リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第97話~第100話

2015/9/3

第97話 稲川淳姫の怪談2
出校日の学年集会のことです。



稲川先生は北海道に旅行に行っていたため,

事前に録画した自らの怪談噺を流すように指示してありました。



この時の栗林先生は影(シャドー)の変装でしたが,

まだ正体を明かしてはいませんでした。



栗林「それでは,稲川先生からのビデオメッセージです。

よく聞きましょう。」



「ビデオメッセージって・・・。どうせ怪談噺だろ・・・。」



画面に稲川先生が映し出されました。







稲川「みなさん,こんにちは。今日はとっておきのお話をしましょう。」



「やっぱり・・・。」

「またですか・・・。」



ある若い男Aさんが古いアパートに引っ越してきました。

彼は値段さえ安ければ古くても気になりませんでした。



引っ越し作業を終えたとき,すっかり夜になっていました。

疲れてしまったAさんはそのまま眠りにつきました。







どれくらい時間が経ったでしょうか。

ふと目が覚めると隣の部屋から若い男女の話声が聞こえます。



とても楽しそうに談笑しています。

「そういえば,お隣さんにあいさつするのを忘れていたな。明日にでも行くかな。」

そんなことを思いながらウトウトし始めました。



すると,突然,若い男女が何か言い合いを始めました。

どうやらたわいもないことでケンカになったようです。



「うるさいなぁ・・・。寝かせてくれよ。」

Aさんはふとんに潜って眠ろうとしました。



男女のけんかの声はだんだんとエスカレートしていきました。

そしてついに・・・。



女の声が聞こえなくなりました。

Aさんは何事かと思って壁に耳をあてて,様子をうかがってみました。



男が何かつぶやいています。

「やべぇ・・・。やっちまった・・・。」



Aさんは何やら嫌な予感がしましたが,再び布団にもぐりました。



しばらくすると隣の部屋からこんな音が聞こえてきました。



ギーコ・・・。



ギーコ・・・。



まるでのこぎりで何かを切断するような音です。



「ちょっと,この話,やばいやつじゃ・・・。」



すでに学年の子供たちは震えていました。



さらに稲川先生のお話は続きます。



Aさんは耳をふさぎ,聞かないようにしました。



音が止んでほっとしていると,

今度は何かを洗い流すような音が聞こえてきました。



ピシャピシャピシャ・・・。

ジャバジャバ・・・。



ジャー・・・。



そしてまた,



ギーコ・・・。



ギーコ・・・。



この繰り返しが明け方まで続きました。



「昨日の嫌な音はなんだったんだろう・・・。」



朝,Aさんは隣の部屋の前に行き,扉をノックしました。

しかし返事はありません・・・。



そこで大家さんを呼んで事情を説明しました。



すると・・・。



大家「音が聞こえた?そんなはずはないよぉ。」



「いやいや,本当なんですって!

