リクの少年昆虫記-過去のお話-

過去の掲載順へ

TOPページへ

目次


第65話~第68話

2015/1/19

第65話 イツキの解読②

ノアシリーズ ~第2章~
ここは長山ランドの中にあるレストラン。

そこに少年昆虫団はいました。



今まで謎だった“漆黒の金剛石”の正体が

イツキ君の口から語られようとしています。



「“漆黒の金剛石”の正体は…。」



みんな「ゴクリ…。」



「それは…カブトムシだ。」

「え?」

「カブトムシ??」

「それって表紙に描かれていたヘラクレスのこと?」

「いや,そうじゃない。国産のカブトムシさ。

表紙がヘラクレスなのかは謎のままだ。」


「どういうことなんですか?」

「このページのこの写真を見てほしい。」

「ん?これは…。」

「非常に見づらいんだが,カブトムシのメスだと思う。」



そこにはゲージに入れられたカブトムシの

メスらしき昆虫が隅っこに写っていました。





「確かにこれはカブトムシのメスに見えるね…。」

「この章のページは主に研究記録のようで,

ここに『この“検体”を使ってbox‐la2の実験を行う。』と書いてある。

ちなみにこの部分は研究記録になっていて手書きみたいなんだ。

だからところどころ読めない文章もある…。」


「じゃあ“漆黒の金剛石”ってただのカブトムシってこと…?」



「いや,そうじゃない。カブトムシはカブトムシでもただのカブトムシじゃない。」

「なんか難しいですね…。トシ君なんてさっきから話を聞かずに,食ってばかりですよ。」

「いや~。オレはちゃんと理解しているさ。あれだろ,オオクワだろ!?」



どうやら理解できていないようです。



「どうやら世の中には“特殊なDNA”をもったカブトムシが存在するらしい。」

「奴らはそのDNAをもったカブトムシを探しているのか。」

「ああ,奴らはその特殊なDNAのことを“神の遺伝子”と呼んでいるみたい。

ちなみにこの“神の遺伝子”をもったカブトムシが

自然界に存在する確率はかなり低いらしい。」










「そんな珍しい昆虫をどうやって見つけるつもりだったんだろう?」

「おそらく特殊な薬品を使うんだろうね。」

「その通り。その薬品についての研究も進められていたみたい。」

「リク君,なんでわかったの??」

「最初にあいつらに出会ったとき,カブトムシに薬品を注射して殺したでしょ。」

「あ,そういえば…。」

「でも,それじゃあ1匹ずつ探し出して注射してるの?」

「なんかそれは大変そうですね。」

「これは推測だが,“漆黒の金剛石”は地域一帯に

存在する亜種のようなものなんだと思う。」




「げろげろ~!言っていることが意味不明!」



トシ君は話が難しすぎて意味不明な言葉を発し始めました。



「なるほど。」

「リク君,どういうこと??」

「以前ミヤマクワガタを採りに行ったことがあったでしょ。」

「あ,うん。あったね!」

「実はミヤマクワガタのクワの形は

同じように見えて住んでいる地域によって微妙に違っているんだ。」




「ふんふん。」



「山の麓(ふもと)と山の反対側でも

形が違ってたりすることもあるんだ。

そういう形が微妙に違う個体を亜種と呼ぶ。」




「ふむふむ。」



「へ~。つまり,“漆黒の金剛石”って

いるところにはまとまっているってこと?」


「おそらくね。だから統計学を駆使して,

その地域で必要な数に薬物を注射し,

調査すれば,その地域に“漆黒の金剛石”が

存在するかどうかわかるってわけだ。」




「なんか小学2年生の会話とは思えないほど難しいこと言ってますね…。」



「はい!次の質問!」

「どうぞ。」

「“漆黒の金剛石”が“神の遺伝子”をもった

カブトムシだっていうことはなんとなくわかったけど,

その“神の遺伝子”ってそもそもなんなのかな??

