2025/2/22
第549話 忘れられたスナぴょん団 中編
西緑地公園でスナぴょん団に遭遇したリク君たち。
いつものように昆虫採集対決を
行うことになりました。
スナ「今回の昆虫採集対決は・・・。」
「ゴクリ・・・。」
トシ君が意味もなくつばを飲み込みました。
スナ「ガ対決だ!」
「が?」
一瞬何を言っているのか
わかりませんでした。
「ガ・・・?」
スナ「そう!蛾だよ蛾!」
きゃぁっ!
と,二人の女子から
悲鳴が上がりました。
オジョー「何を考えているのよ!?
あほじゃないの!?」
「ガなんて誰が好き好んで採集するの!?」
二人が猛抗議をします。
サラリー「いやいや。実はガってマニアが多いんですよ。」
スナ「その通りだ。チョウよりもはるかに
種類が多いからな。ガ専門のコレクターもいるんだぞ。」
スナ君が選考理由を説明します。
「まぁ,なんでもいいよ・・・。」
リク君は半分あきれ顔でした。
「時間はどうしますか?」
だぬちゃんが聞くと,
スナ「今から1時間で,より多くの種類のガを
集めたチームの勝ちでどうだ?」
と,答えました。
「それでいいんじゃないか。」
こうしてガ対決が行われることになりました。
二チームはそれぞれ別の方角を向き,
採集へ出発しました。
少年昆虫団は草むらの中を
かき分けながら進みました。

「もうすぐで樹液の出る木に到着するよ。」
「ガっていうと光に集まると思っていました。」
だいぶ目的地まで近づいているようです。
「もちろん,あとで街灯にも行くよ。」
「もういや・・・。
ガなんて絶対にイヤ・・・。」
まさらちゃんはトシ君の後ろに隠れながら
最後尾を怖がりながら歩いていました。
「ほら,見えてきたよ!
いつもの採集スポットだ。」
そこにはそれなりの太さに成長した
クヌギの木が植生していました。
「いるな。これはなんていう名前のガなんだ・・・?」
イツキ君がライトで照らした
先にはムクゲコノハがいました。
リク君はこの蛾について軽く解説をした後で,
「まずは1種類目・・・!」
その蛾を採集しました。
果たしてどちらのチームが
見事勝利するのでしょうか。
第550話 忘れられたスナぴょん団 後編
少年昆虫団とスナぴょん団は採集した
ガの種類を争うことになりました。
イツキ君がまずは
ムクゲコノハというガを見つけました。
同じころ,すなピョン団は・・・。
スナ「よしっ!オビガが捕まえたぞ!」
オジョー「なんか,ちいさくてダサいわね。」
オジョーが虫かごを通して細目で見ていると,
サラリー「こいつは日本固有種で1種しかいないんですよ。」
彼が解説をしてくれました。
オジョー「ふーん,あっそ!
ガはガでしょっ!」
続いて,ジャイ君が大振りに網を使って
空中を飛んでいたガを捕まえました。
ジャイ「ジャジャイ!これは,コスズメ?」
スナ「いや,セスジスズメだな。」
やはり昆虫博士を自称しているだけはありました。
サラリー「腹部に入った縦の線が特徴ですね。」
スナ「ああ。」
かなり順調に採集を進めているようです。

少年昆虫団は・・・。
「いやー,もう全然採集できませんね!」
「君たちがだらだらと歩いているから・・・。」
軽く反論しました。
「だって,疲れるし,ガなんてハッチ―先輩の
次の次くらいに嫌いだし・・・。」
トシ君もごねます。
「あたしもガは・・・イヤ・・・。」
どうもテンションがあがらないようです。
「あきらめるか?」
リク君の肩に手を当てて聞くと,
「そんなわけでしょうっ!!」
彼はさらにやる気を出しました。
こうなったら,一人でも採集を続けるつもりでした。
そして約束の時間が過ぎました。
彼らは公園の広場に集合しました。
タコ「こっちはいっぱいとったどー!」
タコ君が叫びます。
スナ「これを見てみろ!」
虫かごには大量のガが入っていました。
「ぎゃぁぁ!きもちわるいっ!」
オジョー「まさら,あたしも同じ感情だから安心して・・・。」
女子二人で慰(なぐさ)め合っていました。
どうやら全部で10種類もみつけてきたようです。
「こっちは・・・。」
「2種類だな・・・。」
イツキ君が現状を報告しました。
スナ「なははは!今回もこちらの勝ちだな!」
「待った!よく見てよ!」
リク君は持っていた虫かごをスナ君に近づけます。
スナ「こいつは・・・テングナミシャク!?」
リク君がにやりとしました。
サラリー「そんなばかなっ!この個体はもっと暖かい西日本では
発見例があるが,愛知県ではきいたことないですよ!」
「どう!?珍しさでは
こいつに勝るものはないよ。」
リク君がどや顔をし,
スナ君たちの表情が曇っています。
「でもさ,今回はあくまで種類で
対決したんだから,やっぱりこっちの負けでは?」
何気なく正論をぶち込んできました。
「あ・・・。」
スナ「ふははははっ!そうだっ!その通りだっ!」
サラリー「今回も我々の勝ちで確定ですね。」
ころっと立ち直っていました。
こうして彼らの対決は幕を閉じました。
またすぐに,どこかで彼らの対決は
開かれることになるのでしょう。
一度はガに興味をもって
接してみても面白いかもしれません。
第551話 プロローグ 前編 覚醒の刻 シリーズ 序章
愛知県名古屋市の中心に位置する場所に,
二つの大きな高層ツインタワービルがありました。
それぞれに名称があり,
一つは"バベル"と呼ばれていました。
このビルは大企業ジャファコンツェルンの
傘下企業が多く入っていますが,
高層階は闇組織JFの根城となっていました。
この高層階の会議室にて
幹部会議が行われていました。
それは少年昆虫団と御前が激突した
8月15日の夜遅くのことでした。

