リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第561話~第564話

2025/07/22

第561話 イツキ君の探索 覚醒の刻 シリーズ 第1章

時間は少しさかのぼり,リク君たちと別れて

単独行動をしているイツキ君は・・・。



研究所の奥に階段を見つけ,上っていきました。



廊下にはいくつもの扉がありました。



どうやら2階は研究員たちの

居住スペースだったようです。



鍵がかかっている部屋もありましたが,

何部屋かは鍵がかかっておらず,

中に入ることができました。







「しかし,暑いし,

ホコリがすごいし,汚いな・・・。」




あたりを探索しながら,

ホコリを振り払って歩いていました。



「特にめぼしいものはないか・・・?」



そして2階の一番奥の部屋へ入っていきました。



しばらくすると,その部屋から出て,

3階の階段を上っていきました。



「・・・。」



ポケットに手を入れたまま,

何か考えながら3階の廊下を歩いています。



「ここまで来て,

何か起きるとは思わないが・・・。」




彼は3階の奥の部屋へと進んでいきました。



「念のためか・・・。」



一方のリク君たちは・・・。



「燃料があったー!」



どうやら地下の研究室の冷蔵室でスサノオを

動かすための燃料を見つけたようです。



彼は手慣れた手つきで,

その燃料を棒に注入し始めました。



「ちょうど,家にある燃料も

切れかけていたから,

ここにある燃料を全部もらっていこう。」




リク君はレオンさんが持っていたリュックを借りると,

そこに燃料の入った容器を入れていきました。



「入らない分は,おいらが

手で持つことにするよ。」


「ありがとう!」



彼らは研究室を出ました。



「この後はどうするんですか?