それでその“JF”って組織は何を企んでいるの??」




「いい質問だね。それは…。」



「それは…!?」





この後,イツキ君が語る,ノアの書に書かれた真実とは…。



第66話 イツキの解読③

ノアシリーズ~第2章~
みんなは“漆黒の金剛石”が持つとされる“神の遺伝子”について気になるようです。

イツキ君の口から一体どんな事が語られるのでしょうか。



「神の遺伝子の正体…。それは…。」



「それは…。」

「それは…。」

「ゴクリ…。」



少し間をおいてイツキ君は口を開きました。



「それは,わからない!」

「あらら…。」

「まだまだ未解明の部分が多いんだ。

ようやく40%くらいってところだからね。

特に後半ところどころ出てくる,ラッド,コノリー…などの

人物名らしき言葉も意味不明だ。」


「あれ…?」

「う~ん。」

「それなら…。」



だぬちゃんの言葉をさえぎるようにイツキ君は話し始めました。



「ほかにも序章に出てくる神話らしき文章や

タイトルの“ノアズアーク”の意味も謎のまま。」


「わかってきたこともあるよね。

奴らの狙いはやはり“漆黒の金剛石”で

“ノアの書”は“漆黒の金剛石”の研究書ってこと。」


「でも,研究書があるのに

どうして“漆黒の金剛石”を探し続けているのかな?」




「わからないけど,おそらくなんらかの理由で

研究所の“漆黒の金剛石”が全滅しちゃったんだろうね。

そこでまた一から探す必要があった…と。」


「もうひとつ気になることがあるんだけど,

どうしてこんなものが図書館にあったのかな?」


「奴らがさっきバーで話していた内容から推測すると…。

小早川って人が持ち出して図書館に隠したんだろうね。

そしてそのあと組織につかまり,殺された。

ニュースでは事故か自殺と言っていたが,

組織が小早川って人を闇に葬った…。」


「その可能性が高いね。」



トシ君は食べ終わり暇になってきたようです。



「ねぇねぇ,アトラクション乗りに行かない?ブラックサイクロン!」



「仕方ない。一緒に行ってあげますか。」



二人はアトラクションを乗りに行ってしまったようです。



第67話 おそらくあの人

ノアシリーズ~第2章~
少年昆虫団はレストランで食事をとりながら,

ノアの書について議論を重ねていました。



しかし,途中でだぬちゃんとトシ君は

アトラクションに乗りに行ってしまいました。

しばらくするとだぬちゃんとトシ君が戻ってきました。



「あれ,あの二人戻るのがずいぶん早いね。」

「たたたたた…たたたた…。」

「げろげろげろげろげろげろげろげろげろげろげろ…。」



何やら二人は大慌てです。



「お前たち頭大丈夫か…?」

「何があったの??」

「たいたい…大変ですよ!」

「だから何が??」

「いたんだよ!!」

「いたんですよ!!」

「誰が?」

「影(シャドー)ですよ!!」



みんな「何!?」



「正確にはこの前会った大学院生です。」

「カゲレオン!?」

「そうそう!」

「なんで,ここに?」

「わからないですけど,順番まちしていたら

たまたま見かけたんです」


「そうそう!」



「だぬたちと目が合うとどこかへ

行ってしまいましたけど…。

あれは間違いなくカゲレオンって人ですよ!」


「そうそう!」

「きっと少年昆虫団のあとをずっとつけてきたんです!

あいつが影(シャドー)に間違いないです!」


「なんかそんな感じだね~。」



「…。」



「リクはどう思う?」

「まだなんとも言えないけど…。」

「実は影(シャドー)が誰かはもうわかっているんじゃないのか?」



リク君は少し考えてから口を開きました。



「うん。おそらくあの人だ…。」



リク君には気になっている人物がいるようです。



第68話 ノアの創り手 前編

ノアシリーズ~第2章~
だぬちゃんとトシ君は長山ランド内で

“カゲレオン”氏をみかけたようです。



「やっぱりあの大学院生が影(シャドー)ですよね!?

ものすごい形相でこっちを見ていたんですから!間違いないですよ!」」




「じゃあさ,明日,みんなで行ってみない!?」



「え?」



「カゲレオン氏の家にですか?」

「うん!あとほかにも怪しいって言っていた

カブクワキングの店長さんのお店と図書館の館長さんのところにも!」


「いや,だから館長は…。」

「う~ん…。確かに二人にも怪しいところがあったんですよね。」

「うん,伊藤店長はバイトのマリンさんに

急に優しくなったっていうのが怪しいよね。」




「乃木館長もだぬたちにやたらと親切にしてくれていましたよね。

監視カメラの画面を見せてくれたりとか…。」




「だからそれは…。」

「うん,怪しいよね!」



「怪しい!」



「じゃあ,明日行ってみましょう!

そうすれば誰が影かはっきりしますよ!

これ以上つけまわされるのは勘弁願いたいですからね!」


「3人とも昆虫に詳しいのも疑う要因だよね。」

「そうですよね。“漆黒の金剛石”が昆虫なら

それを探している人物は当然昆虫に詳しいはずですから。」




リク君はだぬちゃんとまさらちゃんの会話を

聞いた後で一言つぶやきました。



「まぁ,確かに…。決着をつける時かな。」

「そうだな。明日行ってみるとするか。」



明日,影の正体を明らかにすることができるのでしょうか。



「ねぇ,さっき聞きそびれたんだけどさ。」

「何?」

「小早川教授っていう人がこの“ノアの書”を書いたの?」

「いや,一番最後の著書のところに名前は

載っているけど,責任者は別の人間みたいだ。」


「そうなんだ。」

「ああ,確か名前は…。」



―ISHII―



ノアの書の著書にはそう書かれていました。





第69話~第72話

2015/2/16

第69話 ノアの創り手 後編

ノアシリーズ ~第2章~
時は少し遡(さかのぼ)り,

リク君が名駅地下街のバー,

“ヴァ・ス・マ・ジック・リン”で

会話を盗み聞きしていた頃…。

(第63話参照)



―愛知県某所 ジャファ生命工学研究所―



研究員「軍医!石井軍医!」



今から実験に向かおうとする人物が所長室にいました。

彼こそ,この研究の責任者でノアズアークをまとめたの張本人でした。



生命研究所の長を務める彼は,

研究員たちから“軍医”と呼ばれていました。





<ジャファ生命工学研究所 所長 石井軍医>



石井「ノックもなしに入ってくるとは懲罰は覚悟できているんだろうな?」



研究員「失礼しました!しかし緊急の案件だったもので…。」



石井「ノアズアーク(ノアの書)の件だな?」

研究員「はっ!」



石井「見つかったのか?」



研究員「いえ,それはまだのようです。」



石井「じゃあ緊急の案件とはなんぞや!?ワシは研究で忙しいんだよ。

ついこの間,手に入った生きた検体があってね。

早く人体実験をしたくてウズウズしているところなんだ。」




研究員「先日,樹海で自殺しようとしていた男ですね。」



石井「どうせ死ぬんだったら医学の発展に貢献して死んでいくほうがいいに決まっとるからね。」



研究員「緊急の案件とは,本部からの通達で,軍医の予想通り,

ノアズアークの探索は“山犬”と“海猫”が担当するらしいです!」



石井「やはりな…。ワシは“御前”にあれほど

『山本と東條には依頼しないでくれ』と懇願したんだがな…。」




研究員「はっ!」



石井「特に山本は好かん!若いくせに生意気で!

