リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第433話~第436話

2022/8/28

第433話 満月の下で
8月31日の夜8時ごろ・・・。



空には満月が浮かび,雑木林を照らし,

懐中電灯がなくても歩くことができます。





少年昆虫団のリーダーであるリク君は,

夏休み最後の日も昆虫採集をしています。



一緒にいるメンバーはだぬちゃんに,

まさらちゃん,イツキ君です。



場所はいつもの緑地公園に見えます。



「今日で夏休みも終わりだ!

悔いのないように昆虫採集をしよう!」



リク君は張り切っていましたが,

他のメンバーのテンションは低いようです。



「早く帰ろうぜ・・・。

なんか蚊がいつもより沢山いて,

かゆくてかなわん。」



イツキ君は手で蚊を振り払うのに必死でした。



「あ,だぬもさされました!」



だぬちゃんは腕に張り付いていた蚊をつぶしました。



「ムホでも塗っておく?」



ムホというのはかゆみ止めの塗り薬です。



まさらちゃんはポケットからムホを取り出して,

だぬちゃんに渡しました。



リク君は構わず,奥へどんどんと進んでいきます。



「だいぶ数が減ったなぁ・・・。

もうすぐ9月だから仕方ないか。」



色々と探し回りますが,

カブトムシは見つかりません。



こうして緑地公園を一周して昆虫採集は終わりました。



「よし,帰ろう。俺は早く帰って読書をしたい。」

「だぬもジャズでも聞いて,明日に備えますよ。」



だぬちゃんは宿題がまだ終わっていないようですが,

気にしていないようです。



「なんかあっという間の夏休みだったなぁ・・・。

特に大事件とかもなかったしね。」


「そんなことがそうそうあるわけないだろう。」



イツキ君がそこまで言ったとき,

リク君は目が覚めました。



「なんか変な夢だったな・・・。

今日は確かまだ7月12日だったよな。

まだ夏休みが始まってもいないのに,

夏休みが終わる夢を見るなんて・・・。」



リク君はまだ頭がぼーっとしていました。



「大事件か・・・。たしかにそんな事,

そうそう起きたりしないよな。」



しかし,この翌日,少年昆虫団は闇組織JFの幹部である,

山犬と遭遇し,とてつもない事件に巻き込まれていくのでした・・・。



第434話 カイリのかいかい怪奇譚 前編
リク君の妹であるカイリちゃんはショッピングが大好きなのですが,

怖いお話も好きというちょっとかわった趣味を持っていました。





今日はまさらちゃんと一緒に中野木図書館に来ていました。



「夏休みも後半だけど,何か楽しいことないかなぁ。」



まさらちゃんが話しかけると,



カイリ「それなら怪談話でも聞くのはどうかな?

