目次
第577話~第580話
2025/12/30
第577話 不穏な研究施設 覚醒の刻 シリーズ 第2章
夏の夕暮れ,山奥にひっそりと
忘れられた三階建ての研究施設に,
少年昆虫団の5人とレオンさんがいました。
建物の中は埃が積もり,
長年誰も使っていない空気が漂っていました。
この施設に来た理由は,
リク君が常に持っていた捕虫網“ツクヨミ”が
闇組織の御前に折られてしまい,
代わりが必要だったからです。
ここは以前リク君が強力な武器である棒を
もらった場所でもあったのです。
その棒の先にアミを取り付け,普段は捕虫網
として利用し,緊急時には戦闘用として使っていました。
夏とはいえ,さすがに辺りが暗くなってきました。
バーベキューのセットと食材を
持ってきていたので,施設の外で食べていました。
みんなは昨日の闇組織JFとの戦いで
敗北したことを振り返りながらも,
これまでの夏休みの思い出を語り合って,
楽しく談笑していました。
ただ,イツキ君が不穏なことを言っていました。
闇組織JFの追手がまたくるのではないか?と・・・。
周りを見渡していましたが,
その様子は見られませんでした。
しかし彼の見立て通り,
奴らは少し離れた場所から,
襲撃の計画を実行しようとしていました。

その気配をいち早く察知したのはこの三人でした。
「どうやら俺の予感は
的中したみたいだな。」
「みんなっ!すぐに建物の中にはいるんだ!」
レオンさんが呼びかけます。
「・・・。」
まさらちゃんやトシ君は何事?と
思いながらも指示に従います。
最後にレオンさんが入り口から
建物の中に入り,扉を閉めます。
リク君が別の部屋に置いてあった,
ロープを扉の取手に括り付けて縛りました。
だぬちゃんが入り口からほど近い
廊下側の割れた窓から外をのぞくと,
黒い戦闘服に銃を構えた集団が
施設を包囲していました。
彼らの指揮を執っていたのは,
ニット帽子をかぶった三十代の男でした。
彼は一番後ろから,冷たい声で
南雲「三部隊,梟,鷲,鶴は突入せよ!」
と,指示を出しました。
さらに,その中に一人,
異様な雰囲気を持つ青年がいました。
年は十代にしか見えませんが,
腰に下げた日本刀を抜くと,鋭い光を放ちました。
東條「さて,狩りの時間だ。」
南雲「東條さん,申し上げにくいのですが,
遊びではありませんので。」
他ユニットとはいえ,
東條は南雲より立場が上なので,
彼は遠慮がちに進言します。
彼はニコッと笑い,
東條「遊びだよ。とってもやりがいのある遊びさ。」
「まずいね・・・。」
「あれってもしかして闇組織JFの連中だよね!」
みんなはまだ入ってすぐの場所にいました。
「どうしてだぬ達がここに
いるってわかったんですか!?」
「もしかしてここは元々
あいつらの施設だったのか!?」
様々な推論が飛び交いますが,
今は悠長に議論している時間はありませんでした。
「しかし,災いっていうのは
いつも急に訪れるもんだな。」
「いや,ちょうどいい!」
この場にいたら,すぐにでも
全滅しそうだったので
場所を移動することにしました。
「みんな,入り口をふさごう!」
施設の入り口にはほかの部屋にあった,
棚や机などを無造作に置き,
時間稼ぎをすることにしました。
「でも,窓も割れまくっていますし,
すぐにでも侵入されそうですよ。」
彼らは急いで廊下を駆け抜け,
奥の道へと消えていきました。
第578話 研究施設にて作戦会議 覚醒の刻 シリーズ 第2章
先ほどまでバーベキューを楽しんでいた少年昆虫団でしたが,
またしても闇組織JFの追手がやってきて,
施設を取り囲まれてしまいました。
中に立てこもったものの,
突破されるのは時間の問題でした。
果たしてこの窮地をどのようにして
切り抜けるのでしょうか。
施設の中では,
こんな会話が繰り広げられていました。
「新しくなったコイツの性能と
オレの新技で返り討ちにしてやるよっ!」
「いや,いくら君が強いといっても
それでは全員を守り切れるとは限らない。」
レオンさんは組織として
対抗すべきだと提案しました。
「まず,前戦で敵の進軍を遅らせる
役目が必要だ。その間に他のメンバーで
侵入に備えた対策を行う。」
「いいですね!
だぬたちもがんばりますよっ!」
いつになくやる気のだぬちゃんでした。
「じゃあ,オイラが
最前線かな?」
トシ君は力こぶを作って
自分をアピールしました。
「なんでそうなるんだよ?」
イツキ君が少し小ばかにした感じで
その意見を取り下げようとします。
「いや,トシ君の体の大きさは
こちらにとってはメリットだ。
自分とトシ君で受け持つことにしよう。」
レオンさんの提案に
一番驚いていたのは,
トシ君自身でした。

「おそらく正面入り口と,
東西の窓から敵は侵入してくるだろう。」
レオンさんはみんなに
イヤコムの電源をオンにするよう
指示しました。
「リク君とだぬちゃんで
2階の入り口を守ってほしい。
まさらちゃんとイツキ君は3階で
やってほしいことがある。」
「もしかしてさっきのことか?