何かを切るような音とそれを洗い流すような音が・・・。」



大家「絶対にそんなはずはない。だって・・・。」



大家さんは持っていた管理用のカギで隣の部屋の扉をあけました。



大家「この部屋は空き部屋だよ。誰も住んでないんだから・・・。」



「そんなばかな・・・。昨日確かに聞こえたのに・・・。」



大家「実は,1年前にこの部屋でバラバラ殺人事件があってね。

殺されたのは恋人の女。そのあと,ここに住んでた犯人の男は逃げたんだけど,

逃げている途中で交通事故にあったみたいでね。

両方死んでしまって,それ以来この部屋は誰も住んでいないんだよ。」



Aさんは背筋が凍りつきました。

昨日,自分が聞いた音は昔ここで起きた殺人事件のやりとりだったのです。



その後Aさんはすぐにそのアパートを引っ越したそうです。



稲川「おしま~い。」



「きゃぁ!この話怖すぎでしょ!むちゃくちゃ怖いよ!」



クラスメイトの出川君もビビッていました。



出川「やばいよ,やばいよ!この話リアルガチだよ!」



みんなはものすごく怖がっていました。

「(よくもまぁ毎回,毎回,くだらない話を考えるもんだ・・・。)」



最後に稲川先生からのメッセージが流れてきました。



稲川「みんな,今夜は早く寝て疲れをとってくださいね!」



「こんな怖い話聞いて寝れるか!」



第98話 少年昆虫団の活動場所!
今回は少年昆虫団がどんな場所で採集活動を行っているのかを紹介しましょう。

※場所は今までに登場した場所のみを掲載しています。



まずは地元の公園からです。



六町公園 地元の小さな公園 サッカーなどはできる カブクワはほとんどいない 

三町公園 変なヤンキーがいることがある カブクワは採れない

中野木公園 学校の近くにある小さな公園 図書館の近くでもある





次に少し大きな公園になります。



旭森林公園  尾張旭にある公園 広いので採集が大変 

和平公園 お墓がある霊園でもある ポイントを絞らないと採れない

西緑地公園 地元の大きな公園 略して緑地公園ともいう 

クワはほとんどいないがカブがたくさんいる

大幡緑地 旭公園へ行く道にある緑地公園 そこそこ大きい カブがとれる



神社でもカブクワは採集ができます。



二宮神社 一宮にある小さな神社 当たり外れが大きいが採れるときは結構とれる

黒髭神社 愛知県と岐阜県の境にある神社。規模は小さいがノコやコクワも採れる貴重な場所



山や雑木林は探索が大変ですが充実感もあります。





犬山雑木林 犬山城のふもとの林 色々な木が合ってポイントがわかりやすい

大牧山雑木林 大牧城のふもとの林 たまにジャイがヴィートの特訓をしている ミヤマが採れる

中牧山 大牧城から少し離れたところにある小さな山 近くでお祭りもやっていることがある コクワがいる

各務原山 岐阜県にある山 カブクワがたくさんいる ここで組織の一員と接触をした

猫山 結構危険な生き物がたくさんいる 山が奥深い

岐阜県のある町 深い森 ミヤマが採れる

小山川 蛍がみられる川 大牧城の近くを流れている



最後に地元のお店などです。色々なお店があるのです。



大関ラーメン よくリクたちが行く店 リク君はここのラーメンで腹を壊しやすい

沙悟浄寿司 偽装魚だらけの寿司屋さん

長山スパーランド この地域では大きなテーマパーク ナイト営業もしている

ペットショップ キング 伊藤店長とまりんでカブクワを販売している

裏の古いアパート レオンが引っ越してきて住んでいる キングの裏にある

中野木図書館 いつきの叔父である乃木館長がいる

中野木小学校 みんなが通う小学校 



これからも様々な場所が登場すると思います。お楽しみに。



第99話 ワクのわくわく冒険記 前編
「え?ワクとカイリがいなくなった?」



リク君は知らせを受けて家に帰りました。

昆虫採集の帰りだったので夜もかなり遅い時間です。



ワクとカイリはリク君の弟と妹です。

ワク君はリク君の1つ下で小学1年生,

カイリちゃんはリク君の3つ下で幼稚園の年中さんです。



その二人が急に自宅から姿を消したようです。



少年昆虫団のみんなはリク君の家に来ました。レオンさんも一緒です。





「ありがとう。みんな・・・。」

「ううん,いいの。それより二人がいなくなったってどういうこと?」

「すぐに警察呼んだほうがいいですね。」



みんなも焦っているようです。



「でもいなくなってまだ1時間しかたって

いないらしいからね。どうせ警察は動いてくれない。」


「だろうな。」

「なんとかボクたちで見つけたい!」

「何でも言ってね。できる限りの協力はするよ。」



みんなはカイリちゃんの部屋に入りました。



何か手がかりがあるのでしょうか・・・。



「おい,こんなところにメモが貼ってあるぞ。」

「なんて書いてあるの?」



そのメモにはこのように書かれていました。



-助けて!緑地公園-



「助けを求めているメモですね!

ひょっとして誘拐とかですかね!?」


「・・・。」

「とにかくは緑地公園に行こう!」

「そうだな。」

「ワクは冒険好きでさ,緑地公園にはよく行っている。

だからそこにいけば何かわかるはずだ。」


「ふむ。」

「オイラも探すよ~!」



すぐにみんなで緑地公園へ向かいました。



するとそこには二人の自転車が置いてありました。



「間違いない,この公園に二人がいる。」



リク君が自転車のかごの中を見ると,またメモが置いてありました。



「なんて書いてあるの?」

「なんですかね?これは・・・?」



メモにはこのように書かれていました。



-ガフド・コヂゾー・0P <ミラー>-



「暗号?みたいだな。」

「なんかまったく意味不明ですね・・・。」

「一体どういうつもりなんだ・・・。」



昆虫団の後ろでレオンさんが笑みを浮かべています。



彼はすでにこの暗号を解いたようです。



第100話 ワクのわくわく冒険記 後編
自宅から消えたワクとカイリ。

緑地公園の入り口には二人の自転車がありました。



その自転車のかごの中にはメモが残されていました。

-ガフド・コヂゾー・0P <ミラー>-



メモに残された暗号。この暗号が意味する事とは・・・。



「よし・・・。奥に行こう。」

「え?暗号は解けたんですか?」



リク君はすでに駆け出していました。



「ま,考えるのは後ってことか・・・?」



緑地公園はなかなか広い公園です。



小学生が迷ってしまったらなかなか出ることは難しいでしょう。



リク君は樹液のにおいがするクヌギの木まで来ました。



「あれ?ここって・・・。」

「カイリー!ワクー!

ここにいるのはわかっているんだ。出てこい~!」




すると木の裏から二人が出てきました。





ワク「あちゃ~。見つかっちゃった。」

カイリ「ほら~。やっぱりリク兄には暗号が簡単すぎたんだよ。」



二人がリク君の兄弟です。



「えっと・・・。これはどういうことですか?

誘拐されたんじゃ・・・。」


「そうだ。あんなメモまで残して一体なんのつもりなんだ!

