リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第321話~第324話

2020/6/7

第321話 灰庭とレオンと久遠

冥界の悪魔シリーズ 第1章
レオンと昆虫団はカフェを出て,商店街から少し歩いたところにある,

伊藤店長が経営するカブクワ専門店のキングにやってきました。





レオンさんのゼミ仲間である,

一 久遠(にのまえ くおん)さんも

一緒についていくことになりました。



伊藤「おお,リク君。今日も来たのか。いいねぇ,飽きないで!」



店長の威勢のいい掛け声に,



「うん,ここのカブクワはみんな

元気で毎日見ていても飽きないんだ!」




と元気よく答えました。



伊藤店長の胸にはタグがかけられており,

「伊藤 整二(いとう せいじ)」と書かれていました。



伊藤「あれ,後ろの人は・・・。」



「裏のアパートに住んでいる翠川レオンです。

ここへは以前も来たことがあると思います。

前回もこの子たちとご一緒したと思うんですが,

その時は,バイトの方が対応してくださったような・・・。」




すると,奥からまりんちゃんと

灰庭さんが出てきました。



まりんちゃんのタグには「海野 真凛(うみの まりん)」,

灰庭さんは「灰庭 健人(はいば けんと)」

とそれぞれ書かれていました。



まりん「みんな来てくれたんだ。でも,ごめんね。

今,ちょっと忙しくて遊んであげられないんだ。」



どうやらまりんちゃんはまたしても

新商品の棚卸のため忙しいようです。



灰庭「たしか,小早川さんでしたよね。またお会いしましたね。」



「ええ,そうでしたね。リク君から聞いたんですけど,

あなたも中野木大学に通っているんですよね。」




レオンさんが彼に近づき,話しかけました。



灰庭「そうです。僕の場合は,教授のお手伝いをしているだけですけどね。

ただ貴方とは学部が違うみたいなのでなかなかお会いする機会がありませんね。」



久遠「あ,くおんも同じ大学ー!一緒だねぇ!!

なんかすっごいイケメンさんだね!同い年かな!?」



久遠さんが二人の間に入ってきました。



灰庭「ボクはこう見えて結構,おじさんなんですよ。年は30歳です。」



久遠「ええぇ!うっそぉ!そうは見えない!!

なんかすっごいアンチエイチングやっているの??」



久遠さんは一人で勝手にテンションが上がっています。



久遠「年上の男性すごーい!かっこいい!!

素敵すぎてほわわんになってしまうかも。」



「(え,何を言っているんだろう,この人は・・・。)」



まさらちゃんもだんだんついていけなくなってきたようです。



「あれ?確かレオンさんも30だったよね。同い年ってことか?」

「しっ!久遠さんには一応23歳だと

言ってあるので,そのことは内密にね。」




イツキ君は,ああそうだったと納得しました。



「え?久遠さんも23歳なんですか?

全然そうは見えないですね。」




久遠「そっかなぁ?よく言われるけどなんでだろぉ。

あ,そっか!普段から昆虫食ばかり食べているから

美容にいいのかも!?まさらちゃんだっけ?今度一緒に食べてみる!?」



バタッ・・・。



「チーン・・・。」



まさらちゃんは再びその場に倒れこみました。



灰庭「それで今日はどんな御用で?

何か欲しいカブクワでも決まっていますか?」



灰庭さんが接客スマイルで聞いてきました。



レオンさんはしばらく店内を見渡し,

ある昆虫の前で足を止めました。



その昆虫とは・・・。



第322話 キャンプへ行く約束  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
レオンさんはミヤマクワガタの入って

いるケースの前で立ち止まりました。





「う~ん・・・。やはり虫は怖い・・・。」



灰庭「おや,ミヤマですか。好きなんですか?」



「ええ。ミヤマってなんかかっこいいですよね。

せっかくだからコレでレポートでも書こうかな。」




レオンさんはレポートの研究素材を探しているようでした。



久遠「へぇ,面白そうだね!くおんは,

何に何に何にしようかなぁ~しようかなぁ~。」



彼女の同じ言葉を繰り返すしゃべり方に,

だぬちゃんもだんだんとイライラしてきました。



「好きにすればいいと思いますよ・・・。」



灰庭さんはケースを目の前に持ってきてくれました。



店長「ちょっと,ここは任せるぞ~。俺は他の客の接客をしてくる。」



店長はそう告げると,その場から離れていきました。



灰庭「僕もミヤマが大好きなんですよ。

でも名古屋じゃなかなか採集できないですよね。」



「そうなんですよね。」



二人はミヤマの話で盛り上がり始めました。



「あ,でもさ,明日行くキャンプ場の周辺

だったら採集できるんじゃない?

ガイドマップにそう書いてあったと思うよ。」


「そういえば,そうだったね。

じゃあ明日の夜はミヤマ採集ができそうだ!」




レオンさんは嬉しそうにしていると,



灰庭「へぇ,キャンプへ行かれるんですか?どちらまで?」



リク君が場所を告げました。



灰庭「面白そうですね。しかも

ミヤマまで採集できるとは興味深い。」



「なんなら灰庭さんも一緒についてくる?

一人くらい増えてもコテージだから平気だよ!」




まさらちゃんが灰庭さんをキャンプに誘ってみました。



「おい,いいのか!?あいつは“闇組織JF”の

スパイ,“グレイ”かもしれないんだろ?」




イツキ君がリク君だけに

聞こえるように言いました。



「そうなんだけど・・・。でもこうやって

みていると,とても悪い人には見えないんだよなぁ・・・。」




そんなことを言っていると,灰庭さんが



灰庭「え?いいのかい?」



と,すでに乗り気になってきました。



久遠「はいはい~!くおんも

一緒について行きまーす!」



久遠さんが横から立候補してきました。



「いや,今回は久遠さんはちょっと・・・。

また今度,どこかへ連れていってあげますから。」




久遠「ええ~!なんかくおんだけ

仲間外れ~!?ずるいよぉ~!」



久遠さんはしばらくダダをこねていました。



「まぁ,仕方ないわな・・・。いくらなんでも彼女でも

ない女を泊まりで連れて行くわけにはいかんからな。」




イツキ君は相変わらず大人目線での発言ができる少年でした。



しかし,レオンさんの真意は別にありました。



この面倒臭いゼミ仲間とこれ以上,

深くかかわりたくなかったのです。



「え?レオンさんって彼女さんいるのかな?

久遠さんじゃないんだよね?」


「知らないよ。でもあの人は彼女じゃないだろ・・・。

あんなのがレオンさんの彼女だったら俺は泣くぞ・・・。」




レオンさんの女性関係は謎のままです。



灰庭「それでは僕も明日,ご一緒させてもらってもよろしいですか?

もちろん余分にかかる費用はお出ししますので。」



イツキ君は少し渋りましたが,結局,

灰庭さんも参加することが決定しました。



どうやら明日からのキャンプは

灰庭さんも加わり,大賑わいになりそうです。



「久遠さん,レポートの件はキャンプから帰ってきてからでいいかな?

