全速力で駆け出しました。

うまく火災旋風を避けながら町の中心街へ向かいます。



町といっても田舎なので畑や田んぼだらけで,ポツンと民家がある程度でした。



「逃げるのはいいんだけど,どこへ行くのさ~!?」



トシ君が走りながら聞きました。



「町役場行こう。地図によると学校よりもこっちの方が近い!

町役場なども避難所として活用されるからね。」




ワク君は昨日入手した周辺地図見ながら説明しました。



しばらく走ると,町役場が見えてきました。

正確には町役場であっただろう場所です。



そこは崩壊した建物があるだけで,避難所にはなっていませんでした。



「なんてこった。建物が崩壊している・・・。」



ガレキの隙間には何名かの遺体もありました。



「これじゃ,避難場所にはならないね。大きな地震だから倒れちゃったんだね。」

「それもあるが,建物がかなり古い。おそらく耐震補強工事を

していなかったんだろう。予算も少ないだろうから,

学校などが優先的に耐震工事をして,

こちらは二の次だったんじゃないかな。」




ワク君はガレキを触りながら説明しました。



「確かに子供を守るために学校の耐震工事を優先させたい気持ちはわかるが,

その結果,町の中枢で指令を出さなければならない役場が

この状況になってしまうのは本末転倒だろう。

ここにもこの国の欠陥システムが見え隠れする。」


「なんか,言っていることが難しすぎて意味不明だよ。」



トシ君にはワク君の言いたいことがわからないようでした。



「こうなったら,この先の小学校へ行くしかないな・・・。」



二人は川の近くにある小学校へ行くことにしました。



途中,簡単な食事をとり,休憩を挟みながら,目的地付近まできました。

その間,何度も余震に襲われ,崩れかけた建物などの破片が落ちてきました。



被災2日目 15:40



なんと小学校へつながる道が冠水していたのです。



「なんで,道路が沈んでいるの!?まさか,津波がここまで!?」



トシ君は道路を恐る恐る覗き込みました。



「たぶん,川の堤防が地震で決壊したんだ。

何日か前まで雨が降っていたはずだから,増水もしたんだと思う。」




ワク君は肩を落としました。

これでは小学校はすでに水没しています。



「どこに行けばいいんだ・・・。」



さらに増水する勢いだったので,

二人は一旦,水のない場所まで下がりました。



第153話~第156話

2016/10/8

第153話 ゼッタイゼツメイトシ⑧ ワクのわくわく冒険記
被災3日目 7:00





二人は近くの公園で夜を明かしました。

持っていたコメもなくなってしまいました。



二人は疲れ切ってしまい,シートをひいて横に

なっていました。すると何やら音がします。



上空を見上げるとヘリコプターが飛んでいました。

ようやく救助部隊がこの地域までやってきたのです。



「ヘリだ!後を追いかけよう!」

「わかったよ!」



二人は荷物を持ってヘリを追いかけました。

かなり低い高さで飛んでいたのでどこかに着地をするようです。



町の中を走っていると,たくさんの人間が

倒れていました。そのほとんどがすでに亡くなっていました。



「かわいそうに・・・。」



トシ君は自分の手で救えなかったことが悔しいようです。



すると,わき道から20人ほどのグループが現れました。



「あ,人だよ!もうすぐ避難所なんじゃないかな!?」



しかし,その連中は様子が変でした。まるで生気がありません。

どうやらこの3日間,ほぼ飲まず食わずだったのでしょう。



「ああ・・・ああああ・・・ああ。」



「飯を・・・くれえええええ・・・。」



二人に群がってきました。



「こいつら,やばいぞ!」





どうやら正気の沙汰ではないようです。



「これは集団パニックだ!極限の状況で

頭がおかしくなってしまったんだ。」






ワク君はつかまれた手を振り払い,輪の中から

逃げ出しました。トシ君もなんとか逃げることができました。



