リクの少年昆虫記-過去のお話-

過去の掲載順へ

TOPページへ

目次


第385話~第388話

2021/10/17

第385話 8周年特別企画
編集:例年よりも少し早いですが,

周年特別企画を行います。



おりぃけん(以下K):よろしく。



編集:今年も読者D氏との対談,

そして来週は「あの物語」を公開します。



K:まぁ今年はっていうかほぼ毎年だよね。

そろそろ読者も質問するネタが切れてきたんじゃないかな。



読者D(以下D):まぁ・・・。一応,質問を考えてきました。

編集:それではお願いします。



D:アイタ君とマーボーはいつ再登場するんですか?

K:どうも全国の読者(D氏)からの要望が

大きいので次回まとめて出しますw



D:おおっ!

編集:楽しみですね。次の質問をどうぞ。



D:山本はなぜ南雲に優しいんですか?

なんかいい上司になってきている気がします。



K:なるほど。これはいずれ本編で少しずつ明らかになるかな。

一つ言えるのは彼は御前と自分のためだけに動く人間です。



編集:それでは次の質問をお願いします。

D:え?もうないですよ。



編集:どうやら締切期限までにここまでしか

質問を引き出すことができませんでした。



K:え?じゃあもう対談終わり?過去最短じゃない?

編集:仕方ないので作者から今後の展望

などフリートークで語ってもらいます。



K:ええ~。D氏!

D:あとはよろしく!



K:まず,来月くらいからいよいよ新シリーズスタートします。

今回は最終章までのストーリーをすでに書きあげています。



編集:素晴らしい。



K:なので色々と細かい調整や設定の変更なども

できて満足できるシリーズだと自負している。



D:自画自賛!



K:それから忘れられている伏線なんかも

拾っていくよ。例えば三大悪童の連中とかね・・・。



D:結局まだ頭目(ファーザー)しか出てないですよね。

K:そうだね,なので彼らの登場にも期待してほしい。



編集:他にもまだ回収されていない伏線ってありますよね?

K:あるね。南雲に関することとか・・・。



D:ほほう。気になりますね。



K:色々とあるんだけど,あとは

菊の幹部,青山氏に関するものとか・・・。



編集:いずれ本編で明らか

になるということですね。



D:まぁ気休め程度に楽しみにしておきますよ。



K:あー,HP自体もまた今度,

リニューアルする予定なのでお楽しみに!



編集:それでは特別対談はここまでとします。

来週はあのいかれたキャラ登場予定です。



第386話 アイタタなアイタ君VSニートマーボー<前編> 
だぬちゃんの知り合いに教員採用試験合格を

目指す30過ぎのおっさんがいました。



彼の名前はアイタ君。



今日は少年昆虫団と一緒にカストという

ファミリーレストランに来ていました。



どうやらここでアイタ君を人間的に成長させる

ための第10回アイタ再生会議が開かれていました。



「何度開いても無駄だろ。なんで10回も開くんだろ。」



この後さらに回数を重ねることをまだイツキ君は知りません・・・。



「それで今日はどうしたの?」



リク君がだぬちゃんに聞くと珍しく声を荒げて,



「この前,父親とだぬと彼の三人で

父の運転する車に乗っていたんですよ。」


「うんうん。」



まさらちゃんが相槌を打ちながら聞きます。



口にはストローを加え,カルピスを飲んでいました。





アイタ「・・・。」



「何が気に入らなかったのか,急に

アイタ君が父の運転に文句をつけたんですよ。」



だぬちゃんが当時の様子を再現しながら説明します。



-だぬ父の車の中にて-



だぬ父が車を運転していると,助手席に座って

いたアイタ氏が父の運転に苦言を呈しました。



アイタ「だぬ父さん,運転荒いなぁ~!!

今まで乗せてもらった中で一番危ない!」



彼は車に乗せてもらっておきながら文句を言い始めました。



だぬちゃんは後ろに座っていましたが

特に危険だとは感じていませんでした。



だぬ父さんは怒って彼をその場に降ろし去って行きました。



・・・



・・・



カストではその話を聞いていた

一同は目が点になっていました。



「まぁ,色々あるさ。」



トシ君が意味不明なフォローをします。



アイタ「いや,あれは・・・。」



アイタ君は言い訳に徹します。



彼らが再生会議を続けていると入口の扉が開きました。



そこには以前知り合ったパクト君と

伯父のマーボーさんがいました。



「あれ?パクト君とたしか

マーボーおじさんじゃないですか。」



みんなは隣の空いている席に二人を呼びました。



アイタ「この人は・・・?」

マーボー「どうもマーボーです。」



二人は初顔合わせでした。



「そういえばマーボーさんは

お仕事見つかったんですか?」



だぬちゃんが失礼なことを平気で聞きます。



マーボー「いや,まだ自宅警備員だよ。前にも言ったけど,

おばあさんの遺産があるからね。もう一生,金に困ってない。」

アイタ「いいなぁ!うらやましい!」



アイタ君が彼を絶賛しました。



「なんかこの二人がそろう

のって色々とまずくない・・・。」



どうやら話が盛り上がりそうなので続くようです。



第387話 アイタタなアイタ君VSニートマーボー<中編>
ファミリーレストランにあのアイタ君とマーボーが

史上初めて顔をあせるという快挙な出来事が起きました。



「いやぁ~ちゃんと働きましょうよ!社会人でしょ!」



だぬちゃんがマーボーおじさんを

軽蔑したような眼で見ながらそう言いました。





マーボー「え?なんで??」



その返答に,



「いや,だって大人は仕事する

んだって学校で教えてもらったよ!」



と,リク君が少し嫌味っぽく言ってみました。



パタト君はそのやりとりを呆れたように黙って聞いていました。



もうこういうことを周りから

言われるのは慣れっこだったようです。



マーボー「だってボク,お金あるんだよ?遺産が!イ・サ・ンが!

もう相続税だって払っているし一生働かなくても生活できるんだよ!?」



彼はドヤ顔でだぬちゃんに言い返しました。



アイタ「おいおい!なんかこの人,不真面目だな!」



アイタ君が隣から口を挟みます。



「ややこしくなるからお前は出てくんなよ!」



イツキ君が彼を制止します。



アイタ「仕事って言うのはやりがいだよ!人生はやりがいそのもの!

