リクの少年昆虫記-過去のお話-

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目次


第337話~第340話

2020/10/4

第337話 天下一ヴィート武道会衝突! 
天下一ヴィート武道会の二回戦

第一試合はイツキ君VSスナ君でした。



イツキ君は初手,攻めのヴィートである

「極軸移動(ポールシフト)」を放ちました。



スナ「甘いな!お見通した!」



スナ君は砂嵐(サンドストーム)で

イツキ君の攻撃をしのぎます。



「くっ・・・。」



イツキ君はいくばかの

ダメージを負いました。



「まだまだぁ!!」



-極軸移動(ポールシフト)-



さらにたたみかけるように攻めヴィートを続けます。



スナ「やるなぁ!さすがイツキ氏!!」



-火山灰(ボルカニックアッシュ)-





今度はスナ君も攻めのヴィートです。



強烈な熱風と火山灰が相手を襲い,一瞬で周囲を焼き

つくす驚異のヴィートであり,スナ君のとっておきです。



お互いのヴィートが激しくぶつかり合います。



「うっおぉぉぉぉ!!!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・。そして大きな

衝撃と共に二人が飛ばされて倒れました。



スナ「ぐっ・・・。」



まさらちゃんやトシ君はその様子を

観客席で不安そうに見ていました。



「イツキ君,がんばれー!

スナなんかに負けるなよー!」




リク君も精いっぱい応援します。



-火山灰(ボルカニックアッシュ)-



スナ君は立ちあがると再度,攻めの姿勢を見せます。



それに対して,ふらつきながら立ち

あがったイツキ君が選択したヴィートは・・・。



-南極人間(ニンゲン)-





「特殊ヴィート!?」

「ちっ・・・!?」



特殊ヴィートは攻めヴィートには弱い特徴を持ちます。



スナ君の火山灰(ボルカニックアッシュ)が

イツキ君の南極人間(ニンゲン)を吹き飛ばし,

その容赦ない攻撃を受けてしまいました。



「ぐはっ・・・。」



再びイツキ君がダウンします。



グラサン「お~っと,イツキ選手,

再びダウンで~すっ!!カウント・・・。」



しかし,イツキ君は立ちあがりました。



しかし目の前には・・・。



-幸福の土曜日(ハッピーサタデー)-



スナ「これで終わりだぁぁぁ!!!」



虚無の幸福感により相手の脳細胞を麻痺させ,ひるませることの

できる特殊ヴィートがイツキ君に見事に決まってしまいました。



「くっ・・・そ・・・。」



グラサン「勝負あ~りっ!!!!熱い戦いでしたが,

勝ったのスナ選手です!スナ選手が決勝に進出です!!」



「あ~・・・。負けちゃった

よぉ・・・。でも,がんばった!!」




すぐ後ろの控室でその戦いを見ていただぬちゃんは,



「イツキ君,負けちゃいましたか。仇(かたき)はうって

あげますよ。次の試合もさくっと終わらせますから!」




二回戦第二試合はソン君VSだぬちゃんが始まります。



第338話 天下一ヴィート武道会閉幕! 
二回戦第二試合ソンVSだぬが始まりました。



「久々にだぬの活躍できる場面が来ましたよー!」



ソン「おめぇ,強いのか!

オラ,ワクワクしてきたぞ!」



お互い睨みあったまま,ヴィートを

放つタイミングを見計らっています。



-野菜人(ワクワクボーイ)-



ソン君が特殊ヴィートを放ちました。



だぬちゃんは同時に,永遠の虚構(ゼロファイター)の

攻撃ヴィートで虚構による攻撃を繰り出しました。



「やった!攻撃ヴィートが出た!

特殊ヴィートは攻撃ヴィートに弱いはず!」




二人のヴィートが激しくぶつかります。



ドーンッ!!!



ソン「やるなぁ!」



しかし,ソン君は倒れていませんでした。



「ばかな!?」



だぬちゃんは身構えます。



「こうなったら,ついに覚えた

新ヴィートを放つ時が来ました。」




-孤高の自尊心(ロンリープライド)-



自尊心を高め,身を守るための

ヴィートを発動しました。



ぱぁぁぁぁぁっ!!



ソン「こっちはさらに野菜人(ワクワクボーイ)!!」



ワクワクした感情を相手に放ち,テンションを

ハイにし,敵の行動を不能にするヴィートです。



「なっなにぃぃ・・・。」



だぬちゃんはよくわからないまま,ドライバーズハイの

ようになってしまい,戦闘不能になりました。



「あら~・・・。」

「まぁ,がんばったな・・・。」



グラサン「勝者はソン君!!

さぁ,この後すぐに決勝です!」



決勝 スナVS ソン



スナ「行くぞ!!優勝は俺様がもらう!!」



-火山灰(ボルカニックアッシュ)-



ソン「おめぇ,強そうだな!

オラ,ワクワクしてきたぞ!」



-亀破目破(タートルビーム)-



お互い攻めのヴィートで,

小細工無用の真っ向勝負です。



ボッコォォン!!



スナ「もういっぱぁつ!!!」



-火山灰(ボルカニックアッシュ)-



ソン「はぁぁぁぁぁっ!!」



-亀破目破(タートルビーム)-



スナ「なっなんだ,こいつ・・・。ヴィートの威力が

すごすぎる・・・。だが,これならなんとかなる!」



ややソン君が有利で試合を進めます。



ソン「オラの力はまだまだこんなもんじゃないぞ!

おめぇ,知らねぇだろ!?ヴィートにはまだ上があるってこと。」



「上・・・?」



観客席で見ていたリク君たちも彼の

言っている意味がわかりませんでした。



ソン「見せてやるよ!そしてオラは優勝する!」



-大猿化(ビッグモンキー)-





なんとソン君の見た目が猿になっていきました。



-超亀破目破(スーパータートルビーム)-



スナ「くそっ!?なんだ,そりゃぁ・・・。」



-砂嵐(サンドストーム)-



守りヴィートは攻めのヴィートに有効です。



ソン「はぁぁぁぁ!!」

スナ「ぐぁぁぁぁ・・・・。」



しかし,スナ君の守りヴィートをぶち破り,

攻撃をくらってしまいました。



スナ「こんな・・・ことが・・・

ありえるのか・・・?ぐふっ・・・。」



グラサン「なんと,勝負あり!!優勝はソン君!」



こうして天下一ヴィート武道会は閉幕しました。



ソン「おめぇたち,強かったぞ!また今度,試合

しような!オラももっともっと強くなるからよ!」



「なんか,よくわからんが,ヴィートには自らを

強化することで,ヴィート自体も強化できるってことか・・・。」




イツキ君も感心していました。



スナぴょん団やソン君達といずれまた

ヴィート対決をすることになりそうです。



第339話 7周年企画 読者D氏との恒例対談!前編 
編集:今回は,全国で唯一の読者である,D氏に少年昆虫記の

ことについてアンケートを行い,答えてもらいました。

その結果の内容をもとに話を進めていきたいと思います。



作者ケン改めオリィ(以下O):よろしく。

D:よろしくお願いします。感染症対策しなくていいんですかね?



編集:あ,大丈夫です。リモート対談という設定ですので。



D:あ,そうですか・・・。



編集:Q1,お気入りのキャラとその理由を教えてください。



D:I田君(第252話参照)ですね。理由はイカレテいるから!

ちなみに順位をつけるとこんな感じですね。



<イカレキャラランキング >

1位、I田

2位、トグロ兄弟(弟)

3位、マーボー

4位、昔、ワルだった人

5位、ファーザー(頭目)



O:君,イカレキャラ好きだよねー。

そんなんだと自分までイカレちゃうよぉ!

