もう何年も前の話になるんだけど,
同窓会で久しぶりに再会した友人と飲んでいた時。
話が盛り上がって心霊スポットに行こうって話になった。
で,酒を飲まなかったAがドライバーになった。
車は中古であったが,結構人気の車種で,
この前も親戚の小学生に羨ましがられたらしい。
ほっておくとずっと車に触っているよう
だったので,注意したこともあるそうだ。
それはともかく,その車で山神トンネルって
いう場所へ出かけたんだ。
メンバーは私とドライバーのAと
幽霊など信じていないBの3人だった。
Bは幽霊が出たら,捕まえてやると意気込んでいた。
ダラダラと深夜のドライブをしている内に,
噂のトンネルの近くまで来たんだ。
お互いにいい大人だし,いまさら心霊スポットなんて,と
私は思ったが,話のネタにって感じのノリで盛り上がっていた。
いよいよ入り口まで来ると,中は暗いが
オレンジのランプはついていて,
幅は車2台が通れるほどの広さで,長さは
入り口から出口がなんとか見える程度だった。
近くに川が流れているようで,暗闇に響く,
水の音がなんとも不気味だったことを憶えている。
ドライバーのAはふざけてトンネル内で
クラクションを鳴らし,ゆっくりと進んでいった。
途中まで進んだところでAが異変に気付いた。
外で何か変な音がすると言い出した。
車を止めて,3人は車から降りた。
しかし,特に異変はない。
私は何もないじゃないかと言った。
しかし,Aは確かに変な音が聞こえたという。
Bは笑いながらAの肩に手をかけていた。
どうやら心配するなと言いたいようだった。
しかし,3人が車に戻ろうとした時,全員がその場で凍りついた。
なんとボンネットに真っ赤な手の跡が多数ついているのである。
Aが悲鳴を上げた。さすがのBも一気に酔いが
覚めたらしく表情は青ざめていた。
私がすぐに,車を出せと行った。
無我夢中で車を走らせ,しばらく進んだ先のコンビニで
車を止めて,再びボンネットを確認してみた。
しかし,そこにはどこにも手の跡などついていなかったのである。
それでは,私を含め,3人がトンネルで見たあの手の跡は
いったいなんだったんだろうか。
一説にはあのトンネルは昔,小さい子が事故に会い,
未だに成仏できずにさまよっているという噂もあるらしい。
稲川「皆さんもトンネルを通るときは十分に注意してくださいねぇぇ。