だから俺は教師になりたいから採用試験を毎年受けているんだよ。」



アイタ君の発言を聞き,



マーボー「毎年?あなたボクとそんなに年齢変わらないですよね?まだ

受かっていないんですか?いい加減向いていないって考えないんですか?」



マーボーおじさんは本質をずばっと突きました。



アイタ「考えないよ。受けていればそのうち受かる!やりがいだよ!」



「なんか同じことを繰り返すマニュアル人間みたい・・・。」



ドリンクバーから戻ってきたまさらちゃんはぼそっと呟きました。



マーボー「そもそも働け,働け言うのは,ボク

みたいな人間がホントは妬ましいんでしょ!?」



彼はパクト君が持ってきてくれたオレンジ

ジュースを飲みながら熱演を続けます。



マーボー「世の中にはね,不平等なの!親の代からお金がなくて一生,

社会の歯車としてこき使われて働き続けなくちゃいけない人間と,

生まれ持っての金持ちで何をしても許される,そして働かなくていい人間!」



カストには彼の熱演が響き渡ります。



「うーん,そうかなぁ・・・。いやぁ働くって大事

だよ。オイラは将来お金持ちになっても働くぞ。」



マーボー「君,それはお金がない人間の発想なんだよ。

一度大金を手にしてしまえば人生は変わる。」



マーボーおじさんは一人で不気味に笑い始めました。



「なんか,怪しい宗教の教祖みたいになってきたな・・・。」



パクト「ああ,そういえば伯父さんのお友達に内村君って人がいるんだけど,

彼は草火(くさび)新教っていう新興宗教の信者で伯父さんをよく誘っていたなぁ・・・。」



しかし,マーボーおじさんは自身は

その宗教の信者ではないと否定しました。



どうやら無駄に話が続くようです・・・。



第388話 アイタタなアイタ君VSニートマーボー<後編>
ファミリーレストランカストでのアイタ

再生会議は大詰めを迎えようとしていました。



アイタ「ああ,それなら俺はその宗教の信者だぞ。」



なんと,アイタ君は新興宗教の信者であると告白しました。



「げげ,いよいよこいつ大丈夫か。」



リク君は最早,年上の人に対して

何の敬意も払っていませんでした。



パクト「ええ,そうなの・・・。というかお兄さん誰・・・?」



パクト君はマーボーおじさんと同様に

アイタ君に会うのは今日が初めてでした。



アイタ「だからさぁ,選挙が近いと動員かかって忙しいんだよ。」



この宗教はどうやら政界に進出していて

信者に票集めをさせているようです。



「そんなことやっているから

採用試験受からないんですよ!!!」



だぬちゃんが思いっきり

呆れかえってしまいました。



マーボー「まぁ,一度しかない人生なんだ。好きに生きればいいじゃない。

宗教にはまってもいい。だらだらニートを続けてもいい。その人の勝手でしょ。」



「うーん,でも周りの人は心配して

声をかけてくれているんじゃないかなぁ。」



しかしまさらちゃんの声は彼の心には届きませんでした。



マーボー「金だよ金!!金さえあれば上司にペコペコ頭を下げる

必要もない,残業もない,毛も抜けない!この世は金が手に入る

環境にある人間だけが勝ち組み!あとは全部,底辺なんだよ!」



どうやら金を手にしたことで彼の人生と

性格は一変してしまったようです。



マーボー「現に,ボクの主張に反論できる人なんていないでしょ?」



彼は子供相手に本気で自分の

主張を押し通そうとしています。



アイタ「いや,働くことはやりがいだよ!あと,社会貢献!

みんなが仕事しないとこの世は成り立たない。」



アイタ君が反論しますが,前半は先ほどと

同じ内容の繰り返しでした。



マニュアル人間と呼ばれる所以です。



マーボー「社会貢献?しているよ。ボクが金で大量の物を買ってあげるから,お金が世の中に

回るんじゃない。それにその"みんな"が仕事をしないといけないのは働かないとお金がなくて

生活できないからでしょ。ボクはある。ねたまれても困るんだよねぇ・・・。」



だぬちゃんもイツキ君も何も言えませんでした。

大人の醜い一面を見てしまったようです。



アイタ「なんか,そのうち犯罪でもおかしそうだなぁ!