父さんや母さんも心配してるぞ!」




カイリ「だって,今日は特別な日でしょ。

だからワク兄がリク兄を驚かせてあげようって言うから。」



ワク「まぁ,そういうこと。」



「特別な日?」



カイリ「今日はリク兄が一人で初めてカブト虫を

採集できた日なんでしょ。お母さんがそう言ってたよ。」



「あ・・・。」



ワク「なはははは。」



「なるほど,それでリク君が急いで緑地公園に来るような

メモを部屋に残し,公園の前にさらにメモを置き,ここまで誘導したんだね。」




カイリ「はい,二人からのプレゼント!」



そこには飼育ケースに入れられた,カブト虫のペアがいました。



ワク「この0ポイントクヌギで採集したんだよ。」



「ワク,カイリ・・・。」



どうやらリク君は二人の気持ちがとてもうれしいようです。



「ありがとう・・・。」



「えっと,オイラはあの暗号・・・。いや・・・。なんでもない!」

「はは~ん。トシ君,暗号が解けてないんですね。

大丈夫ですよ,だぬも解けていないですから。」




どうやらあの暗号は 二人には難しすぎたようです。



「あれはね,最後に<ミラー>

つまり“鏡”と書いてあるでしょ。

つまり逆!だから濁点がついている字は

濁点を外して濁点がない字に濁点をつけるんだ。」




ガフド・コヂゾー・0P <ミラー>が

カブト・ゴチソー・0Pとなるようです。



「こじつけっぽいですが・・・。

カブトゴチソー・・・。

なるほどカブトムシのごちそうは

樹液の出るクヌギの木ってことですね。」




「その後の0Pっていうのは?」



「実はボクが生まれて最初に採集したクヌギの木を

“0ポイントクヌギ”って名づけていたんだ。

Pはポイントの略でこのことを知っているのは兄弟の二人だけ。

だからここってわかったんだ。」


「なるほど~。」



その後,二人を連れて無事,自宅に帰り,

今回のワクとカイリの失踪さわぎは解決しました。



後に起こるあの『極めて重大な失踪事件』に比べれば,



今回の事件は本当にささいな出来事だったのです。





第101話~第104話

2015/10/8

第101話 影(シャドー)のその後 前編

ノアシリーズ ~第2.5章~
各務原山で正体を見破られた“影(シャドー)”は,

その足で組織のボスである御前の所へ行きました。



その帰りに,ユニットリーダーである今村に呼び出されました。



ここは眠らない街,栄の一角。



組織の幹部以上が入ることが許されるVIPバーがあります。



そのバーの名前は―



―リ・セ・ッシュ―



影(シャドー)が中に入ると,今村がカウンターに座っていました。



今村「ふぉっふぉっ。会うのはこれが初めてですね。」



影「ええ,初めまして。」

今村「お疲れ。影(シャドー)君。まずは一杯どうですか。」

影「いえいえ。それよりもご用件をお聞きしたいのですが?」



今村は用件を切り出しました。



今村「例の少年たちの追跡はどうですか?」



今村は任務の進行状況を確認したかったようです。



影「ええ,順調ですよ。」



彼は平然と嘘をつきました。



今村「そうですか。私はあなたが彼らの追跡に失敗し,

少年たちに正体を暴かれたものだと思っていましたよ。

そしてそれをなぜか御前に直接報告しに行った。違いますか?」



影はあわてる様子もなく切り返します。



影「何のことでしょう?任務は極めて順調です。」



今村は話を続けます。



今村「そうですか。それでは現在わかっていることを報告してください。」

影「それが,まだ何も収穫がないんですよ。」



これは半分当たっていました。



彼は少年昆虫団の居場所は突き止めていたが,

肝心のノアの書は手に入れることができていなかったからです。



今村「困りましたねぇ。居場所さえわかれば・・・。」



どうやら影は少年昆虫団の居場所を

今村に報告するつもりがないようです。



今村「わかっているとは思いますが,我々の任務は・・・。」

影「"漆黒の金剛石"の探索,ですよね。それは承知していますよ。」

今村「ふぉっふぉっ。」

影「(組織内にある6つのユニットのうち,

半分の3ユニットをその探索に割り当てている。

いかに組織が漆黒の金剛石を使った

"あの研究"に力を入れているかがわかる・・・。)」



闇組織ジャファには6つのユニットがあるようです。



それは山犬,海猫,川蝉,そして以前,石井軍医が

名をあげていた,森熊,藪蛇もそのユニットのようです。 (第69話参照)

今村「まぁ,私は君のことを信頼しているんですけどね。

彼が言うことをきかないんですよ。」

影「彼というのはまさか・・・。」

今村「ええ,大西君のことです。」



大西とは影と同じく牟田と山下の代わりに

入った今村の部下のようです。(第29話参照)







第102話 影(シャドー)のその後 後編

ノアシリーズ ~第2.5章~
影「彼というのはまさか・・・。」

今村「ええ,大西君のことです。」



大西とは影と同じく牟田と山下の

代わりに入った今村の部下のようです。
(第29話参照)



影「やはり,グレイですか。」

今村「大西君は“沼蛭(ぬまびる)”では

そう呼ばれていたのですか。

彼とは確か,昔からの知り合いでしたよね?」



影「ええ,“沼蛭”にいたころからの同期ですよ。」



沼蛭というのが6つ目のユニットのようです。



影「本人がそう呼んで欲しいそうで。“グレイ”と・・・。」



今村「ふぉふぉっ。そうですか,彼は“グレイ”ですか。」

影「何か気になることでも?」

今村「いえいえ,なんでもありません。」



二人の会話が続きます。影は高級ブランデーを飲みながら。



今村「沼蛭は“彼”が死んでから,

リーダー不在の期間が3か月ほどありましたね~。

残った貴方と大西君が可哀そうだったので

御前にお願いして私の部下に組み込ませていただいたのです。」



沼蛭というユニットのリーダーは

何らかの理由ですでに死亡しているようです。



影「ええ,それについては感謝していますよ。」

今村「ふぉっふぉっ。」

影「そのグレイがしびれを切らしたわけですか。」





今村「ええ,例の少年昆虫団は自分が探し出すといっていました。」

影「余計なことを・・・。今村さん,任務は私が必ず達成しますのでご安心を。」

今村「期待していますよ。・・・。おや?」



今村は影の首の後ろ側の襟に

何かついているのを見つけたようです。



今村「これはなんでしょう?」

影「何!?」



それは盗聴器でした。



影「(いつの間に!?まさか各務原山で

煙幕を張って逃げた時につけられたのか・・・。)」



今村「盗聴器ですね~,これは。」



影はその小型盗聴器を握りつぶしました。



影「安心してください。おそらくグレイが

我々の会話を聴くために取り付けたものでしょう。」



今村「そうですか,しかし一応,念には念を入れておきましょう。」



今村はどこかに電話をかけ始めました。



影「それでは私はこれで失礼します。」



影は消え去るようにその場から去りました。



一方,レオンと少年昆虫団は

この会話をバーの近くに止めた車の中で聴いていました。



「盗聴器は壊されちゃったけど色々と収穫ありだね。」

「大西,“グレイ”と呼ばれる人物が動き出すのか・・・。」

「その前に影(シャドー)がもう一度何か企んでくるかもしれないな。」

「でも御前との会話は盗聴できなかったですね。雑音ばかりでしたよね。」

「仕方ないさ。電波が拾えない場所で会話していた可能性もあるからね。」



まさらちゃんも影と今村との会話の内容をしっかりと聴いていたようです。



「大西っていうのが本名でグレイがあだ名なんだね。」

「う~ん,正確には違うんだな。」

「え?どういうこと?」

「これは組織に潜入している協力者から

得た情報だから確かなんだけどね・・・。」


「もったいぶらずに早く話せよ。」



イツキ君はレオンに対しても厳しいようです。



「奴らが名乗っている苗字はすべてコードネームなんだよ。

組織では“通り名”と呼ばれている。」


「え!?そうなんだ!さっき影と話していた“今村”っていうのも!?」

「そう,すべてそうだよ。そして幹部以上の人間が御前から“通り名”を与えられることになっているらしい。

だから例えば山犬の山本は“山本”っていう通り名なんだ。本名じゃない。」




今回の盗聴で闇組織ジャファの正体が

少しずつ明らかになったようです。



ちなみに翌日,彼らがそのバーに

行ってみるとすでに閉店していました。



どうやら今村が手を回し,

バーを他の場所に移転させたようです。



これでジャファへの手がかりは

再び無くなってしまいました・・・。



第103話 熱血神主登場!

