リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第49話~第52話

2014/8/16

第49話 トラップを仕掛けよう
今回は初めて訪れる,中牧山でカブクワ採集をするようです。



「今日はまさらちゃんとイツキ君いないんですね。」

「うん,まさらちゃんはカイリとお祭りにいったよ。

イツキ君はノアの書の研究かな。」




「いいなぁ。だぬもお祭り行きたかったですよ~。

焼きトウモロコシ食べたかったですよ。」


「オイラは光るビームサーベルを買いたいなぁ。」



「まぁまぁ。今日は昼間にトラップを仕掛けたから,

そこを見て,いなかったら帰ってお祭り行こう。」


「わーい,じゃあさっさと見て帰りましょう~。」





どうやらリク君達は昼間のうちに仕掛けたトラップの回収に来たようです。



「ここだね。」

「どうですか?」



リク君はトラップを仕掛けた木をのぞきこみました。



「おっ,いるいる。」



「ボクの特殊配合エキスがよかったみたいだね。」

「それ,どんなの?」

「知りたい?では,今からカブトムシトラップの作り方を説明しよう!」

「いや,別にいいですって~。お祭り~。トシ君が余計な事言うから!

ホント,空気読めませんね!」




リク君はトラップ蜜の作り方を説明し始めました。



「まずはバナナを細かく切って,焼酎をまぜる。」



「次に砂糖,焼酎,ドライイーストを適量入れます。」



「袋に入れて,発酵を促すんだ。日光に当てると早いよ。」

「へ~。」

「ガスがたまったら適当に抜いてね。黒くなってきたら完成だよ。」

「へ~。」

「匂いが強いからいっぱい集まってくるんですかね。」

「そうだね,これを直接木に塗るだけだから楽だよね。」

「確かに。」

「ストッキングとかにいれてトラップを仕掛ける人がたまにいるけど

回収し忘れるとごみになるのでお勧めはしないよ。」




こうしてリク君が解説している間にお祭りは終わってしまいましたとさ。



「焼きトウモロコシ…。」

第50話 採集はファッションが大事!?
今日も少年昆虫団はカブクワ採集に来ていました。 すると突然リク君が怒り出しました。



「みんな,カブクワ採集に来ているのにその服装はなんだい!?」

「だってー,ショッピングの帰りに急に呼ばれたんだからしょうがないじゃない!」



まさらちゃんは栄に行った帰りだったのでとても派手な格好をしていました。



「そんな厚底ブーツに露出の多い恰好じゃアブやカの餌食だよ!」

「だめですねー。」

「そういうだぬちゃんも!サンダルじゃない!?」

「いやー,急いでいたもので。」

「本来なら長靴をはくのがいいんだよ!特に山道はね!」

「オイラは大丈夫。長袖だからハッチー先輩が来ても。」

「くんくん…。」



リク君は何かの香りが気になるようです。



「何?」

「香水の匂いがする。」

「いやー昨日お風呂に入ってなくて~!