結構もう暗くなってきましたよ。」




すっかりと,夕暮れの時間でした。



「この研究所を出た先に,

ちょっとした広場みたいなところがあるんだ。」




リク君は出口に向かって廊下を歩きながら話をします。



「さっそくだけど,このスサノオ使いこなせる

ように修行をしてこようと思う。」




「おなかがすいたー!」



まさらちゃんたちはもうおなかがペコペコのようです。



「それなら,建物の外でキャンプをしよう。

バーベキューセットもあるしね。」


「いいですねぇ!」



だぬちゃんもヘロヘロになっていました。



「悪いんだけど,レオンさんは

ボクに付き合ってほしいんだ。」


「え?」



彼らが施設の入り口まで戻ると,

エントランスで菓子を食い散らかした

トシ君が横になって寝ていました。



「よくこんなところで寝ていられますね。」



だぬちゃんがトシ君の腹を軽くつつくと,



「ふぁぁ!」



トシ君が大きなあくびをしながら,起き上がりました。



「ようやく戻ってきたんだ。

待ちくたびれたよ。」




外にはイツキ君もいました。



どうやら施設内の探索を

一足先に終えて,外で待っていたようです。



「飯の準備はできているぞ。」



すでにコンロが置かれ,

炭には火がついていました。



後は肉を焼くだけです。



彼らはこの後,ここでバーベキューをして,

夜は建物中でシェラフを

使って休むことになるようです。



第562話 リク君の修行 覚醒の刻 シリーズ 第1章

リク君はバーベキューの肉を少しだけ食べてから,

例の広場にレオンさんとやってきました。



「広場と言っても周りが木に

囲まれているし,足場も相当悪いね。」




「まぁ,山のかなり奥地だしね,ここは。」



リク君が2本のアミを構えました。



「オイラにリク君の修行に

付き合えってことかな?」




彼はすぐに状況を理解したようです。



「うん,やっぱりレオンさんが

一番適任かなと思って。」




「その新しい棒で何ができるのか,

しっかりと見せてもらうよ。」




レオンさんはリク君を

じっと見据え,身構えました。



「行くよっ!」



リク君は天照とスサノオの力を使って,

高く飛び上がりました。



「うぉぉぉぉ!」



そのころ,研究所の前では・・・。



火を囲んで,4人の少年少女が

食事をしながら,談笑していました。



「このお肉おいしいねぇ!」







「最高級のお肉をレオンさんが

用意してくれていたみたいですよ。」




トシ君は先ほどお菓子を食べたにもかかわらず,

ご飯を3杯もおかわりしていました。



「・・・。」

「どうかしたんですか?」



隣に座っていただぬちゃんが

イツキ君の様子を見て質問しました。



「昨日,俺たちは奴らと戦い,

圧倒的な力を見せつけられて敗北した。」




彼のその言葉に突然,

雰囲気が暗くなりました。



「しかし,運よく奴らの手から

逃げることができたといってもいい。」


「確かにそうだね。」



トシ君が口に食べ物を

含みながら,頷きます。



「いくら俺たちの住んでいる場所が

ばれていないとはいえ,

追手の一人や二人は来てもいいはず。」




「ええ!あいつらここまで

来ているってこと!?」




まさらちゃんは急に怖くなりました。



「可能性の話だ。

前にも一度あっただろう。」




「ありましたね。

せっかくのキャンプが

台無しでしたよ。」




前回は,JFの南雲が指揮を執り,冥界の悪魔と共に,

キャンプ中のリク君たちを襲撃したのですが,

二重スパイである灰庭さんの陰からの助けもあり,

難を逃れることができたのです。



そしてイツキ君の予想通り,

彼らはすぐ近くまで

迫ってきていたのです・・・。



研究施設からわずか500mほど

離れた場所にて・・・。



すでに日は落ちて暗くなった山中に

いくつかの明かりが見えました。



それは闇組織JFの連中でした。



彼らはリク君たちの居場所を突き止め,

奇襲攻撃を仕掛けるつもりでした。



南雲「全ての準備は整った。

これより"カーホイール作戦"を開始する。」



彼らはライトを消し,

暗視ゴーグルに切り替えました。



果たしてリク君たちは奴らの作戦に

気づくことができるのでしょうか。



そしてその結末は・・・。



覚醒の刻シリーズ ~第1章~ 完

第563話 クワガタの夏,ヒラタの夏!

今回は,夏休みが始まってすぐの昆虫採集のお話です。

少年昆虫団は岐阜県のとある神社へ向かっていました。



ここの神社は山の中腹にあり,

車で現地まで来ることはできませんでした。



そのため,山のふもとまでカブクワキングの

店長に車で連れてきてもらい,そこからは徒歩です。



例によって店長は近くのカフェで一服をしてくると言って,

彼らだけを山に残して去っていきました。



本来なら危険極まりない行為ですが,

「リク君がいるから大丈夫だろう」という,

謎の理屈によって店長は消えていったのです。



少年昆虫団はすでに神社の入り口に

ある鳥居までやってきていました。



その間にもカブトムシを数匹とノコギリや

コクワを採集することができました。



「もうこんだけ,採ったんだから

十分じゃない?帰ろうぜぇ~!」

「確かにトシ君のいう事も一理ありますね。」



二人がリク君に下山を促すと,



「なーにを言っているの!?

