リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第225話~第228話

2018/5/6

第225話 菊の幹部達⑦

菊の華シリーズ第2章
赤神「俺は主に組織の運営と情報の統括が仕事だから,

特別な情報を捜査で得たとかはないぞ。」



彼は,急に高いテンションで話し始めました。



「そうなんですか。」



とまさらちゃん。



赤神「俺からも1つ質問してもいいかな?」



赤神さんがそう言うと,リク君は,



「うん,なんでも聞いて。」



と明るく答えました。



赤神「最初に神社で俺と会ったとき,俺のことをジッと

見ていたけど,何を怪しんでいたんだい?」



「オイラはその現場にいなかったけど,赤神さんのテンションが

高すぎて怪しまれたんじゃないですか?」




レオンさんが珍しくツッコミました。



赤神「いやいや,それを言うならお前の顔のほうが怪しいだろ!」



赤神さんも負けずにやり返しました。



「ああ,あれはね・・・。」



リク君は一度イツキ君と顔を見合わせました。



「まぁ,こちらも色々と聞きたいわけだし,

話してもいいんじゃないか。」




とリク君を促しました。



「実は僕たちの周りを嗅ぎまわっているJFの

人間がいることがわかっているんです。」




赤神「何!?」



それを聞いて,彼の表情がひきつった状態になったのがわかりました。



「海猫の今村っていう人物の部下で大西って言うみたいなんだけど,

組織の中ではグレイって呼ばれているんだって。」




グレイの件は,警察署で赤神氏と会った時には

話していなかった内容だったのです。



赤神「それで俺がそのグレイじゃないか疑っていたのか。」



「まぁ,そういうことだ。俺もリクに

聞いて後で知ったんだけどな。」




するとだぬちゃんが,



「でも赤神さんをどうして疑ったんですか?」



と聞きました。



「グレイってことは灰色ってことでしょ。

だから灰色の袴を着ていた赤神さんを少し疑ったんだ。」




赤神「じゃあ,俺の疑いはもう晴れたわけだな。昨日も言ったけど,

あれは借り物で色に特に意味はない。」



さらっと自分は潔白だと宣言しました。



「でも,赤神さんがグレイじゃないとすると一体誰が怪しいんだろ・・・?」

「僕はグレイかもしれない人物は3人の中のだれかだと思っている。」



リク君は確信をもっていました。



「一人は赤神さんだとして後の二人は?

オイラには見当もつかないよ。」




「でしょうね。」



と,だぬちゃんは当然のようにツッコミました。



「堤防で魚釣りをしていた時に出会った老人と

カブクワキングでバイトをしている灰庭さんだよ。」


「ええ~!?」



まさらちゃんは大声をあげました。



「あの老人は髪の毛を灰色に染めていたでしょ。

灰庭さんは単純に名前に灰が入っているからね。」


「それだけで灰庭さんがグレイだっていうの!?」



さらにヒートアップしています。



「普通に考えれば,俺たちのことを探りに来たんなら一度だけしか

出会っていない老人がグレイとは考えられないな。

赤神サンでもないとすると,消去法であのバイトがグレイってことだろ。」




イツキ君が丁寧に説明しましたが,

まさらちゃんの耳には入っていないようでした。







「そんな・・・。イケメンだったのに・・・。

悪い人の仲間だったなんて・・・。」


「まぁまぁ。まだその人がグレイだと決まったわけじゃないんだろ?」



と,さりげなくフォローをしました。



「まぁね。ただの推測だし,何も証拠がないのに問い詰めても

絶対に認めないだろうから,しばらくは様子見にしよう。」




リク君は灰庭さんがグレイだと思っているようですが,

確信がないのでしばらく相手の出方をうかがうようです。



「そうだな。それよりも緊急の案件があるな。」



イツキ君は菊に潜むスパイのことを言っているようです。



第226話 レオンの過去 前編

菊の華シリーズ第2章
赤神さんは少し,“グレイ”のことを

気にしている様子でした。



それを気にしたレオンさんが,



「赤神さん。とりあえず,その灰庭って人はリク君たちに任せてみませんか。

我々は組織の全貌を突き止めるほうが先だと思います。」




と提案しました。



赤神「そうだな。そうしよう。それにお前も一緒なら安心だ。」



赤神さんも同意しました。



「これで一通り聞きたいことは終わったかな?」



とみんなに聞きました。



「いや,まだ終わっていないよ。」



とリク君。



「リク・・・?」



イツキ君がリク君の顔を見ました。



「レオンさんからも話を聞きたいな。」

「なるほど。オイラが残っていたか。いいけど,

だいたいのことは話したと思うけどなぁ。」




と髪を掻きながら言いました。



「レオンさんって警視庁,つまり東京から来たんだよね。

どうして名古屋に潜入捜査に来たの?」




リク君の質問に,レオンさんは,



「ちょっと昔話をしようか。」



と言いました。



その表情は少し悲しそうでした。



まさらちゃんはたまらず,



「ひょっとしてお父さんの死が関係あるんじゃ・・・。」



皆はレオンさんが父の復讐のために

闇組織JFを壊滅させようとしているのは知っていました。



トシ君とだぬちゃんも珍しく真剣な表情で

レオンさんの後姿を見つめていました。



「ああ,いかん。マジな表情を続けすぎて戻らなくなった!」



もはや誰もツッコミませんでした。



「オイラは元々東京育ちなんだ」



みんなは初めて聞くレオンさんの

過去話を真剣に聞いていました。



「研究者だった父の姿に憧れて帝東大学(通称:帝大)