あれならすでに準備できているぞ。」
先ほど二人で何やら話をしていた
件の事でしょうか。
「じゃあ,あとは
電源を入れるだけだね。」
「なんかよくわからないけど,
わたしでできることなら
がんばるよ!」
まさらちゃんも
怖がってはいられませんでした。
「敵の数は多いが,
全員で協力して
返り討ちにしてやろう!」
みんなの士気は
とても高いようでした。
「あ,レオンさん!」
リク君がレオンさんに
声をかけました。
「あのさ・・・。」
リク君がレオンさんに何やら耳打ちをし,
それを聞いたレオンさんは
ニコッと笑いながら,
「さすがだね。」
と返しました。
各自がそれぞれの役割を行うために
ちらばっていきました。
その直後の事です。
窓から何かが投げ入れられました。
どうやら発煙筒のようです。
あっという間に廊下が
煙で包まれました。
「レオンさん
これやばいんじゃないかな!?」
「大丈夫だよ!」
トシ君は心の中で,
“絶対に根拠ないでしょっ!”と
突っ込みました。
同時刻,
施設の外では・・・。
南雲「三部隊,梟,鷲,鶴は突入せよ!」
それぞれの隊長である
山根,蒲生,牛尾が指揮を執り,
作戦が実行されます。
今回の闇組織JFの戦力は
司令官:南雲
相談役&遊撃隊:東條
戦闘員:精鋭部隊
梟:山根 鷲:蒲生 鶴:牛尾
藪蛇準幹部:マヤ
川蝉準幹部:木戸
となっていました。
警察官1名と
たった5名の少年を抹殺するには,
十分すぎる戦力でした。
第579話 研究施設の攻防 覚醒の刻 シリーズ 第2章
南雲「決して油断はするな!」
南雲は通信機器で
前線の部隊に呼びかけます。
施設左側の窓の下に
張り付いているのは,
精鋭部隊の梟でした。
リーダーの山根が3人の部下に
ハンドサインで指示を出します。
指示を受け取った部下の,
“根倉(ねくら)”という
コードネームの人物が,
閃光弾を割れた窓ガラスの隙間から
投げ入れました。
まばゆい光と音が辺りに広がります。
窓は2mほどの高い場所にあったので,
はしごを使って手際よく窓から侵攻を始めました。
施設右側に配置された鶴も,
同等の手段で侵入を試みます。
中央玄関は時間稼ぎのために置かれた
家具や机のおかげで開くことができません。
配置されているのは,
精鋭部隊の中でも
ナンバー2とされている
“鷲”でした。
リーダーの蒲生は,
時限式の爆薬を
入り口にセットしました。
火薬量を調節し,
建物全体には影響が出ない
程度の量の爆弾でした。
鷲のメンバーは,いったん入り口から離れます。
蒲生「よし,点火。」
リーダーの合図で,
部下がスイッチを入れます。
次の瞬間,大きな轟音と共に
入り口の扉が破壊され,
その威力でバリケードも
吹きとんで行きました。

それを窓から侵入しながら
見ていた,梟のメンバーは,
列島「むちゃくちゃしやがる・・・。」
と,不快感をあらわにしていました。
この“列島(れっとう)”という
コードネームの部下も,
梟の一員です。
梟のメンバー全員が,
施設の中に侵入しました。
南雲「よし,順調だな。
速やかに対象を抹殺せよ。」
南雲が指示を送ります。
しかし,次の瞬間・・・。
彼らは一歩も進むことが
できませんでした。
山根「なんだ,これはっ!?」
床には大量の塗料が
ぶちまけられていました。
再寂「接着剤・・・!?」
再寂(さいじゃく)という
コードネームの部下が叫びます。
山根「こんなものに,ひるむ必要はない!進め!」
なんとかその液体がまかれた廊下を進もうとします。
中央入り口から遠い方角に
向かっていました。
全員が,接着剤のエリアを抜けたのですが,
体中が接着剤まみれとなっています。
山根「これは一体
なんなんだ・・・。」
列島「ぎゃぁぁぁ!」
突如,隣にいた列島が叫びだします。
下に目をやると,
おびただしい数のアレが
うごめいています。
山根「なんだこの・・・。」
どうやら接着剤は,液体状にした
構成されていたようです。
再寂「廃墟だから
こんなにいるのかっ!