「こいつらは,何をしでかすかわからない。それこそ

食料のために人だって殺すかもしれない。本当ならここで

ボコボコにやっつけておくのがいいんだが,その時間もない。」




ワク君は上空を見上げて,ヘリの位置を確認しました。



「トシ,行くぞ!時間がない!」

「でも,この人たちがかわいそうじゃない・・・?」



トシ君は誰に対してもやさしく,そして救おうとしました。



「なら,そいつらに殺されちまえ!それでも救いたいならな!」

「いや,それはちょっと・・・。」



トシ君は躊躇しました。その集団は再び襲ってきました。



ワク君はトシ君の手を引っ張り,その場から逃げ出しました。



「自己犠牲の無い,救いはただの偽善だ。

『人の為に善いこと』で偽善だよ。

お前のやることは全て偽善で終わる。」




ワク君はとにかく偽善行為が大嫌いだったのです。



二人はやっとのことでヘリに追いつきました。

そこは山のふもとの中学校でした。

グラウンドに着陸したヘリを見て二人は安どのため息をつきました。



「これでやっと帰れるな・・・。」

「もう疲れたよ・・・。」



二人はクタクタでしたが,最後の力を

振り絞り,救助隊の元へ向かいました。



実際に東海・南海・東南海地震が同時に起きた場合―



死者数:最大32万人

経済的被害:約220兆円

建物全壊件数:約55万棟



このように前代未聞の被害が出ると想定される



しかし,一人一人が防災意識を持ち,

適切な行動をとるだけで,被害を減らすことは可能と言われている



いつか必ず来る大地震に備えることが大切だ―



ゼッタイゼツメイトシ 完 



第154話 おなじみヴィート対決!前編
大牧山のふもとで何やら10人ほどの少年が対峙しています。

少年昆虫団とスナぴょん団です。



スナ「今日は再び,ヴィート対決だ!いいな!」



スナ君が少年昆虫団に向かって大声で叫びます。



「あ~,はいはい・・・。」



リク君はいつも通り,やる気がなさそうです。



対決は3対3で対戦はクジ引きの結果,このように決まりました。



だぬ VS タコ



まさら VS ジャイ



イツキ VS スナ



1回戦が始まりました。



だぬちゃんとタコ君が距離を取ってお互い睨み合っています。



「イツキ君も,トシ君も新ヴィートを

見せていました。今回はだぬも新ヴィートを見せますよ。」




どうやらだぬちゃんは"誇り低き虚栄心"

以外のヴィートを習得したようです。



「先手必勝!」



だぬちゃんは飛び上がり,タコ君に向かって行きました。



どうやらタコ君はすでにヴィートを発動しているようです。



「行きますよ!覚悟してください!」



―永遠の虚構(ゼロファイター)―





だぬちゃんの背後から巨大な戦闘機が現れ,

タコ君に向けて無数の機銃を発射します。



ダダダダダダ・・・・・



大きく旋回後,さらに銃弾を浴びせます。



「どうですか!この威力!」



だぬちゃんの"永遠の虚構"は系統"心"で"攻め"のヴィートのようです。



タコ「ニヤリ。」

タコ君は不気味に笑いました。



―蛸壺(オクトガード)―





「ばっばかな!?」



どうやらだぬちゃんの攻撃は全て

ガードされてしまったようです。



タコ「これで終わり。」



―巨鯨喰(マッコウグイ)―





巨大なクジラがだぬちゃんに襲い掛かります。



"守り"のヴィートがまだ使えないだぬちゃんは

押しつぶされてしまいました。



「あ~,負けちゃった・・・。」



勝者 タコ



スナ「よしよし,よくやった!その調子だ!」



スナ君はご機嫌です。



2回戦



まさらVSじゃい



「わたしも新ヴィート見せちゃおうっと!」



どうやらみんな成長しているようです。



第155話 おなじみヴィート対決!後編
2回戦のヴィート対決は,

はまさらちゃんVSジャイです。



「行くよ~!」



まさらちゃんは慈愛の戦乙女(ハートオブヴァルキリー)