ひょっとしたらノアズアークが見つかっても

ワシの手元に返す気がないのかもしれん。」




研究員「はっ!」



石井軍医は今回の一件が山本率いる“山犬”が

任されていることに不満があるようです。



石井「まだ今村のほうがマシだ。あちらに期待しよう。」



研究員「しかし,今村様のユニットである“海猫”は現在,負傷者を抱えているとか。」



石井「ふんっ。それなら“森熊(もりぐま)”でも

“藪蛇(やぶへび)”でもいいさ。“山犬”に借りを作るのだけは嫌だ。」




研究員「しかし,御前の方針は絶対では…。」



石井「それくらいわかっておるよ!

御前のおかげでワシも好き勝手に

研究をやらせてもらっているんだからね。

法律に触れるような実験もね。ヒッヒッヒッ。」




研究員「…。」



石井「山本のやつが良からぬことを企らまぬよう釘をさしておいてやる。」



彼はデスクにあった電話を手に取りました。



プルプルプルプル…。



その時,山本は名駅の地下街で部下たちの

待つバーへ向かっていたところでした。







ピリピリピリ…。



彼の携帯電話が鳴りました。



山本「なんだ?何か用か?貴様から直接連絡をしてくるなんて珍しいな。

だが…あいにく俺はアンタと話すことなど何もない…。」



石井「ふんっ。こっちだって貴様と何ぞ話したくはないわ!

ただ一言、言っておきたくてね。」



山本「…。」



石井「ノアズアークを見つけたら必ずワシの所へ持ってこい!

変なことは考えるなよ!あれは組織にとって必要不可欠な神聖な書物なのだ。」



山本「そんなことアンタに言われなくてもわかっているさ。」



石井「いいな。必ず見つけるんだ!

依頼者(クライアント)からの依頼は絶対だ!」

山本「部下を待たせているんだ。用件はそれだけなら切るぞ。」




彼はそう言って電話を切りました。



山本「くたばりぞこないのジジイが。」



山本は少し遅れてバーに入っていきました。



この石井というノアの創り手が“漆黒の金剛石”の

研究について重大な鍵を握っているようです。



第70話 疑惑の人 前編

ノアシリーズ ~第2章~
長山ランドへ遊びに行った,次の日のことです。

いよいよ影の正体を暴きに行くようです。

まずは,中野木図書館へ行って乃木館長に会いに行きました。





「こんにちは~!」



館長「やぁ,みんな。元気そうだね。」



「あんたも相変わらずだな。」

「イツキ君,言葉遣いが悪いですよ!!」



館長「はは。」



「ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど…。」



館長「うん?いいよ。じゃあこちらへ。」



館長は別室に案内してくれました。

その別室とは普段あまり使われていない

ちょっと汚れた荷物置き場のような部屋でした。



館長「こんな部屋でごめんね。今,来客がいるみたいで応接室があいていないんだ。」

「なんかあまり使っていない感じの部屋だね。

しかも色々置いてあるし…。」


「その奥にある機械はなんですか?」





館長「ああ,これは製本用の機械だよ。

自費出版したい人とかちょっとした内部用の資料を作るときに使うんだ。」



「へぇ,そんなものまであるんですね。さすが図書館。」



館長「それより話ってなんだい?」



ようやく本題に入るようです。

まさらちゃんが話を切り出しました。



「実はあまり詳しいことは言えないんですけど,

私たちある組織に狙われているんです。」


「(おいおい,いきなり直球だな…。)」

館長「はっはぁ…。」



館長は少し戸惑っていました。



館長「ひょっとしてこの前見た監視カメラに映っていた人物のことかな?」

「おそらくそうです。」



「そして組織の人物が私たちの周辺に潜んでいるかもしれないんです。」



館長「なるほど。」

「変装とかして…!」



館長「!?」

「…。」

館長「まさか,僕を疑っているのかい?」

「そ,そういうわけじゃないですけど…!」

「疑わしきは怪しめってね。」



「そんな格言ないよ。」

「では,私たちに親切に監視カメラの映像を見せてくれたのはなぜですか?」



館長「…。」

「それに館長さんって昆虫にも詳しいですよね。

組織には昆虫に詳しい人物がいる可能性があるんです。」




館長「親切にしたのは…。」

「したのは…。」



「ゴクリ!」



「それはオレがこいつの甥だからだろ。」

館長「うん,まぁ,そう。」

「え!?」

「今,なんて??」



館長「僕はイツキ君の叔父なんだ。」

「ええええ!?館長さんがいつき君のオジサン!?」



なんと中野木図書館の乃木館長は

イツキ君の叔父さんだったようです。



館長「親戚だからついつい。あの時のイツキ君,かなり目が真剣だったからさ。」



「そうだったんですか!?」

「だからイツキ君って館長さんと話すとき,いつも口が悪かったんだ。」



「昔からそうなんだから仕方ないだろ。」

「まぁ,そういうこと。」



「リク君はひょっとして館長さんがイツキ君の叔父さんだって知ってたの?」

「ん?ああ,まぁね。」



「なんで知っていたんですか??」

「昔,最初に館長さんに会った時に気になった

ことがあったからイツキ君に聞いたんだ。」




「何が気になったんですか?やはり言葉づかいですか?」

「それもあるけど,一番気になったのは“富士額”さ。」



「なにそれ?」



<富士額>

「髪の毛の生え際の形さ。イツキ君も富士額でしょ。それでよくみたら館長さんも富士額。

さらに顔を見比べてみたらなんとなく似てるなぁって思って。ひょっとしたら身内なのかなって推理したんだ。」


「言っていることが小学生離れしすぎて意味がわからないですね。」

「まぁ,それはともかく聞いてみたらそうだったって話さ。」



「確かに二人,似ているかも…。」



   

