リクの少年昆虫記-過去のお話-

TOPページへ

目次


第273話~第276話

2019/6/3

第273話 バトルヤバイヤロ3限目 5

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




田村氏以外の全員が実験棟の入り口まで降りてきました。



途中でいくつかカギがかかって開いていない部屋や

100人は収容できる講堂なども確認しましたが,

丹念に調べている暇はありませんでした。



唯一発見できたのは,実験室の奥に置かれていた宝箱でした。



トシ君が恐る恐る中を開けてみると,双眼鏡が入っていました。





その双眼鏡で実験棟の入り口から遠く離れた

校舎前の牢屋をのぞいてみると,確かに田村氏が収容されていました。



「本当にワープしたんだ・・・。」



白馬「信じられないな・・・。でもこれが現実で

そういうゲームってことなんだな・・・。」



みんなは,この世界はどこか現実世界とは

何かが違うようだと感じていました。



「あ・・・。」



ワク君が思わず声を上げたので,

みんなはワク君に注目しました。



アヤネ「どうしたんだい?」



ワク君は双眼鏡を覗きながら,



「田村さんが・・・。牢屋の中で・・・

頭を吹き飛ばされて・・・処刑された・・・。」




と言いました。



真木「なんだって!?」



すると,どこからかスピーカ越しの声が聞こえてきました。



放送「開始から10分がたったよ!処刑されたのは二人!

残りは30人だよ!みんな,がんばれ!先生は応援しているぞ!

でも,鬼がさらに3人増えるから気をつけるんだぞ!」



「くそ・・・。」



ワク君は持っていた双眼鏡を降ろしました。

ヒモがついていたので首にかけておくことにしました。



山岡「田村さん以外にも捕まった人が

いたんだねぇ・・・。なんてこったい・・・。」



実験棟の目の前は高い木や草木が茂っており,

校舎からは直接,鬼にみられることはなさそうでした。



青山「もとはといえば,こんなところに

逃げてきたから田村は死んだんじゃないのか!?」



青山氏がワク君を睨みつけました。



「俺のせいだっていいたいのか?

そいつは的外れな見解だぞ。」




ワク君はひるむことなく言い返しました。



リサ「そうねぇ,アタシもそう思う。

ここに来たのは間違いじゃないでしょ~。」



リサちゃんがワク君の肩を持ちました。



青山「ふんっ。やってられるか!こんなガキどもが

仕切るようなグループにいたら命がいくつあっても足りねぇ!」



山岡「まぁまぁ・・・。青山さん,落ち着いて・・・。」



山岡さんがなだめます。



アヤネ「じゃあ,こういうのはどう?

ここで二手に別れて逃げるっていうのは!」



青山「そうだな。それがいい。

俺は俺の隠れたい場所へ行く。」



青山氏がそう切り出しました。



アヤネ「あ,じゃあ,アタシは青山君についていくね!

だってボクシングやってたんでしょ!?

それなら鬼だって返り討ちにしてくれるじゃん!」



青山「おう,任せろ!少なくとも

そんなガキどもよりかは役に立つぜ!」



ワク君は何も反論しませんでした。



白馬「ちょっと待って,僕もついていくよ。アヤネさんが心配だ。」



結局,主婦の山岡さんも青山氏についていくとになりました。



「ワク君,いいの?あんな,勝手なことをさせて・・・。」

「まぁ,仕方ないだろう。」



その時です。茂みがごそごそと動きました。

果たしてそれは・・・。



第274話 バトルヤバイヤロ3限目 6

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




実験棟の目の前にある,茂みがごそごそと動きました。



次の瞬間,その茂みから鬼が2匹も

飛び出してきたのです。



頭には2本の角が生えていました。



白馬「おっ鬼だ!?鬼が来たぞ!!」

アヤネ「きゃぁぁ・・・!!」



アヤネは思わず白馬氏に抱きつきました。



白馬「アヤネちゃん!?大丈夫だよ,

君は僕が守って見せる!」



アヤネは抱きつきながらニヤッと笑いました。

その様子をワク君は見逃しませんでした。



「とにかく,逃げよう!」



1匹の鬼はワク君たちを追いかけてきました。

もう1匹は青山氏のグループをターゲットにしたようです。



ワク君たちを追いかけてきた鬼は

みるみるうちにその距離を縮めます。



とっさに,真木さんが体を前に出し,

ワク君たちを守ろうとしました。



真木「君たちだけでもなんとか逃げるんだ!僕のことはいいから!!」



鬼は真木さんの背中を3回たたきました。

そして,鬼と真木さんはその場から一瞬で姿を消しました。



「そんな・・・。真木さん・・・。」



優香「ああ,なんてこと・・・。」



優香さんも悲しみに暮れています。



「くそっ!!真木さんに

身代わりになってもらうなんて・・・。」




しかし,ワク君達には悔やんでいる時間はありません。



「誰か,今の時間がわかる人っている!?」



優香「あ,わかります。今は・・・

ゲーム開始から12分経過しています。」





<優香>

「あと,8分か・・・。急いで鬼を倒して牢屋のカギを

探し出そう。その前に,行くときに見かけた,器具庫によらせてほしい。」




リサちゃんが,



リサ「そんなところによってどうするのー?」



と聞きました。



「あ,そっか。サッカーボールだね。」

「ああ,それさえあれば,某名探偵並みに

強い威力のシュートを鬼にお見舞い出来る!」




ワク君たちは周辺に気を配りながら,実験棟から200m

離れたところにある平屋の建物までやってきました。



その一角に,器具庫とプレートに

書かれたスペースがありました。



中からサッカーボールを見つけると,

持ち運び用のネットに入れて方に背負いました。



「これで,よし。」



喜びもつかの間,ワク君たちは近くに

いた鬼に見つかってしまいました。



宮川「ワク君,鬼が・・・鬼が・・きます!!」



宮川氏は完全におびえていました。



「ちょうどいい。こいつでもくらいな!!」



ワク君が思いっきり,ボールを蹴ると見たことも

ないような速さで回転しながら飛んでいきました。



ドゴォォォ!!!



ボールは鬼のみぞおちに決まりました。

鬼は泡を吹いて倒れました。



すると不思議なことに,鬼の体は消えていきました。

地面には牢屋のものと思われる古臭い感じの

真ちゅうでできたカギが落ちていました。



「ホントに鍵が出てきた!」



リサ「へぇ~。本当にサッカーボールで鬼を倒しちゃった。

頭がいいだけじゃなく,腕もたつんだね~。

ますます好きになっちゃったよ。」



ワク君はリサちゃんの冗談なのか

本気なのかわからないその発言に少し戸惑っていました。



宮川「助かった・・・。本当に,

死ぬかと思ったよ・・・。」



宮川氏は腰を抜かして震えていました。



第275話 バトルヤバイヤロ3限目 7

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




ワク君たちのグループとは別行動をとることにした,

青山氏たちのグループも鬼に追われていました。



何mか走った後,青山氏が立ち止まりました。



青山「にげてばかりいても仕方ない!

こっちから鬼を倒してやる!」



運動場の片隅に避難していた,女子高生のアヤネとIT社長の白馬,

主婦の山岡さんはその様子をかたずをのんで見守っていました。



アヤネ「青山君,がんばって~!鬼をやっつけて!」



青山氏は間合いに気をつけながら,

ファイティングポーズをとりました。



青山「さぁ,どこからでもかかってきな!」



退治する鬼は角が2本ありました。



全身真っ黒なタイツをはいているような肌で,

顔には目もなく,のっぺらぼうなようなもので,

当然,表情もなく,とても生き物とは思えない存在でした。



鬼は少しずつ近づいてきます。



どうやら,捕獲モードから対戦モードへ切り替えたようです。



青山「俺の殺人パンチで死ねやぁぁぁぁ!!!」



青山氏が強力な右ストレートを

鬼の顔面にぶつけました。



しかし,鬼はびくともせず,青山氏の動きをまねて,

右ストレートをくり出しました。



ボムッ!!!



