リクの少年昆虫記-VS闇組織JF-

シリーズ別へ

TOPページへ

目次

*各項目をクリックすると目次が開けます

3篇 ノアシリーズ 序章 第1章

第1話 ノアの書

ノアシリーズ~序章~
少年昆虫団は中野木図書館で宿題をやっているようです。



 「さてどの本を借りようかな。」

「いつき君,電子データで借りるの?」

 「当然だよ。今の時代,紙でできた本を

借りて行くなんてかさばることをするわけがないだろう」


「そうだよね。」

「う~ん,漢字は読めないなぁぁぁ。」

「じゃあ,感想文書けなくない…?」

「だぬは車の本を読みたいと思うよ。」



それぞれ,読みたい本が決まったようです。

みんな,本を真剣に読んでいます。

しばらくして,いつき君が読み終わった本を本棚に返しにいきました。



 「え~と,この辺りだったかな。」



 「ん?なんだ,この本。」



いつき君がリク君を呼びました。



「どうした?」

 「リク,この本をみてくれ。」



「お?表紙はカブトムシじゃん。カッコいい~!」

「どうしたの?」



まさらちゃんやだぬちゃんも集まってきました。



「表紙のカブトはヘラクレスだね。」

「ヘラクレス?」

「外国のカブトムシですごく大きいんだって。」

「へぇ~。」

「この本がどうかしたの?」

 「裏表紙に書かれたメモ書きを見てくれ。」

「英語ですか。読めないですね…。」

 「“About a diamond of the jet black”と書いてある。」

「なっ!?」

「読めないぃぃぃ。」

「“About a diamond of the jet black”…。

つまり『“漆黒の金剛石”について』…と言う意味だ。」


「えっ!!」

「“漆黒の金剛石”って“漆黒の追跡者”が

探している昆虫じゃないですか!?」


「うん,そうだったね。すごく悪い奴らなんだよね。」

「表紙にはなんて書いてあるんだ?」

 「“Noah's arc”…。」

「ノア…?何…?」

「ノア'sアーク。どういう意味だろ…?」

 「“ノアの書”といったところか…。」



果たしていつき君が見つけた謎の本…。

この“ノアの書”の正体とは?



第2話 聖なる箱舟伝説

ノアシリーズ~序章~
いつき君が見つけた謎の本。

そこには“Noah's arc”のタイトル。

そして裏には“About a diamond of the jet black”とメモ書きが…。



 「これは,さしずめ“ノアの書”ってところか…。」

「ノアの書…?」

「本の内容は!?漆黒の金剛石について何か書いてあるんじゃ…!?」

 「…。」

「いつき君…?」



 「And it came to pass,
when men began to multiply on the face of the earth…」




一同「…。」



 「… so did he.」

「何かの呪文ですか?」

 「本の前書きに書かれている文章だ。」

「なんて書いてあるの??」

 「これは,旧約聖書の『創世記』,
第6章に書かれている文章とほぼ同じだ。」


「第6章ってことは,ノアの箱舟伝説に関する部分だね。」

「じゃあ,この本は宗教の本ってことなのかな?」

 「いや,そうでもなさそうだ。
これは何かの研究に関するマニュアル…か?」


「ついていけないなぁぁぁ。」

「トシ君,情けない!」

 「他にも人の名前,
ラッ…ド,コノ…リー,メイ…デン…?
色々出てきている。研究者の名前か?」


「むむ!?」

 「よし,この本を借りて行こう。」

「さすが,こういう本は好きだね,いつき君。」

 「ああ,昆虫採集なんかより,こっちの方がずっとおもしろい。」

「グサッ。なんかひでぇ…。」

「でも,この本,貸し出し用のラベルが付いてないよ。」

「ほんとだ。なんでだろ?この図書館の本じゃないのかな?」

「じゃあ,館長さんに聞いてみようよ。」

 「そうだな。」



カウンターに行き,館長さんを呼んでみました。





中野木図書館 乃木館長



乃木館長「これはこれは,少年昆虫団のみんな。どうしたんだい?」

 「この本について聞きたいんだ。」

乃木館長「こんな本は見たことないね。この図書館の本じゃないね。」

「誰かの忘れ物ですかね?」

乃木館長「そうだとしたらごく最近だね。先週,書庫の一斉点検を行ったばかりだから。」

 「なぁ,この本を借りて行ってもいいかい?」

乃木館長「本当はだめ…。」

 「そこを何とか。悪いようにはしない。」

乃木館長「まあ,君たちなら信頼できるからね。貸し出そう。

ただ,持ち主が出てきた時は返してもらうことになるけど。」

「よかったね,いつき君。」

 「ああ,この夏休みは楽しくなりそうだよ。」

「“漆黒の金剛石”について何かわかったら必ず教えてね!」

 「わかってる。」

「あ!」

「だぬちゃん,どうしたの?」

「結局,だぬとトシ君,明日,出校日に

提出の読書感想文書けてないですよ!!」


「う~ん。残念。」



第1話 黒の影

ノアシリーズ~第1章~
名古屋の国道を走る車がありました。



そう,あの漆黒の追跡者達です。





山本「クライアントから新しい依頼が来た。」

南雲「え。」

古賀「しかし,まだ,“漆黒の金剛石”だって

見つかっていないじゃないですか。」

南雲「それなのに,新しい依頼ですか…?」



山本「先日,クライアントの研究所から

“ある研究記録”が盗まれたらしい。」

南雲「へぇ,そんなことが。」

山本「盗んだ男はその研究所の所員。

その裏切り者の名前は“小早川”。」

南雲「馬鹿な男ですね。」



山本「小早川は現在も行方不明。」

古賀「つまり,この写真の男を探せってことですか?」

南雲「俺達は探偵じゃありませんよ?」

山本「依頼内容は研究記録の奪還と…。」

南雲「?」



<山犬リーダー 山本>



山本「小早川の抹殺だ。」

南雲「なるほど,我々向きの仕事ですね。」

古賀「でも,なんでまた…?」

山本「小早川が盗んだ研究記録は

奴らの間では“ノアズアーク”と呼ばれ,

厳重に保管されていたようだ。

あれが世間に公表されると組織としても非常にまずい。」



<山犬 南雲>



南雲「その前に口封じするわけですか。」

古賀「見つかりますかね?その男。」



山本「見つかるさ。すでに目星はつけてある。」




どうやら,再び“黒の影”が動き始めたようです。



第2話 裏切りの小早川

ノアシリーズ~第1章~
蒸し暑い夜…。

―名古屋市 野山公園―







小早川という名の中年の男性が追っ手から逃げています。

理由は所属する研究所から極意の研究資料を持だしたからです。



小早川「はぁ,はぁ…。もう追いついてきたのか。」



必死で逃げますが,追っ手も数が多いようです。



小早川「この資料,“ノアズアーク”だけは何としても…。

何としても持ち帰らなければ…!」



追っ手A「そっちにはいたか!?」

追っ手B「いえ,いません…!」

追っ手C「くそっ,あの野郎どこへいきやがった!」

追っ手A「でも,一体,何の資料を持ちだしたんですか?」

追っ手C「知るかよ,とにかく所長の命令だ。

裏切りの小早川を捕まえて資料を取り戻せと。」

追っ手B「俺達のような下っ端所員には

知らなくていいこともあるんだろうよ…。」



彼は息を殺し,公園の茂みに身を潜めています。

少しずつ,追っ手が近付いてきました。



小早川「(このままではまずい…。

捕まったら“ノアズアーク”も奪い返されてしまう…。)」







……



………



その時,小早川の目に大きな建物が映りました。

見た目は古いですが立派な図書館でした。



リク君達がたまに訪れる中野木図書館です。



小早川「(よし…。)」



追っ手の目をかいくぐり,中野木図書館へ向かいました。

研究所から持ち出した資料“ノアズアーク”を,この図書館に隠し,

後日改めて,取り出そうとしたようです。



それは,もし捕まっても,彼らの手に資料を

渡さないための苦渋の決断でした。



この二日後,少年昆虫団のイツキ君が

“ノアズアーク”を手にし,“ノアの書”と

名付け,資料の解析を試みることになるのです。



ところでリク君達は,

出校日があった日の夜に

“大牧山”で昆虫採集をしていました。



「よーし,今日も沢山,昆虫採集するよー!」



「もうやめましょうよ~。」

「あれ,イツキ君とトシ君が来てないみたいだけど?」

「あ,実はね…。」



今日も元気に昆虫採集。

でもメンバーが2人いないようですが…?



第3話 探偵はBARにいない

ノアシリーズ~第1章~
名古屋のとある繁華街に雰囲気の良いバーがあります。

名前は“リ・セ・シュ”。

“彼ら”にとってお気に入りのお店のようです。

そこに二人の男がバーカウンターでお酒を飲んでいました。







南雲「古賀さんは来てないんですね。」

山本「あいつは“後始末”をしている。」

南雲「あー,なるほど…。」



そういうと彼は愛用のタバコ,“シュガーライト”に火を付けた。



今村「隣,いいですか?」



現れたのは“海猫”のリーダー,今村でした。









山本「珍しいな。お前がこんな場所にくるなんて。」

今村「たまには来ますよ。」

南雲「そうなんですか…。」

今村「マスター,バーボンをロックで。」

南雲「牟田さんと山下さんは大丈夫なんですか?」

今村「ライフルで撃ち抜かれてますから。

しばらく,お仕事は無理そうですねぇ。」

南雲「そうでしたか…。」



*詳しくは第10~16話参照


今村「その代わり,御前”にお願いして組織から部下を二人ほど手配してもらいました。」



山本「“御前”が…?」



今村「ええ。優秀なのを配属してくださいました。」



山本「ほう。どんなやつらだ?」



今村「一人は“大西”という男でキレ者です。」



南雲「もう一人は?」



今村「もう一人は組織では“影(シャドー)”と呼ばれていた人物です。

本名は私も知りません。組織でも謎の多い人物だそうです。」

南雲「そんな奴がいたんですね。」



今村「昔,演劇をやっていたそうで,変装なんかは得意だそうです。

二人ともここにはいないので,今度紹介しましょう。」

山本「で,そのキツネのような探偵を使って何をしようとしている。」

南雲「探偵はBARにいない…か。」



バーボンのロックに手をつけることなく,

今村は再び話し始めました。



今村「各務原山で我々の行動を監視していた少年たちがいましたね。」





山本「平成のファーヴルか。今度見つけたら,俺達が“消す”。」

今村「何も知らない無実の子供を消すというのは物騒ですねぇ。」

山本「奴らが何かを掴んだ可能性もある。

疑わしきは消すのが俺のやり方だ。それがたとえガキでもな。」

今村「それを調べるために“影(シャドー)”に動いてもらっています。」

南雲「どうやって調べるんですか?」

今村「詳しくは言えませんが,

彼らの周辺に住む住人を装うか,親しい人に変装するか…。

おっと,しゃべりすぎましたね。」



彼はそう言うとその場を去って行きました。



南雲「あれ?今村さん,お酒に手をつけてないですね。」

山本「俺が自白剤を入れたことに気づいていたらしい。

まったく喰えねぇヤロウだ。」

南雲「さすがは“仏の今村”ってことですか…。」



そして夜も更けていきました。



第4話 引っ越してきた隣人

ノアシリーズ~第1章~
少年昆虫団は主にカブトやクワガタを専門に

扱っている“キング”というお店に来ていました。







 「何で俺まで…。今日は忙しいんだ。」

 「まぁまぁ。そう言わないで。」

 「まったく…。」

 「それで,“ノアの書”について

どこまでわかったの?」




イツキ君は一呼吸おいてから話し始めました。



 「本の終わりのページに“USBメモリ”が

添えつけられていたんだ。」


 「USBって昔,良く使われていたよね?

で,その中身は!?」


 「パスワードがかかって見られない。」

 「パスワードかぁ。」



「リク君,店長さん達来ましたよ。」

「ここはいつ来てもこわいなぁぁぁ。」



まりん「みんな,いらっしゃい。」



「まりんさん,こんにちはー。」



まりん「こんにちは。」

店長「おう,どうした,みんなそろって。」



 「伊藤店長。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」



店長「なんだい?」



 「最近,このお店でヘラクレスを買ったお客さんっていないかな?」



店長「え?なんでそんなことを聞くんだい?」



 「あ,えっと,ちょっと…宿題だよ!」



店長「宿題?」



 「うん,外国産のカブトムシをどういう人が

買っていくのかっていう市場調査だよ!」




店長「なるほどね~。」

まりん「さすがリク君だね。」





店長「でも,残念ながらいないなぁ~。

ヘラクレスは最近入荷したばかりだからまだ売れてないんだ。」



 「そっか~。残念…。」





店長「話は変わるけどよ,

この前言っていた,裏のアパートなんだけどな。」



「ほとんど誰も住んでいない気味の悪いアパートだよね。」



店長「おうよ。そこに誰か住み始めたみたいなんだよ。」



 「え!?」



まりん「怪しい人っぽいから近付いたらだめだよ!」



「そうですね,そうします。」



店長「じゃ,俺はちょっと仕事があるから,またな~。」



伊藤店長はそういって奥に行ってしまいました。



 「ねぇ,まりんちゃん。

店長の様子,最近,変わった事とかなかった?」




まりん「そうねぇ~。強いて言えば…。」



 「うん。」



まりん「前に比べて優しくなったかなぁ~。。

仕事でミスしてもあまり怒られなくなったの。」



 「それだけ?」



まりん「うん。多分…。」



 「そっか,ありがとう。」



そして少年昆虫団はキングを出ました。



 「よし,裏のアパートに行ってみよう。」

「いや,何が“よし”なんですか?