きっと楽しいよ!」



「そういえば,怖い系の話が好きだったね・・・。」



まさらちゃんは怖い話が苦手だったので,

カイリちゃんのことをすごいと思っていました。



「図書館では静かにな。」



本棚の近くで二人が会話をしていると,

イツキ君が声をかけてきました。



「あ,来ていたんだ。」

「昆虫採集がない時はだいたいここにいるか,

レオンさんと修行しているんだよ。」



イツキ君の後ろから,

灰庭さんが顔を出しました。



灰庭「今日はボクも一緒なんだ。」



灰庭さんは地元の図書館に興味があったようで,

イツキ君についてきたようです。



「カイリちゃん,おすすめはあまりしないけど・・・。

怖い話が好きなら稲姫先生の怪談噺を聞いてみたら?」



カイリ「面白そう!」



カイリちゃんはすぐに興味を示しました。



「それなら稲姫先生のHPに,

今までの怪談話が全部アップされているぞ。」



灰庭「へぇ,面白い先生もいるんだね。」



彼も一緒に聞くことにしました。



灰庭さんが持っていたタブレットを使って,

稲姫先生のHPを開きました。



そのHPはトップページに真っ黒な画面で,

中央に稲姫先生がろうそくを1本持ち,

意味深な顔をしてこちらを見つめているようなものでした。



その様子からとてつもなくおどろおどろしい,

雰囲気が伝わってきました。



「あいかわらず趣味が悪いぜ・・・。」



イツキ君はあきれ返っていました。



みんなはワイヤレスヘッドホンを借りてきて装着しました。



「とりあえず,一学期の最初の学年集会で,

聞いた話を再生してみよっか。」



そのお話は"稲川淳姫の怪談3"の内容でした。



詳細はこちらから読むことができますが,

概要は心霊スポットである山神トンネルで,

訪れた車に真っ赤な手形がつくが,

あわてて逃げて後から確認すると,

その手形はどこにもなかったというお話です。



このお話を聞いた後,

カイリちゃんはある事を提案します。



そのある事とは・・・。

第435話 カイリのかいかい怪奇譚 中編
カイリちゃんは怪談が起きた現場に,

実際に行ってみたいと言い出しました。



まさらちゃんは反対しましたが,

どうしても行きたいと言うので,

しぶしぶついていくことにしました。



車は灰庭さんが出してくれることになりました。



怪談噺に出てきたトンネルは愛知県内の,

某所にある旧国道沿いのトンネルでした。





そのトンネルは心霊スポットとして有名なだけあり,

なんとも言えぬ気味の悪さを放っていました。



古いトンネルなので証明も少なく,

薄暗いオレンジの光でかろうじて奥が見えるようでした。



灰庭さんはトンネルの外のわき道に車を停止させました。



「もう帰ろうよぉ!怖いよぉ!」



時刻はまだ夕方でしたが,

まさらちゃんは怖がって車から出ようとしません。



近くで流れる川の音がざぁざぁと聞こえました。



「さて,来たはいいけどこれからどうするもりだ?」



イツキ君はカイリちゃんに聞きました。



カイリ「とりあえず降りてトンネルの中を見てみたい!」



カイリちゃんはドキドキしながらも楽しそうにしていました。



まさらちゃんとは対照的な様子です。



灰庭「こんなところがあったんだねぇ・・・。」



彼はトンネルを外から眺めていました。



まさらちゃんが車のボンネットに手をついて,

落ち込んでいました。



どうやらついてきたことを,

深く後悔しているようでした。



灰庭「じゃあ,あのお話と同じように,

車でトンネルの途中までいってみようか。」



全員が再び車に乗り込み,

トンネルの中央付近まで向かいました。



その時,何か不気味な音が聞こえてきました。

そこで中央付近まで来たところで車を停止させました。



本来であればトンネル内は駐停車禁止ですが,

万が一音の原因が車から出ていては危険なので,

灰庭さんは必要な手順を踏んで止む得ず,

緊急停車させた,という事にしました。



ただ,不気味な音は車内からではないようでした。



そして,車のボンネットを見てみると,

そこには二つの手あとがついていました。



トンネルが暗くてよく見えませんが,

血でつけたような色にも見えました。



「きゃあぁぁ!」



まさらちゃんが大声をあげて車に乗り込みました。



カイリ「灰庭さん,すぐに車を出してください!」



カイリちゃんに言われ,

全員が車に乗り込み,

その場を離れました。



そして,近くのコンビニに車を止め,

もう一度ボンネットを確認してみると・・・。



「うそ!手あとがない!

確かにトンネルの中では見えたのに!」

「おいおい,まさか本当に心霊現象に,

遭遇したってか!?そんなバカなことあるか。」



イツキ君は半信半疑でした。

本当にこれは心霊現象なのでしょうか。



第436話 カイリのかいかい怪奇譚 後編
カイリちゃんは,

車のボンネットをじっと見つめ,

何かを考えていました。



灰庭さんはその様子を少し遠くで見守っていました。



「ねぇ!もう帰ろうよ!

あのトンネルはホントの心霊スポットだよ!

真っ暗な中にトンネルの黄色い光がぶきみだよぉ・・・!」



カイリ「え!?」



さらに集中して何かを考えているようでした。



カイリ「そっか!」



急に大声を出しました。



「どうした?」

カイリ「この謎の真実,いただきました!」



元気に決め台詞を叫びました。



灰庭「何かひらめいたみたいだね。

じゃあもう一度,現場に行ってみようか。」



まさらちゃんだけは,嫌がりましたが,

このコンビニに置いていかれるのも嫌だったので,

しぶしぶついて行きました。



トンネルに入ると不気味な唸り声のようなものが響き渡っています。



先ほどと同じ場所に車を止めて,

全員が外に出ました。



「いやぁぁ!この声は死者の叫び声よぉ!!」



カイリ「違うよ。これは川の流れる音!」



カイリちゃんがトンネルの出口を指さしました。



「なるほど。たしかにすぐ近くを川が通っていた。」



灰庭「その音がトンネル内で反響して,

この不気味な音をだしているんだね。」



灰庭さんは少しもこわがる様子もなく,

そう言いました。



「じゃ,じゃああれは何・・・!?」



まさらちゃんが指さす方向には先ほどと同じように,

ボンネットに手形が張り付いているように見えました。



カイリちゃんはまさらちゃんの手を取ると,

手のひらをその手形に重ねようとしました。



「ちょっ!何をしようとしてるのよぉ!」



嫌がるまさらちゃんを半ば強引に引っ張り,

手形に重ねました。



カイリ「これが真実よ。」



その手形はまさらちゃんの手の形と完全に一致していました。





「どっどういうこと!?」

カイリ「これは,少し前にまさらちゃんがつけた手の跡なの。

それがこの低圧ナトリウムランプに照らされて,浮き出て見えただけ。」



低圧ナトリウムランプとはトンネル内で使われる,

黄色い光を放つランプのことです。



トンネル内では走行中の安全のため,

色よりも距離感を大事にします。



そのため,排ガスが多くても,

距離感がつかみやすい,

黄色のランプが多く使われていました。



新しく作られた現在のトンネルでは,

排ガス規制や照明技術の発達とともに,

白色のランプが使われるようになっています。



「たしかに,よく見れば,

これは血の色でもなんでもないな。

ランプのせいで周囲が暗い黄色に見えるから,

まるで手跡がういてみえたのか。」



イツキ君はボンネットに浮き出て見える手形をまじまじと見ました。



「そう言えば,稲姫先生の怪談噺でも,

親戚の子が車のボンネットを,

触っていたっていう描写があった・・・!」



灰庭「おそらくその子の手跡だろう。」



こうして稲姫先生の怪談噺の裏に隠された真相が,

解き明かされたのでした。



しかし,カイリちゃんたちは,

他の怪談噺にも同じような謎を見つけることになるのです。



そして,この謎を追っていくうちに,

彼女たちは衝撃の真実を知ることになるのでした。





第437話~第440話

2022/10/9

第437話 サギとブラフのヴィート対決
緑地公園の噴水広場に大勢の少年たちが集まっていました。





何やら揉めています。

中には少年昆虫団やスナぴょん団もいました。



揉めている相手は何処かの小学校の,

5年生と6年生たちでした。



6年生の一人が大声で,



6年生1「ここは俺たちのナワバリだ!近づくんじゃねぇ!」



このグループはチーム・サギと呼ばれる不良グループでした。



スナ「ふざけんな!」



スナぴょん団のリーダーであるスナ君が歯向かいます。



ここでなぜかトシ君がしゃしゃり出てきました。



「あのさ,揉めているんならヴィート対決すればいいんじゃない?」



サラ「はぁ・・・。昆虫団の連中は何もわかっていないんですね。」



スナぴょん団のブレーンであるサラ君が出てきました。



「あのね,トシ君・・・。ヴィートっていうのは・・・。」



まさらちゃんがそこまで言いかけた時,スナ君が話をかぶせてきました。



スナ「ヴィートっていうのは子どもの妄想力で勝負するお遊びだ。

だから子どもの豊かな妄想力を失ったら対決はできない。」



「らしいな。一般的には5年生以上になるとその力は失われると言う。」



イツキ君もこの事実を知っていたようです。



「そうなんだ!じゃあ,あの連中は5年生以上だから,

ヴィートが使えないってことか!」



トシ君はポンっと手を叩いてそう言いました。



「ブラフ(嘘)でもかけてみてもだめかな?」



オジョー「無理よ。嘘やダマシは通用しない。

それがヴィート対決!