を目指したんだが,結局は法学部に進学した。」






「ええ,超エリートじゃないですか!?」



意外な学歴に驚いていました。



「卒業後,国家試験1種に合格して警察に入庁。その後,警視庁に配属。

研究者を目指していたはずが,いつの間にか官僚になっていたよ。」




レオンさんは自分の経歴を語りだしました。



「子供のころの夢がそのまま続くとも限らないしね。」



リク君は納得していました。



レオンさんのその表情は暗いままでした。



「父親のことも話しておこう。父はオイラが子供の

ころからずっと研究一筋の研究者だった。」




みんなは黙って話を真剣に聞いていました。



「母はオイラが小さいころに病気で亡くなってしまって,

オヤジは男手一つでオイラを育ててくれたんだ。」




少し間をおいて,



「でも,父の研究はあまりうまくいかなくて,オイラが高校生の時,

ついに研究資金も打ち切られてしまい,生活ができなくなってしまった。」




まさらちゃんが悲しげな瞳でレオンさんを見つめていました。



「そんな時,父の研究に目を付けたのがジャファコンツェルンの生物工学研究所だった。

奴らは家族の生活を保障する代わりにそこで働かないか声をかけてきたんだ。」




話はさらに続きました。



「父は喜んでその話を受けた。だが,研究を続けていくうちに,あることに気づいたそうだ。」



「どんな?」



とイツキ君が質問しました。



「その組織が行っている研究は現在の倫理観と照らし合わせても到底

許されることはない研究をしていると言っていた。

当時はそれ以上聞いても答えてくれず,よくわからなかった。」




「それが,“漆黒の金剛石”,つまり“神の遺伝子”を

使った何かの研究だってことだね。」




と,言うリク君に対し,



「ああ,つい最近になってその事実を知った。」



レオンさんは



「少し休憩しよう。」



と言って,壁にもたれかけました。



第227話 レオンの過去 後編

菊の華シリーズ第2章
レオンさんは自分の過去を少し話し,一旦休憩しました。

しばらくすると再び話を始めました。



「どこまで話したかな。ああ,父がジャファに騙されて

闇の研究に手を染めたところまでだったね。」




みんなは頷きました。







「父はジャファに再就職が決まった時,すごく喜んでいたのを覚えている。

オイラは大学進学を志望していて学費のことも心配してくれていた。

別に就職でも良かったのに,父は無理をしてくれた・・・。」




赤神氏も黙ってレオンさんの話を聞いていました。



「父は本当に悪い研究を手伝わされているとは知らなかったようだ。

つい最近まではそういう研究に手を染めていなかったんだろう・・・。」




「つまり,悪い研究をするように言われたのは最近で,それまでは

普通の研究者として働いていたってことなのかな?」




と,まさらちゃん。



「おそらくね。それまでは東京の施設で研究をしていたんだが,

1年前に名古屋の研究所に転勤になった。オイラも1年前は警視庁の勤務で

忙しかったから父とはしばらく連絡を取っていなかったんだ。」




レオンさんの話はさらに続きます。



「あれは,半年くらい前だったかな。久しぶりに父から電話がかかってきたんだ。

その時は忙しくてゆっくりと話せなかったんだが,何やら仕事のことで悩んでいたみたいだった。」




「きっとその時にはもう神の遺伝子の研究に関わっていたんですね。」



さすがのだぬちゃんも話が見えてきたようです。



「ああ。今思えばあの時もっとオイラがしっかりと話を聞いてあげれば良かった・・・。

そうすれば一人で悩むこともなく,死ぬことにもならなかった・・・。」




レオンさんの表情から相当悔しい思いが伝わってきました。



「父はおそらく研究から抜けたくても抜けられなかったんだと思う。

奴らはおそらく息子のオイラの素性も調べていたはず。」


「なるほど。レオンさんの身分を盾にとって,

ジャファはレオンさんの父親を脅していたかもしれないってことか。」




イツキ君が頷きながらそう言いました。



「イツキ君の言う通りだ。父はオイラの事を心配して研究から

抜け出したくても抜け出せない日々が続いたんだと思う。」




レオンさんの推測の部分もあるようですが,みんなはきっとその通りなんだと確信していました。

なぜならそれが闇組織ジャファのやり方であると知っていたからです。



「でも,レオンさんの父親である小早川教授って“神の遺伝子”の研究を

まとめたノアの書を持って逃げだしたんだよね。どんな心境の変化があったのかな?」




リク君の疑問に対し,レオンさんは答えました。



「実は父がノアの書を持ち出す3日前に電話をしたんだ。」



「何の話を?」



一応トシ君も会話に加わろうと努力していました。



「菊の華が闇組織ジャファを壊滅させるために本格的に動き出したこと,

そのためにオイラは大学院生と身分を偽って潜入捜査をすることを話したんだ。

もう少ししたら名古屋に向かうからそうしたら久しぶりに会おうと言った。」




みんなは納得しました。



「そうか,その話を聞いて,父親はこれ以上,

レオンさんに迷惑をかけられないと思ったのか・・・。」


「ああ・・・。しかし,そのために父は組織に殺された・・・。」



会議室の空気は非常に暗くなり,誰もが下を向いていました。



「でも,レオンさんとレオンさんのお父さんの

ことを聞かせてもらえて良かったよ。」




最初に口を開いたのリク君でした。



「ああ,そうだな。」



イツキ君が続きます。



「みんな・・・。」



「今の話を聞いてはっきりしたよ。」



リク君は力強く言いました。



「何をだい?」



レオンさんが聞きました。



「レオンさんは僕たちの味方で闇組織ジャファを

壊滅させたいと思う正義の心の持ち主だってことがさ。」




リク君はにこっと笑って言いました。



それを聞いていた他のみんなも笑みを浮かべて頷きました。



「なんだよ。まだ疑っていたのかぁ!

だから最初から言っているでしょ!

オイラは少年昆虫団の一員だって!」




レオンさんは少し明るい表情になりました。



そして日が暮れてきました。



第228話 動き出す闇の騎士

菊の華シリーズ第2章
少年昆虫団はいったん赤神氏と別れました。

彼はこの後も県警本部で仕事があるそうです。



何かあればいつでも連絡してかまわないと言われたので,

リク君は赤神氏の直通番号を教えてもらいました。



県警本部を離れ,地元へ戻ってきました。

時間は夜の7時を回っていました。



後部座席に座っていたまさらちゃんのお腹がグーっとなりました。



「なんか,お腹が空かない?」



おなかがなったまさらちゃんは,

少し恥ずかしそうにしていました。



「そうだね。ご飯でも食べに行こうか。

おうちの人にはオイラから連絡しておくよ。」




みんなはお腹がペコペコでした。



レオンさんの運転で近くの外食チェーン店

“ビックリクリクドンキー”というお店に

行くことになりました。



「ここは,ドリンクバーがあって,長く居座るのにはいいですが,

料理はいまいちなんですよね。特にハンバーグがまずい。」




と,だぬちゃんは文句を言っていましたが,

“ワチキモビックリクリクリハンバーグ”を

注文したイツキ君はうめぇうめぇと言って食べていました。



「あちゃー,味オンチですね。」



とだぬちゃんが言いましたが,イツキ君は,



「いや,違うよ。」



とそっけない返事でした。



みんなは食事を終えるとドリンクバーに向かい,

お茶やジュースを持ってきました。



「いや~食った食った!