ゴキ・・・ッ!」
体中をはい回るので,
それを振り払おうとして,
さらに接着剤がお互いの体という体,
さらには装備にまでまとわりつき,
全員が動けなくなってしまいました。
その様子を,少し離れた場所で
見ていた少年がいました。
「よし,作戦成功っ!」
どうやら,リク君の発案だったようです。
2階に上がって立てこもる前に,
窓から敵が侵入してくることを
想定して,準備をしていたようです。
そのような接着剤が保管されていたことを
知っているリク君だからこそ,できた作戦でした。
精鋭部隊“梟”:ゴキと接着剤にまみれて,
早々に戦線離脱
リク君は奥の階段を
駆け上がっていきました。
第580話 研究施設での再戦 覚醒の刻 シリーズ 第2章
リク君が精鋭部隊の梟を撃退したのと
ほぼ同時刻の1階右側では・・・。
同じように窓から
精鋭部隊の鶴が突破を試みました。
空き部屋を抜けて廊下に出ます。
どうやら右側には
少年昆虫団のメンバーは
誰もいないようでした。
彼らは易々と施設内に潜入すると,
そのまま端にある2階へ続く階段を
上っていきました。
一方で建物の入り口を爆破してこじ開けた
精鋭部隊“鷲”は,慎重にガレキをどかしていきます。
周囲を覆っていた
粉塵が消えると・・・。
そこにはレオンさんが
身構えていました。
蒲生「貴様はっ・・・!」
精鋭部隊は間髪入れずに発砲します。
しかし弾は明後日の方向へ
飛んでいきました。
蒲生「これはっ・・・!」
東條「やはりアレが使われていますか。」
彼らの後ろからゆっくりと
歩いてくる人影が見えました。
シックスユニット幹部の東條です。
左の腰には愛用の
日本刀を下げていました。
蒲生「東條様・・・!」
「さっそく主力のおでましか。」
レオンさんが身構えます。
東條「この建物のどこかに,銃撃を無効化する
装置が置かれていますね。」
東條は外から
建物を見渡しました。
「どうかな?」
レオンさんはとぼけて見せます。
東條「やっぱり大陸の
粗悪品の銃弾じゃだめなんですよ。」
彼は鷹が持っていた
マガジンを取り上げました。
東條「ちゃんと鉛玉を使わないと。」
そう言いながら,
銃弾を手際よく
交換していきます。
東條「僕は飛び道具を
使わないんで安心してください。」
そう言って銃を蒲生に返しました。
蒲生は受け取った銃で
再度レオンさんに向けて
発砲しました。
しかしやはり,銃自体が何かに
引っ張られているようで,
うまく照準が合いません。
蒲生「くっ・・・。」
東條「あなたたちは先に,
建物の奥へ進んでください。」
彼は日本刀を抜きました。
「行かせると思うか。」
東條「僕のことをなめてます?」
刀の切っ先は,まっすぐに5mほど
離れたレオンさんに向けられていました。
レオンさんは横目で,通り過ぎていく
精鋭部隊鷲を見送ることにしました。
それを見計らったかのように,
残った大きなガレキの隙間から
トシ君が出てきました。
「これはまずいんじゃ・・・。」
「大丈夫だよ。」
レオンさんは
トシ君に声を掛けますが,
彼は不安でいっぱいでした。
「今からこいつを
ここで倒して拘束する。
君はサポートを頼む。」
トシ君はガレキから顔だけ出して,
二人の戦いを見守ることにしました。
東條「久々の対戦だね。
この前は途中で終わっちゃったからね。」
「今度こそお前を捕まえる。」

研究施設入り口のすぐ外で,
二人の激突が始まろうとしていました。
第581話~第584話
2026/2/7
第581話 ナイトメア 覚醒の刻 シリーズ 第2章
研究所施設の入り口前にて,菊のレオンさんと
川蝉の東條の激突が始まりました。
ちなみに南雲はその様子を
ドローンによって森の中から監視していました。
南雲「東條さんなら・・・。」

愛用の日本刀“ナイトメア”を構える東條の姿を映している,
画面を見ながらそうつぶやきました。
最初にしかけたのはレオンさんでした。
懐に持っていた愛用の警棒を伸ばし,
一気に間合いを縮めていきます。
大きく横に振りかぶり,
確実に東條の顔を狙いました。
東條はなんなく愛用のナイトメアで受け止めると,
体を入れてレオンの後ろに飛び込みます。
そこから一気の連続攻撃。
レオンさんは警棒で必死に防ぎますが,
防戦一方です。
東條「あれ?この前よりちょっと弱くなってないですか?」
彼はしゃべりながらでも
一切攻撃の手をゆるめません。
「くっ・・・。」
なんとか東條の攻撃をはじき返し,
間合いを取り直します。
東條「この“ナイトメア”をもっと活躍させてくださいよ。」
刀を構えたまま
ニヤッと笑いました。
「日本刀には随分と似つかわしくない名前だな。」
東條「そうですか?きっとそのうち
この意味が分かると思いますよ。」
東條は大きく飛び上がり,
間合いを詰めていきます。
今度は足元からの攻撃。
いわゆる薙ぎ払いによって
レオンさんの動きを封じようとしました。
「(速い・・・!)」
レオンさんは間一髪でこれをかわし,
上から東條の後頭部めがけて
警棒をたたきつけます。
しかしこれも超反応によってかわされ,
カウンターの攻撃を左肩に受けました。
ほとばしる鮮血が左肩から垂れてきます。
レオンさんは意に介することなく,
右手の警棒で攻撃を続けます。
今度は東條の腹部を狙い,
研ぎ澄まされた突きを放ちますが,
これもナイトメアで受け止められました。
東條「その攻撃,見切られていますよ?」
彼の表情には
まだ余裕が見られます。
しかしレオンさんにも
深刻そうな気配はありません。
「やはりこのままではだめか・・・。」
レオンさんは何かを悟ったようです。
突如2階から銃撃音が聞こえてきました。
「うわぁぁぁ!上からやばい音が聞こえてくる!」
レオンさんはトシ君に
落ち着くよう合図を送りました。
「レオンさんがんばれ!ちょうがんばれ!
