2021/8/8
第377話 昆虫採集対決 ~蝉採りの巻~ <後編>
中野木緑地公園でセミ採り対決を行う
ことになった少年昆虫団とスナぴょん団。
スナぴょん団の作戦は・・・。
スナ「まず,チームを2,2,1に分ける。
ジャイとタコ,オジョウとサラ,俺様は一人。」
さらに話を続けます。
スナ「ジャイはなるべく高いところにいる
セミを狙ってくれ。タコはそれをサポート。」
タコ「OK!」
ジャイ君は背が高いのである程度
高い木まで守備範囲に入ります。
ジャイ「高いところは任せろ!ジャジャイ!!」
スナ「オジョウとサラは広く探し回るんじゃなくて,
狭い範囲にいるセミを重点的に狙ってくれ。」
オジョウとタコも作戦を理解したようです。
スナ「俺様は昆虫団の動きを見ながら臨機応変に
動く。先に50匹捕まえるつもりでやるぞ!」
この作戦は大成功で,序盤から彼らの
チームはセミをどんどんと採集していきます。
気づけばすでに20匹以上いました。
サラ「さすがスナ君ですね。彼はちょっとおっちょこちょい
なところもありますが,昆虫にかける情熱は人一倍です。」
サラ君がスナ君のことをほめると,
オジョウ「そうなんだよね。意外に
やさしいとこもあるし・・・。」

サラ「あ,そこにニイニイのペアがいますよ。」
さっと網をかぶせます。
セミを採集するときは,少し上から
かぶせるとうまくいきます。
タコ君とジャイ君も奮闘していました。
タコ君は目がいいので高いところにいるクマゼミを
見つけ,ジャイ君がそれを採集していました。
もちろん低い場所に止まっている
セミはタコ君も採集していました。
タコ「うひょ~うひょ~。順調だね~。」

残り30分になったところで,いったん
集合して,セミの数を数えてみました。
スナ「35匹か・・・。しかもクマ
ゼミが多めだ。これはもらったな。」
サラ「どうしますか?作戦は継続ですか?」
サラ君が汗だくになりながら聞きました。
やはり朝とはいえ,夏の気温を甘く見てはいけません。
必ず帽子や冷却材,多めの水分を用意し,
熱中症対策をして昆虫採集を行いましょう。
スナ「ここからは全員で固まって動く。そして
種類を問わず,残り15匹を採集して勝負をつける!」
こうして,スナぴょん団は残りの15匹を
わずか15分でやり遂げました。
少年昆虫団が集合場所に戻ってきました。
スナ「どうやら勝負は俺たちの勝ちのようだな!!」
よく見るとメンバーが足りません。
リク君とまさらちゃんしか
その場にいなかったのです。
スナ「おい,ほかのやつらがまだ戻ってきていないぞ!?」
「いや,イツキ君は本を読みたいからって帰ったよ・・・。トシもセミが
怖いらしく役に立たないから日陰でアイス食べている。だぬちゃんも一緒だ。」
どうやらすでに勝負になっていなかったようです。
「残念だけど40匹しか捕まえられなかった。」
スナ「何っ!?ほぼ一人でそんなに捕まえたのか。」
リク君の健闘及ばず,合計点でもスナ
ぴょん団にはかないませんでした。
スナ君はなんだか,試合に勝って勝負に
負けたような複雑な気持ちになりました。
第378話 稲川淳姫の怪談8
今回の怪談噺も稲川先生がオンライン上で中野木
小学校の児童に向けて公開している内容から・・・。
オムニバス形式で二つ紹介します。
少し前からドローンと呼ばれる手軽に
空撮ができるロボットが活躍しています。
これは,ある住宅街で実際に起きたお話です。
住宅街の一角にあるマンションでドローンが
飛んでいる姿がよく目撃されていました。
その最上階に住んでいる主婦が洗濯物を
干しているとドローンが目の前に現れました。
しばらくすると隣へ進んで行き,数秒間ホバリングしたり,
同じ階のベランダを行ったり来たりしていました。
その住人はもしかして新手の覗き
ではないかと思ったそうです。

