目次
真夏のサンタクロース 1~4話
真夏のサンタクロース
これは子供たちの間でまことしやかにささやかれているお話
児童「ねぇねぇ,こんな話聞いたことある?」
児童2「何々・・・?」
児童「ある,暑い夏の夜にね,一人の子供が暗い夜道を歩いていたんだって。
すると突然後ろから声をかけられたからその子供は振り向いたの。」
児童2「ごくり・・・。」
児童「するとそこには・・・。」
児童2「ごくり・・・。」
児童「サンタクロースの格好をした人が立っていて・・・。」
児童2「・・・。」
児童「その子供を大きな袋に詰めてどこかへ行っちゃった・・・。」
児童2「ひぃぃ・・・。」
児童「まだ,続きがあって・・・。しばらくしてその子のお家に
プレゼントが届いたんだって。その中身は・・・。」
児童2「ぎゃぁぁ・・・。怖いよ~。もうやめて~。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「真夏のサンタクロース怖すぎだよ!」
少年昆虫団は昆虫採集に向けて町のはずれを歩いていました。
時間はすでに夜の10時を過ぎています。
トシ君はどこから聞いたのか,そんな噂にビビっているようでした。
「情けない!そんな非現実的なものいませんよ!」
「そうよ,サンタクロースってとても夢のあるお話なんだよ!
世界中の子供たちにプレゼントを配ってくれる存在なんだから。
まだ先だけど,早くクリスマス来ないかな~。」
まさらちゃんはサンタクロースを信じているのでしょうか。
「でもなんでそんな噂がはやっているんだろうな。」
「なんか,実際にうちの学校の子が見たことあるらしいよ~。」
「やっぱり,やべぇよ!」
リク君とイツキ君も“真夏のサンタクロース”に少し興味があるのでしょうか。
すると,一番後ろを歩いていたトシ君の肩を誰かが触りました。
「ぎゃやぁぁぁぁ。」
振り返るとそこには・・・。
「なっ。なんだ・・・。こいつは!」
サンタクロースの格好をした人物が立っていました。
「リク君,やっつけて!」
???「ちょっ,ちょっと待ってよ・・・!」
それはどこかで聞いたことのある声でした。
「伊藤店長?」
店長「そうだよ~。」
なんとサンタクロースの格好をした人物は
カブクワショップ“キング”の伊藤店長でした。
「そんな格好してなにやってんだ・・・。」
店長は事情を説明しました。
「店のPRイベントの一環~!?」
店長「そうだよ,夏にサンタクロースがいたっていいだろう。
この格好でキングの看板を持って歩けば良い
PRになるかなぁと思って,先日から始めたんだよ。」
「それ・・・まりんさんや灰庭さんに相談せずに始めたでしょ・・・。
絶対やめた方がいいよ。ただの変態にしか見えないよ・・・。」
店長「なにぃ!?」
「常識じゃないですか・・・。
サンタクロースはクリスマスに
やってくるから意味があるんですよ。」
「噂の原因はこの人だったか・・・。」
少年昆虫団にお説教をされ,
この日を境に“キング”のサンタはいなくなりましたとさ。
しかし,本物の“真夏のサンタクロース”は本当にどこかにいるのかもしれません・・・。
真夏のサンタクロース2
今回のお話は真夏に現れる恐怖のサンタクロースのお話です。
前回現れた真夏のサンタはカブクワキングの店長のコスプレでした。
実は本物の真夏のサンタは別にいたのです。
この日は珍しく気温が低く,少し寒い日でした。
台風が来たわけでもないのに,風が強く,公園の木や街路樹が揺れていました。
夕方,公園で遊び終えた児童たちが家に帰ろうとしていました。
公園を出ようとすると,出口に誰かいました。児童たちの親ではありません。
日が沈み始め,黒のシルエットでよく見えませんが,確かに誰かいます。
児童の一人が近づくと,突然そのシルエットが動きます。
持っていた袋に児童を詰め込み,その場から消え去ってしまいました。
一緒にいた友人はパニックになって泣き出しています。
数日後,その児童の家族にプレゼントが届きました。
箱を開けるとそこには・・・。
「・・・という噂話がまた聞かれるようになっていてですね!」
だぬちゃんが四町公園のベンチに座って
真夏のサンタクロースの噂話をしていました。
少年昆虫団はだぬちゃんを囲うようにして話を聞いていました。
時間は夜の10時を過ぎていました。
昆虫採集を終えて,公園で一休みしていたようです。
「それ,この前も聞いたじゃねぇか・・・。
それに,正体はカブクワのキングの店長だろ?