ノアシリーズ ~第2.5章~
今日の採集場所は二宮神社です。



ここはサイズの大きいカブトやノコギリ,コクワが



採集できる時もあれば,全く何も採集できな日も



あるという当たり外れの大きい場所です。



いつものように少年昆虫団が採集をしていると

後ろから声をかけられました。



みんなが振り返ると灰色の袴をはいた神主がいました。



神主「こんな時間にこんなところで何をやっているんだい?」





彼は神主らしからぬ容貌の持ち主でした。



「だ,誰!?(この人,なんで

灰色の袴なんて着ているんだ・・・。)」




少年昆虫団は警戒して

リク君とイツキ君の後ろに隠れました。



「あんたこそ,こんな時間に何をしているんだ」



赤神「俺は,この二宮神社の神主だよ。赤神竜太という。」



「前,来たときはこんな人いなかったですよね。

今日はいるんですね,神主さん。」


「ボクたちはここで昆虫採集を

しているんです。怪しいものじゃないよ。」




赤神「はははは。別に怪しいと思って声を

かけたんじゃないよ。心配して声をかけたんだ。」



「それなら,心配無用だな。」



赤神「じゃあ,せっかくだからこの二宮神社の

カブクワ穴場スポットを紹介しようか。」



この赤神という男はカブクワにも興味があるようです。



「本当によく捕れるんですか?」



赤神「捕れるさ!まず必ず採集をするぞ!

という気持ちが大事なんだ!とにかく気持ちだ!気持ち!」



「なんかこの人,暑苦しいぞ・・・。」



そして穴場スポットに向かいました。

しかしカブクワはいません・・・。



「いないね・・・。」



すると赤神神主はその木をよじ登っていきました。



「何をやっているんですか?」



赤神「木を揺らすんだよ。上から揺らしたほうが

たくさんカブクワが落ちてくるに違いない!」



「そんなやばいことよくできるなぁ・・・。」



赤神「とにかく根性だ,根性!根性が

あればカブクワは採集できるんだ!!」



「熱血過ぎてうざいな・・・。

それにいまどき根性論って・・・。」




結局,赤神神主のおかげでカブトムシが少し採集できたようです。



「じゃ,帰ろうか。」

「赤神さん,ありがとうございました。さようなら。」



赤神「おう!またな!いつでもおいでよ~!

熱い気持ちがあればいつでも昆虫採集はできるよ~!」



少年昆虫団がその場からいなくなった直後,

赤神神主の携帯電話に着信が入りました。



赤神「おう。そうか―。・・・。

ああ,今,さっき会ったよ―・・・。」



彼は電話で誰かと会話を始めました。



一方リク君たちは帰り道で歩きながら何やら話をしています。



「さっきの人,なーんか怪しいなぁ・・・。」

「そうね。ちょっと熱苦しいもんね。」

「いや、そうじゃなくて袴の色がね・・・。」

「?」

「まぁ、いいや。今はあまり気にしないでおこう。」



こうしてリク君たちはおうちに帰りました。



第104話 新人バイトが来る!

ノアシリーズ ~第2.5章~
少年昆虫団のみんなはカブクワキングに来ていました。

今日は珍しく,たくさんのお客でにぎわっていました。



店長「やぁ,この前はなんか大変そうだったけど大丈夫だったのかい?」



「あ,うん。心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。」



リク君は適当にごまかしました。



「へぇ,ここがみんながよくいくペットショップか~。

なかなか品ぞろえがいいね。」




レオンさんも誘われて一緒に来ていました。



「(俺はこいつのこと認めてないからな・・・。)」



店長「えっと,そちらさんは確か・・・。」



「キングの裏のアパートに住んでいるお兄さんで,この前,仲良くなったんだ。」





店長「へぇ・・・。そうなんだ。」



リク君たちが話をしていると奥の方から声が聞こえてきました。



「あれ?あそこにいる彼は新人バイトさんですか?」



「だれかいるんですか?」



まりん「そうそう,昨日から新しくバイトが入ったのよ!」



よく見るとたくさんのお客にまじって

新人バイトがせっせと働いていました。



「・・・。」

「へぇ~,この店にそんな余裕があったんですね。」



店長「まぁな。これからが一番忙しくなる時期だしな。」



そういうと店長は奥から新人を連れてきました。



店長「新人の灰庭(はいば)君だ。」





灰庭「灰庭健人(はいばけんと)です。

よろしくおねがいします。」



現れたのは整った顔立ちの礼儀正しい好青年でした。



「わぁ,イケメンさんだ。」

「いやいやいや,オイラの方がイケメンだろう。」

「話にならんですね。」



新人バイトの灰庭はリク君に声をかけました。



「あ,よろしく。」



それからレオンにも声をかけました。



「初めまして。」



レオンは手を出して握手を求めました。



灰庭「初めまして,よろしくお願いします。」



レオンを見て,にこやかに笑い握手を返しました。



そして彼は奥の持ち場に戻っていきました。



「ねぇ,レオンさんってここに来たのは初めてなんだよね?」

「ん?もちろんそうだよ?」



イツキ君はさっきの新人バイトが気になるようです。



「なんか変わったやつだな。」



まりん「でも仕事も早いし,助かるわ~。」



まさらちゃんは小声で店長に話しかけました。



「あんなイケメンさん雇ったら,

まりんさん取られちゃうんじゃないの??」




店長「ぎくっ・・・。実は俺としては

雇いたくなかったんだが,

まりんがどうしてもっていうから・・・。」



「はっきり断らないからですよ!」



伊藤店長はしゅんとしていました。

この後,彼らはいつものように昆虫採集に出かけましたとさ。



第105話~第108話

2015/11/11

第105話 移りゆく川の流れ

ノアシリーズ ~第2.5章~
リク君の家から少し自転車を

走らせたところに大きな川が流れていました。



たまにはみんなで魚釣りを楽しむようです。



「いや~たくさん釣りますよ!

