カイリのかいかい怪奇譚シリーズ

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目次



カイリのかいかい怪奇譚

第434話 カイリのかいかい怪奇譚 前編
リク君の妹であるカイリちゃんはショッピングが大好きなのですが,

怖いお話も好きというちょっとかわった趣味を持っていました。





今日はまさらちゃんと一緒に中野木図書館に来ていました。



「夏休みも後半だけど,何か楽しいことないかなぁ。」



まさらちゃんが話しかけると,



カイリ「それなら怪談話でも聞くのはどうかな?

きっと楽しいよ!」



「そういえば,怖い系の話が好きだったね・・・。」



まさらちゃんは怖い話が苦手だったので,

カイリちゃんのことをすごいと思っていました。



「図書館では静かにな。」



本棚の近くで二人が会話をしていると,

イツキ君が声をかけてきました。



「あ,来ていたんだ。」

「昆虫採集がない時はだいたいここにいるか,

レオンさんと修行しているんだよ。」



イツキ君の後ろから,

灰庭さんが顔を出しました。



灰庭「今日はボクも一緒なんだ。」



灰庭さんは地元の図書館に興味があったようで,

イツキ君についてきたようです。



「カイリちゃん,おすすめはあまりしないけど・・・。

怖い話が好きなら稲姫先生の怪談噺を聞いてみたら?」



カイリ「面白そう!」



カイリちゃんはすぐに興味を示しました。



「それなら稲姫先生のHPに,

今までの怪談話が全部アップされているぞ。」



灰庭「へぇ,面白い先生もいるんだね。」



彼も一緒に聞くことにしました。



灰庭さんが持っていたタブレットを使って,

稲姫先生のHPを開きました。



そのHPはトップページに真っ黒な画面で,

中央に稲姫先生がろうそくを1本持ち,

意味深な顔をしてこちらを見つめているようなものでした。



その様子からとてつもなくおどろおどろしい,

雰囲気が伝わってきました。



「あいかわらず趣味が悪いぜ・・・。」



イツキ君はあきれ返っていました。



みんなはワイヤレスヘッドホンを借りてきて装着しました。



「とりあえず,一学期の最初の学年集会で,

聞いた話を再生してみよっか。」



そのお話は"稲川淳姫の怪談3"の内容でした。



詳細はこちらから読むことができますが,

概要は心霊スポットである山神トンネルで,

訪れた車に真っ赤な手形がつくが,

あわてて逃げて後から確認すると,

その手形はどこにもなかったというお話です。



このお話を聞いた後,

カイリちゃんはある事を提案します。



そのある事とは・・・。

第435話 カイリのかいかい怪奇譚 中編
カイリちゃんは怪談が起きた現場に,

実際に行ってみたいと言い出しました。



まさらちゃんは反対しましたが,

どうしても行きたいと言うので,

しぶしぶついていくことにしました。



車は灰庭さんが出してくれることになりました。



怪談噺に出てきたトンネルは愛知県内の,

某所にある旧国道沿いのトンネルでした。





そのトンネルは心霊スポットとして有名なだけあり,

なんとも言えぬ気味の悪さを放っていました。



古いトンネルなので証明も少なく,

薄暗いオレンジの光でかろうじて奥が見えるようでした。



灰庭さんはトンネルの外のわき道に車を停止させました。



「もう帰ろうよぉ!怖いよぉ!」



時刻はまだ夕方でしたが,

まさらちゃんは怖がって車から出ようとしません。



近くで流れる川の音がざぁざぁと聞こえました。



「さて,来たはいいけどこれからどうするもりだ?」



イツキ君はカイリちゃんに聞きました。



カイリ「とりあえず降りてトンネルの中を見てみたい!」



カイリちゃんはドキドキしながらも楽しそうにしていました。



まさらちゃんとは対照的な様子です。



灰庭「こんなところがあったんだねぇ・・・。」



彼はトンネルを外から眺めていました。



まさらちゃんが車のボンネットに手をついて,

落ち込んでいました。



どうやらついてきたことを,

深く後悔しているようでした。



灰庭「じゃあ,あのお話と同じように,

車でトンネルの途中までいってみようか。」



全員が再び車に乗り込み,

トンネルの中央付近まで向かいました。



その時,何か不気味な音が聞こえてきました。

そこで中央付近まで来たところで車を停止させました。