今,まりんさんから“アパートに近づくな”って

言われたばかりじゃないですか。」


 「そのアパート,何か気になることがあるのか?」

 「いや,なんとなくだけど…。

ひょっとしたら“漆黒の追跡者のアジト”なんじゃないかなって思って。」


「いやいや,飛躍させすぎでしょ!?」



話し合った結果,こっそりとそのアパートを見に行くことになりました。







「幽霊が出そうだなぁぁ。ヤバイよ!」

 「誰もいない…。出かけているのかな。」

「ねぇ,もう帰ろう。怖くなってきたよ。」



すると,少年昆虫団の後ろに人影が現れました。





果たしてその人影の正体とは?



第5話 カメレオンの大学生

  ノアシリーズ~第1章~
少年昆虫団はアパート“古巣”に来ていました。

リク君達がアパートの様子を伺っていると後ろから人の気配がしました。

???「君たち,人の家の前で何をしているんだ。」

「誰!?」

???「誰って俺はこのアパートの住人だ。先週,引っ越してきたんだ。

そういう君たちこそ何なんだ!?人の部屋をのぞこうとして。」





 「僕たちは少年昆虫団です。僕はリク。」

???「はぁ…。少年昆虫団?」



彼は少し不機嫌そうな顔をしてリク君達をにらんでいます。

その姿はとても奇妙に思えました。



「なんかこの人ヤバそうですよ…。」

???「失礼だな。確かに見た目はだらしないけどな。

これは仕方ないんだよ。」

 「どういうこと?」

???「昨日は大学で遅くまで研究していたから

結局泊まり込んだんだよ。」

 「大学生…?」

???「正確には大学院生だけどな,専門は昆虫学だ。」

 「昆虫学…!?」

???「さあ,もういいだろ。オイラは疲れているんだ。

さっさと部屋に入って一眠りしたい。」

「あ,ごめんなさい。」

 「ねぇお兄さん,名前なんていうの?」



少し間が空いた後,彼はこう名乗りました。



???「大学の連中にはカゲレオンって呼ばれているよ。」

「変な名前だなぁぁぁ。」

???「アダなさ。影のように存在が薄くて

カメレオンのような顔をしているからだって。」

 「そのあだ名気に入っているのか?」

カゲ「いや,全然。」

 「みんな,そろそろ行こうか。」

「そうだね。」



リク君達が立ち去った後,

カゲレオンと名乗る人物は

ぶっきらぼうに部屋のドアを開けました。



その間際,彼は小さな声でつぶやきました。

カゲ「対象(ターゲット)に接触成功。」





そして…口元を緩めにやっと笑い,

部屋の中に入っていきました。



一方,リク君は真剣な顔で何かを考えているようです。

この後,リク君達はどうするつもりでしょうか。



第6話 “漆黒”と“ノア”

  ノアシリーズ~第1章~
リク君は"キング"の帰り道,ずっと考え込んだままでした。

すると,イツキ君が話しかけました。



 「さっきの大学院生が気になるのか?」

 「え?いや…うん。まぁそうだね。」

「じゃあ,あの人って"漆黒の追跡者”の

仲間なのかな?」


「だとしたらやばすぎぃぃぃぃ。

警察を呼んでなんとかしてもらおう!」


 「事件でないと警察は動いてくれない。

それに子どもの言うことなんて

信じてもらえないだろう。」




イツキ君が口をひらきました。



 「俺が気になっていることを話してもいいか?」

 「え,うん。」

 「歩きながらじゃ,ゆっくり話せないから図書館へ行こう。」



少年昆虫団は,すぐそこの中野木図書館へ行きました。







「だぬにはふさわしくない場所ですね。」

「活字以外の本もあるよ!」

 「それで,イツキ君が気になっている事って?」

 「単刀直入に言う。」

「おうおうぅぅ。」



イツキ君は意味不明な発言をする

トシを無視して話を続けました。



 「奴ら…“漆黒の追跡者”はこの“ノアの書”を狙っている。」

「え!?でも…!?」

 「もちろん奴らの本当の目的は

漆黒の金剛石だ。それは間違いない」






 「そうだね。」

 「そのためにはこの“ノアの書”が必要になってくるんだ。」

「なんで??」

 「この書は“漆黒の金剛石”の利用方法に

関する研究書の可能性が高いからだ。」


「利用方法?漆黒の金剛石って昆虫ですよね?

昆虫なんて何の役に立つんですか?」


 「昆虫をバカにしちゃ行けないよ。」

「おうおうぅぅ。」

 「例えば,ハチや蝶がいなければ,植物は受粉できない。

そうなったらぼくたちが食べている作物だって育たない。

自然は一つのサイクルでつながっているんだよ。

だから,どれか一つでも欠けてしまっても

生態系の破壊につながることだってあるんだ。」


「なるほど~。とても小学生とは思えない

ご意見ありがとうございました。」


 「つまり,“漆黒の金剛石”と“ノアの書”の

二つが揃ってこそ,価値があるわけなんだね。」


 「そういうこと。

解読がまだまだ進んでいないから

具体的な研究手順まではわからないけどね。」






「でも,イツキ君すごいよ!

あの本,全部英語の内容なのに!」


 「全ての解読が終わったとき,

“漆黒の金剛石”の正体がわかるはずだ。」


「じゃあきっとノアの書を

必死になって探してそうだね。」


 「確かに。」

 「すでにこの辺りも探りを

入れられているかもしれないな。」


 「最近怪しい人が図書館に来なかったか,

乃木館長に聞いてみようよ。」


 「そうだな。それがいい。」

第7話 監視カメラ

  ノアシリーズ~第1章~
少年昆虫団は図書館のカウンターへ行き,乃木館長を訪ねました。

乃木館長は彼らに呼ばれたので,仕事していた手を止めました。

そして,イツキ君は怪しい人が尋ねてこなかったか聞きました。







乃木館長「う~ん,怪しい人か~。」





 「大事なことだ,しっかり思い出してくれ。」

乃木「実は,その本を君たちが預かった翌日,

その本のことを尋ねてきた人物がいたよ。」



 「何っ!?」

乃木「『この図書館には不似合いな英書がないか。』って質問されたんだ。」

 「館長はそれで何て答えたの!?」

乃木「『英書ならたくさんありますが,

不似合いな本は無いかと思います。』と答えたよ。」

「そっか~。なら安心だね!」

乃木「この暑いのに帽子やマスクをしてたから

どんな人だったのか,よくわからないんだ。怪しい人だったよ。」



 「他には何か聞いてこなかった?」



乃木「『表紙にリッキーが描かれている本だ』と言われて,

イツキ君に貸した本だと思ったんだ。」

 「まさか,俺たちに貸したことをしゃべったのか!?」

乃木「いや,どうも本の持ち主ではなさそうだったからね。

『カブトムシの本なら図鑑コーナーにあります』と言って適当にごまかしておいたよ。」



「ナイス館長!」

 「…!?」

「リク君,どう思う?

漆黒の追跡者とは関係ないのかな?」




 「う~ん。」



ふと,イツキ君は天井を見ました。



 「あそこに防犯カメラがあるよな。

あの映像って見ることできるか?

館長と怪しい人が話していた様子も記録されているはずだよな。」






乃木「え,いや,それは映っているだろうけど,う~ん…。」

 「頼む。大事なことなんだよ。」

乃木「仕方ないな,特別だよ~。」

*実際の図書館館長及び書士がこのような行為をすることはありません!念のため。





乃木館長に案内され,映像室でカメラに

写っている内容を確認することになりました。



乃木「え~っと。確かこの日の記録だな。」



そこには怪しい人が写っていましたが,

どんな人物までかはわかりませんでした。







 「思ったより,わかりづらいなぁ…。」

「残念ですね。」

乃木「あれ?この防犯カメラの管理をしているパソコン…。

様子ががおかしいな…。」

 「どうしたの?」

乃木「いや,なんか異様に回線速度が重くて…。

本当はもっとスムーズなんだけどなぁ。」

 「まさか!」

乃木「え?」



突然,リク君は監視カメラを管理している

パソコンの操作を始めました。



乃木「リク君!?勝手に触っちゃ駄目だよ。」

 「館長はおとなしく見てろ。」

乃木「ええ!?」

「イツキ君,口が悪いよ…。」

「どうしたのぉぉぉぉ。」

 「やはり…。間違いない。」

乃木「一体,何がどうしたっていうんだい?」



果たしてリク君が気づいたこととは…!?



第8話 盗まれた映像

  ノアシリーズ~第1章~
 「間違いない。

このパソコンは遠隔操作された形跡がある。」


「そんなことができるのぉぉ?」

 「ああ,そして…。」

 「“あの映像”が何者かにハッキングされているんだな…。」

 「そういうこと。」

乃木「ちょっと,一体どういうこと!?

僕にもわかるように説明してくれよ。」

 「イツキ君が“ノアの書”を

館長から受け取り,持ち帰る映像だよ…!」


「えええ~!まじですか!?」

 「まずいな…。」





 「ああ。」



乃木「でも,なんで…!?

僕はちゃんと誤魔化せたと思ったんだけどな…。」



 「怪しい人と話した時の館長の言葉を もう一度言ってくれる?」

乃木「えっと,だから『表紙にリッキーが描かれている本だ』と言われて,

『カブトの本なら図鑑コーナーにある』と言って適当にごまかしておいたんだよ。」



「リク君,今のが何かまずいの?」

 「『リッキー』って言われたら普通それが 何なのか聞くでしょ?」

「そっか~!リッキーって確か

“ヘラクレス・リッキー”のことだよね。

最大のカブトってこの前,言ってたもんね。」


 「でも館長は迷わず

リッキー=ヘラクレスカブトって頭に浮かんだ。

つい最近,リッキーの絵か本物を見たんだと思われたんだよ。」




乃木「なっなんてことだ…。それでそいつがこのコンピュータを

遠隔操作して映像を抜きとったのか!」

 「そういうことだね。」

乃木「でも何でそんなことを?

一体何が起こっているのか説明してくれよ。」

 「今はまだ何も言えないよ。

真実が見えてこないからね。」




心配そうな顔をする乃木館長と別れ,図書館の外に出ました。

外に出るとすっかり日が暮れていました。







「リク君,何で館長に相談しなかったの?」

「そうですよ,大人の人に相談した方がよかったじゃないですか。」

 「少し引っかかることがあってね。」

 「そうだな。」

「え?どういうこと?」



第9話 疑わしき人たち

  ノアシリーズ~第1章~
リク君とイツキ君は何か気になることがあるようです。

それは一体どんなことなのでしょうか。



「え?どういうこと?」

 「監視カメラの映像が盗まれた。

それは,つまりボク達のことが

“漆黒の追跡者”にバレたかもしれないってことだよ…。」


「怖いよぉぉぉぉ。」

「ってことはあいつらがこの街に来てるんですか!?」

 「多分ね。」

 「でも,今の所,襲ってくる様子はない。」

「まだ,私たちがどこに住んでいるかまでは

つかめてないのかな?」


 「そうかもしれない。もしくは…。」

「もしくは…?」

 「すでに近くにいて,僕たちの様子を伺っているのかもしれない。」





 「ああ…。」

「怪しい人っていったら…。」

「さっき会った大学院生!!」

 「そうだね,でもひょっとしたらボク達の

知り合いに変装しているって可能性もあるよ。」


「それはいくらなんでも無理なんじゃ…?」

 「いや,奴らならやりそうだ。」

 「今日,会った人たちの中にも怪しい人はいたしね…。」

「え?誰!?」

 「カブクワキングの店長と中野木図書館の館長ですか?」

 「うん。」

「話についていけないぃぃぃぃ。」



リク君はトシ君を無視して話し続けました。



 「店長は最近,急に優しくなったみたいで怪しいな。」

 「館長も俺たちに協力的すぎるのが気になりますね。

人はやましいことがあると必要以上に

丁重に対応しようとするっていいますし。」






この3人の中に漆黒の追跡者の新メンバーである

影(シャドー)がいるのでしょうか。

リク君達は正体を暴き,真実へ近づくことができるのでしょうか。



「ねぇねぇ。栗林先生に相談してみない?」

 「え?何を?」

「人を見る目よ!先生っていろんな生徒を見てきているから

そういうのって詳しいんじゃないかな!」


 「なるほど。そうしてみようか。」





彼らは中野木小学校へ行くことにしました。



第10話 すれ違い

  ノアシリーズ~第1章~
夕暮れになっていますが,学校へ行き,職員室を尋ねました。







安井先生「え…!?栗林先生ならほんの少し前に帰っちゃったよ。」

「ええ~!先生帰っちゃったんですか!?