鬼のパンチはその威力は尋常ではなく,

直撃した彼の顔面は破壊され,

脳や目玉があたりに飛び散りました。



アヤネ「いやぁぁぁぁ!!!!」



アヤネ氏が思わず声をあげました。



鬼はその場から消えました。



どうやら対戦が終わると勝っても負けても

その場から消える仕組みのようでした。



アヤネ「ちょっと・・・!?

なんで簡単に死んじゃってんのよ!?

青山君にせっかくついてきたのに

やられてんじゃないわよ!

どこが,元ボクサーなのよ!くそったれ!」



頭部を破壊された死体の前で

アヤネちゃんはわめき散らしています。



以前のアヤネちゃんとは思えないような

セリフに白馬氏は少し戸惑っていました。



しかし,目の前で人が残酷な死に方をしてしまい,

動揺しているんだと思うようにしました。



白馬「アヤネちゃん。大丈夫だよ,

必ず僕が君を守るよ。だから,安心して。」



白馬氏は優しい声でアヤネちゃんに寄り添いました。



山岡「おーおー。若いっていうのは

いいねぇ。青春だねぇ・・・。」



場面は再びワク君のグループ・・・。



ワク君は鬼を倒した直後,

後ろから別の気配を感じました。



振り向くと,自分たちと同じ逃亡者のグループでした。



「あんた達も鬼におわれていたのか?」



ワク君が聞きました。



グループは男が2人,女が2人の4人で構成されており,

それぞれ,雄太,黒山,メイ,サエと名乗りました。



黒山は20代前半,雄太はまだ中学生くらいの少年でした。

メイとサエは幼馴染で小学4年生でした。



黒山「ええ,先ほどまで鬼に追われていました。

しかし,鬼をやっつけることができるなんてすごいね!

俺たちもさっきまで鬼に追われていて仲間が一人捕まってしまったんだよ。」



「そうなんだ。オイラたちと同じだね。

だから今からその仲間を助けに行くんだよ。」




トシ君が状況を説明しました。



雄太「それなら,俺たちも一緒に連れて行って

もらえませんか?俺たちも仲間を助けたいんです。」



宮川「そうですね,それがいい。そちらのリーダーは,

えっと・・・黒山君でよかったのかな?」



黒山氏は首を横に振り,



黒山「彼が,このグループのリーダーだ。」



と言って,雄太の肩に手をやりました。





<雄太>

雄太「あ,えっと,一応そういうことに

なっていますけど,全然何もできていないんで・・・。」

メイ「何,言ってんのよ!雄太お兄ちゃんが

いなかったら,今頃,私たちは全滅していたよ!」



メイという可愛らしい女の子が言いました。



サエ「そうだよ!このグループの

リーダーはゆう兄しかいないよ!」



もう一人の女の子も同様に雄太君の

ことをほめちぎりました。



黒山「年長の自分が情けないっていうのも

あるんですが,雄太君には本当に助かっています。」



黒山氏は苦笑いしながらそう言いました。



このメンバーたちと仲間が捕まっている牢屋を目指すことになりました。



第276話 バトルヤバイヤロ3限目 8

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。

また本作はグロテスクなシーンを含みます。ご注意ください。




つい先ほど,仲間を同じように捕らえられてしまった

雄太,黒山,メイ,サエの4人グループと合流しました。



彼らとともに牢屋を目指します。



次の処刑まで,残された時間はあと5分ほどです。



ワク君たちはなるべく運動場の隅を通りながら,

少しずつ校舎前に設置された牢屋へ近づいていました。



牢屋の大きさは,教室1つ分ほどの広さで,

天井には例の殺人ビームが目を光らせていました。



牢屋から100mほどまで近づいたところで,

花壇の裏に隠れ,様子を伺うことにしました。



鬼はカギのかかった入り口に一体,

その周辺を警備している鬼が2体いました。



リサ「全部で鬼は3体かー・・・。ワク君,

どうやって真木さんを助けるつもり?」



ワク君は目をつぶって何かを考えています。



黒山「みんなでわざと捕まりに行って,鬼が一時的に

姿を消した隙に鍵を開けるっていうのはどう?」



<黒山>

優香「なるほど。それは名案かもしれませんわね。」



その時,別のグループが牢屋に近づいていくのが見えました。

どうやら黒山氏と同じアイデアを実行しようとしているようです。



3人が牢屋に近づき,鬼が彼らを発見しました。



サエ「これってチャンスなんじゃない?

あの人たちに便乗してアタシたちも行きましょ!」



しかし,雄太がもう少し様子を

見ようといい,ワク君もそれに同意しました。



鬼はさきほどの3人にものすごい速度近づくと,

有無を言わさず,彼らの頭をかみ砕きました。



鬼には口がないと思われていましたが,

実は強力な牙を持った大きな口を隠していたのです。



3人はあっという間に絶命し,鍵を持っていた

残りの一人はその場から死に物狂いで去っていきました。



「牢屋に近づくものは容赦なく殺しに来るのか・・・。」



リサ「あぶなー・・・。もし今の作戦を実行していたら,

死んでたのはアタシたちだったねー・・・。」



リサちゃんは胸をなでおろしました。



残酷なシーンを見ても

特に気にしていない様子でした。



小学生のサエとメイはさすがにショックを受けて

いるらしく,震えながら雄太に身を寄せていました。



「優香さん,次の処刑までの

残り時間はわかりますか?」




優香「はい,わかります。あと3分と20秒です。」



優香さんが時計を見ながら答えました。



「トシ,お前ならあの鬼を食い止めることくらいできるよな?」

「ええ!?ああ・・・。おお・・・,やってやんよ!?」



少し動揺しながらもやれるといいました。



「手前の鬼を1体だけでいいから止めてくれ。

もう1体はボールで俺がやっつける。

手元に戻ったボールでさらに奥の扉の前の鬼をやる。

救出した後に,足止めした鬼をやっつけてやる。」




宮川「いくらなんでもそれは無茶では・・・。」



宮川氏が怪訝な顔をしました。



「こいつはな,頭は空っぽだが,

体力と運だけはある。こいつに任せておけば大丈夫だ。」




ワク君はトシ君のことを少しずつ

認めるようになってきました。



雄太「まってくれ,俺も足止めに参加

させてほしい。少しでも役に立ちたいんだ。」



「でも大丈夫なの?何が起きても責任はとれないよ?」



ワク君は少し心配をしましたが,止めても無駄だと

感じたのか,それ以上何も言いませんでした。



残り時間は1分を切っていました。



「行くぞー!」



3人は隠れていた花壇の裏から

勢いよく飛び出して敷きました。



鬼はその声を聞き逃しませんでした。



手前の2体がものすごい速さで

ワク君たちに向かってきました。



果たして救出作戦は成功するのでしょうか。





第277話~第280話

2019/7/6

第277話 新しいポイントを発見しよう
*ワクのわくわく冒険記は今秋~冬に連載再開予定です。今週よりリクの少年昆虫記を掲載致します。





*このイラストは本編とは関係ありません



少年昆虫団はいつもの緑地公園に来ていました。



時間は夜の8時過ぎです。



レオンさんは仕事が忙しいようで来ていませんでした。



「なんか,今日はいつもにまして,やる気がでんなー・・・。」



イツキ君が公園前のトイレでぶつぶつと呟いていました。



「フーッ,すっきり」

「やぁ,お待たせ。さぁ行こうか。」



リク君とトシ君がトイレからでてきました。



「今日はどこのポイントへ行くの?