ワチキモビックリステーキを

3人前も食べちゃったよ。」




支払いはレオンさん持ちだったので,

ちょっと涙目になっていました。



「いいよ・・・。成長期だからね・・・。

どんどん食べてね(経費でコレ落ちるかな・・・)。」




食事もひと段落したところで,

レオンさんがリク君に聞きました。



「今日1日,菊の幹部の人たちに話を聞いたけど,

誰がジャファのスパイである“闇の騎士(ダークナイト)”か見当はついた?」




リク君はコーラを飲みながら首を横に振りました。



「だよなぁ・・・。レオンさんが本当に味方だってわかったことくらい。

まぁ俺はリクと違って最初から信じていたけどな。」




少し皮肉交じりに言いました。



「いや,別に疑っていたわけじゃないよ。

ただ,ありとあらゆる可能性を想定していただけさ。」


「つまり,闇の騎士は残りの4人の中の誰かなんですよね?」



だぬちゃんが確認をしました。



「まぁ,そうなるね・・・。」



一方,リク君たちが食事をしている頃・・・。



名古屋最大のツインタワービル,通称“バベル”。





このビルの上層部はジャファ専用のホテルとなっていました。



その一室に藪蛇のアヤと山犬の山本がいました。



山本はシャワーを浴びた後で,タオルを

頭から覆い被り,上半身は裸になっていました。



その体つきは細身だが,非常に筋肉質でアスリートのようでした。



アヤは窓越しに最高級ワインを嗜んでいました。



アヤ「いい夜ね。でもこの景色も見飽きたわ。」



下には無数のネオンとビルの光が輝くきれいな夜景でした。



すると,アヤの携帯電話に着信が入りました。

その場でアヤは電話を手に取りました。



アヤ「あら,アタシの愛しい愛しい

闇の騎士(ダークナイト)。

どうしたの,こんな時間に。」




電話の相手はあの“闇の騎士”でした。



闇の騎士「今日,再び例の少年たち,それに小早川の息子と接触しました。

どうやら奴らは菊の中にスパイが潜り込んでいることに感づいているようです。」



山本はじっとそのやり取りを聞いていました。



アヤは聞いた内容を山本の耳元でそっと伝えました。



山本「面白いじゃねぇか。それなら先手を打つまでだ。

闇の騎士とやらに伝えろ。動き出せ・・・と。」



山本はタオルで顔を覆っていたので,

表情は読み取れませんでしたが,

口元がわずかに笑っていました。





第229話~第232話

2018/6/2

第229話 狙われた幹部

菊の華シリーズ第2章
バベルの一室にいた山本とアヤ。

アヤの元に闇の騎士から着信がありました。



山本も携帯電話を取り出し,

どこかに連絡を取り始めました。



いよいよ,闇組織ジャファが菊の

幹部暗殺に向けて動き出すのでしょうか。



再び場面は少年昆虫団が食事をしているチェーン店にて・・・。







「まぁ,考えてもわからないし,

少しずつ情報を集めていくしかないね。」


「まぁ,そうですね。」



誰が闇の騎士なのか意見を出し合った

ようですが,結論はでませんでした。



そしてあっという間に時間は過ぎていきました。



「なんか,結構時間が経っちゃったね。もうすぐ20時だよ!」



「まだ,20時か。大丈夫だろ。」



普通なら小学生が出歩く時間ではありませんが,

普段から昆虫採集をしている彼らにとっては

あまり遅い時間だという認識はないようです。



その時,レオンさんの携帯電話に着信が入りました。

その画面を覗き込むと画面には番号のみ表示されていました。



「この番号は赤神さんからだ。」



リク君もその番号に見覚えがありました。

さっき,赤神さんの直通番号を教えてもらったからです。



レオンさんはその場で電話に出ました。



「レオンさんってなんでアドレス登録していないのかな?」

「おそらく,万が一敵に携帯電話を

奪われても情報を漏えいさせないためでしょ。

公安の人間は番号で相手を覚えていることが

多いみたいだよ。それに通話後,履歴もすぐに消しちゃうって。」




リク君の説明にトシ君は納得しました。



「なんだって!?」



その時,レオンさんが急に大きな声をあげました。



みんなは周囲の視線を感じました。



レオンさんは気を取り直して小声で会話を続けています。

そしてしばらくして通話を終え,履歴を消しました。



「いったい何があったんだ?」



と,イツキ君が聞きました。



「黄金原さんが襲われたらしい。今,

警察病院にいるという連絡が入ったんだ。」


「え,それで黄金原さんは無事なの!?」



今度はリク君が聞きます。



「ああ,本人は無事らしい。

ただ,黄金原さんと部下が負傷したとのことだ。

詳細は分からないけど,部下が黄金原さんをかばったみたい。」




レオンさんは赤神さんから聞いたことを話しました。



「じゃあ,その部下の人が死んじゃったの・・・?」



と,言って不安そうな表情をしています。



「いや,狙撃されたらしいんだが,急所は外したみたいで

命には別条はないみたい。今から警察病院に行くんだけど・・・。」




「一緒に行くぜ。」



すかさずそう言いました。



「そう言うと思ったよ。すぐにここを出よう。」



レオンさんは会計を済ませるとすぐに車を出して警察病院へ向かいました。

警察病院に到着し,中に入るとロビーに菊の幹部が集まっていました。



赤神氏はレオンさん達を見つけると声をかけました。



赤神「急な電話ですまなかったな。」



「いえ,それで黄金原さんと部下の方は無事なんですよね!?」



その質問に,その場にいた黄金原さんが答えました。



黄金原「大丈夫だ。俺は腕のかすり傷だけだ。

部下の羽音々(はおとね)も大したことないみたいだ。」



黄金原さんは自分が襲撃された場面を説明し始めました。



第230話 部下の羽音々

菊の華シリーズ第2章
黄金原さんは病院のロビーで自分が

襲撃された時のことを説明ようとしました。



その時,診察室から小柄で若い女性が出てきました。

腕には包帯を巻いています。



「あ,女の人が出てきた。誰だろう?」



黄金原「もう診察は終わったのか,羽音々(はおとね)。」



どうやら黄金原氏の部下は女性だったようです。



羽音々「大丈夫です!銃弾が腕をかすめただけで大事には至りませんでした!」



元気はつらつな表情で黄金原氏にそう言いました。

その後,こちらに向かって深々と頭を下げました。



黄金原「よかった。君がいなかったら俺は死んでいた・・・。」



黄金原氏はねぎらいの言葉をかけました。



赤神「翠川と少年昆虫団も来たので,

もう一度襲撃された時のことを説明してくれるか?」



「何度も悪いね。」



レオンさんは黄金原氏に謝りました。



彼は手を振って,「気にするな」という仕草をし,



黄金原氏は「わかりました。」



と言って,説明を始めました。



場面は黄金原氏がサーカス団での仕事を終えて

部下の羽音々に車で迎えに来てもらった所でした。



黄金原「悪いね,迎えに来てもらって。」

羽音々「いえ,そんな。むしろ頼ってもらって光栄です!」





<福岡県警公安係 羽音々 緋文(はおとね ひふみ)>



警察官とは思えないほどの童顔とかわいらしい仕草は

そばにいた団員をくぎ付けにするには十分でした。



団員は見送りを終え,再び劇場の中へ入って行きました。



黄金原氏は羽音々が運転する車に乗り,

県警本部に戻ることにしました。



県警本部に到着し,二人は車から降りました。



その時,羽音々は向かいのビルの屋上がチカッっと光るのが見えました。

次の瞬間,赤い照準レーザーが黄金原氏の頭に映ったのです。



羽音々はとっさの判断で黄金原氏を抱きかかえ,

体勢を変えることでレーザーの標準からずらそうとしました。



風を切るような音ともに羽音々は腕に痛みを感じました。



黄金原「なっ,なんだ!?」



黄金原氏もその場に倒れこみました。



羽音々「狙撃です!黄金原さんはすぐに

建物の中に入ってください!」



二人はなんとか県警本部の中に身を隠しました。



そして,入口にいた警らの者にすぐに応援を呼ばせました。



二人は厳重な警備の中,この警察病院へ

運ばれて診察を受けたというわけです。



「なるほど,だいたいの話はわかった。」



イツキ君は腕を組みながらそう言いました。



「今回の襲撃はやはり闇組織JFの仕業なんですよね!?」



