リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第545話~第548話

2024/12/31

第545話 カイリのかいかい怪奇譚 解決編  シーズン3

「思ったよりもたくさん出てきたな。」



男たちは手に物騒な

ナイフを持っていました。







さらにロープを持った男もいます。

おそらく首吊りにみせて殺す気なのでしょう。



まさらちゃんとカイリちゃんは

木の後ろに隠れます。



「おとなしく逃げ帰ればよかったものを。」



リーダー格の初老の男がそう言います。



「逃げたらお前たちが隠してきた

ことが明るみに出ないだろ?」



イツキ君は当然とばかりに反論します。



その言葉を合図に10人を超える男たちが

イツキ君たちを拘束しようとごった返して近づいてきます。



しかし・・・。



5分もしないうちに,

全員がその場に倒れこむこととなりました。



「なんだ・・・。げほっ・・・。

なんなんだ,お前たちは・・・。」



「俺たちは少年昆虫団,

いや今はかいかい怪奇団だ。」



イツキ君もそうですが,

リク君と互角に戦う

灰庭さんも相当な実力者でした。



灰庭「お前たちが,野田さんを殺害し,

自分たちの秘密を守るために霊能力者と

いうことにして,例の噂を流したんだな。」



「もっと言えば,江戸時代に起きた

"おさよの呪いの木の怪談噺"もあなた達が

この木に人が近づかないようにするために,

でっちあげたものなんでしょ。」



どうやら図星だったようで,

誰も反論しませんでした。



「だから,おさよなんて人が記録に残っていないんだ。

じゃあ,戦後に起きた謎の怪死も?」



灰庭「そうだと思うよ。当時の記録を

読んでも出てこなかったからね。」



男たちは逃げ出すすきを窺いますが,

まったくすきがないようであきらめ始めました。



「真相はこうよ!」



カイリちゃんが得意げに

自分の推理を述べ始めました。



「この木の下には元々,何かが埋めてあった。

貴方達のような反社が隠したいものって

いえばだいたい想像がつくけどね。」



彼女は話を続けます。



「木を掘り起こされたら大変だから,

人が近づかないように江戸時代や戦後の呪いの話を

実際にある話からヒントを

得て作り上げて,ネットなどで拡散した。」



さらに続けます



「しかし,野田さんという人物は建設会社で働く人物で,

会社から"この木を切り倒し,

別の施設を建てて利用できないか"を

検討するように任されていたという。」



どうやらカイリちゃんの推理は見事的中していたようで,

反社の連中は誰一人として反論しませんでした。



そうこうしているうちに,

灰庭さんがレオンさんに頼んで

お願いした警察が到着しました。



彼らは全員が連行されていきました。



後に判明したことですが,

あの木の下には遺体がうまっていたようです。



しかし,それはおさよのものではなく,

反社同士のトラブルで殺害された人物でした。



それを隠すために,現場近くのビルを借り上げ,

ばれないように交代で監視を続けていたようです。



―場所は再びカブクワキングの控室にて―



「今回もなかなか興味深い話だったね!」



「たしかに,カイリちゃんが調べなかったら,

ずっと殺人事件が見逃されていたままだったんだよね。」



反社の連中は野田さん殺害についても

認める供述をしているとのことです。



「さて,これでゆっくり読書ができそうだ。」

「何を言ってるの?

