2025/07/22
第561話 イツキ君の探索 覚醒の刻 シリーズ 第1章
時間は少しさかのぼり,リク君たちと別れて
単独行動をしているイツキ君は・・・。
研究所の奥に階段を見つけ,上っていきました。
廊下にはいくつもの扉がありました。
どうやら2階は研究員たちの
居住スペースだったようです。
鍵がかかっている部屋もありましたが,
何部屋かは鍵がかかっておらず,
中に入ることができました。

「しかし,暑いし,
ホコリがすごいし,汚いな・・・。」
あたりを探索しながら,
ホコリを振り払って歩いていました。
「特にめぼしいものはないか・・・?」
そして2階の一番奥の部屋へ入っていきました。
しばらくすると,その部屋から出て,
3階の階段を上っていきました。
「・・・。」
ポケットに手を入れたまま,
何か考えながら3階の廊下を歩いています。
「ここまで来て,
何か起きるとは思わないが・・・。」
彼は3階の奥の部屋へと進んでいきました。
「念のためか・・・。」
一方のリク君たちは・・・。
「燃料があったー!」
どうやら地下の研究室の冷蔵室でスサノオを
動かすための燃料を見つけたようです。
彼は手慣れた手つきで,
その燃料を棒に注入し始めました。
「ちょうど,家にある燃料も
切れかけていたから,
ここにある燃料を全部もらっていこう。」
リク君はレオンさんが持っていたリュックを借りると,
そこに燃料の入った容器を入れていきました。
「入らない分は,おいらが
手で持つことにするよ。」
「ありがとう!」
彼らは研究室を出ました。
「この後はどうするんですか?
結構もう暗くなってきましたよ。」
すっかりと,夕暮れの時間でした。
「この研究所を出た先に,
ちょっとした広場みたいなところがあるんだ。」
リク君は出口に向かって廊下を歩きながら話をします。
「さっそくだけど,このスサノオ使いこなせる
ように修行をしてこようと思う。」
「おなかがすいたー!」
まさらちゃんたちはもうおなかがペコペコのようです。
「それなら,建物の外でキャンプをしよう。
バーベキューセットもあるしね。」
「いいですねぇ!」
だぬちゃんもヘロヘロになっていました。
「悪いんだけど,レオンさんは
ボクに付き合ってほしいんだ。」
「え?」
彼らが施設の入り口まで戻ると,
エントランスで菓子を食い散らかした
トシ君が横になって寝ていました。
「よくこんなところで寝ていられますね。」
だぬちゃんがトシ君の腹を軽くつつくと,
「ふぁぁ!」
トシ君が大きなあくびをしながら,起き上がりました。
「ようやく戻ってきたんだ。
待ちくたびれたよ。」
外にはイツキ君もいました。
どうやら施設内の探索を
一足先に終えて,外で待っていたようです。
「飯の準備はできているぞ。」
すでにコンロが置かれ,
炭には火がついていました。
後は肉を焼くだけです。
彼らはこの後,ここでバーベキューをして,
夜は建物中でシェラフを
使って休むことになるようです。
第562話 リク君の修行 覚醒の刻 シリーズ 第1章
リク君はバーベキューの肉を少しだけ食べてから,
例の広場にレオンさんとやってきました。
「広場と言っても周りが木に
囲まれているし,足場も相当悪いね。」
「まぁ,山のかなり奥地だしね,ここは。」
リク君が2本のアミを構えました。
「オイラにリク君の修行に
付き合えってことかな?」
彼はすぐに状況を理解したようです。
「うん,やっぱりレオンさんが
一番適任かなと思って。」
「その新しい棒で何ができるのか,
しっかりと見せてもらうよ。」
レオンさんはリク君を
じっと見据え,身構えました。
「行くよっ!」
リク君は天照とスサノオの力を使って,
高く飛び上がりました。
「うぉぉぉぉ!」
そのころ,研究所の前では・・・。
火を囲んで,4人の少年少女が
食事をしながら,談笑していました。
「このお肉おいしいねぇ!」

「最高級のお肉をレオンさんが
用意してくれていたみたいですよ。」
トシ君は先ほどお菓子を食べたにもかかわらず,
ご飯を3杯もおかわりしていました。
「・・・。」
「どうかしたんですか?」
隣に座っていただぬちゃんが
イツキ君の様子を見て質問しました。
「昨日,俺たちは奴らと戦い,
圧倒的な力を見せつけられて敗北した。」
彼のその言葉に突然,
雰囲気が暗くなりました。
「しかし,運よく奴らの手から
逃げることができたといってもいい。」