本来であればトンネル内は駐停車禁止ですが,

万が一音の原因が車から出ていては危険なので,

灰庭さんは必要な手順を踏んで止む得ず,

緊急停車させた,という事にしました。



ただ,不気味な音は車内からではないようでした。



そして,車のボンネットを見てみると,

そこには二つの手あとがついていました。



トンネルが暗くてよく見えませんが,

血でつけたような色にも見えました。



「きゃあぁぁ!」



まさらちゃんが大声をあげて車に乗り込みました。



カイリ「灰庭さん,すぐに車を出してください!」



カイリちゃんに言われ,

全員が車に乗り込み,

その場を離れました。



そして,近くのコンビニに車を止め,

もう一度ボンネットを確認してみると・・・。



「うそ!手あとがない!

確かにトンネルの中では見えたのに!」

「おいおい,まさか本当に心霊現象に,

遭遇したってか!?そんなバカなことあるか。」



イツキ君は半信半疑でした。

本当にこれは心霊現象なのでしょうか。



第436話 カイリのかいかい怪奇譚 後編
カイリちゃんは,

車のボンネットをじっと見つめ,

何かを考えていました。



灰庭さんはその様子を少し遠くで見守っていました。



「ねぇ!もう帰ろうよ!

あのトンネルはホントの心霊スポットだよ!

真っ暗な中にトンネルの黄色い光がぶきみだよぉ・・・!」



カイリ「え!?」



さらに集中して何かを考えているようでした。



カイリ「そっか!」



急に大声を出しました。



「どうした?」

カイリ「この謎の真実,いただきました!」



元気に決め台詞を叫びました。



灰庭「何かひらめいたみたいだね。

じゃあもう一度,現場に行ってみようか。」



まさらちゃんだけは,嫌がりましたが,

このコンビニに置いていかれるのも嫌だったので,

しぶしぶついて行きました。



トンネルに入ると不気味な唸り声のようなものが響き渡っています。



先ほどと同じ場所に車を止めて,

全員が外に出ました。



「いやぁぁ!この声は死者の叫び声よぉ!!」



カイリ「違うよ。これは川の流れる音!」



カイリちゃんがトンネルの出口を指さしました。



「なるほど。たしかにすぐ近くを川が通っていた。」



灰庭「その音がトンネル内で反響して,

この不気味な音をだしているんだね。」



灰庭さんは少しもこわがる様子もなく,

そう言いました。



「じゃ,じゃああれは何・・・!?」



まさらちゃんが指さす方向には先ほどと同じように,

ボンネットに手形が張り付いているように見えました。



カイリちゃんはまさらちゃんの手を取ると,

手のひらをその手形に重ねようとしました。



「ちょっ!何をしようとしてるのよぉ!」



嫌がるまさらちゃんを半ば強引に引っ張り,

手形に重ねました。



カイリ「これが真実よ。」



その手形はまさらちゃんの手の形と完全に一致していました。





「どっどういうこと!?」

カイリ「これは,少し前にまさらちゃんがつけた手の跡なの。

それがこの低圧ナトリウムランプに照らされて,浮き出て見えただけ。」



低圧ナトリウムランプとはトンネル内で使われる,

黄色い光を放つランプのことです。



トンネル内では走行中の安全のため,

色よりも距離感を大事にします。



そのため,排ガスが多くても,

距離感がつかみやすい,

黄色のランプが多く使われていました。



新しく作られた現在のトンネルでは,

排ガス規制や照明技術の発達とともに,

白色のランプが使われるようになっています。



「たしかに,よく見れば,

これは血の色でもなんでもないな。

ランプのせいで周囲が暗い黄色に見えるから,

まるで手跡がういてみえたのか。」



イツキ君はボンネットに浮き出て見える手形をまじまじと見ました。



「そう言えば,稲姫先生の怪談噺でも,

親戚の子が車のボンネットを,

触っていたっていう描写があった・・・!」



灰庭「おそらくその子の手跡だろう。」



こうして稲姫先生の怪談噺の裏に隠された真相が,

解き明かされたのでした。



しかし,カイリちゃんたちは,

他の怪談噺にも同じような謎を見つけることになるのです。



そして,この謎を追っていくうちに,

彼女たちは衝撃の真実を知ることになるのでした。







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