ある山奥に一軒の廃屋がありました。
ホテル経営に失敗して,経営者が自殺をし,
その後,解体されないまま何十年も残ったままでした。
その廃墟に男女4人の若者が肝試しに来ていました。
A「本当に幽霊なんてでるんかな?」
懐中電灯を持ち,先頭を歩く男性Aは
後ろを振り返ってそう呟きました。
B「えー,やだー。怖いー。」
すぐ後ろを歩く,女性Bは大げさに怖がって見せました。
C「やっぱ,やめようよ,こんなこと。
絶対に何か出るよ・・・。」
すでに女性Cは入口を入ってすぐのところで帰りたがっていました。
D「Cは臆病だな。大丈夫だよ,何も出やしないって!」
4人は奥まで進むと階段を見つけました。
手すりは取れ,床にはごみが散乱していました。
階段を上ったところに,赤い花が廊下に飾られていました。
その花は誰が飾ったのかわかりませんが,
枯れることなく綺麗な赤い色をしていました。
そんな赤い花を横目に一行は2階の一番奥まで進んで行きました。
そこは大浴場でした。
すでにタイルははがれ,ボロボロの状態でした。
ふと,男性Aが振り向くと,人数が一人足りません。
A「あれ?Dは?」
いつの間にか,Dがいなくなっていました。
C「え,さっきまで私の後ろにいたよ!」
B「あいつ,アタシ達を脅かそうと思って
どこかにかくれているんじゃない?」
あたりを探してみましたが,どこにもいません。
C「ねぇ,もう帰ろうよ!」
A「そうだな,帰ろう。」
大浴場を後にし,いくつかの
部屋の前を通り過ぎました。
B「ねぇ,Cがいない!?」
突然,Bが声をあげました。
A「え?」
懐中電灯をもっていたAが周辺を照らしました。
A「おい,Cちゃん!?どこだー!?」
声が空しく響くだけで,反応はありません。
B「もう私,怖くてどうかなりそうだよ!早く出よっ!」
カシャーン!
あたりが真っ暗になりました。
B「え!?」
足元に転がった物体を拾い上げました。
それはついさっきまでAが持っていた懐中電灯でした。
B「A君?」
A君が見当たりません。
そして懐中電灯の電源を入れよう
としても明りがつきません。
Bは恐怖のあまり,無我夢中で
叫びながら1階への階段を探しました。
そして,暗闇の中,階段をみつけ,
急いでかけ下りました。
B「はぁはぁ・・・。」
月明かりが廃屋内を照らしました。
するとそこには赤い花が飾ってありました。
B「あれ,あの花って2階に飾ってあった・・・。」
ふと,下を見ると階段がありました。
B「確かに階段を下りて1階に来たはずなのに・・・。」
もういちど階段を下りました。
しかし廊下を見ると赤い花がかざってあり,
下を見ると階段が続いています・・・。
B「何よこれ!?どうなっているのー!?」
その後,何がどうやって出られた
のかは定かではありませんが,
女性Bは何とか逃げだせたそうです。
ただ,残りの3人は未だに見つかってはいないそうです。
また,その後,女性Bも何かに取りつかれた
ように様子がおかしくなり,ついには自殺
してしまったということです。
稲川「いったい,この廃墟はなんだったんでしょうね。