フィールドワークした内容を必ずまとめて報告するからさ。」




久遠「う~ん,仕方ないなぁ・・・。

そのかわり,またあのカフェでデートしようね!」



久遠さんがレオンさんに顔を近づけ,

にっこりとほほ笑みかけました。



「ああ,わかったよ。だから今日は,お開きにしよう!」



久遠「うん,わかった!また連絡するね!」



久遠さんは,その足で自宅へと帰って行きました。



第323話 レオンの相談事  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
キングを出る前に,明日のキャンプのことに

ついて灰庭さんと打ち合わせておきました。



その帰り道,レオンさんは先ほどカフェで

相談しそこなったことを話したいと言いました。



ちょうど近くに噴水のある程よい大きさの

公園があったのでそこへ入っていきました。



みんなは公園内にある噴水のふちに腰掛けました。





「それで,どんなことなの?」

「実は,昨日からどうも誰かに

見張られている気がするんだ。」




レオンさんの表情はいつになく真剣でした。



「え?それってどういうことですか?」



とだぬちゃんが聞きました。



「わからない。もしかしたらJFの刺客が

オイラのことを探りに来たのかもしれない。」




イツキ君は思わず辺りを見渡してしまいました。



「何も・・・いない気がするが・・・。」

「いや,いる・・・。気配をかすかに感じるんだ。

オイラにしか分からない,ほんのわずかだが・・・。」




それを聞いてリク君も周りに注意を

払ってみましたが,わかりませんでした。



「なんかもしかしてヤバイ感じ?」

「ちょっと,不安を煽らないでよ!」



トシ君が不安をあおります。



「そうだね・・・。ひょっとして奴らの

暗殺計画のターゲットはオイラなのかもしれない。」




その推理にみんなは驚きを隠せませんでした。



「確かに,ありえるかもしれない。組織はレオンさんが

小早川教授の息子だってことは知っているはずだよね。」


「おそらくね。少なくとも研究所の人間は知っているはず。」



組織の山本たちがこの事実を知ったのは

つい最近で,石井軍医から知らされたようです。



石井軍医は山本のことを嫌っていたので,

ノアの書の探索と教授を殺害する依頼を出した時も,

必要最小限の情報しか与えなかったのです。



これは闇組織JFとJF生命工学研究所が立場上は対等で,

独立した存在だから許されることなのでしょう。



この時,レオンさんの直感は当たっていました。



公園から200mほど離れた茂みの中から

双眼鏡を使ってレオンさんを観察している人物がいました。



帽子を深くかぶり,サングラスとマスクを

しているので表情は読み取れません。



しかし,レオンさんのことを監視

している人物が確実にいるのです。



「ねえ,この前渡しておいたノアの書は持っている?」



イツキ君は偽ノアの書を作り,影(シャドー)を使って組織へ返し,

本物はレオンさんに預けることにしていました。



「ああ,県警本部の重要機密文書保管室の

中で厳重に保管してあるよ。それがどうしたんだい?」


「いや,もしかしたらあのノアの書が偽物だってバレて,

それでレオンさんが狙われるだとしたらちょっと申し訳なくてさ。」




それはイツキ君なりの気遣いでした。



「大丈夫さ。例えバレたとしても,問題ないし,

そんなことで君が気を病むことはないよ。」




イツキ君はその言葉を聞いて少し気持ちが落ち着きました。



「でも,これからどうします?そんなに心配なら赤神さん

とかに報告しておいたほうがいいんじゃないですか?」




だぬちゃんが提案しました。



「ああ,それがいいかもね。」



トシ君は噴水の水を飲みながら同意しました。



「そうだな,今から赤神さんのところまで行ってみるか。

今日は神社にいるって言っていたから君たちも一緒に来るなら,

この後の昆虫採集も兼ねて神社へ行こうか。」




レオンさんは一度アパートへ戻り,車を取りに行きました。



そして,リク君たちは明日のキャンプの用意を済ませ,

少し早い夕食を食べてから,レオンさんの車で

赤神さんのいる神社へと向かいました。



第324話 菊,神社に集結  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
レオンさんが赤神氏に連絡を入れると,

青山氏と桃瀬氏も呼んで,二宮神社に

落ち合うことになりました。



時間は夜の8時を過ぎていました。



駐車場に車を止め,神社の鳥居をくぐると,

赤神氏が境内の前で待っていました。



奥へ進み,赤神が神主でいる時に

生活している部屋の中に案内されました。



部屋は12畳ほどの畳部屋で

机と座布団が置かれていました。



すでに青山さんと桃瀬さんは中で待っていました。



青山「お疲れ。」



桃瀬「昨日は大変だったよね。まだ,

羽音々(はおとね)の意識は戻らないみたい。」



昨日未明に黄金原が闇の騎士だと暴かれ,

自暴自棄になり元部下の羽音々を刺し,重傷を負わせました。



最も,黄金原はリク君に圧倒的な力で打ちのめされ,

組織の狙撃手であるキラーに射殺されてしまいました。



赤神「黄金原の件だが,被疑者死亡のまま書類送検だ。

機密文書の窃盗,地方公務員法違反,そして殺人未遂罪となる。

結局,組織の全容は明らかにならないまま,この件は終わりそうだ。」





<赤神 俊一(あかがみ しゅんいち)>



赤神は一番の奥の席に腰かけ,

少し残念そうに語りました。



昆虫団とレオンさんも空いた席に

座らせてもらい,本題に入ることにしました。



「気づいたのは昨日からですが,どうやら

オイラの周りに不審な気配を感じるんです。」




青山「と,言うと?」



<青山 輝樹(あおやま てるき)>



青山氏は内ポケットに持っていたたばこを

吸おうとしましたが,子供の視線に引け目を感じて引っ込めました。



赤神「まさか,お前が組織の暗殺計画の

ターゲットになっているということか?」



「俺はその可能性が高いと思う。」



イツキ君がそう言いました。



桃瀬「どうして?」



<桃瀬 加奈(ももせ かな)>



隣に座っていた桃瀬さんが

イツキ君に聞きました。



「レオンさんは以前,組織の影(シャドー)っていう奴と

ノアの書の件でやり取りをしていて面識がある。

それに小早川教授の息子だから・・・。」




赤神「そうだな。教授から何か組織の情報が洩れているんじゃ

ないかと警戒して翠川を消そうとしている可能性は大いにある。」



赤神氏は腕を組みながら頷きました。



桃瀬「そうだとしたら,翠川君に護衛をつけて警護

しないと・・・!でないと,あの時みたいに・・・。」



桃瀬さんは悲しげな表情でそう言いました。



「大丈夫,オイラに警護は必要ないよ。

それに明日はここにいるみんなとキャンプへ行く予定だしね。」




青山「おいおい,何を呑気なことを・・・。

敵を甘く見るな。あの時のことをもう忘れたのか。」



青山さんがレオンにくぎを刺しました。



「あの時のことって何・・・?」

「気になりますね。何かあったんですね?」



リク君とだぬちゃんが聞きました。



一瞬,その場が静まり返りました。



トシ君が場を和ませようと机の上に登って

裸踊りをしようとしましたが,

まさらちゃんに睨まれたので止めました。



赤神「・・・。そうだな。君たちには話しておいた方がいいかもしれん。

我々と闇組織JFとのこれまでの抗争の歴史を・・・。」



「ああ,ぜひ聞きたいな。すでにもう俺たちはあの組織と

大きくかかわりのある当事者だぜ。全てを教えてくれ。」




赤神氏は少しためらって,



赤神「翠川,いいな?お前の同期の一人が殺された話を

この子達にすることになるが・・・。この子達の反応を

見る限り,お前の口からはきっと伝えていないんだろう。」



赤神さんの発言に昆虫団のみんなは

驚きを隠せませんでした。



「レオンさんの・・・?」

「同期が殺された・・・?」



二人はレオンさんに視線をやりました。



「もしかして,それってさっき話していたお墓参りのこと・・・?