リク君が最初にカブクワを採集したあの樹?」




まさらちゃんが聞きました。



「いや,今日は新しいポイントを開拓しようと思う。」

「そうはいっても,この公園はすでに

開拓しきっているんじゃないですか?」




だぬちゃんがもっともなことを言いました。



この緑地公園はリク君がもっと小さいころから通っているので

どの樹にカブクワが集まるかはほぼ把握しているのです。



「じゃあ,あまり意味ないねー。帰ろー!

オイラはなんか色々と死にそうな目にあったりして疲れているんだよね。」


「何を意味不明なことを言っているんですか。

まるで別の世界でデスゲームでもやってきたようないいぶりですね。」




言い得て妙でしたがトシ君は何も言い返しませんでした。



とりあえず,公園内のハイキングコースを

道沿いに歩いてみることにしました。



数十メートルおきに設置してある街灯もチェックします。

カブクワは明るい光に集まる習性があるからです。



この習性を利用した灯下採集という採集方法もあります。



「なんか,蛾ばっかりだねー・・・。」

「そうだね。でもこのオオミズアオは結構人気のある蛾なんだよ。」



それは薄いグリーンがかかった羽をもつ大きな蛾でした。



「いやぁ・・・無理だなー・・・。

これは蛾だよ・・・。無理だ・・・。」




トシ君は蛾を触ることはとてもできないようでした。



「まぁ,確かに綺麗といえば綺麗ですけどねー・・・。」



さらに,奥まで歩き続けます。



時々,カブクワが好きなクヌギやコナラの木を

見つけますが,なかなかカブクワは見つかりません。



やはり樹液が出ていないと集まってこないようです。



「まぁ,このあたりはちょっと前にも見に来たもんな。

でも樹液は出てなかったし,いなくても仕方ないか。」




緑地公園内には大きな池があります。



その池までやってきました。



「池まで来たんですね。ここにはカブクワはいませんね。」

「でも,ホタルならいるかな?」



まさらちゃんはまたホタルが見たいようです。



「うーん・・・。ホタルはきれいな

水がないと存在できないからね。この汚い池では無理だ・・・。」




まさらちゃんはそれを聞いてちょっと残念そうにしていました。

結局,新しい採集ポイントは発見できませんでした。



そこで,リク君が“0(ゼロ)ポイント”と

呼んでいるクヌギの木に行くことにしました。



「お,いるいるー!メスが2匹にオスも3匹,

あ,上の方にももう1匹オスがいるよー!」




リク君のテンションがあがってきました。



「最初からここに来ればよかったな,ってハナシだな。」

「いやいや,色々なところを探しながら

歩きまわるのが昆虫採集の醍醐味の一つだよ!」




どこか一つはカブクワが集まる樹を見つけておくと

イザという時に役に立つというお話でした。



第278話 お店に貢献!?ランキングポスターを作ろう!<前編>
伊藤店長が経営するカブクワキングは

カブクワ専門の昆虫ショップです。



アルバイトの女子大生まりんちゃんとイケメンの

灰庭さんが店のお手伝いをしています。



少年昆虫団はこのカブクワキングへ遊びに来ていました。



店長「遊びに来るのはいいんだけどよ~,なんか買っていってくれよ!」







「いや~,ちょっと手持ちが少なくてさ・・・。」



リク君は申し訳なさそうに照れ笑いをしていました。



灰庭「やぁ,みんな。あれ,今日はあのレオンさんって人は一緒じゃないんだね。」







「うん,そうなの。

誘ったんだけど大学のゼミが忙しいみたいで・・・。」




まさらちゃんは灰庭さんとお話をする時は

常に嬉しそうにしています。



「(まぁ,ぶっちゃけ大学院は身分を隠す

ためだから研究はカモフラージュで組織への捜査で忙しいんだろうな。

“菊”の人たちも色々と大変そうだし・・・。)」




まりん「でも,せっかく来てくれたんだからゆっくりと見ていってね!」



まりんちゃんが店の奥からやってきました。



「いや~,あんまりゆっくり

みたいもんじゃないなぁ・・・。」




まりん「トシ君は相変わらず虫が苦手なんだね。」



そう言ってフフッと笑う笑顔が素敵でした。



「よし,何もしないで帰るのも

申し訳ないんで,店の売り上げに貢献するよ!」




店長「お!?なんか買ってくれるのかい!?」



店長の表情が明るくなりました。



「だから,お金が無いっていってるじゃない!

僕が買うんじゃなくて他の人がカブクワについてもっと

興味を持ってもらえるようにランキング形式のポスターを作ってあげるよ!」




まりん「なるほど!それをお店に貼っておけばいいのね!」



その様子を灰庭さんは笑顔で見ていました。



「なんか,楽しそうですね。どんなランキングにするんですか?」

「今回は世界の美しいクワガタランキングにしてみよう!」



リク君はさっそくデジカメで店内のクワガタの写真を撮影し,現像しました。

その写真を元にあっという間にランキングポスターを作り上げてしまいました。



「できたー!じゃあ,発表するよー!」



リク君はとても満足げな顔をしていました。

イツキ君は半分呆れた顔でその様子を眺めていました。



「第5位!タランドゥスツヤオオクワガタ!

このツヤとカッコよさは素晴らしい!」








このタランドゥスツヤオオクワガタは

アフリカに住む最大のクワガタとされています。



体長は大きいもので90ミリ越えの個体も存在するそうです。

カブクワキングでも仕入れていますが,結構なお値段がします。



「えっと・・・。ちなみにどんな基準で選んでいるの?」



と,トシ君が聞きました。



「それはもちろん僕の独断と偏見によって

決めています!美しさだけではなくカッコよさも大事!」




続いて4位以下の発表です。



「4位はキンイロクワガタ!パプワキンイロクワガタと言って,

メスのほうが光沢が強く,色のバリエーションも多いのが特徴だよ!

さぁ,次はいよいよ3位以下の発表だ!」






「なんか,楽しくなってきたかも!」



まさらちゃんがちょっとウキウキしています。



果たして上位3種類はどんなクワガタが選ばれるんでしょうか。

第279話 お店に貢献!?ランキングポスターを作ろう!<後編>
リク君はカブクワキングのお店に貢献するために,クワガタムシの

ランキングポスターを作ってあげることにしました。



ここまで,5位はタランドゥスツヤオオクワガタ,

4位はパプワキンイロクワガタでした。



いよいよ,3位の発表です。



「3位はニジイロクワガタ!」





「えー,てっきりニジイロクワガタが

1位だと思っていたよー!」




まさらちゃんもだいぶクワガタの

ことに詳しくなっていました。



「ニジイロはどうしてもカッコよさがねー・・・。

まぁ,あくまで僕の個人的な視点なので・・・。」




そして2位は・・・。



「2位は,メタリフェルホソアカクワガタ!

とにかくでかくて美しい!」








「なんか有名なクワガタが

結構出てしまって,一位は想像がつきませんね・・・。」




栄えある1位は・・・。



「1位は・・・・!これだー!」



それは・・・。



「国産オオクワガター!」





「えー!?」



一同は大きな疑問を投げかけました。



「やっぱり,この漆黒のツヤ,大きさ,

スタイル,どれをとっても世界のクワガタに引けを

取らない最高に美しいクワガタと思うよ!」




店長「う~む,言われてみれば・・・。そうかもしれん・・・。」



伊藤店長は少し考えこみながらも納得したみたいです。



灰庭「なるほど!さすがはリク君だ!」



灰庭さんが拍手をしながらリク君に近づいてきました。



「え?灰庭さん,どういうことですか?」



まさらちゃんはすかさず灰庭さんの

近くまでやってきて,そう聞きました。



灰庭「店の売り上げをあげるには,昨日大量に仕入れた国産オオクワが売れればいい。

だから君はあえてランキングポスターの1位に国産オオクワを使い,

店の売り上げに貢献しようとしてくれたんだろ。」



「なははは,嫌だな~!そんなわけないでしょ!