昆虫採集はこれからでしょ!」



と,まるで意に介しませんでした。



「そう言うと思った・・・。

そもそもこの神社に

来る理由はあるのか?」



イツキ君が訪ねると,



「ああ,もちろん!」



と,リク君は意気揚々と答えました。



「一体この神社に何があるのかな?」



まさらちゃんは鳥居を見上げながら,

つぶやきました。



「そうなんだ。ここにはいつもあまり

採集できないアイツがいるはずなんだ。」



彼らは神社の奥へ向かっていきました。



神殿の後ろには雑木林が広がっており,

たくさんのクヌギやコナラ,

シラカシの木などが植生していました。



「いるかなぁ・・・。」



わくわくしながら気に近づいていくと,



「いないあなぁ・・・。」



残念ながらお目当てのクワガタはいないようです。



「何が採れるのかくらい教えてくださいよ。」



だぬちゃんがせかします。



リク君は次に目星をつけていた木に向かっていきます。



みんなは後をついていきました。



「おおっ!見つけたよ!」



そこには4センチほどのヒラタのオスがいました。







「なるほど,ヒラタクワガタを

探しに来ていたのか。」

「そうそう!地元でも見つからない

ことはないんだけど・・・。」



リク君はうれしそうにヒラタのオスをゲージに入れました。



「こいつは本土ヒラタだけど,

亜種もくたさんいるんだ。」



リク君がヒラタクワガタに

ついて熱く語り始めました。



トシ君は虫に食われながら聞いていました。



「力も強く怪力なんだ。

70mmを超える個体もいるけど,

こいつは小型だね。

そして寿命も長く飼育しやすい。」



ゲージの中で元気に動き回っている様子が見られました。



「メスは近くにいないのかな?」



みんなはあたりを探しましたが,

カブト虫やノコギリクワガタはいましたが,

残念ながらヒラタのメスは

見つけることができませんでした。



「いよいよ,夏本番!今年はとっても

良い夏になりそうだっ!」

「そうですかねぇ・・・。

無茶しすぎてお盆位の時期に

病院行ってそうですけど・・・。」



だぬちゃんの嫌な予感はのちに的中することになるのでした。



第564話 クワガタの夏,ミヤマの夏!

少年昆虫団は夏休み真っただ中です。

もうすぐ8月になろうとしている時期のことです。



彼らは愛知県のとある山間部に来ていました。

今回の目的はミヤマクワガタでした。



標高は350mほどで近くには川も流れており,

湿潤(しつじゅん)な気候で,

ミヤマクワガタの好む環境は整っていました。



樹木は当然ながら,クヌギやコナラです。



ミヤマクワガタは深山(みやま)と呼ばれるくらいなので,

そこそこ山の奥で見つかることが多いのです。



もちろん環境が整えば,

意外な低地でも見つかったりはします。



少年昆虫団はミヤマが住み着いていると

思われる山の中を歩いていました。



「毎回,毎回言っていますけど

歩き疲れましたよぉ・・・。」

「珍しく気が合うね。

だぬちゃんの意見に一票!」



そんな二人のグチも,



「体がなまっている証拠だよ。」



と言われて,相手にしてくれません。



「ミヤマか・・・。

何度か見たことはあるが,

そんなに珍しいのか?」



イツキ君が質問をします。



「きっと珍しいんだよ!」

「まぁ,地元にはあまりいないよね。」



ただし,オオクワガタに比べれば,

採集難度ははるかに下です。



「やっぱりあのクワの形と

背中の出っ張りがかっこいいよね。」



事前に目星をつけていた木にたどり着きました。



「なんか,カナブンやガは

たくさんいますけど,クワガタはいないですね。」



だぬちゃんがライトを

目の前のクヌギの木に向けました。



「やっぱりゴキもいるし・・・。」



そう言って,あまり木に近づかないようにしていました。



「次の木に行ってみよう!」



こうなるとがぜん,リク君のやる気に火がついてきました。



その後,彼らはさらに奥へと足を進めます。



2本目,3本目,4本目と

目星をつけた木を見て回ります。



しかし,いっこうにミヤマは見つかりません。



それどころか,カブトムシや

他のクワガタもいません。



「おかしい・・・。

なぜだ・・・。」



さすがのリク君の顔にも焦りが見られました。



「まぁ諦めるか。」



彼はすでに帰宅モードでした。



「いや,まだだ。」



そして,さらなる深みにはまっていきました。



探し続けること1時間・・・。



「はぁはぁ・・・。

もう歩けないよぉ・・・。」



まさらちゃんが近くの倒木を椅子

代わりにして座り込んでしまいました。



「これは撤退だろう・・・!」



トシ君が半分怒り狂っていました。



「しかたがない・・・か・・・。」



少年昆虫団はさらに1時間ほどかけて,

駐車場まで下山しました。



そこには暇を持て余した,カブクワキングの

伊藤店長が待っていました。



伊藤「ずいぶん時間がかかったな?