を繰り出しました。昆虫の力を借りて相手を怯ませる特殊タイプのヴィートです。



ジャイ「ぐっぐ・・・。」



ジャイちゃんは少し怯みました。



「続いて行くよ~!」



まさらちゃんはノリノリに攻撃を繰り出します。



―神々の黄昏(ラグナロク)―





空から八百万(やおよろず)の神が舞い降り,

黄昏(たそがれ)を放つという,むちゃくちゃなヴィートです。





しかし,ジャイちゃんは

“ウドの大木(キュリス・マストゥリー)”でこれを防ぎます。



そして虎の子のヴィートを発動します。



ジャイ「ジャジャジャジャジャイ!」



―進撃の巨神兵(ナウシカジャイ)―



大気圏に到達する大きさになり,まさらちゃんを踏み潰します。



「きゃぁぁぁぁ・・・。」





勝負ありました。



勝者 ジャイ



「二人とも負けちゃったぞ。俺の出番無くない?

まぁ,それはそれでいいけど。」




「ジョババババ・・・。」



二人ともすでにどうでもよさそうです。

リク君に至っては隅っこの茂みでおしっこをしています。



スナ「仕方ない。勝負はもうついているが,イツキ氏と俺の勝負をしてやろう。」



スナ君はイツキ君を挑発します。



「仕方ねぇな。その安い挑発に乗ってやるよ。」



3回戦 



イツキVSスナ



イツキ君が先手を取りました。





―南極人間(ニンゲン)―



このヴィートは南極に住む幻の怪物(ニンゲン)を呼び出し,

相手を怯ませることができるようです。



「イツキ君,いつの間に3つ目のヴィートまで

使いこなせるようになったんですか。」




すでにイツキ君はヴィートを完璧に使いこなしているようです。



スナ「甘いな・・・!これが俺のヴィートだ!」



―幸福の土曜日(ハッピーサタデー)―



よくわからないヴィートですが,

本人が幸せな気持ちになり,

そのにやけた顔で相手を怯ませるようです。



同じ特殊タイプ同士のヴィート対決は引き分けでした。



スナ「やるな・・・。ならこいつはどうかな?」





―砂嵐(サンドストーム)―



猛烈な砂嵐がイツキ君に襲いかかります。



イツキ君はこれを“氷結人間(アイスマン)”で防ぎます。



どうやら二人の戦いは中々つかず引き分けに終わりそうです。



スナ「やるな,イツキ氏。」



「ふん・・・。」



両者譲らず,戦いはスナぴょん団の2勝1分けに終わりました。



スナ「これなら,楽しめそうだな。」



スナ君はニヤリと笑いました。



「ん?なんのこと?」



サラ「いずれ,わかりますよ。また,我々とヴィート対決を

する日が必ず来ます。もっと大きな舞台でね・・・。」



スナぴょん団は何か言いたそうにしながらその場から去っていきました。



「なんなのかな?あいつら・・。

ってかオイラ今回出番なし!?」


「よし,昆虫採集を再開しよう~!」



今日も大牧山で昆虫採集をするのでした。



第156話 灰庭さんの意外な事実
今日はカブクワキングでバイトをしている,

灰庭(はいば)さんを連れて一宮にある二宮神社に来ていました。



入口の鳥居から一番奥の採集スポットへ向かうようです。

全員がライトを手にし,リク君とイツキ君が先頭を進んでいます。



そして歩きながらたわいもない会話を楽しんでいました。



「ここは当たり外れが大きいけど,いるときは結構採れるんだよ。」



灰庭「へぇ,そうなんだ。楽しみだね。」



灰庭さんは笑顔でまさらちゃんに話しかけます。



「最近,よくついてくるけど,仕事はいいのかよ。」



後ろを振り向いて灰庭さんに声をかけます。



灰庭「大丈夫だよ。もう今日のバイトは終わったし。」



「そういえば灰庭さんって

普段は何をしているんですか?大学生ですか?」




と,だぬちゃんが質問をしました。



灰庭「う~ん,大学には行っているけど,

