リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第305話~第308話

2020/1/12

第305話 バトルヤバイヤロ3限目 12


ワクのわくわく冒険記シリーズ



*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。




場面は再びワク君たち・・・。



ワク君たちはあの梶田率いる

グループと対峙していました。



「この世界の謎だって?どういう意味だ。」



思わず聞き返してしまいました。



梶田「そのままの意味さ。そもそもどうして僕たちはこんな世界にいるのか。

どうしてこんなデスゲームをしなくてはいけないのか。

放送から流れてくる彼らの正体は何か。

それを全て明らかにするのさ。」



「なるほど・・・。そんなこと考えてもみなかったな。」



トシ君に対して,リサちゃんが,



リサ「それはアンタだけよ。アタシはずっと

同じことを考えていたよ。おそらくワク君も。」



梶田と一緒に行動する古岡と名乗る青年が,



古岡「梶田さん,本当にあの実験棟に

行けばこの世界の謎がわかるんですか?」



と聞きました。



真木「あそこは最初に行ったけど

何もなかったと思うけど・・・。」

梶田「それは君たちが見落としているだけだ。

僕ならあの場所を隅々と調べ,

この世界の謎をつかんでくることも可能だ。」



ワク君はじっと黙ったままでした。



優香「ワク君,私たちはどうしてこんなゲームを

させられているんでしょうか。」



「わからない。ただ,この学校を運営する連中が

いることは確かだ。奴らの正体が誰なのか・・・。」




ようやくワク君が口を開きました。



その時,放送が入ります。



放送「さぁ,ゲーム開始から30分経ったよ!残り半分!

最後まで生き残れば次の授業に参加できるから

がんばってね!鬼も増えるからねー!ガンバレ!」



筒井「まったくふざけてやがる!」



<筒井>



梶田のグループで筒井と名乗る中年男性が

吐き捨てるように言いました。



梶田「彼は元の世界では医者だったみたいなんだ。

それがこんなところへ連れられて来てしまい不憫だよねー。」



雄太「えっと,梶田さんですよね。

最初のクラスで同じだった雄太です。覚えていますか?」



雄太が前に出てきて梶田に話しかけました。



梶田「ああ,いたね。正義感が強くとても

優秀で絶対に生き残ると思っていたよ。」



梶田が雄太の頭をなでながらそう言いました。

雄太は梶田の後ろにいたメンバーに対して,



雄太「みなさんはどうして彼と行動を共にしているんですか?