臭うかなと思ってアニキのコロンを借りてつけてきちゃった。」


「だめだよ!香水はハチを刺激するんだ。

トシの嫌いなハッチー先輩がたくさんやってくるよ!」


「ぎゃぁぁぁ。そんな!?じゃあ帰る。

やばいどころじゃないぃ!帰るぅ!」


「ボクを見てごらん。これが正しい採集の格好だよ。」





雑木林や山はたくさんの昆虫や草花が生えています。

中には体に害のある生き物もいます。

身支度をしっかりとしてから楽しい昆虫採集をしましょう。



「でもリク君だって普段はTシャツかランニングシャツじゃないですか。

それに麦わら帽子だってかぶってるの見たことないですよ!」


「あはは…。」

第51話 再びコクワちゃん
中牧山で昆虫採集をしていた時のお話です。



「今日はなかなかいませんねー。」

「うーん。」



この日はカブクワの採集が思うようにいっていないみたいです。



「なんか疲れちゃったー。」

「ここやばいどころじゃないって~!」



トシ君は相変わらずわけのわからないことをしゃべっていました。



 「なぁ,そろそろ帰らないか?」

「そうだねー…。」



一同が帰ろうとしたその時です。



「あ,こんなところにクワガタがいるよ!」

「え,どれどれ!」

「ほんとですね,でも小さいですね。」

「これってコクワちゃんだよね。」



「うんそうだね。前,まさらちゃんが飼っていたクワガタだよ。」

「しかも,メスも一緒にいるよ~!」

 「そんなこともあるんだな。」

「前に飼育していたコクワちゃんは★になっちゃったから,

このコクワちゃんもらってもいいかな。」


「もちろんだよ,どうぞ,どうぞ。」

「わーい,やった!」

「ペアで採集したってことは,飼育したら卵産むんですかね?」

「そうだね。その可能性はあるよ。今度繁殖の仕方を詳しく教えてあげるよ!」

「うん,ありがとう。」

「あれ,トシ君は?」

 「向こうでくぼみにはまっているよ。」



こうして,最後の最後でコクワガタを採集できました。

諦めずに採集をすることって大切なんですね。



第52話 とあるラーメンな一日
リク君たちは昆虫採集の後,たまにラーメンを食べてから帰ることがありました。

ちなみに年頃の少年少女が寝る前にカロリーの高いラーメンなどを食べると

健康によくないので良い子は真似をしないようにしましょう。



この日はリク君,だぬちゃん,トシ君の3人でいつもの“大関ラーメン”に来ていました。



「いや~ここのラーメンはこってりでほんとにうまいんだよね。」

「そうですかね、なんか除菌剤のにおいがしますよ。」

「いやいや、それがいいんだよ~!」

「また,食べた後おなかを壊すんじゃないですか~。」

「大丈夫,大丈夫。」

「おなかが弱いのはお父さん似ですか。」

「そうかも。」



雑談している間にラーメンがでてきました。





「うん,うまい~。」

「採集の後のラーメンって最高だね。」

「そういえば,今度の出校日に持っていく宿題やりました?」

「どんなのだっけ?」

「友達のいいところを見つけて書くんですよ,あと尊敬できる人も。」

「ああ,まだだけど,そんなのすぐにかけるよ!」

「ほんとですか~?じゃあトシ君のいいところを言ってみてくださいよ。」



「そうだなー。トシの良い所は頭がはげているから髪の毛を切らなくても済むところかな。」

「ぶほっ!?」



だぬちゃんは思わず吹き出してしまいました。



「それ,良いところですか…?」

「これはハゲているんじゃなくて剃っているんだよ!」

「まったく…。」



「じゃあ,だぬちゃんのいいところは?」

「そうだなー。係の仕事を文句言いながらも奴隷のようにこなすところかなー。」

「ぶはははっ。」

「だから,それ良い所じゃないでしょ…。」

「そうかなー?」