金があっても悪いことする奴はいるからね。」



パクト「あるかもね・・・。」



パクト君は否定しませんでした。



「もし,彼が凶悪犯罪をしてしまったら,

パクト君はどう思うんですか!?」



隣に座っていたパクト君に話を振りました。



パクト「仕方ないよ。運命だよ。」





「え?でももし殺人とかだったら,殺されちゃった人は・・・。」



まさらちゃんが少し不安そうに言うと,



パクト「それが被害者の運命なんだよ。全部決まっているんだよ。」



彼は彼でネガティブの塊でした。



新興宗教にはまり,採用試験に受からないアイタ君。



おばあさんの遺産を手にした事により,

一転して人生が変わったマーボーおじさん。



彼らのやりとりはこの後も続きましたが,お互いに意見がかみ合う

ことはなく,再生会議は平行線のまま何の実りもなく終了しました。



彼らの今後の運命はどうなるのか,

それがわかるのはもう少し先になりそうです。





第389話~第392話

2021/11/6

第389話 プロローグ

各務原山の交錯シリーズ 序章
名古屋駅のリニアホームに二人の男が

ある人物の到着を待っていました。



彼らは菊水華と呼ばれる警察の

特殊チームに所属していました。



クールビズの格好をした中年男性の名前は

赤神といい,通称“菊”のリーダーでした。



隣にいるポロシャツと短パンで手には飲みかけの

炭酸飲料を持っている人物は翠川レオンです。



"菊"の中核を担う人物です。



しばらく待っていると,リニアが駅に到着しました。



中から白のYシャツにスラックスをはいた男が

大きなトランクケースを持って出てきました。



赤神「来たな。」



彼はその人物に声を掛けました。



髪はくせ毛で目には目やに,見た目は

やる気がなさそうな風体でした。





<警視庁組対5課 紺野 航(こんの わたる)>



「おい紺野,大丈夫か・・・。お前がここに来ているのは

特命なんだぞ。それなのにやる気がまるで感じられない!」



紺野と呼ばれる人物もまた警察の人間でした。



紺野「やる気がないように見えるのは生まれつきだ。でも大丈夫だ。

名古屋に来るのはこれで二度目だしな。長期の出張届も出してきた。」



彼は頭をワシワシとかきむしりながらそう言いました。



「ならいいんだが・・・。どうも心配だ。」



紺野氏はレオンの同期で警視庁では

捜査四課の課長を務めていました。



紺野「今回こそ,あいつの無念を晴らしてやりたい。その気持ちは俺も同じさ。

ここに来る前にあいつのフィアンセにも会ってきた。絶対に奴らを許さない。」



彼の目つきが変わりました。



あいつとは,数か月前に闇組織JFに事故死に

見せかけて殺された茶竹(さたけ)氏のことでした。



彼もまたレオンさんたちの同期だったのです。



紺野「楽しみだな,強力な助っ人っていう子供たちに会うのがよ。

本当に"あの時"の子供たちなのか?」



にやにやと不敵な笑みを浮かべています。



「この前,電話で話したことはすべて

本当だ。まぁ信じられないのも無理はないが。」



当然,強力な助っ人とは少年昆虫団,

特にリク君のことでした。



赤神「紺野,とりあえず本部の宿舎へ来てほしい。

そのあとは,翠川と例の子供たちに会い行くといい。」

紺野「わかりましたっと。」



紺野氏は菊のメンバーではありません。



しかし,同期が殺された無念を晴らすために,

名古屋への捜査を希望していました。



色々と事情があり,この時期になってようやく

捜査に参加できることになったようです。



ちなみに少し前にも一度,名古屋を訪れていましたが,

この時は短期ですぐ東京へ戻らなければならなかったようです。



彼らが駅を出ると,大きな影が地面を覆いました。



紺野「なんだ?」

赤神「ああ,これはあれだよ,あれ。」



赤神氏が上空を指さすとそこには大きな飛行船が飛んでいました。



船体には県警のマスコットキャラであるコノハけいぶが描かれていました。





「警察の防犯意識キャンペーンの一環でメッセージを

船体に書いた飛行船を飛ばしてPR活動しているんだって。」



紺野「ご苦労なこった。愛知県警は色々と

市民のための活動をしているんだなー。」



一方,闇組織JFの本部がある,ツインタワー内のとある一室では・・・。



二人の人物が何やら話をしています。

一人はユニット海猫のメンバーである影(シャドー)でした。



何やら一言,二言,話し終えた後,もう一人の

人物は部屋から出て行ってしまいました。



影「これは,これは楽しくなりそうだ。クククッ・・・。」



影は栗林先生の顔に変装した状態で笑っていました。



第390話 休息

各務原山の交錯シリーズ 第1章
少年昆虫団は中野木商店街のカフェ“オーシャン”に来ていました。



一番奥の6人用の席でワイワイと

雑談しながら楽しんでいました。



時間はお昼には早い時間で,お客も少なく

なり,店員も一息つける時間帯でした。



「あ,かおるさん!追加の注文いいですかー!」



だぬちゃんが声をかけると,隣の机を

ふいていたカオルさんがやってきました。



かおる「お待たせしました。ご注文を伺いますっ!」





<カフェの店員 立花 馨(たちばな かおる)>



「かおるさんっていつみても可愛いですよねぇ!」



まさらちゃんの言葉に,



かおる「そっそんなことないですよ。

大人をあまりからかわないでくださいね。」



「トシ君が,ランチメニュー食べたいって

言っているんですが。バカですよねー,まったく。」




一番奥の窓際にいたイツキ君が,



「無理だろ・・・。」



と言うと,



かおる「店長に聞いてきますね。」



かおるさんは奥のキッチンへ戻っていきました。



「そういえば,この前ここに来た時に,レオンさんもいたよね。

あの時ちょっと反応が怪しかったし,もしかして,かおるさんに気があるのかもよ!」




まさらちゃんは年頃の女の子なので

このような恋話が大好きなのでした。



「そうかなー。レオンさんは同じ

大学の久遠さんがいるじゃん!」


「リク君―!人を見る目がないですねー。

あの人にレオンさんは似合いませんよ!」




リク君とだぬちゃんも話に乗ってきました。



「絶対にかおるさんがお似合いだよー。」

「いやいや,同じ大学なら姫色(ひいろ)さんのほうがいいんじゃないですか。

大人の魅力を感じます。清純系がお好みなら紫織さんもいいかもしれません。」




イツキ君は三人の会話を聞きながら,コーラを飲んでいました。

しかし会話の内容に興味はなく,視線はずっと窓の外の景色でした。



すると,イツキ君が耳に着けていたイヤコムに連絡が入ります。



同時にカオルさんがランチメニューを持ってきました。



手にはオーダー票とペンを持っています。



どうやら少し早い時間ですが

特別に作ってもらえるそうです。



トシ君は山盛カツカレーを注文しました。



「え?待ちあわせ時間を変更?ああ,いいけど。」



どうやら相手はレオンさんでした。



かおる「もしかして,イヤコムの相手はレオンさん?」



「みたいだね。この後,会う約束をしているんだ。」



イツキ君はイヤコムの通信を切りました。



「待ち合わせの時間を変えてほしいみたいだ。

なんでもゼミの実験で遅くなるって。しばらくイヤコムにも出られないってさ。」




かおる「そうなんですね。昨日,大学でお会いした時も忙しそうでしたもんね。

それじゃあ,トシ君!すぐに作ってもらえますからゆっくりと食べていってくださいね。」



かおるさんの笑顔にみんなは癒されました。



そうしているうちに客足も増えてかおるさんや

他の店員さんも忙しそうに働き始めました。



「ここのカツカレーうまいなぁ!!」

「良かったね,カレーがあるカフェで!」



時間に余裕ができたので,結局みんなもランチを食べることにしました。

それでもまだ時間がありましたが,店が混んできたので出ることにしました。



「待っていても暇だし,レオンさんの大学へ行こうよ!」

「そうだね,そうしよう。」



彼らは中野木大学まで歩いて向かうことにしました。



第391話 偽装

各務原山の交錯シリーズ 第1章
「かおるさんってホントに可愛いし

オシャレだよね。昨日だってすごくいい香りがしてた。

あれってたしか,“マハーノス”っていうブランドの香水だよ!」


「ふーん,そうなんだ。まぁ年頃の女性だし身だしなみには気を使うでしょ。」