「じゃあ,館長さんは影(シャドー)じゃないってことか~。」

「やはり怪しいのはあの大学院生ですよ!」



館長「何かよくわからないけど誤解が解けてよかったよ。」

「じゃあ,次は”カブクワキング”の店長に会いに行ってみるか。」

「そうね。そうしよう!」



こうして少年昆虫団は図書館を後にしました。



館長「何か困ったことがあったら言ってね。

なんでも力になるからね。」

「まぁ,期待はしてないけどな。」

館長「ははは…。」



次はカブクワキングの店長さんに会いに行くようです。



第71話 疑惑の人 後編

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団はカブクワキングの前までやってきました。





「よ~し,今度こそ,影の正体を暴いてやるんだから!」

「なんか,やる気だね…。」

「まぁいいんじゃないの…。」



外でワイワイしゃべっているとまりんちゃんがお店から出てきました。



まりん「あら,いらっしゃい。」



みんな「こんにちは。」



まりん「こんにちは。今日はどうしたの?」



「ねぇねぇ。店長さんってあれからもずっと様子が変ですか?」

まりん「あ,うん。そうだね~。

なんかやけに優しいっていうか…。」

「うご~!ここは虫屋だったか~!厳しいなぁ…。」

「情けない!」



みんなはお店の奥に案内されました。



まりん「店長~!少年昆虫団のみんなが来てくれているよ~!」

店長「おう,いらっしゃい!」

「ちょっとお時間ありますか?」

店長「ああ,この時間は暇だから,時間なら売るほどあるよ~!」

「(それ,店としてまずいんじゃ…。)」

まりん「じゃあ,あたしは奥で残った作業してますね。」

店長「おう,よろしく!無理はしなくていいからな!」

「ふむ…。」

「ここは早く帰りたいなぁあ…。」

「とし君うるさいですよ!」

「確かに怪しいな。あの言動。顔も…。」



「わかった!」



まさらちゃんは何かに気付いたようです。



「何が?」



「伊藤店長さんが急にまりんちゃんにやさしくなった理由よ。」

店長「何のことだい??俺はいつも通りだよ。」

「とぼけても駄目ですよ。ずばり,店長さんはまりんちゃんに恋してます!」

店長「ぎく~!!!」

「なるほど。」

店長「ななななにいっているんだい!!??