だめだったのか?」



「うん・・・。」



リク君がうなだれて返事をすると,



伊藤「ほらよ。」



店長はプリンカップをみんなに見せました。



よく見ると中には,

ミヤマクワガタのオスが入っていました。







サイズこそ40ミリほどでしたが,

ちゃんと立派なクワと背中の出っ張りがありました。



「店長,これどこでっ!?」



伊藤「ああ,コンビニで車を止めていたら,

ヘッドライトに飛んできたぞ。

どうも,消し忘れていたみたいでな。」



店長がミヤマの入ったカップを

リク君に渡しました。



「なんか,我々の苦労は

なんだったんでしょうね・・・。」

「店長・・・。

ありがとうねっ!」



リク君は笑顔でお礼を言いました。



どんなに下見や事前の用意をしてから,

採集に臨んでもうまくいかない場合も

あるのが昆虫採集だと改めて思い直したリク君でした。



まだまだ夏は長いのできっとリベンジを

することになるのでしょう。



第565話~第568話

2025/8/16

第565話 稲川淳姫の怪談11

これはある夏の夜に起きたとても怖いお話です。



冒頭から稲姫先生のアップで始まる怪談噺は

小学生低学年を恐怖のどん底に陥れます。



彼のHPにアップされた動画の中から

この時期にぴったりな噺を紹介しましょう・・・。



平成初期にとある県に

とても古い団地が建っていました。







この団地はたびたび心霊現象が

起きる団地としてマスコミにも

取り上げられるほど有名でした。



この団地の3階の角部屋には引っ越して

来て1か月の大学生が住んでいました。



幸い彼には霊感というものがないようで,

特に怪奇現象が起きることも

なく日常を過ごしていました。



ある日,彼は大学の後でバイトを

済ませ,夜0時に帰ってきました。



天井からぶら下がった紐を引っ張り,

電気を点けようとするが何回か

点滅した後,また消えてしまいます。



それを何度か繰り返すうちに,

やっとのことで部屋が明るくなりました。



青年「疲れているのは

俺だけじゃないみたいだな。」



彼はシャワーで汗を流し,

部屋に戻ってきました。



その後は,買ってきた雑誌を

布団の上で横になりながら読んでいると

だんだんと眠気が襲ってきました。



彼はいつの間にか電機も付けた

まま眠ってしまったようです。



どれくらいの時間がたったのでしょうか。



息苦しさと暑さに負け,

ふと目を覚ますと,体が動きません。



青年「ぐっ・・・。

(声が出ない・・・。)」



彼は必死に体を動かそうとしますが,

無意味な抵抗でした。



なんとか視線を横に反らすと,

なんと青い白い手が彼の腕を

つかんでいたのです。



青年「(うわぁぁぁ!!)」



彼は精一杯の声を出した

つもりで叫びますが,

部屋には全く響きませんでした。



あまりの怖さに視線を

再び天井に向けると・・・。



今度は天井から無数の手が彼をまるで

手招きするようにしてうごめいていたのです。



青年「(ぎゃぁぁぁぁぁ!!)」



彼はあまりの怖さに

意識を失ってしまいました。



翌日,彼が目を覚ますと布団は

汗でぐっしょりと濡れていました。



青年「あれはなんだったんだ・・・。」



上半身を起こし,しばらく

呆然としていました。



青年「きっと夢だったんだ・・・。」



彼が起き上がり,汗でぐしゃぐしゃに

なった敷布団のシーツを見ると・・・。



そのシワと汗で濡れた部分がはまるで

女性が泣き叫ぶ顔のような顔に見えるのでした。



その青年がこの後すぐこの団地を

引っ越したのは言うまでもありませんでした。



第566話 真夏のお祭りでカブト釣り!(前編)