D:いや,なりませんよ・・・。あんな

連中のようにはならない,いやなれない!



編集:Q2,好きなシーンやストーリーを教えてください。



D:さっきランキングに出した,「昔,悪だった人」の話(第56話参照)ですかね。

O:あの話好いよねぇ・・・。「林 みつる」君ね。しかし,

良く覚えているね。掲載されたの今から6年くらい前だよw



編集:リク君の「あんたは悪いことやめて周りから"偉い"と言われ,調子に乗っているが,

立派な人っていうのはそもそも悪いことなんてしない。」ってセリフもいいですよね。



D:そうですね。そして「今しなくちゃいけないことは,過去に

やってきた悪行を嬉々と語ることじゃなく,悪行の裏で迷惑を

かけた人たちへの謝罪。」
って続くところがいいですね。

O:修羅のリクの一面を見せたストーリーだったね。



D:ちなみにこの話,もしかして何かからパクったりしていないですか?

O:さぁて・・・ノーコメントでw



編集:さっさぁ次に行きましょう!Q3,メインストーリーの中で好きなところは?



D:とある体が縮んだ名探偵のパクリな話ありましたよね。

確か盗聴器仕掛けてそのあと精鋭との戦う話。(菊の華シリーズ 1章 第181話参照)

O:いやいや,別にパクッテナイデスヨ!ストーリーの都合上どうしても

必要なシーンだったのでたまたま内容がかぶってしまったダケデスヨ・・・。



編集:そういうことにしておきましょう。



D:まぁ,基本的に闇組織JFの山本が出てくる話は好きですよ。

以前対談した時は,影(シャドー)の話がメインで進んでいたので,

山本が最近また出てくるようになって良かったです。

O:そうだね。また,影(シャドー)もこれから嫌ってくらい出てくるよ。

二人ともストーリーを進めていく上で超重要なキャラだからね。



D:メインストーリーはちゃんと進める計画ってあるんですか?

前も言いましたけど,方向性が定まっていないじゃないですかね。

O:そんなことはないよ。全て自分が考えている方向に向かって進んでいるから。



編集:ヴィート対決も?



O:もちろん。あれはちょっとしたお遊び企画だけどね。

リク君以外の昆虫団の活躍を描くためのものだから。

三大悪童編もいずれ書くことになるけど・・・実はこっちは・・・。

編集:それについてはここまでにしておいた

方がよさそうですね。それでは後編へ続きます。

O:マジか!



第340話 7周年企画 読者D氏との恒例対談!後編 
7周年特別企画!読者D氏との対談第二弾!後編



編集:それでは後編です。Q4,気になる伏線はありますか?



D:伏線というより,組織の脳筋な敵幹部の能力が気になりますね。



O:確かに闇組織JFの幹部連中の強さや能力については

まだほとんど書いてないからね。そのうち書いていくよ。



編集:Q5,メインキャラで好きなキャラクターを教えてください。



D:魔人○ウに似た人w

O:ああ,トシ君ね。彼はいいよね,場を和ませてくれる。大事なキャラだよね。

いずれまた,ワクワク冒険記で活躍してもらおうと思っているよ。



D:え?また,あれやるんですか!?あのシリーズつまらないからやめた方がいいですよ!

O:いやいや,極限サバイバル,知能バトルジャンルが好きな人には人気なんだよ。



編集:えー,最後の質問です。Q6,その他,感想などあればお願いします。



D:今も言いましたけど,ストーリーの統一,迷走しないことですね。



編集:先ほども言っていたことと重なりますね。

でも,これは作者によると想定通りなんですよね?



O:もちろん,全てのストーリーはいずれ統一される,

つまり同じ方向性で話が進んでいるんだよね。

ここで言っちゃうけど,実はあの稲川怪談シリーズでも

ほぼ全てにおいて壮大な伏線が隠されていて,いずれ

それが明らかになってくるんだよね。気になる人は

「過去のお話」から全部見直してみてね。



編集:これは結構,重大なネタバレですね。



D:ほーう。でも,やっぱりストーリーが

統一されているようには見えないなぁ・・・。



O:それは今後のお楽しみということで。

いよいよ物語は大きな転換点を迎えるよ。



編集:そういえば,当初の予定では10年で

物語を完結させると言っていましたよね。



D:長っ・・・。すでに7年やっていますから,あと3年ですか。

後,3年で伏線全部回収して御前倒せるんですか・・・?

O:無理だねw



編集:・・・。当初の予定では全てのシリーズを

10篇に分けて展開すると聞いていました。



O:この前,「過去のお話」を整理したので見てもらうと

いいんだけど,今の冥界の悪魔シリーズが5篇なんだよね。

D:じゃあ,後,半分ってことですか。



O:それがねー,色々と話が膨らんできて,

もうちょっとだけ続くかもしれない。私の気力次第w



D:さっき,言っていた転換点というのは?

O:それは,次の,次のシリーズになるかな。まずは冥界の悪魔シリーズを

しっかりと書きます。第2章以降ではキラーや山犬の出番が大いにあります。

そして,ある人物の正体がわかります。その人物とは・・・。



編集:それは次回以降のお楽しみとしましょう。

本日は,ありがとうございました。



D:また,来年よんでくださいよ。なんでもこたえますよ。

O:まあ,予定は未定ということで。それでは来週より,

いよいよ冥界の悪魔シリーズ第二章が始まります。こうご期待!!





第341話~第344話

2020/11/14

第341話 プロローグ

冥界の悪魔シリーズ 第2章
闇組織JFは警察公安"菊水華"の幹部,

小早川レオンを暗殺する計画を立てていました。



彼らの拠点である名古屋駅のツインタワー,

通称"バベル"にてその作戦の最終確認が行われています。



時刻は20時を過ぎていました。



タワー最上階の会議室に組織の幹部である

山本,源田,今村,アヤが集結していました。



彼らは角が丸くなった細長い

机を囲むように座っています。



豪勢な椅子に深々と腰掛け,打ち合わせをしています。



山本「いよいよ,明日だ。小早川暗殺作戦を実行する。」

アヤ「楽しみ。」





<ユニット藪蛇R “魔性のアヤ”>




アヤはとても上機嫌でした。



源田「ぬかるなよ。」



源田は山本にそう言いました。



山本「いくつか,確認をしておきたい。

まず,源田サンの“森熊”から3部隊ほど借りる。」

源田「ああ。それと俺の直属の

部下も連れて行け。必ず役に立つ。」



直属の部下とは"冥界の悪魔(キラー)"のことでした。



山本「それから,"大西(グレイ)"だったか。

奴の動きが重要だ。いいな,今村?」



山本は今村へ視線を向けました。



今村「ふぉっふぉっ。わかっていますよ。結局,山犬と

海猫が手を組んで作戦を行うことになりましたねぇ。」





<ユニット海猫R “仏の今村”>



山本「勘違いするな。必要なのは

大西だけだ。アンタの指示は必要ない。」




大西というのはグレイのことでした。



山本「もう一度聞くが,なぜ,また手を貸す気になった?前回の会議では

山犬だけで作戦を行おうとしたら『抜けがけは許さない』と言っていよな。」

今村「すぐに撤回して『手を引く』と言ったじゃないですか。」(第286話参照)