お墓に眠っている人がレオンさんの同期の人だったの・・・?」


「ええ,かまいません。この子達には

すべてを知る権利があると思います。」




赤神さんは,



赤神「わかった」



と,小さく呟くと少し昔の話を始めました。





第325話~第328話

202/7/13

第325話 レオンの同期①  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
少年昆虫団と菊の幹部たちは二宮神社に集まっていました。



そこで赤神さんから菊水華の結成と闇組織JFとの

これまでの争いについて深く聞くことになりました。



赤神「2年前,俺は定年退職した上司が以前所属

してた公安部のあるチームについて興味を持った。

その上司から聞くと,日本を壊滅に追い込み,国家を破壊し,

そこに新たな国を作ろうとしている巨大な闇組織があると教えてくれた。」



その闇組織こそがJF(ジャパノフォビア)でした。



上司が所属していたチームは,彼らを壊滅させるために結成したものの,

大きな成果が挙げられていないということで,

当時の愛知県警公安部長によって解体させられてしまいました。



そこで,赤神氏は警察庁へ出向き,自らが

リーダーとなって再度そのチームを結成し,

捜査が続けられるように嘆願しました。



粘り強い交渉の結果,いくつかの条件をもとに,チームは再結成され,

"菊水華"という名前で闇組織JFを追うことになりました。



「そうだったんだ・・・。」



赤神さんの話は続きます。



赤神「そして,JFが全国にネットワークを持っていることが

これまでの資料からわかっていたので,全国の県警本部に

お願いをして優秀な警察官を集めたいと考えたんだ。」



その結果,各方面からの代表として青山氏,

桃瀬氏の二人が採用されたそうです。



それが1年半前のことでした。



レオンさんが菊に加入したのは今から約1年前だったようです。



「オイラは当時,警察庁の勤務だったが,

ちょうど警視庁に出向することになっていた。その時,赤神さんと

出会い,菊に来ないかって誘われたんでしたよね。」




赤神「警視庁に切れ者がいるって聞いたんで,名古屋から飛んで行ったんだ。

二つ返事でOKしてもらったときはとても嬉しかったことを覚えている。」



レオンさんは,自分の父が何か危険なことに

巻き込まれていないか,少し心配をしている時期でした。



そんな時に,日本には闇組織が存在すると

いうことを知って,菊に加入することを決めたようです。



「黄金原さんが加入した時には,すでに本物の彼は・・・。」



赤神「ああ,先ほど福岡県警から連絡があってな。彼の自宅の庭から白骨死体が見つかった。

現在,DNA鑑定中らしいがおそらく本物の黄金原 聡(こがねはら さとし)だろう。

菊へ加入することが決まったことが奴らに知れ渡り,

黄金原は闇の騎士(ダークナイト)によって殺害されてしまった・・・。」



まさらちゃんはその情報を知った時,とても悲しい気持ちになりました。



もし,本物の黄金原さんが生きていて,羽音々さんと結ばれたら

どんなにか幸せだったのだろうと思わずにはいられませんでした。



「それで,さっき言っていた,あの事の話はいつ始まるんだ?」



イツキ君が少しせかしました。



赤神「ああ,そうだったな。あれは4カ月前のことだ。

死んだのは翠川の同期,茶竹(さたけ)という男だ。」



「オイラから話します。」



レオンさんはそう言って,静かに口を開き始めました。



4か月前(4月)の東京都警視庁内部・・・。

レオンさんには警察学校の同期が何人かいましたが,



そのうちの二人が警視庁に勤務していました。



一人は警視庁捜査2課のキャリア組で名前を茶竹 銀(さたけ ぎん),



茶竹 銀(さたけ ぎん)



もう一人は組対5課の課長で紺野 航(こんの わたる)といいました。





紺野 航(こんの わたる)



紺野という名前は内部調査用に使用する偽名です。



昼休みの休憩中にレオンさんは茶竹に

呼ばれて捜査2課内の奥の個室にいました。



茶竹「実は,ついにあの巨大企業の大物に令状が出た。罪状は株のインサイダー取引,

および有価証券偽造の容疑だ。半年ほど前から内々に捜査を進めていたんだ。」



「それがオイラをここに呼んだ理由か?」



レオンさんの返事はいまいちそっけないものでした。



第326話 レオンの同期②  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
捜査2課内でレオンさんは

同期の茶竹と話をしていました。



茶竹「まぁ,お前には本来は関係のない話だ。

警察庁から出向中だし,そもそもが管轄外だからな。」



「ああ,そうだな。だがお前がこうして世の中の悪事を暴き,

自分の正義を貫こうとしていることについては応援しているつもりだ。」




レオンさんは机に置かれていた湯呑のお茶をぐっと飲み干しました。



茶竹「今回の逮捕劇は,世の中がひっくり返るかもしれない。

そして実はお前が今,所属しているチームにも

関係があることがあるかもしれないんだ。」



レオンさんの目つきが変わりました。



「どういうことだ?」



茶竹「逮捕状が出たのはあのジャファコンツェルンの系列企業のCEOだ。

知っての通り,ジャファといえば日本一の巨大企業グループだろう。

彼らは政治家,警察,司法関係にも多くのコネを持っている・・・。

警察だっておいそれと手を出せる存在じゃない。」



レオンは立ちあがって茶竹氏に駆け寄りました。



「ジャファだと!?」



一度冷静になり,もう一度聞き返しました。



茶竹「そうだ・・・ジャファだ。名前は山口多門(やまぐち たもん)35歳。

系列会社のジャファITのCEOを務めている人物だ。

かなり巨額な金を投資で動かしているみたいなんだが,

とある企業を裏で脅迫し,内部情報を事前に得て,インサイダー取引を行っていた。」





どうも容疑が固まったことで裁判所から令状が出たようです。



「ジャファは菊水華が追っている闇組織だと,知っていたのか?」



茶竹「俺は赤神さんとも面識があるんだ。闇組織の

ことは少し前に聞いたことがあった。この山口という人物は

組織の中でもかなりの大幹部らしい。うまくいけば芋づる式に

組織の連中を逮捕できるかもしれないぞ。」



茶竹の顔は自信にあふれていました。



「そうか。これは朗報だ。いつ身柄拘束に動くんだ?」



茶竹「午後から,捜査会議を行う。

終了し次第,会社に乗り込むつもりだ。」



レオンさんは自分も連れて行ってほしいと頼みました。



茶竹「そう言うと思ったよ。捜査会議に参加することを

認めるように現場の連中に言っておく。

今回の件は一応,俺が捜査指揮を担っているからな。」



まだ30歳になったばかりの彼が捜査の指揮を

任されるということは相当の実力と人脈が

なければできることではありません。



この茶竹という人物はレオンさんに

負けず劣らず優秀な警察官だったのです。



「あいつはこのことを知っているのか?」



茶竹「紺野のことか?今回の件はあくまで

捜査2課の仕事だ。組対5課は関係がない。」



紺野氏とはレオンさんのもう一人の同期で

組対5課の課長を任されている人物でした。



「そうか。だからお前は“菊”を

動かすためにオイラを呼んだんだな。」




茶竹「そういうことだ。それにもう一つ報告があってな。」



茶竹氏は一瞬,言葉に詰まりましたが続けて,



茶竹「俺,3ヶ月後に結婚することになったんだ。

だから今回の件で手柄を立てておかないと

格好がつかなくてな。お前の力を借りたかったんだ。」



少し照れ笑いしながらそう言いました。



「お前が結婚!?いつの間に,彼女を作ったんだ。

おめでとう。ったく,抜けがけしやがって!」




レオンさんは自分のことのように嬉しそうでした。



しかし,残酷なことに茶竹氏が

結婚式を迎えることはないのです。



茶竹「お前こそ,結婚の予定はないのか?」



「ない。オイラはひとり身の方が楽だ。

少なくともこの件が片付くまではね・・・。」




第327話 レオンの同期③  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
レオンさんは捜査会議に参加し,終了後,逮捕状を持つ