負けたら次はオイラが狙われるぅ!」
トシ君はビビりながらも
必死で応援を続けました。
上の音は気になるようでしたが,
レオンさんは目の前の敵に集中します。
警棒を両手で握りしめ,
正面の構えを取りました。
東條「この世界,守りに入ったら負けですよ?」
彼は常に動きながら
攻撃の出方を探っています。
一瞬で視界から消え,
後ろに回り込みました。
レオンさんは反応し,
警棒で刀をはじき,
その勢いで東條の右腕をかすめます。
東條「さすがですね。あの少年と互角かそれ以上だ。」
「小学生と一緒にされてもな。」
レオンさんは口元の血を
左手でぬぐいました。
東條「いやいや。アレはただの小学生じゃないでしょ。」
話題がリク君に移ります。
東條「うちの精鋭部隊の力をはるかに凌駕している,
危険な存在・・・。バケモノだよ。」
「本人が聞いたら怒るな。」
実はイヤコムで互いの状況は
把握し合っていました。
この会話も本人は
聞いていることでしょう。
二人の激突は始まったばかりです。
第582話 2階の攻防 ① 覚醒の刻 シリーズ 第2章
外ではレオンさんと東條が
一進一退の攻防を繰り広げていました。
東條にはまだまだ余力が見られるようでしたが,
レオンさんも押し切られることなく奮闘しています。
時は少しさかのぼって・・・。
右側から潜入した精鋭部隊“鶴”は
階段を上って2階へ到達していました。
2階はバリケードなどなく,
少しカーブした細い廊下が続いていました。
両側にはたくさんの部屋の扉が並んでいました。
しかしそのほとんどの扉はさび付いており,
中には鍵が掛かっていない部屋もあります。
鶴のリーダーである牛尾は,
牛尾「二人一組で各部屋を捜索。
対象を見つけたら速やかに殺害せよ。」

と指示を出しました。
精鋭部隊は4人で1チームなので,
2ペアに分かれて行動することになりました。
牛尾グループが3つ目の部屋を
捜索し始めた時です。
ババババッ・・・・!ガガガガガガッ・・・・!
突如銃撃音が廊下中に響き渡りました。
牛尾「これはっ!?」
そして銃撃が止んだ瞬間に,
「ぎゃぁぁぁぁ!」
という一足先の部屋を捜索していた
グループのメンバーの怒号に似た悲鳴が聞こえました。
牛尾ともう一人のメンバーは顔を見合わせ,
すぐにその声が聞こえた部屋へと走っていきました。
牛尾「何があった!?」
部屋に入るとそこには二人があおむけになり,
泡を吹いて倒れていました。
体のいたるところに傷がつき,出血もしています。
牛尾「これは・・・。」
「新しい客か?」
振り向くとそこには
背の高い一人の少年が立っていました。
牛尾「貴様はっ・・・!」
その少年が今回のターゲットなのは確実でした。
ババババッ・・・・!ガガガガガガッ・・・・!
牛尾は持っていた銃を彼にめがけて乱射しますが,
威勢の良い音だけが鳴り,弾は部屋の中で無作為に飛び回ります。
そのうちの一発が部下の腹部に命中しました。
「ごほっ・・・。」
「さっさと撤収しないと部下の命があぶないぞ?」
牛尾「そうはいかない。我々は無敵なのだっ!」
彼は銃を床に捨て,
腰に下げていたナイフを取り出して
イツキ君を刺しに行きます。
イツキ君は手にはめたメリケンサックでその攻撃を受け止め,
もう片方の拳で相手の指を思いきり殴りました。
ナイフは地面に落ち,
彼はそれを足で蹴って届かない位置まで飛ばしました。
「さぁ,武器がなくなったぞ?」
牛尾「あんなものにそもそも頼る必要はない。」
牛尾はイツキ君を羽交い絞めにして
窒息させようとしました。
牛尾「我々はすでに“各務原山の一件”で
任務失敗の烙印を押されている。」
しかしイツキ君の拳はすでに
牛尾の顎を確実にとらえていました。
「そんなわかりやすい動きを見逃すわけないだろ!」
どうやら彼もこの短期間で
かなりの実力を身に着けているようでした。
牛尾「これ以上の失敗は許されないのだっ!」
この勝負の行方は・・・。
第583話 2階の攻防 ② 覚醒の刻 シリーズ 第2章
研究施設の2階ではイツキ君と
精鋭部隊“牛尾”が戦っていました。
牛尾「アレを使って我々の銃器を無効化するだけでなく,
狭い部屋で無造作に打たせ跳弾を利用するとは。」
「お前たちがただ無能なだけだ。」
その言葉に牛尾は我を失い,
とびかかってきました。
イツキ君はそれをかわし
足払いで体勢を崩します。