次の調査はもう決まってるんだよ!」



あきれ顔のイツキ君を気にすることなく,

カイリちゃんは次の怪談噺について話し始めました。



その内容についてはまた別の機会に・・・。



第546話 真夏のサンタクロース10

子供たちの間でささやかれる都市伝説・・・。



それはサンタクロースの格好をした

殺人鬼が子供を袋に入れて殺し,

家族のもとへプレゼントとして

送り付けるサイコパスのことです。





ただの都市伝説だと思われたのですが,

現実世界でサンタの格好をした

殺人鬼が本当に現れてしまいました。



少年昆虫団は真夏のサンタクロースを

追い詰めたのですが,

あと一歩のところで

自殺されてしまいました。



リク君はなぜ彼がその場で命を絶つ

行動を選んだのかが気になったで,

翌日の朝からみんなで集まって意見を

出しあってもらうことにしました。



レオンさんから聞いた新情報なども

まとめて聞いていると・・・。



彼のイヤコムに連絡が入りました。



その相手は,菊のリーダーである赤神さんでした。



「何かわかりましたか?」



イヤコムの音を共有モードに設定しました。



「おー,赤神さんの声だ。」

「テンションが低いから,お仕事モードだね。」



どうやら神主の時だけ熱血テンションが

高い人だと思われているようです。



赤神「検視の結果,何らかの催眠状態

または洗脳されていた

可能性が高いことがわかった。」



「体内からそういう薬物が

検出されたってことか?」




イツキ君が聞くと,



赤神「ああ。さらに妙なものまで見つかったらしい。」



と,赤神さんが答えました。



「やはり,アレですか・・・?」



レオンさんは何やら見当がついていたみたいで,



赤神「ああ。ナノロボットが見つかった。」



それに呼応するように答えます。



「ロボット!?っていうか,

ロボットって体内で見つかるもんなの?」




トシ君が素朴な疑問を持ちました。



「ナノロボットっていうのは,

すごく小さい目に見えない大きさのロボットなんだ。」




「ナノは1mの

10憶分の一の単位だね。」




リク君は当然知っているようです。



「そんなに小さいの!?」



赤神「まぁ,それくらい小さいロボットという

意味でつけられた名称だな。」



「でも,それが体内に入っていたからと

言ってどうして洗脳って話になるんですか?」



隣にいたレオンさんが,



「それが脳内の思考をつかさどる部分にあれば,

もしかしたら特殊な電波などの電気信号で

洗脳できる・・・のかもしれない。」




少し自信なさげに言います。



「かもしれない?」



赤神「そんな技術が実用化された

なんて聞いたことがないからな。」



どうやらあくまで仮設の域を出ないようです。



「でも,よくそんな目に

見えないようなモンを発見できたな。」




赤神「なかなか,優秀な監察医がいるみたいだよ。」



結局,せっかく集まったにも関わらず,

これ以上わかることはありませんでした。



そう思っていた矢先のこと・・・。



このお話の続きは次回の

真夏のサンタシリーズにて―



第547話 ぼくらのカブクワキング

リク君が済んでいる町には,カブクワ専門店である

“カブクワキング”というお店があります。



店長の名前は“伊藤 整二”といい,

たまにリク君達が遠出をして採集に行きたい時は,

快く車を出してくれる人です。



とはいっても,採集にはついていかず,

車の中で待っているか,

周辺をぶらついているようです。



そんなキングには,従業員は

バイトが二人いるだけです。



一人は今年大学4年生になる

“海野 真凛(うみの まりん)”ちゃんと,

最近入ってきた中野木大学の

准教授である“灰庭健人”さんでした。



表向きは仕事の給料が教授に比べて少ないから,

バイトをしているということになっています。



灰庭さんには裏の顔があり,

彼はレオンさんの知り合いで,

何らかの事情によりリク君達と対立している

“闇組織JF”にスパイとして

潜入しているのです。



その実力はリク君を凌駕する才能を見せており,

とても力強い味方といえるでしょう。



ちなみにこの店の控室は,

リク君の妹のカイリちゃんが結成した

“かいかい怪奇団”の本部と

なっているみたいです。



お昼の12時過ぎのとても暑い日に,

少年昆虫団はこのキングにやってきました。





「おなかすいたよぉ・・・。」

「こんな所にいてもおなかふくれないんですから,

さっさとカストにでも行きましょうよ!」



どうやらまだ昼食をとっていなかったようです。



「カブクワを見ていたら,

空腹なんて吹っ飛ぶでしょ!」

「いやいやいや,そんなわけあるか!」



トシ君が強烈な突っ込みを入れますが,

リク君はまったく気にしません。



店長「たしかに,もうお昼時だな。



せっかくだから何か

一緒に食べに行くか?」



伊藤店長が声をかけてくれました。



「店はどうするんだよ?」



店長「今日はケント君がいるからな!」



そう言って,奥の方へ声をかけると,



灰庭「はい。店番は任せてもらって,

先にお昼に行ってきてください」



まりん「えー!いいなぁ!