「ちなみに尊敬できる人はだれを書くつもりなんですか?」

「やっぱり自分でしょ!みんなもそうでしょ?」

「だめだこりゃ…。」



こうしてリク君たちの1日は終わりましたとさ。







第53話~第56話

第53話 すっしぃ喰いねぇい!
リク君たちは昆虫採集の後,寿司を食べに行くこともありました。

この日もリク君,だぬちゃん,トシ君の3人でいつもの“沙 悟浄寿司”に来ていました。



「何を食べようかな~。」

「ネギトロをたべよっと。ここのネギトロはおいしいですよね。」

「う~ん,だぬちゃん,残念だけどこのネギトロはおそらく偽装魚だよ。」

「偽装魚ってなんですか?」

「本物の代わりに安い魚で代用するんだよ。」

「へ~。」

「おそらくこれは赤マンボウだね。」



だぬちゃんはマグロを食べる気が無くなってしまいました。



「じゃあ,オイラはエンガワをいただこうかな。」

「エンガワってなんですか?」

「ヒラメの部位だよ。高級品なんだよ。」

「う~ん,残念だけどこれはオヒョウだね。」

「そっそんな~。」

「じゃあ,だぬブリにしようかな。」

「ああ,それはブリじゃなくてシルバーワレフ

「偽物ばかりじゃないですか~!?」



「回転すしは値段が安いからね。実際はそんなもんなんだよ。」



3人はちょっと食欲をなくしたままお家に帰りましたとさ。



第54話 幼虫発見!
今日も少年昆虫団は緑地公園にて採集を行っていました。



「毎日,毎日,ホントに飽きないですよね。」

「まぁね!」

「好きなことはとことんやるタイプだね。」



今日はいつものようにカブトを探しています。



「おお,たくさんいるね。」



「これは触れないなぁ。」

「夏の間はたくさんいるのに秋になるといなくなっちゃうんだよね。」

「そうだね。」

 「仕方ないな。」

「でも,幼虫はいるよ。ひょっとしたらもう土の中にいるかもね。」

「でもまだ夏ですよ。」

「羽化が早い個体は6月には成虫になっているから,

この時期に産卵した卵が孵化してもおかしくないんだよ。」


「へぇ,そうなんだ。」



というわけで,そのあたりの土を掘ってみました。

ちなみに掘った穴はきちんと埋めておきましょう。



「ほら,これが幼虫だよ。」



「すごーい,ホントに見つけちゃった。」

「よく見つけましたね。」

「まあね。」

「すごく小さいね。これならトシ君も触れるんじゃない?」

「いや~,イモムシはきついなぁ。」

「相変わらず,デカイ体して情けない!」



リク君はその幼虫をそっと土の中に戻してあげました。

来年,成虫になってまた楽しませてくれるのでしょうか。



第55話 台風がやってきた
日本では秋に上陸が多いのですが,

今回は夏休みに勢力の強い台風がやってきました。



そんな日の少年昆虫団の様子を見てみましょう。



―まさらちゃんの場合―



「外に出られないからつまんないなぁ。」

まさらちゃんはパソコンに向かってつぶやきました。

何をしているのでしょうか。



「仕方ないからオンラインショッピングでもするかな。」



お買い物好きなまさらちゃんは,

ネットショッピングを楽しんでいるようです。



―イツキ君の場合―



机に向かって読書をしているようです。

ノアの書の解読でしょうか。



 「ふふっ・・。はははは。」



どうやらマンガを読んでいるようです。

彼も年頃なのでマンガも大好きなのです。

そのあとは,前日に借りてきたB級映画を見るようです。

外に出られなくてもそれなりに楽しく過ごすようです。



―トシの場合―



「ごぉぉぉぉ…。」



時間は午後5時過ぎですが,昼寝をしているようです。

おそらく起きた後はゲーム三昧でしょう。



―リク君とだぬちゃんの場合―



ごぉぉぉぉおおおお…!