彼らはもう大人への階段に,

足を踏み入れているのよ。」



オジョーことエリカちゃんが,

腕を組んで得意げに言いました。



「う~ん,これは困りましたね。もはや解決方法は・・・。」



6年生2「何をごちゃごちゃ言っているんだ!さっさと消えろ!」



上級生が前に出てきて威圧してきます。



「消えるのはお前たちだ。」

「俺とトシで十分だ。」



急に指名されたトシ君はドギマギしていました。



そして数分後にはチーム・サギの姿はどこにもありませんでした。



スナ「なんでも武力で解決するなよなぁ・・・!

お前らの悪い癖だぞ。」



「はぁ?仕方ないだろ。他に方法が無いんだ。

お前たちのお得意のヴィートも通じないだろ。」



みんなは手に入れた広場で,

鬼ごっこをして楽しみましたとさ。



第438話 とあるトシ君の一日
夏休み真っ盛りで毎日が,

灼熱のような暑さが続いています。



今回は昆虫団の一員である,

トシ君の一日を見てみましょう。



「ふぁぁぁ!よく寝た。」





トシ君はベッドから起き上がり,

時計を見ました。



時刻はすでに朝の10時を過ぎていました。



「昨日も昆虫採集で一昨日もその前も・・・。

毎日が寝不足だよ。」



トシ君は一通りの支度を終えて家を出ました。



今日は昆虫団と遊ぶ予定もなく,

自分だけの時間が作れるようなので,



中野木商店街で部屋に飾る,

インテリアを買いに行くことにしました。



道中は自転車で真夏の熱風を切りながら,

進んで行きました。



「暑い,暑いなぁ・・・。」



信号のない交差点で一旦停止の表示が見えたので停止すると,

右から勢いよく,他の自転車がぶつかってきました。



どっか~ん!!



その場で二人は倒れこみました。



ぶつかってきた相手が,



「てめぇ!どこ見ているんだよ!

ぶっころされてぇか!」



立っていたのは中学生の少年でした。



彼の乗っていたマウンテンバイクは,

見るも無残にへこんでいました。



「いやいや,そっちが先にぶつかってきたんだろう!」



トシ君も立ち上がり,

相手に文句を言いました。



「ひぃっ!」



その少年は思わず声をあげました。



トシ君は身長170センチ以上の巨体で,

顔もヤクザのような風貌だったので,

少年がびびるのは無理がありませんでした。



「きっ気をつけろよな・・・!」



そう言ってその場を去って行きました。



「なんだ,あいつは。

それよりもオイラの自転車が無事でよかった。」



トシ君は商店街に到着し,

気に入った小物をたくさん買いました。



「せっかくだから名駅まで行こうかな。」



近くのバス停の駐輪場に自転車を止め,

バスに乗りました。



乗ってしばらくすると,

高齢の女性が入ってきたので,

トシ君は席を譲りました。



すると,急にその女性は倒れこんでしまいました。



「おばあちゃん,大丈夫!?」



どうやら熱中症のようでした。



すぐに運転手さんへ知らせ,

救急車を手配してもらいました。



「いやぁ,びっくりしたなぁ。」



名駅に到着し,買い物を済ませ,

バス停まで戻ってきました。



再び自転車に乗り帰路につきました。



すると,途中で高齢の男性が,

幹線道路の追い越し車線でふらついています。



車はその男性を避けながらビュンビュンと走っていました。



中にはクラクションを鳴らしている車もいました。



「大変だ,助けなくちゃ!」



トシ君は車道に出て,走っている車を止めて,

その男性を歩道まで誘導しました。



「おじいちゃん!大丈夫!?」



どうやら認知症を患っているようで,

自分がどんな状況なのか理解していないでした。



すぐに警察を呼んで,身柄を保護してもらいました。



さらに自転車で道路を走っていると,

今度は道端に倒れている男性を発見しました。



こちらも高齢の方です。



どうやら滑って頭を地面に打ち付けたようです。



「救急車~!!」



すぐに救急車が到着して運ばれて行きました。



「今日はいろいろあったな。

さて,家に帰ったら,

どれをどこに飾ろうかな~!

楽しみだなぁ!」



すると,イヤコムに連絡が入りました。



「う,いやな予感・・・。」



それはリク君から昆虫採集への誘いでした。



「いや,おいらは今日は忙し・・・。

え?今すぐ?いやだから・・・。

え?急いで・・・!?ぐはっ・・・。」



こうしてトシ君は昆虫採集へ向かい,

お部屋の飾りつけはできなかったのです。



ちなみにこれらの出来事は,

全て事実をモチーフにした物語です。



主人公補正のかかったトシ君には,

様々なイベントが起きるのです。



第439話 カブトの魅力
今日は岐阜県の黒ひげ神社に来ていました。



ここは奥行きが結構長く,

しかもクヌギとコナラが多く,

採集のやりごたえのある場所でした。



「今日はレオンさんも灰庭さんもいないのね。」



まさらちゃんがちょっとがっかりそうに言うと,



「うん,なんか二人とも用事があるんだって。」



そういう日は今まで通り,

カブクワキングの伊藤店長に連れてきてもらっていました。



ただし,彼はいつものように,

近くのカフェで時間をつぶしていました。



「しかし,よく飽きないよな・・・。」



イツキ君が一番後ろを歩きながら,

そうつぶやきました。



「ですよねぇ。」



だぬちゃんも同調しました。



「何を言っているんだよ!