本当に僕は国産オオクワが一番,美しいと思っているだけだよ!」




伊藤店長はそのさっそくそのポスターを店の前に掲示しました。



店長「まぁ,俺としては売れてくれればなんでもいいさ!

ありがとうな,リク君!じゃあ,ケントは奥で仕事を続けてくれ!」

店長に言われ,灰庭さんは奥に入っていきました。



「・・・。」



イツキ君がリク君の近くにやってきました。



「なぁ,あの灰庭さんが“闇組織JF”の

幹部である“グレイ”だと思うか?」


「わからない。でも,僕の考えをあっさりと見破いてきた。

昆虫に詳しいだけじゃなく,かなりのキレ者なのは確かだと思う。」




二人が真剣に悩んでいると,



「どうしたの?伊藤店長がお礼に

アイスをくれるみたいだから,奥の部屋で食べようよ!」




と,トシ君が話しかけてきたので,



「わかった,わかった。今,大事な話を

しているんだ。後で行くから先に食べてなよ。」




イツキ君はトシ君を適当にあしらうと,話を続けました。

トシ君はブツクサいいながら奥に入っていきました。



「もう少し,様子をみるしかないか・・・。

この後,レオンさんに会う予定もあるし,

レオンさんの考えも聞いてみるよ。」


「そうだね。」



ちなみに,このポスター掲示後,オオクワやランキング上位の

クワガタが爆売れし,店の売り上げに大きく貢献できたそうです。



第280話 新・昆虫クイズ対決!<前編>
少年昆虫団とスナぴょん団が中野木図書館の

フリースペースで対峙していました。



スナぴょん団とはリク君たちのライバルで,リーダーのスナ君,

沈着冷静なサラ君,紅一点のオジョーちゃん,トシ君以上にデカイ体のジャイ君,

おとぼけ役のタコ君の5人から成り立っています。







少なくとも彼らは少年昆虫団の

ことをライバルだと思っています。



なので,町のどこかで出会えば必ずと

言っていいほど,勝負を持ちかけます。



今回は,ヴィートという妄想対決ではなく,

昆虫に関するクイズで勝負をするようです。



フリースペースに置かれた机に

お互いが向き合って座っていました。



スナ「さて,今日も俺たちが勝たせてもらうぜ。」



「ああ,どうぞ,どうぞ・・・。」



いつものようにすでにやる気がありませんでした。



「そんなにむげに扱うとかわいそうですよ。」



だぬちゃんがそっとフォローしました。



以前,クイズ対決はやっているのであまり新鮮味もなく,

少年昆虫団は無理やり付き合わされた対決にうんざりとしてました。



サラ「では,ルールを説明させていただきます。以前はお互いにクイズを出し合っていましたが,

今回はこの昆虫クイズ完全大百科という本から出題することにしましょう。

出題者は目をつぶって本を開き,そのページに書かれた問題を読みます。」



「なるほど。それなら昆虫に詳しくない

俺でも難しい問題を出せるかもしれないな。」




サラ「そういうことです。さらにこの本には

難易度も書かれています。難易度によって

得られるポイントが変わります。」



サラ君の説明を要約すると,各チーム一人ずつ交互にクイズ本から問題を出す。

解答は30秒以内に答えなければ不正解となる。



また,解答権は一度だけで,いい直しもできない。

正解するとポイントが解答者チームに入る。



ポイントは難易度低が1点,難易度中が3点,難易度高が5点となる。

最後の5人目が終わった時点で累計のポイントが多いチームが勝ちとなる。



ただし,問題を出題する前に難易度を発表しなければならない。



そして,問題の難易度が気にいらなければ

一度だけ問題を変えることができる。



問題発表後の変更はできない。



対決は以下のようになりました。



まさらVS サラ

トシ VS オジョー

だぬ VS ジャイ

イツキ VS タコ

リクVS スナ



一回戦 まさら VS サラ



「よし,わたしから問題を出すよ!」



まさらちゃんは目をつぶって本の

ページをパラパラとめくり,指を止めました。



「えっと・・・。難易度は中だよ。変更する?」



サラ「いえ,結構。そのまま問題をお願いします。」



サラ君は問題の変更を行いませんでした。



「どんな問題が出るんだろ・・・。」

「問題,日本最大の甲虫の名前はなんでしょう。」



まさらちゃんが問題を読むや否や,



サラ「ヤンバルテナガコガネ!」







と,即答しました。



「正解・・・!」



スナぴょん団に3点が入りました。

続いて,サラ君が問題を出します。難易度は低です。



サラ「トンボの成虫は主に何を食べでしょうか。」



「えっと,たしかリク君に聞いたことがあるよ。

他の昆虫でしょ!蚊みたいな小さな虫!」




まさらちゃんも正解し,

1点を獲得しました。



次は2回戦です。





第281話~第284話

2019/7/28

第281話 新・昆虫クイズ対決!<後編>
昆虫クイズ対決の2回戦は

トシ VS オジョーでした。



オジョーは難易度低の問題を

楽々と正解し1点を獲得します。



一方トシ君は難易度高の問題を提案されました。



「おい,無理せずにチェンジしろ!」

「いやいや,オイラだって昆虫のことは

そこそこ詳しくなっているよ。

ここは難易度高で勝負して一気に逆転するよ!」




少年昆虫団側から大きなため息がもれました。



オジョー「あらら,まったく信用がないのね。

かわいそうなトシ君。それじゃあ問題を出すね。」



オジョーちゃんは問題を読み始めました。



オジョー「2017年イグノーベル賞に選ばれた

虫の名前の由来となった書物はなんでしょうか?」



「え・・・?本の名前?オイラが

知っている本は人生のバイブルで

あるNARUTOだけなんだけど・・・。」




オジョーちゃんはあきれていました。



そして,トシ君は不正解のため,

ポイントを獲得できませんでした。



「やっぱりな・・・。」



続いて3回戦はだぬ VS ジャイです。



だぬちゃんは難易度低の問題を答えることになりました。



問題は,「チョウチョの羽についている

粉の名前はなんでしょう」という内容でした。



「ハハハ,楽勝ですよ!リンプンです!」



見事に正解して1点を獲得しました。



ジャイちゃんは難易度高の問題に

挑戦しましたが,不正解に終わりました。



「(こんな問題,自分だって答えられませんよ・・・。)」



ここまでの点数は少年昆虫団が2点,スナぴょん団が

4点でスナぴょん団がリードしていました。



4回戦はイツキ VS タコ



イツキ君は難易度高の問題に

挑戦することになりました。



タコ「ヨモギヒメナガアブラムシの繁殖の特徴を答えなさい。」



「はぁ・・・?なんだ

それ・・・。全然わからん・・・。」




タコはニヤニヤしながら

イツキ君が悩んでいる姿を見ていました。



「よし,こうなったら勘だ。

メスだけでも増えるんじゃないか?昆虫ならそれもできそうだ。」




イツキ君は自分の知識を総動員させて答えました。



タコ「ぐぬぬ・・・。なんと・・・正解・・・!」



「おお,勘で正解とはすごいですね。」



だぬちゃんは感心していました。



そして,タコ君は同じように難易度高に

挑戦しましたが,正解することができませんでした。



これでポイントは少年昆虫団が4点,

スナぴょん団も4点となりました。



「じゃあ,これで勝負が

決まるんだな。じゃあ僕から問題を出すよ。」




スナ「ハハハハ,俺に答えられない

問題なんてないぜ!」



スナ君は自信満々でした。