茶竹氏とその部下達と共にジャファITへと向かいました。



出発前に同期の紺野氏と警視庁の

出入り口手前のせまい廊下ですれ違いました。



紺野「大手柄みたいだな。うらやましい限りだ。」



そう言いつつも心はこもっていませんでした。



茶竹「悪いな,紺野。俺はこれを足掛かりにもっともっと偉くなるつもりだ。

"正しいことをしたかったら偉くなれ",が俺たちが教官から教わった言葉だからな。」



茶竹は部下を引き連れそのまま廊下を進んでいきました。



最後方にレオンさんがいました。



「今回の件は,菊にとっても重要な事件になるかもしれない。

場合によってはお前の力が必要になるかも・・・。

赤神さんのことはお前も知っているよな?」




紺野「ああ。この前,話をする機会があった。

でも俺が力になれるかはわからないって言っておいたよ。

俺は茶竹と違って出世に興味も無い。

無理に手柄をあげる必要もない。」



どうもこの紺野という人物は茶竹氏に比べると

出世欲がなく,惰性で警察官を務めているだけのように見えました。



それでいて課長を任されるということは

一体どういうことなのでしょうか。



レオンさんはため息をついてそのまま彼と別れました。

一行はIT本社の前まで警察車両で仰々しくやってきました。





ジャフファIT本社の受付で用件を伝え,エレベーターに乗り込みました。

そのエレベーターは景色が見えるように透明なガラス貼りになっていました。



ビルの半分くらいまでエレベーターが上った時,上から何かが降ってきました。

それはあまりに一瞬のことでしたが,確かに人影でした。



茶竹「おい,今のはなんだ!?」



「まずいぞ,人だ,今のは確かに人が上から落ちてきた!」



猛烈に嫌な予感を胸に秘め,エレベーターが

最上階に到着するのを待ちました。



すぐに山口がいると思われる部屋に乗り込みましたが,姿が見えません。

ちょうどその時,清掃会社の社員と思われる人物が屋上へ続く階段から降りてきました。



茶竹「おい,あんた。この会社のCEOを見なかったか!?山口という人物だ。」



清掃社員「ああ,その方ならさきほど屋上へ上がっていきましたよ。

私はその階段をずっと掃除していましたから間違いありません。」



清掃業者の社員は一礼をしてエレベーターで下へ向かっていきました。



茶竹氏は下で待機している部下に携帯電話をかけました。

レオンさんは屋上へ上がっていきました。



茶竹「そうか・・・。クソッ!?」



茶竹氏も屋上に行き,レオンさんの耳元で呟きました。



茶竹「山口が自殺した・・・。下に遺体が・・・。

ちくしょう!あと一歩だったのに!!」



彼はこらえきれない悔しさで力いっぱい地面をたたきました。



「これが闇組織ジャファ・・・。組織を守るためには

ためらいもなく自らの命を絶つのか・・・。

オイラはもしかすると,とんでもなく手ごわい連中を

相手にしようとしているのか・・・。」




結局,山口は自殺と断定され,被疑者死亡の

まま書類送検され,捜査は終了しました。



第328話 レオンの同期④  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
山口の死は名古屋にあるジャファの

本部でもすぐに伝えられました。



闇組織JFの本部,通称”バベル”の内部には

JF幹部が集まる会議室がいくつか存在します。



そのうちの一室に,源田,アヤ,今村,東條,山本の

各ユニットのリーダーが集結していました。



さらに源田の横には組織からの命令で暗殺を

担う“キラー(冥界の悪魔)”も同席していました。





源田「沼蛭の山口が死んだ。警視庁の捜査2課の茶竹という人物に追い込まれ,

自らの最期を悟ったのだろう。組織を守るため,死を選ぶとは立派だ。」



山本「源田サン,水を差すようで悪いが俺はそうは思わない。

組織のことを想うならサツに疑われた時点で死ぬべきだった。」



非情な山本の言葉に誰も言い返しませんでした。



山本「ただ,奴らが組織に傷をつけたのは事実。

この借りは今すぐにでも返すべきだ。」



それを聞いたアヤが,



アヤ「そうね,こちらとしてもやられっぱなしと

いうのは気にいらないわ。ねぇ,そう思わない?キラーちゃん!」



アヤは源田の横に立っていたキラーに振りました。

暗にキラーに報復を促しているようでした。



キラーは何も言いませんでした。



源田「当然,報復措置を取る。この茶竹という人物を直ちに殺害する。

しかし,表だってやればこちらが疑われる。

あくまで事故に見せかけることが大事だ。キラーは暗殺全般を

こなすがあくまで専門は狙撃だからな。今回の件には向かない。」



源田は山本を見ました。



山本「任せな。報復は俺たち山犬がやる。いいな,東條。」



山本の反対側に座っていた東條はそう言われ,

首を縦に振り,了承の返事をしました。



<川蝉のユニットリーダー 東條>



源田「山口の部下,大西と影(シャドー)はどうする?