それが尾ひれがついて変な噂になっているだけだって。」
イツキ君がいかにも正論を言います。
「でも,だぬちゃんってこの前,そんな非現実的なものは
いないとかなんとか言ってなかったっけ?」
「そう思っていたんですが・・・。見てしまったんですよ!」
まさらちゃんはだぬちゃんのただならぬ様子に少しびっくりしていました。
「いや~,オイラは幽霊とか信じていないんだけどね!
もし幽霊が出てもいいように,GEUで怖いビデオを
借りてきて訓練しているんだけどね!
いや,幽霊なんていないんだけどね!」
トシ君はもはや何を言っているのか
意味不明ですが,幽霊が怖いことは確かなようです。
「この前,だぬは見てしまったんですよ。
本物の真夏のサンタクロースを!
夜一人で道を歩いていた時に!」
「へぇ~。そうなんだ・・・。」
リク君が相槌を打ちます。
「ええ,左手にナタ,右手に大きな袋を
持っていました。恰好は全身黒色です!」」
かなり詳細に覚えているようです。すぐにだぬちゃんは
その場から逃げだしたそうです。
「実際にそういう人物を見たとしても,それは幽霊じゃなく,変質者だ。
警察に連絡して捕まえてもらうしないだろう。」
「まぁ,そんなところだろうね。さっ,もう,今日は帰ろうよ!」
どうやら今日はお開きになるようです。
全員がいなくなった,公園に誰かが入ってきました。
ゆっくり,ゆっくりと先ほどまで
少年昆虫団が座っていた,ベンチに近づいていきます。
ジェッジェッジェッジェッ
ジェッハッハッハッハッハッ・・・。
(有名なあの音 近づいてくるとき)
そして,持っていたナタでそのベンチを破壊しました。
???「フォッフォッフォッ・・・。」
そこにランニング中の中年男性が近づいてきました。
そして,ナタを持った人物と目が合った瞬間・・・。
チャインチャインチャイン・・・・(有名なあの音 人が殺されるとき)
ブッシュ~!!
首からまるで光のシャワーのように血が吹き出ました。
一振りで彼の首を切断し,
袋に詰めて去っていきました・・・。
次に現れるのは・・・。
~~~~~~~<おまけ>~~~~~~~~
「どうせ,来年だろ・・・。しかもジェ○ソンの
パロディやりたかっただけだろ・・・。」
真夏のサンタクロース3
今回は真夏に現れる殺人鬼,真夏のサンタクロースのお話です。
都市伝説だと思われていた真夏のサンタは実在しました。
ついに,犠牲者が出たのです。
それは公園でランニングをしていた男性でした。
首をナタかオノのような刃物ではねられたようです。
周囲は警戒態勢がとられました。
公園では警察官が現場検証をしているので
一般人は中に入ることができませんでした。
少年昆虫団はキープアウトと張られた
テープの外側で様子をうかがっていました。
「なんか殺人事件があったみたいだよ・・・。
お父さんが言っていたんだ・・・。」
「噂では真夏のサンタクロースの犯行だそうですよ。」
とだぬちゃん。
「それは都市伝説だろ。」
「そうそう。そんな奴は実在しないよ。」
二人は真夏のサンタクロースの存在に否定的でした。
「じゃあ,オイラ達で犯人を探してみればいいんじゃない?