彼は難易度高の問題に挑みます。



「問題。トノサマバッタの

別名を答えなさい。」




スナ「ほほう。なかなかいい問題だな。

しかし,俺様にとっては簡単だよ!答えは,“アバドン”だ!」







果たしてスナ君の答えは正解なのでしょうか。



「正解だ・・・。トノサマバッタなどが大量発生して害を出す様子を

ヨハネの黙示録に登場する闇の王にたとえた名前がアバドンらしい・・・。」




リク君は解説に書かれたページを読みました。



スナ君が提示してきた問題は難易度低でした。

このままでは負けてしまうので

リク君は問題の変更を宣言しました。



スナ「では,引き直すぞ・・・。問題の

難易度は・・・。やっぱり難易度低だ!」



「えーっ,それじゃあもう

私たちの負けが決定じゃないー!?」




まさらちゃんが抗議しました。



サラ「仕方ありませんよ。それがルールですから。」



サラ君が冷静に答えました。



スナ「仕方がない。俺がチャンスをやるよ。

今から答えるこの問題に答えられたら少年昆虫団の勝ちでいい!」



どうやらスナ君はとんでもない

難しい問題を出してくるつもりです。



「わかった。それでいいよ。

このまま負けるのもなんか悔しいしね。」




スナ「ことわざにある“オケラの七つ芸”

とはどんな意味か答えよ!」



スナ君の出した問題に,リク君は,



「ああ,“器用貧乏”

って意味だろ。そんなの常識だよ。」




あっさりと正解してしまいました。



スナ「あれー?なんでわかるの!?国語に絡めた

問題なら絶対にわからないと思ったのに・・・。」



オジョー「スナ君!油断するから負けるんだよー!?

あのままなら勝っていたのに!?」



スナ君は仲間から色々と言われてしまいました。



スナ「まぁ,今回は引き分けって

いうことで勘弁してやろう!」



「さっきと言っていることが違う・・・。」



こうして彼らとの対決は痛み分けに終わりましたとさ。



第282話 悪路の中の昆虫採集
時間は夜の9時半。



場所は各務原山の中腹。



天候は大雨。



少年昆虫団は必死に下山を続けていました。



「もういやだよー・・・。走れない・・・。」



トシ君はくたくたになっていました。



「トシ君,がんばれ!」



みんなはずぶ濡れになっていました。

豪雨の影響で視界も悪く,少しでも道を

外れてしまったら出られそうにもありませんでした。



「なんで,こんなことになっちゃったのー!?」



まさらちゃんは半分泣いていました。



「天気予報では晴れのはずだったんだけど・・・。

いわゆるゲリラ豪雨っていうやつだよ・・・。」




リク君はみんなを巻き込んでしまい

申し訳なさそうにしていました。



すると,雷が鳴り始めました。



ゴロゴゴロゴロ・・・・。



「おい,やばいじゃないか。

雷までなり始めたぞ。」




まるでフラッシュのように

一瞬だけ明るく光りました。



ピカッ!!



その直後,ピシャア!!!と

大きな音がしました。



どうやら近くで落雷があったようです。



「こりゃあ,今日の

昆虫採集は中止だな。」


「当り前じゃないですか!?

雷が鳴っているんですよ!?」




トシ君はたまらず近くのスギの木の

下に隠れようとしました。



「だめだ!死ぬぞ!?」



リク君は大声でトシ君を制止しました。



「え,なんでさ!?これ以上濡れたらカゼをひいちゃうし,

雷の直撃をさけるために木の下に隠れたほうが安全でしょ!」


「雷が鳴っている時に木の下に

隠れることは逆に危ないんだ!今の状況みたいにどうしても

移動ができない時はイツキ君みたいにすればいいんだよ!」




リク君はイツキ君を指さしました。



彼は木の幹から4m以上離れ,木のてっぺんから

45度の位置にさらに木の枝から2m以上離れた位置で

雷しゃがみといわれる体勢をとっていました。





これは頭を下に下げ,両手で耳を防ぎ,両足の

かかとを合わせ,つま先だけでしゃがむ体勢のことです。



こうすることで万が一地面から雷の電気が

流れてきても体に流れないようにします。



「木っていうのは落雷しやすいものだからな。

木の真下にいるのが一番危険なんだよ。

本当は建物の中に避難できれば一番いいんだけどな・・・。」




みんなもイツキ君の真似をして頭をかがめました。



「怖いよぉ・・・。いつに

なったら止むのかな・・・。」




まさらちゃんは不安で仕方ありませんでした。



「大丈夫だよ。もうちょっとだから・・・。」



みんなは服も体もベショベショになりながら,

雷雨が過ぎるのを耐え続けました。



そして,だんだんと雷の音が小さくなってきました。



「なんか,雨も弱くなってきましたね。」



雨も止んできました。



「よし,今のうちにゆっくりと

滑らないように気を付けながら下山をしよう!」


「あいよー!」



こうして少年昆虫団はなんとか死に物

狂いで下山することができました。



万が一,昆虫採集をしている時に,雷雨に遭遇して

しまったら命を第一優先に,正しい避難を心がけましょう。



第283話  森は生きている
旭森林公園はとても大きな公園で,面積が1870k㎡もあり,

たくさんのクヌギ林が存在するので多くの

人たちがカブクワ採集にやってきます。



もちろん少年昆虫団も例外ではありません。

今日はレオンさんの車でやってきました。



「この前もここに来たよね。

たしか,“闇組織JF”の山犬の連中と

初めて出会った場所だって言っていたよね。」




レオンさんは駐車場を降りる時,

そんなことを話題にしました。



「うん,そうだったね。今,思えば彼らは

ここで漆黒の金剛石がいるか確認をしていたんだね。」


「ああ,特殊な薬物をカブト虫に注入し,

反応が出るか試していたんだろう。

一定の範囲内で調査に必要な数だけ薬物を投与し,

反応が出なければ違う場所で同じことをいしていたんだな。」




イツキ君も会話に参加してきました。



みんなは車を降りると,すぐに

ハイキングコースへ向かいました。



「結局,もう組織は漆黒の金剛石を

見つけたのかな?レオンさんの仲間が

組織に潜入しているんでしょ?何か聞いていないの?」


「うーむ・・・。どうなんだろうね。

まぁ,重要な報告があれば,別の機会にまとめて話すよ。」




なんだか話をはぐらかされたしまった

ようですが,リク君はあまり深く追求しませんでした。



「あれ,こんなところに

カブクワの仕掛けがあるよ。」




まさらちゃんは木にネットに果物を入れて

吊るしてある仕掛けを発見しました。





しかし,それは昨日今日仕掛けられたものではなく,

何週間も経過しているようで非常に臭いにおいを放っていました。



「きっとマナーの悪い人が

そのままにしていったんですね。」




だぬちゃんが言うことにみんなは

「きっとそうなんだろうな。」と思いました。



さらに奥に進むと木の皮が

はがされた状態のクヌギを見つけました。



「これは誰かが無理やり木の皮を

はがしてクワガタを捕まえようとしたんだな。」




このように中にはマナーを

守って採集をしない人たちがいます。



トシ君が何かに気づいたようです。



「ねぇねぇ,なんか煙の臭いがしない・・・?」



みんなはその煙の出所を探してみると,

4人の若者が集めた枯れ枝に火をつけて,木をあぶっていました。



どうやら煙を使ってカブクワを

あぶりだす採集を行っているようでした。



「お前たち,何をやっているんだ!

