リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第129話~第132話

2016/5/12

第129話 ノアの書を探せ

ノアシリーズ最終章
イツキ君は公園で闇組織ジャファの一味である影(シャドー)と

その部下に捕まって失踪してしまいました。



影はイツキ君の身柄の交換条件としてノアの書を求めてきました。



しかし,イツキ君の部屋にはノアの書がありませんでした。



「いったいどこにあるんだろ・・・。」

「・・・。」



リク君は真剣な表情で何かを一生懸命に考えています。



「ところで,この脅迫状にある取引のメンバーって

僕はその現場にいたらまずいのかな?」




レオンさんは少し困った表情でした。



「レオンさんには他にやってもらいたいことがあるんだ。

中野木図書館へ行ってきてほしい。」




リク君はレオンさんに言いました。



「なるほど,裏をかいてイツキ君があらかじめ

図書館に隠している可能性はありますね。」


「わかったよ。それと,ここの部屋の・・・。」



レオンさんは何かの機械をポケットから

取り出して,スイッチを入れました。



そしてこの家に仕掛けられていた盗聴器をすべて外しました。



「レオンさんってホントに何でもできるんだね。」

「まぁね。こういうことは慣れているからね。」



レオンさんは得意げになりました。



「じゃあ,オイラは図書館に行ってるから。

何かあったらイヤコムで連絡してね。」




そう言ってレオンさんは出ていきました。



「さて・・・。」

「今,朝の7時だから,あと12時間くらいしかないよ!」



イツキ君のお母さんがお茶を持って戻ってきました。



「きっとイツキ君は僕たちが見つけます。

それまで,お母さんはここで待っていてください。」




イツキ母「え?」



イツキ君のお母さんは少し驚いてリク君を見つめました。



「わたしたちに任せてください!じゃあ行ってきます。」



まさらちゃんは笑顔でそう言って部屋から出ていきました。



電柱の裏にいた人物はいつの間にか姿を消していました。



時間は少し遡ります。



イツキ君は影に捕えられ,どこかわからない古い倉庫に

手足を縛られて監禁されていました。



「(くっ・・・。)」



あたりを見回すと5,6人の大人が

少し遠くからイツキ君を見張っているようでした。



しばらくすると影が入ってきました。



影「ご苦労。」



見張っていた人物に声をかけると,

そのままイツキ君に近づいてきました。



影「久しぶりだね。」



「てめぇ・・・。」





イツキ君は影を睨みつけました。



手足を縛られ,寝転がっている状態では

睨みつけることしかできなかったのです。



影「さきほど,身体検査をさせてもらったが,

ノアズアークがどこにもなかった。」



影は不敵な笑いを浮かべながら,

イツキ君の顎をしゃくりあげました。



イツキ君はどうなってしまうのでしょうか。



第130話 交渉

ノアシリーズ最終章
暗い倉庫の一室で影(シャドー)とイツキ君が対峙しています。



といっても,イツキ君は体の自由がきかない状態です。



影「久しぶりだね。」



影はイツキ君が所有しているノアの書を探していました。



「残念ながら,ここにはない。ある場所に隠してある。」



影「それは興味深いね。」



影はイツキ君の顎をしゃくりあげ,尋ねました。



影「どこに隠したのかな?」



「言うはずないだろ。」



すると影はイツキ君の顔を力づくで押さえつけました。



影「あまり,手荒なことはしたくない。」



影はそのままその場から出ていきました。



「(ノアの書・・・。大丈夫だろうか・・・。

頼んだぞ,リク,みんな・・・。)」




影はイツキ君がノアの書を持っていなくても

計画に支障がない自信があるようです。



影「(メンバーのだれかが持っているか,

どこかに隠しているかのどちらかだ。少し脅せば出てくる。)」



イツキ君は疲れもあり,そのまま眠ってしまいました。



― 一方リク君たちは ―



みんなはイツキ君が立ち寄りそうな場所を

探してみますが,なかなか見つかりません。



「疲れたよ~。暑いし・・・。」

「弱音を吐いてどうするんですか。イツキ君の危機なんですよ。」



だぬちゃんはトシ君に言い聞かせました。



「わかっているよ~。」

「少し休憩しよう。」



リク君たちは六町公園で休憩することにしました。





「そういえば取引場所って八町公園だったよね?」

「ああ,もうすぐ取り壊されるから現在は

立ち入り禁止になっている公園だね。」




八町公園はこのすぐ近くにある野球グラウンドのある公園でした。



間もなく取り壊しの工事が始まるため,

現在は柵に覆われ,立ち入り禁止になっています。



「影もなかなか考えますね。そんなところで取引とは・・・。」

「警察に知らせたらイツキ君殺されちゃうのかな・・・。」



まさらちゃんはイツキ君の身を常に心配していました。



「そうだね,警察には言わない方がいいと思う。

これは僕たちだけで解決しなくちゃ。」




その時,レオンさんからイヤコムに連絡が入りました。



「ノアの書なんだけど・・・まだ時間がかかりそう。あと1日あれば・・・。」



「わかった・・・。」



話し終わるとイヤコムを切りました。

そこにいた全員が内容を聞いていました。



「まだ,みつかってないってことかな。」



まさらちゃんは心配そうにしています。



「こうなったら八町公園に行ってみよう。

そこで影と交渉するんだ。あと,1日待って欲しいって言ってみよう。」




リク君たちは指定の時刻に八町公園のグラウンドへ到着しました。