まさらちゃんは得意げになって,説明を続けますが・・・。



「“マハーノス”って言うのはマリン・ハー・・・。」



リク君はまさらちゃんのオシャレ話には

ついていけず,興味を示しませんでした。





「でも,今日は香水付けてなかったみたいだね。」

「仕事中だからだろ。」



彼らは大通りの歩道を南に向かって

歩き,中野木大学へ向かっていました。



すると,リク君たちは後ろから急に声をかけられました。



みんなが振り向くとそこには一人の青年が立っていました。



その青年は単身痩躯で,朱色のサラサラなロングヘアーを

風になびかせ,まるで女性のような顔立ちの優男でした。



とても童顔で年齢はかなり若く見えました。



彼は背中に魚釣りで使う竿を入れる黒くて

大きいロッドケースを背負っていました。



しかし,服装は襟付きの半そでに動きやすい茶色の

綿パンでしたが釣りに行く格好には見えませんでした。



「綺麗な人・・・。男性・・・だよね。」



まさらちゃんは少しうっとりしていました。



「何かご用ですか?」



リク君が聞きました。



優男「道に迷ってしまったんです。この辺りは

土地勘が無いのでよければ助けて欲しいんです。」



みんなは一瞬,お互い目を合わせた後で,



「レオンさんとの待ち合わせ時間に間に合いますかね。」

「でも,この人困ってそうだよ。助けてあげようよ。」



まさらちゃんがそう言うと,



「そうだね。まだ時間もあるし,大丈夫だよ。」

「それで,どこへ行きたいんだ?」



イツキ君が青年に聞くと,



優男「えっと,二十町公園まで行きたいんだ。」



彼はポケットから地図を取り出すとみんなに見せました。



「あ,そこならそんなに遠くないよ!」



まさらちゃんはのりのりで道案内する気になっていました。



「こんな暑い時間にまだ歩くのか・・・。」



トシ君はすでにヘトヘトになっていました。



一つ隣の大通りに出て,目的の

場所まで向かうことにしました。



「・・・。」



一番後ろを歩くイツキ君が何やら考え込んでいます。



「どうかしたの?」



隣で歩いていたリク君が声をかけました。



「いや,地図で見せてもらった場所に何の用があるんだろ?」

「さぁ・・・。」



大きな交差点の信号を渡り,商店街の横をすり抜けていくとだんだんと

道が狭くなっていき,古い民家が立ち並ぶ地域となっていました。



優男「へぇ,みんなは少年昆虫団っていうんだ。

いつも色々な虫を採集しているの?」



みんなは歩きながら自分たちの

ことを話したりしていました。



「背負っているのロッドケースですよね?しかもシマオ製のメーカー品!

魚釣りの帰りですか?それにしては他の荷物がないみたいですけど。」




優男「ああ,これは借り物でね。そこへ

行って返さないといけないんだ。」



さらに歩き続けると,昼でも人通りも

減り,薄暗い雰囲気になってきました。



時々,荒れ果てた田畑や途中で中断

された工事現場などもありました。



「ホントにこっちであってるのー?」

「多分,住所と地図からするともうすぐなんだけどねぇ・・・。」



そして優男が行きたかった場所にようやく到着しました。



第392話 慟哭

各務原山の交錯シリーズ 第1章
地図に示された場所は二十町公園でした。



公園を囲むように黄,黒模様のフェンスが立っていました。



どうやら取り壊しが決まっている古い公園のようです。

優男はフェンスの入り口を開けて中に入っていきました。



優男「みんなもこっちへおいで。」



ニコっと笑う姿は愛くるしく,

まるで女性のように見えました。



「うん。せっかくだから最後まで付き合うよ。」



少年昆虫団は彼に連れられて奥のほうへ入っていきました。



「こんなところがあったんだね。」

「でもよ,こんなところに何の用があるん

だよ?待ち合わせの人もいないみたいだぞ。」




イツキ君が振り向いて尋ねると

そこには彼の姿がありませんでした。



「え?」



リク君は咄嗟に身の危険を感じて

体をねじるようにして倒れこみました。



そこには日本刀を手にした人物が

リク君に一太刀浴びせていました。



それをリク君は常人ならない運動能力で避けたのです。



「なっ・・・!?」



まさらちゃんの顔が青ざめています。



優男「よく避けられたねぇ・・・!

ちゃんと殺気を消して襲ったのに!」



彼は日本刀を自分の後ろ首にかけるよう

にして,楽しそうにそう言い放ちました。



彼のロッドケースには日本刀が入っていたのです。

これを返しに行くというのは真っ赤なウソでした。



彼は鞘をベルトに差し込み,ロッド

ケースを地面に投げ捨てました。



「ななななな・・・何のつもりですか・・・!!」



すぐ隣にいただぬちゃんは驚いて

腰を抜かしそうになっていました。



優男「さすがは平成のファーヴルっていったところだね。」



「まさか,お前・・・闇組織JFの人間かっ!!!」



リク君はすかさず背中に背負っていた

二本の捕虫網を手にしました。



体の目の前で斜めに交差させ

防御の姿勢をとっていました。



まずは相手の出方を探るときの構えです。



優男「僕の名前は・・・。」



場面は変わって闇組織JFの本部“バベル”のとある一室にて・・・



影「彼は今頃,あの子達に接触して

いるのかな。どうなるか楽しみだよ。」



影は窓から外の景色を

見ながらそう言いました。



影の隣には海猫の今村が立っていました。



今村「ふぉっふぉっ。あなたですか,彼に

平成のファーヴルの居場所を教えたのは。」



影「教えていませんよ。所在地は掴んでいませんからね。ただ,

中野木商店街をうろついていれば出会えるかも,と助言しただけです。」



影は抑揚のない声でそう答えました。



今村「彼は何をするかわかりませんよぉ。生まれついての

戦闘狂であり殺人狂ですからね。山本君と並ぶ組織の武闘派です。」

影「殺しを何より楽しむ人物・・・。

川蝉リーダーのお手並み拝見。」



場面は再び圧倒的な窮地に

陥っているリク君たち・・・。



「東條・・・だと。」





<ユニット“川蝉”リーダー 東條>



そう言うが早いか,彼は第二撃を繰り出してきました。



第393話~第396話

2021/11/27

第393話 狂気

各務原山の交錯シリーズ 第1章
東條「さぁ,避けれるものなら避けてごらんっ!」



軽快な掛け声と共に繰り出される彼の斬撃。

彼の放つ刀さばきは疾く・・・そして重い。



リク君は二本の捕虫網で防御するのが精一杯でした。



「ヤバイ,これってヤバイですよね!」

「もう,いきなりどうなってんだよぉぉ!」



二人はパニックを起こしていました。



「落ち着け!リクは負けない!

とにかく今はレオンさんに連絡だ!」




しかし,レオンさんがイヤコムに出ません。

どうやらまだゼミの実験が終わっていないようです。



ガギギギッ・・・ギギギギッギ・・・。



リク君のすぐ目の前には本物の真剣が迫っていました。

必死に二本の捕虫網をクロスさせて攻撃をしのぎます。



それでも,勢いに押され後ろに吹き飛ばされます。



地面にたたきつけられた拍子に

額を怪我して流血してしまいました。



東條「もっと張り合ってくれないとつまらないよ。僕は

とにかく戦うことが大好きなんだ。そして殺しもね!」



彼がそう言いながら不気味に笑う姿は

「恐ろしい」の一言に尽きました。



「一体何なんだ!なんでリクを襲う!」



東條は振り向いて,



東條「安心して。みんなちゃんと殺してあげるから!

組織に頼めば“行方不明”で処理してもらえるから。」



「そういうこと言っているんじゃないですよ!!」



だぬちゃんも震えながら指摘します。



東條「だって君たちって少年昆虫団でしょ。山本さんや

源田さんが組織の脅威になるって気にしていた!」



彼こそ闇組織JF,川蝉のユニットリーダーで

武闘派と恐れられている人物だったのです。



東條「だから僕が先に殺して手柄を頂いちゃおっ

かなと!山本さんが困る顔,見てみたいんだ!」



一足飛びでリク君に向かってきます。



「リク君~!!」



まさらちゃんが悲鳴に近い声で叫びます。



「うぉぉぉぉ!!!」



リク君の心に闘志が湧いてきました。



―大地二刀流 薔薇十字(ローゼンクロイツ)―



この技は頭部への面打ちと横からの

胴打ちを同時に放つ必殺技です。



ガギギギギィィィィィッ!!!