みんなまだまだカブト虫の魅力を,

わかっていないな。」



リク君が興奮気味に声を荒げました。



「どうでもいいけど,

おいらは早く家に帰ってゲームしたい。」


「どうせ,最新作のアレでしょ・・・。」



トシ君はどうやら新作ゲームにはまっているようです。



「よし,せっかくだから改めて,カブトの魅力を語ろう!」



誰も望んでいませんでしたが,

こうなるとリク君は止まりません。



近くの樹液にいたカブトオスを捕まえ,



「見て御覧よ,この立派な個体を!

最大で88ミリにもなるんだぞ!」





飼育個体では85ミリを超える個体がブリードされ,

ギネス登録もされているようです。



「さらに体重の20倍の重さを引っ張ることができるんだ!」

「へぇ・・・。だぬより力もちですね。」



さらにリク君は奥へと進んでいきます。



「あ,これを見てよ!」



そこには樹液の中心で陣を張るカブトムシがいました。



隅にはガ,コクワガタ,

カナブン,スズメバチなどがいました。



「まさにこの出で立ち!威風堂々!

昆虫の王様にふさわしいよね!」


「たしかに。こうしても見ると恰好いいかも。」



まサラちゃんがその様子を覗き込みました。



「そんなことより,

ハッチー先輩がいるじゃん!

早く帰ろう!」



リク君は神社の一番奥へ行く間中ずっと,

カブト虫の魅力を語り続けていたようです。



何か一つでも,

熱中できることがあるってことは,

素晴らしいことですね。



第440話 9周年特別企画
編集:今年も周年特別企画を始めます。

今年はD氏との対談はありません。



おりぃけん(以下K):そうなんだ。



編集:とうとう9周年となりました。



編集:今回は昆虫記誕生秘話と各シリーズの裏設定などを語ってもらいます。



K:昆虫記はもともと自分が昆虫好きで,

昆虫を絡めたバトル物を書きたいというコンセプトではじめたんだ。



編集:そうでしたね。

リク君や昆虫団のメンバーは知人のお子さんを参考にしたとか。



K:まぁそういう設定でよろしく。

作者の身バレ防止のため,

リク君のモチーフは知人の息子を参考にしているってことで。



編集:それではまずは「1篇 黒と黒のクラッシュ」についてお願いします。



K:これはどこかで説明したかもしれないけど,元々あの4話で昆虫記は完結するはずだった。

構想当初は山本と南雲は悪いやつではなく,怪しいけど正体を暴いたら,

ただの環境保護調査団だったというオチにするつもりだった。



編集:ふむふむ。



K:だけど話を書いていくうちに,

HPのPRも兼ねて昆虫記をもう少し書き続けようと思うようになって,現在に至る。



編集:では次に「2篇 ブラック・インパクト」についてお願いします。



K:有名な看板のイラストが間違っていた伏線と裏で動いていた組織の行動は考えてあったね。

本当は東條も出す予定だったけど,

ややこしくなりそうなので止めたんだよね。



編集:それが後の各務原山シリーズで描かれるのですね。



K:「3篇 ノア」はまだ明かされていないノアの書の伏線を含め,

物語を大きく膨らませようと思って書いた。

元々,知人のP氏が考えていたゲームに"ノア"というワードが使われていて,

そこから貰ったんだ。



編集:なるほど。



K:「4篇 菊の華」では,レオンさんが公安に所属していることは最初から決めていたので,

その仲間を出して紹介しなくてはと思って書いたんだ。

それから「5篇 冥界の悪魔」では最強のスナイパーを書いたんだけど,

まだ正体は明かされていない。

でも,どこで正体を明かすのかはすでに決めてあるよ。



編集:冥界の悪魔の正体・・・気になりますね。



K:「6篇 各務原山の交錯」はさっき言ったように2篇の深堀ということで。

ここでようやく役者がそろってきたかなと。

あと,精鋭部隊の隊長達にちょっとした遊びを入れてある。

彼らの通り名は・・・。



編集:気になりますね。

本日はありがとうございました。

そういえばD氏からのメッセージを預かっていました。

「マーボー早くだしてくれませんかね?」だそうです。



K:まぁ毎年の恒例行事になっているけど,来週から出すよ!

イカレキャラの代表格であるマーボー君を!お楽しみに!