まだ7時くらいじゃないですか。」


 「ま,仕方ないな。先生の勤務時間も終わっているし。」

 「仕方がない…。先生に相談するのは,また今度にしよう。」

「仕方ないけどそうしよっか。」

「今日は色々あって疲れましたね…。」





日も暮れてきたので今日はこれまでにして,みんなは解散しました。



その直後です。



栗林「いや~。忘れ物しちゃいました。」



栗林先生が職員室に戻ってきました。







安井「あ,栗林クン。さっきリク君たちが尋ねてきたよ。」

栗林「ええ,さっき門の所で会いました。

もう時間も遅いと思ったので早く家に帰るように言っておきました。」

安井「何か用事があったみたいだけど?」

栗林「宿題のことじゃないですか~。」

安井「なるほど。ありうるな。」



栗林「ところで何食べているんですか?」

安井「ん?ドラヤキだよ。食べる?」

栗林「いえ,結構です…。」

安井「そういえば稲姫先生とはうまくいってるの?」

栗林「え,はぁ…。」



忘れ物を取りに来ただけなのに

安井先生の雑談話に捕まってしまったようです。



こちらはイツキ君の部屋です。

夜遅くまで,ノアの書の解読を進めています。



 「う~ん,これはどういう意味だ…。」



がんばっていますがなかなか思うようにはいかないようです。



 「そもそも研究書がこんなに読みにくかったら

意味がないような…。」




彼の夏休みは“ノアの書”の解読に費やすつもりでした。



 「少しずつわかってきた。これは…。」



イツキ君は小声でこう呟きました…。



 ヒトが神になるための研究…。」



全てが解明するのはまだまだ少し先の話になりそうです。





 ノアシリーズ ~第1章完~



第2章 1~8話

第1話 プロローグ 

ノアシリーズ ~第2章~
夏休み,少年昆虫団のイツキ君が図書館で謎の書物を見つけました。



それは“とある研究所”に勤めていた“小早川教授”が持ち出した本でした。



小早川教授は追手からその本を奪われないために中野木図書館に一時的に隠しました。







リク君たちはその書物を“ノアの書”と名付け,解読を試みることにしました。



一方,少年昆虫団が“漆黒の追跡者”と呼ぶ組織のメンバーもノアの書を探していました。







その目的は,ノアの書が“漆黒の金剛石”とつながりがあるからのようですが…。



漆黒の金剛石とは組織が追っている謎の昆虫のコードネームのことです。



漆黒の追跡者の一人,仏の今村は部下の“影(シャドー)”に少年昆虫団のことについて探らせました。



どうやら各務原山での一件で彼らのことを気にかけているようです。



そして“影”は少年昆虫団のすぐ近くにもぐりこんだようです。



はたして“影”の正体は誰なのでしょうか?







また,“ノアの書”には一体どんなことが書かれているのでしょうか?



物語は“とある人物”の変死体が発見されるところから再び始まります。



その人物とは…。



第2話 再び出校日 

ノアシリーズ ~第2章~
リク君は学校へいくため早く起きました。今日は2回目の出校日なのです。

パンを食べながら身支度をしているとニュースが流れてきました。



「昨夜未明,名古屋港で車が引き上げられ,中から男性の変死体が発見されました。

所持品などからこの人物は“ジャファ生命工学研究所”に勤める,小早川教授とわかりました。」






「ふ~ん。」



「なお,ブレーキの跡がなく,争った形跡もないことから

警察は自殺と事故の両面で捜査をしています。」




「なんか朝から暗くなるニュースだなぁ~。」



その時,みんなが迎えに来ました。



「リク君,遅いですよ。」

「ごめん,ごめん。」



登校中,イツキ君が話しかけてきました。



 「ノアの書のことなんだけど。」

「何かわかったの?」

 「ああ,いろいろわかってきたよ。

もちろんまだまだ不明な点も多いけど。」


「わかったことだけでも聞かせてよ。」



そんな会話をしている間に中野木小学校につき,教室に入りました。

トシ君だけは隣のクラスなので教室が別でした。



栗林「みなさん,お久しぶりです。元気でしたか。とは言っても,

先日,終業式をしたばかりですが。」



児童からは元気のよい返事が聞こえてきました。



「先生!先生はどこか旅行に行ったんですか?」



栗林「いや~なかなか忙しくて。」



「稲姫先生と行かなかったんですか?」



栗林「残念ながら。」



「…。」



まさらちゃんは調子に乗って担任の先生をからかい始めました。



「稲姫先生とは仲良しなんですよね~!?」





栗林「え,そっそうだね。順調におつきあいさせてもらってるよ。」



「…。」

「え!?」



一瞬,教室が静まり返りましたがまさらちゃんが気をきかせました。



「先生っておもしろいね!」



栗林先生は話をそらしました。



栗林「それよりもまさらちゃんはどこか旅行に行ったんですか?」



「明日,みんなで“長山スパーランド”の

ナイトイベントを見に行くんです!」




栗林「それは楽しみですね。」



そう言うと,彼は黒板に連絡事項をまとめ,みんなに書き写すように指示しました。



 「ところでさっきの話なんだけど…。」

「うん。」

 「オレの家で話すのは危険な気がするんだ。」

「どうして?」

 「もし奴らの仲間が近くにいて,

オレたちのことを探っているなら…。」


「家族に迷惑がかかる…か。」

 「ああ。」



すると前の席に座っていた,まさらちゃんが

後ろを振り向いて話しかけてきました。



「じゃあさ,明日行く予定の長山ランドの中で聞かせてよ!」

「え~!?せっかくの遊園地でそんな堅い話をするんですか~?」

「でも,確かに人が多いほうが奴らに見つかったとしても,

なんとかなりそうだし,そこまでは奴らも探りにこないかもね。」


 「それもそうだな。それじゃあ明日はノアの書を持って行くことにする。」



というわけで明日,リク君たちは“長山スパーランド”という遊園地に遊びに行くようです。

中野木駅から名駅に行き,そこからさらに電車で1時間の場所にあるようです。

ナイトイベントなので出発は夕方でした。



ちなみにこの後の学年集会で稲姫先生のお話が

あるのですが,それはまた別の機会に。



また,リク君は宿題に不備があったので再提出となったようです。



第3話 各務原山での邂逅 

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団は,夏休みの出校日があった日の夜,

あの各務原山で採集に来ていました。





「どうせ,採れませんよ~。

それに明日は長山ランドに行くんですから,

今日は早く帰って寝ましょうよ~。」


 「そうだな…。」



どうやら二人の会話はリク君の耳には入っていないようです。



「ここって確か前…。」

 「この前来た時はひどい嵐だったな。」

「やばい奴らと出会ったところだね。」

「うん,ちょっと気になることがあってここに来たんだ。」

「どんなこと?」

「ほら,あの時,漆黒の追跡者の二人が

ライフルのようなもので狙撃されてたでしょ。」


 「ああ。そうだったな。」



リク君は周辺を見渡しました。



「たぶん,この辺りの木から狙撃したんだと思う…。

あの雨の中,すごい腕だと思わない?」




「そうですね。かなり離れてますよね。」

「おそらくこのあたりに…。」



リク君は彼らが狙撃されたと思われる場所で何かを探し始めました。



「あった。この木に残っている傷跡。これが,弾痕だと思う。」



リク君は木に残っていた弾痕を指しました。



 「弾は残っているの?」

「いや,無いみたいだね…。」

「どういうこと?狙撃した人があとで回収したのかな?」

「う~ん,時間的にそんな余裕はなかったと思うけどね…。」



「警察が回収したんじゃないですか?撃たれたら病院へ行くはずですし,

そしたらお医者さんが警察に通報しますよね。」


 「そうだな。だぬにしてはいいとこついているな~。珍しい。」

「なんか言い方にトゲがありますね。」

「でも,ニュースでそんなことやってなかったんじゃないかな。」

「そうだね。」

「トシ君はニュースなんて見ないくせに。」

「いやいや,そんなことないよ!」

「…。」



リク君はなにやら考え込んでいました。



「リク君?」

「あ,ごめん,ごめん。なんでもないよ。」

 「どうしたんだ?」

「いや,狙撃した奴も気になるけど,狙撃された連中って

どんな奴らだったかなと思ってさ。」


 「それはあまりよく見えなかったけど,

撃たれずにいた“仏のような顔”の奴は覚えているよ。」




「イツキ君も覚えていたんだね。

確か“今村さん”って呼ばれていたのが少しだけ聞こえた。」


「どんな人たちなんだろうね。」

 「今のところわかっているのは,

“山本”っていうリーダーっぽい男とその部下の“南雲”,“古賀”だっけ,

それからその仏のような顔をした“今村”って人物か。」




みんなは組織の正体が気になるようです。



「ま,それはとりあえず置いておいて,カブクワ採集しよう!」

「うげ~。明日はお出かけなのに~。」



この後,何匹ものカブクワを見つけることができたようです。

そしておうちに帰り,明日に備えました。



第4話 非情な男 リ・セ・ッシュにて 

ノアシリーズ ~第2章~
リク君達の出校日があった日の夜の出来事です。

栄の一角にある目立たないバーがありました。



その名は -リ・セ・ッシュ-



ここは“漆黒の追跡者”専用のバーなのです。

それも準幹部以上のみが利用できるVIPなバーです。マスターも組織の構成員です。

“山犬”の山本と南雲,古賀の3人でお酒を嗜んでいました。



南雲「山本さん,小早川を殺るのに

銃(チャカ)は使わなかったんですね。愛用の“グロック”。」



山本「ああ,チャカはアシが付きやすい。」



すると背後から人影が…。



今村「ふぉっふぉっふぉっ。

やはり彼はあなたの手にかかって殺されたわけですか。

まったく,非情な男ですねぇ。」



<海猫 ユニットリーダー “仏”の今村>



南雲「今村さん,なんでここに。」

山本「まぁ,後始末は古賀にまかせたが。」

古賀「はい。」



<ユニット“山犬” 古賀>



今村「それで,彼はノアズアーク(ノアの書)の隠し場所を吐いたんですか?」

山本「いや…。」

今村「そうですか。」



今村は何か含みのある言い方をしました。

山本はそれを聞き逃さなかったようです。



山本「何か知っているんじゃ無いだろうな?」

今村「さぁ,どうでしょうね。」

山本「小早川の件は俺たちの“ユニット”が任された依頼だ。」



彼らの組織は3人一組のユニットと呼ばれるチームで依頼を任されているようです。

それぞれ“山犬”,“海猫”,“川蝉”とユニットネームがつけられているのです。

さらにそれ以外のユニットも存在するようですが…。



今村「しかし,ノアズアーク奪還は“海猫”

と協力せよとのことですよね。

御前から確認しましたよ。」



“御前”とはこの組織のボスのようです。



山本「ちっ。」



古賀「そうなんですか?」




どうやら山本は部下に嘘をついていたようです。



今村「抜け駆けはダメですねぇ。」

南雲「(さすが仏の今村。こちらの考えは全てお見通しですか…。)」

今村「それよりも,その小早川教授には息子がいるようですよ。」

南雲「え?じゃあそいつがノアズアークを

持っている可能性もあるってことですか?」

今村「ですが,今は行方不明のようです。」

山本「そうか。」



今村はまだ何かを知っているようです。

山本も彼の腹を探ろうとしましたが,無駄に終わりました。



山本「明日,“バベル”へ行く。」

古賀「本社に戻るんですか?」

山本「ああ。御前に確認したいこともあるからな。」

南雲「じゃあ,その前にバベルのバーで一杯やりましょうよ。」

古賀「いいですね。」



こうして眠らない街“栄”の夜はネオンの光に

照らされながら更けていきました。



第5話 漆黒への盗聴 前編

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団は名駅のセントラルタワーに来ていました。

ここから電車で長山スパーランドへ行くのです。



時間は夕方の5時過ぎです。



リク君はセントラルタワー地下1階のトイレにいました。

するとリク君の耳元から声が聞こえてきました。



「いつまでトイレにいるんですか~!?」

「ごめん,ごめん。もうすぐ行くよ。」



リク君は小声でつぶやきました。



よくみるとリク君の耳にはワイヤレスのイヤホンのようなものがついています。

これは,”イヤコム”といって,トランシーバーを超小型化したようなものなのです。



しゃべった声は“骨伝導”と言って

骨を伝ってイヤコムに届き,そこから相手に声が届くのです。



しかも,同時に複数の人間が話したり,

聞いたりできるのであたかもその場に居合わせるような感覚に陥ります。



少年昆虫団は山ではぐれないようにするために

イヤコムをいつもつけているのですが,今日もつけていました。



「よし,快便!」



「いや~汚い!」



リク君が発した声はみんなの耳元に届いているのです。



リク君がトイレから出てみんなの待つ駅のホームに向かおうとした時のことです。



「あれは!?」



どこかで見たような二人の男が角を曲がっていくのを見ました。



「(今のは…!)」

 「リク,どうしたんだ?」



イツキ君が呼びかけます。



リク君は走りながら答えました。



「今,漆黒の追跡者の二人を見かけた!間違いないと思う!」

 「なんだって!!」



みんなは同時に驚いていました。



「リク君,どうするつもりなの!?」

「追いかける!大丈夫,電車が到着するまでには戻るから!」



二人は何か話をしながら歩いています。

リク君は二人の後をこっそりとつけました。



「(間違いない,奴らだ。確か,南雲って名前と古賀って名前の二人だ。)」



二人はセントラルタワー地下の飲食店街の一角にあるバーに入っていきました。



「奴らお店に入っていった。どうやらバーみたい。名前は…。」





そこにはこう書かれていました。



“ヴァ・ス・マ・ジック・リン”と…。



第6話 漆黒への盗聴 中編

ノアシリーズ ~第2章~
名駅のセントラルタワー地下にある

“ヴァ・ス・マ・ジック・リン”というバーは

漆黒の追跡者たちがよく利用するバーでした。



偶然そこに居合わせたリク君は相手の会話を

盗み聞きして情報を手に入れようとしました。



彼らがバーに入った後,リク君はドアを少しだけ開けて中の様子を伺ってみました。



古賀「山本さんはまだなんですね。」

南雲「みたいですね。バベルで“御前”と何か話すことがあるみたいで,

それが長引いているんじゃないですかね。」



「(バベル?組織のアジトのことか?御前…?組織のボスの呼び名か?)」



南雲「しかし,小早川の奴を簡単に消しちまうなんてさすが山本さんですよね。」

古賀「そうですね。怖いくらいに冷静でしたよ…。

簡単に人を殺せるってすごいですよね。」





「(小早川…?どこかで聞いたことが…。)」



リク君の額から汗がでてきました。



「(こいつら本物の殺人集団なんだ…!?