するとそこには・・・。



第131話 影現る

ノアシリーズ最終章
八町公園のグラウンドには人影がありました。



それは影でした。



仮面をかぶっているため,素顔はわかりません。



影「久しぶりだね。少年昆虫団諸君。

約束通り,君たちだけで来たみたいだね。」



影は落ち着いた様子で話し始めました。



「イツキ君は無事なんですか!?」



だぬちゃんは影にイツキ君の安否を訴えます。



影「安心したまえ。ノアズアークさえいただければ,彼はお返しするよ。」



「本当・・・!?」



リク君は公園の茂みに気配を感じました。



万が一,影に手を出せば,組織の仲間が加勢に出るかもしれません。



「(なんとか交渉をしなければ・・・。)」



影は手を差し出し,ノアの書を要求する仕草をしました。



「そのことなんだけど・・・。」



リク君は本題に入りました。



「実は,イツキ君がノアの書をどこかに隠したみたいで,

まだ見つかっていないんだ。

だから,もう1日待ってほしい。

必ず探し出して,アンタのところへ持っていく。」




影はしばらく考えこみました。



影「そんな手に乗るとでも思ったのか?さっさと出すんだ。」



「ホントにないの!みんなで一生懸命探したんだから!」



影はまさらちゃんを見ました。



影「どうやら手元に無いというのは本当のようだ。

そもそも取引を引き延ばしても君たちにメリットなどないはずだしな。」



再び影は沈黙しました。



影「いいだろう。あと1日だけ待ってあげよう。

ただし,あと1日だけだ。

明日のこの時刻にノアズアークが手元に無ければ,

彼と二度と会うことはできないと思ってくれ。」




「わかった・・・。」



影はそう言うとその場から去ろうとしました。



「待てっ!」



影は振り返り,リク君を見ました。



影「まだ何か用かな?」



「今回の計画はアンタ一人では実行できないだろ。

他にも計画を手助けする仲間がいるのか!?」




影「仲間ではないが,今回の計画のために用意した兵隊ならいるよ。」



「兵隊・・・?」



影「そう,ユニット“森熊”の源田氏に依頼をして

洗練されたコマを用意してもらったのさ。」



「(森熊・・・。源田・・・。)」



影「世間ではジャファ警備保障となっているが,

一部のメンバーには裏で暗殺などの特殊訓練を受けさせている。

君たちがかなう相手ではないよ。だから明日までに

おとなしくノアズアークを持ってくるんだね。」






影はそれだけ言うとその場から去りました。



「怖かった~。」

「ですね・・・。」



二人はかなり緊張していたようです。



「オイラは別に緊張していないよ!」



トシ君は相変わらず,マイペースでした。



「さて,これからイツキ君の家に行こう。」



リク君はこれからすべきことを説明しました。



「そっか,イツキ君のお母さんに伝えなくっちゃ。」



リク君たちはイツキ君の家に向かい,

お母さんにあと1日待っていてほしいと説明しました。



「とりあえず,わかってもらえたから大丈夫そうだね。」



みんなは安堵しました。



「でも,明日までにノアの書が見つからなかったら・・・。」

「大丈夫。明日の7時にイツキ君の家に集合しよう。

何か動きがあるかもしれないから。」




リク君はみんなにそう伝えて,その場を解散しました。



そして,彼はその足で中野木図書館へ向かいました。



「何とか間に合え・・・。」



そして翌日の朝を迎えます。



第132話 図書館にて合流

ノアシリーズ最終章
-翌日の朝-



イツキ君のお母さんに何か連絡などが

あったか確認しましたが,特に何もありませんでした。



みんなはイツキ君のお母さんを安心させる

ための言葉をかけ,その場をあとにしました。



お昼すぎまでイツキ君が立ち寄りそうな

場所を探しましたが,ノアの書は見つかりませんでした。



「よし,そろそろかな。みんな,図書館に行こう。

レオンさんがいるはずだから。」




みんなは中野木図書館へ向かい,

レオンさんと合流することにしました。



到着すると館長さんが出迎えてくれました。



「こんにちは。」





館長「やあ,いらっしゃい。なんか大変なことになっているみたいだね。」



どうやら館長さんはレオンさんから話を聞いたようです。



「影との交渉はうまくいったみたいだね。」



リク君は小声でレオンさんに話しかけました。



「館長さんにはどこまでしゃべったの?」

「ノアの書のことで色々手伝ってもらっていたから,

それだけだよ。組織のことや影に誘拐されている

ことは触れてないから安心して。」


「そっか。」



リク君は少しホッとしました。



館長さんは奥の部屋に入り,

しばらくするとノアの書を持って出てきました。





「あ!」



まさらちゃんは思わず声をあげました。



「ノアの書,あったんですね!」



館長さんはノアの書をリク君に渡しました。



館長「なかなか大変だったよ。」



「ありがとう。」



リク君はお礼を言いました。



「でもどこにあったの?」



トシ君の疑問はもっともでした。



「とにかく,今はこのノアの書が切り札だ。

これでイツキ君を救い出す。」




リク君はトシ君の言葉を遮り,そう言いました。



「館長さん,ありがとう。後はなんとかなりそうなんだ。」



館長「そうかい。じゃあ僕は仕事に戻るね。」



館長さんは業務に戻っていきました。



「レオンさん,お願いがあるんだ。」

「なんだい?」



リク君はレオンさんに耳打ちをしました。

何か頼みごとをしたようです。



「何をお願いしたの?」

「大事なことをちょっとね・・・!