第241話~第244話

2022/11/13

第441話 神々の刻印 前編
少年昆虫団の友達にパクトという少年がいます。



彼には40過ぎの叔父がいます。

みんなにはマーボーと呼ばれています。



今回はそんな彼のお話です。



緑地公園のベンチで昆虫団とパクト君が,

何やらお話をしていました。



時間はまだお昼過ぎでしたが,

ここは木陰に隠れていて多少は涼しいようです。



「へぇ!ウーチューブで動画公開を始めたんですか!」





パクト「うん,そうなんだ!」



ウーチューブとは誰でも気軽に自作の動画をアップし,

共有できるサイトでした。



「もしかして・・・。」

「どうかしたの?」



リク君が隣に座っていたイツキ君に聞きました。



「いや,なんでもない・・・。」

「面白そう!どんな動画を作ったの!?」



まさらちゃんがパクちゃんの持っていた,

タブレットを覗き込みました。



パクト「名づけて"二―トマーボーの日常"だよ。」



「やはり・・・。」



イツキ君はなぜか頭を抱えていました。



「あれ?マーボーさんってたしか遺産相続して,

お金持ちになったんだよね?」



パクト「そうなんだよ。

あれから彼がどうなったか,

この動画にまとめてあるんだ。」



パクト君はふふんっとドヤ顔をしました。



どうやら内容に相当,

自信があるようです。



「でもウーチューブっていろんな動画があるんだね。

あ,この釣り動画面白そうじゃない!タイトルは・・・。」


「そうかなー。オイラは釣りプロだから,

こんな動画を見なくても釣れるよ。」



トシ君が意味不明な虚勢を張っていました。



「そんなことより,

パクちゃんが作った動画を見ようよ!」



まさらちゃんに促されて,

パクト君は動画を再生しました。



その内容とは・・・。



第442話 神々の刻印 中編
少年昆虫団はパクちゃんが作った動画を,

見ることにしました。



動画はパクちゃんが本人登場で,

話を進める形式になっていました。



パクト「ニートマーボーの日常チャンネル始まるよぉ!」



テンポの良い曲とともにオープニングが始まりました。



以下,パクト君の動画内説明となります。



―僕のおじさんであるマーボーさんは,

おばあさんの遺産を引き継いで5億円を手にしました。



もちろん相続税を払い終わってこの金額です!

すごいですよねぇ!5億円ですよ!



5億ウォンじゃないですよ!

一生遊んで暮らせちゃいますよねぇ!



え?そんな彼がその後,どうなったかって!

気になりますよねぇ!



5億といっても,これからの生活費やその他の経費を考えると,

そこまで贅沢できるわけじゃないんですよね!



そこで彼は何を思ったのか,

この5億円を元手に,

投資でさらに増やそうと考えたんですよ。



最初に思いついたのは株式投資,

先物オプション,FXなどなど。



彼は熟考せず株式投資に全力投球することを決めました。



投資する金額は全額の5億円を思いつきましたが,

やはりそこは冷静に考え直して3億円だけ入金することにしました。



最悪,この3億円がなくなっても,

2億円あれば残りの人生を,

慎ましく生きていると考えたんでしょう。



こちらが実際に3億円が入った口座画面です。―



画面には投資口座に3億円が,

入っている映像が映っていました。



「なんか,すでに嫌な予感しかしないんだが・・・。」

「同感・・・。」



パクちゃんの動画に戻りましょう。



―株式投資には信用取引と言って,

元手の約3倍で取引することが可能な制度があります。



つまり,3億円あれば約9億円分の株式投資が可能なのです。



彼は『一発勝負なのねぇ~!これでもっと旨いもの食って,

いい車乗りまくって世界中を何周も旅行しちゃうのねぇ~!

そして,世の中の貧乏人を,

今まで通り見下しまくって生きるのさ!』



と言ってグロース株の"グレイト・テクニシャン"

という企業にフルレバで投資しました。



しかし,株式投資とは不思議なもので,

なぜか自分が買った瞬間に株価は下落するんですよねぇ・・・。



彼も例外ではなく,購入直後から株価は下痢を引き起こし,

ナイアガラの滝のように下落していきました。





その時の彼の様子を撮影してありますのでご覧ください。―



ここで場面は真っ暗な部屋にモニターが3台置いてあり,

その前に猫背で座るマーボーの姿が映し出されました。



「なんか,悲壮感がすごいんですけど・・・。」

「まだですよ。損切りしていなければ負けじゃないですから!

今のところはまだ無敗ですよ!無敗なら大丈夫です!」




動画内ではパクちゃんがマーボーおじさんに,

何やらインタビューをしていました。



―おじさん!今の率直なお気持ちを聞かせてください!



『パクト!何,勝手に撮影しているんだよ!

今,株価が上がるようにお祈りしているんだよ!

余力を失った人間にできることは何だ!?

軍資金を口座に入金することか!?



否!?



もう全財産,入金しちゃっているから1円もない!

じゃあ,信用2階建てをすることか!?



否!?



もうすでにやっちまってんだよ!

今どんな状況だって!?



追証メッセージと戦っているんだよ!



さっきも言ったけど,追証を防ぐために,

残りの2億円も入金しちゃったんだよ!



それで少しでも含み損を減らそうと,

余力ぎりぎりまで追加で購入しちゃっているんだよ!



全てを尽くした人間にできることと言えば,

神に祈ることしかないじゃないか!』



え~と,何か大変なことになっているみたいですね。

どうやらこれが噂のお祈り投資法ってことですね!

この動画は後半に続きます。―



ここで,パクちゃんの動画は終わっていました。



どうやら再生時間の関係で,

続きは後半にアップされているようです。



その内容とは・・・。



※今回のお話に出てきた投資用語について,

詳しい説明はしておりませんので,

興味がある方はネットなどで調べてみてください。



それに伴い,投資活動を行う場合は自己責任でお願いします。



また,パクト君やマーボーが,

作中で説明した投資情報は,

一部簡略化しており,

必ずしも正確なものではありませんが,

物語をスムーズに進めるためであることを,

予めご了承ください。



第443話 神々の刻印 後編
マーボーの二ートチャンネル動画は,

いよいよ後半が始まりました。



前半と同じく,

甥っ子のパクちゃんが解説しています。



―前半はマーボーの投資生活を中心に見ていきました。



さて,その投資結果は・・・。



結果論から言うと彼は遺産をすべて失いましたー!

それどころか,"ピー"億円の借金を負うことになったのです!



では,なぜ彼がこんな目に合ってしまったかと言うと・・・。―



ここで動画はマーボーが投資を行っている場面に切り替わります。



―『どういうことだよ,グレイト・テクニシャン(略してGT)!