ホラ,オイラ達って結構そういう事件に巻き込まれたりしてるじゃん?」
トシ君が提案しました。どうやら少年昆虫団は過去にも
殺人事件に巻き込まれたことが何度かあるようですが,
それはまた別の機会にお話しすることになりそうです。
「事件を解決するのはリク君やイツキ君が中心で
トシ君はいつも何もしていないじゃないですか。」
いつもの突っ込みが入りました。
「まぁ,トシの言うとおり,殺人犯を野放しに
するわけにもいかない。僕たちで犯人を見つけよう。」
「でも,大丈夫かな・・・?相手は凶悪な殺人犯なんだよ・・・。」
まさらちゃんが不安そうに言いました。
「大丈夫だろ。そんな奴は俺がぼこぼこにしてやる。」
と言って指をポキポキと鳴らしました。
「なんか,二人ともしれっと言ってますけど,
発言がどう考えても小学生離れしていますからね!」
少年昆虫団は現場には入れないので,
周辺の公園や人通りの少ない場所で聞き込みを開始しました。
2時間後,有力な情報を得ました。
「この公園でサンタの格好をした怪しい人を見たって目撃情報があった。」
そう言って,普段はあまり遊ばない赤髭公園に向かいました。
「いいか,いきなり襲ってくるかもしれないから気をつけろよ・・・。」
ジェイジェイジェイジェイジェイ…ハッハッハッハッ・・・(例の音)
すでに周辺は暗くなっていてライトなしでは前も見えない状態になっていました。
「なんかいやな予感がするよぉ・・・。」
ジェイジェイジェイジェイジェイ…ハッハッハッハッ・・・(例の音)
突然,草むらから人影が現れました。
「なんかいるっ・・・!」
と叫びました。
髭を生やしてサンタクロースの格好をした
人物がナタで襲いかかってきました。
「やっぱり,真夏のサンタクロースはいたんですよぉぉ!!
早く逃げないと殺されますよ!死にますよ!」
「死なねぇよ!」
ドヤ顔をして捕虫網を背中から抜きました。
真夏のサンタが振り下ろしたナタをイツキ君が
蹴りをサンタの腕に当てて止めました。
ナタが真夏のサンタの手から離れました。
真夏のサンタはヴゥヴゥヴゥ・・・と唸っています。
その隙にリク君が真夏のサンタに攻撃を仕掛けました。
―大地一刀流 神速の打突―
ズシュッ!!!
伸びた捕虫網"アマテラス"が
真夏のサンタの喉元に突き刺さりました。
真夏のサンタはうめき声をあげながら倒れました・・・。
「ふぅ・・・。思ったよりたいしたことないな・・・。」
しかし,倒れたと思っていた場所に真夏のサンタはいませんでした。
「あれ,どこに行ったんだろ・・・。」
「逃げられたか・・・。」
イツキ君は少し悔しそうでした。
「あの,ここは警察に連絡してもう帰りませんか?」
「まぁ,そうだね。そうしよう・・・。」
この後,警察に連絡をして周辺を捜索してもらいましたが,
真夏のサンタを見つけることはできませんでした。
彼はどこへ行ってしまったのでしょうか・・・。
それはまたいずれわかることになるようです・・・。
真夏のサンタクロース4
愛知県東部の山奥にあるとあるキャンプ場。
ここは冬になるとサンタクロースの休憩地ということで
多くの客が集まるリゾート地でもありました。
さらにスキーを楽しむ客やクリスマスをロマンチックに
過ごせるコテージもあり,とても人気でした。
さらに,夏の間はキャンプ場として開放され,賑わっていました。
そこに男女11人の若者が遊びに来ていました。
ほとんどがカップルでしたが一人の
青年だけはそうではありませんでした。
彼の名前は三田クリス。見た目は地味で頬にはソバカスがあり,
髪の毛もクセ毛で,イケメンとは程遠い存在でした。
性格は気弱でパシリ体質,嫌なことが
あっても堂々と主張できないような青年です。
ただ,敬虔なクリスチャンで人を恨んだり,
悪さをしたりするようなことはしません。
そんな彼は今回のキャンプでも他の友人から
いいようにこき使われています。
青年1「おい,クリス。そこの荷物をテントの中に運んで置け!」
クリス「うん,わかったよ・・・。」
他のメンバーはキャンプファイヤーの準備をしたり,
自然に触れ合ったりと楽しんでいる中で,
クリス青年だけは,荷物を運んだりとした
雑用を押し付けられていました。
女1「なんか,クリスってどんくさい
やつだよねー・・・。なんでつれてきちゃったの?」
青年2「しょうがないだろう。同じサークル
なんだし,荷物持ちとしては役に立つだろう。」
ベンチに座って,二人の男女がクリスを馬鹿にしていました。
クリスは聞こえないふりをして,黙々と荷物を運び続けました。
すると,誰が言い出したのか,クリスにいたずらを
して怖い目にあわせてやろう,となりました。
ちょっと驚かしてやるつもりだったようです。
10人の若者はクリスを湖に連れて行きました。
そして,その湖に置いてあった二人が乗れる
くらいの小さなボートにクリスを乗せました。
クリス「いったい,何をするつもりなんだよ。」