レオンさんにしかできないことさ!」




レオンさんは図書館を出ていきました。



「お~!」



トシ君も今回はやる気です。



そのやる気が空回りしなければよいのですが・・・。



そして,指定時刻になり,八町公園のグラウンドに到着しました。





第133話~第136話

2016/6/10

第133話 最後の交渉

ノアシリーズ最終章
八町公園のグランドは,今は使われていなく,

地面はボコボコになっていました。



ライトも点灯せず,周りはほとんど真っ暗でした。

頼りになる明かりはグランドの隅にある古い外灯が1つ・・・。



リク君たちがグランドの中央で待っていると,人影が見えました。

だんだん近づく人影に見覚えがありました。昨日もここで会っていました。



影「さて,最後の交渉の時間だよ。」



仮面の下に不気味な笑みを浮かべているのがわかりました。



「・・・。」



リク君,まさらちゃん,だぬちゃん,

トシ君の4人は声を出さず身構えています。



「影が来ましたね・・・!」



影「ノアズアークはあったのかな?」



「もし・・・なかった・・と言ったら?」



影「・・・。」



影は黙ったまま動きません。



「仕方ないね・・・。(間に合わなかったか・・・。)」



リク君は何かを呟いた後,カバンから

ノアの書を取り出し,影に向かって投げました。



影はそれを片手で受け取りました。



影「なんだ,もっているんじゃないか。」



「ああ。持っていなくてもイツキ君の身柄を開放して

くれるかと期待したが,やめた。その気がなさそうだったからね。」




リク君は悔しそうにしています。



影「賢明な判断だ。イツキ君は明朝には

自宅に戻っていることを約束するよ。」



その時,リク君のイヤコムに何か連絡が入りました。

今回はリク君のみが代表でイヤコムをつけているようです。



「・・・!?」



リク君は背中の捕虫網を2本取り出して構えました。

まさらちゃんたちは少し下がってリク君を見守っています。



「あんたをこのまま返すわけにはいかない。

ここで捕まえて公安に突き出す!」




影「ほう。公安・・・?」



影はやれるものならやってみろといわんばかりの態度でした。



影「イツキ君がどうなってもいいのかな・・・?」



「おおおおっ!!!」



リク君は自分を鼓舞し,影に突進していきました。



「お前をここで倒す!」



―大地二刀流― 瞬激の舞(ワルツ)





リク君は2本の捕虫網を巧みに操り,

舞うようにして波状攻撃を仕掛けます。



影は腰に下げていた伸縮できる警棒を取り出し攻撃を防ぎました。



影「相変わらず,いい腕だ・・・。だけど,今回は・・・。」



リク君の攻撃を防ぎきると1歩後ろに下がり,間合いを取ります。



影「君が攻撃を仕掛けてくることは予想できたからね。備えさせてもらったよ。」



手に持っていたのは伸ばすと50センチほどにもなる警棒でした。

太さは5センチほどで先になるほど細くとがっていました。



材質は鋼でかなりの硬さのようです。



影「今度はこちらから行くよ!!」



二人の攻防は続きます。



第134話 帰還

ノアシリーズ最終章
リク君と影(シャドー)の攻防が続きます。リク君が正面から

一太刀を浴びせるも,影はしっかりと防ぎます。



影の攻撃は素早く,リク君は2本の捕虫網を

使わされて防戦一方でした。



「(速い・・・。かなりの速さだ。)」



リク君は影から間合いを取るために後ろに下がり距離を取りました。

そして捕虫網を影に突き出し,持ち手にあるボタンを押しました。



―大地一刀流― 神速の打突





影「む!?」



捕虫網は一瞬で10mほど伸びて

影に突き刺さったようにみえました。



しかし,間一髪のところでよけられてしまいました。



元の長さに戻し,もう一度,接近してからの攻撃を仕掛けます。



「(この暗闇じゃ,上空からの攻撃は効果が薄いか・・・。)」



お互いの攻防がさらに続きます。



その時,一瞬のすきをついて影がリク君の左肩に攻撃を加えました。



「ぐっ・・・。」



影「どうだい?私だってそれなりに強いんだよ。」



影は余裕を見せます。



「それなりどころかかなり強い・・・ですよ。」



リク君は一瞬ひるみましたが,すぐに反撃に出ました。



―大地二刀流― 薔薇十字(ローゼンクロイツ)



面と胴の同時攻撃に影が一瞬の躊躇(ちゅうちょ)を見せます。



影「ぐふ・・・。」



右手から真横に繰り出された捕虫網“天照”が

影の脇腹に入り地面に倒れこみました。



「リク君だって負けてない!」

「うが~!血が騒ぐ!」



影はすぐに立ち上がりました。



影「君のその能力の高さには本当に驚かされる・・・。

大人顔負けだ・・・。いったい何者なんだ?」



影はリク君に尋ねました。



「平成のファーヴル,リクだ。」



リク君はそう答えると影の懐まで一足飛びで入り込みました。



―大地二刀流― 聖十字(グランドクロス)





交差させた二本の捕虫網を相手の胸元で切り開きました。



影「がはっ・・・。」



影はその場で倒れました。



リク君は少し息を切らしていました。



影「さすがだ・・・。」



影はすぐに起き上がり,何事もなかったかのようにしていました。



「効いてない・・・。」



二人はお互いにらみ合って動きません。



影「さて,もう少し遊んであげたいが,時間もない。」



そう言うと,内ポケットに入っていた携帯電話を

取り出してどこかへ連絡をしようとしました。



影「おかしいな,なぜ誰も出ない・・・?」



どうやら影は実行部隊に連絡を入れたかったようです。



影「まぁいい。この公園にも何人か配備してある。」



「え,そうだったんですか!?これはやばくないですか!?」



だぬちゃんは増援が来ると聞いて少し焦っています。



影「おい,出てきたまえ!」



影は大きな声で叫びました。



すると奥から二人の人影が見えました。



影「ん・・・?」



そこに現れた人影は・・・。



影「ばかな・・・。なぜ・・・。」



人影はレオンさんとイツキ君でした。





「やぁ,久しぶりだね。影。」

「やっと出られた。」



これは一体どういうことなんでしょうか。



第135話 意外な結末

ノアシリーズ最終章
公園のグラウンドに現れたのは影が

手配した実行部隊ではなく,レオンさんとイツキ君でした。



影「なぜ,君がここに・・・。それにお前はあの時の・・・!?」



影はレオンさんとイツキ君を交互に見ながら,睨みつけました。



「そういえば各務原山で僕の取り付けた

盗聴器はこわされちゃったね。

でもおかげで色々と聴けて良かったよ。」




影「そんなことはどうでもいい!?

イツキ君を連れだしたのはお前だな!