学生というよりは教授のお手伝いが仕事みたいなものかな。」



「それって准教授ってこと?」



みんなは歩きながらさらに質問を加えます。



灰庭「まだ,准教授ですらないよ。」



灰庭さんは頭をかきながら苦笑いをしていました。



「じゃあ,灰庭さんって結構年上?」



灰庭「今年で30になるかな。」





みんなは一斉に驚きました。



「えええ,全然見えない!」



灰庭「まぁ,よく言われるよ。童顔だって。」



彼の照れ笑いをしている姿がとても幼く見えました。



「ってことは,キングの店長より年上ってことかー。」



それはみんなにとってかなり意外な事実だったようです。



「じゃあ,普段は大学で研究の仕事を

手伝いながら,空いた日にキングでバイトしてるってことか。」




灰庭「まぁ,そんな感じだね。」



そんな話をしているうちに採集ポイントまで到着しました。



「よし,では各自,しっかりと樹液ポイントを観察するように!」



リク君がとたんに張り切りだしました。

一方,だぬちゃんは灰庭さんと話を続けていました。



「どこの大学で仕事をしているんですか?」



灰庭「中野木大学だよ。地区で一番大きい大学なんだ。知っているかな?」



灰庭さんはだぬちゃんと樹液ポイントを確認しながら答えました。



「あれ?確かレオンさんが通っている大学も中野木大学だったような・・・。」

「そうなの?初耳~。」



リク君は以前そう聞いたことを思い出しました。

他のメンバーが知らない間に聞いていたようです。



灰庭「レオンさん・・・?ひょっとしてこの前,

"キング"に来ていたカメレオンみたいな人かな?」





灰庭さんは作業を止めてリク君に話しかけました。



「うん,そうだよ。今日も誘ったんだけど,

用事があるみたいで来なかったんだ。」




灰庭「へぇ~,そうなんだ。」



トシ君は二人がそのような会話をしている最中に

どこかへ行ってしまいました。おそらくおしっこでしょう。



「大学が同じならお互い,顔見知りだったりする?」



リク君が無邪気に聞きます。



灰庭「この前会ったのが初めてだよ。僕は中野木大学の本部棟で

情報工学の研究をしているけど,彼は昆虫学の院生なんだよね。

会う機会もなかったんじゃないかな。」



「そっか~。」



リク君はそれ以上何かを聞くことをせず,

ペンライトでカブクワを探し始めました。





今日は灰庭さんの意外な年齢が聞けてびっくりな1日でした。



ちなみにカブクワは大物は採れず,ハズレな採集日だったようです。



第157話~第160話

2016/11/12

第157話 掲載3周年特別企画!読者D氏との対談 前編
今回は特別企画として作者おりぃけん(以下k)と

読者D氏(以下d)とのスペシャル対談の模様をまとめました。



編集者(以下―):それでは本日はお二人ともよろしくお願いします。



k:よろしくお願いします。

d:よろしくです。



―それではさっそく対談に入っていきたいと思います。



d:実は自分,後松君が大好きなんですよ。

彼ってまた登場しないんですか?



k:出てきますよ,もうすぐ。



あと1回だけでます。それで終わりです。

d:おお,楽しみですね~。あと1回っていうのが残念ですが。

それからJFでは山犬の山本もお気に入りなんですけど,

再登場はいつですか?最近,影(シャドー)の

ほうが目立っている気がします。



k:彼も主要キャラなので今後,メインストーリーに

大きくかかわってきますよ。影も大事な役なので

これからも出てくるでしょうね。



―dさんは結構少年昆虫記を読み込んでいるんですよね?



d:ええ,詳しいですよ。色々な伏線にも気づいています。

k:おお,さすがですね。例えば?

d:最近だと神社の神主の赤神さんって今後重要な

キャラになりますよね?