牛尾「うおっ!?」
イツキ君は部屋の入り口付近,
牛尾は部屋の一番奥にいました。
スッ・・・。
イツキ君は何やら人の気配を感じました。
「(なんだ・・・?)」
次の瞬間,上から人が襲い掛かってきました。
彼は持ち前の瞬発力で
間一髪でそれをかわしました。
目の前に立っていた女は
独特の形をした刃物を持っていました。
身長は170センチと女性の中では大柄でしたが,
それを感じさせない身軽さを持っていました。
「新手か・・・!」
彼女は藪蛇の準幹部マヤでした。
手には特殊な形のナイフを持ち,まるでクノイチのような,
ポーズで構えてこちらを威嚇(いかく)してきます。
牛尾「マヤ様っ!助かりました!」
マヤ「・・・。」
彼女は部下に指示することもなく,
口を開くことはありませんでした。
精鋭部隊の隊長は何かを悟ったようで,
牛尾は腹部から血を流している部下を抱え,
部屋を出ていきました。
イツキ君には彼を追撃する余裕はありませんでした。
「(こいつは女だからって油断ならねぇ・・・。
強いぞ・・・。)」
イツキ君は構えますが,相手は刃物を持っています。
部屋の外で二人はにらみ合いました。
真っ向勝負では分が悪いことは
明らかでした。
彼はどうやったら
目の前にいる女を倒せるのか
必死で考えました。
マヤは相変わらず無表情で,
感情を読み取ることができません。
次にどんな行動に出るのかも
まったく分かりませんでした。
「イツキ君,大丈夫-!?」
長い廊下の向こうから
まさらちゃんとだぬちゃんが
走ってくるのが見えました。
「来るなっ!」
イツキ君が大声を出すと,
マヤ「!」
彼女は目にも止まらぬ速さで
イツキ君の横を抜けていきました。
「えっ!?」
マヤはだぬちゃんの頸動脈を
確実に切りに行きました。
「あわわわっ・・・。」
しかしナイフは,
だぬちゃんの首から
わずか3ミリほど離れたところで
止まっていました。
彼の目の前には
あの男が立っていたのです。
その人物とは・・・。
第584話 2階の攻防 ③ 覚醒の刻 シリーズ 第2章
だぬちゃんに向かったアヤのナイフを,
ナイフで受け止めてはじき返したのは・・・。
「誰ですか!?」
だぬちゃんは見覚えのない人物に
驚いていました。
「確かアンタは・・・。」
片岡「間に合ったみたいでよかったよ。」

「菊の幹部である百瀬サンの部下だったよな。」
片岡「よく覚えてるね。その通りだよ。」
彼は右手にナイフを持ち,
相手の出方をうかがっていました。
「どうしてここに!?」
まさらちゃんが聞くと,
片岡「レオンさんのおかげだよ。
彼が事前に菊のメンバーにこうなることを想定して
準備させていたらしい。」
「さすがだな。」
イツキ君は深く感心していました。
「じゃあ他の菊の幹部の人たちも!?」
だぬちゃんが期待を寄せて質問します。
片岡「百瀬さんはすでに御自分の仕事を
するための準備をしている。」
どうやら他の菊のメンバーもこの建物内部か
その周辺まで来ているようでした。
片岡「ただし,建物内とその周辺では,
彼女は能力を生かせないようです。」
彼女の狙撃の腕はマグネルの前では
無力化されてしまうようでした。
片岡「君たちはどこか姿を隠せる場所へ逃げるんだ。」
イツキ君は少し考えてから,
「わかった。」
そう言って二人の手を引き,
その場を離れようとしました。
「あの人をひとりにしていいんですか?」
「ホントに逃げちゃうの!?」
彼は黙ったまま二人を連れて
廊下を走り出しました。
「先に逃げた精鋭部隊の連中を捕まえる。」
彼の目には断固たる決意が見られました。
「なるほど。」
血の跡をたどっていくと,
それは1階へ続いていました。
「ところで片岡さんは
どうやって建物の中にはいれたんだろう?」
「確かに。入り口は防ぎましたし,
レオンさんと誰かが戦っている様子でしたよ。」
どうやら小窓から1階の状況を
確認していたようです。
「見えた!」
イツキ君が負傷者を抱えて歩く
精鋭部隊の隊長を見つけました。
「待ちなっ!」
振り向いた瞬間,
とび膝蹴りを叩き込みます。
大男は「ぐほっ!」と血を吐いて倒れました。
「だぬ,まさらちゃん!
こいつらを拘束するものはないか!?」
「それだったらキャンプで使う用のロープを持っているよ。」
まさらちゃんはリュックからロープを取り出しました。
牛尾「待ってくれ!部下は腹部に銃弾を受けている!