あそこには1個小隊の人数をかけて

見張らせていたはずだぞ!どうやって逃げ出した!」



影はイツキ君がここにいることが信じられないようでした。



「見張りの方々は僕とイツキ君で

片付けさせてもらったよ。この周辺に潜んでいた人たちもね。」




影「ばかな!?精鋭中の精鋭だぞ。海外でのゲリラ戦闘経験も

ある部隊が・・・。ありえない・・・!?」



レオンさんはリク君の前に出て影と対峙しました。



「大丈夫だった?少しやられたみたいだね。」

「うん,平気。でもかなりの使い手だよ。

アイツ,各務原山の時は全然本気じゃなかったんだ。」




イツキ君も前に出てきて影に話しかけます。



「よくもあんなところに閉じ込めてくれたな。たっぷりとお礼をしてやるよ。」

「イツキ君,待つんだ。奴にうかつに手を出してはいけない。」

「でも・・・!?」



イツキ君はレオンさんに制止され納得がいかないようです。



影「どうやって監禁している場所を探し出した・・・!?」



「さぁね。それをアンタに説明する義務はないでしょ。」



レオンさんは少しずつ円弧を描くように動きながら影の背後に移動します。



イツキ君も反対から同じような動きをして影を囲みます。



「どうやら形勢逆転だね。」

「おお,これで組織の幹部を捕まえたも同然ですね!」



だぬちゃんはさっきの絶望感はどこかへ消えて意気揚々としていました。



影「はははははは・・・。」



「何がおかしいの!?」



まさらちゃんは影に問い詰めます。



影「私はこんなところでは捕まらないよ。

もともとこのノアズアークさえ手に入ればそれでいいんだ。」



「強がりはよしたほうがいいよ。さすがにこの状況じゃ逃げられない。」



リク君は捕虫網をかまえたままその場で影が逃げるのを遮ろうとしていました。



影「果たしてそうかな?」



「ん?何だこの音?」



トシ君が何か音が聞こえると訴えました。



「これは・・・!?」



バラバラバラバラバラバラバラバラバラ・・・・・・。



「上だ!?」



全員が上を見上げるとなんとヘリコプターがいました。



サーチライトに影(シャドー)が照らされています。





リク君たちはプロペラの風で影になかなか近づくことができません。



影「リク君,君との戦闘は楽しかったよ。

今度やりあうときはお互い本気でやりたいものだね。」



影はまだまだ実力を出し切っていないようでした。



リク君もイツキ君の安否が確認できるまでは全力を

出すことをためらっていたようです。



「くそ・・・。」



一瞬のうちにヘリからロープの階段が下りてきて,

影が捕まるとすぐに上空へ上がっていきました。



影「では,ノアズアークは確かにいただいた。

またいずれどこかで・・・。はははっ!」



「まずい,逃げられる!」



意外な結末に,全員が呆然とするしかありませんでした・・・。



第136話 エピローグ 前編

ノアシリーズ最終章
影はヘリを使い逃亡してしまいました。



こうなることを見越して見通しの良い,

使われていないグラウンドを交渉の場に選んでいたのです。



その後,イツキ君は自宅へ帰り,お母さんに謝りました。



イツキ母「ああ,本当によかった。お母さんこそごめんなさい。

色々と言ってしまって。こんなに素敵なお友達のことを

悪くいってしまったお母さんを許してね。」



「もういいよ。俺も家出とかしてお母さんを

心配させてしまってごめんなさい。もうしないから。」




とりあえずお母さんを安心させることができてよかったみたいです。



イツキ君はそのまま自分の部屋にみんなを案内しました。



部屋に入って座ると,まさらちゃんはイツキ君に話しかけました。



「ホントによかったね・・・。

一時はどうなることかと思ったんだよ・・・!?」


「・・・。」



イツキ君はなにやら気まずそうにしています。



「でもノアの書が闇組織“ジャファ”に取り返されちゃいましたね。」

「う・・・ん。」





リク君も何やら言いたいことがありそうです。



「いや,実はね・・・。」



レオンさんが切り出しました。



・・・・。



・・・・。



「え!?あのノアの書はに・せ・も・の!?」

「何を言っているのか意味不明なんですけど!?」

「ゲロゲロ~!?」



三人は動揺を隠せません。



これは一体どういうことなんでしょうか。



「実は偽物の栗林先生が家庭訪問に訪れたことを聞いて,

俺の部屋に盗聴器が仕掛けられていることには

すぐ気づいていたんだ。それで近いうちにこのノアの書を

必ず取り返しに来ると思った。」


「ふむふむ。」



だぬちゃんはとりあえず相槌を打ちました。



「そこで図書館の館長にお願いして偽物の

ノアの書を作ることにしたんだ。

万が一の時にはそれを奴らに渡す作戦だったんだ。」


「え?でもノアの書ってコピーガードが

かかっていてコピーできないんじゃ?」




まさらちゃんの疑問はもっともでした。



「ああ,だからノアの書と同じ材質の紙を見つけてきて,

ほとんど全部パソコンで打ち直したんだよ。

それを印刷して専用の製本機で製本したんだ。」




イツキ君は偽のノアの書を作る過程を説明しました。



「製本機?」

「ほら,一度,図書館の奥の部屋に案内されたときに

置いてあったでしょ。あれを使ったんだよ。」
(第70話参照)

リク君は今回のことを知っていたようです。



「さすがに館長は本のことならなんでもわかるってくらい詳しいからね。

表紙から中身までほとんどそのまま作り直したさ。

ものすごい時間がかかったけどな。

途中からリクやレオンさんにも手伝ってもらったし。」


「この前,レオンさんにお願いしていた工作ってそのこと?」 (第121話参照)