めちゃくちゃやばい連中だったんだ。)」




何やら色々な話をしているようですが,

バックに流れる洋楽が邪魔をして全ては聞き取れないようです。



古賀「…・。そういえば,今村さんは何を企んでいるんでしょうね。」

南雲「というと?」

古賀「“影(シャドー)”なんて部下を使って

以前,何度か出会った子供達を探しているらしいじゃないですか。」

南雲「そういえばそうでしたね。」

古賀「おそらく“影(シャドー)”はすでに子供達に接近しているんだと思いますよ。」



「(子供たちって僕たちのことだな…。

影(シャドー)…!?そいつが僕たちの周辺にいる!?)」




お酒が入っているようで二人は饒舌です。



南雲「そうですかー?古賀さん,深く考えすぎなんじゃないですか?」

古賀「いやいやそんなことないですって。

南雲さんはもう少しあの人を疑ったほうがいいですよ。」



南雲「俺はただ山本さんと同じくらい今村さんのことも尊敬しているだけです。」

古賀「そんなに尊敬しているなら“海猫”の部下になればよかったじゃないですか。」



南雲「俺たちが選べるわけじゃないでしょう。

ヘタなことを言えば,俺が山本さんに消されちゃいます。」

古賀「まぁ,確かに。」



「(“山犬”…“海猫”。それがそれぞれのユニット名か…。

各務原山で聞いたことは間違いじゃなかった。)」




古賀「JFの一員である以上,全ての決断は御前次第ですからね。」





「(JF!?それが組織の略称か!)」



その時,イヤコムから声が聞こえてきました。



「リク君!早く来ないと電車が来ちゃうよ!?」



リク君は小声で応答しました。



「わかってるよ。もう少し…。」



その時,遠くから一人の人物がこちらに向かって歩いてくるのが見えました。



「あ…。」



それは,山犬のリーダー,“山本”でした。



第7話 漆黒への盗聴 後編

ノアシリーズ ~第2章~
リク君がバーの会話を盗み聞きしていると

遠くから一人の人物がこちらに向かって歩いてきました。

その人物とは山犬のリーダー。





<山犬 ユニットリーダー 山本>



リク君はバーの入り口の前にある観賞用の

大きな植木の影に隠れていたのでまだ気づかれてはいないようです。



だんだんとリク君と漆黒の追跡者である山本との距離は狭まってきます。



コツ…コツ…コツ。



「(まずい,どうする!?このままじゃ見つかる!?)」



イヤコムからみんなの声が聞こえますが,リク君は反応することができません。



―額から冷や汗が湧き出ている―



―心臓の拍動音が否応なしに聞こえてくる―



「(どうする…!?戦うか!?)」



背中に手をやりますが,何もありません。



「(いや,無理だ。そもそも捕虫網は持ってきてない。何を焦ってる…。)」



リク君はかなり動揺しているようです。



「(たとえ捕虫網があったとして本物の殺人者に勝てるのか…!?

しかもあいつは拳銃を持っている可能性が高い…。)」




コツ…コツ…コツ。





山本はさらに近づいてきました。



「(このままじゃ捕まる!?捕まったら殺される…。

いや…考えろ!?何か手はあるはずだ!?)」




『山本が簡単に人を殺す人間である』という,先ほど聞いた会話が脳裏に焼き付いているようです。



ドクン!ドクン!ドクン!



―ピリピリピリピリピリピリ―



何やら音がなりました。



その一瞬,リク君はバーの出入り口から横へつながる細い脇道に一目散に走り出しました。



―ピリピリピリピリピリピリ―



山本の持っている携帯電話が鳴っているようです。

彼は電話を取り出す時,視線をポケットに向けた隙にリク君はうまく逃げ出したようです。



山本「なんだ?何か用か?貴様から直接連絡をしてくるなんて珍しいな。

だが…あいにく俺はアンタと話すことなど何もない。」



山本は向きを変えて何やら会話をしています。



「はぁはぁ…!?」



リク君の息が乱れています。



「(危なかった…。)」



「(どうする!?時間をあけてもう一度バーへ行くか。)」



「(いや,それはまずい。逃げるところを見られたかも知れない。)」



「(とにかく皆の所へ戻るしかない。)」



リク君は電車の時間ぎりぎりでみんなの待つ場所へ合流しました。



そして,長山ランドに向かう電車の中で,漆黒の追跡者が話していた内容を伝えたのでした。



第8話 イツキの解読①

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団は長山スパーランドという三重県にあるテーマパークにやってきました。



今日はここでパレードやプロジェクトマッピングなどのナイトイベントがあるのです。

イベントまでに少し時間がありました。



そこで,長山スパーランド内のレストランで食事をしながらお話をしていました。



「ほんとにほんとなんだ…。」



リク君は先ほどバーで聞いたことを伝えました。



「ああ,間違いない。話したことは全てこの耳で聞いたことだ。」

 「影(シャドー)か…。やはり俺たちの周辺にいるってことか。」

「確かこの前もその話をしていましたよね。

怪しいのはカブクワキングの店長さんに図書館の館長さん。

それに引っ越ししてきたカメレオンみたいな大学院生でしたね。」




 「いや…図書館の館長は…。」



イツキ君が何かを言おうとしましたが,だぬちゃんが話し続けました。



「でも,相手が本当の犯罪者なら警察に言った方がいいんじゃないですかね。」

「あたしのお父さん警察官だけど,言ったら信じてくれるかなー?」

「まぁ,無理だろうね。こんな話を信じろっていう方が無理だ。

それに警察は証拠がなければ動かない。」


 「確かに。」

「それにこのことは警察に言わないようにしてボク達だけで

真実を暴いていった方がいい気がするんだ。なんとなくだけどね…。」




「バクバクバクバク。」



トシ君は名物の長山バーガーをうまそうに食べていました。

どうやら会話のレベルについていけなくなったようです。



「それより,本題に入ろうよ。」

 「そうだったな。」

「ノアの書について書かれていることがわかったんだよね!」

 「全てではないけどね。」



そう言うとイツキ君はノアの書をカバンから取り出しました。







「これってコピーとかとってあるの?無くしたら大変だよね。」

 「残念ながらコピーガードの細工がしてあって複製ができないんだ。」

「そっかー。」

 「心配しなくてもいいよ。内容はだいたいここに入っているからね。」



イツキ君は自分の頭を指しました。



「はぁ~。なんか頭の良さを自慢してますね。」



だぬちゃんは何か不満のようです。



イツキ君はノアの書のとあるページを開いてみんなが見えるように置きました。



「ずばり,単刀直入に“漆黒の金剛石”の正体から話そう。」

「うん。」



みんなはゴクリと唾をのみこました。



今まで謎だった“漆黒の金剛石”の正体がいよいよ

イツキ君の口から語られようとしています。



第2章 9~16話

第9話 イツキの解読②

ノアシリーズ ~第2章~
ここは長山ランドの中にあるレストラン。

そこに少年昆虫団はいました。



今まで謎だった“漆黒の金剛石”の正体が

イツキ君の口から語られようとしています。



「“漆黒の金剛石”の正体は…。」



みんな「ゴクリ…。」



「それは…カブトムシだ。」

「え?」

「カブトムシ??」

「それって表紙に描かれていたヘラクレスのこと?」

「いや,そうじゃない。国産のカブトムシさ。

表紙がヘラクレスなのかは謎のままだ。」


「どういうことなんですか?」

「このページのこの写真を見てほしい。」

「ん?これは…。」

「非常に見づらいんだが,カブトムシのメスだと思う。」



そこにはゲージに入れられたカブトムシの

メスらしき昆虫が隅っこに写っていました。





「確かにこれはカブトムシのメスに見えるね…。」

「この章のページは主に研究記録のようで,

ここに『この“検体”を使ってbox‐la2の実験を行う。』と書いてある。

ちなみにこの部分は研究記録になっていて手書きみたいなんだ。

だからところどころ読めない文章もある…。」


「じゃあ“漆黒の金剛石”ってただのカブトムシってこと…?」



「いや,そうじゃない。カブトムシはカブトムシでもただのカブトムシじゃない。」

「なんか難しいですね…。トシ君なんてさっきから話を聞かずに,食ってばかりですよ。」

「いや~。オレはちゃんと理解しているさ。あれだろ,オオクワだろ!?」



どうやら理解できていないようです。



「どうやら世の中には“特殊なDNA”をもったカブトムシが存在するらしい。」

「奴らはそのDNAをもったカブトムシを探しているのか。」

「ああ,奴らはその特殊なDNAのことを“神の遺伝子”と呼んでいるみたい。

ちなみにこの“神の遺伝子”をもったカブトムシが

自然界に存在する確率はかなり低いらしい。」










「そんな珍しい昆虫をどうやって見つけるつもりだったんだろう?」

「おそらく特殊な薬品を使うんだろうね。」

「その通り。その薬品についての研究も進められていたみたい。」

「リク君,なんでわかったの??」

「最初にあいつらに出会ったとき,カブトムシに薬品を注射して殺したでしょ。」

「あ,そういえば…。」

「でも,それじゃあ1匹ずつ探し出して注射してるの?」

「なんかそれは大変そうですね。」

「これは推測だが,“漆黒の金剛石”は地域一帯に

存在する亜種のようなものなんだと思う。」




「げろげろ~!言っていることが意味不明!」



トシ君は話が難しすぎて意味不明な言葉を発し始めました。



「なるほど。」

「リク君,どういうこと??」

「以前ミヤマクワガタを採りに行ったことがあったでしょ。」

「あ,うん。あったね!」

「実はミヤマクワガタのクワの形は

同じように見えて住んでいる地域によって微妙に違っているんだ。」




「ふんふん。」



「山の麓(ふもと)と山の反対側でも

形が違ってたりすることもあるんだ。

そういう形が微妙に違う個体を亜種と呼ぶ。」




「ふむふむ。」



「へ~。つまり,“漆黒の金剛石”って

いるところにはまとまっているってこと?」


「おそらくね。だから統計学を駆使して,

その地域で必要な数に薬物を注射し,

調査すれば,その地域に“漆黒の金剛石”が

存在するかどうかわかるってわけだ。」




「なんか小学2年生の会話とは思えないほど難しいこと言ってますね…。」



「はい!次の質問!」

「どうぞ。」

「“漆黒の金剛石”が“神の遺伝子”をもった

カブトムシだっていうことはなんとなくわかったけど,

その“神の遺伝子”ってそもそもなんなのかな??

それでその“JF”って組織は何を企んでいるの??」




「いい質問だね。それは…。」



「それは…!?」





この後,イツキ君が語る,ノアの書に書かれた真実とは…。



第10話 イツキの解読③

ノアシリーズ~第2章~
みんなは“漆黒の金剛石”が持つとされる“神の遺伝子”について気になるようです。

イツキ君の口から一体どんな事が語られるのでしょうか。



「神の遺伝子の正体…。それは…。」



「それは…。」

「それは…。」

「ゴクリ…。」



少し間をおいてイツキ君は口を開きました。



「それは,わからない!」

「あらら…。」

「まだまだ未解明の部分が多いんだ。

ようやく40%くらいってところだからね。

特に後半ところどころ出てくる,ラッド,コノリー…などの

人物名らしき言葉も意味不明だ。」


「あれ…?」

「う~ん。」

「それなら…。」



だぬちゃんの言葉をさえぎるようにイツキ君は話し始めました。



「ほかにも序章に出てくる神話らしき文章や

タイトルの“ノアズアーク”の意味も謎のまま。」


「わかってきたこともあるよね。

奴らの狙いはやはり“漆黒の金剛石”で

“ノアの書”は“漆黒の金剛石”の研究書ってこと。」


「でも,研究書があるのに

どうして“漆黒の金剛石”を探し続けているのかな?」




「わからないけど,おそらくなんらかの理由で

研究所の“漆黒の金剛石”が全滅しちゃったんだろうね。

そこでまた一から探す必要があった…と。」


「もうひとつ気になることがあるんだけど,

どうしてこんなものが図書館にあったのかな?」


「奴らがさっきバーで話していた内容から推測すると…。

小早川って人が持ち出して図書館に隠したんだろうね。

そしてそのあと組織につかまり,殺された。

ニュースでは事故か自殺と言っていたが,

組織が小早川って人を闇に葬った…。」


「その可能性が高いね。」



トシ君は食べ終わり暇になってきたようです。



「ねぇねぇ,アトラクション乗りに行かない?ブラックサイクロン!」



「仕方ない。一緒に行ってあげますか。」



二人はアトラクションを乗りに行ってしまったようです。



第11話 おそらくあの人

ノアシリーズ~第2章~
少年昆虫団はレストランで食事をとりながら,

ノアの書について議論を重ねていました。



しかし,途中でだぬちゃんとトシ君は

アトラクションに乗りに行ってしまいました。

しばらくするとだぬちゃんとトシ君が戻ってきました。



「あれ,あの二人戻るのがずいぶん早いね。」

「たたたたた…たたたた…。」

「げろげろげろげろげろげろげろげろげろげろげろ…。」



何やら二人は大慌てです。



「お前たち頭大丈夫か…?」

「何があったの??」

「たいたい…大変ですよ!」

「だから何が??」

「いたんだよ!!」

「いたんですよ!!」

「誰が?」

「影(シャドー)ですよ!!」



みんな「何!?」



「正確にはこの前会った大学院生です。」

「カゲレオン!?」

「そうそう!」

「なんで,ここに?」

「わからないですけど,順番まちしていたら

たまたま見かけたんです」


「そうそう!」



「だぬたちと目が合うとどこかへ

行ってしまいましたけど…。

あれは間違いなくカゲレオンって人ですよ!」


「そうそう!」

「きっと少年昆虫団のあとをずっとつけてきたんです!