どこか食べに行くの?」



まりんちゃんが昆虫に与えるゼリーの

交換を終えて戻ってきました。



「じゃあ,まりんちゃんも一緒に行こうよ!」



このセリフに一番喜んだのは

何を隠そう伊藤店長でした。



彼はひそかにまりんちゃんの

ことを想い慕っていたのです。



しかし,店長とバイトという立場上

それを告げることはかないませんでした。



「なんか,店長の顔が

にやけてないか・・・。。」



イツキ君はその様子にいち早く気づきました。



リク君は先ほどからケースに入れられた

“パリーフタマタクワガ”に夢中で何も聞いていません。



「やっぱりこいつも最強候補の一角か・・・!」



何やらわけのわからないことを

つぶやいています。



こうして少年昆虫団は店長とまりんちゃんと

一緒に近くのファミレスの“カスト”に行きました。



そして戻ってくると再び中の

昆虫を見て回ることになりました。



「なんで!?もう帰りましょうよ!?」

「いやーいつまでも見てられる。」



リク君がなかなか帰ろうとしないので

みんなは呆れかえっていました。



「でも,せっかくまりんちゃんも食事に

一緒に行ったのに何の進展もなかったね。」



まさらちゃんが店長の脇腹辺りをひじでつつきました。



店長「なっなんのことかなー!?」



明らかに動揺しています。



「う~ん先は長そう・・・。」



なかなかうまくはいかない,

というお話でした。



第548話 忘れられたスナぴょん団 前編

―西緑地公園にて―



少年昆虫団の5人はいつものように午後8時を

過ぎた時間からカブクワ採集をしていました。



この公園には大きな池があるのですが,

その周辺には多数のクヌギやコナラがあり,

カブクワ採集には最適な場所でした。



「今日も元気に楽しく昆虫採集!」

「なんか,テンプレみたいなセリフだな。」



イツキ君が少し呆れながら言いました。



「もう帰りましょうよ~!」

「そのセリフも,もはやテンプレだな。」



だぬちゃんがまだ始まったばかりだと

いうのにへとへとになっています。



すると,草陰から誰かが

近づいてくる音がします。



「なんかいるよ!」



まさらちゃんはリク君の後ろに隠れます。



「あれは・・・。」



どうやらトシ君は相手が

何者か気づいたようです。



スナ「あれ?なんでお前たちがこんな

ところにいるんだ。」



現れたのは,少年昆虫団のライバルを

自称している,すなピョン団でした。







オジョー「相変わらずねっ!」



オジョーこと,エリカは

まさらちゃんに手を振りました。



「なんか,すっごい久々ですよね。

もはやあなたたちの存在を忘れていましたよ。」


サラリー「君は何を言っているんだ。

昨日も一昨日も先週も会ったじゃないか!」



サラリーがだぬちゃんの記憶の

思い違いを正しました。



「あれ?そうでしたっけ・・・。

なんか2年以上も見てなかった気が・・・。」



「最後にあったのは,

5,6年生と公園で争った時だったよな。」(437話参照)



イツキ君も考え込みました。



スナ「だから,それが昨日の事じゃねぇか!

いったい何を言ってんだ・・・。」



すなピョン団の5人も手には

アミと虫かごを持っていました。



スナ「まぁいいや。せっかく

はちあったんだから,やろうぜ!」



「何を・・・?

ヴィート対決は嫌だよ。

だって・・・。」



そこまでリク君が言いかけた時,



スナ「もちろん昆虫採集対決に

決まっているんだろう!」



と,彼が大きな声で叫びました。



ジャイ「ジャジャジャイ!」



となりにいた,巨漢の

ジャイちゃんも雄たけびを上げます。



オジョー「ちょっと!

近所迷惑だから騒がないで!」



彼女が二人を諫(いさ)めました。



「まぁいいよ。

どうせ暇なんだろ。」



と,少しとげのある言い方をしました。



しかし,彼は特に気にすることもなく,



スナ「じゃあ,今回の昆虫採集対決は・・・。」



はたして彼はどんな採集対決を

持ちかけるのでしょうか!?



第549話~第552話

2025/2/22

第549話 忘れられたスナぴょん団 中編

西緑地公園でスナぴょん団に遭遇したリク君たち。



いつものように昆虫採集対決を

行うことになりました。



スナ「今回の昆虫採集対決は・・・。」



「ゴクリ・・・。」



トシ君が意味もなくつばを飲み込みました。



スナ「ガ対決だ!」



「が?」



一瞬何を言っているのか

わかりませんでした。



「ガ・・・?」



スナ「そう!蛾だよ蛾!」



きゃぁっ!



と,二人の女子から

悲鳴が上がりました。



オジョー「何を考えているのよ!?

あほじゃないの!?」



「ガなんて誰が好き好んで採集するの!?」



二人が猛抗議をします。



サラリー「いやいや。実はガってマニアが多いんですよ。」

スナ「その通りだ。チョウよりもはるかに

種類が多いからな。ガ専門のコレクターもいるんだぞ。」



スナ君が選考理由を説明します。



「まぁ,なんでもいいよ・・・。」



リク君は半分あきれ顔でした。



「時間はどうしますか?」



だぬちゃんが聞くと,



スナ「今から1時間で,より多くの種類のガを

集めたチームの勝ちでどうだ?」



と,答えました。



「それでいいんじゃないか。」



こうしてガ対決が行われることになりました。



二チームはそれぞれ別の方角を向き,

採集へ出発しました。



少年昆虫団は草むらの中を

かき分けながら進みました。







「もうすぐで樹液の出る木に到着するよ。」

「ガっていうと光に集まると思っていました。」



だいぶ目的地まで近づいているようです。



「もちろん,あとで街灯にも行くよ。」

「もういや・・・。

ガなんて絶対にイヤ・・・。」



まさらちゃんはトシ君の後ろに隠れながら

最後尾を怖がりながら歩いていました。



「ほら,見えてきたよ!

いつもの採集スポットだ。」



そこにはそれなりの太さに成長した

クヌギの木が植生していました。



「いるな。これはなんていう名前のガなんだ・・・?」



イツキ君がライトで照らした

先にはムクゲコノハがいました。



リク君はこの蛾について軽く解説をした後で,



「まずは1種類目・・・!」



その蛾を採集しました。



果たしてどちらのチームが

見事勝利するのでしょうか。



第550話 忘れられたスナぴょん団 後編

少年昆虫団とスナぴょん団は採集した

ガの種類を争うことになりました。



イツキ君がまずは

ムクゲコノハというガを見つけました。



同じころ,すなピョン団は・・・。



スナ「よしっ!オビガが捕まえたぞ!」



オジョー「なんか,ちいさくてダサいわね。」



オジョーが虫かごを通して細目で見ていると,



サラリー「こいつは日本固有種で1種しかいないんですよ。」



彼が解説をしてくれました。



オジョー「ふーん,あっそ!