彼は相変わらずニコニコと笑い,つかみどころがありませんでした。



山本「それが気になった。あの後,思い返してみればアヤが“平成の

ファーヴル”の名前を出した直後に撤回した。お前,あのガキ共と何か

あるのか?まさかガキを殺るのを躊躇しているんじゃないだろうな。」



今村「何を言っているのか私にはさーっぱりわかりませんねぇ・・・。

憶測で物を言うのは止めていただきたいですねぇ・・・。ふぉっふぉっ。」



山本は今村が何か企んでいると睨んで

いましたがそれ以上は追及しませんでした。



今村「それよりも大西君ですが,彼も元々,秘密主義の人間であまり

連絡をしてこないんですよねぇ。はっきりわかっていることは,彼は

ずっと小早川氏と例の子供たちの周辺に潜み,接触していたってことです。」

アヤ「ホントなんなの!?諜報活動を任されているアタシが源田

に頼まれて直々に連絡したのに全く音沙汰なしだったんだから!」(第318話参照)


山本は椅子の背もたれに身を寄せながら腕を組んだ状態で,



山本「まぁ落ち着け。大西が奴らと接触していると

聞いたから作戦に急きょ組み込んだ。奴らとつながりが

あるんなら利用しない手はないからな。」



と言いました。



源田「しかし,なぜ,詳細な居場所を報告してこない?」

今村「まだ正確な居場所はわからないみたいです。

しかるべき時が来たらきちんと報告するそうです。」



グレイは影(シャドー)と同じく,リク君やレオンさんと接触

しながら,居場所について詳細な報告はしていないようでした。



山本「まぁいい。奴に"あの場所"まで誘い出してもらう。

報告によると奴らは明日,岐阜のキャンプへ向かうらしいからな。

“あの場所”ほど今回の作戦にふさわしいところはない。」



源田「そうだな。今回の作戦は今後の

“あの壮大な計画”への第一歩だ。」



彼のその表情から今回の作戦の重大さが読みとれました。



また,“あの壮大な計画”とは一体・・・。



山本「もう一つ確認しておくが,今回の

作戦の指揮はうちの南雲に執らせる。」




源田とアヤは少し不快な顔をしました。



源田「どういうつもりだ?

失敗は許されない作戦だぞ。」



源田もそれには賛成しかねているようでした。



山本「責任は俺が取る。あいつには今のうちに経験を積ませて

おきたい。いずれ今回の経験が役に立つ時が来るはずだ。」



山本は半ば強引に了承を取り付けました。



そのあと,いくつか細かい事案を

打ち合わせ会議は終了したようです。



その直後,今村は携帯電話を取り出し,

大西(グレイ)に連絡を取りました。



彼はすぐに電話に出ました。



今村「大西君(グレイ)ですか?明日の

作戦について確認しておきますね。」



グレイ「ええ。お願いします。」



電話の相手は・・・。



・・・。



・・・。



なんと,カブクワキングの

バイトであった灰庭健人氏でした。





<ユニット海猫準幹部 大西(グレイ)>



やはり,リク君たちの予想通り彼こそが

闇組織JFの準幹部“グレイ”だったのです。



第342話 キャンプへ前編 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
少年昆虫団はレオンさん,灰庭氏と一緒に岐阜の

板取川にあるキャンプ場へ行くことになっていました。



一緒に行動する灰庭氏は

闇組織JFの一員でした。



彼はリク君たちの動向を探りつつ,今回のレオンさん暗殺計画を

実行に移すために一緒についていくことにしたのです。



待ち合わせ場所はカブクワキングの

すぐ裏にあるレオンさんのアパートでした。



すでに少年昆虫団は全員がそろって

おり,あとは灰庭氏だけでした。



お昼には向こうでバーベキューをする予定

なので出発は朝の8時となっていました。



すでに7時50分を過ぎていました。



皆は車の前で灰庭氏を待ち

ながら雑談をしていました。



「まだかなぁ。灰庭さん・・・。」



まさらちゃんが腕時計を見ながら

少し不安そうにしていました。



「まさらちゃん,わかっているとは思います

けど,あの人はJFのスパイかもしれないんです

からね。気を許さないようにしてくださいよ。」




だぬちゃんが隣で警告しました。



「前も言ったけど,あたしは

信じていないからね!」




まさらちゃんはご立腹でした。



「でもさぁ,JFのスパイかもしれ

ない人をなんでキャンプへ誘ったのさ?」




トシ君がリク君に聞きました。



「え?だって行きたいっていうからさ。」



リク君の答えはあまりにも拍子抜けでした。



「見え透いた嘘はよせ。キャンプへ一緒に連れていき,

怪しい行動をしないか見極めようとしているんじゃないのか?

山奥なら奴らも派手な動きはできないと考えているんだろ。」




イツキ君がリク君に代わって灰庭さんを誘った根拠を説明しました。

しかし,彼らにとって今回のキャンプは格好の舞台になるようです。



レオンさんは車に荷詰めしながら

皆の雑談を聞いていました。



5分ほどたって灰庭氏がやってきました。



灰庭「ごめん,ごめん。用意に思ったより時間が

かかってしまって。今日はよろしくお願いします。」



「なんか眠そうだね?」







まさらちゃんは灰庭氏の眼の下にクマが

できているのを見逃しませんでした。



灰庭「ちょっと,夜通し運転したり,

買い出しに行ったりしていたからね。」



そういうと,買い込んだ大量の花火を見せてくれました。



「なんか,スモーク花火が多いな。好きなのか・・・。」



灰庭氏は,屈託のない笑顔で,



灰庭「盛り上がると思ってさ!」



と言いました。



「そこに置いてある段ボールの中身はなんですか?」

「ああ,僻地(へきち)へ行く時はいつも持ち歩いている物なんだ!」



みんなは少し気になりましたが深くは考えませんでした。

全ての荷物が積み込み終わりました。



みんなはレオンさんが運転する車に乗り込みました。



灰庭「いい車ですね。広くて全員が乗っても

スペースに余裕があるくらい快適です。」



レオンさんはこの日のためにレンタカーを借りてきたようです。



普段乗っている車では全員が入らなかったみたいでした。



「まぁね。いい車はみんな日本製ですから。」

「でもこの車,外国製じゃないですか・・・。

ひょっとしてレオンさんはあまり車には詳しくないんですか・・・。」




だぬちゃんの指摘は図星だったようで

レオンさんは苦笑いするしかありませんでした。



「この車はドイツ製メルセデスベンキ社の

Cクラシコじゃないですか。よくこんな車,借りられましたね。」


「あ,うん・・・。(経費で無理やり

落としたなんて言えんな・・・。)」




レオンさんは車を発進させて国道41号線に出ました。



「そういえばJFの山本たちが

乗っている車も外車でしたね。」




後部座席に座っただぬちゃんがそう言いかけると,



「おい!」



イツキ君がたしなめました。



灰庭さんにあまり聞かれたくなかったのです。



灰庭「なんだい,そのJFって・・・?

知り合いに外車に乗っている人がいるのかい?」



灰庭さんが聞いてきまいたが,



「うん,そうなんだ。だぬちゃんの親せきで

JFって会社に勤めている人が外車なんだって!」




慌ててリク君が適当な話をでっちあげ,その場をしのぎました。



しかしグレイである灰庭氏には

全て把握している内容でした。



だぬちゃんは軽はずみな発言を

みんなから攻められました。



高速道路の入り口まで来ました。

ETCを使い,そのまま順調に進んでいきます。



岐阜へ入り,外の景色がだんだんと

街から山や畑に変わっていきます。





昆虫団は談笑したり,目を閉じて体を休めたり,

各自で好きなことをやっていましたが,

レオンさんはやたらとミラーを気にしていました。



後ろの車が気になるようです。



果たしてそれはJFの手先なのでしょうか・・・?