少年昆虫団とレオンさんは

夏祭りに来ていました。







地元の公園で毎年開かれているお祭りで,

周囲には級友や地元の知り合いが多数来ていました。



「おおっ!たくさん人がいるっ!」



リク君はとてもはしゃいでいました。



すると後ろから聞いたことの

ある声で呼びかけられました。



栗林「やぁ,みんな元気そうだね。」

安井「何よりだ。」



リク君たちの学校の先生でした。



「先生たちは,お祭りの見回りですか?」



まさらちゃんが聞きました。



栗林「まぁ,そんなようなものだよ。」



担任の栗林先生は少しあいまいな返事をしました。



安井「とはいっても,コレ給料でないんだよねー。」



隣の安井先生がぼやきます。



安井「しかも,そもそも勤務時間外だし。」



明らかに不機嫌な様子でした。



安井「だから,とにかくもめ事を

起こさないように。

俺たちの仕事をふやすなよぉ!」



本人はどうやら冗談半分で

言っているようでしたが,

あまり笑えませんでした。



ちなみに先生と話をしている間,

レオンさんは距離をとって

他人のふりをしていました。



やはり公安警察がこんな所で子供と

一緒にいるのはまずいのでしょうか。



彼らは先生たちに軽くおじぎをして別れました。



「ようやく解放されたな・・・。」



「君もなかなか大変な学校生活を

送っているんだね。」



レオンさんが少し同情してくれました。



イツキ君はかつての問題行動が

先生たちに知れ渡っているので,

少し警戒されているようでした。



「だぬはもうすでに大満足です。」



だぬちゃんは片手に焼きトウモロコシとみたらし団子を,

もう片方の手にはかき氷,

そして頭には某人気キャラクターの

仮面を横向きにしてとりつけていました。



ちなみにすぐ横にいたトシ君も

ほぼ同じ格好をしていました。



違いは腰に屋台で買ったおもちゃの

ピストルを6丁ほど下げているくらいです。



リク君はお目当ての屋台の前までやってきました。



「いったいこれは何・・・?」



トシ君が指さす方向には・・・。



なんとカブトムシを釣る,

カブト釣りの屋台がありました。



「ナニコレー!こんなのあるの!?」



まさらちゃんもびっくりしています。



ちなみにレオンさんは,

大学院の仲間である久遠さんや紫音さんたちと遭遇し,

そちらのグループに合流させられ,

いなくなってしまいました。



「大学生ってすごく大人な感じでいいよねー。」

「そうか・・・?

レオンさんはかなり

嫌がっていたのを

無理やり引っ張られて

連れていかれていったぞ・・・。」



先ほどの光景が思い出されます。



「かわいそうでしたね・・・。」



それはさておき,

リク君の表情は真剣でした。



おっさん「1回300円だよ!」



屋台のおっさんがリク君に声を掛けます。



いよいよリク君のカブト釣りが見られるようです。



第567話 真夏のお祭りでカブト釣り!(後編)