このままでは死んでしまう!」
「俺たちにどうしろと言うんだ?」
イツキ君は血を流している部下の
手足を縛ろうとしました。
牛尾「俺だけを拘束して菊に突き出せばいい。
こいつは一刻も早く病院へ連れて行ってほしい。」
この男はなかなかの
部下想いの人物でした。
イツキ君の反応は・・・。
第585話~第588話
2026/3/21
第585話 ジャズの助っ人 覚醒の刻 シリーズ 第2章
部下の命を救うために命乞いをする
JFの精鋭部隊でしたが・・・。
「だめだ。この場でお前たち二人を拘束する。
2階で倒れている連中はおそらくもう息はないだろうが・・・。」
彼らは自分が放った銃弾があらぬ方向へ飛び,
跳ね返りを受けて被弾したのです。
「それに俺達にはそいつを治す手立ても何も持っていないからな。」
牛尾「ぐっ・・・。」
青山「それなら俺が何とかしよう。」
そこへ現れたのはレオンさんと同じ,
菊の幹部である青山氏でした。
「あっ青山さん!貴方まで来てくれたんですかっ!?」
だぬちゃんは青山さんの
ジャズファンでした。
青山「こんな廃墟でジャズを奏でる・・・って
わけにはさすがにいかないんでね。」
彼は冷静に状況を分析していました。
目線を負傷した敵の部下に向けました。
青山「荒治療になるが・・・。」
牛尾「おいっ何をする気だっ!」
その手にロープをかけたのは
イツキ君でした。
「とりあえずお前の身柄は拘束させてもらう。
下手な気を起こすなよ?」
牛尾はおとなしく従いました。
青山氏は持っていたかなり大きなリュックから
なんと治療セットを取り出しました。
そして彼は手際よく洗浄,消毒,止血をしていきました。
「どういうことですか・・・?
警察官ってそんなことまでできるんですか・・・?」
青山「ふぅ・・・。」
青山「俺は医師免許を持っている。
医者であり警察官なんだ。
そしてジャズミュージシャン。」
「どういうことだ?
さっぱりわからないぞ。」
青山さんは携帯用の医療道具で
あっという間に命を救いました。
「そういえば前に羽音々って人が負傷した病院にいた時に,
知り合いに挨拶をしていくって言っていたな。」
青山「よく覚えているね。そうだよ。
各務原病院の北坂外科部長は俺の同期だ。」
牛尾はごつい顔に似合わず,敵である
青山氏に深く感謝しているようでした。
青山「幸い銃弾は貫通しているし内臓の損傷もなさそうだ。
近くにヘリを停めてあるからそこから警察病院へ運ぼう。」
青山は一度ここから出ることを伝えました。
その時――。
「(なんだっ!?)」
殺気が走ります。
第586話 台無し 覚醒の刻 シリーズ 第2章
廊下の曲がり角から
やってきた人物とは・・・。
東條「おやおや,皆さんお揃いで!」

全員が最大級の警戒をしました。
「なんであの人がここに・・・。
ちょっと前まで1階の広場でレオンさんと戦っていたのを
確かに見ましたよ!」
「なのに,この人がここにいるっていうことは・・・!?」
二人がそれ以上口にすることはありませんでした。
なぜならその現実を受け入れたくなかったからです。
東條「ええ。僕がここにいるってことは
あの人は僕に敗れたってことです。」
「そんなことあるかぁっ!」
イツキ君が冷静さを欠いて
彼にとびかかろうとしますが・・・。
足が急に止まりました。
「(あと1歩でも踏み込んでいたら,
俺の首は切られていた・・・?)」
東條「へぇ。なかなか優秀な少年じゃないですか。」
にっこりと笑いながら,
日本刀を鞘からゆっくりと抜きました。
東條「せっかく僕の抜刀術を
見せてあげるチャンスだったのに。」
彼はイツキ君が硬直して動けないその横を,
ゆっくりと素通りして青山さんたちの方へ近づいていきます。
青山「JF幹部の東條だな。
殺人及び殺人未遂の容疑で逮捕する。」
東條「それは困ります。
僕にはまだやることがありますので。」
さらにこちらへと近づいてきます。
牛尾「東條様!部下が!部下が死にそうなんです!
手当てをしてもらったとはいえ,
一刻も早く病院へ連れて行かないと!」
牛尾が声を上げて東條に助けを求めます。
彼は笑いながら,
ゆっくりとそちらへ近づいていきました。
そして・・・。
日本刀を精鋭部隊の部下に
突き刺しました。
牛尾「なっ!なにをっ!」
彼が発狂します。
目の前には先ほどまで手当てを受けていた部下から,
大量の血が飛び散っていました。
「きゃぁぁぁっ!」
まさらちゃんはくらくらと倒れ込み,
だぬちゃんがそれをなんとか受け止めます。
しかしだぬちゃんも目をそらしながら,
その光景を見てしまいました。
東條「敵に手当てを受けるような
役に立たない部下はいらないんですよ。」
彼は血で染まった刀を
牛尾の顔面に向けます。
牛尾「まっ・・・。」
しかし東條は刀を突き刺すことなく,
ゆっくりと下げました。
東條「役立たずは,さっさとこの場から
去ってほしいものですね。」
牛尾は這いつくばるようにして
その場から消えていきました。
ここまでの出来事は本当にわずか数秒であり,
青山さんは全く動くことができませんでした。
青山「なんてことをしてくれたんだ・・・!」
東條の矛先が彼に向けられます。
青山「みんなは外に逃げるんだ!