はっきり言って,いままで見てきた彼の行動はあまり

勧められるようなことをしていませんでした。

なのになぜ,一緒にいるんですか!?」



急に雄太がそんなことを言い出す

ので梶田の顔が曇りました。



水元「そっそれは・・・生き残るためよ!彼は頭もいいし,

行動力もある。リーダーとしてふさわしいと思って

いるからみんなついて行っているのよ。」



水元という25歳の女性がそう言いました。



彼女は元の世界ではパティシエを

やっていてお菓子作りは得意のようです。



リサ「ふ~ん,本当かな。ねぇ,ワク君,どうでもいいんじゃない。

私たちはこの奥の巨大アスレチック場に行くってことにしたんだから,

さっさと向かおうよ。あそこなら隠れるところも多そうだしさ。」



リサちゃんがワク君の手を引きました。



梶田「それでは,また。きっとどこかでまた会おう。」



彼らはその場から去っていきました。

一方のワク君たちもアスレチック場の前までやってきました。



残り時間はあと25分・・・。



第306話 バトルヤバイヤロ3限目 13

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
アンリ「ねぇ,雄太。」

雄太「何?」



巨大なアスレチック場を目の前に

みんなはどこに隠れるべきか悩んでいました。





アンリ「あの,ワク君っていう少年と一緒に私と

真木さんって人を助けてくれたんだよね。」



「あれ,オイラは?」



さりげなくトシ君が活躍をアピールしました。



「ああ,今回はお前もがんばったよ。」



ワク君にそう言われてトシ君は

少しうれしそうでした。



雄太「そうだよ。全てワク君のおかげさ。

後でちゃんとお礼を言っておけよ。」



どうやら二人は幼馴染で塾の帰りに一緒に

この世界に連れてこられたようです。



この巨大アスレチック場は木と木の間にできた木の板や

ロープなどが複雑に組み合わさり,

大人でも楽しめるような作りになっていました。



黒山「でも,ここって囲まれたら

逃げ場が無いですよね・・・。」



真木「確かに・・・。ワク君,

どうするつもりだい?」



真木さんはワク君に話を振りました。



「とりあえず,上りましょうか。」



そう,促してみんなをアスレチック場に誘導しました。



メイ「結構いい眺めだねー!校舎が見えるよ!」



メイちゃんとサエちゃんははしゃいでいました。



雄太「おいおい,落ちるなよー。」

サエ「大丈夫だって!」



ワク君は高い位置から鬼がどの辺りに

いるのかを把握しようとしていました。



そして,時間が過ぎるたびに鬼が

増えていく様子が見られました。



途中何匹かの鬼が近づいてきましたが,

ワク君が上からシュートを放ち,

それを下で見張っていたトシ君が拾い,

ワク君に渡す,という作業を繰り返し,難を逃れました。



場面はここで再び梶田たちのグループに変わります。

彼らは実験棟の中をくまなく探している様子でした。



このグループの中に白鳥氏とあやねちゃんも加わっていました。



どうやら梶田たちはワク君たちのグループと

別れた後すぐに,この二人を自分たちの

グループに取り込んだようです。



アヤネ「(何がなんでも生き残っていやる。

そのためになら誰にでもつくわ・・・!)」



白鳥「アヤネちゃんは僕が守るよ。」



と彼女の耳元でささやきましたが,



アヤネ「うるせぇよ!アンタなんか役に立たないんだよ!」



アヤネちゃんはここに来て,だんだんと

精神が壊れ始めているようです。



その時,梶田が何かをみつけたようです。

その部屋はコンピュータが机に

たくさん並んでいた部屋でした。



梶田「なるほど,そういうことか。だんだんこの世界の謎がわかってきたぞ。

ククク,やはりこの世界で生き残るのは僕だ!」



一方の郷田とOLの風花はビオトープに来ていました。



郷田「さっき,すれ違った連中は,

やたらとこの中を探し回っていたな。」

風花「そうみたいだね。一体何をしていたんだろう。」



ビオトープとはできるだけ自然の状態で

生き物を飼育する場所のことです。



あたりには小川や小さな湿地,雑木林が生えていました。



郷田「もし,あの中のリーダーが馬鹿じゃないのなら,

ここから出る方法を探していたはずだ。」

風花「え?それってどういう・・・?」



第307話 バトルヤバイヤロ3限目 14

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
ビオトープに来ていた郷田と風花は少し前まで

ここにいたグループのことを思い出していました。





そのグループとはあの梶田たちのグループのことでした。



郷田「もし,あの中のリーダーが馬鹿じゃないのなら,

ここから出る方法を探していたはずだ。」



郷田もこの世界の謎を解くためのカギを探し始めました。

しかし,それらしい手掛かりは見つかりません。



風花「本当にそんなものがあるのか?」



二人はビオトープの隅までやってきました。

そこはつまり学校内の一番はじにありました。



校内全体は少し高い塀で囲まれていましたが,

よじ登って外を見ることができました。



恐る恐る外を見てみましたが,

そこは真っ暗な世界で文字通り何もない世界でした。



風花「これってどういうこと?ただ暗いんじゃなくて,何もないよ?」

梶田「なるほど,そういうことか・・・。」



二人はコンクリートの塀に沿って歩き始めました。



郷田「お,もしかしてこれは・・・。」



郷田がコンクリートの塀から延びる

何かを見つけたようです。



郷田「あいつらもこれは見落としていたのか。」



それはチューブのような太いパイプで塀から1mほど伸び,

そのまま地面に刺さりどこかへつながっているようでした。



そのチューブを眺めていた郷田は,ニヤッと笑い,



郷田「ここから出るのは俺だ。」

風花「おいおい,アタシも一緒だよ。」



そして,ここで制限時間の60分が

経過したチャイム音が鳴り響きました。



郷田「よし,次の時間が勝負だ。

この世界を創り出した"誰か"をぶっ潰してやる!」

風花「え?それってどういうこと・・・?」



場面はワク君たちに戻ります。



先ほど,同じように終了のチャイムを聞きました。



「よし,なんとか切り抜けた・・・。全員無事だよね?」



ワク君は少し離れた場所にいた全員に声をかけました。



その後,放送が入り,生き残った人は全員が

ランチルームに集合することになりました。



今回のデスゲームで生き残ったのは・・・。



ワク君たちのグループからは



ワク君,トシ君,リサちゃん,真木,黒山,

宮川,雄太,サエ,メイ,優香。



梶田のグループからは



梶田,アヤネ,白鳥,筒井,水元,吉岡。



あとは郷田と風花の合計18人でした。



ランチルームは社員食堂のようで,たくさんの机が並べられ,

正面には食事の受け渡し口があり,そこから好きな食事を注文できました。



生き残った18人は放送の指示に従い,食事をとりました。

中には毒が入っていることを警戒する

人もいましたが,全員が食べ終わりました。



それぞれのグループが固まって食事をしていましたが,

梶田とその取り巻きがワク君に近づいてきました。



「あれ?アヤネちゃん,こいつと一緒にいたんだ。

他の人はどうなっちゃったの?」




トシ君が聞くと,



アヤネ「全員死んだわよ!アンタたちが頼りないせいでね!

だからアタシはこの人についていくの!?

こんなところで死にたくないからね!」



梶田「そう,彼女と白鳥君は自ら進んで

僕たちのグループに合流したんだよ。

そんなことよりも・・・。」



梶田はワク君に,



梶田「君はこの世界のことを少しでも理解できたかい?」



と言いました。



「いや,全然。」



その会話を聞いて郷田と

風花も近づいてきました。



第308話 バトルヤバイヤロ午後 1

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
郷田「その会話に興味があるな。俺も混ぜな。」



梶田はどうぞと言わん

ばかりに,彼を呼び寄せました。



梶田「先ほど,実験棟のコンピュータ室を見てきたんだ。

白鳥君はIT企業の社長だから詳しいんだよね。説明してあげて。」



白鳥「はい。PCの中にデジタルワールド

マニュアルというファイルがありました。」



白鳥さんはその場にあった携帯用の小型デジカメで

その記録を映し出し,内容を説明し始めました。



白鳥「簡単にまとめると,ここはデジタルワールドという

AI(人工知能)が作ったコンピュータの中の世界らしいんです。」





郷田「やはりそうか。だからここは学校しかないんだ。

外は真っ暗で本当に何もない。創っていないんだから何もないわけだ。」



郷田と風花は先ほど見てきた内容を話しました。



さらに外部につながっていたコードは,

どうやら電源の供給源だったと結論づけました。



梶田「この世界を作ったAIを仮に"神(ゴッド)AI"としよう。

何らかの方法で我々の精神だけをデジタルな世界に

取り込んで何かをしようとしているんだと思われる。」

サエ「なんか急にそんなことを言われてもちょっと信じられないなぁ・・・。」



サエちゃんには少し難しい話のようでした。



真木「でも,そう考えるだけの根拠があるわけか・・・。」

「いや,ありえない話じゃない。

おそらくここに集まったみんなもそれぞれ別の

パラレルワールドから集められたんだろう。

だからもし,ここから出られても一緒の

場所に帰れるわけじゃないと思う。」




ワク君はヴォイニッチワールドのことを

知っていたのでそれとなく,そう説明してみました。



黒山「でも,どうやったらここから出られるんだろう。」

「確か,学校なら校舎内にもPC室があるはずだ。

そこに行ってみれば何か手掛かりがつかめるかも。」




ワク君がそう提案してみました。



リサ「さすが,ワク君!今からみんなで行ってみようよ。」



食堂の扉には鍵がかかっておらず,

すんなりと出ることができました。



しかし,全員が扉をくぐったところで放送が入りました。



放送「あれれ?給食の時間に勝手に外に出たらだめなんだよぉ!

そういう生徒たちには教育的指導が必要だね!」



郷田「まずいぞ!何かやらかすつもりだ!

てめぇの身はてめぇで守れよ!」



郷田は廊下を駆け出しました。

風花もそのあとを追いかけます。



雄太「あ,いっちゃった・・・。」



雄太も追いかけようとしたとき,その肩をつかまれました。



後ろにいたのは黒山氏でした。



黒山「あ・・・。なんか,背中がいたい・・・。」



黒山氏が雄太に背を向けるとそこには体長50センチ

ほどの真っ黒な小鬼が張り付いていました。



メイ「きゃぁぁぁ,あれ何!?」



次の瞬間,その小鬼が

勢い良く膨らみ,爆発しました。



黒山「あぐ・・・。」

その衝撃で黒山氏の胸には

ぽっかりと大きな穴が開き,即死しました。



放送「君たちには教育的指導として,先ほどとは違うタイプの鬼を用意したよ。

捕まったら,5秒後にドカン!即死しちゃうから気を付けてね!」



「なんてこった。あ,梶田たちも

いつの間にかいなくなってる。」




どうやらワク君たちのグループは

出遅れてしまったようです。



トシ「すぐに追いかけよう。」

彼らは校舎のどこかにある

はずのPC室を探し始めました。



―残り17人―





第309話~第312話

2020/2/8

第309話 バトルヤバイヤロ午後 2

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
校舎は4階建てでランチルームは2階にありました。

ワク君たちは突き当りの階段を上に上がっていきました。



先にランチルームを出た梶田たちの

グループも3階でPC室を探していました。



小鬼は天井や教室の窓ガラスを

割って彼らに襲い掛かってきました。



パティシエの水元が犠牲になりました。



水元「お菓子ならいくらでも作って

あげるから助けてぇ・・・。」



ボンッ!!!



その声もむなしく,死亡しました。



梶田「くそ,どうも先ほどの鬼よりも動きが早く,

数が多いみたいだな。一刻も早く見つけなければ。」



続いて,医者の筒井,吉岡も小鬼捕まり

身動きが取れなくなってしまいました。



吉岡「梶田さん,助けてください!」

必死で逃れようとします。



梶田「白鳥君,行くよ!この世界から出る

ためには君の力が必要みたいだからね。」

アヤネ「まって,アタシも置いていかないで!」



ガッシャーン!。



廊下の窓から小鬼が飛び出してきました。



アヤネ「いやっ!こっちにくるんじゃねぇよ!」



懸命に抵抗しますが,足を

つかまれてしまいました。



白鳥「アヤネちゃん!君は僕が守る!」



白鳥氏がアヤネちゃんにとりついた

小鬼を外そうと近づいた時,



梶田「聞こえなかったかい?