一緒にボートに乗った青年は,
青年3「なんか,明美が湖の真ん中に珍しいものが
見えたっていうからさ,一緒に確認してもらおうと思ってよ。」
と,適当なことを言ってクリスを
なんとかボートに乗せ,漕がせました。
湖の真ん中に来たところで,クリスに湖の中を確認させました。
しかし,ボートの上からでは水が濁っており,良く見えません。
体を乗り出して確認しようとしたところ・・・。
急にボートが揺れ始めました。
残りの4人の若者が下からボートを揺らしていたのです。
彼らは後ろからこっそりと泳いでついてきていたようです。
クリス「わわ・・・。」
クリスのあわてた様子に湖の湖岸から見ていた
女子もケタケタと笑って馬鹿にしています。
その時,クリスはバランスを崩してボートから落ちてしまいました。
クリス「わぁぁ・・・。助けて・・・。僕は泳げないんだよぉ・・・。」
しかし,ボートにいた青年もいたずらを
した青年たちも助けようとはしません。
クリスは湖の底に沈んでいきました。
青年4「おい,そろそろ助けないとやべぇんじゃない?」
青年3「そうだな。お前たち,潜って拾い上げてこいよ。」
湖中にいた青年たちは潜って,クリスを
探しますが,なかなか見つかりません。
青年5「いないぞ!?これってまずいんじゃないの・・・?」
彼らもあせり始めています。
ボートの上にいた青年も一緒に探し始め,1時間ほど捜索を
続けましたが,クリスはとうとう見つかりませんでした。
全員は諦めて湖岸に戻りました。
青年2「これってやばいやつだよな・・・。
警察に言わないといけないんじゃないかな・・・。」
一人の青年がこの状況を危惧していました。
青年1「まぁ,まて・・・。ひょっとしたら自力で逃げ出して
どこかで休んでいるのかもしれない。連絡するのは明日にしよう。」
女2「そだねー・・・。ヘタに通報してアタシらが
やったと思われたら面倒だしー・・・。」
こうして,その日は警察に連絡をすることなく,夜を迎えました。
湖からは全身がびしょぬれの状態の男がゆっくりと這い上がってきました。
その顔はすでに生気がなく,この世のものとは思えませんでした。
彼は昼間に溺れてしまったクリスなのでしょうか・・・。
真夏のサンタクロース 5~8話
真夏のサンタクロース5
湖から這い上がってきた青年はあの三田クリスでした。
しかし,彼の顔にはすでに生気はなく
この世の者ではありませんでした。
彼は大きく叫びました。
クリス「ぐおおおおおっ!!」
湖の近くにはキャンプファイヤーを行った跡がありました。
そこには薪を作るために使った鉈(なた)が
置きっぱなしになっていました。
彼はそれを拾うと一歩ずつゆっくりと彼らが
眠っているキャンプ場へ向かっていきました。
そして恐れていたことが現実となります。
まずは一番手前に立っていたコテージの入り口を
鉈で壊し,中で寝ていた男女4人を殺害しました。
一人の男性は異変に気付いて逃げようとしましたが,
あえなく首をちょん切られてしまいました。
次に,奥のコテージで寝ていた男女
6人を同じように殺害していきます。
抵抗を試みた男性も手首を切り落とされ,
わめいていたところを刺され死亡。
必死に命乞いをする女性を切り刻んで惨殺。
こうしてクリスと同じサークルだった
連中は全て皆殺しにされてしまいました。
翌日,近くを散歩している人が異変に気付き,
キャンプ場を覗くとあまりの凄惨な
状況に倒れこんでしまいました。
すぐに警察が駆け付け行方不明になった
三田クリスに緊急配備を敷き,捜索を
続けましたがついに見つけることはできませんでした。
この愛知県東部キャンプ場連続殺人事件から30年・・・。
この恐怖の連続殺人が再び幕開けとなる・・・。
舞台は,中野木町。
先ほどの事件を調べてきたのはだぬちゃんでした。
「やはり,ランニング中に殺された男性は
その三田クリスっていうやつが犯人ですよ!」
「しかしなぁ,もう30年も前のことなんだろ。
当時20歳だとしてももう50歳。
そんな猟奇殺人をやるだけの気力があるのかね。」
昨日,殺害された現場近くの公園で
イツキ君とだぬちゃんが会話をしていました。
先ほど,彼らは真夏のサンタと思われる人物に襲われたばかりでした。(第216話参照)
そこで,その正体をあれこれと推理することにしていました。
残りの3人は近くのコンビニで飲み物を買いに行っていました。
「いやいや,彼はもうとっくの昔に死んでいるんですよ。
肉体だけがこの世に残り,いじめられた恨みを
晴らすために無差別殺人を繰り返しているんですよ!」
「だぬ~,お前はなんかB級ホラー映画の見すぎだよ。
そんなことは現実にはあり得ない話だ。」
飲み物を買いに行っていた3人が戻ってきました。
時刻はすでに夕方の6時過ぎ。
まだまだ明るい季節ですが,現場周辺は
木々が多く,夕日を遮り暗く感じました。
「まだ昨日殺された人の話をしてたの?