あいつが影(シャドー)に間違いないです!」


「なんかそんな感じだね~。」



「…。」



「リクはどう思う?」

「まだなんとも言えないけど…。」

「実は影(シャドー)が誰かはもうわかっているんじゃないのか?」



リク君は少し考えてから口を開きました。



「うん。おそらくあの人だ…。」



リク君には気になっている人物がいるようです。



だぬちゃんとトシ君は長山ランド内で

“カゲレオン”氏をみかけたようです。



「やっぱりあの大学院生が影(シャドー)ですよね!?

ものすごい形相でこっちを見ていたんですから!間違いないですよ!」」




「じゃあさ,明日,みんなで行ってみない!?」



「え?」



「カゲレオン氏の家にですか?」

「うん!あとほかにも怪しいって言っていた

カブクワキングの店長さんのお店と図書館の館長さんのところにも!」


「いや,だから館長は…。」

「う~ん…。確かに二人にも怪しいところがあったんですよね。」

「うん,伊藤店長はバイトのマリンさんに

急に優しくなったっていうのが怪しいよね。」




「乃木館長もだぬたちにやたらと親切にしてくれていましたよね。

監視カメラの画面を見せてくれたりとか…。」




「だからそれは…。」

「うん,怪しいよね!」



「怪しい!」



「じゃあ,明日行ってみましょう!

そうすれば誰が影かはっきりしますよ!

これ以上つけまわされるのは勘弁願いたいですからね!」


「3人とも昆虫に詳しいのも疑う要因だよね。」

「そうですよね。“漆黒の金剛石”が昆虫なら

それを探している人物は当然昆虫に詳しいはずですから。」




リク君はだぬちゃんとまさらちゃんの会話を

聞いた後で一言つぶやきました。



「まぁ,確かに…。決着をつける時かな。」

「そうだな。明日行ってみるとするか。」



明日,影の正体を明らかにすることができるのでしょうか。



「ねぇ,さっき聞きそびれたんだけどさ。」

「何?」

「小早川教授っていう人がこの“ノアの書”を書いたの?」

「いや,一番最後の著書のところに名前は

載っているけど,責任者は別の人間みたいだ。」


「そうなんだ。」

「ああ,確か名前は…。」



―ISHII―



ノアの書の著書にはそう書かれていました。



第13話 ノアの創り手 後編

ノアシリーズ ~第2章~
時は少し遡(さかのぼ)り,

リク君が名駅地下街のバー,

“ヴァ・ス・マ・ジック・リン”で

会話を盗み聞きしていた頃…。

(第63話参照)



―愛知県某所 ジャファ生命工学研究所―



研究員「軍医!石井軍医!」



今から実験に向かおうとする人物が所長室にいました。

彼こそ,この研究の責任者でノアズアークをまとめたの張本人でした。



生命研究所の長を務める彼は,

研究員たちから“軍医”と呼ばれていました。





<ジャファ生命工学研究所 所長 石井軍医>



石井「ノックもなしに入ってくるとは懲罰は覚悟できているんだろうな?」



研究員「失礼しました!しかし緊急の案件だったもので…。」



石井「ノアズアーク(ノアの書)の件だな?」

研究員「はっ!」



石井「見つかったのか?」



研究員「いえ,それはまだのようです。」



石井「じゃあ緊急の案件とはなんぞや!?ワシは研究で忙しいんだよ。

ついこの間,手に入った生きた検体があってね。

早く人体実験をしたくてウズウズしているところなんだ。」




研究員「先日,樹海で自殺しようとしていた男ですね。」



石井「どうせ死ぬんだったら医学の発展に貢献して死んでいくほうがいいに決まっとるからね。」



研究員「緊急の案件とは,本部からの通達で,軍医の予想通り,

ノアズアークの探索は“山犬”と“海猫”が担当するらしいです!」



石井「やはりな…。ワシは“御前”にあれほど

『山本と東條には依頼しないでくれ』と懇願したんだがな…。」




研究員「はっ!」



石井「特に山本は好かん!若いくせに生意気で!

ひょっとしたらノアズアークが見つかっても

ワシの手元に返す気がないのかもしれん。」




研究員「はっ!」



石井軍医は今回の一件が山本率いる“山犬”が

任されていることに不満があるようです。



石井「まだ今村のほうがマシだ。あちらに期待しよう。」



研究員「しかし,今村様のユニットである“海猫”は現在,負傷者を抱えているとか。」



石井「ふんっ。それなら“森熊(もりぐま)”でも

“藪蛇(やぶへび)”でもいいさ。“山犬”に借りを作るのだけは嫌だ。」




研究員「しかし,御前の方針は絶対では…。」



石井「それくらいわかっておるよ!

御前のおかげでワシも好き勝手に

研究をやらせてもらっているんだからね。

法律に触れるような実験もね。ヒッヒッヒッ。」




研究員「…。」



石井「山本のやつが良からぬことを企らまぬよう釘をさしておいてやる。」



彼はデスクにあった電話を手に取りました。



プルプルプルプル…。



その時,山本は名駅の地下街で部下たちの

待つバーへ向かっていたところでした。







ピリピリピリ…。



彼の携帯電話が鳴りました。



山本「なんだ?何か用か?貴様から直接連絡をしてくるなんて珍しいな。

だが…あいにく俺はアンタと話すことなど何もない…。」



石井「ふんっ。こっちだって貴様と何ぞ話したくはないわ!

ただ一言、言っておきたくてね。」



山本「…。」



石井「ノアズアークを見つけたら必ずワシの所へ持ってこい!

変なことは考えるなよ!あれは組織にとって必要不可欠な神聖な書物なのだ。」



山本「そんなことアンタに言われなくてもわかっているさ。」



石井「いいな。必ず見つけるんだ!

依頼者(クライアント)からの依頼は絶対だ!」

山本「部下を待たせているんだ。用件はそれだけなら切るぞ。」




彼はそう言って電話を切りました。



山本「くたばりぞこないのジジイが。」



山本は少し遅れてバーに入っていきました。



この石井というノアの創り手が“漆黒の金剛石”の

研究について重大な鍵を握っているようです。



第14話 疑惑の人 前編

ノアシリーズ ~第2章~
長山ランドへ遊びに行った,次の日のことです。

いよいよ影の正体を暴きに行くようです。

まずは,中野木図書館へ行って乃木館長に会いに行きました。





「こんにちは~!」



館長「やぁ,みんな。元気そうだね。」



「あんたも相変わらずだな。」

「イツキ君,言葉遣いが悪いですよ!!」



館長「はは。」



「ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど…。」



館長「うん?いいよ。じゃあこちらへ。」



館長は別室に案内してくれました。

その別室とは普段あまり使われていない

ちょっと汚れた荷物置き場のような部屋でした。



館長「こんな部屋でごめんね。今,来客がいるみたいで応接室があいていないんだ。」

「なんかあまり使っていない感じの部屋だね。

しかも色々置いてあるし…。」


「その奥にある機械はなんですか?」





館長「ああ,これは製本用の機械だよ。

自費出版したい人とかちょっとした内部用の資料を作るときに使うんだ。」



「へぇ,そんなものまであるんですね。さすが図書館。」



館長「それより話ってなんだい?」



ようやく本題に入るようです。

まさらちゃんが話を切り出しました。



「実はあまり詳しいことは言えないんですけど,

私たちある組織に狙われているんです。」


「(おいおい,いきなり直球だな…。)」

館長「はっはぁ…。」



館長は少し戸惑っていました。



館長「ひょっとしてこの前見た監視カメラに映っていた人物のことかな?」

「おそらくそうです。」



「そして組織の人物が私たちの周辺に潜んでいるかもしれないんです。」



館長「なるほど。」

「変装とかして…!」



館長「!?」

「…。」

館長「まさか,僕を疑っているのかい?」

「そ,そういうわけじゃないですけど…!」

「疑わしきは怪しめってね。」



「そんな格言ないよ。」

「では,私たちに親切に監視カメラの映像を見せてくれたのはなぜですか?」



館長「…。」

「それに館長さんって昆虫にも詳しいですよね。

組織には昆虫に詳しい人物がいる可能性があるんです。」




館長「親切にしたのは…。」

「したのは…。」



「ゴクリ!」



「それはオレがこいつの甥だからだろ。」

館長「うん,まぁ,そう。」

「え!?」

「今,なんて??」



館長「僕はイツキ君の叔父なんだ。」

「ええええ!?館長さんがいつき君のオジサン!?」



なんと中野木図書館の乃木館長は

イツキ君の叔父さんだったようです。



館長「親戚だからついつい。あの時のイツキ君,かなり目が真剣だったからさ。」



「そうだったんですか!?」

「だからイツキ君って館長さんと話すとき,いつも口が悪かったんだ。」



「昔からそうなんだから仕方ないだろ。」

「まぁ,そういうこと。」



「リク君はひょっとして館長さんがイツキ君の叔父さんだって知ってたの?」

「ん?ああ,まぁね。」



「なんで知っていたんですか??」

「昔,最初に館長さんに会った時に気になった

ことがあったからイツキ君に聞いたんだ。」




「何が気になったんですか?やはり言葉づかいですか?」

「それもあるけど,一番気になったのは“富士額”さ。」



「なにそれ?」



<富士額>

「髪の毛の生え際の形さ。イツキ君も富士額でしょ。それでよくみたら館長さんも富士額。

さらに顔を見比べてみたらなんとなく似てるなぁって思って。ひょっとしたら身内なのかなって推理したんだ。」


「言っていることが小学生離れしすぎて意味がわからないですね。」

「まぁ,それはともかく聞いてみたらそうだったって話さ。」



「確かに二人,似ているかも…。」



   

「じゃあ,館長さんは影(シャドー)じゃないってことか~。」

「やはり怪しいのはあの大学院生ですよ!」



館長「何かよくわからないけど誤解が解けてよかったよ。」

「じゃあ,次は”カブクワキング”の店長に会いに行ってみるか。」

「そうね。そうしよう!」



こうして少年昆虫団は図書館を後にしました。



館長「何か困ったことがあったら言ってね。

なんでも力になるからね。」

「まぁ,期待はしてないけどな。」

館長「ははは…。」



次はカブクワキングの店長さんに会いに行くようです。



第15話 疑惑の人 後編

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団はカブクワキングの前までやってきました。





「よ~し,今度こそ,影の正体を暴いてやるんだから!」

「なんか,やる気だね…。」

「まぁいいんじゃないの…。」



外でワイワイしゃべっているとまりんちゃんがお店から出てきました。



まりん「あら,いらっしゃい。」



みんな「こんにちは。」



まりん「こんにちは。今日はどうしたの?」



「ねぇねぇ。店長さんってあれからもずっと様子が変ですか?」

まりん「あ,うん。そうだね~。

なんかやけに優しいっていうか…。」

「うご~!ここは虫屋だったか~!厳しいなぁ…。」

「情けない!」



みんなはお店の奥に案内されました。



まりん「店長~!少年昆虫団のみんなが来てくれているよ~!」

店長「おう,いらっしゃい!」

「ちょっとお時間ありますか?」

店長「ああ,この時間は暇だから,時間なら売るほどあるよ~!」

「(それ,店としてまずいんじゃ…。)」

まりん「じゃあ,あたしは奥で残った作業してますね。」

店長「おう,よろしく!無理はしなくていいからな!」

「ふむ…。」

「ここは早く帰りたいなぁあ…。」

「とし君うるさいですよ!」

「確かに怪しいな。あの言動。顔も…。」



「わかった!」



まさらちゃんは何かに気付いたようです。



「何が?」



「伊藤店長さんが急にまりんちゃんにやさしくなった理由よ。」

店長「何のことだい??俺はいつも通りだよ。」

「とぼけても駄目ですよ。ずばり,店長さんはまりんちゃんに恋してます!」

店長「ぎく~!!!」

「なるほど。」

店長「ななななにいっているんだい!!??