「そうとしか考えられないだろうな。

どうやら奴らの狙いは黄金原だったというわけか。」




レオンさんが黄金原氏に視線をやりました。



黄金原「そうみたいだな・・・。でも,羽音々が

無事で本当に良かったよ。それが何よりだよ。」



羽音々「そう言っていただけるなんて,本当に嬉しいです。

あたしも黄金原さんが無事で良かったです。

もし貴方に何かあったら,どうしようかと思いました・・・。」



そのやり取りを見ていたまさらちゃんが何か感づいたようです。



「はは~ん。」



急にニヤニヤし始めました。



「まさらちゃん,どうしたの?」



と,リク君が聞きました。



「あら,あの二人を見ていてわからないの?」

「何が?」



リク君はいまいちまさらちゃんが

言いたいことがわからないようです。



「リク君ってこういうことは鈍いよね!たぶん,羽音々さんは

黄金原さんのことが好きなのよ!あれは相当,慕う想いが強いと思うな!」




まさらちゃんは自信たっぷりにリク君に解説をしました。



「そうかな??」



「そうじゃなければ,いくら上司だからって

自分の身を挺してまで守ろうとしたりしないよ!」




まさらちゃんの指摘通り,リク君には

こういうことはあまりわからないようです。



「間違いないわ!私の勘がそう言っている!」



果たして二人の関係は・・・。



第231話 二人の護衛

菊の華シリーズ第2章
まさらちゃんは黄金原さんと部下の

羽音々さんが恋仲にあると予想しました。



「本当にそうかなぁ・・・。そうは見えないけど・・・。」



リク君は恋愛については疎いようです。



「ねぇねぇ,お姉さん。お姉さんってひょっとして

黄金原さんのことが好き・・・だったりして?」




まさらちゃんは音々さんの耳元でストレートにささやきました。



羽音々「なっ何を言っているの!?」



その慌てぶりからまさらちゃんの予想が確信に変わりました。



「やっぱりね!お二人は付き合っているんですか?」

「おいおい,プライベートに食い込みすぎだ・・・。」



黄金原氏は菊の幹部と何やら話を続けていたので,

今の会話は彼の耳には入っていないようです。



羽音々「べっ別に,あたしが勝手に慕っているだけで・・・,

その付き合っているとかはないよ。

まだ・・・。彼とは仕事上の上司と部下,それだけ!」



明るく振舞いましたが,少し寂しそうです。



「なるほど~。羽音々さんは彼のことが好きだけど,彼はそれに

気づいていないんだね。あの人,うちの男たちと一緒で鈍感そうだし。」




少年昆虫団の男たちは一斉にブーイングしました。



「何をー!」



赤神「よし,今日はこれで解散しよう。」



桃瀬「了解しました。でも,黄金原さんと

羽音々さんは病院で入院ですか?」



桃瀬さんが聞きました。



黄金原「いや,傷はたいしたことないし,任務にも支障が出るから県警に戻る。」

青山「大丈夫なのか?また襲撃される可能性もあるぞ。」



青山氏が心配しました。



羽音々「あたしは黄金原さんと一緒ならどこでも大丈夫です。」



「じゃあ,オイラが県警本部まで護衛につくよ。

君たちの運転する車を後ろから追いかける。」




レオンさんが提案しました。



赤神「そうだな。それがいい。俺はちょっと病院で 手続きが残っているから先に帰っていてくれ。」



赤神さんの指示により,菊のメンバーは,本日は解散となりました。





先に病院を出たのは,黄金原氏と羽音々さんの車でした。

そのすぐ後ろにレオンさんとリク君たちが乗った車が後を走りました。



病院を出て,15分くらい経ったころです。



レオンさんは視界遠方にあるビルの屋上が

チカッと光る現象に気づきました。



その異変に気付いた次の瞬間-・・・。



キキィ!!



ハンドルを取られ車が大きくスリップしました。



乗車していた少年昆虫団は何が起こったのか分からず,

車体の内側に頭や体をぶつけました。



「なっ・・・なんですか急に!?」

「いったぁい・・・。」



まさらちゃんは頭を軽くぶつけたようでした。



みんなは何が起こったのかわからない様子で動揺していました。



「どうしたんだよ。レオンさん,

運転テクはかなりの腕前じゃなかったのかよ!?」


「すまない。どうやら,パンクした・・・。

いやパンクさせられた・・・。」




異変に気付いた黄金原氏たちの車は

100mほど離れた距離で停止しました。



次の瞬間,後ろから黒いワゴン車がレオンさんの車を

ものすごい速さで追い抜き,黄金原氏の車の横で停止しました。



「あ,あの車は“古代自動車”の“ローハート”ですね!

昨日,だぬたちを襲ってきた車ですよ!」




リク君が車外に出ようとしましたが,レオンさんが制止しました。



「今,外に出ることは許可できない。」



いつにもまして真剣な表情でそう言いました。

一体何が起ころうとしているのでしょうか。



第232話 徹底した襲撃

菊の華シリーズ第2章
レオンさんと少年昆虫団が乗る車が突然パンクしました。

いったい何が起こったのでしょうか。



リク君が車外に出ようとするとレオンさんが制止しました。



「この車はタイヤを狙撃された・・・!

今,外に出たら格好の的になってしまう。」




リク君はドアノブから手を離しました。



「闇組織ジャファの狙撃手の仕業だね。」



そう言って,みんなに身をかがめるように指示しました。



「でも,後ろから追い抜いてきた車が黄金原サンの

車の横につけた。なんとかしないとヤバイぞ。」




イツキ君が危機感を募らせました。



「しかし,今は君たちの命が大事だ。」



敵の狙撃手はこちらの行動を封じる

ためにさらに撃ち込んできました。



カン!



カン!



車内に甲高い音が響きます。

銃弾が車のボディに当たっているようです。



リク君たちの身動きが取れない状況でした。



すでに黄金原氏の車は,闇組織JFの車に

進路を防がれてしまいました。



車から数名の特殊部隊が出てきました。

昨日,リク君たちを襲撃した部隊と同じような構成部隊でした。



みんなは身をかがめながらも様子をうかがっていました。

すると,車内から黄金原氏と羽音々さんが手を挙げて出てきました。



銃口を突き付けられてどうしようもないように見えました。

そのまま,身柄を拘束され組織の車に詰め込まれました。



そして,車をものすごい勢いで発車させました。



「どうしよう!?羽音々さん達が連れ去られちゃったよ!?」



まさらちゃんは不安そうにしています。



「もう少しだけ様子を見よう。」



レオンさんはそう言って,5分ほど

車内に待機するよう指示しました。



その間,レオンさんは赤神氏に連絡を取り,今起きた

出来事の報告と今後の動きについて確認をとりました。



5分後,最初にレオンさんが慎重に車外に出ました。

周囲に敵がいないことを確認し,みんなを車外に出しました。



すぐに,黄金原氏が乗っていた車に乗り換えました。



「この車で,黄金原さん達を連れ去った連中を追いかけよう。」

「でもどうやって?もうどこに言ったかわからないですよ?」



と,だぬちゃん。



「大丈夫。菊の幹部はお互いの居場所が

常にわかるようにGPSを装着している。」




レオンさんは専用の受信装置を取り出しました。

見た目は普通のタブレットでした。



「まだ,そんなに遠くには行っていない。

赤神さん達の応援を待つよりも追いかけたほうが早い。」




レオンさんはシートベルトをする

ように指示して車を急発進させました。



リク君はレオン差から受信装置を預かり,運転して

いるレオンさんにGPSの位置を提供し続けました。



「名古屋高速に乗る。」







緊急車両用のサイレンを鳴らして,

高速道路を駆け抜けていきました。



「だいぶ距離を縮めてきたよ!」

「いったいどこへ向かうんだ・・・!?」



高速を降りて10分ほど車を走らせると,

名古屋港の金城埠頭まで来ていました。



黄金原氏が持っているGPSの

位置を確認すると,すでに停止していました。



「このあたりのはずだけど・・・。」

「あ,あれじゃないですか!?」



だぬちゃんが古い漁港の使われていない倉庫の

前に先ほどの車が停止しているのを見つけました。



「うん,あれだね。」



レオンさんは車を停止させました。



第233話~第236話

2018/7/1

第233話 鷺(サギ)

