リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第497話~第500話

2024/1/20

第497話 失意のリク

エピソード0シリーズ 第1章
リク君は翌日の8月16日午前に退院をしました。



両親が退院の手続きを取る間,

1階のロビーでレオンさん,

昆虫団のメンバーとワク君,

カイリちゃんが一緒に待っていました。



ワク君が少し心配そうな表情をして,

リク君の顔を覗き込みました。



「なぁリク兄・・・。」



そう言いかけた時,

両親が戻ってきました。



父「さて,手続きも終わったので帰るとしよう。」



リク君の表情は曇ったまま,

静かに頷きました。



両親はその様子を見かねて,



父「せっかくお友達が来てくれたんだから,

昆虫採集にでも行ってくるといい。」



と,言いました。



母「でも・・・。」

父「病院の先生もけがは

大したことないと言ってくれていた。」



その会話を聞いただぬちゃんは,



「(え?まじで?御前にあれだけ

ボコボコにされて,

バズーカで吹き飛ばされていたのに??)」




と,誰もが思うだろう感想を持ちました。



母親は少し心配みたいでしたが,

リク君が元気になってくれるならと,納得しました。



レオンさんと少年昆虫団は

その足で昆虫採集へ向かうことにしました。



車の中に昆虫採集の用意が一式,

積み込まれていたようです。



家族は先に車で帰宅していきました。



帰り際にも二人は

レオンさんに頭を下げて,

“息子のことを色々と支えてほしい”と

お願いしているようでした。



みんなは病院を出て,

15分ほど歩き,

いつもの西緑地公園の前まで来ました。



「リク君・・・。

本当に大丈夫なの・・・?」




まさらちゃんは道中も全く話をしない

彼の事をとても心配していました。



公園の中に入っていきましたが,

とても昆虫採集ができるような

気分でも雰囲気でありませんでした。



「(こんなに元気がないリク君は初めてみました。

昆虫採集などしないで,

家でゆっくりと休むべきでは?)」




だぬちゃんはそんなことを

頭に抱きながら,

様子を見守っていました。



「オイラがもっと強ければ・・・。」



となりでトシ君が相変わらず,

わけのわからないことを

つぶやいていました。



そしていつもの噴水広場へやってきました。





みんなは噴水の端に

並んで腰をおろしました。



しかし,イツキ君だけは座らずに,

リク君の目の前に立っていました。



リク君はそれを見上げることもせず,

下を向いたまま,

一言も話しませんでした。



「なぁ,リクよ!」



イツキ君が話しかけます。



リク君は黙ったまま

何も反応をしません。



「お前はこれからどうするつもりだ?」

「イツキ君・・・?」



リク君は顔を上げて,

イツキ君の目を見ました。



「お前が俺と“あの時した約束”の事を

忘れたとは言わせねぇぞ。」


「・・・。あの時・・・。」



リク君がようやく口を開きました。



「そうだ。この少年昆虫団を結成して

俺を仲間に勧誘してきた時だ。」




リク君の表情が

急に険しく変化しました。



「お前はあの時・・・。」



そこまで言いかけた時,

噴水から少し離れた場所から

こちらに向かって呼びかける

声が聞こえてきました。



「なんだ!?」



向こうの様子をうかがっていると,

どんどんと人が集まってきました。



その集団とは・・・。



第498話 昆虫団結成のいきさつ

エピソード0シリーズ 第1章
リク君たちが座っていた噴水の周りを

取り囲むように,

たくさんの不良少年が集まってきました。



ほぼ全員が十代で,

見た目はほぼ全員が不良と

呼ばれてもおかしくない

格好をしていました。



「三大悪童の連中か・・・。

こんな時に何の用だ・・・。」




だぬちゃんとまさらちゃんは

震えが上がっていました。



そして,レオンさんの後ろに隠れました。



レオンさんは一体何事なのか,

事態が呑み込めていませんでした。



いざとなれば,

警察手帳を見せ,

場合によっては応援を

呼ぶことも考えました。



「レオンさん,大丈夫だ。

こいつらに害はない。

多分・・・。」




マザー「害はないだと・・・?

ずいぶんな物言いだね・・・。」



集団の中でひときわ目立つ

人物がそう言いました。



三大悪童のマザーでした。



豪名は“聖母”と呼ばれる

超大柄な女子でした。



よく見ると,100人規模の集団の

半分はマザーの配下ではありませんでした。



ファザー「探したぜ。」



どうやら三大悪童の

ファザーも一緒にいたようです。





集団の半分はファザーの配下だったようです。



まるでサラダボールのような群衆には

境界線のようなものが見え,

そこを境に配下通しで

威嚇しあっているのが見えました。



ファザー「おらぁぁ!!

問題を起こすんじゃ・・・ねぇ!!!」



彼がものすごい音量で叫ぶと,

一瞬,空が割れたような

錯覚にとらわれました。



いがみ合っていて配下の連中は,

狼に狙われる子ウサギのように

小さくなって震えていました。



マザー「そうさ。今日は戦争をしに来たんじゃねぇ!

この前,やったばかりだろうがっ!!」



マザーも自分の配下たちを厳しく叱責します。



二人が持っているこのカリスマ性が,

多くの不良たちを惹きつける要因でもあるのでしょう。



「・・・。」



マザー「おやまぁ。何があったか知らないが,

ずいぶん弱ってるじゃないか?」



マザーの大きな顔面が

リク君のすぐ目の前まで来ました。



「ヤバイ,また胃酸を

かけられますよ!」




だぬちゃんは,先日の出来事が

少しトラウマになっていたようです。



マザー「そんなことしねぇさ。」



「俺たちは忙しいだ。

こんなに大勢引き連れて,何の用だ?」



マザー「最初にアタシに

会いに来た時と逆だねぇ。」



イツキ君が二人の前に堂々と立ち,

要件を聞き出しました。



ファザー「お前たち二人を探していたんだ。

人を探すなら大勢の方がいいからな。」



「俺たちを探していた?」



彼が聞き返すと,



マザー「そうさ。例の件だよ。

正式に決まった。」



と,答えました。



「ねっねぇ・・・。

さっきから何のこと・・・。

話が見えてこないよ・・・。」




まさらちゃんがレオンさんの後ろから尋ねると,



「そうだな。いい機会だ。

少しみんなに聞いてもらいたい話がある。」




イツキ君はリク君をちらっと見てから,



「今からする話は少年昆虫団結成と

こいつら三大悪童との

いざこざについてだ。」




と,言いました。



「え?昆虫団結成って

そんなに複雑でしたっけ?」




どうやらだぬちゃんやまさらちゃんが

知らないところで,

様々な出来事がおきていたようです。



「リクには“あの時の約束”を

思い出してもらうからな。」




そして,イツキ君の口から

夏休み前に起きた出来事に

ついて語られることになりました。



第499話 勧誘

エピソード0シリーズ 第1章
―7月8日 中野木小学校2B教室にて―



その日の放課中に,

リク君がまさらちゃんと

だぬちゃんを呼びました。



この二人とは2年生になってから

同じクラスになった友達です。



お互いに気が合うのか,

クラスではだいたい一緒に行動し,

放課中もよく遊んでいました。



「もうすぐ夏休みだ!」



リク君が元気な声でそう言いました。



「ですね。

それがどうかしたんですか?」




だぬちゃんが"何を当たり前のことを"と

言わんばかりの返事をすると,



「みんなで毎日昆虫採集に行こう!」

「えーっ!」



まさらちゃんは少し嫌な顔をしました。



昆虫自体は嫌いではないのですが,

そこまで好きでもなかったからです。



「夏休み限定でいいからさ!