第343話 キャンプへ後編 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
途中で1度だけパーキングエリアで休息を10分ほど

取り,岐阜県の板取川キャンプ場近くまでやってきました。



山を切り開いて作られた国道を順調に走らせていると,

灰庭氏が何かに気付いたようで大声を出しました。



灰庭「危ない!」



レオンさんは急ブレーキを踏みました。



その直後,目の前に大量の岩が

大きなを音を立てて落ちてきました。



落石のようです。全員けがはなく無事でしたが,

いきなりの出来事に戸惑っていました。



「怖い・・・。灰庭さんが気付いて

くれなかったら全員潰されていたかも・・・。」


「危なかったなぁ・・・。」



レオンさんは車の外に出て様子を確かめに行きました。

リク君,イツキ君も外に出てレオンさんについて行きました。





「駄目だな・・・。道が完全に

ふさがれている。これは復旧に時間がかかるぞ。」


「そうだな・・・。どうする・・・?」



イツキ君が聞きました。



「火薬のにおいがする・・・。」



リク君がかすかに漂う異変に気付いたようです。



「確かに・・・。もしかしてこの落石は

人為的に起こされたものなのか・・・?」


「おいおい。もしかして,レオンさんが

狙われているんじゃないのか!?」




イツキ君は動揺しています。



「とりあえず車に戻ろう。」



三人は車の中に戻りました。



「これじゃあ,キャンプ場へ

いけませんよね。どうしましょう。」




灰庭氏は「待っていました」

と言わんばかりに代案を提案しました。



実は,彼の仕事の一つが闇組織JFの

運営するキャンプ場へ誘導することでした。



灰庭「それなら,ここから少し戻って別の道から僕の知っている

キャンプ場へ行ってみませんか?今なら予約なしで入れるはずです。」



「うん,いいかも!みんな,そうしようよ!」



まさらちゃんが賛成しました。



「そうだね。そうしようか。このまま

ここにいても通れそうもないしね。」


「・・・。」



レオンさんは,落石の件を通報し,道を引き返すことにしました。



灰庭氏の案内でジャファリゾートが経営するキャンプ場へ到着しました。



周囲は山にかまれ,コテージがいくつか点在して

いましたが,彼ら以外に利用客はいませんでした。



作戦のためにあらかじめ他の客を入れないようにしていたようです。

車を砂利で敷き詰められた駐車場に止め,荷物を下ろしました。



「いつの間にか,後ろをつけていた

車がいなくなっているな・・・。」




レオンさんが周囲を見渡すと例の

気配が消えていることに気付きました。



みんなは協力して荷物をコテージへ運び込みました。



灰庭「(全ては作戦通りか・・・。)」



灰庭氏は彼らの様子をじっと見ていました。



「じゃあ,お昼ごはんを

作るための準備をしようか。」




コテージのすぐ目の前にかまどとバーベキューができるテーブルが

設置されていたのでそれを利用して昼食を作ることにしました。



「よーしっ!張り切って作るぞ!

お昼をしっかり食べて,自然を満喫したら昆虫採集へ行こう!」


「いやいや,こんな山奥はまずいでしょ!

どんな虫がいるかわからない!」




トシ君は必死に拒否しましたが,リク君によって却下されました。



第344話 各々タイム 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
お昼は大自然の中でバーベキューを行い,

おいしいお肉をみんなでたくさん食べました。



飛騨牛は灰庭氏の差し入れでした。



コテージの中は2階建てになっていて,1階でリク君や

レオンさん達の男性陣,2階をまさらちゃんの寝室にしました。



荷物を整理して,この後,何をして遊ぶか決めることにしました。



話し合いの結果,トシ君はコテージの外に設置された

ハンモックで昼寝,だぬちゃんとまさらちゃんと

灰庭さんは近くの小川で水遊び,リク君とイツキ君と

レオンさんはコテージ奥に続く森の中を散歩することにしました。



「ねぇねぇ,早く水遊びしようよっ!!」





まさらちゃんは小川に足を入れ,二人を呼びました。





「そんなに慌てなくても川は逃げていきませんよ。」



だぬちゃんと灰庭氏も少し冷たい

小川へとはいって行きました。



リク君はすでに森の中へ入ってどんどん

進み,すでに姿は見えませんでした。



「レオンさん,その箱,何が入っているんだ?

というか,そんなものを持ってきてどうするつもりだ?」




レオンさんは両手で段ボールの箱を

大事そうに持ちながら歩いていました。



「ふふふっ。何が入っているかは,

使う機会があれば教えてあげるよ。」




レオンさんはもったいぶって中身に

ついて教えてくれませんでした。



「まぁいいや・・・。ここって結構入り

組んでいる・・・。というか深い森だな。」


「そうだね。迷ったら危ないね。あとで他の

みんなにも注意するように言っておこう。」




三人はどんどん奥へ進んでいきます。



「それで,何を話したいんだ?」



イツキ君が突然リク君に聞きました。



「何のこと?」

「とぼけるな。何か,大事な話があったから,

灰庭さんにあいつらを預けてから森に入ったんだろ。」




イツキ君には何もかもお見通しだったようです。



「バレたか・・・。重要な話っていうか闇の騎士(ダークナイト)の

ことで気になっていたことがあってさ。」


「なんだろう?」



レオンさんも気になるようです。



「あの日,羽音々さんがもし黄金原が闇の騎士だって

気付かなかったらあいつはどういう作戦を実行するつもりだったんだろう。」


「確かに。あの出来事で彼の作戦は大きく狂ってしまい,

挙句の果てに冥界の悪魔(キラー)に始末されてしまった。」




三人は大きなクヌギの木の下で足を止めました。



「そもそも黄金原が自作自演で冥界の悪魔(キラー)に

狙われたり,精鋭部隊に拉致されたりしたのは疑いの目を自分から

そらすためだよな。その上で菊の幹部暗殺作戦を実行しようとしたのか・・・?」


「おそらくそうだよね。そして,その幹部って

いうのがレオンさんの可能性が高い。」




リク君がレオンさんの顔をちらっと見て言いました。



「ああ,オイラの後をつけ狙っている気配を

感じるからね。そいつが冥界の悪魔(キラー)なんじゃないかな。」


「結局あの男はこちらの指令系統をかく乱

させるためのピエロだったんだろうね。暗殺の本命は

冥界の悪魔(キラー)。そいつがレオンさんの命を全力で狙ってくる・・・。」




リク君の推理は半分当たって,半分外れていました。



今回の菊幹部暗殺計画に冥界の悪魔(キラー)も

参加することになっていましたが,

主な作戦実行部隊は山犬が行うことになっていました。



リク君はクヌギの木に特製の蜜を塗っておくことにしました。

合わせて目印に水性の蛍光塗料を塗っておきました。



レオンさんは段ボールをそのクヌギの木の幹に置きました。



もう少し奥へ進み,一通りカブクワが集まって

きそうな木をチェックしてコテージへ戻っていきました。



レオンさんだけはさらに奥へ行ってみたいと言うことで

リク君たちだけ先に戻り,彼は後から戻ってきました。



少しずつ日が落ちてきました。



辺りの木でヒグラシが物静かに鳴き続けています。



カナカナカナカナ・・・・・。



リク君達が夕食の準備をしている間にも

彼らの魔の手が近づいているのでした。



第345話~第348話

2020/12/5

第345話 レオン暗殺計画発動! 急襲 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
コテージから100mほど離れた駐車場には