なんでこんなことになっているんだよぉ!』



あれれ?マーボーおじさんどうしちゃったの!?

その銘柄ってたしか優良企業で,

成長が見込めるっていってなかったっけ?



『それがよ,この会社は粉飾決済やってやがったんだよ!

それで株価がすでに1/10になっているんだよ!

マジでふざけんな!まさか上場廃止とかないよなぁ!』―



「もう結末は知っているからアレだが,

上場廃止になったんだな。」


「そして無事死亡・・・。」



画面はその日から数日後を映し出していました。



―『もう終わりだぁ・・・。 金持ちになって宇宙旅行に行く夢も,

夜のお店で可愛いお姉さんにお小遣いを毎日100万円渡して,

ちやほやされてデレデレする夢も,

おぼっ○ゃま君クラスの豪邸に住む夢もついえた・・・。』



あれ?どうしちゃったの,マーボーおじさん!



たしか投資で成功して大金持ちになって,

"神の世界"に君臨するって言ってなかった?

神の歴史に名を残す,"神々の刻印"を

刻むんだって言ってなかった?



『刻んだのはブラックリストだよ・・・。』



どうやらもう生気はありません!

いったいどうなったんですか?



『GTの野郎,粉飾決算が原因で上場廃止になりやがった。

倒産していないのに株券が紙くずになるなんて知らなかったよ!』



現金5億円は消え,さらに信用で15億円分を購入していたため,

負債額は信じられない数字となったようです。―





画面にはその後のマーボーについて,

字幕で説明がされていました。



「えーと,彼は結局どうなったの?」

「どうやら自己破産したみたいですね。」



説明文を読んで,だぬちゃんが補足しました。



「やっぱ,借金は怖いね!

クレジットカードなんて持つもんじゃないよ!」



トシ君だけどうも内容があまりわかっていないようでした。



画面の最後には大きく"つづく"の文字が現れました。



「え?これってまだ続くの!?もう終わりじゃないの!?」



パクト「何を言っているんですか!ここからが本番ですよ!

だって"二―ト"マーボーの日常チャンネルなんですから!」



どうやらここまでの動画はほんの序章だったようです。



今後の彼の活動はパクトちゃんによって,

定期的にウーチューブに上げられるようです。



「いや,こんな動画は誰得なんだ・・・。」



少年昆虫団はあきれてしまい,

昆虫採集に向かいましたとさ。



第444話 カブクワキングでワイワイ
少年昆虫団はカブクワキングにやってきていました。



「なんか今日はお客さんが多いね。」



お店の中は子供連れの家族たちでにぎわっていました。



リク君が伊藤店長に話しかけると,



伊藤「そうなんだよ。実はね・・・。」



店長はタブレットを取り出し,

画面を見せました。



「あ,これってカブクワキングのHPだ!」

「ホントですね。こんなの作っていたんですね。

興味がないから見たことなかったですよ。」



だぬちゃんが軽くけなすと,



まりん「ふふふ,HPは前からあったんだけど,

灰庭さんがリニューアルしてくれたの。」



バイトのまりんちゃんが奥から出てきて,

HPがリニューアルしたことを教えてくれました。



「なるほど,たしかによくできたHPだな。」



イツキ君がみんなの後ろから画面をのぞき込み,

スタイリッシュでスマートなHPを見て,

感想を述べました。



「みんなこのサイトを見て来たんだ。」



トシ君は相変わらずこの店が苦手だったので,

挙動不審な行動を取りながらそう言いました。



「ところで,今日は灰庭さんっていないの?」



まりん「今日はお休み。

最近,なんだか忙しいみたいで・・・。」



彼女は灰庭さんがバイトに出てこないことを,

すごく残念がっていました。



伊藤「せっかくだから,ゆっくりと見ていってくれよ。

気にいった昆虫がいたらぜひ購入をしてくれ!」



「そうはいっても,

この店で買うのはリクしかいないからな・・・。」



リク君はガラスケースに入った,

カブクワをまじまじと見ています。



「この前入荷したヘラクレスもかっこいいけど,

こいつもすごいね!」



彼が指さした先には,

エレファントゾウカブトがいました。



サイズではヘラクレスに負けますが,

重さでは世界一を誇るカブトです。



「こっちもいいぞ!メタリフェルホソアカクワガタ!」





メタリックなボディと,

長くのびたクワが特徴の外国産クワガタです。



伊藤「おっ!気に入ってくれたみたいだね!