しかし東條は刀の先で上からの攻撃を防ぎ,

柄の部分で横からの攻撃を防いで見せました。



「リク君の攻撃がっ・・・!!」



東條「面白い技だけど,まだまだ足りないね!」



リク君は後ろに下がり,間合いを取って相手の出方を待ちました。



東條「お礼に僕も必殺技を見せてあげるよ。」




彼は刀を突きのように構え,半身になりました。



東條「東南アジアのゲリラ部隊にいた時に,

この技で何人も突き殺したのはいい思い出だなぁ。」



彼は急に遠い目になりました。過去の経験を

思い出して感傷に浸っているようです。



リク君はその一瞬の隙を見逃しませんでした。



第394話 刹那

各務原山の交錯シリーズ 第1章
東條が見せた一瞬の隙をリク君は見逃しませんでした。



―大空一刀流 青の衝撃(ディープインパクト)―



例のごとく一瞬で視界から消え,上空

から強力な一撃を振りかざします。



東條「なんと!これはすごいっ!」



さすがの東條も驚いていました。



ドォンッ!!!



しかし,リク君の攻撃は地面を叩いていました。



衝撃で周りに土が飛び散り,

その場が大きくめり込んでいました。



「避けられた・・・!?」

「(こいつ・・・疾い・・・!)」



再び背中から捕虫網"月読"を取り出します。

だが,目の前にその男はいませんでした。



「はっ・・・!」



後ろからの気配に気づいて振り返った時,

強烈な斬撃がリク君を襲っていました。



ザクッ!!



「ぐぁぁぁぁ!!」



肩先に激痛が走ります。



東條「凄いな!完全に不意を突いて,

今の一撃で殺したと思ったのに。」



リク君は超人的な反応速度で致命傷をかわしていました。

しかし,右肩からは血がしたたり落ちていました。



ポタ・・・ポタ・・・ポタ。



「どうしよっ・・・。リク君が

このままじゃ死んじゃうよ。」




まさらちゃんはトシ君のTシャツに

しがみつき,泣きそうになっていました。



「・・・。」



リク君はめげずに反撃に出ます。



しかし,どの攻撃も当たること

なく,受けられるかかわされます。



「はぁはぁ・・・。なんて,迅さだ・・・。」



ドンッ!!