少年昆虫団は夏祭りで

カブト釣りに挑戦していました。



公園の中心では盆踊りを楽しんでいる人で賑わっていました。



おっさん「1回300円だよ!」



屋台のおっさんがリク君に声を掛けます。



いよいよリク君のカブト釣りが

見られるようです。



「全部とってやるぜっ!」



カブト釣りは細い紙でできた

こよりの先に細かく切ったバナナを

結びつけたものをカブトに

近づけて釣りあげるルールです。



こよりはすぐに切れてしまうので

慎重に吊り上げる必要があります。



水風船釣りのカブトムシ版と

いった感じのゲームです。



「なんじゃこりゃ!」



狙っていたカブトはすぐに餌に食いつきましたが,

持ち上げるとすぐにこよりが切れてしまいました。



「もっとゆっくりあげないとだめなんだろ。」



イツキ君が横に座って,

自分も挑戦してみました。



カブトのオスはすぐにイツキ君が垂らした

こよりの先のバナナに近づいてきました。



「よしっ。」



ゆっくりと持ち上げますが・・・。



カブトは途中で餌を離してしまいました。

その拍子にエサも下に落ちてしまいました。



「くそっ!」



「どうやらだぬが真の実力を

見せる時が来ましたね。」



自信満々ですが・・・。



やっぱり駄目でした。



「あれ?おかしいですね?」

「あたしもやってみるー!」



まさらちゃんがこよりを青色の大きな円型の

プール容器に垂らしていきます。



薄くひかれたマットの上に役50匹ほどの

カブトムシのオスとメスがうごめいています。



「きゃぁぁぁ!やっぱり無理―!」



ふだん昆虫採集で見慣れているカブクワですが,

さすがにこの数が一斉にエサに近寄って

くるのはきつかったようです。



そこにかき氷を食べ終わった

トシ君が挑戦することになりました。



というか,リク君が無理やり挑戦させました。



「がんばれ!トシ君よっ!」

「なんでだよっ!いやだよ!」



虫嫌いのトシ君は嫌がります。



しかし,リク君はなんとか

トシ君に昆虫釣りをさせたがります。



トシ君はとうとうおっさんに300円を払い,

釣りを始めることになりました。



「なぜこんなことに・・・。」



「もうみんな300円使ってしまったからな。

あとは君しかいなんだよ。」



イツキ君がよくわからない

理屈でトシ君をけしかけます。



「どうせ,みんな釣れないんだしすぐ終わるさ。」



トシ君は恐る恐る

こよりを下に垂らします。



するとカブトムシが次々と

こよりに近づいてきます。



「ひいい!これは無理だぞぉ!!」



なんと,カブトムシはこよりを自ら這い登り,

トシ君の腕を伝って容器の外に出てきました。



「すげぇ!釣れてる釣れてる!」



おっさん「ちょっと待った!一人3匹までだよ!」



おっさんが慌てて止めます。



「おいおい,後出しはだめだろ!」



すでに10匹以上のカブトムシが

トシ君の腕を伝い,外に出ていました。



「うぎゃぁぁぁ!!」



トシ君にとっては恐怖の出来事でしたが,

たくさん釣れたカブトムシは

みんなで山分けしたのでリク君は大満足でした。



「二度とやらねぇ!!!」



この後,まだまだ夏祭りを

楽しんだ一日なりましたとさ。



第568話 清流のせせらぎにて

最近の日本の夏は猛暑が続きます。



雨が降る日もわずかにありますが,

ほとんどは快晴で焼きつくような

太陽の光が容赦なく降り注ぎます。



そんな中でも毎日のように昆虫採集を

している少年たちがいました。



それが少年昆虫団です。



今日は彼らが少し変わった場所で

昆虫を採集しに行くお話です。



庄外(そうげ)川の上流まで

2時間をかけてやってきました。



山あいを縫うように流れるその川は,

まるで大地の静かな息吹のように澄み切っていました。





太陽の光が水面に反射して,

キラキラと宝石のような輝きを放ち,

川底の小石ひとつひとつまで見えるほど透明です。



「同じ川とは思えないくらいきれいねー!」



まさらちゃんはひざ元まで川の中に入って,

川の流れる音に耳を傾けてみました。



水音は耳に心地よく,

遠くの鳥のさえずりと重なって,

まるで自然の奏でる小さな交響曲のようです。



涼やかな風が谷を吹き抜け,川面には時折,

葉がふわりと落ちては流れていきました。



「もうこの景色を

見られただけで幸せです。

さぁ帰りましょう。」




だぬちゃんも岩にこしかけ,

足だけを水につけ,

素晴らしい景色を眺めていました。



「名古屋よりもずっと涼しいねー!」



ここは岐阜県の山間部でした。



「来てよかったね。」



レオンさんも涼しげな顔をしています。



「目的はオニヤンマのヤゴだよ!」



リク君は裸足になり,

短パンの裾をぎゅっと

まくり上げて川に入りました。



「ここなら絶対いるはず!」



水の中にしゃがみ込み,

石をひっくり返えします。



黒い藻がふわりと

揺れて小魚が走り去ります。



しかしなかなかヤゴの姿は見えません。



「そもそもオニヤンマの

ヤゴって簡単に見つかるのか?」




イツキ君も川に入って探しますが,

見つかる様子はありません。