君は僕と一緒にPC室へ行くんだよ。」

白鳥「何を言ってる。彼女を置いてはいけない。」



白鳥はその手を振り払い,

彼女のもとへ駆けつけましたが・・・。



アヤネ「いやっ!いやぁぁぁぁ!!」



ボッカァン・・・。



アヤネちゃんは見るも無残に

粉々になってしまいました・・・。





白鳥「そんな・・・。そんな・・・。」



白鳥氏はその場にうずくまり,泣き叫びました。



階段から足音が聞こえてきました。

ワク君たちのグループが追いついたようです。



周辺の惨劇を目の当たりにし,

何が起こったのかを理解しました。



「アヤネちゃんも犠牲になったんだね・・・。」



真木「そんな・・・。」



真木氏も1限目からの顔見知りなので

ショックを隠せませんでした。



トシ君がそっと白鳥氏の肩に手をやりました。



梶田「ここでのんびりしている暇はないよ。

あいつらはどんどんやってくる。」



雄太「でも,これだけ鬼が多いってことは

この階にPC室があるのかもね。」



そういって,雄太は先頭に立って先に進みました。

突き当りを右に行ったところにPC室はありました。



雄太「ここだよ。」



雄太達が合流してからは途中で鬼に

襲われることもなく,無事にPC室につきました。



中は明かりがついており,

すでに郷田と風花がいました。



郷田「おそかったじゃねぇか。」

梶田「小鬼に襲われちゃってね。

生き残ったのはこれだけさ。」



宮川氏は恐る恐る,



宮川「私なんかが生き残ってしまい,あの若い女の子が

死んでしまうなんて・・・。なんとも言えない気持ちです。」



としんみりしていました。



「で,何かわかったの?」



ワク君はPCの画面をみました。



そこには難しいプログラムが並んでいました。



「この言語は,最新のマザーズ言語じゃないか。

なんでこんなものがこのPCに入っているんだ?」






どうやらワク君はPCについて

プロ顔負けの専門知識があるようです。



白鳥「・・・。頑張って解析してみるよ。」



まだ立ち直れない白鳥氏も懸命に

がんばっています。



―残り13人―



第310話 バトルヤバイヤロ午後 3

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
白鳥「これはこの世界を維持するために組み込まれたプログラムだね。

だからこいつを解析して書き直してやれば元の世界に戻れるかもしれない。」

梶田「さすがだね。君を連れてきて正解だった。

今まで隠してきたけど,僕はSE(システムエンジニア)なんだ。

だから君と僕で力を合わせればこいつを解析できるはずだよ。」



梶田は得意げに語りました。



「このプログラムなら俺も読める。俺も手伝うよ!」



白鳥「頼む。モニターはそこに

もう1台あるから,それを使って!」



ワク君は白鳥さんに耳元で何かを囁きました。

彼はそれを聞いて頷きました。



三人はモニターを見ながらキーボードを

カタカタと打ち始めました。





その時,PC室の扉がぶち破られました。

目の前には小鬼が4体もいました。



郷田「おい,あとどれくらいかかるんだ!?」



白鳥「まずは解析を終えないと・・・。

3人でやっても30分はかかるよ!?」



小鬼が少しずつ近づいてきます。



郷田「そんなに待てるか!5分でやれ!」



郷田が叫びました。



梶田「僕も死にたくないからね。

精一杯やっているよ。だからそっちは任せたよ。」



1匹の小鬼が郷田にとびかかりました。

郷田はそれをかわし,渾身の力を込めた拳でたたき伏せました。



鬼は脳ミソぶちまけ死にました。



郷田「おい戦える奴は前に出ろ。さっきの

鬼よりも弱い!時間を稼ぐんだ!」

真木「ちょっと僕は無理かも・・・。」



真木氏は躊躇しています。



「わかった!」



トシ君と雄太が前にでました。

風花は前に出ようとしましたが,

郷田が制止しました。



残る小鬼は3匹です。



トシ君は小鬼がとびかかる前に

思いっきり踏みつぶしました。



彼の体重は相当な重さなので

小鬼はぺちゃんこになって死亡しました。



残りの1匹は雄太にとびかかりました。



雄太「わっ!?」



雄太はとっさに手を振り払い小鬼をよけました。

しかし,小鬼が振り払った先には・・・。



宮川とサエ,メイがいました。



雄太「しまった!?」



小鬼はサエに抱きついて離れませんでした。

サエ「ヤダ!雄兄~!助けて!!」



雄太は小鬼に飛びつきました。

次の瞬間,小鬼は爆発しました。



しかし,間一髪,雄太とサエは無事でした。

メイ「え,何!?何が起きたの!?」



ただ,爆発の巻き添えを食らってしまった,

宮川氏は首が吹き飛び,死亡していました。



「宮川さん・・・。」



ワク君はキーボードをひたすら打ち込みながら

その様子をただ見ているしかありませんでした。



優香「宮川さんが犠牲に・・・。でも雄太君のおかげで

メイちゃんとサエちゃんは無事だった・・・。」

雄太「ああ,僕のせいで二人を犠牲にする

わけにはいかないからね・・・。」



雄太は下を向いてそう言いました。



梶田「やはり僕は天才だ。見つけたぞ。

この世界から出るためのプログラム修正箇所を!」



全員が梶田に注目しました。



「こっちも見つけた。」



白鳥「僕もだ。」



―残り12人―



第311話 バトルヤバイヤロ午後 4

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
ワク君,梶田,白鳥はここから出るための

プログラムをみつけたようです。



彼らはすぐに修正プログラムを組み始めました。



梶田「(ここまでくればもはやこいつらに用はない。

とにかく僕一人だけが助かればいいんだからね。)」

白鳥「あれ?梶田さん,その部分を書き換えてしまったらだめですよ。

それじゃあ脱出する人数に制限がかかってしまう。」



白鳥氏が気付きました。



梶田「これでいいんだ。助かるのは僕だけでいい。

君たちとはここでお別れだ。」

風花「何をわけのわからないことを言ってやがる!?」



風花が回し蹴りを梶田に食らわせようとしましたが,

寸前のところで止めてしまいました。



彼はポケットから拳銃を取り出し,

風花に向けました。



風花「なんでそんなモンを持っているんだよ・・・。」

梶田「3限目の鬼ごっこで実験棟を

探索している時に見つけたんだよ。」



郷田が間合いを詰めようとしましたが,



梶田「おっと,動かないでよ。この中では君とワク君がくせものだからね。

もし変な動きをしたら,女の子から死んでいくことになるからね。」



梶田は片手で拳銃を構えたまま,

もう一方の片手でキーボードを打ち続けました。



「どうしよう,このままじゃ,あいつだけ逃げちゃうよ。」

「・・・。」



ワク君はすぐ隣でキーを打つ彼を

じっと睨みつけていました。



「こうなったら,神AIに出てきてもらって

助けてもらうしかないかもね・・・。」


白鳥「何を言っているんだい?

そんなことありえないよ。」



白鳥氏がその発言を否定しました。



優香「そうですよ。神AIって先ほどまで

流れていたあの放送の人ですよね?

とても助けてくれるようには思えません。」



「あれはおそらく最初からプログラムしてあっただけの人工音声だと思うよ。

本当の神AIは俺たちのすぐ近くにいたんじゃないかな?」




ワク君は話を続けます。



「そうだよね・・・。」



ワク君は一人の少年に目をやりました。



「雄太。君は本当は実在する人間ではなく,

神AIによって作られた人工プログラムなんじゃない?」






雄太は下を向いたままでした。



リサ「え?どういうこと?雄太が神AI??そんなことって・・・。」



雄太「やはり,君はするどいね。君の推測通り,私は君たちが神AIと呼ぶ存在です。

あなた達を間近で観察するためにこの姿をしていました。」



雄太の声が先ほどまでと違う声になっていました。



「ワク君,どうして彼が神AIだって気付いたの?」



「先ほどの小鬼の爆発でケガがなかっただろう。

あれは自分のミスで二人を殺さないために急遽,

自分でプログラムを書き換えて

被害を抑えたんじゃないかって思ったんだ。」




ワク君の推理に,



梶田「なるほど。素晴らしい。さすがワク君だ。」



「それに,俺たちの中で,この部屋を最初に

見つけたのも雄太だ。

それとなくヒントをくれていたんだね。」




なんと雄太はこの世界を

創った神AIだったようです。



第312話 バトルヤバイヤロ午後5

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
なんと雄太はこの世界の神AIだったのです。



アンリ「その話は本当なの!?それなら本物の雄太は!?」



雄太「安心していいよ。彼のデータだけ参考に

しただけだから本物は元の世界にちゃんといます。」



その言葉を聞いてアンリさんは少し安堵しました。



梶田「よし。プログラム修正が完了した!