すさまじい嵐の中,山の中に二人の影が見えます。





「いや~,やっぱり今日はカブクワいないぁ~。」

「当たり前ですよ!」

「台風の日ってカブクワはどうしているのかな~と思って。」

「頭,おかしいんじゃないですか!いるわけないじゃないですかっ!!」

「そっか~。」

「いきなり家に来て連れ出されたと思ったら,なんで昆虫採集なんですか!?」

「だって他のみんなは誘ったけど来ないっていうんだもん。

まぁ,いいや。帰ろっか!」


「視界が狭すぎて戻る道がわかりませんよ~!」

「うぎゃ~。」



台風の時や天候が悪い時は,昆虫採集は控えましょう。

この後,二人は散々迷ってなんとかおうちに着きました。



第56話 偉い人
少年昆虫団は近くの三町公園にカブクワ採集の下見に来ていました。



「ここはクヌギの木はあるけど,土があまりよくないなぁ。」

 「公園だからね。当然といえば,当然だね。」



そのような会話をしていると公園のベンチに座っていた青年が近づいてきました。



青年「やぁ,こんにちは。君たち中野木小の子だよね。懐かしいなぁ。

懐かしくってつい声をかけちゃったよ。」





「誰?」

「あ,この人,知ってるかも。」

「知り合いですか?」



青年「ふふ。」



「私たちの小学校の卒業生だよ。お母さんから聞いたの。名前は…。」

林「林 みつるだよ。」

「ふうん。」

「有名だもん。その,昔だけど色々悪いことやってたって…。

近所の人たちが噂していたから…。」




林「ははは。まぁ。若気のいたりってやつかなぁ。」



「…。」



彼は昔の悪行を自慢げに語り始めました。



林「小学校のころは,先輩とつるんで学校のガラスを割ったり,原付を盗んで乗り回したり,

万引きなんかもしょっちゅうやってたなぁ。まぁあの時は若かったからね。」



 「(いまでも若いじゃないか…。)」

「でも大人になってから,人が変わったみたいに正しい人になったみたいで,

みんなから“えらい”って褒められていたみたいだよ。」



林「まぁね。」



するとリク君が自論を展開し始めました。



「それってホントに偉いことなのかなぁ?」

林「何か,いいたそうだね,そこの帽子の少年。」

「まぁね。」

「ちょっとリク君!?」

「あんたは悪いことをしなくなって周りから“偉い”とか言われて,

調子に乗っているみたいだけど,本当に偉い,立派な人っていうのは

そもそも悪いことなんてしないよ。」




林青年の顔がひきつっているようです。



林「ピクッ。」

「本当に立派な人っていうのはあんたのような人間のことじゃないよ。」

 「確かにな。」

「うむ。」

「あんたが,今しなくちゃいけないことは,

過去にやってきた悪行を嬉々と語ることじゃなく,

その悪行の裏で迷惑をかけた人たちへの謝罪でしょ。」


林「ぐぬ…。」

「小学生に言いくるめられていますね。」



「何か間違っている?」

林「言わせておけば,クソガキが!ぶっとばす!」

「あっそう。」



リク君は素早く後ろに下がり,背中にさしてあった二本の捕虫網を手に取りました。

青年は奇声をあげながらリク君に襲いかかってきました。

リク君は構えたまま微動だにしません。



「降りかかる火の粉は払わせてもらうよ。」



林青年がこぶしを振り上げた瞬間―



「大地・二刀流―」





「薔薇十字(ローゼンクロイツ)!!」



「ばきっ!」「ごぎゃっ!」

と,彼の体から鈍い音がしました。

林「ぴぎゃぁぁぁぁ。」

「…。」



林「かっは…。い…い…き・・が…。」

「相変わらず,すごいですね…。」

 「あれでも手加減しているんだろうな。」

林「苦…し…い…。」



「折れた肋骨が片肺にささったんだろう。

一刻も早く病院で診てもらうんだね。救急車くらいはよんでおいてあげるよ。」


林「ぐ…わ…わわ…。」

「二度と悪さができないように右腕もしばらく使えないようにしていおいたからね。」

「なかなかエグイですねー…。」

「なんか修羅のリク君って感じ…。」

「リク君は相手によっては容赦ないからね。」



少年昆虫団のみんなは修羅のリク君を垣間見た一日でした。





第57話~第60話

2014/11/3

第57話 プロローグ 

ノアシリーズ ~第2章~
夏休み,少年昆虫団のイツキ君が図書館で謎の書物を見つけました。



それは“とある研究所”に勤めていた“小早川教授”が持ち出した本でした。



小早川教授は追手からその本を奪われないために中野木図書館に一時的に隠しました。







リク君たちはその書物を“ノアの書”と名付け,解読を試みることにしました。



一方,少年昆虫団が“漆黒の追跡者”と呼ぶ組織のメンバーもノアの書を探していました。







その目的は,ノアの書が“漆黒の金剛石”とつながりがあるからのようですが…。



漆黒の金剛石とは組織が追っている謎の昆虫のコードネームのことです。



漆黒の追跡者の一人,仏の今村は部下の“影(シャドー)”に少年昆虫団のことについて探らせました。



どうやら各務原山での一件で彼らのことを気にかけているようです。



そして“影”は少年昆虫団のすぐ近くにもぐりこんだようです。



はたして“影”の正体は誰なのでしょうか?







また,“ノアの書”には一体どんなことが書かれているのでしょうか?