部下に組み込まれてまだ1年もたっていなかったはず。

あいつらもいきなりリーダーを失ってしまうとは・・・。」

今村「フォッフォッ。それはまたいずれで良いのでは

ないでしょうか。なんなら私が引き取ってもかまいませんよ。」



今村の提案に源田は,



源田「そうだな。それについては御前の

判断を仰ごう。御前の勅命が出ればそれが全てだ。」

山本「ああ,そうだ。御前のお言葉は

全てにおいて優先される。それが勅命だ。」



御前の存在はまるで新興宗教の教祖の

ように絶対視される畏怖の対象となっているようです。



それはあの山本ですら例外ではありませんでした。



源田「今日はもう一つ重大な議案がある。」

アヤ「何かしら?」



アヤは自分の髪をいじりながら退屈そうに聞きました。



源田「生命工学研究所から入った情報によると,施設内で

培養していた神の遺伝子を持つカブトムシ,

"漆黒の金剛石"が何らかの理由で全滅したらしい。」



話を聞いていた東條氏が



「それは一大事。」



と発言しました。



源田「東條の言う通り,これはかなりまずいことだ。

すでに御前のお耳も伝わっているが,明日,臨時の

御前会議が開かれることになった。」




なんと漆黒の金剛石は一度,

全滅してしまっていたのでした。



源田「おそらく『再度,漆黒の金剛石を見つけ,早急に

培養させ最後の研究を完成させよ』,と勅命が出ると思われる。」

アヤ「でも,今って4月でしょ?夏にならないと見つけようが

ないんじゃない?そもそもアタシ,あの虫,嫌いなのよね。」



アヤは変わらず面倒臭そうにそう言いました。



源田「だから,今から以前発見した場所を含め,

中部地方一帯を捜索対象にし,目星をつけておく。」




源田氏は話を続けます。



源田「そして6月中旬以降から一斉に捜索をかけることになるだろう。

それまで研究は基礎的な部分を除き,一時的に中断されるようだ。」



どうやら,漆黒の金剛石は今から4カ月前の時点で

何らかの事情により全滅してしまったようです。



そこで,再度捜索されるようになり,旭森林公園で昆虫採集に

来ていたリク君たちと,山犬は偶然にも出会うことになるのです。



こんなバベルでのやり取りなど当時のレオンさん達は知る由もなく,

ただ沼蛭のリーダーである山口をあの世に逃がして

しまった後悔で悲しみに打ちひしがれていました。



そうして,1か月の月日が経ちました。

それは5月,ゴールデンウィーク中のことです。



第329話~第332話

202/8/3

第329話 レオンの同期⑤  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
今から3か月前・・・。



5月のゴールデンウィーク中のことです。



茶竹氏は休暇を取り,一人で東京の

郊外を自家用車でドライブしていました。







本当はフィアンセと一緒にデートをする予定だったのですが,

向こうの都合でキャンセルされてしまったので仕方なく,

少し遠出して気分転換をすることにしたのです。



平地を抜け,山を1つ超えたその先の峠でそれは起こりました。

急に視界の外から対向車が線をはみ出してきました。



その対向車を避けようと急ハンドルと急ブレーキを

踏んだのですが,なぜかブレーキが効きません。



勢いあまってガードレールを突き破り,そのまま車ごと落下・・・。

救急車が駆け付けた時にはすでに虫の息だったそうです。



知らせを聞いて,レオンさんと同期の紺野氏も

すぐに病院に駆け付けたのですが,会話はできる状態でなく,

懸命の治療のかいもなく,二日後に息を引き取りました。



彼が病院に運ばれた時,すでにかなりの重傷で治すことが

できるのは各務原記念病院に勤める伝説の外科部長

“北坂”だけと言われていたのですが,当日は海外に

出張に行っており,オペに間に合わなかったのです。



「なんでこんなことに・・・。」



遺体は霊安室に運ばれました。



そこには事故後ずっと看病を続けていた

フィアンセとそのご両親の姿もありました。



フィアンセはもう一度,

茶竹氏の顔を指でそっと撫でました。



フィアンセの名前は槙原 愛(まきはら あい)と言って,

年齢は茶竹氏よりも二つ下で,職場の後輩でした。



槇原「こんなことなら,私も一緒についていくんだった・・・。」



「どうしても外せない仕事が

急に入ってしまったんですよね・・・。」




レオンさんも悲しみを必死にこらえ,声を絞り出しました。



親しい人が突然亡くなる時,どんな言葉を

発していいのかわからなくなる・・・。



まさにそんな状態でした。



紺野「レオン,ちょっといいか。」



紺野氏はレオンを連れて,病院の外に出ました。



「どうした?」



紺野「なぁ,茶竹のやつは,本当に事故だったのか?」



レオンさんは最初,彼の言っている意味がわかりませんでした。



紺野「つい先月,あいつは超大物の幹部を捜査して追いつめた。

その1か月後に交通事故で亡くなるって,偶然にしちゃ,おかしくないか?」



レオンさんは胸の奥で猛烈に嫌な予感がしてきました。



彼はすぐに赤神氏に連絡を取りました。

そしてことの顛末をつまびらかに伝えました。



二週間後・・・。



レオンさんは紺野氏と赤神氏の三人で警視庁内の幹部クラスしか

入ることが許されない特別な部屋で打ち合わせをしていました。



紺野「組織的な報復が疑われたので我々が

あいつの車を調べました。その結果がこちらです。」



そこには分厚い報告書がまとめられていました。



「この短期間でよくこんなにまとめられたな。

お前も本気出せばこれくらいやれるんだな。」




紺野「友人のことだからな。ほっとけないだろう。

俺達には真実を明らかにする義務がある。」



赤神氏も深くうなずきました。



赤神「君も我々,菊水華のメンバーに誘いたいくらいだ。」



紺野氏「いやぁ,私などが参加しても何のお役にも立てませんよ。」



第330話 エピローグ  

冥界の悪魔シリーズ 第1章
報告書には主にブレーキの動作環境についてまとめられていました。



強力な妨害電磁波をダイレクトに浴びることで

ブレーキが効かなくなってしまう,とのことでした。



つまり,ぶつかってきた対向車が意図的に妨害電磁波を

茶竹氏の車に発射し,ブレーキを効かなくした状態で,カーブを

曲がらせないようにすればあの事故は起こりえるとのことでした。



これはのちに判明することですが,ニセの黄金原氏の元で

働いていた部下も同じ手口で事故死をしています。



この時も,なぜか上の判断は事故死で処理をしろとの事でした。



赤神「ただ,目撃者もなく,対向車の存在はつかめていないんだろう。」



紺野「ええ,直前に見かけた高齢者がいるのですが記憶があいまいでして・・・。

ただ,日本ではあまり見かけない車だったと証言していました。」



これは闇組織JFによる報復なのでしょうか。



「間違いなく,奴らです。絶対に許さない!」



赤神「証拠がない以上,捜査はできない。それが

上の判断だ・・・。すでに事故として処理されたらしい。」



レオンさんは怒りを抑えきれない様子でした。



「クソッ!どうなっているんだ。」



紺野「まぁ,“正しいことをしたかったら偉くなれ”か・・・。

あいつが特に気に入っていた言葉だったな。」



闇組織JFの幹部を追い詰めながらも

あの世へ逃げられてしまいました。



レオンさんは同期であり友人を犠牲に

してしまったことを何よりも悔やみました。



だからこそ,父親まで失った時,本気で組織を

壊滅させなければいけないと改めて誓ったのでした。



レオンさんは話を終えて,ふぅっと深いため息をつきました。







「俺たちと出会う前にそんなことがあったなんて全然知らなかった・・・。」