例えば,第三勢力のメンバーとか・・・



k:ふふふ,実はですね~・・・。



―おっと,これ以上はダメです。話題を変えましょう。



d:でも,疑問なのはなんで山犬のメンバーに

たいして強くない,古賀が幹部なんですか?

k:これはですね~,力の強さだけで幹部かどうか

決まるわけではないからです。もうすぐ話に出てくるのですが,

古賀には古賀の役割があるからこそ,山犬の幹部でいられるんです。



d:なるほど。



k:ちなみに古賀や南雲は実際には準幹部なのですが,

物語ではややこしくなるので幹部と表現しています。

d:そうだったんですね~。



―他に疑問に思っていることってありますか?



d:やはり,御前の正体ですかね。何者ですか?

実はもうどこかで登場したりして。



―これはまた,きわどい質問が来ましたが・・・。



k:御前の正体はまだ内緒(笑)登場しているかどうかは・・・。



―これもそこまでにしておきましょう。楽しみがなくなってしまうので。



k:あら,残念・・・。



d:それから,この前服屋に出てきた,桃瀬っていう店員も

怪しいですよね。あの顔は絶対暗殺者ですよ。この推理当たっていますか?

k:1回しか出てきてないのによく覚えていますね。まぁ・・・どうでしょうか。

d:だから,自分はよく読んでいるんですよ。だいたい楽しく読ませてもらっています。



―逆にこの話はちょっと・・・っていうのはありましたか?



d:それだと,この前まで掲載していたワク君の話ですかね~。

急によくわからない地震の話になって読者はおいてけぼりですよ。

厳しい言い方ですが,あれでかなりの読者が離れたんじゃないですかね。




k:そうなんですか?



―そんなことはないようですね。毎週一定の方々に読んでいただいているようです。



d:いや~,そうかな~。

k:ちなみに第二弾を冬あたりにやる予定なのでお楽しみに。



―ちょっと長くなってきたので「後編に続く」としますね。



d:分ける意味あるんですか?

第158話 掲載3周年特別企画!読者D氏との対談 後編
―さて,読者D氏とのスペシャル対談も盛り上がってきました。

こちらの都合上,前編と後編にわけましたが,今回は一挙2話公開となっております。

引き続き,お楽しみください。



k:いや~,もうだいぶ話すネタがなくなってきましたよ。



―そんなこと言わずに・・・。何か話が盛り上がる

ようなことをdさんからお願いします。



d:じゃあ,聞いちゃいますが,メインストーリーの話が続く時と,

通常の1話読みきりの話の時とありますが,

特に通常話のネタがきれたりしないんですか?



k:まぁ,適当に考えているんで大丈夫です(笑)



d:適当ですか!?逆にメインストーリーは

どこまで考えてあるんですか?



k:すでにラストの構想はできていますよ。



d:まじですか。気になりますね。

ラストまでどれくらいかかりそうですか?

k:さぁ(笑)あと10年くらい?



d:そんなにやったら,リク君中学生じゃないですか!(笑)



―結構色々な話をやっていますよね。スナ君たちとのヴィート対決とか。



k:結構,ああいうわけのわからない話が好きなんです。



d:なんとなくわかります。



k:いかれたキャラも好きですね~。

稲姫先生とか,まだ絵は登場していないですが,

安井先生とかもキャラが濃いですよ~。



d:楽しみですね。でも気になるのは,色々と伏線を

張ってあるみたいですけど,きちんと全部回収できるんですか?



k:ちゃんとしますよ。(笑)いつになるかわかりませんが・・・。

d:気長に待つことにします。そういえば,リク君たちの世界では

ずっと夏休みですよね?最初にJFの山犬に

出会ってから現在までどれくらいの時間がたっているんですか?