買ってくれるのかい?」



「いや,今日はお金がないから見てるだけ!」



リク君があまりに自慢げに言うので,

伊藤店長も苦笑いするしかありませんでした。



まだまだ夏休みも中盤にさしかかるところです。



暑い日中は涼しいペットショップで過ごし,

日が落ちてきたら昆虫採集に行くのが彼らのスタイルなのです。



今日はどんな昆虫が取れるのか,

毎日ワクワクが止まらないですね。



第445話~第448話

2022/12/24

第445話 真夏のサンタクロース8
子どもたちの間でまことしやかにささやかれる,

真夏のサンタクロース伝説をご存知でしょうか。



この人物は,全身を真っ黒な衣装で身にまとい,

手にはナタを持ち,

子どもを見つけては袋に詰めて殺し,

その亡骸を家族のもとへ送りつける,

と言うサイコパスな殺人鬼です。



この人物の素性を探るために,

リク君たち少年昆虫団は捜査に乗り出します。



そして西緑地公園でそれらしき人物が,

女性を襲おうとしている現場を目撃し,

これを食い止めます。



駆け付けた警官にも取り囲まれ,

逃げられないと悟ったのか,

持っていた凶器で胸を刺して死んでしまいました。





公園ではまだ現場検証が続いています。



時刻は夜の11時を過ぎました。



「ねぇ,今日はもう,

お家に帰らない!?怖いよっ!!!」



まさらちゃんがリク君の袖を引っ張りました。



「そうだね。警察に必要なことは話したし,

後は赤神さんたちがうまくやってくれるだろう。」

「それにしても不気味な奴だった・・・。

さっき遺体をちらっと見たが,

突き刺さった凶器から出た血で,

服の色か血の色か分からないくらい赤かったぜ。」



イツキ君がそう言うと,



「ちょっと,怖いこと言わないでよ!」



トシ君が後ろでビビっていました。



「あの男は間違いなく,

30年前に大量殺人を犯した,

三田(さんた)クリスですよ。」



だぬちゃんが確信した顔で言うと,



「さっき,レオンさんが言ってたじゃない。

あいつは,大陸の革命家だって。三田じゃない。」



リク君がだぬちゃんの意見を否定しました。



「そうですかねぇ・・・。」



彼はリク君にそう言われても,

まだ納得していないようでした。



「とにかく,帰ろ!

ねっ,帰りましょ!」



まさらちゃんがもう一度念を押してきたので,

この日はこれで解散することになりました。



翌日,リク君はレオンさんに,

昨日の事件の調査経過を聞くために,

イヤコムで連絡を取りました。



「昨日は大変だったね。」



と,ねぎらいの言葉をかけました。



「それより,分かったことを教えてよ。」



リク君は真夏のサンタの素性がかなり気になるようです。



「まず,あの場で自決した男についてだけど,

名前はナーグゥー・モーリィ。大陸国の人間だ。

過激テロ組織"日堕つる国"の幹部で,

国際指名手配されていた。」

「たしか三兄弟の一人って・・・。」



レオンさんは話を続けます。



「うん,そうなんだ。

三人とも同じ組織に所属していた経歴がある。

ただ,残り二人の素性に関してはほぼ不明。」



どうやら組織を脱退した人物から過去に聞き出した情報で,

モーリィに兄弟がいたことまでは分かっているのですが,

それがどんな人物なのかまでは,

当局が聞き出せなかったようです。



リク君はレオンさんとの話を終え,

頭の中を整理するために,ベッドで横になりました。



「(なんでテロ組織のメンバーがわざわざ日本に来て,

サンタの恰好なんてして,無差別殺人をする必要がある?

しかも,ちょっと追いつめられたからといって,

自らの命を絶つなんてありえるか・・・?)」



考えれば考えるほど謎が深まるばかりです・・・。



しかし,そう遠くない未来,

この事件のとんでもない真相が,

明らかになっていくのです。



その真相とは・・・。



第446話 カイリのかいかい怪奇譚 前編 シーズン2
カイリちゃんはまさらちゃん,

イツキ君と共に怪傑怪奇団を結成し,

様々な怪奇現象を検証することにしました。



もちろんイツキ君は乗り気ではなかったのですが,

灰庭さんから話を聞いたレオンさんに勧められ,

しぶしぶメンバーに入ることにしたのです。



団員の活動場所はカブクワキングの控室でした。

キングの伊藤店長が快く貸してくれたようです。



どうやら灰庭さんに貸しを作り,

まりんちゃんに良いところを見せたかったのでしょう。



怪奇現象といえば,

稲姫先生の怪談噺を取り上げるのが,

手っ取り早いという意見に全員が賛成しました。



今回も稲姫先生のHPを開いて検討することにしました。



*今回からカイリちゃんのセリフはこの色になります。



「どのお噺を調べてみる?」

「うーん,どうせやるなら終業式の前日の百物語は?」(第45話参照)