このだぬの“太公望”が大暴れしますよ!」


「いやいや,オイラのこの

海釣り用ロッド“海坊主”が大活躍だよ。」


「坊主じゃダメだろ・・・。」



どうやら海釣り用の竿で釣るようです。



「魚はちょっと苦手かも・・・。」



生きた魚のぬめっとした感じが苦手のようです。

まさらちゃんはみんなが釣っているのを見ています。



みんなは草がたくさん生えている土手に並んで魚釣りをしていました。



その隣で一人の老人が釣りをしていました。



その老人は見た目は70代で髪の毛は明るい灰色に染めているようでした。



「う~ん,鯉が1匹釣れたくらいか・・・。」





老人「おやおや,魚は釣れないか?」



「え,うん・・・。さっき1匹釣ったんだけどね。」



急に話しかけられて少し戸惑っているようです。



だぬちゃんやトシ君は1匹も釣れず,

諦めてザリガニ釣りを始めています。



「そういう,じいさんは釣れているのか?」



老人「かっかっ。ワシはただこの川を眺めているだけ。釣りはオマケ。」



「変わっているね。」



老人「それでその釣った魚はどうするんだね?」



「逃がしてあげるよ。楽しませてくれて

ありがとうってお礼を言ってね。」




老人「ホウ。今どきの童(わっぱ)にしては立派な心がけだ。」



老人はそういってから再び,川に目をやりました。



老人「この川はどんどん汚くなってきている。

いずれ魚もいなくなるだろう。まるで―。」



「そうかな?結構きれいな川だと思うけど。」



老人の言葉を遮るようにリク君は言葉を返しました。



老人「童(わっぱ)にはそう見えるか。

川は自分の心を映し出す鏡。

お主はさぞかし純粋できれいな心の持ち主なんだな。」



「いや,そんな・・・。」



「そろそろ飽きてきたな・・・。」



イツキ君はすでに2匹釣っていたので満足していました。



「じゃあこの後は,いつものように昆虫採集に行こうか!」

「マジですか!?」

「レオンさんも誘って,久しぶりに遠出しよう!」



みんなは帰る支度をしました。



「じゃ,おじいさんさようなら!」



まさらちゃんはあいさつをしてその場を去りました。



その直後のことです。



堤防の土手に一台の黒い高級車が止まりました。



中から二人の体格の良い男性が降りてきました。



男1「カンジさん,そろそろお時間ですが・・・。」



老人は“カンジ”と呼ばれているようでした。



カンジ「もうこんな時間か。年を取ると時間がたつのが早い。」



男2「なにやら早急に協議すべき件があるようでして・・・。」



カンジ「さてさて,仕事に戻るか・・・。」



そう言って,車に乗り込みました。



移りゆく川の流れに身をゆだねる老人。



この老人とリク君はいずれまたどこかで会うことになるのでしょうか。



第106話 イツキの過去 前編
不良「ゲババババ・・・。」



イツキ君の強烈なフックが因縁を

つけてきた不良の顎に決まったようです。



「たいしたことねぇな。」



公園でなぜかリク君たちに絡んできた

中学生くらいの4人組の不良少年たちは

イツキ君一人で片づけてしまいました。



「オイラが実力を出すまでもなかったな!」



トシ君は何もしていません。



「(出番なし・・・。)」

「さすがだね~!」

「でもイツキ君ってどうしてそんなにケンカが強いんでしたっけ?」

「ん?話してなかったか?」



そういうと近くのベンチに腰掛け,過去を振り返り始めました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



今年の夏休みから遡ること1年くらい前のことだ・・・。



俺の両親はいわゆる教育熱心な親でな。

毎日,毎日,勉強,勉強だった。



小学校受験に失敗して,公立の中野木小学校へ

行くことになった時は,この世の終わりだと言わんばかりに嘆げいていた。



なにせ,今,俺たちが通っている小学校はあの“中野木小の三大悪童”を中心に



不良の巣窟みたいな小学校だろ?