「うーん,なかなかいないなあ。」



リク君は愛用のアミを持ちながら,

少し不満げに川底を探しています。



「オニヤンマのヤゴは深いところが好きなんだ。

もっと流れのゆるい場所を探したらどうかな?」




レオンさんがアドバイスをします。



「詳しいね!」



「一応昆虫学に在籍しているからね。

任務のためとはいえ,

講義にも時間があれば出ているし。」




リク君は慎重に腰を下ろし,

両手で砂利をすくっては目を凝らします。



突然,イツキ君が,



「いたぞっ。」



と叫びました。



掌の上には茶色い甲冑の

ような姿がありました。



がっしりとした前脚,ずんぐりした体。



「ほんとにオニヤンマのヤゴだ!」



リク君の目が輝きます。



水面の上では,夏の日差しに透けるように

本物のオニヤンマが大きな翅を

ひらめかせて飛んでいました。



その姿を見上げながら,この小さなヤゴが,

やがてあんな雄大なトンボになるのだ,

と思いました。



川のせせらぎは,変わらず涼しく,

どこか永遠のように響いていました。



「せっかくなので,

ここで持ってきたお弁当を

食べていきましょうよ。」


「うん,そろそろおなかが

減ってきたころだよね。」




まわりの木々は深い緑に包まれ,

ところどころに野花が咲いていました。



人の手がほとんど入っていないその風景は,

時が止まったかのような静けさと,

清らかな生命の営みを感じさる場所でした。



そんな場所で過ごした時間は彼らにとって

かけがえのない思い出となるのでした。



「なんか今回なーんも面白いことないな。」



そんなことを言うトシ君を後ろから

思い切り川に突き落としたリク君でした。



良い子はマネしないようにしましょう!



第569話~第572話

2025/10/4

第569話 カブクワ・キングの決戦(前編)

昆虫専門店“カブクワ・キング”の店内は,

子どもたちの笑い声と虫の鳴き声が

入り混じっていました。







中央には二つのテーブル。



そこに,少年昆虫団とスナぴょん団が

向かい合って座っています。



カウンターの奥では,

伊藤店長がマイクを持ち,

バイトのまりんさんが

得点ボードを準備しています。



店の隅では,レオンさんと灰庭さんが,

客にまぎれて静かに様子を見守っていました。



伊藤「それでは,カブクワキング恒例!

昆虫クイズ対決,始めまーす!」



伊藤店長の声に,店内から

拍手がわき起こります。



「そんなのが恒例だった

なんて初めて知ったぞ・・・。」

「ですね・・・。」



リク君がどうやら勝手にエントリーしたようです。

予選を勝ち進み決勝までやってきました。



相手は当然のようにあのスナぴょん団でした。



伊藤「じゃあ,さっそく1回戦を始めていくぞ!」



最初に登場したのは,

イツキ君とスナぴょん団の

巨体・ジャイでした。



まりん「組み合わせは全てこちらで抽選を行って

決めたから文句言わないでね!」



伊藤店長が問題を読み上げます。



伊藤「クワガタムシの"はさみ"の正式名称は何でしょう?」



イツキ君は迷いなく答えました。



「大あごだろう。」



伊藤「正解!」



伊藤店長が笑顔で指をさします。



ジャイは慌てて,



ジャイ「今言おうと思ったのに!」



と悔しそうに唸りました。



灰庭「冷静な反応,見事だね。」



と小さくつぶやくと,レオンさんは

口元をゆるめて頷きました。



次に登場したのは,

まさらちゃんとサラリー。



伊藤「モンシロチョウの幼虫がキャベツを好むのは,

何の成分を感じ取っているからでしょう?」



まさらちゃんは首をかしげて,



「はっ?何それ?甘い味?」



と答えますが,



サラリーがすぐに冷静な声で続けました。



サラリー「からし油成分――グルコシノレートです。」



伊藤「ピンポーン!正解!」



店長の声にまりんちゃんがボードへ点を入れます。



「そんな難しいの小学生が知るわけないでしょっ!?」



と不満を言います。



サラリー「常識ですよ。」



と,彼は涼しい顔をしました。



「うん,常識だね。」



リク君も同意しました。



「あなたたちと一緒にしないで・・・。」



まさらちゃんは不満そうに席を空けました。



続く対戦は,少年昆虫団のリーダー・リク君,

スナぴょん団からはタコが出てきました。



伊藤「カブトムシの角の根元にある関節は,

どんな役割を持っているでしょう?」



タコが「オシャレのためかね?」



と答え,会場が静寂に包まれます。



「角を動かして相手を投げ飛ばすためだね!」



ときっぱり答え,店長が即座に,



伊藤「正解!」



と,言いました。



まりん「リクくん,かっこいい!」



と笑いながら拍手しました。



リク君は少し照れたように,



「当然だよ。」



と胸を張ります。



勝負は二対一。



少年昆虫団がリードしています。



果たしてこのままリードを

保てるのでしょうか。









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