怖い話を1つするたびにろうそくを消し,

全部消えると例海への道が開くと言う有名なアレです。





しかし,HPには一つ一つの詳しい話は乗っておらず,

タイトルも「百物語」とだけありました。



「これじゃあ調べようがないな。

別の日に話した内容にするか?」

「でもこの日ってなんかリク君が変なことを言ってなかった?」



後ろで聞いていた灰庭さんが,



灰庭「へぇ,気になるね。

どんなことを言っていたの?」



と,聞いてきました。



「たしか,"正しい情報を見極める能力"とか・・・。」

「リク兄に真意をきいてみよっか。」



カイリちゃんがイヤコムを手に取ると,



「いや,それじゃ面白くないだろう。

俺達の力でこの噺に隠された真実を導こう。」



と言い,



イツキ君が少しやる気を出してきたようです。



灰庭「リク君は他に何か言っていた?」



「たしか,"稲姫はみんなが誤った情報に惑わされることなく,

適切な行動ができるようになって欲しいからあの話をした"って。」



怪傑団のみんなは考え込みました。



小部屋の真ん中に置かれた,

木製机の上にノートPCがあり,

その机を囲むようにして,

4人が座っていました。



灰庭さんもバイトを終えて,

話し合いに参加するようです。



「何度思い出しても,

あの百物語のどれかに,

重要な話があったとは思えない。

というかほぼ寝てたからわからん。」

「うーん,じゃあこの百物語に,

隠された真実はないのかなぁ。」



カイリちゃんが頭をひねりました。



果たしてリク君がした発言の真意とは―・・・。



第447話 カイリのかいかい怪奇譚 後編 シーズン2
カブクワキングの一室で,

カイリちゃん,イツキ君,

まさらちゃん,灰庭さんの四人が,

頭を悩ませていました。



「やっぱりリク君の言葉が気になるよねぇ・・・。」



みんなはとりあえず,

百物語の詳細について,

ネットで調べてみることにしました。



灰庭「百物語の起源は古く室町時代からあるみたい。

江戸時代にブームが起き,

1話かたり終えたらろうそくの灯を消す。」



他にも色々な形式があるらしいが,

おおむね共通するのは,

百話を語り終えると本物の物の怪が,

現れると言われていることでしょう。



よって百物語を行う時は,

99話でやめて夜明けを待つのが,

良いとされているのです。



「へぇ・・・。

百物語って結構,

奥が深いんだ・・・。」



灰庭さんがイツキ君を見ました。



灰庭「何か気付くことはあるかい?」



「うーん・・・。」



イツキ君も返答に困っていました。



「たしかあの時リクは,

百物語が全部終わった後に,

含みのある言葉を発したんだよな・・・。」



そこまでイツキ君が言った時に,



「もしかしたら・・・。」



カイリちゃんはもう一度,

稲姫先生のHPと百物語について,

まとめてあったサイトを見直しました。



「わかった!」



カイリちゃんが何かひらめいたようです。



「この謎の真実,いただきました!」

「え!?カイリちゃんすごい!」



灰庭さんも珍しく驚いた顔をしていました。



「お前が見つけた真実を聞かせてくれ。」



イツキ君が冷静に言いました。



「うん,いいよ。」



カイリちゃんが一呼吸おいて続けます。



「そもそも百物語っていうのは,

99話で止めなくちゃいけないの。

さらに,本来は大人数で分担して噺を進める仕組み。」



さらに彼女が説明を続けます。



「なのに,稲姫先生は自分一人で進め,

さらに百話まで到達した。」



<HPに載っている稲姫先生のプロフィール画像>



「ああ,俺もおかしいと思っていた。」



イツキ君も同意見でした。



「つまり,稲姫先生はみんなをためしていたの。

そのことに気づくかどうか。

唯一リク兄だけが気づいて指摘したってことじゃないかな。」

「そっか,だからあんなことを言ったんだ!」



またしてもカイリちゃんが,

稲姫先生の怪談噺に隠された謎を,

解き明かしたようです。



しかし,なぜか灰庭さんだけは,

納得がいっていないような顔をしていました。



こうしてこの時の集まりはお開きとなりました。



しかしこの後も,

カイリちゃんの謎解きは,

まだまだ続く夏休みになりそうです。



第448話  禁断の森
岐阜県のとある地方には,

禁断の森と呼ばれる場所がありました。



今回はその森で訪れる出来事のお話です・・・。



森の入口には「この先,進む人は自己責任で!」

という看板が立てられていました。



「禁断の森というが,

特に立ち入り禁止の場所ってわけでもないのか。」

「でも,絶対ヤバい場所だよ!

なんでこんなところに行くのさ!?」



トシ君の悲痛な叫び声は,



「そこにカブクワがいるからさ!」



という,

たった一言によってかき消されました。



「君たちはいろいろと面白い場所を,

よく見つけてくるもんだ。」



レオンさんが感心していました。



「一応,何か良い物が撮れるかもしれないので,

デジカメを持ってきましたよ。」



だぬちゃんの首には,

一世代前のデジカメが下げられていました。



少年昆虫団は会話もそこそこにして,

森の中へとはいって行きました。



「なんかいつも行く昆虫採集の場所よりも,

不気味な感じがするよぉ!」



まさらちゃんはレオンさんにくっついて離れませんでした。



「そう?いつもと同じだけど。」



リク君にはカブクワが採れれば,

そこがどんな場所だとうと気にしないようです。



「そももそもなんで,

禁断の森なんていう名前が付いているんですか?」



だぬちゃんが質問すると,



「なんでも恐ろしい生物がいて,

危険なんだってさ。」



と,イツキ君が答えました。



「恐ろしい虫っていうと,

やっぱりハッチー先輩だよ!」

「いやいや,ムカデだって危ないですよ。」



だぬちゃんが隣から話しかけました。



その間にリク君は,

先頭をどんどんと進んで行きました。



懐中電灯は全員が持っていましたが,

月明かりも届かないような深い森だったので,

いつもより暗く感じられました。



「でも,禁断の森ってことはその分,

人気も少ないわけだからカブクワも沢山いるかもね。」

「たしかに。それはそうなのかも・・・。」



でもまさらちゃんは怖くて,

それどころじゃありませんでした。



その時,前を歩いていたトシ君が何かにつまづき,

転んでしまいました。



「いってぇ・・・。

なんか枝のようなものに引っ掛かった・・・。」



トシ君が足元を見てみると,

それは枝ではありませんでした。



「うっぎゃぁぁぁぁ!!」



ソレを見た時,

彼は思わず大声を上げてしまいました。



「なんだ!?」



イツキ君とリク君は前を歩いていましたが,

振り返ってトシ君のもとへ駆けつけました。



「こっこれは!?」

「マムシだね!」



そこには体長50センチほどの蛇がいました。



種類は猛毒を持つマムシという名前です。



そして,あたりを見渡すと,

草陰を何かが這っていくような音が聞こえます。



「きゃぁぁ!」



まさらちゃんもトシ君と同様に悲鳴を上げます。



「もしかして,

他にもたくさんいるんじゃないですかね!?」



だぬちゃんの予想は当たっていました。



彼らを取り囲むように,

多数のマムシが地面を這っていました。



「リク君・・・。」

「ああ・・・みんな,

撤退(てったい)だ!!」



全員が全速力で森を駆け抜け,

入口まで戻ってきました。



「みんな,無事みたいだな。

特にかまれたりしていないな。」



全員どこも異常はありませんでした。



「良かった,良かった。」

「よくないですよ!

デジカメ落としちゃいました!」



なんと,だぬちゃんの首にかけてあった,

ベルト付きのデジカメが見当たりません。



「もう一回森の中に入る・・・?」

「・・・。」



こうして禁断の森の昆虫採集は,

だぬちゃんのカメラが被害に会う,

という結果に終わりました。



危険な場所へ昆虫採集へ行く時はくれぐれもご注意を。







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