事件が起きたのは1週間後・・・。
その住人の隣の部屋で強盗殺人事件が起きたのです。
犯人はまだ見つかっていません。
もしかしたらあの時のドローンは
強盗に入りやすい部屋を物色していたのか。
あるいは恨みのある人間の
住みかを探していたのか・・・。
この事件の後,ドローンがその住宅街を
飛ぶことはなくなったそうです・・・。
この動画を見ていたまさらちゃんが,
「えーん・・・。怖いよぉ・・・。こういうリアルに怖い話
ぶっこんで来るの止めてよ・・・!怪談関係ないじゃん!!!」
もっともな突っ込みを画面に
向かって入れていました。
そしてもう一つのお話は・・・。
あるアパートの1階角部屋に
住んでいる男の大学生がいました。
この部屋の一室の窓にはカーテンのサイズがあっておらず,
隙間があいて外の駐輪場が見える状態になっていました。
つまり外からも中の様子が少しわかってしまうのですが,
つい面倒臭がって交換していませんでした。
実は以前からこの出窓がとても不気味に感じる時がありました。
眠りつこうと目を閉じると,窓の方から誰かから見られているような
気配を感じたり,深夜外から不気味な音が聞こえることがありました。
ある日,いつものように電気を消して眠りに
つこうとすると,出窓から異音が聞こえてきました。
ガリ,ガリ,ガリ・・・と爪で
壁を削るような嫌な音です。
気になって窓の方を見ると,カーテンの隙間から
不気味な目がこちらを覗いているのです。
その瞬間,彼は大声をあげて電気をつけました。
出窓に近づいて確かめようとすると
すでにその「目」はありませんでした。
慌てて外の駐輪場に出て辺りを
見渡してもそこには誰もいません。
彼は勘違いだったのかと思い,ホッとしました。
そして何気なく,出窓のカーテンの隙間から自分の部屋の中を
のぞくとそこにはこちらをみつめる二つの目が見えたのです。
大学の友達に話しても誰も信じてくれませんでした。
今でも時々,不気味な気配を感じることがあります。
その時は,近くの寮に住む友達の
家に泊めてもらうことも・・・。
稲川「今回の噺はここまで・・・。宿題もやってくださいね。」
第379話 レオンとかまきりゼミ
レオンさんは潜入捜査のため,中野木大学の
院生として大学に通っていました。
昆虫学を専攻する蟷螂(カマキリ)ゼミに在籍しています。
ここには同期の久遠さんや姫色(ひいろ)さんが
いますが,他にも何人かの学生が在籍しています。
この日は朝から夏の集中講義などもあり,構内は学生でにぎわっていました。
レオンさんは校舎1階の自販機でお茶と
適当に買ったジュースを持ってゼミに向かいました。
今日は夏季休業中に取り組んだ
研究の途中報告がある日だったのです。
「はぁ・・・。気が重いな・・・。」
カマキリ教授はレオンさんが潜入捜査で在籍していることを大学から聞いて
いましたが,特別扱いすることなく,他の学生と同じように扱っていました。
「なんでレポートの発表なんてしなくちゃいけないんだ・・・。
闇組織JFとの戦いもまだまだこれからって時に・・・。」
ぶつぶと文句を言いながら階段を上っていきました。
扉を開けて部屋に入ると,そこにはゼミ仲間の
ほかに少年昆虫団のみんながいました。
「えっ!?あれ?なんで!?
どうしてみんながこんなところにいるのさ。」
レオンさんは驚きを隠せませんでした。
「ちょっと近くまで寄ったんでついでに来ちゃった!」
「ごめんね,きっと忙しいのにおしかけちゃって。」
口ではそう言いながらもレオンさんに
会えてうれしそうなまさらちゃん。
「レオンさんが戻ってくるまで暇だったんでトランプしていました。」
だぬちゃんはイツキ君のカードを1枚取りました。