「確かにそうだね。」
トシ君が口に食べ物を
含みながら,頷きます。
「いくら俺たちの住んでいる場所が
ばれていないとはいえ,
追手の一人や二人は来てもいいはず。」
「ええ!あいつらここまで
来ているってこと!?」
まさらちゃんは急に怖くなりました。
「可能性の話だ。
前にも一度あっただろう。」
「ありましたね。
せっかくのキャンプが
台無しでしたよ。」
前回は,JFの南雲が指揮を執り,冥界の悪魔と共に,
キャンプ中のリク君たちを襲撃したのですが,
二重スパイである灰庭さんの陰からの助けもあり,
難を逃れることができたのです。
そしてイツキ君の予想通り,
彼らはすぐ近くまで
迫ってきていたのです・・・。
研究施設からわずか500mほど
離れた場所にて・・・。
すでに日は落ちて暗くなった山中に
いくつかの明かりが見えました。
それは闇組織JFの連中でした。
彼らはリク君たちの居場所を突き止め,
奇襲攻撃を仕掛けるつもりでした。
南雲「全ての準備は整った。
これより"カーホイール作戦"を開始する。」
彼らはライトを消し,
暗視ゴーグルに切り替えました。
果たしてリク君たちは奴らの作戦に
気づくことができるのでしょうか。
そしてその結末は・・・。
覚醒の刻シリーズ ~第1章~ 完
第563話 クワガタの夏,ヒラタの夏!
今回は,夏休みが始まってすぐの昆虫採集のお話です。
少年昆虫団は岐阜県のとある神社へ向かっていました。
ここの神社は山の中腹にあり,
車で現地まで来ることはできませんでした。
そのため,山のふもとまでカブクワキングの
店長に車で連れてきてもらい,そこからは徒歩です。
例によって店長は近くのカフェで一服をしてくると言って,
彼らだけを山に残して去っていきました。
本来なら危険極まりない行為ですが,
「リク君がいるから大丈夫だろう」という,
謎の理屈によって店長は消えていったのです。
少年昆虫団はすでに神社の入り口に
ある鳥居までやってきていました。
その間にもカブトムシを数匹とノコギリや
コクワを採集することができました。
「もうこんだけ,採ったんだから
十分じゃない?帰ろうぜぇ~!」
「確かにトシ君のいう事も一理ありますね。」
二人がリク君に下山を促すと,
「なーにを言っているの!?
昆虫採集はこれからでしょ!」
と,まるで意に介しませんでした。
「そう言うと思った・・・。
そもそもこの神社に
来る理由はあるのか?」
イツキ君が訪ねると,
「ああ,もちろん!」
と,リク君は意気揚々と答えました。
「一体この神社に何があるのかな?」
まさらちゃんは鳥居を見上げながら,
つぶやきました。
「そうなんだ。ここにはいつもあまり
採集できないアイツがいるはずなんだ。」
彼らは神社の奥へ向かっていきました。
神殿の後ろには雑木林が広がっており,
たくさんのクヌギやコナラ,
シラカシの木などが植生していました。
「いるかなぁ・・・。」
わくわくしながら気に近づいていくと,
「いないあなぁ・・・。」
残念ながらお目当てのクワガタはいないようです。
「何が採れるのかくらい教えてくださいよ。」
だぬちゃんがせかします。
リク君は次に目星をつけていた木に向かっていきます。
みんなは後をついていきました。
「おおっ!見つけたよ!」
そこには4センチほどのヒラタのオスがいました。

「なるほど,ヒラタクワガタを
探しに来ていたのか。」
「そうそう!地元でも見つからない
ことはないんだけど・・・。」
リク君はうれしそうにヒラタのオスをゲージに入れました。
「こいつは本土ヒラタだけど,
亜種もくたさんいるんだ。」
リク君がヒラタクワガタに
ついて熱く語り始めました。
トシ君は虫に食われながら聞いていました。
「力も強く怪力なんだ。
70mmを超える個体もいるけど,
こいつは小型だね。
そして寿命も長く飼育しやすい。」
ゲージの中で元気に動き回っている様子が見られました。
「メスは近くにいないのかな?」
みんなはあたりを探しましたが,
カブト虫やノコギリクワガタはいましたが,
残念ながらヒラタのメスは
見つけることができませんでした。
「いよいよ,夏本番!今年はとっても
良い夏になりそうだっ!」
「そうですかねぇ・・・。
無茶しすぎてお盆位の時期に
病院行ってそうですけど・・・。」
だぬちゃんの嫌な予感はのちに的中することになるのでした。
第564話 クワガタの夏,ミヤマの夏!