神AIだか何だか知らないが,この世界とはおさらばだ!」



梶田がキーボードのエンターキーを勢いよく押しました。



その瞬間,PCもろとも大爆発を起こし,

彼の体は粉々に飛び散りました。



梶田「な・・・ぜ・・・。」



「やはり,ブービートラップか。

悪意のある修正をした場合に,その人物に報いがいく仕掛けだね。」




ワク君の説明に郷田が近づいてきて,



郷田「つまり,どういうことなんだ!?

ここから出られるのか!?出られないのか!?」



「それは雄太,いや神AIに直接聞いたほうがいいよ。」



ワク君は雄太を指さしました。



サエ「ほんとに雄兄が,神AIなんだね・・・。信じられないよ。」



雄太「皆さんは,私の壮大な実験のために選ばれました。

それはある隔離空間の中に精神だけを閉じ込め,

極限状態に陥れることでどんな状態になるのか,

その行動実験結果のデータが欲しかったのです。」



雄太が機械的に説明します。



「ふざけんなぁっ!!」



ワク君は雄太を思いっきり

殴り飛ばしました。



真木「ワク君っ!?」



真木氏がワク君に駆け寄りました。



「どれだけの人間が死んだと思ってるんだよ!?」



雄太「残念ながらそういう,

感情は持ち合わせていません。

私が欲しいのはデータでした。

そしてその目的もすでに達成しました。

あなた達を開放しましょう。」



彼が目を閉じて何かをつぶやき始めました。



すると周りの空間が溶け出すように消えていき,

上も下もない真空のような空間に変わりました。



優香「本当にコンピュータの中の世界だったんですね。」

風花「信じられないな・・・。」



雄太「もう間もなく自分たちのいた世界に戻ることができます。

ただし,ここでの記憶は一切失われるように設定してあります。」



すでに雄太の姿は見えませんで

したが声だけは聞こえました。



その時,バチバチバチ・・・と音がしました。



雄太「・・・!?これは・・・!?」

白鳥「これだけの犠牲が出たんだ・・・。

僕の大切な人もお前は奪った!」



白鳥氏が真っ暗な空間の中で叫びました。

すると神AIが現れました。



まるで映画のスクリーンから飛び出すCGで

できた人の顔のアップに見えました。



神AI「一体に,お前たちは何をした!?」



「梶田が一人で作業をしている間に,

俺と白鳥さんでこの世界の破壊プログラムを仕込んだんだよ!」




この怪しい音と時空の乱れは

ワク君と白鳥氏によるものでした。





神AI「そんなことができるはずが・・・。」

「予め作っておいたプログラムを梶田が

爆発した直後に組み込んだんだよ。だから気付かれなかった。」




神AIはどうやら自己修復機能を実行しようとしていました。



神AI「自己修復機能ON!再生プログラム・・・。」



白鳥「そんなことはお見通しだよ!

IT企業の社長をなめるな!」



空間の乱れが最大に達した時,

神AIの断末魔が聞こえました。



そこからしばらく,意識のない状態に陥りました。

目を開けるとそこは・・・。



第313話~第316話

2020/3/23

第313話 バトルヤバイヤロ午後 6<完結>

ワクのわくわく冒険記シリーズ

*本作は登場人物が多岐にわたるためイラストは基本的に白黒ラフにします。
ワク君が目を覚ますと,隣にはトシ君が倒れていました。

そこはいつもサッカーをするグラウンドの草むらの中でした。



「おい,トシ起きろ!」



ワク君がトシ君の体を揺らすと,



「あ,いてて・・・。」



トシ君も起き上がりました。



「なぁ,記憶・・・あるよな・・・。」

「そうだね・・・。覚えているよ・・・。」



どうやら二人は記憶を失っていなかったようです。



「おそらく神AIが自己修復に失敗してデリートされたから

俺たちの記憶も消されずにすんだのかもしれないな。」




トシ君はあたりを見渡し,



「本当にここが元居た世界なのかなぁ・・・。」

「そうだと,信じたいが・・・。」



二人に近づく影がありました。



「誰だ!?」



振り向くとそこには・・・。



リサ「やっと,目が覚めたんだ。よかった!」



なんとリサちゃんが目の前にいました。



「なんで,君がこの世界に!?

元の世界に帰ったはずじゃ!?」




リサ「だから,ここがもともと

アタシがいた世界なんだって!」



どうやらワク君たちとリサちゃんは同じ世界から

あのデジタルワールドへ飛ばされていたようです。



「そうだったんだ!じゃあ,

これからも一緒に遊べるね!」




リサ「アタシはね,知的レベルが

近い子と遊ぶのが好きなの!」



リサちゃんは相変わらずトシ君に

対しては手厳しいようです。



「よかった・・・。戻ってきたんだ・・・。」



リサ「アタシは一度,家に帰るけど,

戻ったら必ず連絡ちょうだいね!約束だよ!」



ワク君はリサちゃんと

指切りの約束をしました。



「他のみんなもそれぞれの世界に

無事戻れているといいんだけどね。」






彼は沈みゆく夕日を眺めながらそうつぶやきました。



こうしてワク君とトシ君の生死をかけた

デスゲームの旅は終わりを告げました。



いつかまた,ヴォイニッチワールドの扉が開く時,

彼らはどこか別の世界に行ってしまうのでしょう。



しかし,それはまたいつか別の機会に・・・。



第314話 頭目 前編
中野木学区には大型ショッピングセンターWOZOがあります。

ここには毎日多くの人が訪れ,買い物やデート,食事などを楽しんでいます。



2Fの一角には大手ゲームメーカーが

参入しているゲームセンターがありました。



時間は夜の20時を過ぎたところです。



あまり人気のないシューティングゲームを

一人でひたすらプレイし続ける少年がいました。



彼の名前はイツキ。

少年昆虫団の一員です。



「(たまには一人でゲームもいいな。

ここのところほぼ毎日,昆虫採集だったしな・・・。)」




彼がゲームをプレイしていると

突然後ろから何人もの集団が入ってきました。



全員が学生服を着ていたので中学生か

高校生以上だということはわかりました。



見た目からしていかにも

ガラが悪く,いわゆる不良集団でした。



「(なんか、変なのが来たな・・・。

面倒くさいことに巻き込まれないうちに帰るか・・・。)」




イツキ君は,なるべく自分よりも喧嘩で格下したと

思われる相手とは関わらないようにするようになっていました。

ドンッ!!



突然,壁に何かが

当たる音がしました。



どうやら側にいた中学生がカツアゲにあい,

後頭部を思い切り壁に打ち付けられたようです。



カツアゲをされている少年はいかにも身長も低く,

見た目も弱そうで,某未来ロボット漫画に

出てくる少年のような出で立ちでした。





「(あちゃー・・・。かつあげかよ・・・。

こんな時間までいるからだよ・・・。)」




今日はだぬちゃんがいなかったので

その発言に対してツッコミがはいりませんでした。



イツキ君はゲームを切り上げ,

ゲーム台から離れようとしました。



その様子を少しだけチラ見し,



「(ま,助ける義理はないわな・・・。)」



と心の中でつぶやきました。



不良1「いいからさっさと出せよ!」





リーダー格と思われる人物がさらに激しく

その少年の後頭部を壁にたたきつけました。



少年「痛いって・・・!?いい加減にしてください!