ここは火気厳禁だし,そんなことをやらなくても

カブクワは採集できるだろう!」




リク君が間髪入れずに,彼らに対して怒鳴りました。



マナー違反1「ああ,なんだ,このガキ・・・。それに

おっさんが一人か・・・。俺たちが

どんな方法で何をしようと勝手だろうが。」



「なんか前にも同じようなことがあった気が・・・。」

「一応,忠告をしておくと,君たちの

やっていることは法律違反だ。すぐにやめることをお勧めする。」




レオンさんが前に出てきて言いました。



マナー違反2「知るかよ!この方法が一番効率がいいんだよ!

カブクワはネットで売ればそこそこ金になるしな!」



「マナーの悪い人たちって嫌い!」



まさらちゃんがレオンさんの後ろに

隠れたまま,そうつぶやきました。



マナー違反3「なんだよ。文句があるのか!?

痛い目に会いたくなかったらさっさと消えろ!」



「もしいやだと言ったら?」



マナー違反4「こうなるんだよ!」



木の荒いマナー違反の若者の一人が

レオンさんに殴りかかりました。



「(間合いも考えずに飛び込んで

きてどうすつもりだ。それに腕をそんなに

大げさに振りかぶったら隙だらけじゃないか。

どうやらケンカは素人か・・・。)」




次の瞬間,彼はその場にうずくまりました。

レオンさんが軽く反撃しただけで気を失ってしまいました。



マナー違反4「うごぉぉ・・・。ガハッ・・・。」



ほかの三人は何が起こったのか理解できていないようでした。



マナー違反3「てめぇ!何してんだよ!!」



今度は3人が同時に近づいてきました。



リク君はすかさず背中に背負って

いた捕虫網を1本取り出しました。



「マナーを守れない人たちはお仕置きだ!」



リク君は捕虫網を自在に回転させ,体を切り刻み,

マナーの悪い若者を一人やっつけました。



それを見た残りの二人はそそくさと逃げていきました。



残りの二人も意識を取り戻すと,

死に物狂いでその場から離れていきました。



「まったく,馬鹿な奴らだ。

レオンさんの忠告を素直に聞けば良いのによ。」


「まぁまぁ。でも君たちもマナーを

守って昆虫採集をするように気を付けるんだよ。」




レオンさんがそう言うと,



「僕たちは大丈夫だよ。森は生きているんだし,

大事な存在なんだ。そんなマナー違反なんてしないよ。」


「あ,でもあそこでトシ君が

立ちションしてますよ・・・!」




ジョボボボボ・・・・



「はぁぁぁ・・・。ずっと

我慢していたんだぁ・・・。」




トシ君は木の幹で大量のおしっこをしていました。



「レオンさん,あいつだけ置いて帰ろうぜ・・・。」

「・・・。」



森は生きています。



マナーを守って楽しく昆虫採集をしましょう。



第284話  稲川淳姫の怪談6
稲川「待ちに待った,稲川淳姫の怪談噺。

今回はどんな怖~いお話か,興味があるよね。」



体育館に集められた児童は,半分呆れかえっていましたが,

中には怖い話を楽しみにしている子もいるようでした。



「この前も言ったが,絶対にあのセンセー,

問題教師として世間から吊るしあげられるぞ・・・。」




稲川「それでは,始まり,始まり・・・。」



とある大学の登山部がまだ雪解け

間もないX山に登ることにしました。



登山部は男性で構成され,準備を

万端に整え,山のふもとまでやってきました。



この山に入るには入山料が必要だったので入口の受付で

代表のAがまとめて支払うことにしました。



入山料は一人550円となっていました。



受付「それじゃあ,入山料をいただきます。」



Aは3千円を渡し,おつりを受け取りました。



A「それじゃあ,山頂まで気を引き締めて登って行こう。

この時期はまだ結構,雪が残っているから気をつけよう。」

B「おう,Aこそ滑るんじゃないぞ。」



ムードメーカーのBがそう言いました。



一行は順調に登山ルートを進んで行きました。

しばらくすると,山の中腹に休憩小屋がありました。



ここが最後の休憩場所で,この先は山頂までなにもありません。



休憩場所へ立ち寄り,体を休めていると,

施設のオーナーが串団子を皿に乗せて提供してくれました。



C「へぇ,こんなサービスして

くれるんですね。ありがとうございます。」



礼儀正しいCは深々とお辞儀をしました。

皿には団子が5本ありました。



D「これって,全部食べていいんですよね。」



串団子をぺろりと食べ,お腹もふくれた

ところで,再び出発することにしました。



しかし,この後,彼らに試練が待ち受けます。



登山ルートから外れてしまい,遭難してしまったのです。

すでに太陽は沈み,気温もかなり下がってきました。



雪は降っていないとはいえ,

このままでは確実に凍死してしまいます。



A「まずいな・・・。なんとか,先ほどの

休憩小屋まで戻れるといいんだが・・・。」

B「おい,あそこに見える小屋って

さっきの休憩小屋じゃないか!?」



しかし,よく見るとその小屋は先ほどの

休憩小屋ではなく,ただのコテージでした。



この際,暖をとるためならそこでも

構わないということになり,お邪魔することにしました。



電気は通っていなかったので真っ暗な中,

一つの部屋の中心に固まって寒さをしのごうとしました。



C「でも,この寒さの中,寝たら確実に凍死しちゃいますね・・・。」



そこでリーダーのAが凍死しないためのある方法を提案しました。



それは,4人が部屋の角に立ち,最初の合図で一人が隣の角まで走ります。

その一人が角に立っている人にタッチします。



タッチされた方は同じように隣の角まで走ります。



これを右回りで繰り返していけば,眠らずにすむというわけです。



B「面白そうじゃないか。さっそくやってみようぜ。」



こうして,真っ暗な闇の中で,一晩中,

部屋の中をぐるぐると走り回りました。



次の朝,救助隊が駆け付け,彼らは大病院で

検査入院することになりました。



入院した部屋は5人ベッドの多部屋でした。



みんなは一気に疲労が出て,

その日の夜まで眠ってしまいました。



目を覚ましたのは夜中の12時過ぎでした。

誰とともなく,昨日の事を語り出しました。



D「なんとか,助かってよかったですね。

Aさんのアイデアのおかですよ!」

A「そうだろ~。」



しかし,Cは下を向きうつむいた

ままで顔色が良くありませんでした。



B「どうしたんだ,せっかく助かったのによ!?」

C「あの,ちょっと気になることがあるんです・・・。

昨日の夜,僕たちって部屋の中をずっと回っていましたよね。」



全員がCに注目しました。



C「あれって,ここにいる4人じゃできないですよね・・・。」



全員が凍りつきました。



確かに,4人では1周した時点で

部屋の角には誰もいないので終わってしまいます。



しかし,彼らはずっと一晩中回り続けていたのです・・・。



D「ずっと気になっていたんですけど,どうして僕たちって

5人部屋に案内されたんですかね?