少年昆虫団を結成したいんだ!」




ニコニコと自分のやりたいことを

語る少年を目の前にし,

"はっきりと断るのも悪いな"と,

まさらちゃんは思いました。



「夏休みだけですね。

でも三人じゃちょっと

少ないんじゃないですか?」


「安心しな!隣のクラスの

トシって奴に声をかけてきた。」




リク君はこの時点でトシ君には

声をかけていたようです。



「昆虫が好きなの?」

「逆だよ。苦手だから少年昆虫団に入って,

克服してもらおうと思ってね!」




リク君が腕を組みながらそう言いました。



「絶対に無理やり

入れさせられたんじゃ・・・。」




だぬちゃんの予想は当たっていました。



トシ君は結局のところ,

入団をぎりぎりまでしぶり,

リク君たちが闇組織JFと最初に

遭遇した日の後に合流する

ことになったのでした。



「確かにもう一人くらい

いたら楽しいかも!」



リク君はふと,窓際に座って外を

眺めている少年に目をやりました。



そしてその人物の前までやってきて,



「ねぇ,イツキ君だったよね?

昆虫採集のためのチームを

作ることにしたんだけど,

その少年昆虫団に入らない?」



イツキ君はリク君を少し睨むようにして,



「くだらなねぇ。

勝手にやってろ。」




と言い捨てて,

教室から出て行ってしまいました。





「あちゃー・・・。」

「彼は無理ですよ。

あの人はクラスでも浮いていて,

ほとんどしゃべらないじゃないですか。」




二人がリク君の所へ

駆け寄ってきて,

そう助言しました。



「そうかなー。

なんとなく声をかけて

ほしそうな感じがしたんだけどなぁ。」


「そんなわけないですよ。

噂によると彼は,

深夜に中野木商店街や

極小田井商店街に

たむろしている不良らしいですよ。」




イツキ君のそういう噂はすでに

学校中に広がっていたようです。



それはともかくとして,

リク君がイツキ君を

少年昆虫団に勧誘することは

失敗に終わってしまいました。



しかし,リク君は諦めませんでした。



第500話 尾行

エピソード0シリーズ 第1章
授業が終わり,下校時刻になりました。



リク君とまさらちゃんとだぬちゃんの三人は,

イツキ君の後ろをこっそりとつけていくことにしました。



「どうでもいいですけど,

彼を尾行してどうするんですか?」


「さぁ?」



リク君が気のない返事をすると,



「え?無計画ですか?」



だぬちゃんは呆れていました。



「彼がいつも何をやっているか知れば,

入団のきっかけをつかめるかもしれない。」


「そうかなぁ・・・。」



まさらちゃんも呆れていましたが,

とりあえずついていくことにしました。



イツキ君が町中を

歩きながら帰っていると,

数人の少年に囲まれました。



「あれ?なんか捕まったみたいですよ?」



彼らは人気のない裏通りに

向かって行きました。



後をつけていき,

追いつくとそこには

衝撃の光景が広がっていました。



「なんだお前ら・・・?

つけてきたのか?」




イツキ君の拳には

大量の血液が付着し,

したたり落ちていました。



しかしその血液は彼が出血したわけではなく,

地面に転がっている4人の少年たちからのものでした。



一人は壁に頭部を強くたたきつけられたのか,

壁が血で染まり,頭部が裂傷していました。



残りの三人も全員が地面で

もがき苦しんでいました。



例にもれず全員が瀕死の状態でした。



「僕たちが追いつくまでの

一瞬でこれをやったのか・・・。」






さすがのリク君も驚きを隠せませんでした。



「だからどうした?」



彼の眼はまるで血に飢えた狼のようでした。



「言っておくが,

俺は売られた喧嘩を買っただけだ。」




イツキ君はリク君たちを避ける

ようにその場から去っていきました。



「とりあえず救急車・・・!」



リク君はこの場を二人に任せ,

イツキ君を追いかけていきました。



六町公園まで行くと,

彼に追いつくことができました。



「まだ何か用か?」

「あのさ,やっぱり

少年昆虫団に入ってくれよ!」




リク君は勧誘を諦めていないようでした。



「だから断っただろう。

そもそもなんで俺なんだ?」




イツキ君が面倒くさそうに聞くと,



「だって,

入りたそうな顔をしてたから!」




と,答えました。



「バカか・・・。」



彼の態度はそっけなく,

味気のないものでした。



「俺は忙しいんだ。」



「忙しい?」



リク君が聞き返すと,



「そうだ。

俺にはどうしてもやらなくちゃ

いけないことがある。」




彼は拳を握りしめ,

力強くそう言いました。?





第501話~第504話

2024/2/17

第501話 借りを返す

エピソード0シリーズ 第1章
イツキ君はどうしても

やるべきことがあると言いました。



「じゃあ,その"やる事"って

いうのを終わらせたら入団してよ!」




リク君は笑顔で勧誘を続けます。



公園は7月上旬とはいえ,

この時間はまだ日差しが強く,

初夏の太陽が二人を照らします。



イツキ君の頬には

うっすらと汗が垂れていました。



「なんなら,

僕も手伝うからさ!」


「寝ぼけたことを言うな。

お前には無理だ。」






イツキ君は,どうしても一人で

やり遂げようとしているつもりでした。



「なんで?聞いてみないと

わからないじゃない。」


「そもそも,俺のやるべき事が終わっても,

なんとか団に入る義理はない。」




イツキ君はこういう正論がすぐ口に

出すことができる少年でした。



状況を整理し,

理路整然と反論ができる,

とても頭が良い少年だったのです。



「まぁまぁ。とりあえず

そのやるべき事っていうのを聞かせてよ。」




リク君は,相手の考えや悩みを

引き出すことが得意な少年でした。



「最初に言っておくが,

聞いたところでお前には何もできないし,

俺は手伝ってもらおうとも思っていない。」


「うん,それでいいから。」



リク君はイツキ君の口から

何が語られるのか興味がありました。



すでにアブラゼミが鳴き始め,

少しずつその数が増えてくる時期でした。



セミの鳴き声に,

かき消されそうになりながら,

イツキ君は静かに言葉を発しました。



「借りを返す。」



そう,一言だけ。



「借りを返す?誰に?」



疑問をぶつけると,



「もうこの世にいない奴だ。」



彼はとても重く,

暗い声で,

そう言いました。



「死んだ?」

「ああ,殺された。」



とても衝撃的な会話が

繰り広げられていました。



イツキ君は近くのベンチに座り,

回想日よりもさらに一昨日前に

起きたことを思い出しました。



7月6日 夜20時過ぎ 庄外川堤防にて



イツキ君はゲームセンターに飽き,

なんとなく堤防を一人で歩いていました。



軽く散歩をしてから自宅へ帰るつもりでした。



街中を通ってここまでやってきたのですが,

道中はマザーやファーザーの配下たちが

何やら騒々しくしていました。



そんなこともあり,

静かに過ごせる場所を探し,

庄外川へ来ていたのでした。





しかし静かな散歩も後ろからくる

連中によって終わりを告げます。



彼らは四組の少年で,

会話の内容から三大悪童"マザー"の

配下であることがわかりました。



「おい,このあたりか!?」

「ああ,全面戦争になるからな。」

「なるべく有利な位置に陣取れるようにしよう。」

「よし,マザーに報告だ。」



そんな会話が後ろから

走ってくる連中から

聞こえてきました。



「おい,あそこに誰かいるぞ?」



連中の一人が立ち止まり,

ライトで堤防の下を照らしました。



そこはすぐ川に面している場所でした。

そこにいた人物とは・・・。



第502話 必要な逸材

エピソード0シリーズ 第1章
庄外川の川原に倒れていたのは・・・。



イツキ君はそれが誰だか気づき,

下へ降りていきました。



「なんだあいつは?」

「ほっておけ。俺たちは忙しいんだ。」

「そうだ。」



四人組の少年たちは

その場を去っていきました。



イツキ君は倒れている人物を

抱きかかえて,声をかけます。



「おい,大丈夫か!?