翠川の様子も気になる!こいつは危険すぎる!」
イツキ君はだぬちゃんに声をかけ,
気を失ったまさらちゃんを抱えながら
その場を離れることにしました。
第587話 マヤという女 覚醒の刻 シリーズ 第2章
イツキ君達が精鋭部隊の牛尾と
傷を負った部下と共に2階から
1階へ去っていった直後の出来事です。
その場にはマヤという無表情なショートの黒髪女と,
菊幹部である桃瀬の部下である片岡しかいませんでした。
片岡「やるしかない。」
彼は持っていた拳銃を取り出しました。
片岡「抵抗するようなら容赦無く撃つ。
この拳銃はマグネル下でも使える特殊なものなんだよ。」
マヤ「それで・・・なに?」
彼女がナイフを置くしぐさは
全く見られません。
片岡は撃鉄に指をかけ,
訓練と同じ要領で銃を躊躇なく放ちました。
しかし若干距離があり,
彼の腕の未熟さも手伝い,
彼女に銃弾は命中しませんでした。
そして目の前から彼女は消えていたのです。
片岡「なっ!?」
マヤ「ザコに用はない。」
彼女は片岡の斜め後ろに回り込んでいました。
そして華麗なナイフさばきで
彼の拳銃を振り払いました。
ナイフには傷口から出た血で
真っ赤に染まっていました。
彼はその場で倒れ込んでしまいました。

片岡「(まずいっ・・・。なんだこれは・・・。)」
彼の体に何か異変が起きているようです。
マヤは目の前に立って
じっとこちらを見ていました。
片岡「なぜ,殺さない・・・!?」
マヤ「血で・・・服が汚れるの・・・キライ。」
片岡は意識混濁(こんだく)となっていきました。
体中から嫌な汗が噴き出てきました。
さらに呼吸も苦しくなりもがきだしました。
マヤ「これには組織が開発した優秀な毒が塗ってある。
かすっただけでも致命傷。」
彼女はそのまま奥へ消えていきました。
片岡はその様子を
薄れゆく意識の中でかろうじてとらえることができました。
マヤ「・・・。」
彼女はゆっくりと廊下を歩き始めました。
そして施設の中央にある階段までやってくると,
下から悲鳴が聞こえました。
それはまさらちゃんのものでした。
つい先ほど東條が
精鋭部隊の部下を殺害したのでした。
マヤ「あの人は,相変わらず・・・。」
階段の先を見つめながら
そうつぶやきました。
マヤ「あたしも菊の幹部を仕留めたかった。」
第588話 レオンとトシ君 覚醒の刻 シリーズ 第2章
時間は少しさかのぼり,
施設前の広場でのレオンさんと闇組織JF幹部の東條との攻防・・・。
レオンさんと東條はお互いに持っている武器を活用して戦っていました。
レオンさんは少し息を切らしながらも
東條と対等に渡り合っていました。
トシ君は施設の壊れた入り口の陰に隠れながら
レオンさんを見守っていました。
「(菊のみんなに予め応援要請はしてある。
おそらく裏口からすでに建物の中に入っているはずだ。)」
東條「どうも変ですねぇ・・・?」
「!?」
東條は施設に目を向けました。
東條「もっと本気度を感じると思ったんですけど・・・。」
「何が言いたい!?」
レオンさんは警棒を構えて身構えます。
東條「もしかして時間稼ぎをしてません?」
彼は何かに気づいたようです。
「実力が近いからこそ,決め手に欠けている。
それだけだろう。」
トシ君はだんだんと心配になってきました。
果たして本当にあの日本刀を持った男に勝てるのか・・・?
東條「もしかして・・・誰か来ます?」
レオンさんの表情が一瞬変わったことを
見逃しませんでした。
「いっておくが,オイラにはまだ“上”がある。」
その言葉に対して,臆することなく,
東條「でしょうね。」
平然と切替えしました。
東條「でもそれは僕も同じですよ?」
自信たっぷりに笑顔を見せます。
東條「さらに・・・。」
そこまで言いかけた時,
レオンさんが仕掛けます。
まだまだ余力があると言わんばかりの猛攻でした。
東條「へぇっ・・・!?」
二人は武器をぶつけあって大きな衝撃を放ち,
そして後ろに下がりました。
「!?」
レオンさんはその立ち位置に不味さを覚えました。
施設入り口にトシ君,そしてレオンさんとの間に東條が入り,
トシ君,東條,レオンさんの並びになってしまったのです。
「まずいっ!」
東條「やはり勝負はお預けですね。」
彼が右の手のひらが見える状態で腕を伸ばし,
レオンさんを制止します。
レオンさんは後ろから何やら気配を感じました。
振り向くとそこには,
指揮官であるはずの南雲と精鋭部隊の
鵙(モズ)が構えていました。
南雲「さて,頃合いだな。」
再び入り口に目を向けると,
すでに東條の姿はありませんでした。
トシ君は入り口エントランスがあったであろう場所で,
奥を指し,レオンさんに何か伝えようとしていました。
「しまった・・・。」
南雲「良いタイミングだ。」
果たしてこの先の戦いの行方は
どうなっていくのでしょうか・・・!?
