2015/6/3
第81話 リクの作戦 <詳細>
ノアシリーズ ~第2章~
レオンの車に乗って,帰宅途中での会話です。
「作戦がうまくいったってことでいいのかな?」
「う~ん,影は逃がしちゃったけど・・・。」
レオン「僕の家に来る前にどんな打ち合わせをしてきたんだい?」
「それはね―」
レオンの家に入る前まで遡ります。
(第72話参照)
レオンの家の近くにて―
「みんな,今からボクの推理とこれからの作戦を話したい。聞いてほしいんだ。」
「推理と作戦・・・?」
「ああ,影の正体と影をおびき出して白日の下にさらす作戦だ。」
「わかりました。」
「うん!」
「まず影の正体は,あの大学院生じゃない。」
「え!?」
「影の正体は栗林先生に違いない。」
「ええ!?」
「どういうこと!?」
「ちょっと何を言っているかわからないな~??」
リク君は栗林先生が影である根拠を説明しました。
「確かに出校日の時の対応は変だったかも~!」
「それで,どうやって本人に自白させるんだ?」
「それが今から話す作戦なんだ。」
「ふむ。」
リク君はみんなに向かって話し始めました。
「まず,僕が今からあの大学院生に確認したいことを聞いてくる。」
「一人で大丈夫なんですか?」
「たぶんね。うまくいけば一緒にあの組織と
戦ってくれるかもしれない。」
「ええ!?あのカメレオンみたいな人が,ですか~?」
「あの人が本当に安全な人なら部屋に入ってから
10分は出てこないことにするね。もし,僕の推理が外れて,
あの人が危険な人物だったらすぐに部屋からでてくるから。」
「リクの推理なら大丈夫だろう。筋も通っている。」
みんなはリク君の推理を信頼しているようです。
「だから10分たっても僕が部屋からでてこなかったら,
学校へ連絡して栗林先生に来てもらえるように言ってほしいんだ。」
「まず警察に言わなくていいんですか?」
「おそらく信じてもらえないからね。
それよりも自分たちで影の正体を暴いたほうが確実だと思う。」
「なるほど。」
「そして,栗林先生が到着したのを確認したら,
部屋の外に出て僕はレオンさんに車で連れ去られるふりをするから,
栗林先生の車で追いかけてきてほしいんだ。」
全てはリク君の演技だったようです。
「あの大学院生はそんなにうまく協力してくれるのか?」
「おそらく・・・。なんとか説得してみせるよ。」
「どこに誘い込むつもりなの?」
「各務原山さ。」
「ひょっとして弾痕のことが気になっているか?」
「うん。おそらく影は何かを知っていると思うんだ。」
「なるほど。」
「とにかく山についてから,その後のことは任せてほしい。」
「わかりました。」
「影の正体を暴くためにもみんなの協力が必要なんだ。」
「うん,任せておいて!」
「ああ。」
「だぬにお任せを!」
「おお!」
そしていよいよ作戦実行のようです。
「じゃあ,僕が今からカゲレオンの部屋を訪ねてみるね。
怪しまれるといけないから一応イヤコムははずして電源はオフにしておく。」
「うん,わかった。気を付けてね!」
「もし10分たっても部屋から出てこなかったら
学校に連絡をして助けを求めてほしいんだ。」
ピンポーン
ガチャ
レオン「あれ?君は確か・・・。何か用かい?」
「ちょっとお話したいことがあるんだけど,あがってもいいかな?」
レオン「え,え?今?何で??」
リク君はその人を見つめたままほくそ笑んで答えました。
「影の正体は―あなたも探りを入れていた栗林先生―だよね?」
レオン「ほう。」
「あなたが昨日,長山ランドにいたのは僕たちをつけてきたんじゃないよね。
僕たちを尾行していた栗林先生の後を追っていたんでしょ?」
レオン「君はなかなか鋭いね。」
「中でゆっくりお話ししたいんだけど,いい?」
レオン「ふっ。冷たいジュースでも出そうか。」
これがリク君の考えた作戦の詳細でした。
そんなことを話しているうちにレオンの自宅に到着しました。
第82話 レオンの部屋にて
ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団はレオンに案内され,部屋に上がりました。
「あの,ついてきちゃいましたけど,この人,本当に大丈夫な人なんですか?」
だぬちゃんは一抹の不安があるようです。
「大丈夫だよ。レオンさんは味方さ。」
*今回からレオンの台詞はこの色になります。
「ウキキキキ・・・。」
レオンはみんなに冷たいジュースを出しました。
狭い1室でしたがなんとか全員が座ることができるようです。
「ねぇ,リク君。どうしてこの人が味方だって言えるの?」
「それはこの人が小早川教授の息子だからさ。」