あなたたちに渡すお金はないんです!!」



不良2「なんだと!コラァ!!」



全部で10人ほどの不良集団は

一斉に彼の周りを囲んで圧力をかけます。



イツキ君はその様子をもう一度横目で見ました。



するとその少年と目が合い,



少年「助けてください!お店の人を呼んできて

くれるだけでもいいですから!」



「えー・・・。」



イツキ君は面倒くさいと思いましたが

それくらいならいいかと考え,

店員を呼びに行こうとしました。



不良1「おい,ちょっと待て!」



リーダー格の人物がイツキ君の足を止めました。

それはこの場においてもっともやってはいけないことでした。



なぜならイツキ君が本気になれば彼らなど

一瞬でなぎ倒すことが可能だったからです。



しかし,彼らはそれを上回る本当の悲劇が

訪れることをまだ知りません。



「あ?」



不良1「ガキ!どこに行こうとしている!

チクられてサツでも呼ばれたら面倒だ。」



不良2「ですね。そんなことになったら

高須さんに殺されちゃいますからね。」



イツキ君はこの二人の人物の会話に出てきた

高須という人物を知っていました。



「高須?あの“ゴルゴダ”の高須か?」



不良1「なんでこんなガキが高須さんの

ことを知ってるんだよ!フカシてんじゃねぇぞ!?」



イツキ君に顔を近づけてそう威嚇しました。



「なるほど,お前たちは高須が

仕切っているメンバーってわけか。つまりその上には

“三大悪童”の“ファーザー”がついているってことだな。」




不良3「百家(はっけ)君,こいつどうして

そんなことまで・・・!?」



ファーザーという名前を出した瞬間,

不良グループに動揺が見られました。



第315話 頭目 後編
イツキ君に絡んできた不良グループの

リーダーは百家(はっけ)と呼ばれていました。



「たしか高須の上には“手塚”がいたよな。

手塚はファーザーの参謀で実質ナンバー2じゃなかったか?」




百家「このガキ、どうしてそんなことまで!!」



どうやらイツキ君は三大悪童の組織に

ついてその詳細を知っているようでした。



すると後ろから背筋が凍るほどの激しい覇気を

持った人物が近づいてきました。



その人物は一瞬にしてこの場にいる全ての

人間を掌握するに足る威圧感を持っていました。



百家「あ・・・あ・・・。」



彼が振り返ると190cmはあろうか

という大男が立っていました。



<三大悪童の一人 ファーザー 轟名は“頭目”>



後ろには取り巻きが3人いました。



その中には先ほど名前の挙がっていた

“手塚”という男も含まれていました。



不良グループはあまりの恐怖に冷や汗をたらし,

その場から一秒でも逃げたい衝動にかられました。



少年「なに・・・?この大きな人・・・!」



「これは、これは・・・。

頭目(ファーザー)じゃねぇか。

部下のしりぬぐいにでも来たのか。」




ファーザーの轟名(ごうな)は

頭目(とうもく)と呼ばれているようです。



イツキ君が不良たちの間に

入ってその大男に声をかけました。



ファーザー「てめぇは、イツキか。

なんでこんなところにいやがる。」



「そんなのは俺の勝手だろう。」



どうやらイツキ君は三大悪童の一人,

“ファーザー”と呼ばれる人物と顔見知りだったようです。



百家「なぜ,このガキが頭目(ファーザー)と

知り合いなんだよ・・・。」



イツキ君とファーザーはにらみ合ったままです。



取り巻きの一人が不良グループの

リーダーである百家に声をかけました。



彼が手塚でした。



彼には額に特徴的な傷がありました。



手塚「まさか,カツアゲをしていたなんてことはないよな!」



<ファーザーの参謀 ナンバー2 手塚>



百家「い,いえそんなことは・・・。」



百家とその仲間は今にも死にそうな顔をしていました。



ファーザー「おい,こいつらはお前の傘下の連中か?」



彼は取り巻きの一人に聞きました。



手塚「はい。俺の直属の配下グループ,

“ゴルゴダ”のメンバーでしょう。

普段は“高須”って奴が仕切っていますが,

さらに小さいグループに分けて統率しているみたいです。」



どうやらファーザーが率いる不良軍団は

多くの傘下から成り立つ巨大な組織のようです。



ファーザー「カツアゲ大いに結構。強盗,殺人,脅迫,放火,

暴漢,詐欺,テロなんでもOKだ。

俺の組織にいる間は全てが許される。」



百家「はっはい・・・!」



百家が安堵した瞬間・・・。



猛烈な勢いで彼の体が吹き飛ばされていきました。



ゴウッ・・・。



人が吹き飛ぶ時の嫌な音

だけが響き渡りました。



イツキ君に助けてもらった少年には

何が起きているのか理解できませんでした。



ファーザーが放ったこぶしは百家の胸をえぐり,

彼はゲームセンターの一番奥の

壁にめり込む勢いでぶつかっていました。



あまりの恐怖に一緒にいた

不良グループの中には失禁している人物もいました。



「・・・。」



手塚「何をやっても許される・・・が,ここは駄目だろ。

ここは頭目と同じ三大悪童の“マザー”との縄張りの

境界線上に位置する地域だ。頭目の怒りを買うのも当然。」



このWAZOというショッピングモールは三大悪童が

覇権を争うテリトリー上にある場所だったのです。



ファーザー「つい先日,こいつらを含め大きな戦をやった

ばかりだというのに,今ここであいつともめ事を起こして

さらに戦力が減ったらどうするつもりだ。」



ファーザーはイツキ君を睨みつけました。

こいつら,というのはイツキ君のことでした。



もう一人は・・・。



手塚「その通りです。庄外川の大戦(おおいくさ)では,死んだ奴,

大けがした奴を含めかなりのダメージがでました。」



彼もイツキ君を激しく睨みつけ,



手塚「俺はお前とあのタモを持った奴にやられた

恨みは忘れていないからな!」



もう一人の人物とはやはりリク君のことでした。



どうやらこの庄外川の大戦(おおいくさ)で

リク君とイツキ君は三大悪童とやりあっていたようです。



ファーザー「よせ,もう終わったことだろう。それにお前じゃ

何度やっても腕っ節でこいつには勝てねぇよ。

俺がお前に期待しているのはその明晰な頭脳だ。」



手塚「はっ・・・!」



天草「僕たちはこの後,こいつらの後始末を

しないといけないんで,君たちには早急に

この場から去ってもらいたい。」



天草と名乗る人物の申し出により,イツキ君はカツアゲされていた

少年とともにWAZOから出ていきました。



「じゃあな。ここまでくればもう大丈夫だろう。

今日のことは早く忘れるんだな。」




イツキ君がその場から去ろうとすると,



少年「待ってください!助けてもらったお礼がしたいんです!

名前と,イヤコムの認識IDを教えてください!

というか,君って僕より年下ですよね?