「うん・・・。お父さんを失う前に友人まで失っていたなんて・・・。」



少年昆虫団のみんなも話を聞いて気持ちが沈んでいました。



青山「それで,結局どうするんだ?お前に護衛をつけなくていいのか?」



元々はレオンさんが誰かに付け狙われて

いることの相談でここにきていました。



「ああ,それは大丈夫。オイラにはここに

最強のボディガードたちがいるからね。」




レオンさんは昆虫団に視線を向けました。



「いやぁ,照れるなぁ・・・。」

「多分,だぬやトシ君は数に

入っていないと思いますよ・・・。」




赤神さんは少し考えてから,



赤神「わかった。とりあえず今日は報告だけ受け取ろう。

ただし,何かあった場合はすぐに教えるんだ。

奴らは手段を選ばない。いつ,どこで,仕掛けてくるかわからない。」



全員が深くうなずきました。



桃瀬「キラーっていうのが襲ってきたら

アタシが返り討ちにしてあげるから安心してね!」



桃瀬さんがレオンさんの肩を

ポンポンとたたきながら微笑みかけました。



「いや,そう簡単に銃器の携帯許可は

おりないでしょ・・・。頼むから街中でぶっ放すのだけは

やめてくださいよ・・・。ここは日本ですからね!」




桃瀬「ふふふっ!」



この後,いくつかの打ち合わせを

した後,お開きとなりました。



明日はいよいよ灰庭さんも

加えてキャンプへ行くことになりました。



リク君たちは無事にキャンプから

帰ってこれるのでしょうか・・・。



<冥界の悪魔シリーズ 第1章 完>



第331話 稲川淳姫の怪談7 
  日本には行ってはいけない村がある。その村の名前は-



どこかで聞いたようなキャッチコピー。

これは稲川先生の怪談噺・・・。



稲川先生はご自身の怪談噺をデータ化して

オンライン上で公開することにしました。



もちろん中野木小学校2年生の児童しか閲覧できない

ように専用のIDとパスワードを設定してあります。



ちなみに稲川先生の怪談噺は怖すぎて

ほとんど誰もアクセスしませんでした。



そこで彼は「生活科」の宿題として稲川先生の

怪談噺を聞いて感想を書くように指示しました。



今回はそんなデータ化された怪談噺の中で

特に話題になったお話を紹介しましょう。



日本には行ってはいけない村がある。



その村の名前は-猫鳴村-







その村は「入ったら出てこられない」,「死者への入り口」などと

口コミで噂され,どこにあるのかもわかっていない。



ただ,この日本のどこかに確かに存在する村だと伝えられている。



数多くのオカルトマニアや心霊研究者などがその存在を探したが,

誰一人としてその村をつきとめた者はいなかった。



ある大学のオカルト研究会のメンバーが

この村の存在を突き止めようと準備を進めてきた。



メンバーは全部で15人。



男性が10人で女性が5人であった。



メンバー一行は古い文献を隅々まで熱心に調べていた。



有力候補だった説が猫鳴トンネルをくぐるとその先に,

「日本国憲法,このさきつうじず」という立て札があり,

さらに進むとそこに猫鳴村があるというのだ。



さっそく,猫鳴トンネルを探してみるとすぐに見つかった。



某県某市に旧猫鳴トンネルという

今は使われていないトンネルが見つかった。



メンバー一行は深夜0時を過ぎた頃,

このトンネルの中へ入っていった。



入口付近に1匹の黒猫が彼らのすぐ前を横切っていった。



その猫は道の端まで来ると彼らがトンネルに入っていく

様子をじっと眺めながら「ニャァ・・・。」と小さく鳴いた。



そしてしばらくすると,彼らは何事もなかったようにトンネルから戻ってきた。

トンネルの反対側の端はブロックが積み上げられ,

先に進むことはできなくなっていたが,隙間からは反対側の景色が見えた。



国道も通っており,そこには都市伝説の

村は存在していないように見えた。



彼らは,ほどなくしてその場を離れた。



結局,猫鳴村を見つけることはできなかったのだ。



彼らがトンネルの一番奥で見たブロックの

一番左端に小さく赤い文字が書かれていた。



「禍」という文字が・・・。



ほどなくして彼らの通う大学で

原因不明の病がはやり出した。



トンネルに入ったメンバー一行は

次々と謎の死を遂げていった。



原因不明の病死だ。



大学での死者はさらに増え続け,彼らと関わった友人や教授,

ゼミ仲間,他の部活動の人間なども次々に死んでいった。



結局この大学では原因不明の死亡者が122人も出た。



大学は当面の間,休校となり,警察や大学病院も

原因を突き止めようとしたが分からずじまいだった。



巷では猫鳴村の呪いとして恐れられた。



そして噂が噂を呼び,退学者や翌年の

入学者が激減し,この大学は閉校となった。



閉校後の校舎内に一人の男性が立っていた。



彼は,オカルト研究会メンバーの唯一の生き残りであった。



彼だけが生き残ったので,当初は警察も

彼のことを疑ったが,何も証拠は出てこなかった。



「猫鳴村の呪い・・・か・・・。クククク・・・。」



彼は突然,闇夜の中で笑いだした。



「こんなことになるなんてなぁ・・・。」



何やら独り言をつぶやいています。

この原因不明の真相を語り出しました。



彼は事前に一人で猫鳴トンネルへ行き,

そのブロックを乗り越えて奥へ進んでいました。



そこには,本当に猫鳴村が存在していたのです。



彼は何らかの方法でかつてその村を

壊滅させた殺人ウイルスを手に入れました。



彼はオカルト研究会の中でいじめを受けていました。



そこで,猫鳴トンネルから帰ってきた直後に,

このウイルスを使って復讐を実行しました。



「しかし,奴らが死ねばそれで良かったのに

あんなにたくさん死ぬとはなぁ・・・。」



その時です・・・。



「グッ・・・。なんだ・・・。苦しい・・・。」



彼は血を吐いてその場に倒れこみました。



「なぜ・・・こんな・・・はずじゃ・・・なかった・・・」



彼もまた謎の死を遂げました。



これこそ猫鳴村の呪いなのか・・・。



死者は123人となった。



のちに原因が未知のウイルスだと正式に結論づけられた。

このウイルスを人々は123(ヒフミン)ウイルスと呼んだ。



このウイルスはしばらく影を潜めることになるが

・・・70年後の現代,それは突然訪れた・・・。



稲川「今回のお話はここまで。

宿題がんばって書いてねぇ・・・。」



みんなはこんな話聞いて感想を

書くなんて嫌だと心底思いましたとさ。



第332話 色々なセミを見つけよう<前編> 
時刻は朝8時。少年昆虫団は六町公園に集合していました。

甲高いクマゼミの鳴き声がやかましいほどに聞こえます。



朝とはいえ真夏の照りつける太陽は地上にいる

全ての人間の体力を奪うのに十分すぎるほどでした。



彼らは熱中症にならないように全員が帽子を着用し,

水筒の中にはしっかりと水分を補給して持ってきていました。



「なんか1年ぶりくらいに昆虫採集する気がしていますよ・・・。」

「何を言っているんだよ。昨日の夜もやっていたじゃん!」



こんないつものやりとりをしていました。



「今日は朝から何を採集するの?」



まさらちゃんがリク君に聞きました。



「今鳴いているムシを捕るよ!」



リク君は大げさに両手をあげてアピールしました。



「ゲゲッ・・・。まさかオイラの苦手な・・・

セミ・・・じゃないだろうね!?」


「ズバリ正解!トシ君,冴えているねぇ~!」



彼はそれを聞いてこの暑い

中で倒れそうになりました。



「蝉なら前も捕まえたことなかったか・・・?」

「まぁ,いいじゃない!ついでに

抜けがらも探しながら捕りましょ!」




彼らは入口付近の桜の木へ移動しました。



シャーシャーッシャーシャーッシャーシャーッ

シャーシャーッシャーシャーッ・・・!!