「ああ,そうだよ。」



レオンさんも手伝ってくれていたようです。



「いや~結構頑張ったけど,向こうの動きが意外に早くて,

1日間に合わなかったから,交渉してもらっていたのさ。」




イツキ君が誘拐された後は,レオンさんが

メインで製作の仕上げをしたようです。



「でも,ノアの書の一部のページは手書きだったんだ。

いわゆる研究ノートみたいな感じさ。

そこはカーボン用紙なんかを使って慎重になぞったりして

書き写したからかなり大変だったんだ。」




ノアの書にはまだまだ多くの謎があるようです。



「聞いているだけで,頭が痛くなってきますね・・・。」



だぬちゃんは難しいことを言われると頭が痛くなる性格でした。



「さらに,最後の何ページかはよくわからない文章になっていて,

そこだけはなぜかコピーガードがかかっていなかったんだ。

一応,その部分も複製したよ。まぁ,それについてはまた今度な。」




イツキ君は偽のノアの書を作る過程で

わかったことなども伝えました。



ちなみに本物のノアの書は図書館で保管し,

制作をする時の参考にしていました。



そして先ほどイツキ君の手元に戻ってきました。



「ただし,USBだけは中身が確認できないし,

コピーガードもかかっていたので

そのまま返してしまったよ。

あれがないと疑われるからね。」




レオンさんが捕捉します。



「仕方ないな・・・。」



今回は相手に偽物のノアの書を渡し,

これ以上の詮索をさせないための作戦だったようです。



そして作戦は無事,成功しました。



第137話~第140話

2016/7/28

第137話 エピローグ 後編

ノアシリーズ最終章
今回の極めて重大な失踪事件はイツキ君たちの

作戦によるものだったようです。



「俺が家出をしたことを盗聴器で聞けば,

奴らも俺を誘拐しやすいんじゃないかと思ったんだ。」


「家出することも作戦のうちだったんだ・・・。」



まさらちゃんは困惑していました。



「案の定,すぐに俺を誘拐しに来た。

向こうもそういう作戦を

立てていて,好都合だったんだろうな。

あとは,影が必ずリクたちに接触して,

ノアの書を手に入れようとするから,

そこで偽物を渡す作戦だったんだ。」




そして,うまく闇組織ジャファの影に偽物の

ノアの書をつかませることができました。





「でも,作戦なら最初から教えてよ!」



まさらちゃんはイツキ君に言いました。



「まぁまぁ,敵をだますにはまず味方からっていうしね。」



リク君が仲裁に入ります。



「最近,イツキ君がちょくちょく昆虫採集に来なかったのは

ノアの書を制作していたからだったんですね。」


(第92話参照) (第122話参照)



「まぁ,そういうこと。」



イツキ君は自分のベッドに腰掛けてくつろぎ始めました。



「ちょっと前も本屋に行っていたのは材料を買っていたんですね。」



だぬちゃんはイツキ君が忙しいそうにしていた理由に納得がいきました。



「それにただ偽の書をつかませて相手からの詮索を

受けないためだけの作戦じゃないみたいだよ。」




レオンさんが捕捉します。



「それってどういうこと?」



トシ君がイツキ君に聞きます。



「実は偽ノアの書にはちょっとした細工をしておいたんだ。」



「どんな?」



今度はだぬちゃんが聞きます。



「必要な時期がきたら説明するさ。

今,お前たちに話してもあまり意味がない。」








「うわ~,なんか上から目線で嫌な感じだわ~。」



トシ君が嫌味を言います。



「ははは・・・。」



レオンさんが立ち上がりました。



「じゃあ,今日は夜も遅いし,そろそろお開きにしようか。」

「あ,もう1個だけ気になることがある!」



まさらちゃんがレオンさんに質問します。



「なんだい?」

「どうやってイツキ君が誘拐されている場所がわかったんですか?」



まさらちゃんの疑問はもっともでした。



「簡単なことさ。」



レオンさんは頭をボリボリかきながら説明し始めました。



「まず,警察のサーバーをハッキングして,

*Nシステムの画像を見られるようにしたんだ。そして・・・。」




*道路に設置されたカメラでナンバーを照会することで

車がどの経路をたどったかわかるシステム



つまり公園前の防犯カメラの映像も入手し,

その時に映った車のナンバーを照合し,

Nシステムを活用して車が向かった方向や

おおよその位置を把握したようです。



「だいたいの場所がつかめれば,あとはその地域の不動産屋に

連絡をして,ここ1~2週間の間に借り入れのあった,

ある程度大きな部屋や建物はないかと聞いて回ったんだ。

そしたら,1か所だけあったからそこに向かったんだ。」




あとはレオンさんの予想通りだったようです。



「・・・。」



見張りについていた影の精鋭の手下を難なく制圧し,

イツキ君を助け出すことに成功しました。



「なんか,レオンさんってすごいね・・・。」

「ホント,何者なんですか!?」



だぬちゃんもびっくりしています。



「ウキキキ!ただのしがない大学院生だよ!」

「・・・。」



その後,みんなは帰宅しました。



第138話 気になること
今日は近くの緑地公園で昆虫採集をしています。





「昨日,あんなことがあったのに,

いつもと変わらず昆虫採集をするんですね。」




昆虫採集は欠かせない日課のようです。



少年昆虫団はそれぞれ樹液の出ている

木を見つけ,カブクワを探しています。



「リク,ちょっと気になることがあるんだが・・・。」



イツキ君がリク君に声をかけました。



周りにいたまさらちゃんとだぬちゃんも話を聞きに来ました。



「みんな,急にどうしたの?」



リク君が戸惑いながら聞きます。



「だって!昨日の失踪事件のことみたいに

内緒にされたらいやだもん!」


「そうですよ~!」



まさらちゃんとだぬちゃんは自分たちに

失踪事件の作戦を知らされていないことに怒っていました。



「わかったよ,わかった!」



リク君は二人をたしなめます。



トシ君とレオンさんもやってきました。



大きなクヌギの木の下でイツキ君は説明を始めました。



「前回の一件で,俺たちの居場所は完全に組織にバレているはずだろ。

俺たちの家もそうだし,レオンさんの自宅も見られているよな。」


「そういえば,そうね。」



みんなはうなずきます。



「なのに闇組織ジャファの連中は影(シャドー)以外,

誰一人として俺たちの居場所を突き止めていない。

本来なら俺たちを消しに来てもいいはずなのにな。」




イツキ君は少しぶっそうなことを言い始めました。



「いや,消すって・・・だぬたちは子供ですよ?」



だぬちゃんは少し萎縮しました。



「俺たちは組織にとって最重要ともいえる機密を知ったんだぞ?