まさらちゃん,大人をからかっちゃいけないよ…!」



伊藤店長はめちゃくちゃ動揺しています。



「もろ,顔に出るタイプだね。」

「そうみたいだね。」

「まさらちゃん,なんでわかったんですか?」

「女の感よ,感!!」

「あ,そう…。」

「でも,年齢差がありすぎてかなわぬ恋になりそうだな。」

「ちょっとイツキ君,失礼だよ。愛に年の差は関係ないわ!」

「なんか,まさらちゃんイキイキしているね。」



店長「何言っているんだ,まりんちゃんは22歳。俺はまだ24歳だ。

年の差なんてほとんどないぞ!」



みんなは大声をあげて驚きました。



「その顔で24かよ…。」

「てっきり40過ぎだと思ってました。」

「残念な顔だよね。」

「みんな言い過ぎよ!人間は見た目じゃないよ!」

店長「なんか悲しくなってきたぞ…。」

「あ,店長,ちょっとお願いが…。」

どうやら,伊藤店長も影(シャドー)ではないようです。

次はいよいよ,影レオンという大学院生の家に行くことになりました。

これで影(シャドー)の正体がはっきりするのでしょうか。



第72話 リクの作戦 <概要>

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団はあのアパートの前に来ていました。

やっぱりここが本命なのでしょうか。



「最初からここに来ればよかった~。」

「だから言ったじゃないですか。遊園地でだぬたちのことを

探っていたんですからあの大学院生が影なんですよ。」


「その可能性が高いってことか…。」

「よ~し,捕まえてやるぞ!」



1歩前に出て立っていたリク君はみんなの方を振り返りました。



「どうしたんだ?」

「みんな,今からボクの推理とこれからの

作戦を話したい。聞いてほしいんだ。」


「わかりました。」

「うん!」



リク君は何やらみんなに話し始めました。







そしてしばらくたちました。











「…。」

「…。」

「そして―」



……



……



「…みんなの協力が必要なんだ。」

「うん,任せておいて!」

「ああ。」

「だぬにお任せを!」

「おお!」







……



「じゃあ,僕が今からカゲレオンの部屋を訪ねてみるね。

怪しまれるといけないから一応イヤコムははずして電源はオフにしておく。」


「うん,わかった。気を付けてね!」

「もう一度確認しておくね。」



「はい。」

「もし10分たっても部屋から出てこなかったら

学校に連絡をして助けを求めてほしい。」


「本当に警察じゃなくていいんですか?」

「さっきも言ったけど子供のイタズラだと思われちゃうからね。」

「そうね。それにうちのパパは部署が違うからダメだし…。」

「カブクワキングの店長さんには,

後で電話を借りに来るかもしれないって言っておいたから。」




そう言うとリク君はアパートの前のドアまで歩いて行きました。

少し離れた場所でみんなは様子を伺っています。



リク君はドアの横にあったインターホンを押すと,”ピーンポーン”と甲高い音が鳴りました。



しばらくするとあの大学院生が“ガチャッ”と扉を開けて出てきました。



レオン「あれ?君は確か…。何か用かい?」





「ちょっとお話したいことがあるんだけど,あがってもいいかな?」



レオン「え,え?今?何で??」



リク君はその人を見つめたままほくそ笑んで答えました。



「影…―だよね?」





そう言ってからリク君は何かを伝えました。



レオン「…。」



大学院生は少し笑って答えました。





レオン「ふっ。冷たいジュースでも出そうか。」



リク君は彼に案内されるまま部屋に入っていきました。



第73話~第76話

2015/3/30

第73話 影の正体①

ノアシリーズ ~第2章~
「ちょっとお話したいことがあるんだけど,あがってもいいかな?」



そしてリク君はその人を見つめたままほくそ笑んで答えました。



「影…―だよね?」

大学院生は鼻で笑いました。



レオン「ふっ。冷たいジュースでも出そうか。」

そして二人は部屋に入っていきました。



「あ,リク君,部屋に入れてもらえたみたい。大丈夫かな~…。」

「乱暴なことされないといいですけどね。」

「まぁ,リクの推理に間違いはないから心配ないだろう。」

「そうだよね。」

「あとは結果がどう出るか…。まさに"賽は投げられた"だね。」

「なんでだぬも知らないような

難しい言葉を知っているんですか。」


「とにかく今はリクを信じて様子見だ。」

「うん!」



そして10分が経ちました。





「出てこないね。」

「とにかく学校に連絡をしよう。

俺とトシはここでもう少し様子を見ているから

まさらちゃんとだぬでカブクワキングへ行ってきてくれ。」


「わかった。やっぱり店長さんにも

来てもらった方がいいかな?」


「いや,あまり多くの人を巻き込むのはよくないと思う。」

「わかりました。すぐに行ってきます!

何かあったら,イヤコムで教えてください。」


「ああ。任せろ。」



二人はカブクワキングへ急ぎました。





「店長さん~!」



店長「お,来たな。よくわからないけど電話を貸してほしいんだろ?」

「はい,お願いします。」

店長「いったいなにがあったんだい?」

「悪い奴らを捕まえるんです!」

店長「え?え?そうなの?(何かのごっこ遊びかな??)何か手伝おうか?」



その時,まりんちゃんが奥から店長に声をかけてきました。



まりん「店長,ちょっとこの在庫の確認をお願いします~。」

店長「はいはい~,今いくよ~!」



「…。」

店長「ちょっと仕事が入ってしまったので手伝えないや。ごめんな~!」



「なんか,人が変わったね。」

「だぬたちの危機よりも

女を優先するとは…情けない!」




二人は中野木小学校へ電話をかけました。



プルプルプルプル



「(お願い,出てください…。)」



第74話 影の正体②

ノアシリーズ ~第2章~
中野木小学校へ一本の電話が入りました。



プルプルプル…



安井「はい,中野木小学校の安井ですが…。」

「あ,安井先生!あの栗林先生はいますか?」



安井「うん?ああ,いるよ。今日は会議のある日だから

だいたいの先生はいるからね。」



「よかった,かわってください!」



しばらくすると栗林先生が出ました。



栗林「やぁ,まさらちゃん,どうしたんだい?学校に何か忘れ物?」



「違うんです!リク君が大変なんです!」



栗林「はい?」



「とにかく急いできてください!急いでです!」



栗林「わ,わかったよ。ちょうど会議が終わった

ところだからすぐに出られると思う。」



まさらちゃんとだぬちゃんはみんながいる場所を伝え,電話を切りました。



「…。」

「だぬたちも戻りましょう!

何か進展があるかも知れませんし。」




二人は店長にお礼を言って裏のアパートへ急ぎました。



「戻ってきたか。連絡はついた?」

「うん,なんとか!たまたま栗林先生いたよ!