あそこのベッドってずっと空いたままですよね・・・。」



B「よく考えたら,なんで休憩所で

団子を5人分出されたんだ・・・?」



しばしの沈黙が流れました・・・。



A「そういえば,入山料も一人550円で4人分なら2200円なのに,

確かあの時,2750円取られていたな・・・。

おつりをよく確認しなかった自分が悪いんだが・・・。」



もう一度,空いたはずのベッドを見ました。



なんとベッドに横たわっている人影が見えました。



C「ヒィッ!?だっ誰かいますよ・・・!?」



その人影はベッドからすっと下に落ち,

床を張ってゆっくりとこちらへ向かってきます。



ヒタ・・ヒタ・・・ヒタ・・・



うぁぁぁぁぁぁ・・・。



病院には大きな悲鳴が響き渡りました・・・。



第285話~第288話

2019/8/26

第285話 見上げてごらん夜空の星を
本日は,星空が綺麗なことで有名な道の駅に来ていました。



どうやら昆虫採集が終わり,時間に余裕があったので

レオンさんの車で連れて行ってもらったようです。



車から降り,真上を見上げるとそこはあたり一面が星空で,

その美しさは都会のそれとは比較になりませんでした。





「すごいな・・・。

空に吸い込まれそうだ。」




イツキ君がそう言えば,まさらちゃんは,



「本当に素敵。まるで

宝石が散らばっているみたい。」




と感想をもらします。



一方のトシ君は,



「流れ星来ないかなー。来たら,富,名声,力,

この世の全てを手に入れたいと願うのになー。」


「どこの世界の海賊王ですか・・・。」



リク君は天体にも詳しかったので

みんなに解説をしてくれました。



「あそこに見える明るい星がこと座のベガだよ。」



ほぼ真上に近い星を指差して説明しました。



「そこから少し北東にある星がはくちょう座のデネブ,

もう少し南東にある星がわし座のアルタイル。この3つを結ぶと・・・。」


「あ,知っている!夏の大三角でしょ!」



まさらちゃんが代わりに答えを言いました。



「うん,その通り。じゃあ,

あの南にある赤い星の名前はわかるかな?」




それは赤く,少し不気味に映る星でした。



「ウキキ・・・。あれは・・・。」

「あ,レオンさんは答えたらだめ!」



リク君は彼が答えようとするのを制止しました。



「答えはアンタレス。

さそり座にある星だよ。」




その後も,みんなはリク君の分かりやすい

解説を感心しながら聞いていました。



「でも,これだけ宇宙が

広いときっと宇宙人だっていそうですよね。」


「いや~,オイラは実際に

見たり聞いたり・・・。ヴォイニッチワー・・・。」




そこまでトシ君が話したところでイツキ君がさえぎって,



「どうかな?案外,この宇宙に存在する

知的生命体は人間だけかもよ。」


「実は,最近の観測で太陽系以外にも

多くの系外惑星が見つかっているんだよ。

中にはハビタブルゾーンといって,生命が存在可能な

範囲に惑星があることもわかってきている。」




系外惑星の中にはホットジュピターといって恒星の近くを回る木星クラスの星や,

エキセントリックプラネットといって,軌道がものすごく長く傾いている星,

スーパーアースと呼ばれる地球よりも質量の大きい星などが見つかっているのです。



「きっと,いるんじゃないかな。

オイラはその方がロマンがあって好きだな。」


「まぁ,確かにそうかもな。」



みんなはそれからもしばらく

寝転がりながら星を眺めていました。



その時,流れ星が流れてきました。



「お,来た!えっと・・・。」



しかし,一瞬で消えてしまいました。



「トシ君は欲が深いんですよ。

それじゃあ一生願い事なんて叶わないですよ。」




たまには夏の夜に星を眺めてみるのもいいですね。



第286話 プロローグ

 菊の華シリーズ 最終章
日本警察が闇組織JFを壊滅させるために

警視庁公安部はJF対策特別

チームとして"菊水華"を立ち上げました。



通称"菊"と呼ばれています。



JFは菊の幹部を暗殺する計画を立てているようです。

しかし,この事をレオンさん以外の菊の幹部は知りません。



そんな中,菊のメンバーである黄金原氏と

部下の羽音々氏がJFに拉致されましたが,

間一髪のところで少年昆虫団とレオンさんに救われました。



リーダーの赤神氏は事態を重く見て,黄金原氏と

羽音々氏を当分の間,署内のみの勤務としました。



ここは眠らない町,栄の一角に

あるJF専用のバー,リ・セッ・シュ。



そこに闇組織JFの幹部がカウンターで酒を飲んでいました。



真ん中に山犬のユニットリーダー山本。



そして右側に海猫のユニットリーダーの今村,

左側に藪蛇のユニットリーダーのアヤがいました。





山本「本日の作戦だが,おおむねうまくいった。

そして計画通り,南雲に下っ端の掃除をさせておいた。」

今村「南雲クンもだいぶ殺しになれてきたのですね。」



今村がウォッカを飲みながらそう言いました。



山本「ああ,この一週間で二けたの人間を殺させたからな。

多少は慣れてきたんだろう。だがまだ足りねぇな。」



山本もグラスをあおって酒を飲み干しました。



山本「これで例の計画を実行に移せる。

御前の許可はすでに出ている。

こちらが練った計画案も完成した。

あとはXデーに実行するだけだ。」



アヤ「いよいよね。闇の騎士(ダークナイト)からの報告だと一応,

“菊”も警戒は続けているみたいだけど,まだ表立った動きはないわ。」



藪蛇は諜報活動を主な任務としているユニットです。

菊の中にJFのスパイを潜り込ませて情報を搾取していました。



そのコードネームが闇の騎士(ダークナイト)でした。



今村「それよりもこちらのスパイが潜入していることは

菊には感づかれてはいませんか?それが心配です。」



今村はフォッフォッと笑いながらアヤに聞きました。



アヤ「それは大丈夫だと思うわ。あの子は完璧主義者だから

きっとヘマはしない。ただ,ちょっと気になるのは・・・。」



アヤは一回ため息をついてから,



アヤ「貴方が昨日言っていた

平成のファーヴルっていう子供のこと。」



子供という言葉に山本が反応しました。



山本「どうかしたのか?」



現実には令和に元号が変わりましたが,この世界では

いまだに平成時代が続いているという設定です。



アヤ「なんか,とてつもない強さらしいっていう報告が上がってきたわ。

アタシは何かの間違いじゃないのって言っておいたんだけどね。」



今村「フォッ~フォッ~!おそらく間違いではないでしょう。

彼は相当な実力者だと思います。実は大西(グレイ)君からも

同じような報告があったんですよ。これは面白くなってきましたね。」



今村は顔がにやけていました。



アヤ「本当に我々の脅威になりうるっていうの?

そんな馬鹿な!信じられないわ。」



アヤはそう言われても半信半疑のようでした。



今村「そうそう,昨日の会議でもお伝えしましたが

今回の暗殺計画は山犬に譲りますからね。」



山本「最初は抜けがけをするなと言ったり

急に譲ると言ったり,どういうつもりだ。」

(菊の華シリーズ第二章 プロローグ参照)

山本は今村を睨みつけました。



今村「いやいや,何も変なことは企んでいませんよ。

ただ,すでにあの各務原山で東條君は

"漆黒の金剛石"を再発見しました。

今度は山犬が手柄を立てる番じゃないですかね。」



山本は黙ったままです。



今村「それにこのことは東條君の

了承もいただいています。

どうやら彼は御前から別件で

動くように指示が出てるようですし。」



なんと,すでに漆黒の金剛石は東條と呼ばれる

組織の幹部によって発見され,探索を終えていたようです。



リク君達はこの事実をまだ知りません。



山本「アンタに手柄を譲られるつもりはないが,

もし菊のターゲットと一緒に現れたらまとめて始末してやる。」



アヤ「あら,闇の騎士(ダークナイト)