物語は“とある人物”の変死体が発見されるところから再び始まります。



その人物とは…。



第58話 再び出校日 

ノアシリーズ ~第2章~
リク君は学校へいくため早く起きました。今日は2回目の出校日なのです。

パンを食べながら身支度をしているとニュースが流れてきました。



「昨夜未明,名古屋港で車が引き上げられ,中から男性の変死体が発見されました。

所持品などからこの人物は“ジャファ生命工学研究所”に勤める,小早川教授とわかりました。」






「ふ~ん。」



「なお,ブレーキの跡がなく,争った形跡もないことから

警察は自殺と事故の両面で捜査をしています。」




「なんか朝から暗くなるニュースだなぁ~。」



その時,みんなが迎えに来ました。



「リク君,遅いですよ。」

「ごめん,ごめん。」



登校中,イツキ君が話しかけてきました。



 「ノアの書のことなんだけど。」

「何かわかったの?」

 「ああ,いろいろわかってきたよ。

もちろんまだまだ不明な点も多いけど。」


「わかったことだけでも聞かせてよ。」



そんな会話をしている間に中野木小学校につき,教室に入りました。

トシ君だけは隣のクラスなので教室が別でした。



栗林「みなさん,お久しぶりです。元気でしたか。とは言っても,

先日,終業式をしたばかりですが。」



児童からは元気のよい返事が聞こえてきました。



「先生!先生はどこか旅行に行ったんですか?」



栗林「いや~なかなか忙しくて。」



「稲姫先生と行かなかったんですか?」



栗林「残念ながら。」



「…。」



まさらちゃんは調子に乗って担任の先生をからかい始めました。



「稲姫先生とは仲良しなんですよね~!?」





栗林「え,そっそうだね。順調におつきあいさせてもらってるよ。」



「…。」

「え!?」



一瞬,教室が静まり返りましたがまさらちゃんが気をきかせました。



「先生っておもしろいね!」



栗林先生は話をそらしました。



栗林「それよりもまさらちゃんはどこか旅行に行ったんですか?」



「明日,みんなで“長山スパーランド”の

ナイトイベントを見に行くんです!」




栗林「それは楽しみですね。」



そう言うと,彼は黒板に連絡事項をまとめ,みんなに書き写すように指示しました。



 「ところでさっきの話なんだけど…。」

「うん。」

 「オレの家で話すのは危険な気がするんだ。」

「どうして?」

 「もし奴らの仲間が近くにいて,

オレたちのことを探っているなら…。」


「家族に迷惑がかかる…か。」

 「ああ。」



すると前の席に座っていた,まさらちゃんが

後ろを振り向いて話しかけてきました。



「じゃあさ,明日行く予定の長山ランドの中で聞かせてよ!」

「え~!?せっかくの遊園地でそんな堅い話をするんですか~?」

「でも,確かに人が多いほうが奴らに見つかったとしても,

なんとかなりそうだし,そこまでは奴らも探りにこないかもね。」


 「それもそうだな。それじゃあ明日はノアの書を持って行くことにする。」



というわけで明日,リク君たちは“長山スパーランド”という遊園地に遊びに行くようです。

中野木駅から名駅に行き,そこからさらに電車で1時間の場所にあるようです。

ナイトイベントなので出発は夕方でした。



ちなみにこの後の学年集会で稲姫先生のお話が

あるのですが,それはまた別の機会に。



また,リク君は宿題に不備があったので再提出となったようです。



第59話 各務原山での邂逅 

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団は,夏休みの出校日があった日の夜,

あの各務原山で採集に来ていました。





「どうせ,採れませんよ~。

それに明日は長山ランドに行くんですから,

今日は早く帰って寝ましょうよ~。」


 「そうだな…。」



どうやら二人の会話はリク君の耳には入っていないようです。



「ここって確か前…。」

 「この前来た時はひどい嵐だったな。」