東條が再びリク君の肢体めがけて切っ先を放ちます。



「ぐっ・・・!(迅さと重さを兼ね備えた攻撃・・・。)」



「まさに刹那のように動く男だ・・・。」



イツキ君達はこの戦いをただ傍観(ぼうかん)するしかありませんでした。



東條が先ほどの構えを取ります。



次の瞬間,間髪入れずに向かってきました。



今度は彼の必殺技が放たれました。



東條「さぁ,一緒に悪夢を見よう!」



―悪夢の最大破局(ナイトメア・カタストロフィ)―



それは強力な一点への突きでした。



刀の長さに対して不釣り合いなほど

長く伸びた衝撃が相手を突き刺します。



まるで世界最後の破局の日に訪れると

言われる大きな彗星の尾のようでした。



「グワワァァァァァァァ!!!!!」



第395話 余波

各務原山の交錯シリーズ 第1章
東條の放った必殺技の一つ,“悪夢の最大破局”は神速

ともいえる迅さで岩をも砕く威力の突きでした。



「グワワァァァァァァァ!!!!!」



リク君は5mほど吹き飛ばされ公園に生えていた

樹木に背中を打ち付けてその場に倒れこみました。



リク君は直撃を受けたかと思ったのですが,生きていました。



東條「へぇ,君ってなかなか仲間想いなんだね!」



東條の後ろにはトシ君がしがみついていました。



「リク君を・・・死なせは・・・しないぞ!」

「トシ君!!何をやっているんですかっ!?」



だぬちゃんが叫びました。



東條が大きく力を入れると,トシ君は

その迫力に気圧されて吹き飛びました。



「グヘッ・・・。」

「お前,死ぬ気か!」



イツキ君が激しく叱責すると,



「ごめんよぉぉ。いてもたっても

いられなくて,なんか体が勝手に動いて!」


「だが・・・よくやった。今のお前の行動は

もしかして日本を救ったのかもしれん・・・。」




イツキ君はトシ君の肩を叩き,

精一杯の言葉でねぎらいました。



「うぐっ・・・。うぐっ・・・。」

「まさら,トシは強くなったぞ。」



今度はまさらちゃんに話しかけました。



「え・・?」



涙をぬぐって,イツキ君を見ました。



「今度は俺たちが強くならく

ちゃだめだ。いつもリクに任せきりだ。」




まさらちゃんは涙目のまま強くうなずきました。



「うん・・・。もう泣かない!リク君を助ける!」

「だぬもがんばりますよ!」



4人は少し離れた位置に立っていた東條に大声で叫びました。



「おい,俺と勝負しろ!」





イツキ君には勝ち目がないことはわかっていました。



そもそもの力量差,そしてイツキ君に

は戦える武器を持っていませんでした。



それでもリク君を救うためには

この男を止める必要がありました。



「ぐ・・・だめ・・・だ・・・。逃げろ・・・。

あいつは強い・・・。みんな死んでしまう・・・。」




リク君は山犬の山本と名駅の地下ですれ違った

時よりもさらに大きな恐怖を感じていました。



これほどまでに東條という男が強かった

とは想像することができませんでした。



東條「殺す順番が変わっちゃうけど,まぁいいか!!」



ためらいもなく人を殺してきた目。



笑顔の奥には冷徹な殺人者の顔が垣間見えました。



リク君は必至に体を起き上がらせます。



しかし,リク君と東條の距離よりも東條とイツキ君の

距離の方が近く,このままでは間に合いません。



「ぐおおおおおっ!!!」



リク君はイチかバチか,二本の捕虫網を大きく振り回しました。



「頼む,間に合ってくれー!!」



東條はじっと構えるイツキ君の気持ちをいたぶるように

一歩一歩近づいて恐怖心を植え付けていきました。



その時です。

彼の髪が少し揺れました。



何かの気配を感じたのか,振り向いて

みましたが何もありませんでした。



東條「(気のせいかな・・・。)」



再びイツキ君に近づこうとすると・・・。



背中に大きな衝撃を受けて,思わず

態勢を崩してしまいました。



一体,何が起きたのか・・・。



第396話 背水

各務原山の交錯シリーズ 第1章
東條は背中に大きな力を加えられ,体勢を崩しました。



そこには10mほど離れた場所に

リク君が瀕死の状態で立っていました。



東條「まさか,今のは君が?」



「はぁはぁ・・・。やっぱり,

うまくできないか・・・。」




リク君はどうやら今まで使った

ことのない技を放ったようです。



東條「ちょっとびっくりしちゃったけど,

全然,たいしたことない技だね!」



「ほっとけ・・・。まだ未完成なんだよ。

大地・・・大空・・・そして・・・。」




リク君は満身創痍ながら天照を

東條めがけて伸ばしました。



―大地一刀流 神速の打突―



東條はなんなくかわしますが,彼と

イツキ君を離すことに成功します。



「リク!大丈夫なのか!?」



イツキ君が心配しますが,



「ありがとう,みんな!オレは

まだ戦える!絶対に勝つ!!」




リク君に再び闘志が戻ってきました。



二人は間合いを取り,向かい合い

ながら廃グラウンドを駆けています。



東條「君って楽しいね!こんなに楽しいのは中東での

ゲリラ戦の時に一人で百人斬りをした以来かも!」



「このクソ殺人鬼めっ!!!」



リク君は話を聞いているうちに

怒りがこみ上げてきました。



東條「何か誤解をしているようだけど,戦争ってそういう

ものなんだよ!僕はそこに楽しみを見出しているだけさ!」



一足飛びでリク君に襲い掛かってきますが,

必死で間合いを取り,攻撃を避けます。





東條「少しは僕の攻撃に目が慣れてきたみたい

だね。じゃあ,もっとスピードをあげるよっ!」



「何っ!?」



リク君が瞬きをした一瞬の間に視界から彼が消えました。

気づくと,真上から真剣を両手に持ち,振りかざしてきました。



辛うじて攻撃をかわしますがそれが精一杯でした。



イツキ君たちはそれぞれができる

ことをしようとしていました。



まさらちゃんとだぬちゃんはレオンさんに

何とか連絡を取ろうとしていました。



イツキ君とトシ君はリク君がまた倒れこんだ時に,いつでも

助けに入れるようにタイミングを見計らっていました。



そして一途の望みでリク君が

東條に勝つことを願っていました。



しかし,現実は酷でした。



リク君はグラウンドの端まで

追い込まれ,まさに背水の陣でした。



東條「よく,ここまでがんばったよ!

実は僕ってかなり強いんだよ!」



「ああ・・・だろうね・・・。。」



リク君はグラウンドの端にある大きなクヌギ

の木を背にしてもたれかかっていました。



東條「こう見えて組織では一番強いからね!」



「え・・・!?なんだと・・・!?」



リク君はその言葉を聞いて,驚きを隠せませんでした。



第397話~第400話

2021/12/18

第397話 悪夢

各務原山の交錯シリーズ 第1章
昆虫団の4人はリク君の元へ駆け寄りました。



東條も襲いかかってきませんでした。



どうせ殺すならまとまっていた方が

やりやすいと思ったのでしょうか。



「今,こいつなんて言った・・・?自分が一番強い・・・?」

「そんな,御前が一番強いんじゃないんですか・・・!?」



だぬちゃんが御前という名を出すと,

東條は急に大声で笑いだしました。



東條「アハハハハ!ウソ,ウソ!正直に言うと悔しい

けど組織で僕より確実に強い人は・・・二人いるよ。」



「一人は御前として,もう一人は山犬の山本・・・か!?」



リク君が問いただすと,東條は,



東條「あの人とは戦ったことはないけど,僕と互角か

僕の方がちょっと強いと思うんだけどなぁ!」

「(山本じゃない!?こいつより強い

やつが組織内に二人もいるのか!?)」




リク君は渾身の力を振り絞り,構えを取りました。



東條「ま,あくまで僕の主観ですから!キラーさんも

きっと自分の方が強いと絶対に思っているでしょうし!

それに直属護衛の“あの四人達”も・・・。」

「冥界の悪魔(キラー),直属護衛の四人達・・・?

どいつもこいつも化け物みたいに強いってわけか。」




東條は標的をリク君に定めなおしました。



東條「時間稼ぎのおしゃべりはここまで。

僕の愛刀“ナイト・メア”で血祭りにしてあげるよ!」



さらに超人的な速度で間合いを

つめて斬りかかってきました。



リク君は瀕死の状態で,相手の

攻撃を受けることが精一杯でした。



東條「やるね!」



しかし,彼の第二撃,第三撃が

波状攻撃のように繰り出されます。



「おい,東條!!」



イツキ君が戦っている二人の後ろから叫びながら声をかけます。



東條「なんだい?昆虫団の・・・誰かさん。今,

いいところなんだから邪魔しちゃだめだよ!」


「俺の名前はイツキだ!覚えておけ!」



イツキ君が虚勢を張ります。



「御前は・・・御前はどんな

奴なんだ!お前たちの目的は何だ!」




東條は手を止めました。



リク君はすかさず,後ろに下がって間合いを取り直します。



「俺はこう見えて,お前たちが持っている

ノアの書,研究書を読んだことがある。」




イツキ君はとにかく時間を稼ごうと,何か話題を探しました。



東條「へぇ,あれを読んだんだ。すごいね!

僕にはちんぷんかんぷんだったよ!」



東條はイツキ君に愛刀を向けます。



いつの間にか彼の立っている位置はリク君と

イツキ君のちょうど真ん中になっていました。



挟み撃ちのような状態になっている

にも関わらず極めて冷静でした。



東條「組織の目的・・・!勝手にしゃべると色んな人に怒られ

ちゃうからねぇ!でも何も知らずに死ぬのも可愛そうかなぁ!」



彼は少し考えるしぐさをして,



東條「じゃあ,ヒントだけ。・・・―,―・・・ってことかな。」

「どういうことですか!?全然わからない

んですけど!!分裂!?統一!?」






だぬちゃんが思わず声を荒げました。



東條「答えはあの世で考えてね!」



彼は大きく振りかぶり,隙のない構えを取りました。



東條「もう一つの必殺技で今度こそ,殺してあげるよ!」



―悪夢の瞬間(ナイトメア・タイム)―



攻撃を向けられたリク君は背筋が

凍るような殺気を感じました。



東條は超攻撃的な迅さで突進してきました。



リク君にはすでに東條の攻撃を避ける

だけの力は残っていませんでした。



東條「これで死なせてあげるよ!」



東條は左から真横に切るような剣閃で斬りかかってきました。



ガキィィィィン!!!