ガはガでしょっ!」



続いて,ジャイ君が大振りに網を使って

空中を飛んでいたガを捕まえました。



ジャイ「ジャジャイ!これは,コスズメ?」

スナ「いや,セスジスズメだな。」



やはり昆虫博士を自称しているだけはありました。



サラリー「腹部に入った縦の線が特徴ですね。」

スナ「ああ。」



かなり順調に採集を進めているようです。







少年昆虫団は・・・。



「いやー,もう全然採集できませんね!」

「君たちがだらだらと歩いているから・・・。」



軽く反論しました。



「だって,疲れるし,ガなんてハッチ―先輩の

次の次くらいに嫌いだし・・・。」



トシ君もごねます。



「あたしもガは・・・イヤ・・・。」



どうもテンションがあがらないようです。



「あきらめるか?」



リク君の肩に手を当てて聞くと,



「そんなわけでしょうっ!!」



彼はさらにやる気を出しました。



こうなったら,一人でも採集を続けるつもりでした。



そして約束の時間が過ぎました。



彼らは公園の広場に集合しました。



タコ「こっちはいっぱいとったどー!」



タコ君が叫びます。



スナ「これを見てみろ!」



虫かごには大量のガが入っていました。



「ぎゃぁぁ!きもちわるいっ!」



オジョー「まさら,あたしも同じ感情だから安心して・・・。」



女子二人で慰(なぐさ)め合っていました。



どうやら全部で10種類もみつけてきたようです。



「こっちは・・・。」

「2種類だな・・・。」



イツキ君が現状を報告しました。



スナ「なははは!今回もこちらの勝ちだな!」



「待った!よく見てよ!」



リク君は持っていた虫かごをスナ君に近づけます。



スナ「こいつは・・・テングナミシャク!?」



リク君がにやりとしました。



サラリー「そんなばかなっ!この個体はもっと暖かい西日本では

発見例があるが,愛知県ではきいたことないですよ!」



「どう!?珍しさでは

こいつに勝るものはないよ。」



リク君がどや顔をし,

スナ君たちの表情が曇っています。



「でもさ,今回はあくまで種類で

対決したんだから,やっぱりこっちの負けでは?」



何気なく正論をぶち込んできました。



「あ・・・。」



スナ「ふははははっ!そうだっ!その通りだっ!」

サラリー「今回も我々の勝ちで確定ですね。」



ころっと立ち直っていました。



こうして彼らの対決は幕を閉じました。



またすぐに,どこかで彼らの対決は

開かれることになるのでしょう。



一度はガに興味をもって

接してみても面白いかもしれません。



第551話 プロローグ 前編 覚醒の刻 シリーズ 序章

愛知県名古屋市の中心に位置する場所に,

二つの大きな高層ツインタワービルがありました。



それぞれに名称があり,

一つは"バベル"と呼ばれていました。



このビルは大企業ジャファコンツェルンの

傘下企業が多く入っていますが,

高層階は闇組織JFの根城となっていました。



この高層階の会議室にて

幹部会議が行われていました。



それは少年昆虫団と御前が激突した

8月15日の夜遅くのことでした。







周辺に散っていた幹部たちも

この時間には全員が戻ってきたようです。



円卓の会議場にて,皆が真剣に

資料に目を通していました。



アヤ「もうこんな時間じゃないの。

夜更かしはお肌に悪いのよ。」



沼蛭のユニットリーダーであるアヤが資料を

人差し指ではじきながらぼやいていました。



源田「この議題が終われば,ゆっくりと寝られるさ。」

アヤ「あら,耳元で子守唄でも歌ってくれるのかしら?」



いじわるく言うと,



源田「ごめんこうむる。」



と,そっけなく返しました。



山本「岡崎の研究所は・・・。」

アヤ「ええ,極めて調よ。

もう間もなくだと思うわ。」



何が間もなくなのでしょうか?