「あ,今鳴いているセミ,あそこにいますね。」



だぬちゃんは木を見上げ,指で鳴いて

いるセミの居場所を指摘しました。



「お,見つけるのが早いね!さすがだぬちゃん!」

「クマゼミだな。黒いしデカイ。俺は

このやかましい鳴き声は苦手だな・・・。」






<クマゼミ>



リク君は捕虫網を伸ばしました。



彼の捕虫網,天照(アマテラス)は

ボタン一つで伸縮自在です。



「あんまり伸ばすと神速の打突を

セミにくらわせちゃいますよ。」


「わかっているよ・・・。

ってか向きが逆だし・・・。」




リク君は蝉の少し上からやさしく網をかぶせました。



そしてセミが網に入ったことを確認し,

すかさず地面まで下ろしました。



リク君がセミを手に取ると,

やかましく鳴いて抵抗していました。



それをそっと,緑色の虫カゴに入れました。



「クマゼミはこの地域だと昔はあまりいなかったから珍しくて

人気があったみたいなんだけど,繁殖力が強いからどんどん

増えて,今では一番簡単に捕れるセミになっちゃったね。」




ちなみにクマゼミは早朝からお昼前に鳴くことが

多いので午前中に採集することをお勧めします。



リク君がクマゼミについて解説します。

トシ君はすでに興味がありませんでした。



「いやぁ,それをオイラの目の

前にもってこないでぇぇぇ・・。」


「相変わらず情けない!たかがセミくらいで!!」



だぬちゃんが呆れています。



セミは広範囲に散らばって鳴いていることが

多いので場所を変えながらの採集が基本です。



オスは鳴いているので見つけやすいですが

メスは鳴かないので採集できればラッキーです。



リク君が続いて捕まえたセミはアブラゼミでした。





<アブラゼミ>



「こいつも大きい声で鳴くんだよねー。」



よく聞いているとクマゼミの鳴き声に交じって,

ジリジリジリジリジリジリ・・・という鳴き声が聞こえてきます。



アブラゼミの羽は茶色なので他のセミとすぐに区別がつきます。

このセミはお昼から夕方によく鳴き,夜も鳴いている個体もいます。



さて,次はどんなセミを捕まえに行くのでしょうか。



第333話~第336話

202/8/29

第333話 色々なセミを見つけよう<中編> 
次は場所を移動して西緑地公園までやってきました。

ここではどんなセミが見つかるのでしょうか。



時間は午前10時になっていました。



「まだクマゼミも鳴いているけど,

そろそろ彼らの時間はおしまいかな。」




クマゼミの抜け殻も見つけました。

体が大きいのですぐにわかります。



「そうなんだ。じゃあこの可愛

らしい声で鳴いているセミは?」




チィィィィィィ・・・。



「これは確かニイニイゼミですよね。結構小さいんですよ。」



イツキ君が桜の木に近づいていきました。



「お,ここで鳴いている奴がそのニイニイゼミじゃないか。

羽の色が木に溶け込んでわかりにくいな。」


「どれどれ。」



リク君は慎重に近づいていきました。



そして手慣れた手つきで

ニイニイゼミを捕まえました。





近くの葉っぱにニイニイゼミの抜け殻も見つけました。





このセミの抜け殻ははぜか

泥まみれになっていることが多いのです。



トシ「よし,色々なセミを捕まえたから今日はもう解散かな!」



トシ君が締めに入ろうとしました。



リク「おいおい。まだまだこれからだよ!

次はちょっと遠いけど岐阜まで行ってみよう!」


トシ「いやいやいや。今から!?どうやって!?」



リク君が緑地公園に隣接する国道を指さしました。



そこには一台の車が止まっていました。

窓が開いて中から灰庭さんの姿が見えました。



助手席にはまりんさんも乗っていました。



灰庭「お待たせー。今日はキングが休みだから

どこへでも連れて行ってあげるよ。」



まりん「せっかくだからあたしも一緒に行くことにしたの。」



まりんさんがリク君たちの昆虫採集に

ついてくるのは珍しいことでした。



「あれ?まりんさん髪型変えたんですね。」



<髪型を変えたまりんちゃん>



まりんさんはそう言われ髪をかき上げる仕草をしてみせました。



「まりんさんが昆虫採集?ははぁん。さては灰庭さん目当てね。

彼ってイケメンさんだからねぇ・・・。気持ちはわかるけど!」




というわけで,先ほど捕まえたセミはいったん逃がし,

みんなは灰庭さんの車に乗り込み,

岐阜県の関市あたりまで行くことにしました。



到着すると,ミーンミーンミーンミーンミーンミーン・・・と

いう鳴き声がけたたましく聞こえてきました。



「この鳴き声がミンミンゼミだね。」



車を止めた場所は,地元の稲荷神社でした。杉が多く,

ミンミンゼミが鳴いていましたが,かなり高い場所にいます。





まりん「これじゃ捕まえるのは難しそうだね・・・。」



「天照を10mくらい伸ばせばいけそうだよな。」



イツキ君がリク君に小声でそう言いました。



「まぁね・・・。でも灰庭さんも見ているし,

あんまりヘタなことはできないよなぁ・・・。」




結局ミンミンゼミを捕まえることはできず,近くの道の駅へ移動し,

ソフトクリームやかき氷などのおやつを食べて休憩をしました。



まりんさんと灰庭さんは木陰の下に

あったベンチに並んで座っていました。



まりん「なんか,夏休みって感じでいいよねぇ!みんな本当に楽しそう。

これも全部,健人さんが連れてきてくれたおかげだよ。」



灰庭「いえいえ,そんなことないですよ。彼らはいつもあんな感じです。」



まさらちゃんとリク君,だぬちゃんは

二人の会話を木の裏から盗み聞きしていました。



イツキ君は道の駅に併設された

温泉へ行ってしまいました。



トシ君はお土産を見ていました。



「これは絶対に恋の予感よ!どうしよう・・・。

あたしの灰庭さんが取られちゃう!」


「いや,別にまさらちゃんのものではないでしょうし,

灰庭さんも子供には興味がないんじゃないですかねー・・・。」




まさらちゃんはだぬちゃんを

思いっきり睨みつけました。



「でも,まりんさんも・・・もし万が一,

灰庭さんがグレイで闇組織JFの一員だとしたら・・・。」


「まぁかなわぬ恋に終わりますよねー・・・。

何せ犯罪者集団なんですから・・・。」


身も蓋もないだぬちゃんの発言が

セミの鳴き声に溶け込んでいきました。



第334話 色々なセミを見つけよう<後編> 
灰庭さんとまりんさんがベンチに座って

いい雰囲気で会話をしています。



「よし,あの二人が会話に夢中なうちに,

天照の機能を使ってミンミンゼミを捕まえてくるよ。」




言うのが早いか,その場から

あっという間に消えました。



まさらちゃんとだぬちゃんは引き続き,

二人の会話を聞いていました。



まりん「あの,健人さんの通う大学って

どんなところなんです?」



灰庭「無駄に広いですねー・・・。この前,お店に

来ていた小早川さんっていう人とは同じ大学だった

けど,大学で会った事もなかったですしね。」



一方のリク君は捕虫網を10mほど伸ばし

難なくミンミンゼミを捕まえてきました。



「よし,あとは・・・。」



リク君が戻ってくるとまだ

二人は木の裏にいました。



「人の色恋沙汰に首を

突っ込むのが好きだねぇ・・・。」




まりん「あの・・・こんな,子供たちを連れてきている場で

聞くのもおかしいってわかっているんですけど・・・。」



まりんさんは頬を赤らめました。



「きゃぁぁ!!もしかして告白しちゃうのー!?」



灰庭「え?」

まりん「あっあの・・・健人さんってす・・・。」



そこまで言いかけた時,



「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」



トシ君が大声を出しながら近づいてきました。



「ハッチ~!ハッチ先輩~!ここまじでやべぇって!