まさらちゃん,大人をからかっちゃいけないよ…!」



伊藤店長はめちゃくちゃ動揺しています。



「もろ,顔に出るタイプだね。」

「そうみたいだね。」

「まさらちゃん,なんでわかったんですか?」

「女の感よ,感!!」

「あ,そう…。」

「でも,年齢差がありすぎてかなわぬ恋になりそうだな。」

「ちょっとイツキ君,失礼だよ。愛に年の差は関係ないわ!」

「なんか,まさらちゃんイキイキしているね。」



店長「何言っているんだ,まりんちゃんは22歳。俺はまだ24歳だ。

年の差なんてほとんどないぞ!」



みんなは大声をあげて驚きました。



「その顔で24かよ…。」

「てっきり40過ぎだと思ってました。」

「残念な顔だよね。」

「みんな言い過ぎよ!人間は見た目じゃないよ!」

店長「なんか悲しくなってきたぞ…。」

「あ,店長,ちょっとお願いが…。」

どうやら,伊藤店長も影(シャドー)ではないようです。

次はいよいよ,影レオンという大学院生の家に行くことになりました。

これで影(シャドー)の正体がはっきりするのでしょうか。



第16話 リクの作戦 <概要>

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団はあのアパートの前に来ていました。

やっぱりここが本命なのでしょうか。



「最初からここに来ればよかった~。」

「だから言ったじゃないですか。遊園地でだぬたちのことを

探っていたんですからあの大学院生が影なんですよ。」


「その可能性が高いってことか…。」

「よ~し,捕まえてやるぞ!」



1歩前に出て立っていたリク君はみんなの方を振り返りました。



「どうしたんだ?」

「みんな,今からボクの推理とこれからの

作戦を話したい。聞いてほしいんだ。」


「わかりました。」

「うん!」



リク君は何やらみんなに話し始めました。







そしてしばらくたちました。











「…。」

「…。」

「そして―」



……



……



「…みんなの協力が必要なんだ。」

「うん,任せておいて!」

「ああ。」

「だぬにお任せを!」

「おお!」







……



「じゃあ,僕が今からカゲレオンの部屋を訪ねてみるね。

怪しまれるといけないから一応イヤコムははずして電源はオフにしておく。」


「うん,わかった。気を付けてね!」

「もう一度確認しておくね。」



「はい。」

「もし10分たっても部屋から出てこなかったら

学校に連絡をして助けを求めてほしい。」


「本当に警察じゃなくていいんですか?」

「さっきも言ったけど子供のイタズラだと思われちゃうからね。」

「そうね。それにうちのパパは部署が違うからダメだし…。」

「カブクワキングの店長さんには,

後で電話を借りに来るかもしれないって言っておいたから。」




そう言うとリク君はアパートの前のドアまで歩いて行きました。

少し離れた場所でみんなは様子を伺っています。



リク君はドアの横にあったインターホンを押すと,”ピーンポーン”と甲高い音が鳴りました。



しばらくするとあの大学院生が“ガチャッ”と扉を開けて出てきました。



レオン「あれ?君は確か…。何か用かい?」





「ちょっとお話したいことがあるんだけど,あがってもいいかな?」



レオン「え,え?今?何で??」



リク君はその人を見つめたままほくそ笑んで答えました。



「影…―だよね?」





そう言ってからリク君は何かを伝えました。



レオン「…。」



大学院生は少し笑って答えました。





レオン「ふっ。冷たいジュースでも出そうか。」



リク君は彼に案内されるまま部屋に入っていきました。



第2章 17~27話

第17話 影の正体①

ノアシリーズ ~第2章~
「ちょっとお話したいことがあるんだけど,あがってもいいかな?」



そしてリク君はその人を見つめたままほくそ笑んで答えました。



「影…―だよね?」

大学院生は鼻で笑いました。



レオン「ふっ。冷たいジュースでも出そうか。」

そして二人は部屋に入っていきました。



「あ,リク君,部屋に入れてもらえたみたい。大丈夫かな~…。」

「乱暴なことされないといいですけどね。」

「まぁ,リクの推理に間違いはないから心配ないだろう。」

「そうだよね。」

「あとは結果がどう出るか…。まさに"賽は投げられた"だね。」

「なんでだぬも知らないような

難しい言葉を知っているんですか。」


「とにかく今はリクを信じて様子見だ。」

「うん!」



そして10分が経ちました。





「出てこないね。」

「とにかく学校に連絡をしよう。

俺とトシはここでもう少し様子を見ているから

まさらちゃんとだぬでカブクワキングへ行ってきてくれ。」


「わかった。やっぱり店長さんにも

来てもらった方がいいかな?」


「いや,あまり多くの人を巻き込むのはよくないと思う。」

「わかりました。すぐに行ってきます!

何かあったら,イヤコムで教えてください。」


「ああ。任せろ。」



二人はカブクワキングへ急ぎました。





「店長さん~!」



店長「お,来たな。よくわからないけど電話を貸してほしいんだろ?」

「はい,お願いします。」

店長「いったいなにがあったんだい?」

「悪い奴らを捕まえるんです!」

店長「え?え?そうなの?(何かのごっこ遊びかな??)何か手伝おうか?」



その時,まりんちゃんが奥から店長に声をかけてきました。



まりん「店長,ちょっとこの在庫の確認をお願いします~。」

店長「はいはい~,今いくよ~!」



「…。」

店長「ちょっと仕事が入ってしまったので手伝えないや。ごめんな~!」



「なんか,人が変わったね。」

「だぬたちの危機よりも

女を優先するとは…情けない!」




二人は中野木小学校へ電話をかけました。



プルプルプルプル



「(お願い,出てください…。)」



第18話 影の正体②

ノアシリーズ ~第2章~
中野木小学校へ一本の電話が入りました。



プルプルプル…



安井「はい,中野木小学校の安井ですが…。」

「あ,安井先生!あの栗林先生はいますか?」



安井「うん?ああ,いるよ。今日は会議のある日だから

だいたいの先生はいるからね。」



「よかった,かわってください!」



しばらくすると栗林先生が出ました。



栗林「やぁ,まさらちゃん,どうしたんだい?学校に何か忘れ物?」



「違うんです!リク君が大変なんです!」



栗林「はい?」



「とにかく急いできてください!急いでです!」



栗林「わ,わかったよ。ちょうど会議が終わった

ところだからすぐに出られると思う。」



まさらちゃんとだぬちゃんはみんながいる場所を伝え,電話を切りました。



「…。」

「だぬたちも戻りましょう!

何か進展があるかも知れませんし。」




二人は店長にお礼を言って裏のアパートへ急ぎました。



「戻ってきたか。連絡はついた?」

「うん,なんとか!たまたま栗林先生いたよ!

今日,会議があるみたいだからほとんどの先生が学校に来ているんだって。」


「夏休み中に会議なんて珍しいな。」

「そうなんですかね?」

「まぁ,何かあったりすると,そういう日程を入れたりするものなのかもな。」

「へぇ。」

「今はそんなことより,栗林先生が来るのを待とう。」

「うん,そうだね。」

「今のところ,中の様子に変わったところはなさそうだよ。」



そうしているうちに一台の車が見えてきました。



「あっ!」

車の中から栗林先生が下りてきました。かなり焦っているようです。

栗林「みんな!」



栗林先生はみんなの元へかけつけました。



栗林「電話ではいまいち,状況がつかめなかったけど,大丈夫なのかい!?」



「今のところはね。」

栗林「それで,リク君は?」

「まだ,あの部屋の中にいます。」



栗林「なるほど,わかった。」



栗林先生はアパートに近づこうとしました。

すると中から人影が現れました。



栗林「あれは!?」

なんと,カゲレオンによって

リク君が抱え込まれ,外に連れ出されています。



そしてそのままカゲレオンの車の

後部座席に押し込み,アッという前に目の前から消え去りました。



栗林「なっ!?なんだあいつは!?」



「まずい,逃げられた!」

「リク君…。」

「先生,すぐにあの車を追って下さい。今ならまだ間に合う!」

栗林「わ,わかった!」



彼は“みんなはここで待っているように”と言おうとしましたが,

少年昆虫団はすでに車に乗り込んでいました。



栗林「仕方ない。今は一刻を争う。」



ブロロロロ…・



栗林先生と少年昆虫団はカゲレオンとリク君の

乗った車を追いかけ始めました。



第19話 影の正体③

ノアシリーズ ~第2章~
カゲレオンの乗った車はどんどんスピードをあげています。



近くまで追いつくのですがすぐに離されてしまいます。



栗林「くそっ。なんでこんなことに…!」



「リク君…。」

「大丈夫ですよ。リク君を信じましょう。」

「…。」



車はかなりの距離を走りました。

周りはすでに山ばかりです。



1時間以上走ってようやく停車したようです。

そこは以前,漆黒の追跡者たちと出会った“各務原山”でした。



栗林先生と少年昆虫団はカゲレオンの車の中の様子をのぞいてみました。

しかしすでに二人の姿はありません。





「おそらくこの道を登って行ったんだろう。」



そう言ってみんなはリク君たちの後を追いかけました。



小一時間ほど登ると少し広い場所に出ました。



栗林「いったいどこまで行ったんだ…。」

「あっ!」



二人を見つけたようです。

リク君は捕まって身動きができない状態になっているように見えます。



栗林「おい!うちの生徒に何をするつもりなんだ!」



「よかった。来てくれたんだ。」



栗林「リク君大丈夫ですか!?」



栗林先生はリク君に近づこうとしました。



レオン「うひょひょ。これ以上近づかないで欲しいですね。」



栗林「むむ…。」



レオン「ひっひっ。」



栗林「あんたは一体なんなんだ!?」



「それは,ボクから話します。」



栗林「リク君?」



「実は僕たちは“ジャファ”という名の闇組織に狙われているんです。

その組織の一員が僕たちの周りに潜んでいることも突き止めました。

コードネームは"影(シャドー)"といいます。」




栗林「えっと…。つまりその影(シャドー)っていうのが目の前の人…。」



レオン「ウキキキキ。」



いよいよ影が正体を現すようです。



「そう…。その影の正体こそが…。」

「…。」

「…。」













「あんただよ…。栗林先生!!」



リク君はすぐ目の前に立っている栗林先生に向かってそう言い放ちました。





栗林「な!?え・・えっ!?」



その瞬間,少年昆虫団は栗林先生の元から離れ,

リク君に駆け寄りました。



これは一体,どういうことなのでしょうか。



第20話 影の正体④

ノアシリーズ ~第2章~
「そう…。その影の正体こそが…。」



「あんただよ…。栗林先生!!」





みんなは偽物の栗林先生を睨んでいます。



「あんたこそ,本物の栗林先生に成り代わっている影なんだ!」



その瞬間,少年昆虫団は栗林先生の元から離れ,リク君に駆け寄りました。



なんと影の正体は栗林先生だったのです。



レオンはこの状況でも冷静です。







「ここにいる栗林先生は偽物ってことだよね。」

「ああ,そうだよ。本物の栗林先生は
どこか別のところにいる。生きていればね…。」


栗林「なっなにを言っているんだい!?」



「…。」



栗林「その男が影っていう人物じゃないのかい!?」



「じゃあ先生に質問。恥ずかしがらないで正直に答えてね。」

栗林「あ,ああ良いとも…。それで僕の疑いが晴れるなら。」



「聞きたいことはこれ。ズバリ,栗林先生は

稲姫先生とはどういう関係なんですか?」


栗林「なっななにを!そんなこと今,関係ないでしょ!」



「答えてよ,栗林先生?稲姫先生のことをどう思っているかも聞かせて。」



まさらちゃんは不安そうにじっと栗林先生を見ています。



栗林「だから,そんなことは子供には関係のないことでしょ!」



彼はしばらく黙ってしまいました。







栗林「わかったよ。それで本当に僕の疑いが晴れるんだね。」



「ええ。」



栗林「じゃあいうよ。子供にこんなプライベートなことは言いたくないけど…。」



「…。」



栗林「僕と稲姫先生は交際している仲だよ。

彼女のことはとても大切に想っているよ。」



そう照れながら答えました。



栗林「さぁ,これで満足かい?」



みんなはシーンとしています。



「…。」

「…。」

「先生…じゃない…!」



栗林「え?」



「やっぱり本物の栗林先生じゃない!!」

栗林「え?何を言っているんだい…?」



リク君は不敵に笑いました。



「影(シャドー),一つ決定的なことを教えておいてあげるよ。」





レオン「…。」



「“稲姫”なんて名字の先生はこの学校にはいないんだよ。」



栗林「!?」



「“稲姫”先生っていうのはうちの学年主任の“稲”・川・淳・“姫”先生のあだ名だよ!」





<稲姫先生こと稲川淳姫先生>



栗林「!?」



「男であるはずの稲姫先生と栗林先生が交際するなんてありえないんだよ。」



栗林「いや,しかし。」



「ちなみに稲姫先生は独身だけど無類の女好きで男には一切興味がないんだからね!」



「でも普通そんな間違いしますか?