1個小隊がワゴン車の中で待機していました。



小隊は全員が自動小銃を装備していました。



そこからさらに1km離れた国道沿いの

駐車スペースに1台の車が止まっていました。



山本の運転する車でした。



彼は今回の作戦の指揮を南雲に任せ,自分は

この場所から作戦の成功を見守るようです。



助手席には源田が乗っていました。



後部座席には今村とアヤがいました。



東條以外の闇組織JFの幹部が一同に

そろい,作戦開始の時刻を待っていました。



リク君たちは,夕飯は川で釣った魚を

焼き,飯ごうでコメを炊き,昼間に

食べきれなかった飛騨牛や黒豚など

を豪快に食べることにしました。



とうとう日は暮れ,時刻は

夜の8時を過ぎていました。



この後行うキャンプファイヤー用

に井桁を組んで火をつけました。



闇組織JFの精鋭部隊は茂みに隠れ,迫りつつありました。



K-2という自動小銃を装備し,ヘルメットに暗視ゴーグルを

装着した精鋭部隊がコテージから100mほど離れた茂みに

隠れ,指揮官の合図を待っていました。



人数は1個小隊で5人いました。



灰庭「さて,花火でもやろうか。」



灰庭さんは大量の花火をリュックに詰めて持ってきました。



「わぁ!楽しそう!やろう,やろう!」



まさらちゃんが大喜びしていました。



「いいですね。外に出ましょう。」



みんなは,コテージを出てすぐ

目の前の所で花火をすることにしました。





「オイラ,ロケット花火がいいな!」

「いいぞ。どうせなら俺がお前を

的にして当ててやろうか。」




イツキ君がひどいことをやろうとしていました。



「いやいや,さすがにそれはだめでしょ!」



だぬちゃんが止めます。



ザワッ・・・。



生温かい風が吹きます。



真夏のジメっとした空気が漂っていました。



闇組織JFの精鋭部隊の隊長に無線で連絡が入りました。



南雲「全ての準備が整った。予定通り作戦を開始せよ。」



隊長「了解(ラジャー)。」



打ち上げ花火が上がった瞬間,精鋭部隊が行動を開始しました。



リク君,イツキ君,レオンさんが異変に気付きました。



「なんだ!?」

「わからない。何か・・・

いる。敵意がむき出しだ。」




レオンさんが叫びました。



「みんな,コテージの裏に隠れるんだ!」



ガガガガガガガガ・・・・・。



無数の銃弾が飛んできました。



「きゃぁぁぁ!!助けてっ!!!」



灰庭「ちょっと,これってどうなっているんですか!?」



灰庭氏は白々しく襲われている演技をしました。



精鋭部隊にも大西(グレイ)が一緒に行動していることは

知らされているので彼には攻撃しないことになっていました。



「闇組織JF!どうなっているんだ!?」

「レオンさんの後をつけてきた奴が,

情報を流してここまでやってきたのか!?」




リク君たちもさすがにあせっています。



「わからないが・・・,これではっきりしたよ。

奴らの暗殺計画で狙っていたのはやはりオイラだった。」


「とにかく逃げようよ!

銃を持った連中に戦うのは無謀だよぉ!」




ガガガガガ・・・ガガガ・・・

ガガガガ・・・・。



バシュッ!!パリンッ!!



銃撃は続きます。





コテージの窓ガラスは

割れ,破片が辺りに飛び散ります。



灰庭「そこのけもの道から山奥へ逃げましょう!」



「とにかく皆の安全が最優先だ!!」



みんなはポケットにしまってあった

懐中電灯を取り出し,全力で走りだしました。



レオンさんは菊の幹部に応援を

呼ぶ暇すら与えられませんでした。



精鋭部隊の銃撃はやむことがありません。



このあたり一帯が組織の土地で,国道に

通じる道を山本が封じていました。



だから一般人が入ってくることも銃撃音を聞く事

もなかったので彼らは堂々と銃を使えたのです。



「はぁはぁはぁ・・・。何がどうなってこう

なるんですかね・・・。まさかだぬたち殺される・・・!?」


「今は走り続けろ!死にたくなかったらな!

奴らは本気だ!とうとう本気で俺たちを殺しに来たんだ!」




けもの道へ入り,茂みをかき分け,どんどん

奥へ進んでいきます。果たして彼らの運命は・・・!?



第346話 レオン暗殺計画発動! 逃亡 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
コテージの正面から多数の銃撃を加えた

闇組織JFの精鋭部隊の名前は“雁(がん)”。



隊長の名前は奥田と言いました。



奥田「作戦通り,ターゲットに銃撃を浴びせました。

ただ仕留めるには至りませんでした。」



無線で南雲に状況を説明しました。



南雲「上出来だ。そのまま,予定通りに動け。」



彼らは銃撃を加えながらコテージ

一帯を支配し,けもの道へ入っていきました。



一方,リク君たちは奥へ奥へと逃亡を続けます。





リク君の背中にはしっかりと

二本の捕虫網が背負われていました。



「リク君。万が一の時は,みんなを

頼む。奴らの一番の目的はオイラだ。」


「・・・。大丈夫だよね・・・?」



リク君は一瞬戸惑いました。



「あれ?いつの間にか灰庭さんがいなくなっているよ!?」

「最後方にいたよな,はぐれたか!?

もしかしてすでに奴らに捕まったのか!?」




イツキ君が少し戻ってみると,灰庭さんが背負っていた

リュックだけが置き去りにされていました。



彼はそれを拾い上げるとみんなの所へ戻ってきました。



「今はとにかく逃げるしかない。あの人のことは後回しだ。」

「そうだね。なんとかして

国道まで出よう。そうすれば何とかなるはずだ。」




みんなは藪の中,道なき道を突き進みました。



その頃,山本達は車の中で

作戦の進行を見守っていました。



今村「たった今,大西君(グレイ)から

連絡が入り,彼らの元から離れたようです。」



山本「南雲,聞いているな。」



山本は車に備え付けられた無線機で呼びかけました。



南雲「はい。全て順調です。上から2個小隊で囲みます。周辺は

事前にフェンスで囲んでありますので最早ターゲットは袋のねずみです。」



アヤ「油断しちゃダメよ。あの子たちはアタシの

愛しい愛しい闇の騎士(ダークナイト)を奪ったんだから。」



アヤは諜報参謀としてこの作戦に参加するという

名目ですが,特に任務があるわけではありませんでした。



今村「アヤさん,冷やかしを言うために来たんなら

帰ってもらってもいいんですよ。フォッフォッ・・・。」

アヤ「あら,万が一何かあった時の

ためにいるんじゃない。ねぇ,源田!」



アヤは源田に色目を使いましたが

源田は相手にしませんでした。



アヤ「だからモテないのよ!!」



アヤは不機嫌にそう言ってそっぽを向きました。



源田「今は,静かに作戦の進行を見守るんだ。」



大真面目な顔で彼がそう言うとさらに

アヤはつまらなさそうな顔をしました。



どうやらリク君たちはすでに闇組織JFの

暗殺部隊に囲まれてしまっているようです。



その頃,少年昆虫団は・・・。



「レオンさん,さっきの追手ならオレと

レオンさんが力を合わせれば勝てると思う。」




走りながら,レオンさんに戦闘することを提案しました。



「だめだ。相手は自動小銃まで持っている。リスクが高すぎる。

まさらちゃんたち,他のメンバーに危害が及ぶ可能性が高い。」


「そうだな。まずは命が最優先だ。」



その時,後ろから確実に追手が近づいている気配がしました。



「なんか,近づいてきている気がするよぉ!」



いつの間にか最後方を走っていたトシ君があせり始めました。



ガガガガ・・・!!ババババッ・・・!!



バシュッバシュッバシュッ・・・!!