から連絡が来たわ。ちょっと失礼。」



アヤは携帯電話を手に取りました。



闇の騎士「この後,例の計画を実行し,菊の指令系統をかく乱します。

その混乱に乗じて,ターゲットの暗殺をそちらの実行部隊の

ほうでよろしくお願いします。ちなみに担当するのは穴熊の源田さんですか?」



アヤ「ええ。兵隊の管理と指揮は源田でしょうけど,実働部隊は山犬よ。

東條クンは別件があるみたいで動けないみたい。」



闇の騎士とアヤのやりとりは数分で終わりました。



そして,その内容を二人に伝えるとアヤは店を出ていきました。

いよいよ,菊の幹部を暗殺するための作戦が動き出すようです。



第287話 突然の告白

 菊の華シリーズ 最終章
愛知県警本部の資料室にて・・・。



一度闇組織JFに命を狙われた黄金原と羽音々は当面の間,

県警本部内で仕事をすることになっていました。



そこで彼らに関する資料をここで集めていました。



羽音々「なかなか,見つからないですね。

よほど徹底して地下に潜り込んだ組織なんですね。」

黄金原「う~ん,そういうもんなのかな~。」



羽音々(はおとね)が本棚から気になった資料に手を

かけたとき,突然,上からたくさんの資料が落ちてきました。



羽音々「きゃっ。」



彼女は手で資料を防ぎ,態勢を崩してしまいました。



倒れそうになった彼女を黄金原氏が

そっと受け止めてあげました。



その時,羽音々氏の手と彼の手が触れてしまいました。

思わず彼女は頬を赤らめました。



黄金原「大丈夫かい。気を付けないと危ないよ。」



黄金原氏は倒れそうになった羽音々氏を

そっと抱きかかえてあげました。



羽音々「あ,あの・・・。その・・・。」



羽音々氏は態勢を整えて立ち上がりました。

そして髪の毛についた埃を手で払いました。



黄金原「どうしたんだい?」



それは突然の告白でした。

彼女はついその言葉を口に出してしまったのです。





羽音々「ずっと前から好きでした。先輩の一生懸命に

仕事をがんばる姿が素敵です。」



ほんの数秒間の沈黙が彼女に

とっては1時間にも思えました。



黄金原「その,ちょっと突然でびっくりしたかな。

そんな風に思われているなんて考えていなかったから。」



黄金原氏はそのあとどうしていいかわからない

感じであたふたしているように見えました。



羽音々「先輩が仕事一筋だってことはわかっています。

だから大丈夫です。私,いつまでも待っていますから。」



黄金原「あ,ありがとう。そうだ,資料を探している

途中だったよね。早くやらないと赤神さんが戻ってきた時に色々と

小言を言われちゃうからさ。さっさとやってしまおうよ。」



再び二人は仕事を始めました。

そのあとも,彼女は彼の横顔が気になって

仕事に集中できませんでした。



一方,赤神氏は捜査本部の

デスクで電話をしていました。



相手はレオンさんでした。



赤神「なるほど・・・。JFの幹部を盗聴した時に,我々の暗殺計画を

実行に移そうとしていたことを聞いたわけか。

それなら黄金原が狙われた理由も納得だ。

しかし,なぜそれをあの少年昆虫団と

引き合わせた場で言わなかったんだ。」



「すみません,なぜなら我々の中に闇組織JFのスパイが

潜り込んでいるかもしれなかったから言えなかったんです。」




レオンさんは真剣なトーンでその事実を伝えました。



赤神「まさか,そんなことがありえるのか!?

というと,幹部か準幹部の中に!?」



「以前,黄金原さんからの報告にあがっていた,闇の騎士(ダークナイト)と

いう人物が諜報活動をしているのではないかと推測しています。」




しばらくの沈黙の後,



赤神「しかし,あの時,せめて暗殺計画だけ

でも伝えてくれれば,黄金原と羽音々(はおとね)が

けがをすることもなかったんだぞ。」



電話越しにレオンさんが

謝っているのがわかりました。



「赤神さん,今の事実を他の三人の幹部に確実に

伝えてもらっていいですか。できたら,この後,すぐに。」




赤神「ああ,そうだな。にわかには信じられないが,

俺も誰がスパイなのかそれとなく探ってみるとしよう。」



レオンさんは話題を変えました。



「ところで,あの二人はどうしています?」



レオンさんは黄金原氏と羽音々さんのことを気にしていました。



赤神「ん?ああ,今日も本部内で勤務をしているよ。

外には出ていない。しかし,なんか二人ともよそよそしくてな。

若手の女性警察官が言うにはなんでも羽音々のやつ黄金原に

自分の気持ちを伝えちまって振られたんだとよ。」



「え?そうなんですか?自分たちが命を

狙われているのに何やっているんですかね・・・。」




レオンさんが聞き返しました。



赤神「はははは。若いっていうのはいいことじゃねぇか。

しかし,あんなかわいい子を振るなんて黄金原の奴,もったいねぇよなぁ~。」



「あ,この会話,昆虫団のみんなが聞いてますので・・・。」



レオンさんはオヤジ丸出しの

赤神さんに少し呆れていました。



赤神「あ?なんだ,あの子たちと一緒にいるのかよ。」



「それでは,先ほどの件と,引き続き,二人の様子を

しっかりと見ておいてください。よろしくお願いします。」




そう言って,電話を切りました。



レオンさんが盗聴した内容を全て伝えた真意とは・・・。



第288話 急展開な予感

 菊の華シリーズ 最終章
もうすぐお昼の12時になろうとしていました。



少年昆虫団はレオンさんの自宅で前回終わらなかった

キャンプの打ち合わせの続きをしていました。



「やっぱ,岐阜の坂取川方面がいいよー。」

「あたしは,絶対に海がいいー!」



それぞれが自分の意見を出し合い,盛り上がっていました。



レオンさんは赤神さんと電話をしていました。

みんなが会話の内容を聞けるように

スピーカーモードにしてくれていました。



そして会話が終わりました。



「そっかぁ!やっぱり告白しちゃったんだ。

いいなぁ。大人の恋ってステキ。」




まさらちゃんは顔を真っ赤にして何かを妄想していました。



「しかし,こんな時に,何をやっているんだか・・・。」

「レオンさん,良かったんですか。

盗聴した内容を全て伝えてしまって。」




だぬちゃんが少し心配そうに言いました。



「実際に黄金原さんの命が

1日に2回も狙われてしまったからね。

全員に伝えることにしたよ。ついでにもしかしたら

菊の中にスパイが紛れ込んでいるかも

しれないっていうことも伝えた。」




レオンさんはちらっとリく君を見ました。

どうやらこの決定にリク君も関わっているようです。



「ねぇねぇ,キャンプの打ち合わせしなくていいのー。

なんか全然,決まってないよー。」




トシ君が話題をキャンプに戻しました。



「そうだね。とりあえず山に行ったほうがカブクワも

取れるだろうし,そっち方面で考えてみようか。」




レオンさんがお昼ごはんにオムライスを作ってくれました。



彼はひとり暮らしが長いので一通りの料理ができるようでした。



「うまいな・・・。」



イツキ君はパクパク食べていました。



「味オンチのイツキ君でもこの

オムライスのうまさがわかるんですね。」






「いや,ちがうよ。」



そのあとも打ち合わせを続け,来週に岐阜県の

郡上方面へキャンプへ行くことになりました。



時間は午後4時になっていました。



すると突然,レオンさんの携帯電話が鳴りました。



「はい・・・。はい・・・

え・・・なんですって!?わかりました・・・。

ええ,まだリク君たちも一緒です。

わかりました。すぐ探します!」




レオンさんは電話を切りました。



「赤神さんからか?」

「ああ。なんか大変なことになってきたみたい。」



レオンさんは外出の支度をしました。



「一体何があったの?」



トシ君が聞きました。



「黄金原さんと羽音々さんが

署内からいなくなってしまったらしい。」




レオンさんは車を駐車場から出しました。



全員がそこに乗り込みました。



「じゃあ,急いだほうがいいんじゃないですか。」

「そうだね。青山さんと桃瀬さんもすでに

捜索に向かっているみたい。オイラたちも急ごう。」




レオンさんは車を急発進させました。

彼らの身にいったい何が起きたのでしょうか。







TOPページへ