どうやらババ抜きをしているようです。
姫色(ひいろ)さんも一緒に参加していましたがすでに勝ち上がった様子でした。
姫色「まぁ,いいんじゃん。大勢いたほうが報告会も盛り上がるってー!」
レオンさんは突っ込む気にもなれませんでした。
「まぁいいや。ちょっとは気がまぎれるかもしれない・・・。」
レオンさんが小声でつぶやきました。
蟷螂「それでは,研究の中間報告をしてもらおう。
名前を呼ばれた学生は前に来るように。」
蟷螂(カマキリ)教授が自分の研究室から皆が
いる部屋に入ってくるなりそう伝えました。
報告を行う学生は順番に姫色さん,レオンさん,久遠さん,そして同じゼミに
在籍するもうひとりの女性と,見た目はすごく老けた男の学生でした。
姫色さんは前に出るとスライドを映し,そこに研究テーマと課題などを説明していきました。
昆虫が農業に与える影響について話しているようでしたが,内容は難しいものでした。
少年昆虫団の中ではリク君とイツキ君だけが
頷きながら理解して聞いていました。
残りのメンバーは途中からウトウトしていました。
次にレオンさんが発表することになりました。
「レオンさん,頑張ってー!」
先ほどまでウトウトしていたまさらちゃんが声を上げると,トシ君が
「ちょっと,静かにしてよ!眠れないじゃない!」
と意味不明な文句を言ってきました。
レオンさんの研究は愛知県・岐阜県に生息する
カブクワの種類や生態についてまとめたものでした。
昆虫団のみんなと採集に行った時の記録も
研究の役に立っていたみたいです。
続いては久遠(くおん)さんの報告です。
久遠「あたしはねー!昆虫がだーいすきなのっ!!
だからー,えーっと,研究はっ!!!」
すでにメチャクチャなテンションでみんなの前に立っていました。
「やばいっすね・・・。あの人のテンションが気になって,
何を伝えようとしているのかまったく入ってこない・・・。」
しかし,次の瞬間,久遠さんの目つきが変わると何かに
とりつかれたようにきりっとした態度で報告を始めました。
久遠「現在の地球の人口増加と食料自給率における・・・・,であるから・・・,昆虫が
人類に与える影響というのは決して少なくなく・・・また・・・・であると考えます。」
「えっ!?ちょっ,はっ!?何がどうなっているんですか!?」
だぬちゃんは驚きを隠せませんでした。
「なんだ,あの人・・・。」
「彼女は普段はあんなんだが,自分の好きなことになると異常な
集中力と意欲を発揮して,人が変わったようになるみたいなんだ・・・。」
それは今まで見たことない久遠さんの姿でした。
彼女の昆虫食が人類を救うというテーマは中間報告ながら
素晴らしい出来で教授からもお褒めの言葉をもらったほどでした。
「でもさ,この前レポートができてなくて
レオンさんに泣きついていなかったっけ??」
「だから,ふだんはあんな感じなんだよ・・・。バイト疲れで
寝てばかりいたら提出期限に間に合わなかったらしい・・・。」
久遠さんの意外な一面を知りました。
ちなみに残りの二人の報告も無難に終えました。
彼らの紹介はまたいずれどこかで・・・。
第380話 それぞれの夏休み最後の日
今日は8月31日です。
とうとう長かった夏休みも終わり,
2学期が始まろうとしていました。
少年昆虫団はそれぞれどんな
一日を過ごしているのでしょうか。
まさらちゃんの場合・・・。
「今年の夏はなかなかショッピングに行けなかった
から商店街でたくさんお買いものするんだ!」
まさらちゃんはリク君の妹のカイリちゃんと
一緒にお買い物を楽しんでいました。
だぬちゃんとトシ君の場合・・・。
二人はトシ君の家で遊んでいました。
時間はお昼すぎでとても暑い日です。
「こんだけ暑いともう外に出たくないですよねぇ・・・。」
「でもこの後,また昆虫採集でしょ・・・。」
トシ君は自分の部屋のベッドでくつろぎながらそう言いました。
「リク君,夏休み最終日まで
昆虫採集するとはさすがですよねぇ・・・。」
「オイラはもう充分だよ・・・。」
彼らは長かった夏休みをほぼ毎日,
昆虫採集に費やしていました。
「毎日昆虫採集ばかりだったから,夏休みの
宿題がまーったく終わっていないんだよね!」
「ああ,それなら心配いらないですよ,
だぬも終わってないですから。」
二人は傷をなめ合っているだけで,「じゃあ,これ
から宿題を終わらせよっか。」とはなりませんでした。
リク君とイツキ君の場合・・・。
「宿題終わってない・・・!!やべぇやべぇよっ!!」
どうやらだぬちゃんたちと同じくまったく
宿題が終わっていなくてあせっているようです。
「ああ,どうしようっ!やべぇよっ!!」
「やばい,やばい言いながらお前は何をしている・・・。」
イツキ君が呆れていました。
「え?」
リク君が振り向くと,
「だから,その手に持っている物はなんだ・・・。」
二人のいる場所は,六町公園の噴水広場・・・。
リク君が手に持っている物は捕虫網・・・。
「いや~・・・。夜みんなで昆虫採集するまで
時間があるじゃない!暇だからこうして昆虫採集を・・・。」
「昆虫採集しながら宿題が終わっていない
心配してもどうしようもないだろ・・・。」
イツキ君は計画的に取り組んでいたので
すでに夏休みの宿題は終わっていたようです。
「まぁ,学校に行くまであと20時間
くらいあるし,なんとかなるでしょ!」
「いや,無理だろ・・・。栗林センセーに叱られるな。」
その後,昆虫採集を終えてから必死で宿題に
取り組みましたが,全く終わる気配はありません。
「どうしよ,どうしよ,どうしよー!!!わーっ!!!!」

・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
がばっ!!
「はぁはぁはぁはぁ・・・。」
リク君が目を覚まし,体を起こしました。
「夢・・・か・・・。」
カレンダーを見ると7月25日とありました。
まだ夏休みは始まったばかりでした。
「だよな・・・。あせった・・・。夢で良かった・・・。」
こんな夢を見ないためにも夏休みの
宿題は早めに終わらせるに限りますね。