小銃を撃つ音が聞こえます。



「これってヤバすぎですよっ!!」



だぬちゃんもあせって逃げます。



「!!」



レオンさんが何かに気付きました。



それは・・・。





第347話 レオン暗殺計画発動! 危機 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
レオンさんは前方からも恐ろしいほど

の敵意があることに気付きました。



リク君とイツキ君も敵の気配を感じました。



「前からも来るぞ!」



ガガガガガガガガ・・・・・・・



ガガガガガガガガガガガガ・・・・。



パパパパパ・・・・パパパパ・・・・。



ガンッガンッ・・・。

バシュッ!バシュッ!



各人が1分間に500発以上の銃弾を

撃つような状況を必死で逃げ惑います。



恐ろしいほどの数の銃弾が

空を飛び交っていたのです。



銃弾が周囲の木や茂み,

葉に当たり,嫌な音が響きます。



「もういやぁぁ・・・。

死にたくないよぉ・・・!」




まさらちゃんは半泣きでリク君

から離れようとしませんでした。



みんなは一か所に固まって

周囲をうかがっています。



「これって囲まれちゃっているんじゃないですか!?」



だぬちゃんの予想は当たっていました。



彼らの作戦は1部隊が正面から攻撃し,リク君たちを山の中に誘い込み,

残りの2部隊で囲みこんで一斉射撃で暗殺するつもりだったようです。



南雲「見事に作戦にはまってくれてありがとう。おとなしく出てくれば,全員,

楽に殺すことを約束しよう。逃げればあちこち撃たれて余計に苦しいだけだ。」



拡声器を使い,南雲の声が響き渡りました。



「この声は,たしか山犬の南雲・・・!」

「うん。間違いない!」



まさらちゃんはグス,グス鳴きながら震えていました。



「まさらちゃん,大丈夫だよ。絶対に

みんなを死なせはしないから。」




リク君はまさらちゃんの涙をそっとふき,笑顔で語りかけました。



「でも・・・。」

「オレはあいつらを絶対に許さない。

人の命を何とも思っていないような連中を野放しになんて

できない。オレは逃げない。絶対に奴らから逃げない。」




リク君は二本の捕虫網,天照と

月読を取り出してかまえました。





その姿を見てまさらちゃんは少し安心しま

したが,同時にリク君の身を案じました。



「そうですよ,まさらちゃん。だぬたちがこんな所で

死んだらあいつらの悪事を暴ける人がいなくなってしまい

ますよ。絶対にここから生きて帰らないとだめですよ!」




「オイラもこんなところで死ねないよ!

まだまだやりたいこともいっぱいあるしね!それに

こんな修羅場いくつもくぐってきた!今度もなんとかなる!」




トシ君はワク君との冒険を通して成長していました。



いつの間にか昼間に立ち寄った大きな

クヌギの木までやってきていました。



レオンさんは先ほど置いていた

段ボールの中身を取り出しました。



そこには少し大きめの円筒形に近い機械が入っていました。

スイッチを押すと中の装置が回転し始めました。



「なんですか,それは?」

「秘密兵器,通称"マグネル"さ。今からここから

脱出するための作戦を伝える。全員でここから生きて出よう。」




レオンさんはみんなに聞こえるように説明を始めました。



「うん,がんばる!きっとどこかに

灰庭さんもいるはず!あたしがんばる!」




まさらちゃんにも闘志がわいてきました。



この間も前からも後ろからも銃弾が飛んできていて

みんなはほふく前進で進むしかありませんでした。



南雲「どうやら降伏するつもりはなしか!

このままハチの巣になってしまえぇ!!」



自らも小銃を持ち,撃ちまくります。



彼のテンションが上がっている

ことが声の調子からもわかりました。



レオンさんはどんな作戦でここ

から切り抜けるつもりでしょうか。



第348話 レオン暗殺計画発動! 反撃 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
冥界の悪魔(キラー)は南雲が指揮する部隊からすぐ

後ろの木の上から暗殺の機会をうかがっていました。



しかし,木の多いこの場所での狙撃は不向きでした。



今回の役目はあくまで南雲のサポートでした。



じっと息を静め,暗殺できるタイミングを狙い続けていました。

すると突然,辺りが煙に覆われ始めました。



冥界の悪魔「!!これはっ・・・!?」



花火で使うはずだった大量のスモークに火を付けたようです。



南雲「なんだこれは!!かまわない,撃ち続けろ!!

この包囲から逃げることなど不可能だ!!」



ガガガガガガ・・・。



しかし,どうも様子が変です。



銃弾がまっすぐ飛んでいかないのです。



南雲「なんだ,どうなっている!?」



隣にいた精鋭部隊の隊長に確認をとりました。



南雲とともに包囲にあたっていた精鋭部隊は以前レオンさんとリク君に

敗れた“梟(第184話参照)”と“雉(きじ)”という名前の部隊でした。



梟はあの時,レオンさんが通報した警察が到着

する前に逃走し,逮捕を免れていたのです。



山根「わかりません!銃弾がまるで何かに

吸いつけられるように飛んでいっています。」



梟の部隊長である山根にも何が

起きているのかわかっていませんでした。



南雲「とにかく撃ち続けろ!!」



しかし,大量のスモークの影響で視界は1mもなく,

すぐ真横を横切られても何も見えないような状況でした。





南雲「くそっ!!」



木の上で待機していた冥界の悪魔(キラー)も一旦,

銃口を下げて周囲の確認を優先することにしました。



実はこの時,イツキ君,まさらちゃん,だぬちゃん,

トシ君の四人は彼らの横を走り抜け包囲網を突破しました。



「よし,うまくいった!このまま

突き抜けて国道に出るぞ!!」


「リク君とレオンさん,大丈夫かな・・・。」



まさらちゃんが後ろを振り向きました。



「心配するな。あの二人は絶対に大丈夫だ。」



イツキ君は昆虫団の他のメンバーを

無事に逃がすための先導役を任されました。



本当は一緒に残って戦いたかったのですが,

レオンさんに説得されこの役を買って出ました。



トシ君も恵まれた体格と冒険記で培ったここ一番での

度胸を買われ,殿(しんがり)を任されました。



イツキ君,まさらちゃん,だぬちゃん,

トシ君の順番で森を横切っていきました。



南雲「まさか,逃げだしているのか!?"雉",

聞こえるか。お前たちは逃げた連中を追え!!」



しかし,反応はありませんでした。



南雲「おいっ!応答しろっ!!」



すると無線機から反応がありました。



ガガ・・ガガ・・。



「残念だがあんたらの作戦は失敗だ・・・!」



南雲「誰だ貴様は!!」



彼にとって見知らぬ声が聞こえてきました。



「あんた達が狙っているターゲットですよ・・・!」



南雲「小早川・・・!?ふざけやがって!!」



どうやら雉の1個小隊はレオンさんによって壊滅させられたようです。



南雲「前方から進攻中の"雁"!すぐに周辺を囲みなおせ!」



しかし,こちらも反応がありません。



少し薄れたスモークの向こうから人の体が

無造作に浮いているのがかすかに見えました。



それも複数の数が・・・。



-大地二刀流 瞬撃の舞(ワルツ)-



「オオオオオオ・・・・ッ!!!!」



ドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!