現にこれを持ち出したレオンさんのお父さんは殺されている。」




「・・・。」



イツキ君の考えはもっともでした。



「だから,俺は昨日の夜にでも組織が自宅を

襲撃してくるんじゃないかと思ってずうっと備えていた。

でも,一向にその気配はない。」




リク君が補足説明をしました。



「つまり,ぼくたちの居場所を影は

組織内で共有していないってことになるよね。」




影はリク君たちが住んでいる場所を

組織内では秘密にしているのでしょうか。



「でも,何のために・・・?」

「それはわからないけど,そうする方が

影にとっては都合がいいんだろうね。」




レオンさんは説明しながら樹液に止まっていた

ノコギリクワガタを捕まえ,ケースに入れました。



「そういえば,レオンさんが前に言っていた,

協力者からの新しい情報はないの?」




レオンさんは少し考えてから口を開きました。



「今後,何か新しい連絡があった時はすぐに教えるよ。」



リク君はレオンさんをじっと見つめ,何かを考えているようでした。



「今日はそろそろ帰ろう~!」

「何,言ってるの!昆虫採集はこれからでしょ!」

「げろげろ~!まじか~!?」



再び昆虫採集を行い,それなりの収穫があったようでした。



第139話 菊への予兆
名古屋で一番巨大な二つのビルが名駅にあります。

通称“バベル”と呼ばれるジャファコンツェルン所有のツインビルです。



その最上階に近い高級レストランに二人の男女が食事をしていました。

男は闇組織ジャファの森熊のユニットリーダーで源田という人物です。



もう一人は藪蛇のユニットリーダーである“アヤ”と呼ばれる女性です。



アヤ「貴方が食事に誘ってくるなんて珍しいこともあるのね。」





<“藪蛇”ユニットリーダー アヤ>



この女性は見た目は20代前半,髪はロングで,

スタイルもよく,とても美しい外見をしていました。



源田「そうか?」



彼は出てくるフルコースを行儀よく食べています。





<“森熊”ユニットリーダー 源田>



この源田という人物は強面で少し老けて見えます。



アヤ「それで,こんな華やかな場所に誘っておいて何が目的?

まさか,アタシに惚れちゃったわけじゃないわよね。」



アヤはそう言って男性を動揺させることが好きなようです。



源田「くだらん・・・。俺はお前などに興味はない。」



つれない返事でした。



アヤ「つまらない男。だから貴方は女に縁がないのよ。」



彼女は首を横に振りながら源田を馬鹿にします。



源田「では,本題に入らせてもらおう。」



源田はアヤの発言を無視し本題に入りました。



源田「“菊”に潜り込ませてあるアイツは今,どうなっている?」



菊とは何かの隠語でしょうか。それとも何かの組織のことでしょうか。



アヤ「極めて順調よ。信頼も得て,“菊”の幹部になっている。

この前入った情報だと,いよいよその幹部たちが

名古屋に集結して何やら始めるみたいよ。」



闇組織ジャファとは別の組織がいるようです。



源田「その潜り込んでいる奴の通り名は?」



アヤ「アタシや“マヤ”は“闇の騎士(ダークナイト)”