東條の攻撃は何か別の金属に当たり,防がれました。



どこからか投げられた1mほどの工事用鉄パイプが地面にささり,

そのパイプが東條の剣閃からリク君の身を守ってくれたのです。



東條は思わず投げた人物に目を向けました。



その人物とは・・・。



第398話 交錯

各務原山の交錯シリーズ 第1章
リク君のピンチを救ってくれたのは・・・。



東條「あらら,せっかくいいところ

だったのに!今日はよく邪魔が入るなぁ!」



彼の向けた視線の先には・・・。



「遅くなってすまない。」







レオンさんが立っていました。



その横には同期の紺野さんも一緒にいました。



紺野「おいおい,こりゃどういうこった・・・。」



彼は少年昆虫団の元へ駆けつけました。



「・・・。誰だ・・・!?」

「彼の自己紹介はあとにしよう。

今はこの場を乗り切ることが大事だ。」




レオンさんはリク君の元へ

駆けつけ,彼を抱きかかえました。



「すまない。まさかこんなことになっているとは。」

「気を・・・付けて・・・。こいつ,めちゃくちゃ強い・・・。」



リク君はやっとのことで声を振り絞りました。



「ああ,知っているよ。戦ったことがあるからね。」





みんなはそれを聞いてびっくりしました。



「え!?この人と戦ったことあるの!?」



トシ君は思わず聞き直してしまいました。



「こいつの名前はJFのユニットリーダー,東條・・・。」



東條「誰かと思えば,貴方ですか,小早川さん!各務原の

一件以来ですね。あの時の決着でもつけに来ました?」



東條は右手に持っていた刀を

下にさげて構えを解きました。



ただ,その姿に隙は全くありませんでした。



紺野「やっかいな奴にはちあったな。」



紺野さんは4人を守るように立っていました。



東條「ちなみに貴方のお父さんを殺したのは

山本さんですから!僕は関係ないですからね!」



ヘラヘラと笑いながらしゃべる姿に,



「誰だろうと関係ない!お前たちは全員潰す!」



父親のことに触れられ,彼は

いつも以上に激昂していました。



「レオンさん,教えてくれ。こいつは一体・・・。

レオンさんがこいつと戦った時のことも知りたい。」




リク君は多少,体が回復したようで,

自分の力で立つことができました。



東條「せっかくですから教えてあげようか!

冥途の土産は多い方がいいでしょ!」

「冥途の土産にするつもりはないが,リク君たちも

あの時のことを知っておいた方がいいと思う。」




レオンさんは東條が攻撃してこないか警戒しなが

らも彼と戦った一件について話し始めました。



「もしかして,各務原山でのできごとに

ついてか!?確か俺たちも山犬と遭遇したぞ!」


「そうだったね。前に聞いた時,実は驚いていたんだ。まさか

あの時,赤神さんが見つけた子供たちがみんなだったとはね。」




なんと,赤神氏は各務原山でリク君たちを目撃していたのでした。



東條「あの日の僕たちの動きについても教えてあげるよ!」



菊の人間,闇組織JFの人間,そして少年昆虫団が交わった

各務原山での一件の全てがここで明らかとなるようです。



 各務原山の交錯シリーズ ~第1章~ 完







第399話 真夏のサンタクロース7
―西緑地公園にて―



真夏のサンタと思われる人物は少年昆虫団と警ら中の警察官に囲まれ,

持っていたマチェットという武器で自分の胸を刺し,自決しました。



すぐに応援の警察官が駆け付けて現場検証が

行われ,周囲は封鎖されることになりました。



少年昆虫団は現場に駆け付けた刑事たちに事情を説明しました。



また,リク君は彼の死体を見ていて何か違和感がありました。



「さっきからどうした?」

「いや,何かおかしくないかな?どう見ても無差別殺人だよね。

そんなことをする奴が簡単に自殺なんてするかな?」




リク君は違和感の正体を探っていました。



「でも,私たちの目の前で死んだよね・・・。どう見ても自殺だったよ・・・。」



まさらちゃんは先ほどのシーンが脳裏に焼き付いて離れないようです。



「頭がおかしくなったとか・・・。」

「やはり三田クリスの亡霊が乗り移って自殺させたとか・・・!」(第301話参照)



二人はそれぞれの予想を口にしました。

現場の刑事が横たわっていた真夏のサンタの変装をとりました。



年齢は30歳前後の男性で中肉中背,目つきは鋭く

まるでこちらを睨んでいるようにさえ見えました。



「見たことない顔だが,指名手配とか・・・なのか・・・?」



彼らは警察から事情を聴かれていたため,

すぐ近くで遺体を見ることができました。



「うーん・・・。もうちょっと近くで見てみたいな。」



リク君がさらに近寄ろうとしましたが,近くの警察官に止められてしまいます。



「子供が見るものではない。」,と

至極まっとうな意見を言われて・・・。



「仕方ないな・・・。」



リク君はイヤコムで誰かと連絡を取りました。

5分も立たないうちに連絡相手がやってきました。



「お待たせ。」



少年昆虫団に声をかけてきたのはレオンさんと赤神氏でした。



赤神氏は現場の刑事に警察手帳を見せて

中に入り,リク君たちと接触しました。



赤神「ちょうど,翠川の自宅に一緒にいたんで,来させてもらったよ。大変だったな。」



レオンさんは倒れている男を見て,何かに気付いたようです。



「赤神さん,この男・・・。」



レオンさんがイヤコムの端末を使って警察のデータベースを起動しました。



そこには目の前で倒れている人物と同じ顔が映っていました。



「この人って,犯罪者なの・・・?」



と,まさらちゃんが聞きました。



赤神「こいつは,日本人じゃなく大陸系の人間だ。大陸の

元革命派メンバーで世界中に指名手配されている人物だ。」



赤神氏の話によると,数年前に組織から姿を消し,行方不明に

なっていたそうで,当局も捜査に手を焼いていたそうです。



グループ内では過激派三兄弟の一人と呼ばれていたとのことです。



「ん?なんか甘い香りがするな・・・。」



現場の捜査員の方が,「その理由はおそらくこれです。」と

言って遺留品を提示しました。





それはタバコでした。



「大陸系のタバコか?一般には出回っていない銘柄なんだろうか。」



やがて現場検証が終わり,遺体は運ばれて行きました。



「とにかく,これで真夏のサンタが現れることはもうないってことだよね。」



まさらちゃんは少し安心していました。



「まぁそういうことですよね。」



だぬちゃんも同じ気持ちです。



果たしてこれで全て解決したことになるのでしょうか・・・。



第400話 連載400話突破記念!
編集:今回は400話突破記念&HPリニューアルということで,第1話のリメイクを掲載します。

リニューアルによって新しく訪れてくれる人もいるかと思います。

一度読んだ人(D氏)も再度,新旧の第1話を読み比べてみてください。

O(作者:おりぃ):もう400話ですか。掲載を始めたころは家族も応援してくれていました。

今ではすっかり,「まだやってるの?」状態ですよ!



編集:記念すべき第1話の裏話や初期設定など聞かせてもらえますか?

O:当初の予定ではブラック・インパクトの話で終わる予定でした。

その名残で,16話でリク君が「僕たちの虫捕りは始まったばかりだ!」

みたいな最終回に良くある発言をするんですよね。



編集:それが予定が変わったんですね。

O:ブラック・インパクト編を描くにあたって色々と深い設定を考え始めたらいつの間にか400話!