何があった!」



その人物は,つい先日の6月末の夜に

偶然出会ったマサルという少年でした。



マサル「イツキか・・・。

久し・・・ぶりだな・・・。」



全身殴られた跡があり,

あちこち骨折していました。



イツキ君はイヤコムから

緊急連絡で救急車を手配しました。



「救急車を呼んだ。

もうしゃべるな。」

マサル「ヘマやっちまった・・・。」



彼はイツキ君の手を握り,

何かを伝えようとします。



マサル「そう・・・いえば,

まだ借りを・・・

返してもらって・・・

なかったなぁ・・・。」

「バカ言うな・・・。

俺は借りなんて作った覚えはない。」



彼は消えそうな声で,



マサル「ああ・・・

そうだったな・・・。」



イツキ君の耳元で何かをささやいた後,

彼は目を閉じてそのまま動かなくなりました。



直後に救急車が到着し,

警察にも知っていることを伝えました。



警察からの話によると,

犯人の特定に全力を尽くすが,

現状では証拠もなく,

捜査は難航するだろうということでした。



明け方にマサルは病院で

静かに息を引き取りました。



イツキ君は病院の待合室で

彼の回復を待っていましたが,

その思いは届きませんでした。



彼はどうやら児童施設の少年で身よりはなく,

施設の責任者が遺体を引き取っていきました。



「俺は・・・借りは作らない・・・。」



病院の椅子で下を向き,

静かにつぶやきました。



「この前の一件で借りを

作ったつもりはないが・・・。」



しばらくして,前を見つめ,



「ただ・・・このままじゃ・・・

俺の気が晴れない・・・。」



彼は立ち上がりました。



「お前を殺した奴は必ず俺が見つけて,

白日の下にさらけ出してやるよ。」







そう決意して,病院を出ました。



すでに日の出を迎え,

まぶしい明かりが差し込んできました。



場面は再び7月8日の六町公園にて―



イツキ君の横にはリク君が

座ってその話を真剣に聞いていました。



「やっぱり僕の思った通りだ。」

「?」



イツキ君が首をかしげて,

リク君を見ました。



「君はとても義理堅く,

まじめな人間だ。

そういう逸材を少年昆虫団は

求めていたんだ。」

「何を勝手な・・・。」



そこまで言いかけた時,



「僕の目は間違っていなかった!」



と言いました。



「よーし!

絶対に君を少年昆虫団に加入させるぞ!」



彼の決意は固いようでした。



第503話 加入の条件

エピソード0シリーズ 第1章
リク君は初夏の太陽が照り付ける日差しの中,

イツキ君をもう一度少年昆虫団へ加入するように誘いました。



イツキ君はしばらく沈黙した後,



「一つ条件がある。」



と言うと,



「何でも言ってよ。」



さもありなんという返事をしました。



「俺は中途半端ことが大嫌いだ。」



さらにリク君に向かって話を続けます。



「だからそんなチームを作るなら,

夏休みだけじゃなく,

ずっと活動できるチームにしろ。」



リク君は黙って聞いています。



「それから言い出しっぺはお前だ。

何があっても途中で辞めるなんてことはするな。」



イツキ君はリク君を

指さしてそう言いました。



「昆虫採集に励むなら,

絶対に最後までやり切れるように団員を導け。」



イツキ君の言葉はどれも小学生に

とってはかなり厳しい物言いでした。



「うん,わかった。

約束するよ。何があってもがんばる!」



リク君は二つ返事でOKをしました。



「約束だ。それに加入できるかどうかは

俺のやるべき事がちゃんと片付いてからだ。」

「わかってるよ。

だから二人で片付けちゃおう!」



リク君はイツキ君が加入してくれることが

うれしくて仕方ないようです。



とてもにこやかな笑みを浮かべていました。

対照的にイツキ君の表情は暗いままでした。



二人は自販機の前に行き,

それぞれ飲み物を買って,

再びベンチに座りました。



先ほどの場所とは違い,

木陰になっており,

暑さはそれほど感じられませんでした。



「リクは三大悪童って

存在を知っているか?」

「もちろん知っているよ。

同級生だろ?」



リク君の返しに,



「全然知らねぇじゃねぇかよ!

あいつらは五~六年生の上級生だぞ。」



と知ったかぶりをするような

リク君に突っ込みを入れました。



「ああ,そうだったね。

勘違いしていたよ。」



リク君は笑ってごまかしました。



「まったく・・・。

俺の目的はそいつらの首だ。」



彼が突然物騒なことを言い始めました。



「なかなか穏やかじゃないね,それは。」

「マサルは死の直前,

俺の耳元でこうささやいたんだ。」



少し間をあけた後で話を続けました。



「"三大悪童"にやられたとな・・・。」

「え?三人の誰にやられたの??」



この質問に,



「そこまでは聞き出せなかった。」



と,答えました。



「ところでお前は強いのか?」



イツキ君がふと気になった疑問をぶつけると,



「うん,めちゃくちゃ強いよ!

技は我流だけど,色々とお世話になった人がいるんだ。」







リク君の口から,

昔お世話になった人の話がでました。



それは一体誰なのでしょうか。



「その人に,コレをもらったんだ。」



リク君は背負っていた

二本の捕虫網を取り出しました。



「ふぅん・・・。

そんなアミで何ができるかわからんが,

足手まといにならないならそれでいい。」



彼はその時は,特に気にも留めませんでしたが,

すぐにリク君の実力を目にして

驚愕(きょうがく)することになるのでした。



第504話 たった二人で悪の巣へ

エピソード0シリーズ 第1章
リク君とイツキ君の二人は

すぐに行動を起こしました。



少し休憩した後,

手掛かりになりそうな場所に

足を運びましたが

成果はありませんでした。



時間はすでに18時となっていましたが,

夏至から何日もたっていないので,

まだまだ明るい空となっていました。



二人の出した結論は,

三大悪童を直接呼び出して

聞き出すことでした。



「まずは三大悪童のマザーって

いう奴に会いに行こう。」


「それなら,

普段縄張りにしている

場所に行くのが早い。」



二人は公園を離れ,

近くの中野木商店街に向かいました。



表通りは一般人の買い物客や

学生でにぎわっていましたが,

少し外れの道に足を踏み入れると・・・。



人相の悪い不良少年や少女が

たむろしている暗黒街となっていました。



マザーの配下には少女がかなり

多く在籍しており,

幹部も同様となっているようです。



イツキ君の顔は彼らにも

知れ渡っていたので,

すぐに周りを取り囲まれて

しまいました。



そこには“阿須撃隊(トゥモロー・リペル)”の

リーダーである四橋猛(17),佐藤慎太(17)や

“シュワル・ツェ・ネッガ”のリーダーである

田宮根津(たみやねづ)(17)もいました。



<阿須撃隊 Wリーダー:四橋猛 佐藤慎太>





<シュワル… リーダー:田宮根津>



田宮「お前はイツキだろ。

何しにここへ来た。」

四橋「ここへ来る意味がわかっているのか?」



二人がメンチを利かせています。



田宮「マザーの首はやらねぇぞ!」



次々に恫喝をしてきましたが,

イツキ君は全く

動じることはありませんでした。



マザーの配下たちはすぐ横に

見知らぬ少年がいることに気付きました。



光「なんだお前は??

ここはお前みたいなガキが

来るところじゃねぇんだよ!」



「オレはリク!