今日,会議があるみたいだからほとんどの先生が学校に来ているんだって。」


「夏休み中に会議なんて珍しいな。」

「そうなんですかね?」

「まぁ,何かあったりすると,そういう日程を入れたりするものなのかもな。」

「へぇ。」

「今はそんなことより,栗林先生が来るのを待とう。」

「うん,そうだね。」

「今のところ,中の様子に変わったところはなさそうだよ。」



そうしているうちに一台の車が見えてきました。



「あっ!」

車の中から栗林先生が下りてきました。かなり焦っているようです。

栗林「みんな!」



栗林先生はみんなの元へかけつけました。



栗林「電話ではいまいち,状況がつかめなかったけど,大丈夫なのかい!?」



「今のところはね。」

栗林「それで,リク君は?」

「まだ,あの部屋の中にいます。」



栗林「なるほど,わかった。」



栗林先生はアパートに近づこうとしました。

すると中から人影が現れました。



栗林「あれは!?」

なんと,カゲレオンによって

リク君が抱え込まれ,外に連れ出されています。



そしてそのままカゲレオンの車の

後部座席に押し込み,アッという前に目の前から消え去りました。



栗林「なっ!?なんだあいつは!?」



「まずい,逃げられた!」

「リク君…。」

「先生,すぐにあの車を追って下さい。今ならまだ間に合う!」

栗林「わ,わかった!」



彼は“みんなはここで待っているように”と言おうとしましたが,

少年昆虫団はすでに車に乗り込んでいました。



栗林「仕方ない。今は一刻を争う。」



ブロロロロ…・



栗林先生と少年昆虫団はカゲレオンとリク君の

乗った車を追いかけ始めました。



第75話 影の正体③

ノアシリーズ ~第2章~
カゲレオンの乗った車はどんどんスピードをあげています。



近くまで追いつくのですがすぐに離されてしまいます。



栗林「くそっ。なんでこんなことに…!」



「リク君…。」

「大丈夫ですよ。リク君を信じましょう。」

「…。」



車はかなりの距離を走りました。

周りはすでに山ばかりです。



1時間以上走ってようやく停車したようです。

そこは以前,漆黒の追跡者たちと出会った“各務原山”でした。



栗林先生と少年昆虫団はカゲレオンの車の中の様子をのぞいてみました。

しかしすでに二人の姿はありません。





「おそらくこの道を登って行ったんだろう。」



そう言ってみんなはリク君たちの後を追いかけました。



小一時間ほど登ると少し広い場所に出ました。



栗林「いったいどこまで行ったんだ…。」

「あっ!」



二人を見つけたようです。

リク君は捕まって身動きができない状態になっているように見えます。



栗林「おい!うちの生徒に何をするつもりなんだ!」



「よかった。来てくれたんだ。」



栗林「リク君大丈夫ですか!?」



栗林先生はリク君に近づこうとしました。



レオン「うひょひょ。これ以上近づかないで欲しいですね。」



栗林「むむ…。」



レオン「ひっひっ。」



栗林「あんたは一体なんなんだ!?」



「それは,ボクから話します。」



栗林「リク君?」



「実は僕たちは“ジャファ”という名の闇組織に狙われているんです。

その組織の一員が僕たちの周りに潜んでいることも突き止めました。

コードネームは"影(シャドー)"といいます。」




栗林「えっと…。つまりその影(シャドー)っていうのが目の前の人…。」



レオン「ウキキキキ。」



いよいよ影が正体を現すようです。



「そう…。その影の正体こそが…。」

「…。」

「…。」













「あんただよ…。栗林先生!!」



リク君はすぐ目の前に立っている栗林先生に向かってそう言い放ちました。





栗林「な!?え・・えっ!?」



その瞬間,少年昆虫団は栗林先生の元から離れ,

リク君に駆け寄りました。



これは一体,どういうことなのでしょうか。



第76話 影の正体④

ノアシリーズ ~第2章~
「そう…。その影の正体こそが…。」



「あんただよ…。栗林先生!!」





みんなは偽物の栗林先生を睨んでいます。



「あんたこそ,本物の栗林先生に成り代わっている影なんだ!」



その瞬間,少年昆虫団は栗林先生の元から離れ,リク君に駆け寄りました。



なんと影の正体は栗林先生だったのです。



レオンはこの状況でも冷静です。







「ここにいる栗林先生は偽物ってことだよね。」

「ああ,そうだよ。本物の栗林先生は
どこか別のところにいる。生きていればね…。」


栗林「なっなにを言っているんだい!?」



「…。」



栗林「その男が影っていう人物じゃないのかい!?」



「じゃあ先生に質問。恥ずかしがらないで正直に答えてね。」

栗林「あ,ああ良いとも…。それで僕の疑いが晴れるなら。」



「聞きたいことはこれ。ズバリ,栗林先生は

稲姫先生とはどういう関係なんですか?」


栗林「なっななにを!そんなこと今,関係ないでしょ!」



「答えてよ,栗林先生?稲姫先生のことをどう思っているかも聞かせて。」



まさらちゃんは不安そうにじっと栗林先生を見ています。



栗林「だから,そんなことは子供には関係のないことでしょ!」



彼はしばらく黙ってしまいました。







栗林「わかったよ。それで本当に僕の疑いが晴れるんだね。」



「ええ。」



栗林「じゃあいうよ。子供にこんなプライベートなことは言いたくないけど…。」



「…。」



栗林「僕と稲姫先生は交際している仲だよ。

彼女のことはとても大切に想っているよ。」



そう照れながら答えました。



栗林「さぁ,これで満足かい?」



みんなはシーンとしています。



「…。」

「…。」

「先生…じゃない…!」



栗林「え?」



「やっぱり本物の栗林先生じゃない!!」

栗林「え?何を言っているんだい…?」



リク君は不敵に笑いました。



「影(シャドー),一つ決定的なことを教えておいてあげるよ。」





レオン「…。」



「“稲姫”なんて名字の先生はこの学校にはいないんだよ。」



栗林「!?」



「“稲姫”先生っていうのはうちの学年主任の“稲”・川・淳・“姫”先生のあだ名だよ!」





<稲姫先生こと稲川淳姫先生>



栗林「!?」



「男であるはずの稲姫先生と栗林先生が交際するなんてありえないんだよ。」



栗林「いや,しかし。」



「ちなみに稲姫先生は独身だけど無類の女好きで男には一切興味がないんだからね!」



「でも普通そんな間違いしますか?

リク君から真相を聞いたときは信じられなかったですよ。」


「そう,普通はそんな間違いはありえない。」



リク君は影(シャドー)に向かって言いました。



「どうしてあんたがそんな勘違いをしたのか今から話してあげるよ。冥土の土産にね。」



栗林「何っ…!?」



リク君のドヤ顔タイムは続くようです。



第77話~第80話

2015/5/6

第77話 影の正体⑤

ノアシリーズ ~第2章~
影はどうして稲姫先生が女性だと勘違いしたのでしょうか。

今,その真相が明らかになります。



「あんたがどうしてこんな初歩的なミスをしたのか。それを今から教えてあげるよ。」

栗林「くっ。」



「そもそも本来ならその人に変装するためには

事前に色々な情報を入手するなど

しっかりとした準備が必要なはずだよな。」


「イツキ君のいう通り。でも何らかの事情で

影にはその時間がなかったんじゃないかな。」






栗林「…。」



「その顔は図星みたいだね。

きっと組織から一刻も早く潜入するように言われていたんじゃない。」


「そうだろうな。」

「じゃあ影はどんな準備をしたの?」

「まずは図書館の監視カメラのハッキングだろう。そして館長に探りを入れたこと。」

(第33話参照)