第589話~第592話
2026/5/9
第589話 青山と東條 覚醒の刻 シリーズ 最終章
リク君が折れた捕虫網の代わりを手に入れるため,
とある研究施設を訪れていました。
そこにはかつてある研究者が住んでおり,
リク君はその人物から天照と月読を受け取りました。
現在,その研究施設は無人となっており
研究者はいませんでした。
しばらく使われていなかったのか,
施設はかなり荒れていました。
そこに闇組織JFが,
南雲を指揮官として再度攻めてきました。
どうやらこの施設は
元々彼らが所有する建物だったようです。
少年昆虫団は施設の中へ入り立てこもります。
入り口ではレオンさんとトシ君が対応しますが,
左右の窓から敵の精鋭部隊の侵入を許します。
正面入り口も爆破されてしまい,
入れる状態になっています。
そこへ相談役として参戦していた,
川蝉のユニットリーダーである東條が現れました。
レオンさんは東條を食い止めようと戦います。
一方で建物の中では,
リク君が1階で精鋭部隊梟の足止めに成功します。
2階にはイツキ君とまさらちゃん,
だぬちゃんが立てこもっていましたが,
精鋭部隊の鶴が攻め込んできました。
どうにか追い返すことに成功するもつかの間,
組織の準幹部であるマヤが参戦してきます。
こちらも菊の幹部である桃瀬の部下,
片岡氏が援軍にかけつけます。
彼らにその場を任せて撤退しようとしますが,
そこにあの男が現れたのです・・・。
「なっなんでここに・・・。」
そこには日本刀を持った,
少年のような童顔の人物が立っていました。
彼は役に立たない精鋭部隊の部下を
あっさりと殺害すると,
隊長の牛尾にさっさと撤収するように指示を出します。
菊の幹部である青山氏が
すでに同行していましたが,
子供たちにすぐに外へ逃げるよう伝え,
自分はここで東條を食い止める決意をしていました。
東條「えっと・・・。
こう言ったらなんですが・・・。」
青山「?」
青山氏が東條の言葉に
耳を傾けようとすると・・・。
東條「貴方程度を殺すのに
そんなに時間はかかりませんよ?」
一足飛びに青山氏の間合いに入り,
首をめがけて斬りかかります。
青山氏は間一髪の反応で
それをよけきります。
そして,背広の内側から取り出した拳銃を
迷うことなく撃ちます。
パンッ!パンッ!
銃弾は惜しくも外れてしまいます。
東條「遅いなぁ。あくびがでます。」
さらに正確に照準をつけようと構えた瞬間に,
腕に鈍い痛みを感じ,
気づけば持っていた拳銃を手放していました。
どうやら拳銃を持っていた右腕を
日本刀で斬りつけられたようです。
鮮血が滴ります・・・。
青山「ぐっ・・・。」
東條「ね?言ったでしょ。
そんなに時間はかからないって。」
東條は躊躇なく,
右手を抑えてうずくまる青山氏の脳天をめがけて,
愛刀のナイトメアを振り下ろします。
そして・・・。
第590話 赤神と東條 覚醒の刻 シリーズ 最終章
研究施設の1階東側の狭い廊下にて,
闇組織JF幹部の東條が警察公安組織の菊水華幹部,
青山に刀をつきつけました。
彼が愛用のナイトメアを振り下ろして,
とどめを刺そうとしたその時・・・!
ガギンッ!!
甲高い金属音が廊下に響き渡りました。
東條「おやおや?」
彼はあっけらかんとした表情をしています。
目の前にいる人物の名は・・・。

赤神「すまない,遅くなった!」
菊のリーダーである赤神氏でした。
赤神「昨日の,バベルの一件では
リク君達に大変迷惑をかけてしまった。」
彼は愛用の警棒を使って,
東條の一太刀を受け切りました。
東條「・・・。」
青山はそのすきに東條の間合いから抜けて,
距離を取って構えます。
赤神「今度はこちらが彼らの役に立つ番だ。」
赤神氏はまったくすきがないように構えます。
青山「気をつけろ。こいつは相当な手練れだ。」
赤神「だろうな。」
視線を東條からそらすことなく頷きます。
青山「そして人を殺すことに躊躇(ちゅうちょ)がない。」
赤神氏が再び頷きます。
東條「人を殺人鬼みたいに
言わないでほしいですねぇ。」
右から横なぎで斬りかかってきます。
赤神氏はそれもうまくいなして,
反撃に出ます。
お互いが目にも止まらぬ速さで相手に斬りかかるので,
甲高い金属音が幾度も響き渡ります。
青山氏は持っていた携帯用の救助セットを使って
止血を試みます。
赤神「お前は外に出るんだ。
入り口はどうやら爆破されてしまっているが,
通れないことはないはずだ。」
青山「すまない。」
そう言って,廊下の壁に手をあて,
少しよろめきながらその場を去って,
入り口の方へ向かっていきました。
東條「さすがに菊のリーダーは実力者ですね。」
赤神「お前はここで拘束させてもらおう。」
東條はその言葉に反応し,
少し距離を取って様子を見ます。
東條「どうやってそれを実行するのか
楽しみで仕方がありません。」
この男は戦闘を,
殺し合いをとことん楽しんでいるように見えました。
赤神「じゃあ,おみせしよう。」
そう言うと,彼はポケットから何かを取り出し,
東條に向かって投げつけました。
その何かは大きな音と光と煙を放ちます。
東條「!」
その煙に紛れて奇襲を仕掛けてくるかと思いきや,
そんな気配は見られませんでした。
東條「おやおや・・・。」
彼は気づいたようです。
獲物に逃げられてしまったことを。