マザーに用があるんだ。」



彼もまた何事にも動じない性格のようです。



光「ふざけんてんのかてめぇはよぉ!」



大声を出して威嚇してきたのは,

光源治(ひかるげんじ)(16)という少年で,

幹部である“紫式部連合”の

下位にあたる“光源治隊”のリーダーでした。



<光源治隊 リーダー:光源治隊>



あまりに喧嘩腰だったので,

リク君は話を進めるために

やむなくその少年を地面にひれ伏せました。



周囲は一瞬何が起きたか

理解していないようでした。



それはあまりに速く

振りぬかれた

捕網虫"天照"によって,

後頭部を直撃し,

そのまま地面にめり込む

ようにして倒れこんだのでした。



「一応これでも手加減して

いるんだからな。」



リク君は帽子の上から頭を

ぼりぼりと?きながら,

そう言いました。



もちろん相手は気を失って

何も聞こえていませんでしたが・・・。



「お前・・・。」



イツキ君の目には

リク君の動きが見えていました。



見えていたからこそ,

驚きを隠せませんでした。



やられたままでは格好がつかないので,

“光源治隊”約50人,

“阿須撃隊”約80人,

“シュワル・ツェ・ネッガ”約40人の

メンバーがもみ合うようにして

二人に突っかかろうとしました。



リク君はその場で,

捕網虫"天照"を10mほど伸ばし,

敵の攻撃を避けると,

長さを通常サイズに戻した瞬間に

落下の速度を利用して,

不良少年たちの塊に突っ込んでいきました。



大きな爆風と共に,

着地点に近い不良たちは

吹き飛ばされて

行動不能になっていました。



おそらく彼らは,

何が起きたのかわからないままに

気絶させられたことでしょう。



周囲に残った連中は恐ろしくなり,

先ほどの勢いをなくし,

茫然自失としていました。



この様子を見ていた,

“爆走・ポニーガールズ”のリーダーであり,

組織の幹部でもある影山という

少女がイヤコムを使って,

マザーに急いで連絡を取り始めました。



影山「ええ,お願いします。

イツキと一緒に来ている奴が

とにかくヤバイんです!」

生井「くそっ!こっちはお前たちの相手を

している暇なんていないのに!」



30人のメンバーから構成される

“秋田御米隊”のリーダーである

生井という少女が何か

意味ありげなことをつぶやきました。



そして5分も立たないうちに,

巨大な図体が遠くから見え始めました。



三大悪童で唯一の女子である

"聖母"マザーです。



身長は180cmを超え,

体重は100kgを超える巨体です。



気に入らない相手には胃酸を吐きかけて

衣服や皮膚を溶かすという

恐ろしい特技を持っています。



マザー「アタシは今とても

忙しいんだよ!

なぁイツキ!?」



<三大悪童 水俣静華 通称“聖母”マザー>



彼女はイツキ君の顔の目の前まで

自分の顔を近づけて,

恐ろしい形相で睨みつけました。



果たして二人はこの後

どうなってしまうのでしょうか。



そしてこれは二人にとって

想定済みなのでしょうか。



第一章 完







第505話~第508話

2024/3/23

第505話 怒れる聖母

エピソード0シリーズ 第2章
リク君とイツキ君は三大悪童の一人である

“聖母”マザーの縄張りに足を踏み込んでいました。



そこで暴れまわっていると,

本人が数多くの配下を

引き連れてやってきました。



彼女は身長180cm体重100kgの巨漢でした。



しかも年齢は11歳と三大悪童の中で

唯一年下の小学5年生なのです。



そんな彼女は圧倒的な力と

カリスマ性でこの地区に君臨していました。



彼女ははイツキ君をにらみつけます。



どうやら二人は以前から

お互いに面識があるようです。



マザー「先日,アタシの勧誘を断って

おきながらいったい何の用だ?」



“聖母”マザーはイツキ君を

幹部に迎えるために,

声をかけたのですが

断られていたようです。



その恐ろしいほどの形相で

睨みつけられた人間は,

夢にも出てくるほどの

恐怖を感じるといいます。



日和「しかしまぁ,

うちらのシマで暴れてくれたな。」

涼香「となりのガキはなんだ?

ふざけてるのか?」



マザーと共にやってきた

ナンバー2の日和と

ナンバー3の涼香がいました。



日和は17歳の少女で

中学を卒業と同時に

紫式部連合の3代目

レディース総長に就任し,

マザーを支えていました。



<マザー幹部No.2&紫式部連合 総長:紫日和 >



涼香も同じ年齢の17歳で

こちらも清涼納言連合を立ち上げ,

初代レディース総長として

名を挙げていました。



<マザー幹部No.3&清涼納言連合 総長:清水涼香 >



先ほどからこの場にいた,

“阿須撃隊”や

“シュワル・ツェ・ネッガ”は

彼女の下位組織にあたります。



涼香がリク君に視線を送りました。



「オレはリク。

マザーに用があって

イツキ君と一緒にここへ来た。」



マザー「用だと!?

アタシは貴様たちに

用なんかないね。」



彼女は取り付く島も

ありませんでした。



「単刀直入に聞く。

マサルという少年を

知っているか?」



イツキ君が有無を

言わずに問い詰めると,



マザー「人の話を聞かない奴だな!

マサル?誰だ?知らないな。」

日和「アタシ達には数百人のメンバーがいる。

中にはそんな名前の奴が

いるかもしれないが・・・。」



彼女たちは口々にそう言いました。



「いや,あいつは三大悪童の

メンバーではないと言っていた。」



涼香「じゃあ,余計にそんな

奴の事なんか知らねぇよ!」



イツキ君はさらに続けます。



「そいつが三大悪童の誰かに殺された。

俺はそいつを見つけ出し,

けじめをつけさせる。」



マザー「ああん?それが

アタシだっていうのか?」



彼女は大きく息を吸い込み,

一瞬だけ動きを止めると,



マザー「ゴバオァァァァ!!!」



大量の胃酸を口から吐き出しました。



「うおっ!?」



彼は間一髪でそれを避けました。



地面にまき散らされた胃酸は,

異様な音を立てながら広がっていきました。



「これは,胃酸か・・・。

しかも通常の人よりも

かなり量が多いし酸性度も高そうだ。」



マザー「その通りだ。

アタシの胃袋は特異でね。

こんなこともできるのさ。」



日和から1Lの牛乳パックを受け取ると,

一気に全部を飲み干しました。



マザー「ぐふっ。

やっぱりお口直しにはこれに限る。

レディは口臭にも気を配らなくちゃね。」



「(いやいや,次吐いたら牛乳が

出てくるんだろ・・・。

勘弁してくれよ・・・。)」



さすがのイツキ君も少しビビったのか,

マザーと距離を取りました。



日和「あたしたちはそんな誰か

わからない奴にかまっている

暇なんてないんだよ!」

涼香「そうだ!これからファザーの連中に

落とし前をつけさせるんだ!」



二人の言葉からはかなり

切迫した様子が伝わってきました。



「落とし前?なんでまた?」



リク君の問いにマザーは何と答えるのでしょうか・・・。



第506話 全面戦争に向けて 前編

エピソード0シリーズ 第2章
三大悪童のマザーを中心に日和と涼香の

幹部二人が並んで立っていました。



その後ろには幹部二人が持つチームのメンバーや

さらにその下位組織のチームもいました。



さらにマザー直属の部隊も

この後の事態に備えてなのか,

厳重態勢で彼女を護衛していました。



その数はざっと,40人の精鋭たちです。



商店街の裏路地には

入りきらないほどの人数が

すでに集まっていたのです。



その数はふくれあがっていて,

すでに500人をこえているようです。



先ほどリク君にやられた連中は

ようやく目を覚まし,

他のメンバーに介抱されていました。



マザー「アタシはここにいるメンバーを引き連れて

これから大戦(おおいくさ)をするのさ。」

日和「ここに集まっているのは精鋭ばかり。

マザーの名の下に大号令を

かけているからさらに集まる。」



ナンバー2の日和が

前に出て力強く言いました。



涼香「その数はゆうに800人は

超えるだろうね。

末席まで集めれば900人を超える。」



ナンバー3の涼香が

キセル煙草を咥えながら,

ドヤ顔でそう言いました。



ここにいるメンバーだけでなく,

他の場所からも続々と集まってくるようです。



「本気か?