確かまだ犯人は捕まっていないらしいね。」
「怖い・・・。」
まさらちゃんは少し震えていました。
「たしかだぬちゃんの推理ではすでに死んだ
はずの人が事件を起こしているんだっけ。」
「その通りですよ。犯人はその三田クリス。
巷では真夏のサンタクロースと呼ばれています。
なぜそう呼ばれているかは不明ですが・・・。」
だぬちゃんがドヤ顔でトシ君をみました。
「そんな奴が本当にいるなら一度,お目に
かかりたいもんだぜ。来たらぶっ飛ばしてやるけどな。」
イツキ君がシャドーボクシングをして見せました。
「イツキ君,それ死亡フラグが
起つセリフですよ!やばいですって!」
彼らの近くにある公園の茂みがガサッと動きました。
忍び寄る影・・・。その正体は・・・。
真夏のサンタクロース6
リク君の家の近くにある緑地公園の入り口付近に
生い茂っている茂みの中に不審な人物がいました。
手にはナタのようなものを持ち,じっと
何かを探るように周囲を見ていました。
その格好は上から下まで
真っ赤なサンタの格好をしていました。
昨日,公園でランニング中の青年を
殺害した真夏のサンタだったのです。
そしてリク君たちは彼と対峙し,戦ったのですが
奇しくも取り逃がしてしまったのです。
ジェッジェッジェッ・・・ハッハッハッ・・・(例の音)
すでに夜の10時を回っていました。
彼はようやく茂みの中から動きだしました。
どうやら次の生贄がきまったようです。
緑地公園を横切り,土手下にある自宅へ帰ろうと
している若い女性の後をこっそりとついていきます。
そして・・・。
キャアァァァァ!!!
左手に持ったナタらしきものを振り落として
女性の脳天をぶちまけようとしました・・・。
ガギギギギィィッ!!!!
なんとそこには天照を手にした
リク君が立ちはだかっていました。
「お姉さんは早く逃げて!早く!!」
若い女性はリク君にそう言われ,
一目散にその場から離れていきました。
真夏のサンタの後ろにはイツキ君がいました。
「今度はにがさないぞ。この殺人鬼ヤロー。」
「オイラの鉄拳を食らわしてやるよ!」
トシ君はだぬちゃんによって引っ込められました。
どうやら彼らはこの周辺に真夏のサンタが
出ると睨み,パトロールを続けていたようです。
まさらちゃんたちは少し離れた
噴水辺りから様子をうかがっていました。
「暗くてよく見えないけど,
あれが昨日のサンタなんだよね・・・。」
「ええ,間違いないですよ。あんな恰好を
している奴を見間違えるわけないですからね。」
真夏のサンタ「グオオオオオオ!!!!」
真夏のサンタはブンブンと手に持っていた
ナタのようなものを振り回しました。
「こいつ,なんでナタなんて持っているんだ・・・。」
ガギィッ!!ガギィッ!!