k:えっとですね。山犬に出会ったのが夏休みの直前なんですよね。

各務原山でのいざこざが7月の終わり。

なので今は8月の上旬ですかね。

1週間ちょっとか2週間くらいかな・・・。



d:え,そうなんですか。連載3年で2週間か・・・。

なんか毎日昆虫採集してたらそれくらいの

期間とっくに過ぎているんじゃ・・・。



―そこは・・・あれですね。サ○エさん時空ということで・・・。



k:でもメインストーリーではちゃんと時間は進んでいますよ。



d:夏休みが始まって1週間ちょっとしか

過ぎてないのに出校日が2回もありましたよね?



k:これは裏設定がありまして。

中野木小学校っていうのは地区一の悪と

呼ばれる不良の巣窟のような学校なんです。

その学校に君臨しているのが

"中野木三大悪童"と"もう一人"。

これはまた本編ででてきますので,おいておいて,

とにかく学校の治安が悪すぎるんです。



d:ふむふむ。



k:なので学校としてはできるだけ出校日を多くして,

学校外で悪さをしないように監視しているんですよ。

週に1回は出校日があると思ってください(笑)



d:そんな学校嫌だな!絶対行きたくない!(笑)



―そろそろ時間が来てしまったので,しめに入ってもらってよろしいでしょうか。



k:え~,これからもボチボチと急病にならない限り,

掲載を続けていくのよろしくお願いします。

毎回掲載日が遅くなってすみません。



d:今後の展開と,後松君に期待しています(笑)



―本日はお二人ともありがとうございました。(終)



第159話 少年昆虫団フィッシング対決
今日は少年昆虫団で魚釣りをするようです。







場所は庄外川で時間は朝の5時半です。

みんなはまだまだ眠そうです。



どうやらこの5人で釣り対決をするようです。



「よし,もう一度ルールを確認しておこう!」



ルールはサイズと数とレア度の

3つの部門に分けて勝負をします。



対象の魚はウナギ,ナマズ,コイ,フナ,ドンコとなっています。

それ以外の魚は外道として各部門の判定には入りません。



レア度もウナギが一番高く,ドンコが一番低くなっています。

全員が川岸に立ち,竿を投げる準備をしています。



「では,今から2時間の勝負ね!スタート!」



リク君がスタートの合図をかけました。



まずは,だぬちゃんが竿を振りかぶります。



「だぬの腕を見せてあげますよ。日々訓練した,

遠投げの実力と,この竿の威力を!」




だぬちゃんは3号ジェット天秤に針はなぜかマダイ8号,

リールの糸はナイロン2号で竿の長さは4.2mと

完全に遠投げ用の仕掛けになっていました。



「おりゃ~!!」



しっかりとしたフォームでしなるように

竿を振ります。大きく飛んでいきます。



ひゅう~~~!!



「おお,飛ぶ飛ぶ~!」



そして,仕掛けは反対の川岸まで行ってしまいました。



「あれ,行き過ぎた。ちょっと糸を巻かなきゃ・・・。

あれ,動かない。あれ・・引っかかっている・・・。

ああ,クソ,クソですね,仕掛けが・・・。

腕は一流なのに・・・。あれ・・・おかしいなぁ・・・!?」








だぬちゃん,仕掛けが引っかかり,戦線離脱。



一方,トシ君は・・・。



「ちょっと,仕掛けが・・・あれ・・・?

こうだっけ・・・?針はどうやって

つけるんだっけ・・・?あれ・・?」




トシ君は仕掛けが作れずに苦戦しています。

どうやら竿を振ることなく終わりそうです。



トシ君,終了・・・。



まさらちゃんは,開始早々になんと

1匹のフナを釣り上げました。



「きゃ~,釣ったはいいけど,これ,どうやって針から外すの!?