菊の華シリーズ第2章
倉庫の前には先ほどの黒いワゴン車が止まっていました。

レオンさんは慎重に車を停止させ,車から降りました。



「みんなはここで待っていて。」



ワゴン車の中を覗くと,すでに誰も乗っていませんでした。



「おそらく倉庫の中だね。」



リク君は勝手に車から降りてきました。

続いてみんなも降りてきました。



「ここに置いておくわけにもいかないか。

絶対にオイラから離れないようにね。」


「うん,わかった。」



みんなはレオンさんの後ろを

ついていくことにしました。







そっと,倉庫の扉を開けました。



中は長い間使われていなかったようで,大量のほこりが

飛び散っており,思わず鼻を覆いたくなりました。



倉庫は2階建てで,中はオフィスビルの一角の

ようになっており,細かく区割りされていました。



みんなは古くなった廊下を進みました。

しばらく歩くと階段があったので,登っていきました。



すると角の部屋から悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきました。

声が聞こえた部屋の扉は少し開いていました。



中をのぞくと黄金原氏と部下の羽音々さんがいました。

二人は部屋の一番奥で両手を柱の後ろに回され,縛られていました。



レオンさんは扉を勢いよくあけて注意をこちらにひきました。



「黄金原さん!」



レオンさんは叫びました。



黄金原「遅いよ・・・。」



かなり衰弱している様子でした。



「みんなは扉の後ろに隠れているんだ。いいね。」

「わかっていますよ。」



だぬちゃんが言いました。



しかし,リク君は戦う気満々でした。



すでに捕虫網を背中から取り出し,

2刀流の構えで立っていました。



闇組織JFの精鋭部隊5人が黄金原氏たちを取り囲んでいました。

その中のリーダーと思われる人物がレオンさんに向かって警告をしました。



精鋭R「我々はJFの精鋭部隊“鷺(さぎ)”。こいつらを消すのが

我らの役目。これ以上近づけば,お前の命も保証しない。」



精鋭部隊の隊長はやせ形で頬が少しこけて,

あまり生気がないような人物に見えました。



「あいつらはやはり精鋭部隊なんだ・・・。

それって昨日のやつらと同じってこと?」


「おい,大声でしゃべるな!」



トシ君が思わず部屋の外から声を出しました。



精鋭部下「どうやら,隠れているガキがまだいるみたいですね。」



トシ君のせいで少年昆虫団の存在が気付かれてしまったようです。



精鋭R「なるほど,お前たちが,昨日,“梟”に襲撃された連中か。

我々を奴らと一緒にするな。任務を失敗した情けない奴らだ。

我々は精鋭中の精鋭,それが“鷺(さぎ)”だ。」



どうやら闇組織JFの中にはいくつもの精鋭部隊があるようです。



精鋭R「堂々と助けに来たのはいいが,

少しでも動けば,こいつらの命はないぞ。」



部下の二人がそれぞれの首元にナイフの

ようなものをつきつけていました。



「・・・。」



黄金原「俺のことは気にするな!お前は任務を全うしろ!」



黄金原氏が叫ぶと,“鷺”の部下が彼の腹を殴りました。



精鋭部下「黙っていろ!」



黄金原「ぐっ・・・。やってくれるね・・・。」



すぐ横の柱にくくりつけられた羽音々が

心配そうな表情で黄金原氏を見つめていました。



「オイラが同じ立場なら黄金原さんと同じことを言ったと思う。」



レオンさんは構えました。



黄金原「そうだ,それでいい・・・。」



「二人とも人質である前に,警察官だ。覚悟もできている。

オイラの任務はお前たちの身柄を拘束して組織の全貌を暴きだすことだ!」




そう言った瞬間,敵の懐へ飛び込んで行きました。



第234話 二人の救出 前編

菊の華シリーズ第2章
レオンさんは一番手前にいた鷺の部隊員に襲いかかりました。

いきなりの奇襲に戸惑った隊員は顎に強烈なフックを食らい,よろけました。



さらに腹に一撃が入り,倒れこみました。



鷺隊長「おい,こいつをさっさと片付けろ!」



鷺の部隊長の怒号が響き渡りました。



「イツキ君,みんなを頼む。」

「ああ,気をつけろよ。」



リク君は扉の後ろにいた少年昆虫団を

イツキ君に任せ,自らは戦闘に参加しました。



「おおおおぉぉぉぉ・・・・!!!」



2本の捕虫網を突き出し,低空姿勢のまま

超高速で敵に突撃していきました。



-大地二刀流- 桜乱舞



乱撃により,敵の体から血しぶきがあがりました。

それはまるで桜の花びらが散るようでした。







部下「ぐおぇっ・・・!?」



そのまま倒れこみました。



「さすが,リク君。よし,あと三人だ。」



鷺隊長「くそっ,信じられん。これが梟が言っていた,

菊の実力者と平成のファーヴルというガキの力か!?」



部下「こうなったら,こいつらから殺してやる!」




残った部下の二人が黄金原さんと羽音々さんを

殺害しようと軍用ナイフを振り下ろしました。



-大地二刀流- 神速の打突 連撃



リク君の放った二本の捕虫網による打突が

敵が持っているナイフに当たり,手からナイフが離れました。



その隙に,レオンさんが相手の懐に潜り込み,

延髄蹴りを食らわせ,一瞬で倒しました。



もう一人は,慌てて,逃げ出そうとしました。



出入り口は黄金原氏たちがくくりつけられている柱から

さらに後ろに設置された貨物用エレベータとリク君達が

入ってきた所しかなかったので,無我夢中でリク君に突進してきました。



部下「どけっ!このクソガキ~!?」



リク君は冷静でした。



元の長さに戻っていた捕虫網を再び構え,

軽く相手のみぞおちに入れました。



部下「ぐふっ・・・。」



もだえながらその場で倒れ込みました。



しかし,意識があったようで,立ち上がり

再び扉を目指して走り出しました。



「しまった!ちょっと手加減しすぎたか!?」



扉の目の前にはイツキ君が,その後ろには

まさらちゃんとだぬちゃんとトシ君がいました。



部下「よし,このガキならたいしたことねぇ!」



闇組織JFの精鋭部隊とは思えないような

情けない姿で,この部下はイツキ君達に襲いかかりました。



「きゃあぁぁ・・・。」

「こっちに来ますよ!?」



まさらちゃんたちはパニックになりかけました。



「イツキ君!?」



リク君が声を上げました。



「大丈夫だ,お前たちは俺が守る!!」



イツキ君が前に出ました。



「うぉぉぉぉ!!!」



イツキ君の右の拳が敵の顔面に入りました。



バゴッ!!!!