適当に振り回していても何度か
天照に辺り,周囲に金属音が響きます。
「いや,良く似ているけどこれはナタじゃないぞ・・・。」
リク君は何かに気付いたようです。
「たっくよ・・・。」
リク君が頭を低く下げ,天照を逆手に持ってかまえました。
- 大地一刀流 地を這う虎(アース・タイガーズ)-
超高速で地面すれすれに相手の間合いに
入り込み,一気に切り上げました。
真夏のサンタはリク君の攻撃を
直撃し,その場に倒れ込みました。
ナタらしき凶器は手から離れ,近くに落ちました。
「よし,そのマスクを剥いで正体を見てやる!」
イツイ君が駆け寄りました。
すると,真夏のサンタは立ち上がり,
イツキ君に襲いかかってきました。
イツキ君は右のローキックを入れて,相手の姿勢を崩し,
そのまま三段けりで右頬を蹴り抜きました。
「しぶといな・・・。なんだ,こいつの頑丈さは・・・。」
彼は再度立ち上がり,凶器を拾い,
猛スピードでその場から離れようとしました。
「逃がすかよ!!」
リク君は彼を追いかけました。
向こうから二人の警察官が駆け寄ってきました。
どうやら警ら中だったようで
騒ぎをかけつけてきてくれたようです,
「そいつが真夏のサンタです!例の殺人鬼です!」
まさらちゃんが叫びました。
警官「そこを動くな!」
警察官が拳銃を取り出し,牽制をしました。
真夏のサンタ「ヴオオオオオオ!!!」
突然,真夏のサンタクロースは
自分の胸に持っていた凶器をつきたてました。
そして,血しぶきを上げその場に倒れ込みました。
「ウワァァァ・・・!
自分で自分を刺しましたよ!!」
囲まれて逃げ場ないと思ったのでしょうか。
真夏のサンタの自殺により
事件はあっけない幕切れとなりました。
間もなく,応援を読んだ警察官たちに
よって現場検証が行われました。
「どうした?」
リク君が何かを考え込んでいる
様子を見て,イツキ君が声をかけました。
「いや,本当にこれで終わりなのか。
なんだこの違和感は・・・。何か嫌な予感がする。」
この後,リク君の嫌な予感は的中することになるのでした・・・。
真夏のサンタクロース7
―西緑地公園にて―
真夏のサンタと思われる人物は少年昆虫団と警ら中の警察官に囲まれ,
持っていたマチェットという武器で自分の胸を刺し,自決しました。
すぐに応援の警察官が駆け付けて現場検証が
行われ,周囲は封鎖されることになりました。
少年昆虫団は現場に駆け付けた刑事たちに事情を説明しました。
また,リク君は彼の死体を見ていて何か違和感がありました。
「さっきからどうした?」
「いや,何かおかしくないかな?どう見ても無差別殺人だよね。
そんなことをする奴が簡単に自殺なんてするかな?」
リク君は違和感の正体を探っていました。
「でも,私たちの目の前で死んだよね・・・。どう見ても自殺だったよ・・・。」
まさらちゃんは先ほどのシーンが脳裏に焼き付いて離れないようです。
「頭がおかしくなったとか・・・。」
「やはり三田クリスの亡霊が乗り移って自殺させたとか・・・!」(第301話参照)
二人はそれぞれの予想を口にしました。
現場の刑事が横たわっていた真夏のサンタの変装をとりました。
年齢は30歳前後の男性で中肉中背,目つきは鋭く
まるでこちらを睨んでいるようにさえ見えました。
「見たことない顔だが,指名手配とか・・・なのか・・・?」
彼らは警察から事情を聴かれていたため,
すぐ近くで遺体を見ることができました。
「うーん・・・。もうちょっと近くで見てみたいな。」
リク君がさらに近寄ろうとしましたが,近くの警察官に止められてしまいます。
「子供が見るものではない。」,と
至極まっとうな意見を言われて・・・。
「仕方ないな・・・。」
リク君はイヤコムで誰かと連絡を取りました。
5分も立たないうちに連絡相手がやってきました。
「お待たせ。」
少年昆虫団に声をかけてきたのはレオンさんと赤神氏でした。
赤神氏は現場の刑事に警察手帳を見せて
中に入り,リク君たちと接触しました。
赤神「ちょうど,翠川の自宅に一緒にいたんで,来させてもらったよ。大変だったな。」
レオンさんは倒れている男を見て,何かに気付いたようです。