少年昆虫団は夏休み真っただ中です。
もうすぐ8月になろうとしている時期のことです。
彼らは愛知県のとある山間部に来ていました。
今回の目的はミヤマクワガタでした。
標高は350mほどで近くには川も流れており,
湿潤(しつじゅん)な気候で,
ミヤマクワガタの好む環境は整っていました。
樹木は当然ながら,クヌギやコナラです。
ミヤマクワガタは深山(みやま)と呼ばれるくらいなので,
そこそこ山の奥で見つかることが多いのです。
もちろん環境が整えば,
意外な低地でも見つかったりはします。
少年昆虫団はミヤマが住み着いていると
思われる山の中を歩いていました。
「毎回,毎回言っていますけど
歩き疲れましたよぉ・・・。」
「珍しく気が合うね。
だぬちゃんの意見に一票!」
そんな二人のグチも,
「体がなまっている証拠だよ。」
と言われて,相手にしてくれません。
「ミヤマか・・・。
何度か見たことはあるが,
そんなに珍しいのか?」
イツキ君が質問をします。
「きっと珍しいんだよ!」
「まぁ,地元にはあまりいないよね。」
ただし,オオクワガタに比べれば,
採集難度ははるかに下です。
「やっぱりあのクワの形と
背中の出っ張りがかっこいいよね。」
事前に目星をつけていた木にたどり着きました。
「なんか,カナブンやガは
たくさんいますけど,クワガタはいないですね。」
だぬちゃんがライトを
目の前のクヌギの木に向けました。
「やっぱりゴキもいるし・・・。」
そう言って,あまり木に近づかないようにしていました。
「次の木に行ってみよう!」
こうなるとがぜん,リク君のやる気に火がついてきました。
その後,彼らはさらに奥へと足を進めます。
2本目,3本目,4本目と
目星をつけた木を見て回ります。
しかし,いっこうにミヤマは見つかりません。
それどころか,カブトムシや
他のクワガタもいません。
「おかしい・・・。
なぜだ・・・。」
さすがのリク君の顔にも焦りが見られました。
「まぁ諦めるか。」
彼はすでに帰宅モードでした。
「いや,まだだ。」
そして,さらなる深みにはまっていきました。
探し続けること1時間・・・。
「はぁはぁ・・・。
もう歩けないよぉ・・・。」
まさらちゃんが近くの倒木を椅子
代わりにして座り込んでしまいました。
「これは撤退だろう・・・!」
トシ君が半分怒り狂っていました。
「しかたがない・・・か・・・。」
少年昆虫団はさらに1時間ほどかけて,
駐車場まで下山しました。
そこには暇を持て余した,カブクワキングの
伊藤店長が待っていました。
伊藤「ずいぶん時間がかかったな?
だめだったのか?」
「うん・・・。」
リク君がうなだれて返事をすると,
伊藤「ほらよ。」
店長はプリンカップをみんなに見せました。
よく見ると中には,
ミヤマクワガタのオスが入っていました。

サイズこそ40ミリほどでしたが,
ちゃんと立派なクワと背中の出っ張りがありました。
「店長,これどこでっ!?」
伊藤「ああ,コンビニで車を止めていたら,
ヘッドライトに飛んできたぞ。
どうも,消し忘れていたみたいでな。」
店長がミヤマの入ったカップを
リク君に渡しました。
「なんか,我々の苦労は
なんだったんでしょうね・・・。」
「店長・・・。
ありがとうねっ!」
リク君は笑顔でお礼を言いました。
どんなに下見や事前の用意をしてから,
採集に臨んでもうまくいかない場合も
あるのが昆虫採集だと改めて思い直したリク君でした。
まだまだ夏は長いのできっとリベンジを
することになるのでしょう。