相手は鼻血を出しながら思いっきり倒れました。

まだ起き上がろうとしたので,さらに一発食らわせました。



部下「がはっ・・・。」



ついにノックダウンしたようです。



「はぁはぁ・・・。」

「大丈夫か!?」



レオンさんがすぐ近くまで来て

くれていたことに気づきました。



「ああ・・・。なぁ,見ていただろ?

俺だって・・・戦えるんだ!」




イツキ君はレオンさんに向かって,そう言いました。



「ああ,立派だった。稽古が実践に活きるようになってきた。」



イツキ君はレオンさんに稽古を

つけてもらい,実践力がついてきました。



後は,鷺の部隊長だけが残りました。



第235話 二人の救出 後編

菊の華シリーズ第2章
闇組織JFの精鋭部隊,鷺はレオンさんとリク君,

そしてイツキ君によって,壊滅させられました。



残るは精鋭部隊“鷺”の部隊長だけです。



「さてと・・・。」



鷺隊長「こんな・・・こんなはずでは・・・。」



「後は,アンタだけだな。おとなしく

捕まって組織のことを全部話してもらうよ。」




レオンさんは少しずつ,鷺のリーダーに近づいていきました。



その間に,リク君とイツキ君は黄金原氏と羽音々さんに

近づき,縛られていたロープを切りました。



「一つ,先に聞いておきたいんだが,オイラの車を

パンクさせたのも,君達の部隊なのか?」




鷺隊長「・・・。おまえ達はここで死ぬ訳だから教えてやる。

お前たちの車を狙撃したのはわが組織の優秀な狙撃手だ。

ちなみにその方は源田様の直属の部下だ。」



どうやら狙撃手はユニット森熊に属する人物のようです。



「なるほど。桃瀬さんの言った通りか・・・。」



鷺隊長「梟が任務失敗した理由がわかった気が

する・・・。だが,最後に勝つのは我々だ。」



鷺の隊長は部屋の一番後ろに設置された貨物用の簡易

エレベータのスイッチを押して一瞬で下っていきました。



「しまった,逃げられた!」



イツキ君が,悔しそうな表情をしました。

スイッチを押してもすでに反応がありませんでした。



「仕方ない。とりあえず,二人が無事でよかった。」



レオンさんは黄金原氏の無事を確認し,安堵しました。



黄金原「すまない。俺一人なら

多少の無茶はできたんだが・・・。」



ちらっと音羽々さんを見ました。



羽音々「あの,本当にありがとうございました。

私が頼りないばかりですみません。」



そう言って,深々と頭を下げました。



「気にすることはないよ。さぁ,ここから出よう。

もしかしたらまだ追いつけるかもしれない。」




一同は部屋から出ることにしました。



一方,梯子から脱出した鷺の隊長は

1階の中央部屋である人物に遭遇していました。



鷺隊長「申し訳ありません・・・!

人質の殺害は失敗してしまいました・・・。」



南雲「そうか。ならば,すぐにそのスイッチを入れろ。」



その人物とはユニット山犬の南雲でした。







鷺隊長「しかし,私の部下は・・・。」

南雲「残念だが,処分ということになる。」



その言葉に鷺の隊長は言葉に詰まりました。



南雲「スイッチを起動後,1分後に倉庫の

あちこちから火の手が上がる。さぁ押せ。」

鷺隊長「くっ・・・。了解しました・・・!」



敬礼後,手元にあったスイッチを押しました。



鷺隊長「では,我々もすぐに避難しましょう・・・!」

南雲「ああ,そうだ。残念だが,お前はここに残ってもらう。」



南雲氏は拳銃を取り出して,

鷺の隊長にその銃口を向けました。



鷺隊長「なっ・・・。これは一体どういう・・・。」

南雲「お前たちは今回の作戦を知りすぎた。

いや,山本さんはお前たちが何も知らないまま葬りたいのかな。」



南雲はにやっと薄ら笑いを浮かべました。



鷺隊長「どういうことですか!?我々は指示通り,

菊の幹部とその部下を拉致し,この倉庫へ運びました。

菊内部の情報を尋問で聞き出し,口を割らなければ殺害。

邪魔が入れば倉庫ごと燃やす作戦だったはず。」




鷺隊長は必死に自分たちの成果をアピールしました。



鷺隊長「ちょうど,尋問を始めようとした

矢先に邪魔が入ってしまいましたが・・・。」



その時,鷺の隊長は何かに気づいたようです。それは・・・。



第236話 燃えさかる倉庫

菊の華シリーズ第2章
倉庫1階の中央部屋で闇組織JFの南雲と

精鋭部隊の部隊長が対峙していました。



南雲は部隊長に銃を突き付けていました。



鷺隊長「まさか・・・。今回の作戦は・・・。」

南雲「おっと,それまでだ。」



そういうが早いか,南雲は引き金を引きました。



パッシュ!