石原「それでは,今回の作戦について

もう一度確認しておく。」



今回の会議にはシックスユニットの幹部以外に

相談役の石原も参列していました。



どうやら御前の勅命を持ってきているようでした。



石原「今回の作戦は,警察組織である“菊水華”を

今度こそ壊滅させることだ。」



影「いいんじゃない。」

新しく幹部になった影(シャドー)が

仮面の下でほくそ笑んでいるのがわかりました。



石原「これは御前の勅命でもある。

失敗は絶対に許されない。」

東條「それは,前回は山本さん

たちに任せたからですよね?」



山本と犬猿の仲である東條が

嫌味たっぷりに言います。



山本「なんだと・・・。」



ものすごい形相でにらめつけますが,

暖簾に腕押しでした。



東條「それなのになんでまた,

山犬に指揮権を与えるんですか?」



この部分が納得いかなかったようです。



石原「それも含めて勅命である。

御前のお考えに異論をはさむなど言語道断だぞ。」

東條「やれやれ。そういうことなら

従うしかありませんね。」



それでもまだ納得していない様子です。



東條「山本さんはよほど御前に

気に入られているんですね。

もしかしてこのボクよりも?」

山本「・・・。」



彼は帽子のツバで目元を隠し

表情を見せませんでした。



東條「そんなことないか。

だってボクは・・・。」



源田「おしゃべりはそこまでだ。

作戦の内容をもう一度確認する。

資料の・・・。」



源田は会話を遮り,

資料に目を通すように促しました。



まだまだ会議は続くようです・・・。



第552話 プロローグ 後編 覚醒の刻 シリーズ 序章

闇組織JFの会議が深夜

遅くまで行われていました。



進行を務めるのは森熊の源田でした。



すぐ横には御前の相談役でもある,

カンジと呼ばれる老人が座っていました。







彼は石原という通り名でした。



源田「まずは菊の幹部とあの小僧たちを

なんとしても我々のテリトリーに誘い出す。」



小僧とはリク君達の事でした。



彼らにとってあの少年の存在は

すでに脅威と捉えられているようです。



アヤ「やっぱりさぁ,今日せっかく向こうから

来てくれたのに取り逃がしちゃったのは残念ね。」



石原「それは,御前に対する冒とくであるか?」



静かにそして威圧的な口調で

その発言を諫(いさ)めます。



アヤ「あら,そんなつもりはないわ。」



彼女は軽くかわしました。



今村「ふぉっふぉっ。」



山本の隣に座っていた

今村が手を挙げます。



今村「彼らを誘い込む絶好の場所がありますよ。」

源田「ふむ。」



彼が話を続けます。



今村「部下のグレイからの提案なのですがね・・・。」



その後も今回の作戦についての詳細な

打ち合わせが深夜遅くまで続いたようです。



源田「よし,今回の作戦をカーホイール作戦と名付ける。」

東條「前回のウォッチタワー作戦のような失敗はなしですねっ。」



彼が作戦内容の確認を行います。



源田「指揮権は山犬の南雲,川蝉の東條は

アドバイザーとして参戦,山犬の指揮下には入らず。」

東條「まぁ,妥当なところですよね。」



その問いかけに山本は反応しません。



源田「古賀(山本の部下),木戸(東條の部下),

マヤ(アヤの部下)は,戦闘要員として山犬の指揮下に入る。」



それぞれのユニット準幹部が

山犬の指揮下に入り,作戦任務につくようです。



アヤ「あら?今回は貴方の右腕は

参戦しないのかしら?」



アヤが言う右腕とは“冥界の悪魔”の異名を持つ,

キラーの事を指していました。



源田「あいつには“表の顔”もある。

今回はそちらに専念したいそうで,

やむを得ず許可した。」



アヤ「相変わらず,甘いのね。」



源田は気にせず,説明を続けました。



源田「さらに我が森熊の精鋭部隊から,梟(ふくろう),

鵙(もず),鷲(わし),雁(がん)の4部隊を派遣する!」



精鋭と呼ばれる小隊も動員するようです。



源田「精鋭部隊ナンバー2の“鷲”も出動させるんだ。

絶対に失敗は許されない!」



果てしてその実力は・・・?