とんでもないことになるぞ。」



リク君は彼女たちの凶行を

止めようと考えました。



「俺はお前たちの

行動に興味はない。

俺の目的がここじゃないなら

すぐにでも去るさ。」



イツキ君はこの場を

立ち去ろうとしました。



どうやら気持ちは次の三大悪童の

居場所に向かっていたようです。



リア「もしかしたら関係があるかもよ?」



マザーの少し後ろの位置で

彼らのやり取りを聞いていたようです。





<黒いカナリア リーダー 黒田リア>



この少年は総勢80人の"黒いカナリア"を

まとめるリーダーで,

マザーの参謀も務めていました。



ちなみにこの少年の名前は黒田リア,

同じチームのサブリーダーで

双子の妹のカナがいました。



妹はこの場にはいないので,

別の場所で待機しているようです。



「どういうことだ?」



リア「マザー,少しだけ彼らと

話をしてもよろしいですか?」

マザー「時間が無いんだ。手短にな。」



彼女の許可を得たので,

黒田リアは話を続けました。



リア「我々がなぜ,

ファザーと戦争をしようと

しているのかを説明する。」



彼が言うにはそれが

イツキ君の知っている

マサルの死と関係があるかも

しれないとのことでした。



「じゃあ聞かせてよ。」



リク君は天照と月読を

背中にしまいました。



リア「事の発端はファザーの幹部である

“時尾”という奴がうちのメンバーの

時雨(しぐれ)さんをそそのかしたことが始まりだ。」



イツキ君は腕組みをしながら,

何も言わず話を聞いていました。



リア「時雨さんはその男を本気で

好きだったみたいだが,

敵対する悪童チームとの

恋愛など当然ご法度だ。」



マザーは日和から

2本目の牛乳パックを受け取り,

飲み始めました。



リア「案の定,その男は彼女から

俺たちがもっている情報を

盗もうとしていたようだ。」



「情報?ああ,

つまり弱みを

探していたってわけね。」



リク君が本質を突くことを言ったので,

周りの空気が一瞬変わりました。



一同はマザーがまた

怒り狂わないか心配していたのです。



マザーは牛乳を飲み干しましたが,

特に吐き出すことはしませんでした。



「なんでその二人が

恋仲だとばれたんだ?」



リア「匿名のタレコミが参謀である

俺の所に来たんだ。

時雨さんはマザー直属の

メンバーだったからな。」



彼は話を続けます。



リア「イヤコムで二人が普段デートをしている

というカフェの場所と時間だけ指定してきたんで,

念の為に部下に確認させに行かせた。」



「そうしたら,

本当に二人がカフェで

楽しくしゃべっていたってことかな。」



リク君が先に結論を

言ってしまいました。



リア「ああ,そうだ。」



さらにこの後マザーが

全面戦争を決意するに

至るまでの話がつづきます。



第507話 全面戦争に向けて 後編

エピソード0シリーズ 第2章
マザー「すぐに時雨を呼んで問い詰めたさ。

しかしあの子は何もしゃべらない。」



「それで?」



イツキ君にせかされるようにして,

リアが続きを語りだしました。



リア「結局その日,時雨さんはずっと黙ったまま。」



彼はその日のことを

思い出しながら続きを語ります。



リア「そして次の日に話は飛ぶ。

彼女は俺たちの目を盗んで組織の縄張りから消えた。

そしてすぐその後にファザーの配下にさらわれた。」



「誘拐ってこと・・・?」



リク君の問いかけにマザーは,



マザー「そんな生ぬるいもんじゃないさ。」



と言って暴れまわり,

怒りを隠そうとしませんでした。



涼香「マザー!落ち着いてください!」

日和「そうです・・・!」



二人の最高幹部が必死で

なだめようとします。



「その二人は,

恋仲だったんだろう?