リク君の猛攻により銃の使えなくなった

精鋭部隊は壊滅させられていきました。



第349話~第352話

2020/12/27

第349話 レオン暗殺計画発動! 激突 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
-大地二刀流 薔薇十字(ローゼンクロイツ)- 



奥田「ぐはっ・・・。」



血を噴き出しながら“雁”の隊長は倒れました。



「こっちは片付いたよ。」



リク君がイヤコムでレオンさんに連絡を取りました。



このイヤコムのやりとりを離れた場所で

待機していたJFの幹部たちが盗聴していました。



諜報に精通している藪蛇の

アヤが機械を操作していました。



アヤ「にわかには信じられなかったけど,こうして会話の内容を

聞いているとホントにすごい子供ね。今村が一目置くのもわかるわ。」

今村「なんのことやら?」




今村氏はとぼけて見せました。



山本「おい,じゃれ合っている場合じゃねぇぞ!」



山本は状況が不利になっている

ことを知り,不機嫌になっていました。



源田「・・・。」



源田は何も発せず状況を見守っていました。



山中でリク君たちはついに南雲と

10mほどの距離で対峙しました。



すでにスモークはほぼ消えて

なくなっていました。







南雲「これはどういった手品だ!?なぜ

銃弾があさっての方向へ飛んでいく!?」



リク君の横にいたレオンさんが木陰から出てきました。



「さあて。なぜでしょう。」

「あの機械,ホントにすごいね。」



リク君は先ほど例の段ボールに

入っていた機械の機能を知りました。



あの機械は小型だが強力な磁界発生

装置(マグネル)だったのです。



その磁力を地面から空の方向へ向けて

いるので,マグネルからごく近い場所で



金属を使おうとすると空へ吸い込まれる

ような現象が起きてしまうのです。



南雲は持っていた拳銃を取り出しましたが,上へ吸い

込まれるような力を受け,うまく狙いを定められません。



発砲したとしても銃弾は対象に命中することなく

弧を描くように上空へ吸い込まれてしまいます。



もちろん,空から降ってくる銃弾には気をつける必要がありますが,

この機械のおかげで銃撃に関する脅威はほぼなくなったといっていいでしょう。



南雲「おい,キラー!近くにいるだろう!

お前の腕でも狙えないのか!?」



「キラー!?やはり冥界の悪魔(キラー)もここにいるのか!?」



レオンさんに少し焦りが見られました。



「リク君,南雲だけならオイラがなんとかしようと

思っていたんだが,冥界の悪魔(キラー)までいるとなるとやっかいだ・・・。」


「大丈夫。僕が南雲を相手にするよ。

必ず倒して身柄を拘束する。殺人未遂,銃刀法違反,凶器準備

集合罪で現行犯逮捕できる。現行犯なら一般人にもできるからさ。」




リク君は身を乗り出し,相手に飛び込む準備をしました。



「さすが,頼りになる。どのみちキラーの

狙いはオイラだろうからね。オイラはキラーを倒す。」




レオンさんとリク君はもう一度,集合場所を

確認して二手に分かれました。



先に飛び出していったのはレオンさんでした。



「冥界の悪魔(キラー)!近くにいるんだろう!

オイラはここだ!殺せるものなら殺してみろ!」




レオンさんが叫びました。



冥界の悪魔「!!」



冥界の悪魔はライフル銃を構えました。



レオンさんらしき人影が見えたのですかさず狙撃します。



しかし,マグネルの効果により

狙撃は効果を発揮しませんでした。



レオンさんはマグネルが有効な範囲で

冥界の悪魔(キラー)を倒そうとするつもりでした。



第350話 リクVS南雲 前編 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
リク君はレオンさんがその場から離れた

直後,猛烈な速さで南雲に近づきました。







山根「あいつは,この前のガキ!」



梟の隊長は暗視ゴーグルを使って

リク君の動きを確認しました。



月明かりのおかげでリク君にも

敵の居場所がはっきりと見えました。



山根「殺せ!排除せよ!」



小銃は役に立たなかったので,肉弾戦に切り替えたようです。



「お前たちの相手をしている暇はない!!」



二本の捕虫網を持ったリク君は左手を前に出し,右手を斜め後ろにして構えました。



-大地二刀流 乱激の嵐(ランディングストーム)-



山根「うごっ!?」



リク君の両手から繰り出される高速の攻撃は,

嵐の衝撃を放ち,精鋭部隊の体を吹き飛ばしました。



あっという間に精鋭部隊の5人は地にひれ伏せました。



南雲「なんてガキ・・・だ。」



リク君と南雲が5mほどの距離で対峙しました。



スモークはもうなくなっていましたが,

マグネルの効果が及ぶ範囲内にいました。



「たしか山犬の南雲だったね。」



南雲「ほう。俺も有名になったもんだ。こんなガキに覚えてもらえるとは。」



リク君と南雲が一触即発の状態となっていました。



「後はお前と冥界の悪魔(キラー)だけだ。ここでお前と

キラーを倒せば闇組織JFも一気に壊滅させられる。」




リク君は構えを解きません。



南雲「なるほど。キラーのことも知っている。俺たちのことも菊の連中から

かなり吹き込まれたようだ。挙句の果てに俺たちを壊滅させるだと!?」



南雲は右手に警棒を持ち,左にメリケンサックをはめました。



警棒程度であればマグネルの効果は軽微でした。



南雲「平成のファーヴル!生意気なガキはお仕置きが必要だ。」



彼は作戦に任務中のため愛用のタバコを吸えずイライラしていました。



次の瞬間,南雲の警棒とリク君の捕虫網が

火花を散らしてぶつかっていました。



「ぐぐぐ・・・。」



お互いにはじかれ,着地するとすぐに次の行動に出ました。



「うおおおお!」



リク君が右手から繰り出した攻撃を南雲の左手が防ぎます。



南雲は警棒を叩きつけますが,リク君は

うまく避けて攻撃をかわします。



南雲「なるほど,素人の動きじゃねぇな。各務原山で

古賀さんを倒したのはまぐれなんかじゃなかったんだな。」



「オレにまぐれはない。あるのは実力だけだ。」



リク君には絶対の自信がありました。



南雲「その自信をへし折って,絶望しながら死んでいけっ!!」



南雲がその巨体を揺らして突進してきました。



「お前程度に折られるようなオレじゃない!」



-大地二刀流 神速の打突 連弾-



二本の捕虫網が高速に伸びて相手の体を貫こうとします。



南雲はすかさず飛び跳ねてかわします。



その巨躯からは予想できないような身軽さでした。



捕虫網が元の長さに戻るとリク君は少し

下がってから地面に捕虫網の柄元を向けます。



手元のボタンを押すと柄元がまるでロケットの

ように噴火し,リク君は上空10mほど飛び上がりました。



南雲「なんだっ!?」



南雲は思わず空を見上げました。

上空にて一瞬で捕虫網を1本に持ち替えました。



―大空一刀流 青の衝撃 (ディープインパクト)―



10m上空からリク君が加速度的な速さで突っ込んできました。



その勢いのまま南雲の体を叩きつけました。



南雲「ぐはっ!!」



南雲は避ける暇もなく直撃しました。



ドサッ・・・。



リク君が振り返ると彼は

地面に倒れふさぎこんでいました。



「勝った・・・か・・・?」



そう思ったのもつかの間でした。



南雲「痛いじゃねぇかよっ・・・!!」



南雲の顔から真っ赤な血が垂れていました。

しかし彼はものともせずに起き上がりました。



「はぁはぁ・・・。思った以上にタフだ。

なんてタフガイなんだ・・・。」




リク君は額の汗をぬぐいました。



南雲「はぁはぁ・・・。ははっ・・・後悔しているか?」



「は?」



リク君は思わず聞き返しました。



南雲「あの日,俺たちに関わらずお友達と虫とりを

して楽しんでいればこんな目に合わずに済んだのによ・・・。」



南雲は再びファイティングポーズをとりました。



「後悔?お前たちに出会えたことを感謝しているくらいだ。」



リク君も姿勢を先ほどよりも低くして構えました。



第351話 リクVS南雲 中編 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
南雲「感謝だと?これだからガキは・・・!」