「やばい奴らと出会ったところだね。」

「うん,ちょっと気になることがあってここに来たんだ。」

「どんなこと?」

「ほら,あの時,漆黒の追跡者の二人が

ライフルのようなもので狙撃されてたでしょ。」


 「ああ。そうだったな。」



リク君は周辺を見渡しました。



「たぶん,この辺りの木から狙撃したんだと思う…。

あの雨の中,すごい腕だと思わない?」




「そうですね。かなり離れてますよね。」

「おそらくこのあたりに…。」



リク君は彼らが狙撃されたと思われる場所で何かを探し始めました。



「あった。この木に残っている傷跡。これが,弾痕だと思う。」



リク君は木に残っていた弾痕を指しました。



 「弾は残っているの?」

「いや,無いみたいだね…。」

「どういうこと?狙撃した人があとで回収したのかな?」

「う~ん,時間的にそんな余裕はなかったと思うけどね…。」



「警察が回収したんじゃないですか?撃たれたら病院へ行くはずですし,

そしたらお医者さんが警察に通報しますよね。」


 「そうだな。だぬにしてはいいとこついているな~。珍しい。」

「なんか言い方にトゲがありますね。」

「でも,ニュースでそんなことやってなかったんじゃないかな。」

「そうだね。」

「トシ君はニュースなんて見ないくせに。」

「いやいや,そんなことないよ!」

「…。」



リク君はなにやら考え込んでいました。



「リク君?」

「あ,ごめん,ごめん。なんでもないよ。」

 「どうしたんだ?」

「いや,狙撃した奴も気になるけど,狙撃された連中って

どんな奴らだったかなと思ってさ。」


 「それはあまりよく見えなかったけど,

撃たれずにいた“仏のような顔”の奴は覚えているよ。」




「イツキ君も覚えていたんだね。

確か“今村さん”って呼ばれていたのが少しだけ聞こえた。」


「どんな人たちなんだろうね。」

 「今のところわかっているのは,

“山本”っていうリーダーっぽい男とその部下の“南雲”,“古賀”だっけ,

それからその仏のような顔をした“今村”って人物か。」




みんなは組織の正体が気になるようです。



「ま,それはとりあえず置いておいて,カブクワ採集しよう!」

「うげ~。明日はお出かけなのに~。」



この後,何匹ものカブクワを見つけることができたようです。

そしておうちに帰り,明日に備えました。



第60話 非情な男 リ・セ・ッシュにて 

ノアシリーズ ~第2章~
リク君達の出校日があった日の夜の出来事です。

栄の一角にある目立たないバーがありました。



その名は -リ・セ・ッシュ-



ここは“漆黒の追跡者”専用のバーなのです。

それも準幹部以上のみが利用できるVIPなバーです。



マスターも組織の構成員です。

“山犬”の山本と南雲,古賀の3人でお酒を嗜んでいました。



南雲「山本さん,小早川を殺るのに

銃(チャカ)は使わなかったんですね。愛用の“グロック”。」



山本「ああ,チャカはアシが付きやすい。」



すると背後から人影が…。



今村「ふぉっふぉっふぉっ。

やはり彼はあなたの手にかかって殺されたわけですか。

まったく,非情な男ですねぇ。」



<海猫 ユニットリーダー “仏”の今村>



南雲「今村さん,なんでここに。」

山本「まぁ,後始末は古賀にまかせたが。」

古賀「はい。」



<ユニット“山犬” 古賀>



今村「それで,彼はノアズアーク(ノアの書)の隠し場所を吐いたんですか?」

山本「いや…。」

今村「そうですか。」



今村は何か含みのある言い方をしました。

山本はそれを聞き逃さなかったようです。



山本「何か知っているんじゃ無いだろうな?」

今村「さぁ,どうでしょうね。」

山本「小早川の件は俺たちの“ユニット”が任された依頼だ。」



彼らの組織は3人一組のユニットと呼ばれるチームで依頼を任されているようです。

それぞれ“山犬”,“海猫”,“川蝉”とユニットネームがつけられているのです。

さらにそれ以外のユニットも存在するようですが…。



今村「しかし,ノアズアーク奪還は“海猫”