栗林「ふんっ。まるで見てきたかのように話をするな。」



だんだんと影の正体を表してきたようです。



「館長の対応を不審に思った影は,

さらに図書館の監視と過去の映像をチェックした。」


(第34話参照)

「それで“ノアの書”を借りたイツキ君の事をつきとめたって訳ですね。」

「そういうこと。後は誰に変装して近づくのが得策か考えたはずだ。」

「わたしたちに一番近い大人って言ったら,

家族以外なら学校の先生しかいないもんね。」




どうやら少年昆虫団の話は核心をついているようです。

偽物の栗林先生はただじっと聞いています。



「そこで僕たちの担任の先生,つまり栗林先生に変装するための情報を集め始めた。」

「どうやって??」



トシ君はすでにさっぱりついていけていないようですが何とかふんばっています。

ちなみにトシ君の担任の先生は栗林先生ではありません。



「学校に出入りする業者を装って盗聴器を仕掛けたんだろうね。」

「教員の会話を盗み聞きすることで栗林先生の情報を得ようとしたんだな。」

「あっ!わかった!そこで稲姫先生の話題が出ていたんだね!」

「正解!」



栗林「くっ…。」



「あんたは盗聴器を使って栗林先生と安井先生の会話を聞いていたんだ。」

(第36話参照)

「…。」



リク君は影(シャドー)をじっと見つめながら言いました。



「教えておいてあげるよ。稲姫先生という名は,

もともとは生徒がつけたあだ名なんだ。」


「小学生のような子供にありがちな,名前を短くして読むアレだな。」

「ほとんどの先生は気にもとめなかったが

一人だけ子供と同じように稲川先生のことを稲姫先生と呼ぶ教員がいた。」


「それって安井先生のことですよね。」

「そう。」



レオン「そういうことか…。」



彼はすでに全てを悟っているようです。





「安井先生は職員室でも稲川先生のことを稲姫先生と呼んでいたはずだ。」



レオン「もし,そうだとしてもどうして影が

稲姫先生を女性だと思い,さらに二人が交際しているというような

勘違いをしなければならないんだい?」



レオンは全てを理解したうえであえて,リク君に質問をしました。



「それは今から教えてあげるよ。」



まだまだリク君のドヤ顔タイムは続くようです。



第78話 影の正体⑥

ノアシリーズ ~第2章~
各務原山の中で栗林先生に変装した影と

少年昆虫団,そして大学院生のレオンが対峙していました。



いよいよ謎が明らかになっていきます。



「もともと安井先生と栗林先生と稲川先生は仕事が終わった後,

よくラーメンを一緒に食べに行っていたんだ。」


「だぬたちも昆虫採集に行くとき,ラーメンを食べに行く

先生たちとすれ違ったりしていましたね。」




栗林「…。」



「でも,あるその日だけは安井先生がトイレに行っている間に,

二人だけでラーメンを食べに行ってしまったらしいんだよ。」


「それを妬んだ安井先生は『俺を置いて二人でデートとは

いい御身分ですね』って嫌味を言ったらしい。」




レオン「"デート"っていうのはつまり"ラーメンを食べに行く"ってことか。」



「そういうこと。それをよりによって生徒の前で言うもんだから

色んな生徒が二人をからかうことになったんだ。」




レオン「なんていう,教師だ…。」



「まさか,職員室でも安井先生は栗林先生のことをからかっていたのか…。」

「そう,おそらく『栗林君,今日は稲姫先生とデートじゃないの?(ラーメン食べに行かないの?)』

とか『最近,稲姫先生とはどうなの?(ラーメン食べに行っているの?)』とか

言っていたんじゃないかな。」


「そっか。影はそれを盗聴器で聞いちゃったんだ!」

「そういうこと。言葉通りにとらえてしまったんだろうね。だから勘違いをした。」



栗林先生に変装した影は急に笑い出しました。



「ははは。そんなことでバレてしまうとはね…。

そうだよ,私が影(シャドー)だよ。

リク君の言う通り私には時間がなかった。

盗聴器を仕掛けた次の日には変装して

潜入するように命じられていたからね。」



偽物の栗林,すなわち影(シャドー)はついに正体を表しました。



そして隠し持っていた仮面をかぶりました。





「素顔は見せないってわけね。」

「一応,潜入後もそれとなく色々と探りはいれたんだけどな~。」



「そうだろうね。さりげなく稲姫先生のことを安井先生に聞いてみたんだろう。」



「当然,安井先生はこう答えるよな。『旅行に行っていないよ』って。」



「そっか。そういえば稲姫先生,夏休み前の学年集会で旅行に行くって言っていたね。」

(第45話参照)



「さらに学年主任もいないと勘違いしたあんたは,

ほかの先生に聞いてみた。『学年主任の稲川先生はどちらですか?』ってな。」


「それも当然,『旅行中です。』と言われるはずだな。」

「本来は同一人物のことを言っているんだが,

あんたはそれぞれが旅行に行っていると勘違いをした。」


「そして栗林先生のことをよく知る人物が二人もいないことをチャンスだと思ったんだな。」



「ま,その通りだ。それで少し油断しちゃったかな。ははは。」



影は余裕を見せています。



「それを踏まえればどうしてあんたの正体に気づけたのかも一目瞭然だよ。」



「この前の出校日に私が“稲姫先生と交際している”と

言ってしまったからバレてしまったんだね。」




「そういうこと。あれは決定的だった。」



「私としたことがこんなことでバレてしまうなんてね。

やっぱり君たちはなかなかすごいね。」




レオン「ふふふ…。」



「それで,そこの変な男と企んで私を

こんな所まで連れてきてどうするつもりだい?