リク君から真相を聞いたときは信じられなかったですよ。」


「そう,普通はそんな間違いはありえない。」



リク君は影(シャドー)に向かって言いました。



「どうしてあんたがそんな勘違いをしたのか今から話してあげるよ。冥土の土産にね。」



栗林「何っ…!?」



リク君のドヤ顔タイムは続くようです。



第21話 影の正体⑤

ノアシリーズ ~第2章~
影はどうして稲姫先生が女性だと勘違いしたのでしょうか。

今,その真相が明らかになります。



「あんたがどうしてこんな初歩的なミスをしたのか。それを今から教えてあげるよ。」

栗林「くっ。」



「そもそも本来ならその人に変装するためには

事前に色々な情報を入手するなど

しっかりとした準備が必要なはずだよな。」


「イツキ君のいう通り。でも何らかの事情で

影にはその時間がなかったんじゃないかな。」






栗林「…。」



「その顔は図星みたいだね。

きっと組織から一刻も早く潜入するように言われていたんじゃない。」


「そうだろうな。」

「じゃあ影はどんな準備をしたの?」

「まずは図書館の監視カメラのハッキングだろう。そして館長に探りを入れたこと。」

(第33話参照)

栗林「ふんっ。まるで見てきたかのように話をするな。」



だんだんと影の正体を表してきたようです。



「館長の対応を不審に思った影は,

さらに図書館の監視と過去の映像をチェックした。」


(第34話参照)

「それで“ノアの書”を借りたイツキ君の事をつきとめたって訳ですね。」

「そういうこと。後は誰に変装して近づくのが得策か考えたはずだ。」

「わたしたちに一番近い大人って言ったら,

家族以外なら学校の先生しかいないもんね。」




どうやら少年昆虫団の話は核心をついているようです。

偽物の栗林先生はただじっと聞いています。



「そこで僕たちの担任の先生,つまり栗林先生に変装するための情報を集め始めた。」

「どうやって??」



トシ君はすでにさっぱりついていけていないようですが何とかふんばっています。

ちなみにトシ君の担任の先生は栗林先生ではありません。



「学校に出入りする業者を装って盗聴器を仕掛けたんだろうね。」

「教員の会話を盗み聞きすることで栗林先生の情報を得ようとしたんだな。」

「あっ!わかった!そこで稲姫先生の話題が出ていたんだね!」

「正解!」



栗林「くっ…。」



「あんたは盗聴器を使って栗林先生と安井先生の会話を聞いていたんだ。」

(第36話参照)

「…。」



リク君は影(シャドー)をじっと見つめながら言いました。



「教えておいてあげるよ。稲姫先生という名は,

もともとは生徒がつけたあだ名なんだ。」


「小学生のような子供にありがちな,名前を短くして読むアレだな。」

「ほとんどの先生は気にもとめなかったが

一人だけ子供と同じように稲川先生のことを稲姫先生と呼ぶ教員がいた。」


「それって安井先生のことですよね。」

「そう。」



レオン「そういうことか…。」



彼はすでに全てを悟っているようです。





「安井先生は職員室でも稲川先生のことを稲姫先生と呼んでいたはずだ。」



レオン「もし,そうだとしてもどうして影が

稲姫先生を女性だと思い,さらに二人が交際しているというような

勘違いをしなければならないんだい?」



レオンは全てを理解したうえであえて,リク君に質問をしました。



「それは今から教えてあげるよ。」



まだまだリク君のドヤ顔タイムは続くようです。



第22話 影の正体⑥

ノアシリーズ ~第2章~
各務原山の中で栗林先生に変装した影と

少年昆虫団,そして大学院生のレオンが対峙していました。



いよいよ謎が明らかになっていきます。



「もともと安井先生と栗林先生と稲川先生は仕事が終わった後,

よくラーメンを一緒に食べに行っていたんだ。」


「だぬたちも昆虫採集に行くとき,ラーメンを食べに行く

先生たちとすれ違ったりしていましたね。」




栗林「…。」



「でも,あるその日だけは安井先生がトイレに行っている間に,

二人だけでラーメンを食べに行ってしまったらしいんだよ。」


「それを妬んだ安井先生は『俺を置いて二人でデートとは

いい御身分ですね』って嫌味を言ったらしい。」




レオン「"デート"っていうのはつまり"ラーメンを食べに行く"ってことか。」



「そういうこと。それをよりによって生徒の前で言うもんだから

色んな生徒が二人をからかうことになったんだ。」




レオン「なんていう,教師だ…。」



「まさか,職員室でも安井先生は栗林先生のことをからかっていたのか…。」

「そう,おそらく『栗林君,今日は稲姫先生とデートじゃないの?(ラーメン食べに行かないの?)』

とか『最近,稲姫先生とはどうなの?(ラーメン食べに行っているの?)』とか

言っていたんじゃないかな。」


「そっか。影はそれを盗聴器で聞いちゃったんだ!」

「そういうこと。言葉通りにとらえてしまったんだろうね。だから勘違いをした。」



栗林先生に変装した影は急に笑い出しました。



影「ははは。そんなことでバレてしまうとはね…。

そうだよ,私が影(シャドー)だよ。

リク君の言う通り私には時間がなかった。

盗聴器を仕掛けた次の日には変装して

潜入するように命じられていたからね。」



偽物の栗林,すなわち影(シャドー)はついに正体を表しました。



そして隠し持っていた仮面をかぶりました。





「素顔は見せないってわけね。」

影「一応,潜入後もそれとなく色々と探りはいれたんだけどな~。」



「そうだろうね。さりげなく稲姫先生のことを安井先生に聞いてみたんだろう。」



「当然,安井先生はこう答えるよな。『旅行に行っていないよ』って。」



「そっか。そういえば稲姫先生,夏休み前の学年集会で旅行に行くって言っていたね。」

(第45話参照)



「さらに学年主任もいないと勘違いしたあんたは,

ほかの先生に聞いてみた。『学年主任の稲川先生はどちらですか?』ってな。」


「それも当然,『旅行中です。』と言われるはずだな。」

「本来は同一人物のことを言っているんだが,

あんたはそれぞれが旅行に行っていると勘違いをした。」


「そして栗林先生のことをよく知る人物が二人もいないことをチャンスだと思ったんだな。」



影「ま,その通りだ。それで少し油断しちゃったかな。ははは。」



影は余裕を見せています。



「それを踏まえればどうしてあんたの正体に気づけたのかも一目瞭然だよ。」



影「この前の出校日に私が“稲姫先生と交際している”と

言ってしまったからバレてしまったんだね。」




「そういうこと。あれは決定的だった。」



影「私としたことがこんなことでバレてしまうなんてね。

やっぱり君たちはなかなかすごいね。」




レオン「ふふふ…。」



影「それで,そこの変な男と企んで私を

こんな所まで連れてきてどうするつもりだい?

私を捕まえるだけなら何もこんな山までくる必要はないよね。」



「あんたにはここで聞きたいことがいくつかあってね。それに答えてもらう。」



影「さて?」



リク君は影から何を聞き出そうとしているのでしょうか?



第23話 影の正体⑦

ノアシリーズ ~第2章~
リク君は影に何かを聞き出すために各務原山まで連れてきたようです。



影「私に聞きたいこと?何だろう?」



「先日ここで起きた銃撃事件のことは知っているはずだよね。」

(第16話参照)

影「ふむ…。今村さんの部下が撃たれた話かな?

私は現場にいた訳じゃないから詳しくは知らないけどね。」



「そう,その一件のことさ。」

「(何を聞き出すつもりなんだ?)」



「銃撃を受けたってことはあんた達の組織“ジャファ”だっけ,

あんた達の組織と対立する別の悪い組織があるんだよね?」




影「ふむ。」



「もう一つの質問は,なぜこの現場から撃った

はずの銃弾が消えてなくなっているのかってことだよ。」




影「残念だけど組織の機密に関わることは答えられないなぁ。」



「…。」



「じょぼぼぼぼぼぼ…・。」



トシ君は話についていけず,繁みの中で立ちションをしています。



影「一つ目の質問には,特にこちらに不利益になることもないし,教えてあげよう。」



「…。」



影「君たちの推測通り,答えはイエスだ。」



「やはり。」



影「組織の性質上,どうしても敵が多いからね。

今回の一件は我々と敵対するオランダのある製薬会社が

向こうの闇組織と手を組んで回してきた

暗殺者(ヒットマン)の仕業だろうね。」



「ヒットマンって…本当にそんなのがいるんだ。映画の世界みたいでなんか怖い。」



影「現実にそういう連中がたくさんいるってことだよ,まさらちゃん。」



影はなれなれしくまさらちゃんに話しかけてきました。



影「暗殺者がどういう人物なのかもだいたい把握している。」



「どんなやつなんだ?」



影「興味があるようだね,イツキ君。

その人物は本名・国籍・年齢・出生その他一切不明。」



「じゃあ何もわかっていないじゃないですか。」



影「ただし,使われたライフルからその人物だと特定されている。

彼は常に愛用の英国製ライフル,“レジェンドマスター”を使っているようだからね。」



「いったいその人物って…。」



影「彼は気配を全く出すことなく狙撃を完遂することから

『沈黙の狙撃手(サイレントスナイパー)』とも

獅子の髪をした男と噂されているから『獅子髪の男』とも呼ばれている。

またその人物は,こうも呼ばれている。」





「…。」

影「“マコト・セルジュ”,と。」



「マコト…セルジュ…。」



影「ちなみに二つ目の質問にはちょっと答えられないね。

だって私は本当にこの一件には詳しくないから,よく知らないんだよ。」



影は何かを隠しているようでしたが,これ以上問い詰めることはできませんでした。



第24話 影の正体⑧

ノアシリーズ ~第2章~
「それで,こいつをどうするつもりなんだ?」

「そうですよ,捕まえるんですか?」

「もちろん警察に突き出すよ。

何せ殺人集団の組織の一員なんだからね。」




影「おいおい,それは山本や東條のことを言っているのかい?

私の専門は殺しじゃないよ。諜報活動だ。」



「どうせ同じ穴のムジナだ。観念するんだな。」



影「いやぁ,そんなこと言われてもね~。」



「仕方ない。実力行使だ。」



レオン「そうだね。」





影「本気で私を捕まえる気かい?」



リク君は持ってきていた捕虫網を2本とも取り出しました。



影「やる気みたい…だね。」



影はにやっと不気味に笑いました。



リク君は構えると,ものすごい速さで影に向かっていきました。



「-大地二刀流-」



―薔薇十字(ローゼン・クロイツ)―



しかし,影は素手で受け止め,攻撃を弾き返しました。



影「くぅ,強力だね~…。」



「リク君の攻撃が効かない…!?」





すかさず後ろに構え,もう一度バランスを整えてから,

影に向かって走り出しました。



リク君が捕虫網についているボタンを押すと,

まるで棒高跳びの棒のように10mほどの長さになって伸びました。



そのしなやかに伸びた捕虫網を使って

リク君は上空10mほどに飛び上がりました。





影「おお!素晴らしい動き!」



空中で素早く片方の捕虫網を背中にしまいました。

そしてもう1本の捕虫網を振りかぶりました。



― 大空一刀流 青の衝撃(ディープインパクト)―





ドドドドドドド…・・



上空から猛烈な突きが降ってきました。



影「ぐおおおお…。」



影はポケットにしまってあったナイフを取り出し,

その攻撃をはじいています。



攻撃が終わると同時にリク君は着地しました。



影「やるね~,さすがだよ,リク君。」



「もう一つ,聞いておきたいことがあった。」



影「なんだい?」



「本物の栗林先生は無事なんだろうな!」



影「ああ,それは大丈夫。今頃世界1周旅行を楽しんでいるよ。

私が招待したとも知らずにね。」



「ホント!?先生が無事ならよかった~。」



影「さて,それじゃあボクは失礼するよ。」



「何!?」



影は一瞬の隙をついて,その場から去っていきました。



「…。」

「どうして追わなかったんだ?」

「奴はナイフを持っていた。深追いすれば,

まさらちゃんやだぬちゃんが人質に取られかねない…。」


「あれ,オイラは?」

「数に入ってないんですよ。」

「何を~!」



レオン「仕方ない,帰ろうか。」



「そうだね。」



影は逃がしてしまいましたが,

いくつか収穫もあったようです。



第25話 リクの作戦 <詳細>

ノアシリーズ ~第2章~
レオンの車に乗って,帰宅途中での会話です。



「作戦がうまくいったってことでいいのかな?」

「う~ん,影は逃がしちゃったけど・・・。」

レオン「僕の家に来る前にどんな打ち合わせをしてきたんだい?」

「それはね―」





レオンの家に入る前まで遡ります。

(第72話参照)