って呼んでいるわ。愛しい愛しいダークナイト様よ。」



源田は眉をしかめました。



源田「くだらん。」



彼はワインに手を付けました。

そして,飲み終わると再びしゃべり始めました。



源田「“菊”は我々の組織にとって厄介な存在になりうる。

危険因子は早めに芽を摘み取るのが

我々“森熊”の使命だ。それは御前の勅命でもある。」



アヤ「そうね。でもアタシたち“藪蛇”は

情報の収集,潜入,密偵が仕事よ。」



藪蛇は情報収集に特化したユニットのようです。



源田「だから,今度の“御前会議”の前に,

お前から情報をできるだけ聞いておきたかったんだ。」



二人の会話はまだまだ続きます・・・。



そして眠らない街,名古屋は更けていきました。



いずれ,“菊”と呼ばれる謎の組織が

闇組織ジャファや少年昆虫団の前に現れることになるのです。



しかし,それはまだ少し先のお話です。



第140話 昆虫好きなイケメンさん
今日はカブクワキングにきていました。



ここはカブトムシやクワガタが専門のペットショップです。



「いつきてもここは嫌なところだなぁ・・・。」

「営業妨害で訴えられますよ・・・。」



二人は入り口でそんなことを言い合っていました。



「こんにちは~。伊藤店長さんいる~?」



リク君が声をあげると,奥から

新人バイトの灰庭健人さんが出てきました。





灰庭「これはこれは,少年昆虫団のみんな。」



「こんにちは~。」



まさらちゃんは灰庭さんに会えてちょっと嬉しそうでした。



「ボクたちのこと覚えていてくれたんだ。」



リク君は笑顔で聞きました。



灰庭「もちろんだよ。店長から君たちのことはよく聞いているからね。」



さらにまりんさんもみんなの前にやってきました。



まりん「あいにくだけど,店長はちょっと手が離せないみたい。」





「何をやっているんだ?」



イツキ君が聞きました。



灰庭「外国産のクワガタのブリード(繁殖)の最中みたいだよ。」



灰庭さんが笑顔で説明しました。彼はとても清楚で愛想も

よくイケメンで,デキる男性の象徴のようでした。



「レオンさんや店長と違ってイケメンさん・・・。」



まさらちゃんはつい本音が出てしまいました。



「本人たちが聞いたら悲しむぞ・・・。」



灰庭「ところで何か買いに来たのかい?」



「うん。ちょっと昆虫ゼリーと飼育ケースが足りなくなっちゃったんだ。」



リク君は必要な物を言いました。



灰庭「それなら,これなんかどうかな。これは・・・。」



灰庭さんは的確なアドバイスをくれました。



「ありがとう!灰庭のお兄さん。」



灰庭「いえいえ,お安いご用ですよ。」



この灰庭という人物は常に笑顔を絶やさず接客をしています。



灰庭「君たちは本当に昆虫が好きなんだね。」



「うん,毎日行っているよ!」



リク君も愛想よく答えました。



灰庭「どうだろう,今度,僕も一緒について

行っていいかな?なんだか楽しそうだし。」



「うん,いいよ!」



まさらちゃんが間髪入れずに答えました。



灰庭「ホントかい?」



「まぁ,いいんじゃないですかね。」

「そうだね!今夜にでも一緒に行こうか。」



こうして灰庭さんは少年昆虫団と一緒に

昆虫採集に行くことになりました。



まりん「(健人さん,そんなに昆虫採集が好きなんだ・・・。)」



第141話~第144話

2016/7/28

第141話 灰庭さんと昆虫採集
今日はカブクワキングの新人バイトである

灰庭(はいば)さんと一緒に昆虫採集に来ていました。



場所は旭森林公園に来ていました。



ここはリク君たちが闇組織ジャファのユニット

“山犬”のメンバーに最初に出会った場所でした。



「ここは久しぶりですね~。」



だぬちゃんはちょっと懐かしがっています。



「あの時はいろいろとあったしね!」



まさらちゃんにとっても忘れられない場所のようです。



灰庭「何かあったのかい?」



みんなは車を降りて,歩きながら会話をしていました。



「うん,ちょっとね。大したことじゃないよ。」

「え?」

「オイラはよくわかんないな~。」



その当時,まだトシ君はメンバーにいませんでした。





灰庭「ホントは何かあったんじゃないのかい?」



「ううん。別に何もないよ!」



リク君は笑顔で答えます。



するとイツキ君が横からそっと声をかけました。



「この人に,俺たちがジャファの連中にここで

あったことを隠さなくちゃならない理由があるのか?」


「いや,そうじゃないけど,なんとなくね。」



小さい声でリク君がイツキ君に話しかけます。



「あの人,ひょっとして・・・。」



灰庭「まぁ,いいさ。ところでどこまでいくんだい?」



灰庭さんは話題を変えました。



「もうすぐだよ。クヌギの木が密集している場所があるんだ。

ちょっと奥に入るけど・・・。」




しばらくして採集ポイントに到着しました。



そこには樹液の出ている木にたくさんのカブクワが止まっていました。



灰庭「おお~!これはすごい!」



そういって,採集したカブクワをケースに入れていきました。



「あんまりたくさん採っちゃだめだよ!数が減っちゃうから。」



灰庭「もちろんだよ。まさらちゃんは優しいんだね。」



灰庭さんに褒められてまさらちゃんはうれしそうです。



「どう,コクワやノコギリ,アカアシなんかがいるんだ。カブトもね。」



灰庭「君たちは本当にすごいね。こんな場所を知っているなんて。」



灰庭さんは少年昆虫団の情報力に驚いているようです。



灰庭「これからもたまに誘ってくれるかい?」



「うん,いいよ。」

「でも,レオンさんも一緒のときだってあるぞ。」



灰庭「確か,この前一緒にいたカメレオンみたいな人だよね。僕は構わないよ。」



こうして灰庭さんとの初めての昆虫採集は大収穫で終わりました。



「・・・。」



リク君は灰庭さんを後ろから見つめ,何かを考えている様子でした。



第142話 暑い夜は樹液がたくさん
蒸し暑い夜は樹液もたくさん出て

カブクワもそれを求めてやってきます。



少年昆虫団は大牧山に来ていました。

道なき道を登っていきます。



「なんか,半年ぶりくらいに

昆虫採集している気がしますよ・・・。」


「ホント,久しぶりだよ~・・・。」

「何を寝ぼけたこと言っているの。

昼もしてたし,昨日の夜も昆虫採集してたじゃない!」




だぬちゃんにとって昆虫採集は

久しぶりな感じがするようです。



「ここって小山川が近くに流れていて,ホタルとか見られるんだよね。」

「そういえばそうだったな。」



イツキ君がレオンさんに話しかけます。



「疲れるな・・・。本当に大学で

こんなことやっていて楽しいのか?」


「楽しいよ。昆虫は大好きだからね。

今度機会があったら,大学に連れて行ってあげるよ」




そんな会話をしながら歩き続けて10分・・・。

ようやく目的地についたようです。



そこには大きなコナラの木がありました。

葉っぱを見てみるとクヌギとは形が違うことがわかります。



「どれどれ~。」



木の裏側を見てみると・・・。





「あ,カブトさんだ~!いっぱいいる~!」



樹液には5~6匹のカブトムシが集まっていました。



「これは,なかなか見ごたえがあるね~。うきき。」



リク君は一番大きいサイズの♂を捕まえました。



「よし,こいつを家で飼おう!」



さらに奥に進むと今度はブナの木が生えていました。



「ちょっと虫の量が増えてきてやばいような・・・。」



カやガなどがたくさん飛び交っている様子でした。



「これもクヌギの木とは違うようですね。」