と協力せよとのことですよね。

御前から確認しましたよ。」



“御前”とはこの組織のボスのようです。



山本「ちっ。」



古賀「そうなんですか?」




どうやら山本は部下に嘘をついていたようです。



今村「抜け駆けはダメですねぇ。」

南雲「(さすが仏の今村。こちらの考えは全てお見通しですか…。)」

今村「それよりも,その小早川教授には息子がいるようですよ。」

南雲「え?じゃあそいつがノアズアークを

持っている可能性もあるってことですか?」

今村「ですが,今は行方不明のようです。」

山本「そうか。」



今村はまだ何かを知っているようです。

山本も彼の腹を探ろうとしましたが,無駄に終わりました。



山本「明日,“バベル”へ行く。」

古賀「本社に戻るんですか?」

山本「ああ。御前に確認したいこともあるからな。」

南雲「じゃあ,その前にバベルのバーで一杯やりましょうよ。」

古賀「いいですね。」



こうして眠らない街“栄”の夜はネオンの光に

照らされながら更けていきました。



第61話~第64話

2014/12/8

第61話 漆黒への盗聴 前編

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団は名駅のセントラルタワーに来ていました。

ここから電車で長山スパーランドへ行くのです。



時間は夕方の5時過ぎです。



リク君はセントラルタワー地下1階のトイレにいました。

するとリク君の耳元から声が聞こえてきました。



「いつまでトイレにいるんですか~!?」

「ごめん,ごめん。もうすぐ行くよ。」



リク君は小声でつぶやきました。



よくみるとリク君の耳にはワイヤレスのイヤホンのようなものがついています。

これは,”イヤコム”といって,トランシーバーを超小型化したようなものなのです。



しゃべった声は“骨伝導”と言って

骨を伝ってイヤコムに届き,そこから相手に声が届くのです。



しかも,同時に複数の人間が話したり,

聞いたりできるのであたかもその場に居合わせるような感覚に陥ります。



少年昆虫団は山ではぐれないようにするために

イヤコムをいつもつけているのですが,今日もつけていました。



「よし,快便!」



「いや~汚い!」



リク君が発した声はみんなの耳元に届いているのです。



リク君がトイレから出てみんなの待つ駅のホームに向かおうとした時のことです。



「あれは!?」



どこかで見たような二人の男が角を曲がっていくのを見ました。



「(今のは…!)」

 「リク,どうしたんだ?」



イツキ君が呼びかけます。



リク君は走りながら答えました。



「今,漆黒の追跡者の二人を見かけた!間違いないと思う!」

 「なんだって!!」



みんなは同時に驚いていました。



「リク君,どうするつもりなの!?」

「追いかける!大丈夫,電車が到着するまでには戻るから!」



二人は何か話をしながら歩いています。

リク君は二人の後をこっそりとつけました。



「(間違いない,奴らだ。確か,南雲って名前と古賀って名前の二人だ。)」



二人はセントラルタワー地下の飲食店街の一角にあるバーに入っていきました。



「奴らお店に入っていった。どうやらバーみたい。名前は…。」





そこにはこう書かれていました。



“ヴァ・ス・マ・ジック・リン”と…。



第62話 漆黒への盗聴 中編

ノアシリーズ ~第2章~
名駅のセントラルタワー地下にある

“ヴァ・ス・マ・ジック・リン”というバーは

漆黒の追跡者たちがよく利用するバーでした。



偶然そこに居合わせたリク君は相手の会話を

盗み聞きして情報を手に入れようとしました。



彼らがバーに入った後,リク君はドアを少しだけ開けて中の様子を伺ってみました。



古賀「山本さんはまだなんですね。」

南雲「みたいですね。バベルで“御前”と何か話すことがあるみたいで,

それが長引いているんじゃないですかね。」



「(バベル?組織のアジトのことか?御前…?組織のボスの呼び名か?)」



南雲「しかし,小早川の奴を簡単に消しちまうなんてさすが山本さんですよね。」

古賀「そうですね。怖いくらいに冷静でしたよ…。

簡単に人を殺せるってすごいですよね。」





「(小早川…?どこかで聞いたことが…。)」



リク君の額から汗がでてきました。



「(こいつら本物の殺人集団なんだ…!?

めちゃくちゃやばい連中だったんだ。)」




何やら色々な話をしているようですが,

バックに流れる洋楽が邪魔をして全ては聞き取れないようです。



古賀「…・。そういえば,今村さんは何を企んでいるんでしょうね。」

南雲「というと?」

古賀「“影(シャドー)”なんて部下を使って

以前,何度か出会った子供達を探しているらしいじゃないですか。」

南雲「そういえばそうでしたね。」

古賀「おそらく“影(シャドー)”はすでに子供達に接近しているんだと思いますよ。」



「(子供たちって僕たちのことだな…。

影(シャドー)…!?そいつが僕たちの周辺にいる!?)」




お酒が入っているようで二人は饒舌です。



南雲「そうですかー?古賀さん,深く考えすぎなんじゃないですか?」

古賀「いやいやそんなことないですって。

南雲さんはもう少しあの人を疑ったほうがいいですよ。」



南雲「俺はただ山本さんと同じくらい今村さんのことも尊敬しているだけです。」

古賀「そんなに尊敬しているなら“海猫”の部下になればよかったじゃないですか。」



南雲「俺たちが選べるわけじゃないでしょう。

ヘタなことを言えば,俺が山本さんに消されちゃいます。」

古賀「まぁ,確かに。」



「(“山犬”…“海猫”。それがそれぞれのユニット名か…。

各務原山で聞いたことは間違いじゃなかった。)」




古賀「JFの一員である以上,全ての決断は御前次第ですからね。」





「(JF!?それが組織の略称か!)」



その時,イヤコムから声が聞こえてきました。



「リク君!早く来ないと電車が来ちゃうよ!?」



リク君は小声で応答しました。



「わかってるよ。もう少し…。」



その時,遠くから一人の人物がこちらに向かって歩いてくるのが見えました。



「あ…。」



それは,山犬のリーダー,“山本”でした。



第63話 漆黒への盗聴 後編

ノアシリーズ ~第2章~
リク君がバーの会話を盗み聞きしていると

遠くから一人の人物がこちらに向かって歩いてきました。

その人物とは山犬のリーダー。





<山犬 ユニットリーダー 山本>



リク君はバーの入り口の前にある観賞用の

大きな植木の影に隠れていたのでまだ気づかれてはいないようです。



だんだんとリク君と漆黒の追跡者である山本との距離は狭まってきます。



コツ…コツ…コツ。



「(まずい,どうする!?このままじゃ見つかる!?)」



イヤコムからみんなの声が聞こえますが,リク君は反応することができません。



―額から冷や汗が湧き出ている―



―心臓の拍動音が否応なしに聞こえてくる―



「(どうする…!?戦うか!?)」



背中に手をやりますが,何もありません。



「(いや,無理だ。そもそも捕虫網は持ってきてない。何を焦ってる…。)」



リク君はかなり動揺しているようです。



「(たとえ捕虫網があったとして本物の殺人者に勝てるのか…!?