私を捕まえるだけなら何もこんな山までくる必要はないよね。」



「あんたにはここで聞きたいことがいくつかあってね。それに答えてもらう。」



「さて?」



リク君は影から何を聞き出そうとしているのでしょうか?



第79話 影の正体⑦

ノアシリーズ ~第2章~
リク君は影に何かを聞き出すために各務原山まで連れてきたようです。



「私に聞きたいこと?何だろう?」



「先日ここで起きた銃撃事件のことは知っているはずだよね。」

(第16話参照)

「ふむ…。今村さんの部下が撃たれた話かな?

私は現場にいた訳じゃないから詳しくは知らないけどね。」



「そう,その一件のことさ。」

「(何を聞き出すつもりなんだ?)」



「銃撃を受けたってことはあんた達の組織“ジャファ”だっけ,

あんた達の組織と対立する別の悪い組織があるんだよね?」




「ふむ。」



「もう一つの質問は,なぜこの現場から撃った

はずの銃弾が消えてなくなっているのかってことだよ。」




「残念だけど組織の機密に関わることは答えられないなぁ。」



「…。」



「じょぼぼぼぼぼぼ…・。」



トシ君は話についていけず,繁みの中で立ちションをしています。



「一つ目の質問には,特にこちらに不利益になることもないし,教えてあげよう。」



「…。」



「君たちの推測通り,答えはイエスだ。」



「やはり。」



「組織の性質上,どうしても敵が多いからね。

今回の一件は我々と敵対するオランダのある製薬会社が

向こうの闇組織と手を組んで回してきた

暗殺者(ヒットマン)の仕業だろうね。」



「ヒットマンって…本当にそんなのがいるんだ。映画の世界みたいでなんか怖い。」



「現実にそういう連中がたくさんいるってことだよ,まさらちゃん。」



影はなれなれしくまさらちゃんに話しかけてきました。



「暗殺者がどういう人物なのかもだいたい把握している。」



「どんなやつなんだ?」



「興味があるようだね,イツキ君。

その人物は本名・国籍・年齢・出生その他一切不明。」



「じゃあ何もわかっていないじゃないですか。」



「ただし,使われたライフルからその人物だと特定されている。

彼は常に愛用の英国製ライフル,“レジェンドマスター”を使っているようだからね。」



「いったいその人物って…。」



「彼は気配を全く出すことなく狙撃を完遂することから

『沈黙の狙撃手(サイレントスナイパー)』とも

獅子の髪をした男と噂されているから『獅子髪の男』とも呼ばれている。

またその人物は,こうも呼ばれている。」





「…。」

「“マコト・セルジュ”,と。」



「マコト…セルジュ…。」



「ちなみに二つ目の質問にはちょっと答えられないね。

だって私は本当にこの一件には詳しくないから,よく知らないんだよ。」



影は何かを隠しているようでしたが,これ以上問い詰めることはできませんでした。



第80話 影の正体⑧

ノアシリーズ ~第2章~
「それで,こいつをどうするつもりなんだ?」

「そうですよ,捕まえるんですか?」

「もちろん警察に突き出すよ。

何せ殺人集団の組織の一員なんだからね。」




「おいおい,それは山本や東條のことを言っているのかい?

私の専門は殺しじゃないよ。諜報活動だ。」



「どうせ同じ穴のムジナだ。観念するんだな。」



「いやぁ,そんなこと言われてもね~。」



「仕方ない。実力行使だ。」



レオン「そうだね。」





「本気で私を捕まえる気かい?」



リク君は持ってきていた捕虫網を2本とも取り出しました。



「やる気みたい…だね。」



影はにやっと不気味に笑いました。



リク君は構えると,ものすごい速さで影に向かっていきました。



「-大地二刀流-」



―薔薇十字(ローゼン・クロイツ)―



しかし,影は素手で受け止め,攻撃を弾き返しました。



「くぅ,強力だね~…。」



「リク君の攻撃が効かない…!?」





すかさず後ろに構え,もう一度バランスを整えてから,

影に向かって走り出しました。



リク君が捕虫網についているボタンを押すと,

まるで棒高跳びの棒のように10mほどの長さになって伸びました。



そのしなやかに伸びた捕虫網を使って

リク君は上空10mほどに飛び上がりました。





「おお!素晴らしい動き!」



空中で素早く片方の捕虫網を背中にしまいました。

そしてもう1本の捕虫網を振りかぶりました。



― 大空一刀流 青の衝撃(ディープインパクト)―





ドドドドドドド…・・



上空から猛烈な突きが降ってきました。



「ぐおおおお…。」



影はポケットにしまってあったナイフを取り出し,

その攻撃をはじいています。



攻撃が終わると同時にリク君は着地しました。



「やるね~,さすがだよ,リク君。」



「もう一つ,聞いておきたいことがあった。」



「なんだい?」



「本物の栗林先生は無事なんだろうな!」



「ああ,それは大丈夫。今頃世界1周旅行を楽しんでいるよ。

私が招待したとも知らずにね。」



「ホント!?先生が無事ならよかった~。」



「さて,それじゃ私は失礼するよ。」



「何!?」



影は一瞬の隙をついて,その場から去っていきました。



「…。」

「どうして追わなかったんだ?」

「奴はナイフを持っていた。深追いすれば,

まさらちゃんやだぬちゃんが人質に取られかねない…。」


「あれ,オイラは?」

「数に入ってないんですよ。」

「何を~!」



レオン「仕方ない,帰ろうか。」



「そうだね。」



影は逃がしてしまいましたが,

いくつか収穫もあったようです。







過去の掲載順へ

TOPページへ