鷺隊長「ぐはっ・・・。」



南雲の放ったサイレンサー付きの銃は,

正確に鷺の隊長の脳天に一撃を食らわせました。



その時です。



倉庫の壁が燃え始めました。



南雲「おっと,もう火の手が上がり

始めたか。さっさとズラかるとしよう。」



南雲は炎の中,漆黒の闇に消えていきました。



火の手が上がったころ,少年昆虫団達は

1階の階段まで来ていました。



「やばいですよ!なんで急に燃え出すんですか!?」

「これってさっきのリーダーの仕業かな!?」



みんなパニックになりかけていました。



「大丈夫だ。出口はすぐそこだ。あまりしゃべらず,

鼻と口をしっかりとハンカチで押さえておくんだ。」




イツキ君は冷静でした。



先頭を進むレオンさんとリク君は,周囲に敵が

潜んでいないか慎重に調べながら歩いていました。



「さっきの奴が奇襲を仕掛けて

くると思ったが,なさそうだね・・・。」


「うん・・・。もう逃げちゃったのかも。」



黄金原氏はまだ傷が治っていない羽音々さんに

寄り添いながら一番後ろを進んでいました。



そして,全員が無事に倉庫から脱出できました。

その直後,大きな爆発とともにさらに倉庫が燃え上がりました。



そこにいた者たちはただ,燃えさかる倉庫を

見守ることしかできませんでした。







5分後には救急・消防隊と地元の警察が到着して,

レオンさんは事情を説明していました。



黄金原氏と羽音々さんは多少けがを

していたので,病院へ運ぼうとしましたが,

搬送中に襲撃される恐れがあったので拒みました。



遅れて赤神氏が菊の部下と共に警察車両でやってきました。



赤神「大変なことになったな。みんな,大丈夫なのか!?」



彼は車から降りると心配そうな表情で近づいてきました。



「すみません。自分がついていながら・・・。」



赤神「仕方ない。子供も一緒にいたわけだしな。」



赤神氏は全員の無事を確認し,ひとまず安心しました。



赤神「二人はやはり県警本部に戻ろう。黄金原は明らかに

JFに狙われている。お前はしばらく本部で内勤だ。」



黄金原「わかりました。羽音々も一緒でよろしいですよね。」



黄金原氏は彼女のことも心配しているようでした。



赤神「ああ,もちろんだ。そして翠川は早急に

子供を自宅へ送り帰し,明日に備えてくれ。」



「わかりました。」



この後,レオンさんは無事に少年昆虫団を

送っていき,長い一日は終わりました。



第237話~第240話

2018/7/22

第237話 エピローグ

菊の華シリーズ第2章
少年昆虫団は昨夜,闇組織JFの精鋭部隊から

黄金原氏と羽音々さんを救出しました。



彼らはレオンさんの家に集まっていました。



「昨日はお疲れさんだったね。」



そう言いながら,カップのバニラアイスを

人数分出してくれました。







トシ君がすかさず,食べ始めました。



「冷たくてうまぁい!」



みんなはアイスを食べながら昨日の

ことについて質問をしました。



「羽音々さんは大丈夫なのかな?」

「ああ,精神的に少しまいっている

みたいだけど,彼女も警察官だ。大丈夫だよ。」




レオンさんの言葉にまさらちゃんはほっとしたようです。



「二人は県警本部で厳重警備されているよ。

しばらくは用事がない限りは本部から外出する

ことはないと思うので組織も手が出せないだろう。」


「そっか。」



リク君もそれを聞いて安心したようです。



「あの鷺とかいう精鋭部隊はどうなったんですか?」



だぬちゃんは倉庫が燃えてしまったことが気がかりなようです。



「消火活動が終わった後に,焼け落ちた

倉庫を赤神さん達が調べたみたい。」


「それで?」



イツキ君が聞きました。



「中から5人の遺体が出てきた。

おそらく鷺のメンバーだろう。」




レオンさんは真剣な表情で言いました。



「ということは,逃げだした鷺の隊長も死んだのか?」

「確定はできないが,そういうことになるだろうね。」



リク君はアイスを食べる手を止めました。



「じゃあ,誰が倉庫に火を放ったんだろう・・・?