そして8月16日を迎えました。



意気消沈していたリク君をイツキ君が

少年昆虫団を結成した時の決意を思い出させ,

リク君を復活させたのでした。



その日のお昼・・・。



少年昆虫団はカフェ・オーシャンで

昼食をとっていました。



レオンさんが先ほど誰かから連絡が入り,

別れ際に午後にまた連絡を入れると言っていました。



イヤコムの電源が切られているようで,

こちらからの反応には応答しませんでした。



カフェオーシャンは人であふれていました。



どうやらオープン記念イベントを大々的に行っているようで,

多くのお客さんが訪れていました。



そんな中で彼らは・・・。



第553話~第556話

2025/4/5

第553話 新しいアミを求めて 覚醒の刻 シリーズ 第1章

少年昆虫団はかおるさんがバイトを務める

カフェ・オーシャンで昼食中でした。



しかし,なぜかかおるさんの姿が見当たりません。



混雑しすぎて,見つからないようでした。







「すごい人だねー。」

「早めに並んでおいてよかったですね。」



5人は一つのテーブル座席に座って,

この混雑状況を眺めていました。



「そろそろ来ないかな,

僕の頼んだカツ丼・・・。」




リク君の料理だけまだ

届いていませんでした。



「カフェでカツ丼を頼むのもどうなんだ・・・。」



イツキ君はリク君の隣で静かにパスタを食べていました。



???「大変長らくお待たせしましたー!」



威勢の良い声でやってきたのは

バイトの若い女性でした。



ネームプレートには「織部 あずき」と書かれていました。



「やっと,カツ丼を食べられるー!」



織部「ごゆっくりどうぞっ!」



ブロンド色のショートヘアの髪が特徴的な

瞳の大きな可愛らしい女性でした。



年齢はかおるさんよりと同じくらいに見えました。



彼女は注文票を確認すると

急ぎ早に厨房へ戻っていきました。



次のオーダーが入っているのでしょう。



「さっきまでしょぼんとしていた

人とは思えないテンションだね。」




トシ君が余計なチャチャを入れますが,

リク君は気にすることなく,

割り箸を割ってカツをほおばりました。



「あ,かおるさんがいた!」



どうやら遠くの方で働いている

かおるさんをみつけることができました。



しかし,人が多すぎて声を

かけることができません。



「さすがに忙しすぎて

声をかけるのは悪いですね。」




「そうだねー・・・。」



少年昆虫団は手短に食事を済ませ,

お店の外に出ました。



すると,向こうから見覚えのある車が

こちらへ向かってきました。



「あれはレオンさんの愛車ですね。」



だぬちゃんの予想通り,運転席から

レオンんが降りてきました。



「みんな,昼食はもうすんだかな?」

「うん!カフェオーシャンで食べてきたよ!」



レオンさんはみんなに車に乗るように促しました。



「急に席を外して悪かったね。」



車のハンドルを握りながら,謝りました。



助手席に座っていたリク君がたずねます。



「呼び出した相手は赤神さん?」

「いや,小東だ。」



小東とはレオンさんの友人で,何か事情があり,

闇組織JFに潜入しているスパイでした。



そして闇組織JFの中ではグレイという名で

準幹部まで任されるようになっていました。



時々,組織の情報をレオンさんに

流しているようです。



「ねぇねぇ,結局リク君の

アミって新しくしなくていいの?」




二人の会話に空気を読まずに入ってきました。



しかし,新しいアミが必要な

こともまた事実でした。



果たしてリク君はどうやって新しいアミを

入手するつもりなのでしょうか。



第554話 リク君の過去① 覚醒の刻 シリーズ 第1章

少年昆虫団を乗せた車は国道41号線を

まっすぐ北に走らせていました。







トシ君が新しいアミをどうするのか,と聞いてきます。



「実はそれについては

当てがあるんだよね。」



みんなは少し驚きました。



御前によって破壊されてしまった月読(ツクヨミ)の

代わりが存在するとは思わなかったようです。



そもそもあの特殊なアミが何なのか,

みんなが気になっていました。



「あのアミの代わりがあるっていうのか?」

「うん,たぶん・・・。」



少し自信のない返事でした。



「オイラも気になるな。

あのアミはいったいどうやって手に入れたんだい?」



レオンさんも興味があるようでした。



「かなり高度な技術によって作られた

モノだということはわかるが・・・。」



「あれは貰いものなんだ。」



リク君は普段から持ち歩いている

天照の柄の部分をぎゅっと握りしめました。



「少しだけ,昔話をするね。」



そう言って,リク君は天照と月読を

手に入れた経緯を語り始めました。



「僕が小学校1年生の時の夏休みに

父親と二人でキャンプに行ったんだ。」



「かいりちゃんたちは一緒じゃなかったの?」



まさらちゃんが聞くと,



「まだ二人とも小さかったからかな。

とにかく二人ででかけたんだ。」



と,答えました。



彼は話を続けます。



「でも,僕はそこで父親と

はぐれて遭難してしまったんだ・・・。」



みんなは初めて聞く事実に驚きを隠せませんでした。



「そんなことがあったなんて

初めて知りましたよ!」



「誰にも言っていなかったからね。」



レオンさんはハンドルを握りながら

黙って話を聞いていました。



「山で道に迷い,あちこちさまよっていた時に,

ある人に出会ったんだ。」



「山で迷ったら動き回るのは

よくないんじゃないの?」



トシ君は,そう言って後部座席で

お菓子をぼりぼりと食べていました。



「そのある人っていうのはどんな人だったんだ?」



真後ろに座っているイツキ君が声をかけてきました。



「年齢は50代半ばくらいのおじさんで,

無精ひげを生やしていて髪は

ぼさぼさな感じだったと思う。」



「その人の事をもっと詳しく教えてよ!」



リク君は頷きました。



「僕は山を歩き続けたら,ある施設にたどり着いたんだ。

そこにいたのがその人で,なんでもここで

秘密の研究を続けているって言ったんだ。」



みんなは話に聞き入っていました。



「でも他に所員もいなくて,

住んでいるのはその人だけ。

しかもその2階建ての研究室も

けっこうぼろぼろだったんだ。」



「すでに使われなくなった研究施設に

住み着いていたって可能性が高そうだな。」



リク君の話はまだまだ続くようです。



その間にもレオンさんが運転する車は

国道41号線を北へ北へと進んでいました。



第555話 リク君の過去② 覚醒の刻 シリーズ 第1章

リク君は小学校1年生の時に山で

遭難した時に出会った人の話をしていました。



「名前は教えてくれなかったから,

僕は"博士"って呼んでいたんだ。

常に白衣を着ていたし,いつも何かを

作っていたみたいだからね。」



博士と呼ばれる人物との出会いが,

どのように"天照"と"月読"の捕虫網に

つながっていくのでしょうか。



「最初はその人がすぐに救助を

要請してくれるかと思ったんだけど,

そこには外部との通信手段が一切ないらしく,

さらに山を下りて助けを求めに行くことも断られちゃったね。」



「なんだか,それって怪しくありません?」



と,だぬちゃん。



「でも,食事は出してくれたし,

助けが来るまで住んでもいいと言われたから,

悪い人じゃなかったよ。」



いよいよ話は核心部分にせまるようです。



「博士はある武器を発明していた

みたいなんだけど,その試作品を僕にくれたんだ。」

「なるほど。

それがあのアミってわけだね。」



レオンさんが口を開きました。



「元々はただの棒状の武器だったんだけど,

僕がお願いしてアミの部分を

取り付けられるようにしてもらったんだ。」







「山奥にこもって怪しい武器の研究?