誘拐じゃなくて

駆け落ちじゃないのか?」



いわゆる恋仲の二人が

ひっそりと姿を隠すことです。



リア「それはない。

時雨さんが手足を縛られて,

不自由になった姿を

撮影した写真が送られてきた。」



「送られてきた?どこに?」



リク君が少し納得していない

様子で質問をしました。



リア「俺のイヤコムの端末にだよ。

俺のIDはすでに

向こうに渡っていたみたいでな。」

マザー「写真にはあの子と

誘拐した奴も一緒に写っていた!」



彼女が再び怒り散らします。



「映っていた人物が

ファザーのメンバーの

一人だったというわけか。」



日和「ああ,"白虎隊"の

虎田虎次郎だ。」



<白虎隊 虎田虎次郎>



どうやら彼女たちの

言っていることは本当で,

かなりあせっている

状態のようです。



時雨という仲間を取り戻すために,

全メンバーに集合をかけ,

ファザーとその配下を相手に

全面戦争を仕掛けるつもりです。



リア「ここでお前が先ほど言っていた

マサルという人物が出てくる。」



「ようやくだな。」



彼の眼の色が変わりました。



リア「最近,三大悪童の周りを

嗅ぎまわっている奴が

いるという噂を聞いた。」



「あんたらの大将の所にもか?」



イツキ君はでかい図体の

彼女を指さしました。



マザー「失礼な奴だなぁ。

アタシんとこには来てないよ。

そういういやそんな話が

ちょっと前に出ていたね。」



彼女の耳にも

一応入っていたようですが,

まったく気にしていなかったようで,

今まで忘れていたようです。



日和「でも"ファザー"か"シーザー"の

どちらかには探りを

いれていたってことか?」

リア「おそらくは・・・。

でも確証はありません。

基本的に他の悪童と

馴れあうことがないので・・・。

情報がほとんど入ってきません。」



彼がそう説明すると,



「それで,

その探っている人物っていうのが

マサルって人だと言いたいんだね。」



と,リク君が言いました。



リア「ああ,そうだ。

もしかしたら探りの最中に

今回の誘拐の件を知ってしまい,

消されたんじゃないのか?」



「まさか,

そんなことがあるわけ・・・。」



そこまで言いかけて口をつぐみました。



「可能性としては・・・

あるね・・・。」



イツキ君とリク君と

同じ考えに至りました。



「ってことは,

あいつを殺したのは

ファザーの連中ってことか!」



イツキ君が激高して声を上げると,

マザーの配下数名は

ビビッて腰が抜けてしまいました。



マザー「お前,ただもんじゃないなぁ。」



彼女はイツキ君をじっくりと

眺めてこう言いました。



マザー「アタシたちの戦争についてきたな。

お前はダチの仇が打てる。

こっちにとっても大きな戦力になる。」



イツキ君の出した答えは・・・。



第508話 いざ庄外川へ

エピソード0シリーズ 第2章
三大悪童のマザーはイツキ君に

ファザーとの戦争への参加を求めました。



イツキ君は,



「いいだろう。

俺は俺の目的のために動く。」



と,答えました。



リク君もこの表明に同意しました。



マザー「好きにしな。

そうと決まればこの後の

軍議にも参加してもらおう。」



リク君はイツキ君の力になるつもりだったので

一緒についていくことにしました。



マザー「一応アタシの配下たちを

簡単に紹介しておいてやるよ。」



二人は面倒くさいので断ったのですが,

彼女はどうやら自分の勢力を自慢したいらしく,

聞き入れませんでした。



マザー「まずはこの二人。

日和と清香だ。

どちらも喧嘩の腕は

最強クラスだよ。」



二人はお互いに一瞬だけ目を

合わせた後,すぐにそらしました。



マザー「その辺の半グレ野郎なんか

には負けはしない。

女だからって甘く見ていると

ひどい目に合うからね。」



彼女は続けて,

黒いカナリアのリーダーであり,

参謀でもあるリアと,

その横に並んで立っていた

カナも紹介しました。



いつの間にか,

妹のカナが合流していました。



いつまで待っても兄がやってこないので

心配してかけつけたようです。



カナ「よろしくです・・・。

兄がいつもお世話になっているのです・・・。」



彼女はマザーに深々と

頭を下げてお礼を言いました。



一見おとなしそうな

少女に見えますが・・・。



マザー「ここまでが今回の大戦で

後詰を務めるだろう面々だ。

次は中陣を任せる傘下チームだよ。」



名前を呼ばれたリーダーたちが素早く

マザーの近くにやってきました。



マザー「"爆走・ポニーガールズ"の影山優香と

"赤い戦線(レッド・ライン)"の瀬良秀太だ。」



影山はチーム名にあるように

後ろ髪をポニーテールにしていました。



マザー「こっちにいるのが"光速の粒子(アグネス・タキオン)"の河内洋平と

"白い稲妻(ホワイト・ライトニング)"の山本完介だね。」



河内「今回の大戦では我がチームが

全力で相手を撃滅して見せます!」



この人物はかなり緊張している様子でした。



他にもいくつか不良どもが

集まったチームがあるようですが,

時間も押しているので

移動することにしました。



一部のメンバーはバイクや原付で移動し,

残りは歩くようです。



あまり目立って一般の人に

通報されることを懸念したようです。



リク君たちは歩きながら,

幹部とその配下グループが

全員集合できる広さのある

庄外(そうげ)公園へ向かいました。



そこはファザーとの縄張りの境界から

わずか500mの距離にありました。



「ねぇ,イツキ君。」



その公園へ向かう道中で

リク君がイツキ君に話しかけます。



「そのマサル君って人は何のために

悪童に探りをいれていたんだろう?」

「確かに気になるな。

だが,俺はあいつと会った時に,

悪童の"ある事"を調べていると言っていた。」



彼はつい先日のことを思い出して,

リク君に説明しました。



「まぁ,ファザーっていうのに

会ったら直接聞けばいいか。」



涼香「そんなに簡単じゃねぇよ!」



前を歩いていたナンバー3の

涼香が会話に入ってきました。



涼香「向こうがあんな手に出るってことはうちらが

全面戦争を仕掛けることは当然わかっているはずだ。」



「なるほど。」



リク君が相槌をうちました。



日和「つまり,向こうも総戦力を動員してくる。

そう簡単に大将の首は取れないってことだよ。」



涼香の隣を歩いていたナンバー2の

日和も会話に入ってきました。



「しかし,なんでファザーはその時雨って子を

誘拐した上にそんな写真まで

送り付けて挑発してくるんだ?」

「確かに・・・。

なんのメリットもないような。」



二人が再び考え込んでいると,



リア「おそらく,時尾と時雨さんの関係を利用して,

我々の戦力を一気に叩くチャンスと思ったんだろう。」



と,答えました。



マザー「あいつらの作戦にはまったふりをして

こっちからあいつらを壊滅させてやるのさ!」



彼女はすでにやる気十分な状態でした。



「一つ気になる。

その時雨って女のためになぜそこまでする?