編集:第1話ではリク君たちのイラストは登場しませんよね?

O:これは,作者の意図としては読者(D氏)に主人公たちのイメージを

自分で想像してもらいたいなぁと思ってあえて出しませんでした。



編集:なるほど。

O:特例としてだぬちゃんのモチーフになる人物だけは描いたんですけど,

ただの真っ赤なトマト星人になっていますねw

あのイラストは今ではまさらちゃんの見間違いということになっています!



編集:今回のリメイクは?

O:全員,このために描き下ろしましたよw



O:台詞に関しては,現在の設定と比べて最小限の修正をしました。

もちろん,シナリオに支障はないようになっています。



編集:だぬちゃんは現在とキャラが変わっていますよね。

O:当初はだぬちゃんを狂言役にする予定だったんですが,

トシ君が出てきてくれて全部引き受けてくれましたw



編集:そういう経緯があったんですね。

O:はい。



編集:それでは「黒と黒のクラッシュ -予兆編-」になります。



黒と黒のクラッシュ -予兆編-



7月の暑い太陽がじりじりと照りつける中,

4人の子供たちが 旭(あさひ)森林公園という大きな公園に来ていました。



この公園の中には大小様々な遊具がある広場と二つの池が点在しています。

また遊歩道も整備されていて多くの人が利用する場所となっていました。



彼らは少年昆虫団というチームを結成して,

様々な昆虫採集を目的とするチームでした。



このチームのリーダーの名前はリク。





<少年昆虫団リーダー リク>

彼は背中に捕虫網というアミを2本背負い,

黄色の帽子を後ろ向きにかぶっていました。



彼らは4つある入口のうちの東側から入っていき,

遊歩道を歩いて公園の中心にある雑木林を目指していました。



目的はカブト・クワガタ採集のための下見です。



リク君の隣を歩いている少年の名前はイツキ。





<少年昆虫団 イツキ>


背が高く,髪を真ん中で分けた目つきの鋭い少年でした。



「暑いよ~。こんなところにカブトムシなんていませんよぉ~!」



一番後ろで泣きごとを言っている少年はだぬ。



細目で髪の毛をツンツンさせた礼儀正しい少年でした。



「きっといるよ。この木を見てごらん。」



リク君は立ち止まって,道の脇にはえていたクヌギの木を指差しました。



「あ,樹液が出てる。」



しゃがみこんで樹液が出ている部分をじっくりと観察している少女の名前はまさら。

少年昆虫団で唯一の女の子です。





<少年昆虫団 まさら>


水色の髪をした目の大きな可愛らしい子です。



「そういうこと。この木は樹液をエサにしているカブトムシが集まる木ってわけさ。」



リク君がだぬちゃんのために説明をしていたのですが,

彼の姿がいつのまにか見えません。



「あれ・・・。あんな所に展望台がある!だぬは登ってみたいと思うよ。」



そう言って,公園の中にあった展望台へ走って行きました。





<少年昆虫団 だぬ>

「だぬちゃん!遊んでないで樹液の出ている木を探そうよ!」



まさらちゃんが呼びかけますが,彼の耳には入っていないようです。



「なんか木の陰に怪しい人がいますよ!」



展望台から周囲を見渡していた彼は突然,

わけのわからないことを言い始めました・・・。



「まさらの呼びかけを聞いてないな・・・。」



イツキ君が呆れています。



「あやや・・!あんな所に,すべり台を発見しました。」



今度は展望台の横にあった遊具へ駈け出して行きました。



「おいおい。」



さすがのリク君もだぬちゃんの行動についていけませんでした。



三人はだぬちゃんをしばらく遊具で遊ばせる

ことにして周囲の樹木を調べることにしました。



すると,まさらちゃんが地面にある何かを見つけました。



「ねぇ,これってなんだろう?昆虫が死んでいるみたいだよ。」



リク君とイツキ君がまさらちゃんの元へ駆けつけました。



「これは・・・。」



リク君はまさらちゃんが発見した昆虫のかけらを拾い上げました。



「これはノコギリクワガタのあごだね。」

「アゴだけ・・・。もう死んでいるんだよね?かわいそう・・・。」



まさらちゃんはちょっと悲しい気持ちになりました。



「おそらくカラスにでも食べられたんだろう。」



イツキ君は冷静に分析しました。



「でも,クワガタさんの死体があるってことは,

ここにはカブトムシさんやクワガタさんがいるってことだよね。」


「おそらくね。やはりこれは夜に行ってみる必要がありそうだね。」



リク君は気持ちがたかぶって嬉しくなってきました。



彼にとってカブトムシやクワガタムシを採集できることは,

何よりも楽しいことだったのです。



その時,遠くから水の中に何かが落ちる音がしました。



「あ,だぬちゃんが池にはまってるよ。」



まさらちゃんは遊具の隣にあった池にだぬちゃんが落ちる瞬間を目撃しました。



「ほっとけ。」



と,イツキ君が言いましたが,



「おいおい。それはさすがにダメでしょ。」



と,リク君がフォローし,

彼らがすぐに救出に向かったのでだぬちゃんは無事でした。



池から救い出された彼は,



「わ,わざと落ちたんですよ!」



と,威勢の良い言葉で返しました。



その言葉に対してイツキ君が,



「無駄にプライドだけは高いな。」



と,半ばバカにしているようでした。



少年昆虫団は公園を一周して入口まで戻ってきました。



「それじゃあ,とにかく,今夜!20時にボクの家に集合ね!」



リク君だけがとにかく張り切っています。



場面は切り替わり,先ほどだぬちゃんがいた展望台の付近にて・・・。



一人の怪しい男が周辺の樹木を探っていました。



彼はやせ細っていて顔色は悪く,遠目

からでも少し怪しい動きをしていました。



どうやらだぬちゃんが“怪しい人がいる”と

言っていたことは本当だったのです。



この公園の近くにはもう一つ大きな公園があります。

その公園の名前は“和平公園”と言いました。



その和平公園の奥の奥・・・。

誰も普段は通らないような雑木林の中にて・・・。



ここでも木の陰で何やら怪しい人たちが会話をしています。

そこには二人の男がいました。



???「この辺りも数が減ってきましたね・・・。」



と,煙草を口にくわえたガタイの良い男が,

黒い帽子をかぶった男に話しかけました。



???「ちょうどいいじゃねぇか。」



彼は黒い帽子をかぶり,黒いスーツで身をかためていました。

その男がニヤッと不気味に笑いました。



旭公園にいた不審な人物とこの二人は何か関係があるのでしょうか。



果たして彼らの目的は・・・。



このお話の続きは第2話をご覧ください。







過去の掲載順へ

TOPページへ