「赤神さん,この男・・・。」
レオンさんがイヤコムの端末を使って警察のデータベースを起動しました。
そこには目の前で倒れている人物と同じ顔が映っていました。
「この人って,犯罪者なの・・・?」
と,まさらちゃんが聞きました。
赤神「こいつは,日本人じゃなく大陸系の人間だ。大陸の
元革命派メンバーで世界中に指名手配されている人物だ。」
赤神氏の話によると,数年前に組織から姿を消し,行方不明に
なっていたそうで,当局も捜査に手を焼いていたそうです。
グループ内では過激派三兄弟の一人と呼ばれていたとのことです。
「ん?なんか甘い香りがするな・・・。」
現場の捜査員の方が,「その理由はおそらくこれです。」と
言って遺留品を提示しました。
それはタバコでした。
「大陸系のタバコか?一般には出回っていない銘柄なんだろうか。」
やがて現場検証が終わり,遺体は運ばれて行きました。
「とにかく,これで真夏のサンタが現れることはもうないってことだよね。」
まさらちゃんは少し安心していました。
「まぁそういうことですよね。」
だぬちゃんも同じ気持ちです。
果たしてこれで全て解決したことになるのでしょうか・・・。
真夏のサンタクロース8
子どもたちの間でまことしやかにささやかれる,
真夏のサンタクロース伝説をご存知でしょうか。
この人物は,全身を真っ黒な衣装で身にまとい,
手にはナタを持ち,
子どもを見つけては袋に詰めて殺し,
その亡骸を家族のもとへ送りつける,
と言うサイコパスな殺人鬼です。
この人物の素性を探るために,
リク君たち少年昆虫団は捜査に乗り出します。
そして西緑地公園でそれらしき人物が,
女性を襲おうとしている現場を目撃し,
これを食い止めます。
駆け付けた警官にも取り囲まれ,
逃げられないと悟ったのか,
持っていた凶器で胸を刺して死んでしまいました。
公園ではまだ現場検証が続いています。
時刻は夜の11時を過ぎました。
「ねぇ,今日はもう,
お家に帰らない!?怖いよっ!!!」
まさらちゃんがリク君の袖を引っ張りました。
「そうだね。警察に必要なことは話したし,
後は赤神さんたちがうまくやってくれるだろう。」
「それにしても不気味な奴だった・・・。
さっき遺体をちらっと見たが,
突き刺さった凶器から出た血で,
服の色か血の色か分からないくらい赤かったぜ。」
イツキ君がそう言うと,
「ちょっと,怖いこと言わないでよ!」
トシ君が後ろでビビっていました。
「あの男は間違いなく,
30年前に大量殺人を犯した,
三田(さんた)クリスですよ。」
だぬちゃんが確信した顔で言うと,
「さっき,レオンさんが言ってたじゃない。
あいつは,大陸の革命家だって。三田じゃない。」
リク君がだぬちゃんの意見を否定しました。
「そうですかねぇ・・・。」
彼はリク君にそう言われても,
まだ納得していないようでした。
「とにかく,帰ろ!
ねっ,帰りましょ!」
まさらちゃんがもう一度念を押してきたので,
この日はこれで解散することになりました。
翌日,リク君はレオンさんに,
昨日の事件の調査経過を聞くために,
イヤコムで連絡を取りました。
「昨日は大変だったね。」
と,ねぎらいの言葉をかけました。
「それより,分かったことを教えてよ。」
リク君は真夏のサンタの素性がかなり気になるようです。
「まず,あの場で自決した男についてだけど,
名前はナーグゥー・モーリィ。大陸国の人間だ。
過激テロ組織"日堕つる国"の幹部で,
国際指名手配されていた。」
「たしか三兄弟の一人って・・・。」
レオンさんは話を続けます。
「うん,そうなんだ。
三人とも同じ組織に所属していた経歴がある。
ただ,残り二人の素性に関してはほぼ不明。」
どうやら組織を脱退した人物から過去に聞き出した情報で,
モーリィに兄弟がいたことまでは分かっているのですが,
それがどんな人物なのかまでは,
当局が聞き出せなかったようです。
リク君はレオンさんとの話を終え,
頭の中を整理するために,ベッドで横になりました。
「(なんでテロ組織のメンバーがわざわざ日本に来て,
サンタの恰好なんてして,無差別殺人をする必要がある?