まさか,鷺の隊長が火をつけて逃げ遅れたってこと?」




リク君の疑問に,



「おそらく,もう一人倉庫にはいたんだろう。

鷺の部隊長は拳銃で殺害された痕跡が見つかっている。」




と,レオンさんが答えました。



「まさか!」



一同は驚きました。



「あの現場に誰がいたんでしょうか・・・。」



疑問は深まるばかりでした。



「まぁ,とりあえず,敵の連中が黄金原さんって

いう人を狙っているってわかっただけでもいいじゃない!」




トシ君が珍しくまっとうな考えを示しました。



「うん,トシ君の言うとおりだ。

敵の狙いがわかれば,こちらとしても護りやすい。」




レオンさんも同調しました。



ただ,リク君だけが浮かない顔をしていました。



「どうしたんだ?何か気になることでもあるのか?」

「え?いや,そんなことはないんだけど,

何か引っかかるような・・・。なんだろう・・・。」




リク君は何か気になることがあるようですが,

はっきりとはわからないようです。



「考えても仕方ないですよ。」



だぬちゃんは楽観的でした。



しかし,闇組織JFの菊幹部暗殺作戦はまだまだ続くことになりそうです。



菊の華シリーズ ~第2章 完~



第238話 カブクワがいない!?
少年昆虫団はいつもの緑地公園に

昆虫採集に来きていました。



時間は夜の9時ごろです。



レオンさんが来ていなかったので噴水前で待っていました。



しばらくすると,遅れてやってきました。



「ごめん,ごめん。どうしても研究が片付かなくって・・・。」



彼は遅れたことを申し訳なさそうに謝りました。



「気にしなくていいよ。さぁ,昆虫採集に行こう!」

「いつも言っているような気もしますが,

なんか,4か月ぶりくらいに虫とりをする気がしますよ。」




一同は奥の採集ポイントへ向かって行きました。



ここはクヌギが多く,それらの木から樹液が出ていました。

採集ポイントに到着し,樹液が出ているか確認しました。



「結構樹液が出ているよ~!」







まさらちゃんが手を振りながら樹液が

出ている木を教えてくれました。



「じゃあ,カブクワがいたか。」



イツキ君が近づいてきました。



「あれ?カナブンはいるけど,

カブクワはいないね・・・。」




同じく他のポイントも探して

みましたが,カブクワはいません。



「なんか,もうどこかへ行っちゃったんじゃないの~。」



トシ君は汗をだらだらかいて暑そうでした。



「そんなことはないと思うけどなぁ・・・。

時間もカブクワが活動する時間だし・・・。」




さらに周辺を探し続けましたが,

1匹もカブクワがいません。



「こんなこともあるんだね。」



レオンさんが言いました。



「もう諦めて帰ろうぜ。俺はこれからレオンさんに

格闘技の稽古をつけてもらう予定なんだ。」


「ああ,そうなんですか。それは大変ですね。」



だぬちゃんは他人事でした。



「う~ん,おかしいなぁ・・・。

いつもなら絶対に採集できるのに・・・。」


「何か原因があるのかな?」



二人は原因を探ろうとしました。

すると,向こうからライトの明かりが見えました。



それも一つや二つではなく,複数ありました。

だんだんとそのライトが近づいてきます。



「あれって他にも採集している人じゃないの??」



トシ君はそのライトを指差して言いました。

どうやらその予想は当たりでした。



なんと,5組の親子がカブクワ採集に来ていました。



「原因はあれか・・・。」



レオンさんは携帯タブレットを開き,ネットにつなぎました。



「うん,そのようだね。ネットの

口コミで緑地公園のことが出ている。」


「なんて書いてあるの?」



まさらちゃんは画面を覗き込みました。



「えっと・・・。『緑地公園はカブクワの宝庫。

一度は採集に言ってみるといいよ。』などと書かれているね。」




レオンさんは書き込みを読みました。



「あ・・・。それを書いたのボクだ・・・。」

「はぁ~!?」



みんなはリク君に視線をやりました。



「そういえば,昨日,そんなことを書いたような・・・。」



頭をかきながら照れ笑いをしていました。



「じゃあ,カブクワがいないのはリク君の

せいじゃない!?そう言うのを自業自得って言うんだよ」




まさらちゃんも呆れています。



「はぁい・・・。反省しています・・・。」



その後,リク君は書き込みを消し,しばらくすると再び

カブクワを採集することができるようになったみたいです。



カブクワが採集できても,あまりネットで自慢しない方が良いでしょう。



第239話 蝶は種類がいっぱい
少年昆虫団は暑い日差しが照りつける

四町公園に昆虫採集に来ていました。



レオンさんは基本的に昼間は大学に行って

いるので昆虫採集には参加できないようです。



「暑い~・・・。オイラもう帰っていいかな・・・。」

「駄目だよ!?今日はみんなでチョウチョを採集するんでしょ!?」



リク君は張り切っていますが,他のメンバーは

暑さでくじけそうになっていました。



木陰で座り込んでいるイツキ君もすでにやる気がありません。



「こんなに暑いのに蝶なんて飛んでいるのかよ・・・。」



すると,イツキ君の前を1匹の蝶が横切りました。



リク君がすかさず,網を振り回します。

上手に横から蝶を網の中に入れました。



「やった!1匹目ゲット~!」



捕まえたのは夏型のアゲハ蝶オスでした。







「蝶って種類が多すぎてよくわかんないや。」

「蝶は種類や性別によって模様や

大きさが違うことがあるからね。」




リク君は蝶に関する知識をみんなの前で披露しました。



さらに木陰に咲いていたブタナというタンポポの

ような黄色の花にクロアゲハが止まりました。



「あ,あんなところに黒いチョウチョがいますよ!」



と,だぬちゃん。



「しっ!あれはクロアゲハだね。よ~し,捕まえるぞ!」



リク君はそっと忍び寄り,捕虫網を振りました。

うまく,捕まえることができました。



「おおっ~!これはうれしい!」







普段はモンシロチョウやナミアゲハ,アオスジアゲハがよく見られますが,

クロアゲハはなかなか見られなかったのでリク君は大喜びです。



しかし,他のメンバーは暑くて昆虫採集をする気にはなりません。

気温は40℃まで上がってきました。



「なんか,ちょっと疲れてきたな・・・。」



汗だくになったリク君の目の前を黒い蝶が横切りました。



「リク君大丈夫―!?」



まさらちゃんは少し離れた場所から心配そうに声をかけました。



「大丈夫だよ!」



リク君は目の前を横切った蝶を追いかけました。



必死になって追いかけましたが,蝶は高いところへ飛んで行きました。



「くそっ・・・!?あの黒い羽根に白い模様は

ナガサキアゲハのメスだった!」








リク君は悔しそうに地団駄を踏みました。



その時です。



「あれ・・・?なんか体がだるい・・・。」



リク君はその場に倒れてしまいました。



「リク君!?」



みんなはリク君の元に駆け寄りました。



「まずいな,これは熱中症だ!すぐに対処しないと!」



イツキ君はまさらちゃんの持っていた救急バックを受け取りました。

リク君を木陰に運び,首元を保冷剤で冷やし,水分を十分に与えます。



お茶や水も良いですが,塩分を含んだミネラル水があればさらに良いでしょう。

体を十分に冷やし,休憩をしっかりと取ることで少しずつ良くなってきました。



「みんな,ありがとう。だいぶ良くなったよ。」



リク君は起き上がろうとしました。



「まだ,起きちゃだめだよ。もうしばらく休んでいて。」



リク君は再び体を横にしました。



「あ~,びっくりした。リク君でも熱中症になるんだね。」

「まぁ,昆虫採集に夢中になりすぎだ。気をつけろよ。」



イツキ君にそう言われ,反省しました。



「気温40℃で昆虫採集を続ける

なんて異常行為ですよ!自重した方がいいですよ!」




珍しくだぬちゃんがリク君に注意しました。



「じゃあ,昼間は家で遊んで,また夜に昆虫採集に行こう!」

「えっ!?この後,また行くんですか。」



まだまだ続く夏休み。



リク君にとって昆虫採集は

毎日の生活から切り離せないようです。



皆さんも熱中症には十分に気をつけましょう!



第240話 稲川淳姫の怪談5
稲川「さて,今回はある廃屋に訪れた

若者達の恐怖体験をお話しましょう。」



特別教室の教卓の上に置かれたスクリーン

ごしに稲川先生がしゃべっています。



彼はまだ旅行中だったので出先から

カメラを通して話しかけています。



おどろおどろしい雰囲気の特別教室に

集められた中野木小学校2年生の児童たち。



今日は夏休みなのに学校に来て

怪談噺を聞くことになっていました。



そして背筋も凍る怪談噺が始まりました。

怪談噺が始まる前にイツキ君が一言つっこみました。



「これ,そのうちPTAやら教育委員会で問題視されるぞ・・・。」



ある山奥に一軒の廃屋がありました。

ホテル経営に失敗して,経営者が自殺をし,

その後,解体されないまま何十年も残ったままでした。







その廃墟に男女4人の若者が肝試しに来ていました。



A「本当に幽霊なんてでるんかな?」



懐中電灯を持ち,先頭を歩く男性Aは

後ろを振り返ってそう呟きました。



B「えー,やだー。怖いー。」



すぐ後ろを歩く,女性Bは大げさに怖がって見せました。



C「やっぱ,やめようよ,こんなこと。

絶対に何か出るよ・・・。」



すでに女性Cは入口を入ってすぐのところで帰りたがっていました。



D「Cは臆病だな。大丈夫だよ,何も出やしないって!」



4人は奥まで進むと階段を見つけました。

手すりは取れ,床にはごみが散乱していました。



階段を上ったところに,赤い花が廊下に飾られていました。

その花は誰が飾ったのかわかりませんが,

枯れることなく綺麗な赤い色をしていました。



そんな赤い花を横目に一行は2階の一番奥まで進んで行きました。



そこは大浴場でした。



すでにタイルははがれ,ボロボロの状態でした。

ふと,男性Aが振り向くと,人数が一人足りません。



A「あれ?Dは?」



いつの間にか,Dがいなくなっていました。



C「え,さっきまで私の後ろにいたよ!」

B「あいつ,アタシ達を脅かそうと思って

どこかにかくれているんじゃない?」



あたりを探してみましたが,どこにもいません。



C「ねぇ,もう帰ろうよ!」

A「そうだな,帰ろう。」



大浴場を後にし,いくつかの

部屋の前を通り過ぎました。



B「ねぇ,Cがいない!?」



突然,Bが声をあげました。



A「え?」



懐中電灯をもっていたAが周辺を照らしました。



A「おい,Cちゃん!?どこだー!?」



声が空しく響くだけで,反応はありません。



B「もう私,怖くてどうかなりそうだよ!早く出よっ!」



カシャーン!



あたりが真っ暗になりました。



B「え!?」



足元に転がった物体を拾い上げました。

それはついさっきまでAが持っていた懐中電灯でした。



B「A君?」



A君が見当たりません。



そして懐中電灯の電源を入れよう

としても明りがつきません。



Bは恐怖のあまり,無我夢中で

叫びながら1階への階段を探しました。



そして,暗闇の中,階段をみつけ,

急いでかけ下りました。



B「はぁはぁ・・・。」



月明かりが廃屋内を照らしました。

するとそこには赤い花が飾ってありました。



B「あれ,あの花って2階に飾ってあった・・・。」



ふと,下を見ると階段がありました。



B「確かに階段を下りて1階に来たはずなのに・・・。」



もういちど階段を下りました。

しかし廊下を見ると赤い花がかざってあり,

下を見ると階段が続いています・・・。



B「何よこれ!?どうなっているのー!?」



その後,何がどうやって出られた

のかは定かではありませんが,

女性Bは何とか逃げだせたそうです。



ただ,残りの3人は未だに見つかってはいないそうです。



また,その後,女性Bも何かに取りつかれた

ように様子がおかしくなり,ついには自殺

してしまったということです。



稲川「いったい,この廃墟はなんだったんでしょうね。

そして,行方不明になってしまった3人は

どこへ行ってしまったんでしょうか。」



教室の中は泣き叫ぶ児童で阿鼻叫喚でした。



「(・・・。この話って・・・。)」



リク君は話を聞きながら何か気になることがあったようでした。



稲川「それではまだまだ始まったばかり

の夏休み!十分に楽しんでくださいね!」



真夏の怪談噺・・・。



それは稲川先生の生きがいでした。

たまにはひんやりする夏もいいのかもしれません・・・。







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