「そうだよー。これはブナの木だよ。この木もカブクワが集まる樹液を出すんだ。

今日みたいな蒸し暑い日は樹液がたくさん出てカブクワもいっぱいやってくるんだ。」




リク君以外のメンバーもだいぶ,木の見分けが

できるようになっているようでした。



「あ,なんかいるな。」



イツキ君がライトを照らすとそこには

ノコギリクワガタのオスが1匹と

コクワガタのオスが2匹,カブトムシのオスとメスが数匹いました。



「おお~。これもなかなかいいね。僕はノコギリがけっこう好きなんだー。」

「私はコクワちゃんが好きー。」



レオンさんはノコギリのオスを採集していきました。



そして,さらに歩き続け,頂上まで到着しました。

頂上には大牧城がそびえたっています。



「少し休んだら,別のルートで下って行こう。」

「元気ですね~・・・。」

その後,少年昆虫団は別のルートでも

たくさんカブクワを見つけることができました。



第143話 たまにはカブクワ以外を採集をしよう
夏の暑い日差しが照りつけています。

今日は日中の気温が35度を超えているようです。



地面から大量の陽炎が見えます。



そんな中,少年昆虫団は近くの庄外川の堤防にいました。



「今日は,トンボやチョウ,セミを捕りましょう~!」



リク君はノリノリです。



「珍しいな。」



イツキ君が尋ねます。



「そんなことないよ!僕は昆虫なら

ほぼなんでも好きだからね!」




リク君は捕虫網"天照(あまてらす)"を振り回して見せます。



だぬちゃんとまさらちゃんは暑そうにしています。



トシ君はすでに堤防に生えている大きな柳の木の下で休んでいます。



「みんな,しっかりと昆虫採集をしよう!」



かくして昆虫採集が始まりました。

といっても捕虫網を持って来ているのは常にリク君だけです。



この時点でみんなのやる気がないのがわかります。

なぜなら暑いからです・・・。



「ゲロゲロ~。とけて死にそう。ゲームしたい~。最新作の・・・。」



トシ君は泣き言を言います。



「リク君は元気だよね~・・・。」



まさらちゃんは水筒のお茶を飲み干しました。



とにかく今日は暑いのです。

真夏のお昼に昆虫採集をするのはかなりつらいものがあります。



しかし,リク君はそんなことを気にしたりしません。



スッと天照を振り回すと,1匹の蝶が網の中に入りました。



「これは,アオスジアゲハだね。」



リク君が捕まえた蝶は,街中でよく見かける,

羽に青いスジの入ったきれいな蝶でした。



虫かごを持たされていただぬちゃんは,かごを差し出しました。



「どうぞ。じゃあ帰りましょうか。」



だぬちゃんは帰宅を促しました。



「何を言っているの。まだまだこれからだよ~!」



そう言うとさらに川に近い場所へ走っていきました。



そして,草に止まっているトンボを"天照"を使って簡単に捕獲しました。



「おお,これはチョウトンボだね。きれいだ~!」



それは羽の色が藍色に光る美しいトンボでした。



「この時間に採集できることもあるんだね。」



しかし,皆は暑さで死にそうで誰も反応しません。



「よし,次行ってみよう~!」



リク君のすごいところは,これだけみんなが

「帰ろうオーラ」を出していても,

かまわずに採集を続けようとする精神です。



「すごいやる気・・・。」



まさらちゃんは空になった水筒を覗き込み,

死にそうな顔をしていました。



「さすがにこの暑さはやべぇな・・・。」



イツキ君もヘトヘトになっていました。



そして3時間後,昆虫採集を終えて満足した顔の少年一人と

暑さでぼろぼろになった少年少女4人がそこにいました。



「よし,じゃあ,夕飯食べたらカブクワ採集に行こう!」



みんな「誰が行くか!?」



まだまだ夏休み真っ盛りな1日でした。



第144話 稲川 淳姫の怪談3
これは稲川先生が1学期に入ってすぐの学年集会で語った怪談噺です。



心臓が弱い方はご注意を・・・。



稲川「それでは新学期になり,最初の学年集会です。

しっかり聞くようにしてくださいね。」



そう言うと稲川先生は静かに語りだしました。



もう何年も前の話になるんだけど,

同窓会で久しぶりに再会した友人と飲んでいた時。



話が盛り上がって心霊スポットに行こうって話になった。

で,酒を飲まなかったAがドライバーになった。



車は中古であったが,結構人気の車種で,

この前も親戚の小学生に羨ましがられたらしい。



ほっておくとずっと車に触っているよう

だったので,注意したこともあるそうだ。



それはともかく,その車で山神トンネルって

いう場所へ出かけたんだ。



メンバーは私とドライバーのAと

幽霊など信じていないBの3人だった。



Bは幽霊が出たら,捕まえてやると意気込んでいた。



ダラダラと深夜のドライブをしている内に,

噂のトンネルの近くまで来たんだ。





お互いにいい大人だし,いまさら心霊スポットなんて,と

私は思ったが,話のネタにって感じのノリで盛り上がっていた。



いよいよ入り口まで来ると,中は暗いが

オレンジのランプはついていて,



幅は車2台が通れるほどの広さで,長さは

入り口から出口がなんとか見える程度だった。



近くに川が流れているようで,暗闇に響く,

水の音がなんとも不気味だったことを憶えている。



ドライバーのAはふざけてトンネル内で

クラクションを鳴らし,ゆっくりと進んでいった。



途中まで進んだところでAが異変に気付いた。

外で何か変な音がすると言い出した。



車を止めて,3人は車から降りた。

しかし,特に異変はない。



私は何もないじゃないかと言った。



しかし,Aは確かに変な音が聞こえたという。



Bは笑いながらAの肩に手をかけていた。

どうやら心配するなと言いたいようだった。



しかし,3人が車に戻ろうとした時,全員がその場で凍りついた。



なんとボンネットに真っ赤な手の跡が多数ついているのである。





Aが悲鳴を上げた。さすがのBも一気に酔いが

覚めたらしく表情は青ざめていた。



私がすぐに,車を出せと行った。



無我夢中で車を走らせ,しばらく進んだ先のコンビニで

車を止めて,再びボンネットを確認してみた。



しかし,そこにはどこにも手の跡などついていなかったのである。



それでは,私を含め,3人がトンネルで見たあの手の跡は

いったいなんだったんだろうか。



一説にはあのトンネルは昔,小さい子が事故に会い,

未だに成仏できずにさまよっているという噂もあるらしい。



稲川「皆さんもトンネルを通るときは十分に注意してくださいねぇぇ。

ふっと横を見ると真っ赤な手の跡が窓ガラスに

ついているなんてこともあるかも知れませんよぉぉ・・・。」



この時点で2年生に進級したばかりの児童のほぼ全員が

泣くか凍りついて固まっていました。



稲川「それでは今度の遠足では

そのトンネルを通ります。楽しみですねぇぇぇ。」



みんな「楽しみなわけあるか!!!」



「あの主任めちゃくちゃですね・・・。

ひょっとしてこれからも

こんな話ばかり聞かされるんでしょうか。」




だぬちゃんの予想は当たっていました。



この後,稲川先生がこの学年に語った怪談噺は

100を超えるといわれています。



次回はどんな怪談噺を聞くことができるのでしょうか。



栗林「(はぁ・・・。なんかこんな学年集会でいいのかな・・・。)」



安井「(しゃぁないな~。)」



子どもたちはへとへとになっていましたとさ。







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