世間でも“地域一の悪”として有名な小学校というわけだ。



とにかく俺はそんなことばかり気にする自分の親が嫌になってね。



いつしか塾をさぼってゲーセンにばかり出入りしていたよ。



俺は小学1年生にも関わらず

夜遅くまでゲーセンで遊んでばかりの日々だった。





当然のように悪い連中に絡まれたよ。

それも中学生,高校生くらいのな。



―ある夜,ゲーセンの中で―



不良1「おいおい,ここはガキの来るところじゃないぜ。」



「・・・。」



当時の俺は何も言い返せなかった。



当たり前だ。体の大きい高校生や中学生のグループが相手なんだから。



不良2「なんか,こいつの目,生意気っすね。」



不良3「だなー。」



相手は7,8人はいたな。

俺は不良グループにつかまれ,店の外に出された。



不良1「俺たちちょっと嫌なことがあって,

むしゃくしゃしているんだ。」



「・・・。(そんなこと俺が知るかよ。)」



不良2「なんだ,その目は。調子に乗りやがって!」



自分よりだいぶ年上の人間が小学1年生に

よってたかって暴行を加えるんだ。

今思えば本当にたいしたことない連中だった。



でもその時の俺はどうすることもできなかった。

心の中で力が欲しいと思った。こいつらを倒す力を・・・。



不良2「なっ,なんだ,てめぇ!」



・・・。



不良2「ごふっ!?」



俺は何が起きているかわからなかった。



俺を囲んでいた不良グループが次々に血を吐いて倒れていった。



???「大丈夫か,坊主。」



不良1「あんだ~!?てめぇはよぉ!?」



???「情けないな。小学生相手に憂さ晴らしか。クズだな。」



不良1「やっちまえ!」



後は,一瞬だった。残りのメンバーはその人にあっという間にやられた。



本当にあっという間だった。



「・・・。」



???「ケガは無いみてぇだな。」



「・・・。」



俺は自分の無力さと不甲斐無さが

嫌になってその場を去ろうとした。



???「待てよ,まぁちょっと付き合いなよ。」



その人はそういって歩き出した。



「さっきは助かったよ・・・。」



ようやく俺はお礼が言えた。よっぽど動揺していたんだろう。



城嶋「気にすんな。俺は城嶋,城嶋隆一。坊主は?」



「俺はイツキ。」





城嶋「そうか,よろしくな。」



これが城嶋さんとの出会いだった。



第107話 イツキの過去 中編
俺はゲーセンで不良グループに絡まれているところを

城嶋っていう人に助けられた。



城嶋「お前はなんであんなところにいたんだ?ガキのくるところじゃねぇぞ。」



城嶋さんは歩きながら俺に話しかけてきた。



俺はその時の境遇を全て話した。

城嶋さんは前を見つめながら真剣な眼差しで俺の話を聞いてくれた。



城嶋「そうか,坊主も色々と大変なんだな。」



「・・・。」



城嶋「なぁ,強くなりたいか?」



「え?」



城嶋「俺でよければお前を鍛えて強くすることはできるぞ。

まぁお前が望めば,の話だけどな。」



俺はその申し出に心から喜んだ。



「あ,お願い・・・します。

俺は力が欲しい。誰にも負けない力が!」






城嶋「よし,いい覚悟だ。さっそく明日から稽古をつけてやる。」



次の日から毎日のように城嶋さんからケンカの仕方を教えてもらった。



城嶋さんは空手や拳法のような武術というよりは,



オリジナルの格闘術のようなものだった。

いわゆるストリートファイターだった。



城嶋さんと稽古ができない日も週に何日かあった。

そういう日は一人で稽古に励んだ。



場所は問わなかった。



マンションの駐車場,公園,川原,路地裏,そして古い倉庫・・・。



そして半年ほどの月日がたち,俺は2年生に進級していた。



城嶋「もう,そろそろ実践で行けそうだな。」



「本当に?」



その直後,俺に実践を試す機会が訪れた。



相手は同じ中野木小学校の同級生だった。

俺が一人でゲーセンにいると向こうから絡んできた。



相手は3人いたが関係なかった。



俺の右フックがいきなり決まり,

よろめいたところを左ストレートで沈めた。



さらに二人もこっちに向かってきたのでボコボコにした。

その様子を城嶋さんは陰で見ていた。



城嶋「さすがだな。」



「見ていたんだ。見ていたなら助けてくれてもいいじゃない。」



城嶋「それじゃぁ,いつまでたっても強くなれない。

とにかく実践だ。実践は己を強くする。」



「なるほど・・・。」



俺は口には出さなかったが

城嶋さんのことを心から尊敬していた。



城嶋さんの強さに純粋に憧れた。

自分もいつかそうなりたいと思っていた。



「俺,もっともっと強くなるよ。」



城嶋「そうなってくれれば俺も教えて甲斐があるってもんだな。」





そういって城嶋さんは煙草を吸い始めた。

名前は聞かなかったがお気に入りの銘柄があるようだ。



それから俺は毎日のようにケンカに明け暮れた。



その手の連中がいそうな所に出入りしていれば相手に困ることはなかった。

学校の中でもケンカをしたが,レベルが低すぎた。



やはり相手は繁華街が一番だ。



「(俺は強くなった・・・。もう誰にも・・・負けない。)」



学校から帰るとき一人でそんなことを思っていた記憶がある。

ただ,そんな自信をへし折るような相手が現れたんだ。



それが・・・。



第108話 イツキの過去 後編
「(俺は強くなった・・・。もう誰にも負けない。)」



学校から帰るとき一人でそんなことを思っていた記憶がある。



ただ,そんな自信をへし折るような相手が現れたんだ。



帰り道,俺は急に後ろから声をかけられた。野太く汚い声だった。

振り返るとそこには20人ほどの暴走族がいた。





メンバーは10代から20代前半くらいだろうか。



どうもそのメンバーの一人が以前,俺にやられたらしい。



その報復にこんな大勢でやってきたのだ。



リクなら上空10m以上の高さから追撃の星(シューティングスター)