組織全体を危険にさらしてまでする報復なのか?」



マザー「あたりまえさぁ!」



先頭を歩いていた

マザーが大声で叫びました。



マザー「時雨ねぇはアタシのたった

一人の姉なんだ。家族なんだよ。」



なんと時雨は彼女の姉だったのです。



姉であっても立場としては

マザーの方が上だったので

普段は呼び捨てにしているようです。



「そういうことか・・・。」



リア「俺にもカナという妹がいる・・・。

マザーの気持ちは痛いほどわかります。」



マザー,イツキ君とリク君,

そして幹部たちとその配下総勢900名が

庄外(そうげ)公園に集結しました。



作戦参謀であるリアより主な

役割と作戦が読み上げられました。



その内容を簡単にまとめると・・・。



・人気の少ない午前0に侵攻を開始

・なわばりの境界である庄外(そうげ)川を

橋と川から越えていく



・おそらくこちらの動きは察知されており,

向こうも迎撃態勢で応戦し,

川の土手付近で大規模な戦になるだろう



・勝利条件は悪童ファザーの

全面謝罪と賠償および時雨の解放



・リクとイツキは遊撃部隊として参戦する



・戦陣隊形(一部)は図の通りとする





*チーム名の後ろにある数字はおよその人数 

*陣形図は中陣まで表示



先方に二次傘下のチームが多く配置され,

第二~三の中陣に一次傘下チームや

一部の幹部チームとなっていました。



この図には表示されていないが,

マザーを守る本陣や後詰めには

日和や涼香などの部隊が配置されています。



陣形は魚鱗の陣を採用していました。



これは防御よりも攻撃に特化した陣形であり,

その配置が魚のうろこに似ている

ことからこの名前が付けられました。



時刻は23時55分・・・。



庄外(そうげ)川のマザー縄張り側にて・・・。



すでに三大悪童の一人"聖母"マザー率いる全部隊

約900人が息をのんで合図を待っている状態でした。



そしていよいよその時はやってきたのです。



第509話~話512話

2024/4/13

第509話 庄外川の大戦①

エピソード0シリーズ 第2章
庄外(そうげ)川の土手下から慎重に陣を動かし,

先方隊が土手の頂上まで来たとき向こうの

対岸にはいくつかの光が見えました。



それはファザー率いる1000人近い

メンバーが発していた光でした。



歌仙「連絡します!すでに敵は万全の

迎撃態勢で待ち構えています!」





<秋田御米隊 リーダー:歌仙乙女>


"市城一九尾(いちしろいちくび)"という先鋒隊による

伝令がマザーや幹部らにすぐさま伝えられました。



彼女たちはまだ土手から数十メートル

離れた場所にいました。



そのころリク君とイツキ君は第一陣の

メンバーたちと一緒にいました。



第一陣の中で有力とされていたのは規模150人を誇る

"清涼納言連合"の配下チームである"阿須撃隊"がいました。



他にも同じく配下の"六出梨レディース"の

厩殿水滸(うまやどのすいこ)や

"秋田御米隊"の生井妹子も

士気の高いレディースのチームでした。





<秋田御米隊 リーダー:生井妹子>


光「いっておくがこれは俺たちの戦いだ。

マザーが参戦を認めたらしいが,

俺たちは別にお前たちの戦力など期待していない。」



先鋒を務める"光源氏隊"のリーダーは

自分たちの実力に絶対の自信を

持っているようでした。



「さっきリクにやられたくせに

その自信はどこから来るんだ・・・。

初めからお前たちと馴れ会うつもりも

味方になったつもりもない。」


「そうそう。

それぞれの利害が一致したから

今ここにこうしているんでしょ。」



リク君はまだ天照と月読をしまったままです。



「本当にそのアミで

戦うつもりか?」



イツキ君はすでにリク君の実力を

知っていましたが,改めて聞きました。



「こうみえて,

僕って殴り合っても

けっこう強いんだよ!」



二かっと笑いながらそう答えました。



「そりゃあ楽しみだ。」



マザーの名の下に参謀であるリアは,

先鋒の"シュワル・ツェ・ネッガ"と"阿須撃隊",

"光源氏隊"に川を渡って突撃するように命じました。



さらに相手へのかく乱として"六出梨(ろくでなし)レディース"と

"秋田御米(あきたおこめ)隊"には橋を渡って

敵の陣形を横から攻撃するように指示を出しました。



"市城一九尾(いちしろいちくび)隊"はリーダーの歌仙を中心に,

情報収集と他の陣営への伝令として川の手前に配置されました。



先鋒隊である第一陣はこの6部隊と

数十名のさらに小さい下位組織で構成されていました。



各陣営は配置につき,イヤコムによる

号令の合図で行動に移りました。



三大悪童のマザー陣営約900人,

ファザー陣営約1000人が

うなりをあげて衝突を始めました。



これがのちに不良界で伝説の戦いと語られる

"庄外川の大戦(そうげがわのおおいくさ)"です。



阿須撃隊が川を中ほどまで

渡ったところで,敵の投石が始まりました。



この部隊は魚鱗の陣の先端に

配備されていました。



先鋒隊の中では最も攻撃力が

ある部隊が担うポジションなのです。



この川はこの時期は水深が浅く,

平均してひざ下程度しかなく,

多少速度が遅くなるものの

渡河(とか)には支障がありませんでした。



田宮「投石とは卑怯な連中だ。」





<シュワル… リーダー:田宮根津>



シュワルのリーダーである

田宮が投石に苦戦しながらも

歩みを進めます。



佐藤「しかし,そんなことはお見通しだよ。」



<阿須撃隊 Wリーダー:佐藤慎太>



四橋「その通りだ,相棒!」



<阿須撃隊 Wリーダー:四橋猛>



阿須撃隊のダブルリーダーである

佐藤と四橋もひるむことなく進みます。



マザーの渡河先鋒隊はほぼ全員が

プラスチックや金属でできた

簡易の盾を装備していました。



投石に効果が見られないことがわかると,

ファザーの先鋒隊も川に入り,

突撃を開始しました。



阿須撃隊の斜め右後ろに

配備されていたのが光源氏隊でした。



この部隊のリーダーである光源治(ひかるげんじ)が

先に飛び出して相手に掴みかかりました。



どうやら一番槍は彼の手柄のようです。



川の流れに足を取られながら,

接近戦の喧嘩が始まりました。



他のメンバーも相手を見つけ,

取っ組み合いを開始しました。



あちこちで相手を罵倒しあう声と,

うめき声が聞こえてきます。



それぞれが必要最低限のライトを持っていたので

相手を見失うことはありませんでした。



周囲には電灯も多く,

視界は開けていました。



マザーの様々な部隊に川岸から投石が来るので,

渡河作戦は非常に危険が伴う任務となっていました。



リク君とイツキ君はしばらく

堤防の上から様子をうかがっていました。



「とりあえず,

相手の幹部を一人捕まえて,

ファザーの陣形と居場所を聞き出すのが早いか。」



「そうだね。

そうしようか。」



二人は川の渡河を回避し,

橋から正面突破で敵の陣形の

中に向かって行くことにしました。



いよいよ二人もこの戦いに

参戦していくことになるのです。



第510話 庄外川の大戦②

エピソード0シリーズ 第2章
先鋒隊の攻防は一進一退になると予想されていました。



魚鱗の陣で重要ポジションを務める阿須撃隊が奮闘し,

敵の陣地へ突っ込んでいきました。



一方でその右後側に配備された,

光源治隊は苦戦を強いられていました。



シュワル・ツェ・ネッガは相手との

実力がほぼ互角で拮抗していました。



光源氏隊50人と対峙する相手は

ファザーの先鋒隊の

極限の蜃気楼(リミット・ミラージュ),

極限の好敵手(リミット・ライバル),

ウッド・サターンの3チームでした。



規模はそれぞれ10人,20人,15人と少人数でしたが,

それなりにくせのある連中のようです。



"極限の蜃気楼"のリーダーを百家 卜(はっけ うらない)が,

"極限の好敵手"が沖邑と三ツ矢,

ウッド・サターンは紀 貫之(きの つらゆき)が

率いていました。



光「敵連合チームよりも人数は

こちらの方が上だ!数で押し切るぞぉ!!」



彼が大声でメンバーに発破をかけました。



しかし,光源氏隊のメンバーは何人かが

最初の投石で戦闘不能になり,

のこったメンバーも個別撃破され,

人数のアドバンテージは

すでにありませんでした。



光「ばかなっ!」



一方で川の中央付近まで進出していた

佐藤と四橋が率いる阿須撃隊でしたが,

ここで進撃のペースが止まります。



部下から多数の被害報告が

聞かされる状況に陥っていました。



四橋「そんな・・・!なぜ・・・。」



彼が相手のメンバーを見て

顔面蒼白状態になっていました。



佐藤「なぜ,"三猿"がこんな

前線に出てくるんだ・・・!?」



そこにはファザーの幹部でもある三猿と

呼ばれるチームが目の前にいました。



このチームは3人のリーダーによる

合議制で成り立っていました。



リーダーの名前はそれぞれ,

ミザール・ハグハグ,石清水(いわしみず)是清,

黄金井(きかない)雑夫と名乗りました。



年齢は全員が18歳と

彼らよりも若干年上でした。





石清水「快進撃ごくろうさーん!

ああ,何も言わなくていいよ!