それなのにあの三大悪童と知り合ってどういうことですか!?」



「礼なんていらん。俺が奴と知り合いなのは

個人的なことだからお前が知る必要はない。

それに年下というが,あのファーザーだって小学6年生,まだ12歳だぞ。

あんたは中学生だろう?あいつだってあんたより年下だ。」




三大悪童は全員が中野木小学校の児童なのでまだ小学生なのです。



にもかかわらず恵まれた体格と圧倒的なカリスマ性と

その実力により近隣の不良グループをまとめ上げ,

巨大な悪の組織を作り上げたのです。



庄外川の大戦(おおいくさ)とはどんな戦いだったのか,

それはいずれ明らかになることでしょう。



高木「あ,僕の名前は高木といいます。

中野木中学1年です。よろしくお願いします。」





<イツキが助けた中学生 高木>



イツキ君は相手にせずその場から去っていきました。



高木「あ,行ってしまった・・・。結局IDも教えてもらえないし・・・。

まぁ,いいか。彼,有名人みたいだし!きっとまたどこかで会えるはず!」



第316話 プロローグ 前編

冥界の悪魔シリーズ 序章
少年昆虫団は夏の暑い日差しを避け,

夜の8時くらいにある場所へ来ていました。



それはいつもの昆虫採集場所ではなく,名古屋港から

車を20分ほど走らせたところにある新海釣りマリリンパークでした。



目的は昆虫採集ではなく,海釣りでした。



ここは家族連れできても大丈夫なように柵が張ってあり,

海に落ちないようになっています。



さらに足場もよく海釣りには最適なのです。

先端に行くとチヌやフッコなども釣れると言われています。



レオンさんは車に積んであった荷物を下ろし,運んで行きました。



「さぁ,何が釣れるか楽しみだね。」

「レオンさんは,釣りをしたことがあるのか?」



イツキ君が聞きました。



「ああ,若いころは休暇を取ったらよく海に行っていたよ。

最近は任務が忙しくてなかなかできなかったけどね。」




レオンさんは自分用のマイ竿を伸ばし,準備を始めました。



横でトシ君が自分の竿から

出た糸に絡まってもがいていました。



「いや,ちょっと,これってどうなってんの・・・!?」



もがけばもがくほど身動きが取れなくなっていました。



「いったい,何をやっているんですか・・・。

事前に準備をしてこないからそんなことになるんですよ。」




だぬちゃんがトシ君にライトを照らしてあげました。



「いやいや,オイラだってライトくらい持ってきているよ。

自転車用のだけど明るさは8000ルーメンにもなるぜ!

それにロッドはあの坊主逃れで有名な"海坊主"だよ!」


「宝の持ち腐れだ。」



イツキ君の一言に,



「何をー!?絶対にイツキ君よりデカイ魚を釣ってやる!」



その隣でリク君が黙々と仕掛けの準備をしています。



「魚釣りって言うとこの前,庄外川で川釣りしたよねー!」

「ああ,そんなこともありましたね。」(105話参照)



だぬちゃんは手慣れた様子で仕掛けを

竿につなぎ,すでにエサをつけ始めていました。



どうやらだぬちゃんはみんながメバルやコアジなどの

小物を狙う中,チヌを釣ろうとしているようでした。



「カニやカメジャコよりもストロームシ!だぬはあれから

実力があがっていますからね!今日は釣りますよー!」


「そういえば,あの時,俺たちに話しかけてジジィがいたよな。

リクはそのジジィを闇組織JFのスパイであるグレイの候補にいれていたよな。」




彼の口が悪いのは御愛嬌。



「いたねぇ。結局あの人は何者だったんだろうね。

今はグレイ候補で一番怪しいのは灰庭さんだしねぇ・・・。」


「どんな人だったんだい?」



レオンさんは準備を終え,リク君たちの会話に加わってきました。



「俺たちのことを童(わっぱ)とか呼んでいたな。

それと,変なことも言っていたよな。」


「“川は自分を映し出す鏡”とか言っていたね。」



リク君がレオンさんに自分が聞いたことを伝えました。



「あれは何と言うとしていたんだろうな。

ほら,“川が汚くなっていずれ魚もいなくなってしまう。

まるで-”って言っていただろ。まるで・・・何だったんだ?」


「!?」



横で聞いていた彼の顔が一瞬,

固まるのがわかりました。



「レオンさん?どうかした?」

「(まさかね・・・。)いや,なんでもないよ。」



リク君たちは本格的に魚釣りに集中し始めました。

果たして釣果は・・・。



―場面は変わって,とある料亭のVIP席にて―



一番奥の上座に一人の老人が座り,横には

お酒の相手をしているだろう女性が二人いました。



その老人の部下と思われる黒いスーツを

着た男が下手で正座をして待機していました。



どうやら彼は先ほどリク君たちが話題に出していた人物でした。

その人物は携帯電話でどこかに連絡を取っているようです。





<“カンジ”と呼ばれる謎の老人>



電話が終わると部下らしき男が,



部下らしき男「カンジ様,お伝えしたいことがございます。」

カンジ「ああ,何も言う必要もないよ。全て分かっている。」



ちなみに昆虫団の釣果は,小物は

釣れましたが大物は釣れませんでした。



チヌを狙った,だぬちゃんは坊主に終わりましたとさ。



第317話~第320話

2020/5/16

第317話 プロローグ 中編

冥界の悪魔シリーズ 序章
愛知県西部の町はずれに大きな病院がありました。



病院の名前はジャファ記念病院。



名前の通り,表向きはジャファコンツェルンが経営し,

裏では闇組織JFの息がかかった病院でした。



その病院の4階の一室に二人の男が入院していました。



それは先日の各務原山で負傷した

今村の部下である,牟田と山下でした。



時間は深夜2時を過ぎた頃,その病室に

向かってひっそりと近づく影がありました。



全身を黒い服で身を包み,フードを

深くかぶり,どんな顔なのかは見えません。



その黒い人物はそっとその病室に入り込み,

懐から注射器を取り出し,彼らの点滴に何かを注入しました。



牟田「ぐっ・・・。」

山下「苦しい・・・。」






<山下(左)と牟田(右)>



数十秒後,二人は苦しみだし,

警報音が病室内に響き渡りました。



その警報を聞き,ナースが駆けつけた時,

黒いフードの人物は病室から姿を消していました。



その後,彼ら二人の死亡が確認されました。



この件は病院長から闇組織JFの源田に伝えられました。

病院長以下数名の幹部のみが闇組織JFとつながりがあるようです。



闇組織JFの本拠地バベル最上階の一室に山犬の山本,森熊の源田,

海猫の今村が席について真剣な表情で会議を行っていました。



部屋の中は高級ホテルさながらの装飾と広さで,

窓からは名古屋の夜景が一望できました。



つい先ほど今村の部下二人が

死亡したことが源田より告げられました。



今村「・・・。私としては心苦しいですが・・・。」

源田「仕方あるまい。彼らはあの各務原山の

一件で大きな過ちを犯した。消す以外に方法がなかった。」



源田は椅子に深く腰掛け,溜息をつきました。







すぐ隣で話を聞いていた山本が,



山本「本当は内心,喜んでいるんじゃねぇのか。

無能な人間はいらないっていうのがあんたの信条だろ。」



彼は不敵な笑みを浮かべました。



今村「フォッフォッフォッ。貴方と一緒にしないでいただきたい。

ただ,御前の御意向は全てにおいて優先される。」



山本「その通りだ。これ以上,“菊”に色々と探られるとやっかいだからな。

“菊”の暗殺計画の件もあり,今村の部下を消すのはこれでも遅いくらいだ。」



山本は右手をテーブルの上に置き,人差し指でトントンとテーブルを叩きました。



今村「何にせよ,組織の防衛は穴熊の源田さんの管轄。」



今村は源田に話を振りました。



源田「組織の警備は任せておけ。直属の部下,キラーにも

菊の幹部,小早川の息子の詳細を探れと命じてある。」

今村「諜報活動は藪蛇のアヤさんの管轄では?」



今村の質問に源田は,



源田「今回のキラーの任務はあくまでサポートだ。

そのために必要な情報を集めることは我々の管轄で問題ない。」



藪蛇のアヤはこの場にはいませんでした。



山本「小早川の息子は必ず殺す。

奴は以前,影(シャドー)の奴に盗聴器を仕掛けて

お前との会話を盗み聞きしている。」



山本が口を開きました。



今村「フォッフォッ。そうでしたね。だから私はすぐに源田さんに

連絡をしてバーを移転してもらったじゃないですか。」(第102話参照)