で瞬殺できるだろうが,当時の俺にはまだそんな力はなかった。



「なんだよ・・・!?」





族長「俺んとこのメンバーにお痛してくれたガキはキミかな?」



バイクの音がけたたましくなっていた。その音に住民が気付いた。



族「リーダー。ちょっとここは目立ちすぎるんでは?通学路ですし。」



族長「そうだな。よし,場所を変えるぞ。」



そして俺はそいつらに拉致された。

しばらくして人気のない広場で乱暴に降ろされた。



「ふざけやがって!俺に文句があるならそいつがかかってこいよ!」



族長「さぁて,どいつだったかなぁ。てめぇに恨みがあるのは。」



族長は不敵な笑みを浮かべています。

悔しかったが俺に勝てる道理はなかった。



大人を含めた20人を相手に戦うのは厳しい。



であれば,せめて暴走族のリーダーだけでも,と思った。



しかし,タイマンでもこの族長は強かった。



攻撃は全て読まれ,やすやすとかわされた。

そして強力な蹴りを腹にくらってしまった。



「ぐふ・・・。」



族長「なかなかやるようだが,しょせんはガキ。」



「ちくしょう・・・。」



族長「まだ,やる気かよ・・・。」



俺は最後の力を振り絞って,相手に向かっていった。

記憶があるのはそこまでだった。



俺が目を覚ますと,そこには城嶋さんがいた。



いつの間にか,広場には俺と城嶋さんの二人だけだった。



城嶋「ようやく,目を覚ましたか。」



「いてて・・・。俺・・・いったい・・・。」



城嶋「相打ちを狙っていったみたいだがちょっと相手が悪かったな。」



「どうしてここに?」



城嶋「たまたまさ。バイクに乗せられた小学生が

いたって騒ぎになっていたからな。

ひょっとしてイツキじゃねぇかって思って,その辺りを探してた。」



「そっか。ありがとう。また助けられたんだ。」



城嶋「いや,お前は自分の力であいつらを

追い払ったんだ。たいした奴だよ。」



城嶋さんはそういってくれたが,

おそらく気を失った俺の代わりに戦ってくれたんだと思った。



彼は相変わらず,お気に入りの煙草をむせるくらいに吸っていた。



「俺,もっと力を手に入れたい。

もっと強くなりたい。これからもずっと教えてよ!」






城嶋「悪いな。俺が教えられるのは今日が最後だ。」



「え?どうして?」



城嶋「ちょっとやらなくちゃならない仕事ができちまってな。

名古屋から離れないといけなくなった。」



「そうなんだ・・・。」



城嶋「心配すんな。またすぐに戻ってくる。

その時は今よりもっと強くなっていろよ。」



「ああ,約束するよ。」



その日を最後に城嶋さんと会うことはなくなった。



いつか城嶋さんに認めてもらうために

もっともっと強くなっていようと誓った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



―そして現在―



イツキ君は公園のベンチに座って語っていました。



「そんなことがあったんだね~。」

「知りませんでした。」

「またその人に会えるといいね。」

「・・・。」

「そうだな~。でも,まぁあまり

期待しすぎないようにしておくよ。」




みんなはイツキ君が強い理由を

知って納得したようでした。



第109話~第112話

2015/12/9

第109話 捕虫網の秘密
今日はリク君の家にだぬちゃんとトシ君が遊びに来ていました。



二人は部屋の片隅に置いてあった,

リク君がいつも使っている捕虫網に興味を示しました。



「この捕虫網ってお店で売っているんですか?」

「売ってないよー,これはオリジナル捕虫網だから。」

「ええ,そうなんですかー。」

「うん,軽いけどしなりもあって,さらにとても丈夫なんだ。」



いつの間にか捕虫網の話題になりました。



「でも,確か,最初にジャファの連中と戦った時に使った捕虫網は折れてましたよね?」

「あの時はあんなことになるなんて思っていなかったらこれを持っていかなかったんだ。

だから市販の捕虫網を使ったんだけど技に耐えられず折れた。」


「そうだったんですか。」



トシ君はただおやつを食べながらうなずいていました。





「あれ以来,昆虫採集のときはこのオリジナル捕虫網を常に持つようにしているよ。

いつ組織のメンバーと遭遇するかわからないからね。」




捕虫網はリク君が組織と戦うためには必要な武器にもなるのです。



「あそこに置いてある捕虫網は普通のなんですか?」



部屋の片隅にはもう1本おいてありました。



以前購入した「軽合金四折式グラスロッド引抜式4本継50cmナイロン網付」です。



「そうだよ。前の捕虫網があの戦いで折れちゃったから買いなおしたんだ。

でも結局,ほぼ使っていないけどね。」


「あれも改良すればいいじゃないー!」



トシ君が気の利いたアドバイスをしました。



「いや~,そもそもこれは改造できるタイプじゃないんだよね・・・。」

「そうなんだ・・・。」



だぬちゃんはふだんから疑問に思っていることを聞いてみました。



「この捕虫網ってどんな仕組みなんですか?」

「そういえば,細かく説明したことがなかったね。」



リク君はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに語り始めました。



「まず,右手に持つ捕虫網が天照(アマテラス)。

左手に持つ捕虫網が月読(ツクヨミ)。」




どうやら捕虫網には名前があるようです。

しかし性能は“ほぼ”同じみたいです。



「ここに小さなボタンがいくつかあるのでしょ。」



よく見ると網に近い側の部分にボタンがついていました。





ちなみにこのボタンがついている持ち手の部分は

絶縁物で保護されているようです。



「これを押すと振り出し竿のように伸びる。

最大で10m。もう一度押すと元に戻る。」


「すごいですね。見た目は細いのに・・・。」



1層ずつは非常に薄い金属ですが,

鋼並みの高度とアルミ並みのしなやかさを持つようです。



「他にも色々な機能があるんだよ。

電流を流したり,ロケットみたいに火を噴かせたり・・・。」




どうやら彼の持つ捕虫網にはまだまだ秘密があるようです。



「オイラもそれ欲しいな!」

「トシ君には使いこなせませんよ!」



第110話 暑すぎる一日
今日は日本中で猛暑日のようです。





熱中症には十分注意しなくてはいけない日でした。



「暑すぎですよ~。でも本当は今真冬な気がしてきましたよ。」

「だぬちゃんが壊れているよ・・・。今は超暑い真夏だよ~・・・。」



少年昆虫団のみんなはだぬちゃんの家に遊びに来ていました。



エアコンはついていますが,外が暑すぎてほとんど効果がないようです。



みんなは出してもらった冷たい

オレンジジュースをすぐに飲み干してしまいました。



「暑いね・・・。」

「この部屋,人口密度が高いんだよ!」



トシ君は自分が一番部屋の面積を

とっていることに気づいていないようです。



外の気温は38度近くあるようです。

クマゼミがけたたましく鳴いています



「これでも作りますか・・・。」



取り出したのは手回しかき氷器でした。



「よし,俺がまわしてやろう。氷を持ってこい。」

「いや,それが氷はさっきジュースに使ってないんですよ。」

「・・・。」

「氷がなけりゃかき氷はできねぇだろうが~!!」



暑さでイツキ君の怒りはヒートアップしています。



「じゃあさ,アイスクリームでも買ってきてたべようよ。」

「いいねぇ~!」



家主のだぬちゃん以外でじゃんけんをした結果,

リク君とトシ君で買いに行くことになりました。



「暑いよ~。外に出たくないよ~。」

「じゃんけんで負けちゃったんだから仕方ないよ・・・。」