しかもあいつは拳銃を持っている可能性が高い…。)」




コツ…コツ…コツ。





山本はさらに近づいてきました。



「(このままじゃ捕まる!?捕まったら殺される…。

いや…考えろ!?何か手はあるはずだ!?)」




『山本が簡単に人を殺す人間である』という,先ほど聞いた会話が脳裏に焼き付いているようです。



ドクン!ドクン!ドクン!



―ピリピリピリピリピリピリ―



何やら音がなりました。



その一瞬,リク君はバーの出入り口から横へつながる細い脇道に一目散に走り出しました。



―ピリピリピリピリピリピリ―



山本の持っている携帯電話が鳴っているようです。

彼は電話を取り出す時,視線をポケットに向けた隙にリク君はうまく逃げ出したようです。



山本「なんだ?何か用か?貴様から直接連絡をしてくるなんて珍しいな。

だが…あいにく俺はアンタと話すことなど何もない。」



山本は向きを変えて何やら会話をしています。



「はぁはぁ…!?」



リク君の息が乱れています。



「(危なかった…。)」



「(どうする!?時間をあけてもう一度バーへ行くか。)」



「(いや,それはまずい。逃げるところを見られたかも知れない。)」



「(とにかく皆の所へ戻るしかない。)」



リク君は電車の時間ぎりぎりでみんなの待つ場所へ合流しました。



そして,長山ランドに向かう電車の中で,漆黒の追跡者が話していた内容を伝えたのでした。



第64話 イツキの解読①

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団は長山スパーランドという三重県にあるテーマパークにやってきました。



今日はここでパレードやプロジェクトマッピングなどのナイトイベントがあるのです。

イベントまでに少し時間がありました。



そこで,長山スパーランド内のレストランで食事をしながらお話をしていました。



「ほんとにほんとなんだ…。」



リク君は先ほどバーで聞いたことを伝えました。



「ああ,間違いない。話したことは全てこの耳で聞いたことだ。」

 「影(シャドー)か…。やはり俺たちの周辺にいるってことか。」

「確かこの前もその話をしていましたよね。

怪しいのはカブクワキングの店長さんに図書館の館長さん。

それに引っ越ししてきたカメレオンみたいな大学院生でしたね。」




 「いや…図書館の館長は…。」



イツキ君が何かを言おうとしましたが,だぬちゃんが話し続けました。



「でも,相手が本当の犯罪者なら警察に言った方がいいんじゃないですかね。」

「あたしのお父さん警察官だけど,言ったら信じてくれるかなー?」

「まぁ,無理だろうね。こんな話を信じろっていう方が無理だ。

それに警察は証拠がなければ動かない。」


 「確かに。」

「それにこのことは警察に言わないようにしてボク達だけで

真実を暴いていった方がいい気がするんだ。なんとなくだけどね…。」




「バクバクバクバク。」



トシ君は名物の長山バーガーをうまそうに食べていました。

どうやら会話のレベルについていけなくなったようです。



「それより,本題に入ろうよ。」

 「そうだったな。」

「ノアの書について書かれていることがわかったんだよね!」

 「全てではないけどね。」



そう言うとイツキ君はノアの書をカバンから取り出しました。







「これってコピーとかとってあるの?無くしたら大変だよね。」

 「残念ながらコピーガードの細工がしてあって複製ができないんだ。」

「そっかー。」

 「心配しなくてもいいよ。内容はだいたいここに入っているからね。」



イツキ君は自分の頭を指しました。



「はぁ~。なんか頭の良さを自慢してますね。」



だぬちゃんは何か不満のようです。



イツキ君はノアの書のとあるページを開いてみんなが見えるように置きました。



「ずばり,単刀直入に“漆黒の金剛石”の正体から話そう。」

「うん。」



みんなはゴクリと唾をのみこました。



今まで謎だった“漆黒の金剛石”の正体がいよいよ

イツキ君の口から語られようとしています。







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