組織の存在を少しでも隠すためにそこまでやってしまうのが源田という男でした。



山本「それに,俺と源田サンが"例の件"で中野木署を

探った帰りに乗った車にも盗聴器が仕掛けられていた。

後を追わせた部隊の話では相手は小早川の

息子と平成のファーヴルだったそうだ。」(第181話参照)



山本は話を続けます。

源田は黙って聞いていました。



山本「奴らが繋がっていることは懸念事項だぞ。

菊とあのガキこそ,我々にとって最も

危険分子なのは間違いない。」



源田「そうだったな。あの時は部下を連れて,通常訓練の帰りだった。

俺はそのついでにお前と合流して中野木署付近まで行ったんだったな。」




どうやら山本はレオンさんの事をかなり警戒しているため,

今回の暗殺計画を実行し早急に消してしまおうと考えているようです。



第318話 プロローグ 後編

冥界の悪魔シリーズ 序章
山本は小早川教授の息子であるレオンさんの事をかなり警戒していました。

そのため,今回の暗殺計画を実行し早急に消してしまおうと考えているようです。



山本「菊・・・。次は,次こそは必ず壊滅させてやるさ。

奴らは俺たちの組織に楔(くさび)を入れようとした。」



今村「そのセリフ,リ・セ・ッシュでも言ってたらしいじゃないですか。 (第177話参照)

それは沼蛭の彼の死を指しているんですか。でもあれは自殺のはずでしょう。

それにその後,こちらも警視庁のキャリア組を一人葬ったんですから痛み分けでは。

あの時はまだ菊と全面対決したわけではないでしょう。」



シックスユニットの一つ,沼蛭のリーダーは警視庁の

誰かとの抗争の最中に自殺していたようです。



それがどんな抗争だったのかはいずれ明らかになることでしょう。



今村「さて,もう夜も遅い。そろそろ休ませてもらいますよ。」



バベルの中層にも高級ホテルが経営されていました。

JFの幹部たちはそこで不自由ない生活ができるようです。



彼が部屋を出ようとした時,山本が,



山本「ああ,そうだ。元々,ヤツの部下だった

影(シャドー)と大西(グレイ)だったか。

そいつらはちゃんと仕事してんのか?御前に嘆願して,

アンタが自分のユニットに組み込んだんだろ。」



今村が振り返り,



今村「もちろんですよ。私の命じた指令を忠実にこなしてくれています。」

山本「ふんっ。どんな指令を出しているのやら・・・。どうせ教える気はないんだろ。」



山本は特に影(シャドー)の存在が少し気になるようでした。



今村「元々,影(シャドー)とは電話やメールでやり取りをしていたので,

顔を合わせたのは本当につい最近なんです。

君も彼の存在は知っていても面識はないでしょう。

彼って結構,組織の中でも謎な存在なんです。」 (第101話参照)

山本「ずっと一人で沼蛭を運営していた奴の元に,

1年前,御前の勅命により二人の部下が組みこまれた。」



山本の発言に,源田が,



源田「そうだ。だからあの二人は同期ということになる。俺はお前たちと違って,

以前からあの二人と面識がある。森熊は組織の警護と規律を任されているわけだから,

準幹部以上の顔と行動を把握する必要があるからな。」



と補足して付け加えました。



山本「ああ,そうだ。確認しておくが,先ほどの報告にあった,

今村の部下を殺ったのはあんたの直属の部下であるキラーなんだな。」



山本が源田に確認しました。



源田「ああ。奴は殺しのプロだからな。狙撃だけじゃなく

様々な殺しのテクニックを持っている。

遺体を石井軍医に引き渡すことが

決まっていたので,銃を使わずに実行させた。」



山本「俺に勝るとも劣らないコロシ好きなヤツだな。」



山本はなにやら嬉しそうです。



源田「ああ,奴はまさに“冥界の悪魔”だ。

どんな相手でも狙われたら最後,必ず殺される。」



源田は直属の部下であるキラーと

いう人物を相当信頼しているようです。



“冥界の悪魔(キラー)”の異名をもつ

手練れの暗殺者がリク君たちに迫ってくるのかもしれません。



今村は背を向け,手を振りながら部屋を出て行きました。

部屋には山本と源田が残っていました。



山本「まぁいいさ。どのみち菊の幹部は今回の作戦で必ず仕留める。」



彼はいきなりポケットに隠し持っていた

ナイフを壁に向かって鋭く投げました。



刺さった先には写真が貼ってありました。

その人物は今回のターゲットである小早川レオンでした。



山本「親子そろって組織にたてつくとは馬鹿な奴らだ。」



源田「俺はこの後,アヤの所へ行く。アヤから大西(グレイ)に

連絡を取ってもらい,菊の動向を探らせる。

闇の騎士(ダークナイト)が死んだ以上,奴に探らせるしかないからな。」



こうしてそれぞれの思惑を胸に,夜は過ぎていきました。



―少し時間はさかのぼり―



場面は変わってカブクワキングの店内。



すでに営業時間は終わっており,

バイトの灰庭氏が一人で片づけを行っていました。



すると彼の持っていた携帯電話に着信が入りました。







彼は点灯した携帯電話の液晶画面に映る

番号をしばらく見つめ,やがて電話に出ました。



灰庭「こんな時間に何の用で?」



・・・。



電話越しの相手と何か話をしています。



灰庭「なるほど・・・そういうこと・・・。

了解・・・。明日・・・。」



灰庭氏と電話をしているのは一体・・・?



本当にリク君の予想通り,彼が闇組織JFの一員である

大西(グレイ)なのでしょうか・・・?



第319話 レオンのおしゃれな休日

冥界の悪魔シリーズ 第1章
夏の暑い日差しを遮って木々の生い茂る並木道をまっすぐ歩いていくと,

ピンク色の看板に「カフェ・オーシャン」と書かれた,

ブルースカイを基調としたとてもおしゃれなカフェがありました。



先週,新規開店したばかりですが,すでに平日の昼間から

ビジネスマンや大学生の憩いの場となっていました。



そんなカフェに一人の青年が英字新聞を読みながら

熱いコーヒーの香りと味を嗜んでいました。



彼の名前は翠川レオン。



中野木大学の院生で昆虫学を専攻しています。



しかし,それは仮の姿で本当は東京の

警視庁から派遣された警察官でした。



警視庁公安,闇組織JF対策の“菊水華”と

呼ばれるチームに所属していました。



彼は組織を壊滅させるため,闇組織JFの

本拠地がある名古屋にやってきたのです。



「優雅に一人で飲むコーヒーはまた格別にうまい。

こんな時は大学のレポートのことも忘れゆっくりしたいものだ。」




レオンさんは初めて訪れたこの店の

コーヒーをたいそう気に入ったようです。



「しかし現実は,潜入捜査で大学に潜り込んだだけなのに

学生と同じようにレポートの提出をしないといけない・・・。」




レオンさんが一人でぶつぶつと言っていると,

可愛らしい店員が声をかけてきました。



店員「あの,お客様,先ほどから何か独り言をつぶやいていますけれど,

当店のことで何か気になることがございますか。」



店員の胸につけられたプレートには

「立花 馨(かおる)」と書かれていました。



「いえいえ,ちょっと現実逃避していただけなのでお気になさらずに。

あれ,貴方って先日,オイラにこのお店のパンフを渡してくれた人ですよね。」






<カフェの店員 立花 馨(かおる)>



かおる「あ,そういえば!新規開店したばかりなので人が足りなくてマスターと

他のバイトの方と一緒に商店街で宣伝していたんです。」



どうやらレオンさんは街中を歩いていたところ,

たまたまこのお店のパンフをもらい,やってきたようです。



かおる「私,馨(かおる)と言います。

どうぞゆっくりしていってくださいね。」



とても笑顔が素敵な店員でした。



「あ,はい。それじゃあお言葉に甘えて・・・。」



レオンさんが再び英字新聞を読もうとしたとき,

店の入り口から少年たちが声をかけてきました。



それは少年昆虫団のみんなでした。



「あれ,みんな・・・。なんでここに?」



リク君たちはレオンさんの座っている席までやってきました。



「今日はまさらちゃんの長い

買い物に付き合う日だったんだよ。」


「悪かったわね。長い買い物で!」



まさらちゃんは後ろからリク君の背中を小突きました。



「レオンさん,髪型ちょっと変えたんですか?」

「あ,わかる?」







レオンさんは現役の大学生にしか見えませんでした。



「というか,なんかイケメンになりすぎじゃね!?