その話は本当なのか・・・?」



トシ君が疑ってかかります。



「君にだけは疑われたくないな・・・。」



リク君が冷めた視線でトシ君を見つめます。



「さらにその武器を使った技をまとめた古い本があってね。

それを読ませてもらって,

独学であの技を学んだんだ。」



「その本も例の博士って人がもっていたの?」



と,まさらちゃん。



「詳しいことはわからないんだけど,そうみたいだよ。

本人は別に武術が得意ってわけ

じゃあないみたいだった。」



「つまり,遭難した後にそいつに出会って,

試作の武器をもらい,救助が来るまで

ひたすら一人で修行をしていたってわけか。」



冷静に話をまとめるイツキ君。



「まぁ,そんなところだよ!

正確には天照は試作品じゃないんだ。

でも完成品でもない・・・らしい。」



どうも歯切れが悪い言い方でした。



「天照はさらにバージョンアップ

できるって言っていた気がするんだ。」

「わかった!」



まさらちゃんが声を出しました。



隣で座っていたトシ君は耳を押さえます。



「試作品ってことは完成品が

他にもあるってことだよね!?」



「うん,そのはずなんだ。

だからそれを譲ってもらえれば・・・。」



少し間を置いてから,



「あの技もできるようになるはずなんだ・・・!」



と,言いました。



「あの技って・・・?他にも何かあるんですか?」

「実はそうなんだよ!ほら,僕がいつも使う技を覚えている?」



トシ君が,



「えっと,確か陸地なんたらとか青空なんとかでしょ?」



と,見当違いなことを言いますが,



「大地と大空だろ。」



さすがにイツキ君は間違えませんでした。



みんなは他の技に興味を示しました。



その内容とは・・・。



第556話 リク君の過去③ 覚醒の刻 シリーズ 第1章

リク君には,いつも使っている,

大地の技と大空の技以外にも

習得すべき技があるようです。



その技とは・・・。



「まぁ,それは実際に新しいアミを手に入れて,

試してみてからのお楽しみということで!」

「もったいつけておいて!

もしかしてホントはできないんじゃないの?」



と,少し半信半疑なトシ君。



「そうだね。実際に使ったことがないわけじゃないけど,

完成形は未使用なわけだし・・・。」

「トシ君!いじわるなことを言わないの!」



まさらちゃんがぷりぷりと怒っています。



「ふふんっ!」



まさらちゃんの言葉を気にすることもなく,

お菓子を食べ続けていました。



「・・・。」

「何か気になることでもあるのか?」



レオンさんの様子が気になるようでした。



「いや,子供が遭難してきたのに,

連絡もせずに,そんな場所に

籠っている人物って何者なんだろう。」

「ですよねー。

だぬもそれが気になっていました。」



レオンさんの疑問はもっともでした。



「あの時は,僕も小さかったし,

何も気にならなかったんだけど・・・。」



リク君の話をトシ君以外は真剣に聞いていました。



「今思えば,不可解なことだらけなんだ。」



と,リク君。



さらに続けます。



「何かにおびえ,逃げるように

人里離れた場所で研究をしていたのか・・・?」



イツキ君が,



「そもそもその施設は

本当に研究所だったのか・・・?」



と,疑問に思っていることを口に出します。



「武器?を作っていたの?

そんなことを個人でできるものなのかな?」



そんな会話を続けている間に,

レオンさんが運転する車は

県境を超えて,岐阜県に入りました。







さらに車を進め,国道から県道へ,

そして獣道のような狭い山道を登っていきます。



「本当にこんなところに

研究施設があるの?」



「むしろ,こんなところまで車で行けるなら,

助けを求めにいけたのでは?」



車に揺られながらそれぞれが感想を漏らします。



「いや,当時はこんなところまで

車が通れる道はなかったんだ。」



どうやら当時と今では環境が違うようです。



「たしか,車道に出るまで徒歩で

5時間以上かかったはず・・・。」



そして,とうとう車が入れる道の

限界地点までやってきました。



全員が荷物をもって車を降ります。



「ここからはハイキングだね。

日が暮れる前までには到着したいところだ。」



時刻は午後3時を回っていました。



「道案内は任せて。

あの場所の事はばっちり覚えているから!」



リク君が少し自慢げに言いました。



「さすがの記憶力ですね。

トシ君なら3秒で忘れますよ。」



「オイラはニワトリか!?」



そんなツッコミを入れつつ,

少年昆虫団の登山が始まりました。



第557話 謎の研究施設 覚醒の刻 シリーズ 第1章

新しいアミがあるかもしれない,

謎の研究施設に向けて

少年昆虫団は山道を登っていきます。



その道中の会話にて・・・。



「そういえば,君たちと合流する

前に久遠と紫織にばったり会ってね・・・。」

「すでにテンションが低いですね・・・。」



あの子のテンションの高さについていけなかったのでしょうか。



「久遠がレポートの提出も終わって暇だから,

遊んでくれ,遊んでくれとしつこくてね・・・。」



「モテる男って辛いよねー!