全てわかっているから!」



そういうが早いか,

強力な脚力でジャンプし,

飛びかかってきました。



阿須撃隊のメンバーは次々に

川へ沈められていきました。



三猿は50人からなる組織で

人数では80人の阿須撃隊が上でしたが,

質は完全に三猿が上でした。



阿須撃隊のメンバーは三猿の

メンバーに次々と駆逐され,

ついには崩壊してしまいました。



リーダーである四橋も奮闘することなく,

一方的にやられ,戦闘不能になりました。



佐藤「おい,四橋!」



黄金井「人の心配をしている場合じゃないよぉ。

たいしたことないねぇ。

マザーの部下たち・・・。

あ,何も聞かなかったことにしてね!」

ミザール「俺は・・・何も見ていない。」



彼は白目をむいたまま,

戦っているようで相手が見えてないようです。



佐藤「こんなやつらに負けてたまるかぁ!!」



渾身の拳をミザールに突き出しました。



しかし,白目をむいて目が見えない

はずのミザールは軽くかわすと,

体勢を崩した彼に向かって強力な

かかと落としを脳天に浴びせました。



佐藤「ぐほっ!!」



彼はそのまま倒れこみ,

川底に沈んでいきました。



佐藤「今日から・・・俺は・・・

ここで大活躍する・・・

はずだったのに・・・。」



ものすごい数の不良軍団が

ザブザブと音を立てながら

川の中を進軍していきます。



マザー軍はすでに光源氏隊が潰走(かいそう)し,

阿須撃隊が半壊しており,

左陣に構えるシュワル・ツェ・ネッガ

のみが奮闘を続けていました。



彼らの相手は"巨悪な聖闘士(デビル・セイント)"で

秋桜 太郎(こすもす たろう)(15)が

まとめているチームです。



このチームはファザーのナンバー3である

岡嶋清(18)がリーダーを務める

籠球愚連隊の配下チームでもありました。



秋桜「俺のコスモが湧いてきている!!」



田宮「頭がいかれてんのか,

そっちのリーダーは!」



この言葉がきっかけとなり,

デビル・セイント総勢50人が

団子になって突っ込んできました。



田宮「よし,いまだ!」



阿須撃隊のリーダーである田宮が手を挙げて

メンバーに何か指示を出しました。



何か作戦があるのでしょうか。



第511話 庄外川の大戦③

エピソード0シリーズ 第2章
庄外川の中腹ではマザーの

先陣部隊であるシュワル隊と

ファザーの先陣部隊である

“デビル・セイント”が戦闘中でした。







シュワル隊の挑発によって,

デビル・セイントは“秋桜”を

含めたメンバー全員が

一団となって突っ込んできました。







田宮が合図を出し,

素早く二手に分かれて

広がってスペースを空けました。



するとデビル・セイントのメンバーが

次々とか川の中へ沈んでいきました。



最初に沈んだのは,

リーダーである秋桜でした。



秋桜「おい・・・ゴバッ・・

これ・・・どうなってん・・・

グハッ・・・。」



前の勢いに任せて次々と突っ込んで

いくので急には止まれず・・・。



シュワル隊はさらに彼らの後ろに回り込み,

残っていた部隊をスペースに

押し込んでいきます。



不意を突かれたデビル・セイントの

メンバーはパニックになり,

川に足を取られて,流されるか,

沈むかしていました。



どうやら,ほぼ浅いこの川で,

この部分だけはくぼみになっており,

水深が2mを越えていたようです。



暗闇で急に足を取られたことにより,

パニックとなってしまったのでしょう。



田宮「ちょろい連中だ!」



秋桜「俺の・・・屁賀沙栖龍聖拳を・・・

くらわせ・・・ゴボゴボ・・・。」



川の地形をよく知った上で

利用した戦術的な勝利でした。



この戦いには勝利したものの,

敵は鶴翼の陣を引いており,

さらに外側から畳みかける

ようにして迫ってきます。



田宮は阿須撃隊が“三猿”によって

壊滅させられたことを察知し,

侵攻方向をそちらへ向けました。







外側から向かってくるその他の勢力は

味方の他のチームに任せることにしました。



先鋒隊壊滅の知らせは“市城隊”から

すぐに本陣へ伝えられました。



それぞれのチームの情報統制係が

連絡専用のイヤコムを装着しており,

伝令はスムーズに行われていました。



マザーは知らせを聞き,

すぐに第二陣を送り出す

ことを決定しました。



すでに中陣として

左に“赤い戦線(レッド・ライン)”,

中央に“白い稲妻(ホワイト・ライトニング)”,

右に“光速の粒子(アグネス・タキオン)”が

配備されていました。





この3チームが三猿など

渡河してくる敵に対応するようです。



しかし,敵側も行動が早く,

増援として,四神とよばれる4チームの一角である,

"玄武"をシュワル・ツェ・ネッガへ向かわせ,

消耗した左側の3チームを支援するために,

同じく四神の一角である"朱雀"を送り出しました。







さらに三猿の後ろ盾として,

"ゴルゴダの丘"の姿が見えました。



このチームはファザーの参謀でもある手塚の配下に属していて,

メンバーは100人を超える大勢力となっていました。



歌仙「三猿の背後に大きな勢力が見えます!

おそらく高須率いるゴルゴダだと思われます!」



情報収集部隊でもある

市城のリーダー,

歌仙が叫びました。



マザー「向こうも本気だねぇ!上等だよ!」



本陣はかなり殺気づいていました。



彼女たちも場所を移動し,

堤防の上までやってきました。



戦況を良く見渡すためです。



少し時は坂戻り,庄外(そうげ)川にかかる

庄外(そうげ)橋での様子を確認してみましょう。



奇襲部隊として配備された六出梨レディースと

秋田御米隊は堂々と橋をわたっていました。



人数は合わせて50人ほどいたので

完全に気配を消して奇襲作戦を

実行することは不可能でした。



それはマザーの参謀であるリアもわかっていました。



彼女たちのチームの後ろには

リク君とイツキ君もいました。



「えっとロクデナシ?

の人たちかなり前に進んでいるね。」


「そうだな。今のところ敵の迎撃はないらしい。

このままなら橋を渡れそうか・・・。」



そう言った時,前から大きな悲鳴と

怒声が聞こえてきました。



「どうやら,そううまくは

いかないみたいだな・・・。」


「うん,そうみたいだね。」



二人は少しペースを上げて

前に進んでいきました。



その先には・・・。



第512話 庄外川の大戦④

エピソード0シリーズ 第2章
庄外橋を渡るマザーのチームを待ち構えていたのは,

ファザーの先陣部隊である鬼塚みひろ(17)が

率いるレディースチームである

マッド・ジュピターでした。



<マッド・ジュピター リーダー:鬼塚みひろ(17)>



さらにもう一チームは那須野清子(17)が

率いる同じくレディースチームの

ヤ・サイセーレディースでした。



<ヤ・サイセーレディース リーダー:那須野清子(17)>



マザー側は六出梨レディースの

厩殿水滸(うまやどのすいこ 17)と

秋田御米隊の生井妹子(いくいもこ 18)が

連携を取りながら戦いを進めることにしました。







厩殿「マザーのレディースを

なめるんじゃねぇぞぉ!!」





<六出梨レディース リーダー:厩殿水滸(17)>



とても女子と思えないほどの怒号で

彼女は敵の群れに向かって行きました。



手には愛用の木刀とゴルフの

アイアンを持っていました。



どうやら彼女は2刀流のようです。



仲間も我先にと敵の大群に

突っ込んでいきました。



生井「アタイらも負けてられないよ!」



彼女は飛び道具である

ボーガンを持っていました。



向かってくる相手の心臓めがけて

躊躇なくボーガンの矢を

放っていきました。



距離があるのでなかなか致命的な

ダメージを与えることはできませんでしたが,

戦況を有利に進めていました。



しかし,ヤ・サイをまとめる那須野が

最前線に出てきたことで状況が変わってきました。



那須野「そんなおもちゃ,

あたしには効かないよ。」



生井「ならためしてあげるわよ!」



生井はボーガンを構え,

矢を次々と放っていきました。



しかし,そんな攻撃を軽くかわしながら,

那須野は生井に近づいていきます。



そして,一周の隙をつき,

生井の腹に強烈なパンチを放ちました。



生井「ごほっ!!」



次の瞬間,那須野は彼女を持ち上げ,

橋の上から力強く川に向かって叩き落しました。



彼女は叫び声をあげながら水面に

背中から打ち付けられました。



生井を失ったことでチームの指揮が取れなくなり,

秋田御米は潰走(かいそう)してしまいます。



片側の大きな戦力を失った“六出梨”は

徐々に苦戦を強いられます。



厩殿「くそっ・・・。

なんてこった・・・。」



チームの幹部である斎藤力(15)と

北野鰐御(わにお)(16)が

フォローに向かいました。



<左:斎藤力 右:北野鰐御>



斎藤「ここは俺たちに任せて,

姉さんはマッドの連中を頼みます!」



彼がその場を離れて橋の

右側に向かおうとした時・・・。



北野「おい,敵の後ろからさらに何か来ているぞ!!」



大きな声を上げて指をさす方向には・・・。



ファザーの中陣を務めるはずの

四神の一つである"青龍"が見えました。



その規模は約40人で,リーダーには

十影龍五郎(18)がいました。



彼は隊の先頭に立ち,

チームを鼓舞しながら進軍してきました。



この戦況を読んでいたのか,

"黒いカナリア"が動き出します。



このチームはマザーの参謀である黒田リア(17)と

双子の妹であるカナ(17)が

リーダーを務める主力チームでした。



本来であればマザーの身辺を

防衛するはずですが,

こうして最前線にやってきました。



リア「さて,ここまでは予定通り。」



カナ「うんうん!みんなぱあっと!

やっつけちゃおっ!」



先ほどまでの内気な性格とは違い,

ダガーナイフを持つと性格が変わるようで,

早く人を殺したくて

仕方がない顔をしていました。





<黒いカナリア Wリーダー:カナ(17)>



それでも彼女は17歳にはとても見えないような

幼い容姿でかわいらしい顔をしていました。



しかし,不良界の巷では

"黒い死の鳥"とも呼ばれ,

恐れられていました。



彼らのすぐ前では

爆走・ポニーガールズが

奮闘していました。



ここから戦況を盛り返すことが

できるのでしょうか。







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