最初に会った時はもっと,ロン・・・。」(第31話参照)




トシ君はそこまで口に出し,飲み込みました。



「店の前を通ったらたまたまレオンさんが

中にいるのを見かけたから入ってみたんだ。」


「ああ,そういうことね。」



レオンさんは英字新聞を折りたたみ,店員さんを呼びました。



かおる「はい,お待たせしました。」



かおるさんが笑顔でやってきました。



レオンさんは昆虫団のためにジュースを注文してあげました。

オーダーを受けるとかおるさんは店の奥に戻って行きました。



「なんか,可愛い店員さんですね。さっきも何か

デレデレしながら話をしていましたよね。」


「いやいや,別にデレデレなんかしてないよ!」



彼は耳が赤くなり,目が泳いでいました。

動揺していることは火を見るより明らかでした。



リク君が何かに気付いたのか,

レオンさんの体をクンクンとかぎ始めました。



「ちょっと,何してるのよ!?」



するとリク君は,



「いや,なんかちょっと線香の匂いがすると思って。」



と言いました。



「ああ,午前中はちょっと

墓参りに行っていたもんだからね。」


「それってお父さんの墓か?」



イツキ君が聞きました。



「う~ん・・・。」



レオンさんの返事はいまいち曖昧でした。



「まぁまぁ,そんなことよりも追加で

このスイーツも食べたくなったよ!」




トシ君が空気を読まずに勝手なことをしゃべりだしました。



結局,レオンさんは昆虫団と

小一時間ほどカフェで過ごしました。



「実はオイラもこの後,君たちに連絡を

しようと思っていたところだったんだ。」


「ああ,いよいよ明日キャンプだもんね!」



リク君が言いました。



「それもあるんだけど,相談したいことがあったのさ。

それとカブクワキングだっけ?

久しぶりにあの店に行ってみたいんだ。」


「相談?」



リク君はいまいち見当がつきませんでした。



「あんなところに何の用事があるのさ。」



イツキ君が聞くと,



「ほら,オイラは一応,昆虫学の院生でしょ。レポートを

書かないとだめなんだよねー・・・。そのネタに

なりそうなものを探しに行きたいわけ。」




みんなは潜入捜査も大変なんだな,

と思いながらも納得していました。



この後は,キングに向かうようです。



第320話 レオンのゼミ仲間

冥界の悪魔シリーズ 第1章
レオンと少年昆虫団がカフェを出ようと席を

立つと,レオンさんのイヤコムに着信が入りました。



「おっと。こっちはプライベート用か・・・。」



レオンさんはイヤコムの通話ボタンを押し,会話に出ました。



「え?レポートのことで相談したい?オイラも今から材料を

集めようと思っていたところなんだけど・・・。

え?今どこにいるかって?地元に新しくできたカフェ・オーシャンだけど。」




レオンさんの相手はどうやら同じ大学の学生のようでした。



「え?近くにいるから今から店まで来るって?

いいよ,来なくて。え?もうすぐ着くって・・!?」




相手はいきなりイヤコムを切りました。



「相変わらず,マイペースな人だ・・・。

ヤバイ,まじで来るつもりか・・・。」


「なんか,大学院生に成りきって

捜査をするって大変なんだな。」




イツキ君が同情しました。



店の扉が開いて,誰かが入ってきました。



すぐにレオンさんを見つけ,

手を振りながらこっちに向かってきました。



それは,とても大学生には見えないような幼い顔した女性でした。



髪型はセミロングで目がクリっとしていて

とてもキュートな容姿をしていました。



彼女は“一 久遠(にのまえ くおん)”といいました。



久遠「レオン君~!お待たせっだよ!

一緒にレポートを書こうっ!

あ,なんかいいにおいがする。

くおんも何か食べたーい!」



久遠さんはホットドックを注文しました。

程なく料理が届くとパクパクと食べ始めました。





<レオンのゼミ仲間 一 久遠(にのまえ くおん)>



久遠「くおん,コレ大好きなんだー!」



どうやらかなりマイペースな性格のようです。



久遠「さぁレポートだよ!レ・ポ・オ・ト!!一緒に書くんだよっ。

ってかこの子達はレオン君のお知り合い?」



久遠さんはリク達とお互いに自己紹介をしました。



「いや,だからオイラは別に自分一人でも書けるんだって!!」



少年昆虫団はそのやりとりを面白そうに見ていました。



「ははぁん!レオンさんって意外にプレイボーイなんだね。」

「いや,なんでそうなんの!?オイラ,

これでも結構困っている状況なんですけど。」




小声でまさらちゃんにツッコミました。



「いいじゃないですか。可愛い女性が同じ

ゼミにいるなんて。羨ましい限りです。」




「そう,言っていられるのも今のうちだよ・・・。

彼女,ちょっと変わっているから色々と大変なんだよ。」




今度はだぬちゃんにむかって苦言を呈しました。



「でも,この前,大学に行ったときには,

いませんでしたよね?鎌切(カマキリ)っていう

教授だけしか部屋にいなかったと思うんですけど。」




久遠「ああ,え~っとね。う~んと,あの時はぁ・・・。」



大げさなしぐさで何かを思い出そうとしています。



「いや,別にたいしたことじゃないんで

無理して思い出さなくてもいいです。」




久遠「ああ,そうそう。あの日はね,

料理研究部の人たちと料理を作っていたんだぁ!!!」



久遠さんは何かを思い出したようです。



「わぁ,すごい!何を作っていたんですか?楽しそう!!

そういう大学生活ってなんか憧れるなぁ・・・。」




まさらちゃんはうっとりしています。



久遠「えっとねぇ!ゴキブリのチョコレートフォンデュ!

メタリックな色とチョコの色が上手いこと調和して最高なんだよね!」



「チーン!」



まさらちゃんはその場に倒れこみました。



「あたしのあこがれ大学キャンパス

ライフのイメージを返して・・・。」


「まさらちゃん,大丈夫・・・?気持ちはわかるぞ!」



もちろんゴキブリっていってもその辺に生息する

ものではなく,海外から輸入した食用ゴキブリだそうです。



久遠「あとはね,ゲンゴロウのスープ!

これもまた漢方薬みたいな味がしておいしいんだなぁ!」



「それは美味しいというのか・・・。」



今度はイツキ君があきれながらそう言いました。



久遠「あとはねぇ・・・。」



「もういいから・・・。わかったよ,

一緒にレポートを書く,書くから・・・。」




レオンさんはすでに疲れ切っていました。



「な,この人・・・結構大変だろ・・・。」



レオンさんの発言に少年昆虫団は全員同意しました。







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