近くのコンビニまで5分です。



二人が戻ってきました。



「アイスがないじゃねぇか!」





そこにはアイスが溶けてコーンだけになった物体が5つありました。



「おかしいな・・・。」

「あ~,イライラするな~!!」



イツキ君は暑さで頭がおかしくなりそうでした。



「こうなったら冷凍庫にある食材を片っ端から食べよう!」



リク君も何やら意味不明なことを言い始めました。



外はまさに灼熱地獄・・・。



「いやいや何言っているんですか・・・。」

「もうだめ・・・。おうちに帰る・・・。」



暑すぎるので今日は解散しました。



リク君は帰りにありったけのお金で

アイスとジュースを買って食べまくりました。



その夜・・・。



「おなか痛いよ~・・・。痛いよ~・・・。」



暑さに注意して正しい生活を送れるようにしましょう。



第111話 ゲーマーな人たち
これはトシ君が少年昆虫団に加わり,

夏休みに入った直後のお話です。



リク君は昆虫採集が好きですが,

だぬちゃんとトシ君はどちらかというとゲーム好きでした。



「トシ君ってかなりゲーマーですよね?」



リクくんとだぬちゃんはトシ君の家に遊びにきていました。



最新のゲーム機器やソフトが置いてあります。



「いやいや,オイラはそんなにゲームばかりやらねぇよ!」

「またそんな虚言を吐く・・・。どうみたって

ゲームをやりこんでいる部屋じゃないですか!」




トシ君は自分がゲームばかりやっていることを認めたくないようです。



リク君はゲームソフトを見ながらうなずいていました。



「・・・。」

「じゃあ週にどれくらいやっているんですか?」

「夏休み前は学校が終わったら寝るまでくらいだよ。

今はもう少し長くやっているかな。」




どうやら彼はかなりのゲーマーのようです。

そしてその自覚がないようです。



「ところで今,ハマっているゲームってありますか?」



トシ君はソフトをしまってある引き出しを探し始めました。



「これかな?」



取り出したのは格闘ゲームのようです。

タイトルはストリート・チルドレン・ファイト(略してストチイ)でした。



「このゲーム会社のソフトはシリーズで

持っているんだけど,これが一番おもしろいかな。」




“ストチイ”を作っている会社は“ギャプコン”という大手のゲーム会社でした。



「へぇ~。こんなのが好きなんですね。

だぬはやっぱり“レジェンドオブ中世”シリーズが好きですよ。

このゲームは発売と同じ日に攻略本も発売されるのがいいんですよね~。」




だぬちゃんが好きだという,このシリーズは好きな人は

ハマるけどつまらない人にはとことん酷評されるゲームのようです。



「もうすぐこのシリーズの新作が出るんですよね~。」



だぬちゃんはゲーム雑誌などを読みながら

このシリーズの発売日を楽しみに待っているようです。



「その会社ってRPGばかり作っているよね?」

「そんなことないですよ。確かに“アイボ・H”は

“ライジング・オブ・サン”などの超名作RPGなども生み出していますけど,

他にもシュミレーションゲームとかも出していますよ。」




“アイボ・H株式会社”とは主にRPGを制作している超一流のゲーム会社です。



また,“ライジング・オブ・サン”というゲームは

だぬちゃんの中では忘れられない有名なRPGのようです。



キャッチフレーズは“勇者はいない!みんな勇者!勇者!勇者!”





「いや~,でも“レジェンドオブ中世”シリーズはクソゲーだよ~。」

「だよな~。今回はもうやらないかな~。

ゲーム雑誌の情報も読んでないや。」




お互い好きなゲームが違うようです。



「いつき君は,アイボ・H のゲームでは

“ヨゾミヤ”とかいうシミュレーションRPGが好きみたいだよ。」


「ああ,あれは重厚なストーリとそれぞれのキャラクターが

葛藤しながら成長していく展開がたまらなくいいんですよ~。」


「そうかな~。ただの面倒くさくて,

くどいゲームにしか思えないんだけど・・・。」




意外にリク君もゲームのことに詳しいようです。



しかしこの三人が同時にしゃべりだすと,会話がかみ合いません・・・。

とにかくこの三人がゲーム好きだということは確かでした。



ゲームもほどほどにして元気に遊ぶことも大切ですね。



第112話 真夏のサンタクロース
これは子供たちの間でまことしやかにささやかれているお話



児童「ねぇねぇ,こんな話聞いたことある?」



児童2「何々・・・?」



児童「ある,暑い夏の夜にね,一人の子供が暗い夜道を歩いていたんだって。

すると突然後ろから声をかけられたからその子供は振り向いたの。」





児童2「ごくり・・・。」



児童「するとそこには・・・。」



児童2「ごくり・・・。」



児童「サンタクロースの格好をした人が立っていて・・・。」



児童2「・・・。」



児童「その子供を大きな袋に詰めてどこかへ行っちゃった・・・。」



児童2「ひぃぃ・・・。」



児童「まだ,続きがあって・・・。しばらくしてその子のお家に

プレゼントが届いたんだって。その中身は・・・。」



児童2「ぎゃぁぁ・・・。怖いよ~。もうやめて~。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「真夏のサンタクロース怖すぎだよ!」



少年昆虫団は昆虫採集に向けて町のはずれを歩いていました。

時間はすでに夜の10時を過ぎています。



トシ君はどこから聞いたのか,そんな噂にビビっているようでした。



「情けない!そんな非現実的なものいませんよ!」



「そうよ,サンタクロースってとても夢のあるお話なんだよ!

世界中の子供たちにプレゼントを配ってくれる存在なんだから。

まだ先だけど,早くクリスマス来ないかな~。」




まさらちゃんはサンタクロースを信じているのでしょうか。



「でもなんでそんな噂がはやっているんだろうな。」

「なんか,実際にうちの学校の子が見たことあるらしいよ~。」

「やっぱり,やべぇよ!」



リク君とイツキ君も“真夏のサンタクロース”に少し興味があるのでしょうか。



すると,一番後ろを歩いていたトシ君の肩を誰かが触りました。



「ぎゃやぁぁぁぁ。」



振り返るとそこには・・・。



「なっ。なんだ・・・。こいつは!」



サンタクロースの格好をした人物が立っていました。



「リク君,やっつけて!」



???「ちょっ,ちょっと待ってよ・・・!」



それはどこかで聞いたことのある声でした。



「伊藤店長?」



店長「そうだよ~。」



なんとサンタクロースの格好をした人物は

カブクワショップ“キング”の伊藤店長でした。



「そんな格好してなにやってんだ・・・。」



店長は事情を説明しました。



「店のPRイベントの一環~!?」



店長「そうだよ,夏にサンタクロースがいたっていいだろう。

この格好でキングの看板を持って歩けば良い

PRになるかなぁと思って,先日から始めたんだよ。」



「それ・・・まりんさんや灰庭さんに相談せずに始めたでしょ・・・。

絶対やめた方がいいよ。ただの変態にしか見えないよ・・・。」




店長「なにぃ!?」



「常識じゃないですか・・・。

サンタクロースはクリスマスに

やってくるから意味があるんですよ。」


「噂の原因はこの人だったか・・・。」



少年昆虫団にお説教をされ,

この日を境に“キング”のサンタはいなくなりましたとさ。



しかし,本物の“真夏のサンタクロース”は本当にどこかにいるのかもしれません・・・。











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