とある大学の登山部がまだ雪解け
間もないX山に登ることにしました。
登山部は男性で構成され,準備を
万端に整え,山のふもとまでやってきました。
この山に入るには入山料が必要だったので入口の受付で
代表のAがまとめて支払うことにしました。
入山料は一人550円となっていました。
受付「それじゃあ,入山料をいただきます。」
Aは3千円を渡し,おつりを受け取りました。
A「それじゃあ,山頂まで気を引き締めて登って行こう。
この時期はまだ結構,雪が残っているから気をつけよう。」
B「おう,Aこそ滑るんじゃないぞ。」
ムードメーカーのBがそう言いました。
一行は順調に登山ルートを進んで行きました。
しばらくすると,山の中腹に休憩小屋がありました。
ここが最後の休憩場所で,この先は山頂までなにもありません。
休憩場所へ立ち寄り,体を休めていると,
施設のオーナーが串団子を皿に乗せて提供してくれました。
C「へぇ,こんなサービスして
くれるんですね。ありがとうございます。」
礼儀正しいCは深々とお辞儀をしました。
皿には団子が5本ありました。
D「これって,全部食べていいんですよね。」
串団子をぺろりと食べ,お腹もふくれた
ところで,再び出発することにしました。
しかし,この後,彼らに試練が待ち受けます。
登山ルートから外れてしまい,遭難してしまったのです。
すでに太陽は沈み,気温もかなり下がってきました。
雪は降っていないとはいえ,
このままでは確実に凍死してしまいます。
A「まずいな・・・。なんとか,先ほどの
休憩小屋まで戻れるといいんだが・・・。」
B「おい,あそこに見える小屋って
さっきの休憩小屋じゃないか!?」
しかし,よく見るとその小屋は先ほどの
休憩小屋ではなく,ただのコテージでした。
この際,暖をとるためならそこでも
構わないということになり,お邪魔することにしました。
電気は通っていなかったので真っ暗な中,
一つの部屋の中心に固まって寒さをしのごうとしました。
C「でも,この寒さの中,寝たら確実に凍死しちゃいますね・・・。」
そこでリーダーのAが凍死しないためのある方法を提案しました。
それは,4人が部屋の角に立ち,最初の合図で一人が隣の角まで走ります。
その一人が角に立っている人にタッチします。
タッチされた方は同じように隣の角まで走ります。
これを右回りで繰り返していけば,眠らずにすむというわけです。
B「面白そうじゃないか。さっそくやってみようぜ。」
こうして,真っ暗な闇の中で,一晩中,
部屋の中をぐるぐると走り回りました。
次の朝,救助隊が駆け付け,彼らは大病院で
検査入院することになりました。
入院した部屋は5人ベッドの多部屋でした。
みんなは一気に疲労が出て,
その日の夜まで眠ってしまいました。
目を覚ましたのは夜中の12時過ぎでした。
誰とともなく,昨日の事を語り出しました。
D「なんとか,助かってよかったですね。
Aさんのアイデアのおかですよ!」
A「そうだろ~。」
しかし,Cは下を向きうつむいた
ままで顔色が良くありませんでした。
B「どうしたんだ,せっかく助かったのによ!?」
C「あの,ちょっと気になることがあるんです・・・。
昨日の夜,僕たちって部屋の中をずっと回っていましたよね。」
全員がCに注目しました。
C「あれって,ここにいる4人じゃできないですよね・・・。」
全員が凍りつきました。
確かに,4人では1周した時点で
部屋の角には誰もいないので終わってしまいます。
しかし,彼らはずっと一晩中回り続けていたのです・・・。
D「ずっと気になっていたんですけど,どうして僕たちって
5人部屋に案内されたんですかね?
あそこのベッドってずっと空いたままですよね・・・。」
B「よく考えたら,なんで休憩所で
団子を5人分出されたんだ・・・?」
しばしの沈黙が流れました・・・。
A「そういえば,入山料も一人550円で4人分なら2200円なのに,
確かあの時,2750円取られていたな・・・。
おつりをよく確認しなかった自分が悪いんだが・・・。」
もう一度,空いたはずのベッドを見ました。
なんとベッドに横たわっている人影が見えました。
C「ヒィッ!?だっ誰かいますよ・・・!?」
その人影はベッドからすっと下に落ち,
床を張ってゆっくりとこちらへ向かってきます。
ヒタ・・ヒタ・・・ヒタ・・・
うぁぁぁぁぁぁ・・・。
病院には大きな悲鳴が響き渡りました・・・。