周辺に散っていた幹部たちも
この時間には全員が戻ってきたようです。
円卓の会議場にて,皆が真剣に
資料に目を通していました。
アヤ「もうこんな時間じゃないの。
夜更かしはお肌に悪いのよ。」
沼蛭のユニットリーダーであるアヤが資料を
人差し指ではじきながらぼやいていました。
源田「この議題が終われば,ゆっくりと寝られるさ。」
アヤ「あら,耳元で子守唄でも歌ってくれるのかしら?」
いじわるく言うと,
源田「ごめんこうむる。」
と,そっけなく返しました。
山本「岡崎の研究所は・・・。」
アヤ「ええ,極めて調よ。
もう間もなくだと思うわ。」
何が間もなくなのでしょうか?
石原「それでは,今回の作戦について
もう一度確認しておく。」
今回の会議にはシックスユニットの幹部以外に
相談役の石原も参列していました。
どうやら御前の勅命を持ってきているようでした。
石原「今回の作戦は,警察組織である“菊水華”を
今度こそ壊滅させることだ。」
影「いいんじゃない。」
新しく幹部になった影(シャドー)が
仮面の下でほくそ笑んでいるのがわかりました。
石原「これは御前の勅命でもある。
失敗は絶対に許されない。」
東條「それは,前回は山本さん
たちに任せたからですよね?」
山本と犬猿の仲である東條が
嫌味たっぷりに言います。
山本「なんだと・・・。」
ものすごい形相でにらめつけますが,
暖簾に腕押しでした。
東條「それなのになんでまた,
山犬に指揮権を与えるんですか?」
この部分が納得いかなかったようです。
石原「それも含めて勅命である。
御前のお考えに異論をはさむなど言語道断だぞ。」
東條「やれやれ。そういうことなら
従うしかありませんね。」
それでもまだ納得していない様子です。
東條「山本さんはよほど御前に
気に入られているんですね。
もしかしてこのボクよりも?」
山本「・・・。」
彼は帽子のツバで目元を隠し
表情を見せませんでした。
東條「そんなことないか。
だってボクは・・・。」
源田「おしゃべりはそこまでだ。
作戦の内容をもう一度確認する。
資料の・・・。」
源田は会話を遮り,
資料に目を通すように促しました。
まだまだ会議は続くようです・・・。
第552話 プロローグ 後編 覚醒の刻 シリーズ 序章
闇組織JFの会議が深夜
遅くまで行われていました。
進行を務めるのは森熊の源田でした。
すぐ横には御前の相談役でもある,
カンジと呼ばれる老人が座っていました。

彼は石原という通り名でした。
源田「まずは菊の幹部とあの小僧たちを
なんとしても我々のテリトリーに誘い出す。」
小僧とはリク君達の事でした。
彼らにとってあの少年の存在は
すでに脅威と捉えられているようです。
アヤ「やっぱりさぁ,今日せっかく向こうから
来てくれたのに取り逃がしちゃったのは残念ね。」
石原「それは,御前に対する冒とくであるか?」
静かにそして威圧的な口調で
その発言を諫(いさ)めます。
アヤ「あら,そんなつもりはないわ。」
彼女は軽くかわしました。
今村「ふぉっふぉっ。」
山本の隣に座っていた
今村が手を挙げます。
今村「彼らを誘い込む絶好の場所がありますよ。」
源田「ふむ。」
彼が話を続けます。
今村「部下のグレイからの提案なのですがね・・・。」
その後も今回の作戦についての詳細な
打ち合わせが深夜遅くまで続いたようです。
源田「よし,今回の作戦をカーホイール作戦と名付ける。」
東條「前回のウォッチタワー作戦のような失敗はなしですねっ。」
彼が作戦内容の確認を行います。
源田「指揮権は山犬の南雲,川蝉の東條は
アドバイザーとして参戦,山犬の指揮下には入らず。」
東條「まぁ,妥当なところですよね。」
その問いかけに山本は反応しません。
源田「古賀(山本の部下),木戸(東條の部下),
マヤ(アヤの部下)は,戦闘要員として山犬の指揮下に入る。」
それぞれのユニット準幹部が
山犬の指揮下に入り,作戦任務につくようです。
アヤ「あら?今回は貴方の右腕は
参戦しないのかしら?」
アヤが言う右腕とは“冥界の悪魔”の異名を持つ,
キラーの事を指していました。
源田「あいつには“表の顔”もある。
今回はそちらに専念したいそうで,
やむを得ず許可した。」
アヤ「相変わらず,甘いのね。」
源田は気にせず,説明を続けました。
源田「さらに我が森熊の精鋭部隊から,梟(ふくろう),
鵙(もず),鷲(わし),雁(がん)の4部隊を派遣する!」
精鋭と呼ばれる小隊も動員するようです。
源田「精鋭部隊ナンバー2の“鷲”も出動させるんだ。
絶対に失敗は許されない!」
果てしてその実力は・・・?
そして8月16日を迎えました。
意気消沈していたリク君をイツキ君が
少年昆虫団を結成した時の決意を思い出させ,
リク君を復活させたのでした。
その日のお昼・・・。
少年昆虫団はカフェ・オーシャンで
昼食をとっていました。
レオンさんが先ほど誰かから連絡が入り,
別れ際に午後にまた連絡を入れると言っていました。
イヤコムの電源が切られているようで,
こちらからの反応には応答しませんでした。
カフェオーシャンは人であふれていました。
どうやらオープン記念イベントを大々的に行っているようで,
多くのお客さんが訪れていました。
そんな中で彼らは・・・。