リク君の挑発に乗り,体ごと突っ込んできました。



リク君はすかさずかわし,延髄に天照(あまてらす)をたたき込みます。



南雲「うごっ・・・!?」



「感謝しかないよ。だってお前たちみたいな連中の

存在を知れた。そしてそれを潰す機会を与えてくれた。」




リク君は月読(つくよみ)を突き出します。



南雲「なめやがって!ガキ1匹に

潰される組織じゃねぇぞ!!」



「潰すよ!この国を護るために俺は戦う!!」



リク君は全身全霊の攻撃を放ちました。



南雲はもはや避ける力もなく被弾していきました。



南雲「グホッォォォォォッ!!!」



南雲の服は半分以上破けて体中にあざと

切り傷で血だらけになっていました。



しかし南雲は本当にタフな男でした。



攻撃を何度くらっても立ち上がり, 隙を見て反撃に出ようとしていました。



さすがのリク君も少し焦りを感じ始めていました。



南雲「はぁ・・・はぁ・・・。もらったぁ!!」



一瞬の隙をついて南雲の左拳が

リク君の腹部に直撃しました。







「ぐはっ!!」



リク君は猛烈な痛みでうずくまりました。

しかし,痛みをこらえながら立ち上がりました。



彼の筋力は相当鍛え上げられていたようで拳にも重みがありました。

通常の人間なら内臓破裂を起こしてもおかしくないような威力でした。



「(さすがに幹部だ・・・。一筋縄じゃいかないか・・・。)」



リク君は衝撃の瞬間,体をひねりわずかにその威力を殺すことに成功

しましたが,大きなダメージを受けたことには変わりはありません。



「(しかしなんてタフさなんだ・・・。

全力で撃ち込んでも倒れない・・・。)」




お互いに間合いを取りながら相手の出方をうかがっていました。



一方,リク君と南雲の激突から少しだけ離れた場所では

レオンさんと冥界の悪魔の戦いが始まっていました。



「キラー,いるんだろう!!

隠れていないで出てこい!」




レオンさんから見て斜め後ろの木が生い茂った

辺りから小型の暗殺用ナイフが数本飛んできました。



1本がレオンさんの肩をかすめましたが,

瞬時にかわして事なきをえました。



「そっちか!」



レオンさんが追いかけます。冥界の悪魔(キラー)は

木から木へと飛び移って距離を保とうとします。



「なんて身軽な奴なんだ・・・。」



どんな顔をしている人物なのか確認したかった

のですがなかなか距離を縮められません。



そしてとうとうマグネルの効果が

及ぶ範囲から出て行ってしまいました。



「くそ・・・。しかし,ここで追撃を止めるわけにはいかない。」



レオンさんはさらに追いかけます。



パシュッパシュ・・・。



「うおっ!!」



レオンさんは茂みの中に身を隠しました。



冥界の悪魔「隠れたって無駄さ。このライフルからは逃げられない。」



レオンさんも警察官なので拳銃は普段所持することが

多いのですが今回はなぜか持ち合わせていませんでした。



そのため,この勝負は最初から分が悪かったのです。



彼は自分に注意を引きつけ,その間にリク君が

南雲を倒してくれることを期待しているようでした。



幹部の山本達はこれらの戦闘の状況を

無線で聞きながら静かに見守っていました。



山本「おい,今村。グレイはどうした?

奴に連絡を取って援護に向かわせろ。」



今村「フォッフォッ・・・。そうですねぇ・・・。

ちょっと状況は不利ですねぇ・・・。」



今村は車を降り,少し離れた場所から

イヤコムで大西(グレイ)を呼び出しました。



リク君と南雲の戦いは一進一退でしたが,

攻撃力に勝るリク君が徐々に押していました。



「はぁはぁ・・・。さすがに強いな・・・。」



南雲「くそっ・・・。こんなガキに押されるなんて・・・。

俺はな,山本さんに鍛えられ,殺しのプロになったんだ。」



南雲は自分のことを唐突に語り出しました。



南雲「殺しの経験がほぼなかった俺は,

山本さんのおかげで本当の殺し屋になれた!」



「・・・。それがどうした・・・?」



リク君が睨みました。



南雲「つまり!!そんな俺がガキを殺し損ね

たなんてことはあってはならないんだよっ!!!!

ホントはな,あの武器を使いたかったが・・・。

まぁいい!!これでぶち殺してやるよ!!」



ついにブチ切れてしまったようです。



第352話 リクVS南雲 後編 

冥界の悪魔シリーズ 第2章
南雲が闇雲に警棒を振り回してリク君を威嚇します。



リク君は後ろに下がりながら攻撃を

避けますが足場が悪く,うまくうごけません。



「茂みが多いし,斜面で動きにくいな・・・。」



リク君は捕虫網を二本にして,攻守一体の態勢をとります。



-大地二刀流 瞬撃の舞(ワルツ)-



ガガガガ・・・。



ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!



捕虫網と警棒が激しくぶつかります。







南雲「くそっ!あの武器さえあれば

こんガキに苦労することもないんだ・・・。」



どうやら南雲には愛用の武器があるようです。



少しリク君が押し始めました。



天照が南雲の右手に当たり,彼は

警棒を落としてしまいました。



それを拾おうと姿勢を崩した瞬間に

リク君の容赦ない攻撃が決まりました。



-大地二刀流 薔薇十字(ローゼンクロイツ)-



南雲「ぐはっ!!」



十字の斬撃が南雲を切り裂きます。



南雲「ぐごおおおおおっ!!!!」



山の斜面をゴロゴロと転がっていきます。



すかさずリク君が追いかけ,身柄を確保しようとします。



「どこだ!?」



月夜に照らされているとはいえ,暗闇に

まぎれ南雲の姿を見失いました。



一方,南雲は暗視ゴーグルを用意していたので

リク君の姿は手に取るようにわかりました。



南雲「ここだぁ!」



すぐ後ろから南雲がリク君の首を羽交い絞めにしました。



「ぐっ・・・。しまっ・・・た・・・。」



南雲「所詮はガキ!捕まえればこっちのもんだ!!」



リク君は苦しみながらも天照を南雲の

腹に押し当ててスイッチを押しました。



バリバリバリバリ・・・・!!!!



南雲「おごごごごごごっ・・・・・!!」



南雲はもだえ苦しみ,その手を離してしまいました。



南雲「がはっ・・・。痺れる・・・。」



どうやら強力な電流を流しこんだようです。



「天照にはスタンガン機能もあるんでね。」



リク君はやっとの思いで呼吸を整えました。



「さすがに強い。何より脅威

なのはその体力とうたれ強さだ・・・。」




南雲「ガキに言われたのは初めて・・・だよ!!」



屈辱のあまり声を荒げてしまいました。



左手にはめたメリケンの拳で

リク君の顔をめがけてパンチを繰り出します。



足場の悪い場所でうまく動けず,

拳はリク君の顔をかすめます。



もう片方の捕虫網“月読”で

相手の攻撃を捌こうとします。



南雲「いいか,俺は今回の作戦の指揮を任された。絶対に失敗は

許されないんだよ!あの人の信頼を失うわけにはいかないんだ!」



さすがの南雲も苦しそうです。

すでに満身創痍でした。



あの人とは山本のことを指しているようです。



「ごちゃごちゃうるさいな・・・。お前は必ずここで倒す!!

そして組織の全貌を吐いてもらうぞ!!」




リク君は二本の捕虫網を十字に構えました。



そしてゆっくりとその腕を広げました。



リク君が走りだし,突進してきた南雲と対峙しました。



勝負を決する時がきたようです。







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