うちの男子軍団も見習ってほしいくらい!」



グサッ!!



まさらちゃんの言葉にはとげがありました。



「いやいや!たまったもんじゃないよ!

なんとか,この後はみんなとキャンプが

あるからって断ったんだから。」



「公安最強のレオンさんでも

あの娘には勝てないんだな。」



彼はレオンさんの隣を歩きながら,そう言いました。



「いや,別にオイラは最強なんかではないし,

そもそもこれに関しては勝ち負けじゃないでしょ!」



どうやら相当参っているようでした。



「“じゃあついてくる”って言って聞かないから,

なんとか今度おいしいスイーツを

おごることで手を引いてもらったよ・・・。」



すると,トシ君がどうでもいいことを聞きます。



「それって経費で落ちるの?」

「落ちるわけない・・・。」



もはやテンションが地の果てまでも落ちていました。



道もないような中をひたすら進み,

ようやく目の前に大きな研究施設が見えてきました。



「あれですかー!

かなり大きいですねぇ!」



そこには3階建てのコンクリート製の

無機質な建物がありました。





「思っていたより,

数倍デカイな!」



トシ君が上を見上げながら,つぶやきました。



「リク・・・。」

「うん?」



リク君がイツキ君を見ます。



「お前が昔ここで出会った

人物ってもしかして・・・。」




「うん。」



リク君は頷いた後,



「もちろん,当時はそんなことを

知る由もなかったけど。」




と,言いました。



「どういうことですか?」



だぬちゃんが聞きます。



「おそらく,博士は闇組織“JF”の人間だ。

もしくはだった。」




まさらちゃんたちは当然のように驚きました。



しかし,イツキ君やレオンさんには

なんとなく見当がついていたようでした。



「それしかないだろうな。」



「逆に,そうであるなら

その時の状況も納得がいくね。」




全員が研究施設の閉じられた

入り口前に集まっていました。



リク君は自分が考えていたことを話し始めました。



第558話 研究施設内へ 覚醒の刻 シリーズ 第1章

みんなは入り口前の3段ほどある階段に座って,

リク君の話を聞き始めました。



「彼が組織から逃げ出した人間なら,

僕がここに迷い込んだのに外部との接触を拒み,

救援を要請してくれなかった説明もつく。」




リク君はさらに続けます。



「おそらく,何らかの理由で組織から追われ,

元々使われていなかったこの組織の

研究施設に身をかくしたんじゃないかな?」




まさらちゃんが,



「でも,それって危なくない?

真っ先に探されそうだけど・・・。」




と,言うと,レオンさんが,



「まぁ,灯台下暗しとも言うしね。

奴らもまさかこんなところに

隠れているとは思わなかったんだろう。」




と,リク君が言おうとしたことを

代わりに言ってくれました。



「でも,見たところ,すでに

人が住んでいる気配はないですよ?」




ところどころ,壁は剥がれ落ち,

元々割れていたガラスはさらに広がって,

室内へ温かい風を送り込みます。



おそらく室温は40度を

超えているのではないかと思われます。



「つまり,リクと別れたのち,

JFの追手がここまでやってきて,

捕まったか,殺されたか・・・。」




リク君の表情が険しくなりました。



「実は,救助されてから,

しばらくして,もう一度ここを訪ねたんだ。

父親と一緒にね。その時にはもう,

誰もいなかった・・・。」




どうやら,リク君はもう一度ここへ来ていたようです。



「当時はなぜいなくなってしまったのか,

全くわからなかったけど・・・。」




「奴らが関わっていると

知った今なら・・・,ってことだな。」




みんなは誰もいないであろう,

使われなくなった何かの

研究施設の前で佇んでいました。



「ああ,おなかすいたぁ!

おかし食べよっと!」




彼はリュックからスナック菓子と

オレンジジュースを取り出しました。



「中に入らないんですか?」

「これを食べたら行くよ。」







みんなはトシ君を入り口に残して,

施設の中に入ることにしました。



中に入ると,猛烈な暑さと

不快な湿度が襲ってきます。



「うへぇ・・・。

暑すぎる・・・。」




「日がだいぶ落ちてきたとはいえ,まだまだ暑いな。

これは相当な年数,換気をしていなかったんだろう。」




レオンさんは一番後ろをついていきます。



「たしか,アレが置いてあるのは

地下の部屋だったはずなんだ。」




リク君は昔の記憶を頼りに,廊下をすすんでいきます。



「俺は,別行動をする。」



イツキ君が突然,そんなことを口にしました。



「かなり,広い施設だからな。

手分けして色々と探って

おくのも悪くないと思うんだ。」




「確かにそうだね。

じゃあ,何か変わったものを

見つけたら,イヤコムで連絡を。」




イツキ君は指2本で了解の合図をすると,

反対方向へと消えていきました。



「じゃあ,僕たちは

このまま地下室へ行こうか。」




中は非常に広く入り組んでいました。



まるで侵入者が簡単に重要な施設に

たどり着けないようにするために思えました。



リク君の足が止まりました。



そして・・・。









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