「その通り~!ウキキ。」
みんな「えええ!?」
なんとレオン氏はあの小早川教授の息子だったのです。
「というか小早川教授って誰でしたっけ?」
「研究所からノアの書を持ち出した人物だよ。
それで組織の山本って奴に殺された。」
「そうでした。」
「昨日,リクが奴らの会話を盗聴してそう言ってただろ。」
「ちょっとド忘れしていただけですよ!」
「つまりこの人も組織に恨みを持っている,だから仲間ってわけか。」
「オイラはあの組織を絶対に許さない。必ず父の無念を晴らしてやる。」
このときばかりは真剣な表情でした。
「うん。」
「でもなんでその教授の息子ってわかったの?」
まさらちゃんのもっともな疑問にリク君が答えます。
「ああ,それはね。最初にあったとき,レオンさんに名前を聞いたでしょ。
でもレオンさんはあだ名で答えた。だから,本名を知られたくないのか
よっぽど自分のあだ名が気に入っているのかどちらかなのかなって思ったんだ。」
「そのあと,俺が『そのあだ名は気に入っているのか』って聞いたな。」
リク君は説明を続けます。
「それでレオンさんは『いいえ』と答えた。
普通気に入らないあだ名を名乗ったりしないでしょ。
だからちょっと怪しいなと思ってさ,本人に聞いてみたんだ。」
「全部,お見通しでさすがだったよ。」
「本当は“影レオン”なんて名前で呼ばれたりしてないんでしょ?」
「ウキキキ,まぁね。普通にレオンって呼ばれているよ。」
どうやら少年昆虫団のみんなは彼のことを“レオンさん”と呼ぶそうです。
「それと最初にあった時に,『接触成功!』みたいなことをつぶやいていたよね。」
(第31話参照)
「聞かれていたか。」
「それってどういう意味なの?なんか影(シャドー)が私たちに接触してきたのかと思っちゃうよね。」
「あれはレオンさんも図書館の防犯カメラをハッキングしていて,
僕たちがノアの書を持ち出したことを知って,接触しようとしてたからでしょ。
そして僕たちと思いがけず接触できたからそうつぶやいたんだよね。」
「まぁ,そういうこと。」
「じゃあカメラをハッキングしている人物は二人いて,
影ともう一人はレオンさんだったんですね。」
「うん,まあそうなるね。」
トシ君は出されたジュースとお菓子を食べるだけの存在になってしまっていました。
「オイラ,このお菓子好きだな~。」
レオンさんと少年昆虫団はお互いに知っている情報を交換しました。
そうすることで漆黒の追跡者が巣食う組織のことがだんだんとわかってきました。
第83話 エピローグ
ノアシリーズ ~第2章~
漆黒の闇に包まれた謎の組織JF(ジャファ)…
その全貌が少しずつ見えてきました。
「組織の通称は“ジャファ”と呼ばれている。
これは君たちも知っていたね。
奴らの正式な組織名は“ジャパノフォビア”。
これは知らなかっただろう。」
「え?何??」
リク君は少し驚いた表情をしましたが,
すぐに冷静になり,こんな言葉を口にしました。
「イスパノフォヴィア・・・か。」
「え?何??小学生が知っている語句ですか?それ。」
中世時代,栄華を極めたスペイン帝国が暴落の一途を辿った理由をご存じでしょうか。
フリッツ率いる無敵艦隊が敗れたから?いいえ,違います。
イングランドやオランダといった周辺国が
スペイン帝国の植民地政策を徹底的に非難したからなのです。
その非難によってスペイン国民は自虐史観に捉われていきます。
国民はあること無いことを教え込まれ,その残虐性を恥じ,自信を失い,
自国に誇りを持つこともできない国民になっていきました。
それが周辺国の狙いだったのです。
それによってスペインは勢力を失っていきました。
ついには“自虐の国(イスパノフォヴィア)”と呼ばれるようになりました。
「つまり“ジャファ”とは・・・。」
「ふざけているだろう?堂々とそんな名前で成り立っている組織なんだ。
ほとんどの日本人が意味なんて知らないんだろうけどね。」
「日本を貶めるための組織・・・ってことなのか?」
「自分の友人で組織に潜入している奴がいてね。情報は確かだよ。」
どうやらレオンには強力な協力者がいるようです。
「えっとそれってつまり何のために???」
「日本国を解体するためさ。そして組織にとって
都合の良い日本国を作り上げるんだろうね。」
「そんなことできるんですか???」
「例えば・・・。」
イツキ君はいくつか思いつくことを話しましたが,それはまた別の機会に。
「少なくとも組織は本気だ。しかし表向きは
あの巨大コンツェルン・ジャファグループなんだよ。」
「聞いたことあるな。投資関連会社や薬品研究所,IT,綜合警備保障…