しかも,ちょっと追いつめられたからといって,
自らの命を絶つなんてありえるか・・・?)」
考えれば考えるほど謎が深まるばかりです・・・。
しかし,そう遠くない未来,
この事件のとんでもない真相が,
明らかになっていくのです。
その真相とは・・・。
真夏のサンタクロース 9話~
真夏のサンタクロース9
真夏のサンタクロースとは
子供たちの間でささやかれる都市伝説・・・。
それはサンタクロースの格好をした
殺人鬼が子供を袋に入れて殺し,
家族のもとへプレゼントとして
送り付けるサイコパスのことです。
ただの都市伝説だと思われたのですが,
現実世界でサンタの格好をした
殺人鬼が本当に現れてしまいました。
少年昆虫団は真夏のサンタクロースを
追い詰めたのですが,
あと一歩のところで自殺されてしまいました。
その現場には,
連絡を受けて駆け付けた
レオンさんもいました。
事件の翌日に,
リク君とレオンさんは
連絡を取り合いました。
まだ早朝だったので,
もう一度ベッドに入り,
頭の中を整理しました。
しかし考えても
なかなかうまくいかないようで,
「みんなを呼ぶか。」
と,言って昆虫団の
メンバーに連絡をとりました。
先ほどイヤコムでやり取りを
していたレオンさんも
集合してくれることになりました,
そしてもう一度,
現場に行くことにしました。
ちなみにこのお話は,
リク君がバベルで御前と
戦うよりも前のことになります。
西緑地公園にて・・・。
「あまり朝早くから
起こさないでくれるかなー。」
「そんなに早くないだろ。
もう8時だぞ。」
イツキ君が呆れていました。
「悪いね。
ちょっと気になった
ことがあったんだ。」
リク君は現場検証の終わった場所を
見つめながら,
そう言いました。
「あの男が自殺をした理由が
気になってみんなを呼んだのかい?」
レオンさんが集まった理由を聞きました。
「うん,そうなんだ。
先ほどの話をみんなにもう一度してもらえる?」
少年昆虫団は先ほどのやり取りを
レオンさんから聞きました。
主な内容は,自決した男の名前は
“ナーグゥー・モーリィ”で
大陸国の人間であること。
過激テロ組織“日堕つる国”の幹部で
国際指名手配されていたこと。
兄弟がいて彼らも同じように
テロ組織に身を置いていること。
みんなは驚きの表情を隠せませんでした。
「いやいや,
なんで国際テロ組織の幹部が
こんな辺ぴな所にいるんですか!」
だぬちゃんがもっともな
突っ込みを入れました。
しかし,その答えは誰にも
答えられませんでした。
「しかも大陸国人だって・・・!?」
「そうなんだ・・・。
みんなは社会の勉強で
世界の国についてはもう習った?」
その質問に,まさらちゃんが,
「ううん。
まだ私たちは生活科しか
ないから習ってないよ!」
と答えました。
「でもイツキ君の口から大陸国って・・・。」
「それくらいは常識だろ。」
イツキ君が不愛想に返事をしました。
「あまり世界地図は詳しくない―!」
トシ君が正直に答えました。
「じゃあ,みんなに
わかりやすく説明をしておくね。」
レオンさんは3D空間表示端末(通称"サンデー")を取り出して,
世界地図を目の前の空間に立体表示させました。
「ここがオイラ達の住む日本。」
「さすがにそれはトシ君でもわかるでしょう。」
ちらっとそちらを見ると,
"当たり前だ!"という
顔をしていましたが・・・。
「そしてそこから海を隔てて西にある国が
“大連陸道(たいれんりくどう)人民共和国”だ。」
「略して“大陸国”や“大陸の国”
または“大陸”って
みんな呼んでいるよね。」
そこには日本の面積の30倍を超える
巨大な国の国境が描かれていました。
日本海からすぐ北にある
“半島”もこの国の領土でした。
よって“半島”という呼び名も
この大陸国を指すことがあります。
どうやらこの世界では,
日本の隣にある国は,
現実世界の“あの国”ではなく,
別の国が存在していたのです。
今までのお話で出てきた“大陸”,
“大陸の国”という名称は,
特定の国をぼかして表記していたわけではなく,
それ自体が“大連陸道人民共和国”という
特定の国を指していたのです。
「人口は約20億人。
様々な民族の首長が各地域を治めているが,
テロや犯罪も多く,
政治基盤は決して
安定しているとは言えないね。」
「たしか,かつて何十年も前に,
日本が大陸国の政治に
“内政干渉”したって噂もあったよな。」
彼の知識量は小学生のそれを
完全に上回っていました。
「うーん,
全くついていけない・・・。」
まさらちゃんは頭が
痛くなってきたようです。
どうやら社会はあまり得意ではないようです。
「その話は噂の域を出ないし,一旦おいておこう。」
「今はあの男の正体をもっと知りたい。」
リク君が話を戻しました。
「オイラももっと色々と調べてみるよ。
この事件の捜査権があるわけじゃないけどね。」
その時,レオンさんの
イヤコムに連絡が入りました。
その相手とは・・・。