どでかい蜂がいるよぉ!灰庭さん,助けてぇ!」




トシ君は灰庭さんに抱きつきました。



灰庭「トシ君,落ち着いて!大丈夫だから。

この時期のハチはこっちからちょっかいを

かけなければ滅多なことで刺してくることはないよ。」



灰庭さんがそう言うとトシ君は落ち着きを取り戻しました。



「くっそー,あのハゲ!いいところ

だったのに,何,雰囲気をぶち壊してんだよ!」




まさらちゃんがブチ切れていました。



「いつものまさらちゃんじゃないですね・・・。」



その後,もうしばらく道の駅で

時間を使い,時刻は夕方の5時になっていました。



カナカナカナカナカナ・・・。



「お,聞こえてきた!この

鳴き声が聴きたかったんだよ!」




灰庭「これはヒグラシだね。」





カナカナカナカナカナ・・・。



夕方の空に響き渡る何とも言えない切ない鳴き声は

聞く人すべてを侘しい気持ちにしてくれます。



「えっと,この後,近くの村で

猟奇的殺人事件が起きるんだよね。」


「いや,それ違うから・・・。」



ヒグラシは採集せずに

鳴き声を聞くだけにしました。



先ほど捕まえたミンミンゼミも逃がしてあげました。



そろそろ帰ろうと車に乗り込もうとした時,



「おい,俺を置いていくな!」



イツキ君が戻ってきました。



「あ,忘れていた・・・。」

「どこに行っていたの?」



まさらちゃんが聞くと,



「温泉だよ,そう言ったじゃないか。」

「まさかお昼からずっと入っていたんですか!」



だぬちゃんが驚きました。



「普通だろ。」

「いや異常ですよ・・・。」



こうして楽しいセミ採集は終わりました。



「もう少し秋に近づいたら

ツクツクボウシも捕りに行こう!」




まだまだ夏休みは終わらないようです。



第335話 天下一ヴィート武道会開幕! 
中野木小学校の裏にある中野木広場に

50人ほどの小学生が集まっていました。



どうやらこの日は,誰が一番ヴィートが強いのかを

決める非公式の大会を行う日だったのです。



少年昆虫団からはイツキ君,だぬちゃん,

トシ君がエントリーしました。



一方のスナぴょん団はスナ君とサラ君がエントリーしました。



スナ「いや~,この日を待っていたんだ!

ついに俺様が大活躍する日が来た!」



スナ君が腕を組み高らかに笑いました。



「あ~,確かに二年ぶりくらいに顔を見た気がしますよ。」



スナ「いやいや,ついこの間,ヴィート対決したばかりだろ。」



スナ君達とはヴィート対決をした直後に

この大会が開かれたようです。



スナ「その時にお前たちの実力を・・・まぁ認めてやって

この大会のことを教えてやったんだ。感謝するんだな。」(第155話参照)



「ああ,そんなことも言ってましたねー・・・。」



もは彼がそんなことを言っていたとは,

みんなの頭の片隅にも残っていませんでした。



「みんな,がんばれよー!まさらちゃんと一緒に

応援するからねー!ついでにスナもまぁがんばれ!」




予選を勝ち,本戦に残ったのは

選ばれた精鋭のヴィート戦士8人です。



残りの小学生は応援に回っています。



負ければ即終了のトーナメント形式で天下一を決めます。



司会は金髪にサングラス,この世界では

右に出る者はいない人物,グラサン=ハンコックさんです。



<司会者 グラサン=ハンコック>



グラサン「さぁいよいよ天下一ヴィート武道会が開幕します!

果たして栄えある優勝を手に入れるのはどの人物かぁぁぁぁ!!」



会場はものすごい盛り上がりです。



ちなみにお昼は炎天下で暑いので

開幕時刻は夕方の6時となっています。



「トーナメントを見ると,一回戦から

トシとスナか・・・。俺がだぬと当たるのは決勝だな。」




<トーナメント表>



「オイラの実力をみせてやるよ!」



トシ君は自信満々です。



「だぬもがんばりますよ!

2回戦でサラ君と当たりますね。」


「みんながんばってね!」



今回,まさらちゃんはエントリーせず,

皆のことをしっかりと応援するつもりでした。



さっそく一回戦第一試合のトシVSスナが始まりました。



スナ「トシ,一回戦から俺様と当たるとは

運が悪いな!踏み台にさせてもらうぞ!!」



「なにをー!!」



-愚王の威厳-



トシ君のヴィートが発動しました。



みるみるうちにトシ君の体が大きくなっていきます。



彼の系統は「肉体」,愚王の威厳(ジョージ・キングリー)は

特殊タイプのヴィートです。



スナ君が同時に繰り出したヴィートは

攻撃タイプのヴィートでした。



スナ「勝負あったな!以前は見せられ

なかったこの技をお見せしてやるよ!!」



-火山灰(ボルカニックアッシュ)-



「うぎゃぁぁぁ・・・・。」



特殊タイプのヴィートは守りタイプに強く

攻撃タイプに弱い特徴を持っています。



彼の系統は「土」でした。



二人の系統間では特に優劣はありませんが,中には系統の

相性によって相手よりも優位に立つこともあるようです。



「一旦防御だ・・・。」



-鉄壁麦酒腹(ビヤダル)-







最高レベルの防御力でスナ君の

攻撃を耐えようとしました。



スナ「お見通しだ!!すでに俺様は

特殊ヴィートを放っている!!」



-幸福の土曜日(ハッピーサタデー)-



「そっそんなばかなぁ・・・。オイラの

数少ない活躍できる場面がぁぁぁ・・・。」




ここで勝負が決まりました。

倒れたまま10カウントされました。



グラサン「トシ君ダウーン!!この勝負はスナ君の勝ちです!!」



「まぁ,がんばったんじゃない・・・。それにしても

スナのやついつも以上に張り切ってるなぁ・・・。」




1回戦第二試合にはイツキ君が登場します。



第336話 天下一ヴィート武道会激突! 
一回戦第二試合はイツキ君が対戦

相手のオバタ君を圧倒しました。



南極人間(ニンゲン)からの極軸移動(ポールシフト)

のコンボが見事に決まったようです。



一回戦第三試合はソン君VSサラ君です。



ソン君は見た目が猿のようでおもちゃの

しっぽらしきものをお尻から出していました。





<強いやつと戦うとワクワクする変な子供 ソン>



ソン「オラ早く戦いてぇ!ワクワクしてきたぞ!」



サラ「私も楽しみです。いきますよ!」



二人の対決が始まりました。



-名勝三星(メイショウサムソン)-





サラ君が特殊ヴィートを放ちました。



「そう言えばあいつも氷系統だったな。」

「そうだったね。前はイツキ君が勝ったんだよね。」



サラ君のヴィートに対して

ソン君が放ったヴィートは・・・。



-亀破目破(タートルビーム)-





ソン「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



猛烈なレーザービームのような

ものが掌から放たれました。



サラ「ぐあぁぁぁぁぁ。」



同じ攻タイプのヴィートのぶつかり合い

ではより威力の高い方が有利となります。



グラサン「勝負あり!勝者はソン君です!!」



一回戦第四試合はだぬちゃんが

対戦相手のタケシ君に競り勝ちました。



「あれ?だぬの活躍シーンはカット??」

「いやいや!すごくいい戦いだったよ。二回戦も

がんばって!さっきのソンって奴に勝ってよ!!」




リク君が励ましの言葉をかけました。

これで一回戦の試合が全て行われました。



「うーん,オイラの出番はもう終わってしまった。」



トシ君が応援席に戻り,リク君たちに合流しました。



「トシ君頑張ったよ!ちょっとスナ君の方が一枚

上手だったね。イツキ君にリベンジしてもらおうよ!」


「確か前に対戦した時は引き分けだったんだよね。」



リク君は応援席の子供たちに支給された紙コップに入ったコーラを

飲みながら,彼らが前回対戦していた時のことを思い出していました。



グラサン「それでは二回戦を始めていき

たいと思います!!両選手の登場です!」



ワーワーワー!!



会場はものすごい盛り上がりです。



二回戦第一試合はスナVSイツキです。



スナ「負けた時の言い訳は決めてきたかい?」

「ああ,優勝できなかった時に考えるとするよ。」



お互い睨みあって一歩も引きません。



グラサン「それでは試合開始でぇぇぇすっ!!!」



試合開始のゴングが会場に響き渡りました。



「いくぜっ!!」



-極軸移動(ポールシフト)-



このヴィートは地球の極軸を一瞬で移動して

周囲を瞬間冷凍地獄にして相手を凍らせます。



果たしてスナ君に効果があったのでしょうか。



熱い対戦はまだまだ続きます。







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