他にも色々な産業に手を出している巨大グループじゃないか。
日本の経済界の中心となる大企業だ。」
「そんな大きな組織が日本を壊そうとしているってこと・・・?」
「このままじゃ,日本の未来が危ないってことだよね。」
「そういうこと。君たちの言う“漆黒の追跡者”が“漆黒の金剛石”を
探索しているのもその計画の一つにすぎないんだろうね。」
あまりに巨大な陰謀が渦巻いている事実を知り,みんなは困惑しています。
「なんか話が大きくなりすぎて何が何やら・・・。」
「私たちは漆黒の追跡者たちにカブクワを
むやみに殺したことを謝って欲しかっただけだったのにね。」
「知ってしまったからにはやるしかないかな!」
「そういうと思っていましたよ。」
「この国の未来のために,この日本がいつまでも日本であるために。
そして日本が日本人のための国であるために。」
「自分は親父の仇を必ず討つ。
そのためにここまで・・・。」
父親のことを話すときは真剣な表情になります。
「俺はノアの書を読み解いて計画の全貌を明らかにしてやる。」
「私はやっぱりあの人たちにしっかりと謝ってほしいな。」
「だぬはよくわかっていないですけど,みんなについていきますよ。」
「えっと,オイラは・・・。」
リク君はトシ君の言葉をさえぎるように続けました。
「今年の夏休みの少年昆虫団のはっきりとした目標が決まったね!」
「ウキキキ。」
「漆黒の追跡者の組織,ジャファを壊滅させる!」
「いや,ちょっとそれは厳しいのでは・・・。」
「まだ夏休みは1カ月以上あるからな。
作戦を立てる時間は十分あるさ。」
少年昆虫団のみんなには,それぞれの目標が見えてきたようです。
これからの彼らがどんな活躍をするのか楽しみです。
「でも,ジャファという組織に対抗する術はあるんですか?」
「まぁ,それはおいおい考えよう~。」
「大丈夫だよ,こちらの協力者だって強力だからね。また,今度紹介するよ。」
「ありがとう!」
「何かあったらいつでもここにおいでね。」
「うん,ありがとう。レオンさんこそ気をつけてね。
この場所,影に知られているわけだから。」
「それも君の計画のうちだろう。」
「はは。」
どうやら二人の間で他にも何か作戦があるようですが・・・。
「レオンさんって見かけによらず頭がいいんですね。」
「うきき。」
この後もこの部屋でしばらく話し合っていました。
しかし,後日,あの極めて重大な失踪事件が
起こることを彼らはまだ知らないのでした・・・。
ノアシリーズ ~第2章~ 完結
第84話 ヒラタを採集したい!
少年昆虫団は,初めていく場所で採集をしていました。
ここは,愛知県と岐阜県の県境の山です。
「初めての場所ってちょっとわくわくするね。」
「そうだね。」
「というかなんか昆虫採集するの半年ぶりくらいな気がしますよ。」
「何を言ってるの。昨日もしたじゃないの。」
今日はレオンさんも一緒に来たようです。
「なかなか本格的にやるんだね。」
「まぁね!」
「あんたはなんでついてきたんだ?」
「いや~,ちょっと君たちが昆虫採集をする様子を見てみたくてね。
それに僕も一応昆虫学の専攻だしさ。」
レオンさんは少年昆虫団の行動に興味があるようです。
「いや~,危ないな~,周りが暗いよ!」
「夜なんだから当たり前だろう・・・。」
「いや~,ここはやばいよ!ヤバイどころじゃないよ!」
トシ君の怖がりはなかなか治らないようです。
「今日の目的はヒラタクワガタを採集することだよ!」
「はぁ~,どうせ捕れませんよ~。」
「ヒラタは木のウロという穴にいることが多いんだ。
そこを中心に探せばきっといるさ!」
そしてしばらく探し続けるのですが・・・。
「やっぱり捕れませんね~。」
「コクワちゃんとかノコちゃんはけっこういたのにね。」
「絶対ヒラタを見つけるんだ!」
しかし,さらに探し続けてもなかなかみつかりません。
「いないな・・・。」
「・・・。」
レオンは何かに気付いたようです。
「リク君,ここの木のウロをみてみたらどうだい?」
「そこはさっき見たけど何もいなかったよ・・・。」
「そっか。」
「仕方ない,今日は帰ろう・・・。
今度来るときは絶対リベンジするぞ!」
「早く帰ろう!」
レオンさんが最後にその場を去ろうとすると・・・。
「!?」
なんとヒラタクワガタが出てきました。
「お。」
レオンさんは捕まえようとしましたが,その手をひっこめました。
「今度来るときはリク君にリベンジされるかもよ。」
ヒラタクワガタに話しかけるようして,その場を去って行きました。
リク君はそのうちまたヒラタ採集のリベンジをするようです。