しかも,やっとつけた,ミミズがもうとれているし!?触りたくない~!!」




まさらちゃんは魚のヌメヌメとミミズに

嫌気がさしてしまい,へこんでいます。



まさらちゃん,戦意喪失・・・。



では,イツキ君はどうしているのでしょうか。



「これに味噌を塗るとうめぇんだよな。」



なんと携帯用の小型七輪を取り出し,

小さく切った神戸牛を焼いています。



さらに,味噌を塗って食べています。

食べたら魚釣りを始めると思ったら,今度は読書をし始めました。



「いや~,うめぇ,うめぇ。今度は,何を焼いて食おうかな~。」



どうやら魚釣りをする気が無いようです。



「いいさ。一人で頑張るもん。」



リク君は最初から勝負にならないことがわかっていたようです。



一人で黙々と魚釣りに励みました。



最後に1匹だけ30センチくらいのコイを

釣って釣り大会は終了しました・・・。



第160話 LAST ATOMATSU(最後の後松君)
小さな遊具がひっそりとある四町公園に

少年昆虫団とあの少年が対峙していました。



彼の名前は後松(あとまつ)。







昆虫などの小動物を適当な方法で飼育し,

時に残虐な方法で殺害してしまう脅威の人物でした。



度重なる乱行についにリク君がキレたようです。

そして,この公園に呼び出したのでした。



「おい,この前は大目に見ていたが,これ以上,

お前の好き勝手をさせるわけにはいかない!

昆虫をなんだと思っているんだ。」




後松「うえへへへ。何って大事な大事な

存在だよ。ボクの気持ちを満たしてくれるね。」



後松君はにやにやと笑って反省の色が見られません。



「なんか,説得は・・・無理なんじゃないかな・・・。」



残りの4人は少し離れた位置で二人のやりとりを見ていました。



後松「別に君の忠告を聞く義理はないからね~。」



「なら・・・。仕方ないな・・・。」



そういって背中の捕虫網に手をかけました。



後松「おいおい,俺とヤル気かい?いいのかな?俺はこう見えて強いよ!」



急にテンションをあげてしゃべってきます。



後松「実は俺は闇の組織の親玉の息子だよ!?

最強だよ??俺に勝てると思っているのかい?」



「・・・。」



後松君はすこしずつリク君に近づいていきました。



後松「びびっているのかな?そりゃあそうだよね。

俺は組織のボスの息子!いわば

全類最強だよ。わかる?全・類・最・強!!」



彼はリク君の目の前に顔を近づけ威嚇しました。



「組織ってまさか,JF!?まさかまさかの

後松君がラスボスって展開

ですよこれは!?御前の息子ですよ!」




だぬちゃんは勝手な妄想で盛り上がっています。



「まじか~!?」



二人はすっかり信じ込んでしまっていました。



「あほくさ・・・。ただの虚言だ・・・。トシと一緒。」

「何を~!?」



一方,後松君はリク君に威嚇を続けています。



後松「いいのか!?俺とやるのか!!実は俺はあの

中野木三大悪童の一人でもあるんだぞ!?」



どうやら彼はすでに妄想の域を超えているようです。



「やばいですよ!?中野木三大悪童って絶対に

手を出したらいけない存在じゃないですか~!」




だぬちゃんは信じ込んでいるようです。

しかし,リク君には通じませんでした。



「うるせぇ!文句があるならさっさとかかってこいや!?」



リク君が啖呵を切りました。



後松「ひぃぃぃぃぃ。」



ジョババババ。



後松君はおもらしをしてしまいました。



そして,公園からダッシュで逃げ去りました。



「なんなの・・・。」



その時,走っていたトラックに

ぶつかってしまいました。キキィィ!!



どが~ん~!!



彼は数m吹き飛ばされてしまいました。



後松「ぐげげげげ・・・。」



「昆虫の恨みだな・・・。」



その後,彼は救急車で運ばれていきました。

どうやら全治3か月以上の重症だそうです。



こうして,後松君は二度と少年昆虫団の前に

姿を現すことはありませんでした。



さようなら後松君―。







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