レオンの家の近くにて―



「みんな,今からボクの推理とこれからの作戦を話したい。聞いてほしいんだ。」

「推理と作戦・・・?」

「ああ,影の正体と影をおびき出して白日の下にさらす作戦だ。」

「わかりました。」

「うん!」

「まず影の正体は,あの大学院生じゃない。」

「え!?」

「影の正体は栗林先生に違いない。」

「ええ!?」

「どういうこと!?」

「ちょっと何を言っているかわからないな~??」



リク君は栗林先生が影である根拠を説明しました。



「確かに出校日の時の対応は変だったかも~!」

「それで,どうやって本人に自白させるんだ?」

「それが今から話す作戦なんだ。」

「ふむ。」



リク君はみんなに向かって話し始めました。



「まず,僕が今からあの大学院生に確認したいことを聞いてくる。」

「一人で大丈夫なんですか?」

「たぶんね。うまくいけば一緒にあの組織と 戦ってくれるかもしれない。」

「ええ!?あのカメレオンみたいな人が,ですか~?」

「あの人が本当に安全な人なら部屋に入ってから

10分は出てこないことにするね。もし,僕の推理が外れて,

あの人が危険な人物だったらすぐに部屋からでてくるから。」


「リクの推理なら大丈夫だろう。筋も通っている。」



みんなはリク君の推理を信頼しているようです。



「だから10分たっても僕が部屋からでてこなかったら,

学校へ連絡して栗林先生に来てもらえるように言ってほしいんだ。」


「まず警察に言わなくていいんですか?」

「おそらく信じてもらえないからね。

それよりも自分たちで影の正体を暴いたほうが確実だと思う。」


「なるほど。」

「そして,栗林先生が到着したのを確認したら,

部屋の外に出て僕はレオンさんに車で連れ去られるふりをするから,

栗林先生の車で追いかけてきてほしいんだ。」




全てはリク君の演技だったようです。



「あの大学院生はそんなにうまく協力してくれるのか?」

「おそらく・・・。なんとか説得してみせるよ。」

「どこに誘い込むつもりなの?」

「各務原山さ。」

「ひょっとして弾痕のことが気になっているか?」

「うん。おそらく影は何かを知っていると思うんだ。」

「なるほど。」

「とにかく山についてから,その後のことは任せてほしい。」

「わかりました。」

「影の正体を暴くためにもみんなの協力が必要なんだ。」

「うん,任せておいて!」

「ああ。」

「だぬにお任せを!」

「おお!」



そしていよいよ作戦実行のようです。



「じゃあ,僕が今からカゲレオンの部屋を訪ねてみるね。

怪しまれるといけないから一応イヤコムははずして電源はオフにしておく。」


「うん,わかった。気を付けてね!」

「もし10分たっても部屋から出てこなかったら 学校に連絡をして助けを求めてほしいんだ。」



ピンポーン



ガチャ



レオン「あれ?君は確か・・・。何か用かい?」



「ちょっとお話したいことがあるんだけど,あがってもいいかな?」

レオン「え,え?今?何で??」



リク君はその人を見つめたままほくそ笑んで答えました。



「影の正体は―あなたも探りを入れていた栗林先生―だよね?」



レオン「ほう。」



「あなたが昨日,長山ランドにいたのは僕たちをつけてきたんじゃないよね。

僕たちを尾行していた栗林先生の後を追っていたんでしょ?」




レオン「君はなかなか鋭いね。」



「中でゆっくりお話ししたいんだけど,いい?」



レオン「ふっ。冷たいジュースでも出そうか。」



これがリク君の考えた作戦の詳細でした。



そんなことを話しているうちにレオンの自宅に到着しました。



第26話 レオンの部屋にて

ノアシリーズ ~第2章~
少年昆虫団はレオンに案内され,部屋に上がりました。



「あの,ついてきちゃいましたけど,この人,本当に大丈夫な人なんですか?」



だぬちゃんは一抹の不安があるようです。



「大丈夫だよ。レオンさんは味方さ。」



*今回からレオンの台詞はこの色になります。

「ウキキキキ・・・。」





レオンはみんなに冷たいジュースを出しました。



狭い1室でしたがなんとか全員が座ることができるようです。



「ねぇ,リク君。どうしてこの人が味方だって言えるの?」

「それはこの人が小早川教授の息子だからさ。」

「その通り~!ウキキ。」

みんな「えええ!?」



なんとレオン氏はあの小早川教授の息子だったのです。



「というか小早川教授って誰でしたっけ?」

「研究所からノアの書を持ち出した人物だよ。

それで組織の山本って奴に殺された。」


「そうでした。」

「昨日,リクが奴らの会話を盗聴してそう言ってただろ。」

「ちょっとド忘れしていただけですよ!」

「つまりこの人も組織に恨みを持っている,だから仲間ってわけか。」

「オイラはあの組織を絶対に許さない。必ず父の無念を晴らしてやる。」



このときばかりは真剣な表情でした。



「うん。」

「でもなんでその教授の息子ってわかったの?」



まさらちゃんのもっともな疑問にリク君が答えます。



「ああ,それはね。最初にあったとき,レオンさんに名前を聞いたでしょ。

でもレオンさんはあだ名で答えた。だから,本名を知られたくないのか

よっぽど自分のあだ名が気に入っているのかどちらかなのかなって思ったんだ。」


「そのあと,俺が『そのあだ名は気に入っているのか』って聞いたな。」



リク君は説明を続けます。



「それでレオンさんは『いいえ』と答えた。

普通気に入らないあだ名を名乗ったりしないでしょ。

だからちょっと怪しいなと思ってさ,本人に聞いてみたんだ。」


「全部,お見通しでさすがだったよ。」

「本当は“影レオン”なんて名前で呼ばれたりしてないんでしょ?」

「ウキキキ,まぁね。普通にレオンって呼ばれているよ。」



どうやら少年昆虫団のみんなは彼のことを“レオンさん”と呼ぶそうです。



「それと最初にあった時に,『接触成功!』みたいなことをつぶやいていたよね。」

(第31話参照)



「聞かれていたか。」

「それってどういう意味なの?なんか影(シャドー)が私たちに接触してきたのかと思っちゃうよね。」

「あれはレオンさんも図書館の防犯カメラをハッキングしていて,

僕たちがノアの書を持ち出したことを知って,接触しようとしてたからでしょ。

そして僕たちと思いがけず接触できたからそうつぶやいたんだよね。」


「まぁ,そういうこと。」

「じゃあカメラをハッキングしている人物は二人いて,

影ともう一人はレオンさんだったんですね。」


「うん,まあそうなるね。」



トシ君は出されたジュースとお菓子を食べるだけの存在になってしまっていました。



「オイラ,このお菓子好きだな~。」



レオンさんと少年昆虫団はお互いに知っている情報を交換しました。



そうすることで漆黒の追跡者が巣食う組織のことがだんだんとわかってきました。



第27話 エピローグ

ノアシリーズ ~第2章~
漆黒の闇に包まれた謎の組織JF(ジャファ)…



その全貌が少しずつ見えてきました。



「組織の通称は“ジャファ”と呼ばれている。

これは君たちも知っていたね。

奴らの正式な組織名は“ジャパノフォビア”。

これは知らなかっただろう。」


「え?何??」



リク君は少し驚いた表情をしましたが,

すぐに冷静になり,こんな言葉を口にしました。



「イスパノフォヴィア・・・か。」



「え?何??小学生が知っている語句ですか?それ。」



中世時代,栄華を極めたスペイン帝国が暴落の一途を辿った理由をご存じでしょうか。



フリッツ率いる無敵艦隊が敗れたから?いいえ,違います。



イングランドやオランダといった周辺国が



スペイン帝国の植民地政策を徹底的に非難したからなのです。





その非難によってスペイン国民は自虐史観に捉われていきます。



国民はあること無いことを教え込まれ,その残虐性を恥じ,自信を失い,

自国に誇りを持つこともできない国民になっていきました。



それが周辺国の狙いだったのです。



それによってスペインは勢力を失っていきました。



ついには“自虐の国(イスパノフォヴィア)”と呼ばれるようになりました。



「つまり“ジャファ”とは・・・。」

「ふざけているだろう?堂々とそんな名前で成り立っている組織なんだ。

ほとんどの日本人が意味なんて知らないんだろうけどね。」


「日本を貶めるための組織・・・ってことなのか?」

「自分の友人で組織に潜入している奴がいてね。情報は確かだよ。」



どうやらレオンには強力な協力者がいるようです。



「えっとそれってつまり何のために???」

「日本国を解体するためさ。そして組織にとって

都合の良い日本国を作り上げるんだろうね。」


「そんなことできるんですか???」

「例えば・・・。」



イツキ君はいくつか思いつくことを話しましたが,それはまた別の機会に。



「少なくとも組織は本気だ。しかし表向きは

あの巨大コンツェルン・ジャファグループなんだよ。」


「聞いたことあるな。投資関連会社や薬品研究所,IT,綜合警備保障…

他にも色々な産業に手を出している巨大グループじゃないか。

日本の経済界の中心となる大企業だ。」


「そんな大きな組織が日本を壊そうとしているってこと・・・?」

「このままじゃ,日本の未来が危ないってことだよね。」

「そういうこと。君たちの言う“漆黒の追跡者”が“漆黒の金剛石”を

探索しているのもその計画の一つにすぎないんだろうね。」




あまりに巨大な陰謀が渦巻いている事実を知り,みんなは困惑しています。





「なんか話が大きくなりすぎて何が何やら・・・。」

「私たちは漆黒の追跡者たちにカブクワを

むやみに殺したことを謝って欲しかっただけだったのにね。」


「知ってしまったからにはやるしかないかな!」

「そういうと思っていましたよ。」

「この国の未来のために,この日本がいつまでも日本であるために。

そして日本が日本人のための国であるために。」


「自分は親父の仇を必ず討つ。

そのためにここまで・・・。」




父親のことを話すときは真剣な表情になります。



「俺はノアの書を読み解いて計画の全貌を明らかにしてやる。」

「私はやっぱりあの人たちにしっかりと謝ってほしいな。」

「だぬはよくわかっていないですけど,みんなについていきますよ。」

「えっと,オイラは・・・。」



リク君はトシ君の言葉をさえぎるように続けました。



「今年の夏休みの少年昆虫団のはっきりとした目標が決まったね!」

「ウキキキ。」

「漆黒の追跡者の組織,ジャファを壊滅させる!」

「いや,ちょっとそれは厳しいのでは・・・。」

「まだ夏休みは1カ月以上あるからな。

作戦を立てる時間は十分あるさ。」




少年昆虫団のみんなには,それぞれの目標が見えてきたようです。



これからの彼らがどんな活躍をするのか楽しみです。



「でも,ジャファという組織に対抗する術はあるんですか?」

「まぁ,それはおいおい考えよう~。」

「大丈夫だよ,こちらの協力者だって強力だからね。また,今度紹介するよ。」

「ありがとう!」

「何かあったらいつでもここにおいでね。」

「うん,ありがとう。レオンさんこそ気をつけてね。

この場所,影に知られているわけだから。」


「それも君の計画のうちだろう。」

「はは。」



どうやら二人の間で他にも何か作戦があるようですが・・・。



「レオンさんって見かけによらず頭がいいんですね。」

「うきき。」



この後もこの部屋でしばらく話し合っていました。



しかし,後日,あの極めて重大な失踪事件

起こることを彼らはまだ知らないのでした・・・。



ノアシリーズ ~第2章完~



2.5章

第1話 影(シャドー)のその後 前編

ノアシリーズ ~第2.5章~
各務原山で正体を見破られた“影(シャドー)”は,

その足で組織のボスである御前の所へ行きました。



その帰りに,ユニットリーダーである今村に呼び出されました。



ここは眠らない街,栄の一角。



組織の幹部以上が入ることが許されるVIPバーがあります。



そのバーの名前は―



―リ・セ・ッシュ―



影(シャドー)が中に入ると,今村がカウンターに座っていました。



今村「ふぉっふぉっ。会うのはこれが初めてですね。」



影「ええ,初めまして。」

今村「お疲れ。影(シャドー)君。まずは一杯どうですか。」

影「いえいえ。それよりもご用件をお聞きしたいのですが?」



今村は用件を切り出しました。



今村「例の少年たちの追跡はどうですか?」



今村は任務の進行状況を確認したかったようです。



影「ええ,順調ですよ。」



彼は平然と嘘をつきました。



今村「そうですか。私はあなたが彼らの追跡に失敗し,

少年たちに正体を暴かれたものだと思っていましたよ。

そしてそれをなぜか御前に直接報告しに行った。違いますか?」



影はあわてる様子もなく切り返します。



影「何のことでしょう?任務は極めて順調です。」



今村は話を続けます。



今村「そうですか。それでは現在わかっていることを報告してください。」

影「それが,まだ何も収穫がないんですよ。」



これは半分当たっていました。



彼は少年昆虫団の居場所は突き止めていたが,

肝心のノアの書は手に入れることができていなかったからです。



今村「困りましたねぇ。居場所さえわかれば・・・。」



どうやら影は少年昆虫団の居場所を

今村に報告するつもりがないようです。



今村「わかっているとは思いますが,我々の任務は・・・。」

影「"漆黒の金剛石"の探索,ですよね。それは承知していますよ。」

今村「ふぉっふぉっ。」

影「(組織内にある6つのユニットのうち,

半分の3ユニットをその探索に割り当てている。

いかに組織が漆黒の金剛石を使った

"あの研究"に力を入れているかがわかる・・・。)」



闇組織ジャファには6つのユニットがあるようです。



それは山犬,海猫,川蝉,そして以前,石井軍医が

名をあげていた,森熊,藪蛇もそのユニットのようです。 (第69話参照)

今村「まぁ,私は君のことを信頼しているんですけどね。

彼が言うことをきかないんですよ。」

影「彼というのはまさか・・・。」

今村「ええ,大西君のことです。」



大西とは影と同じく牟田と山下の代わりに

入った今村の部下のようです。(第29話参照)







第2話 影(シャドー)のその後 後編

ノアシリーズ ~第2.5章~
影「彼というのはまさか・・・。」

今村「ええ,大西君のことです。」



大西とは影と同じく牟田と山下の

代わりに入った今村の部下のようです。
(第29話参照)



影「やはり,グレイですか。」

今村「大西君は“沼蛭(ぬまびる)”では

そう呼ばれていたのですか。

彼とは確か,昔からの知り合いでしたよね?」



影「ええ,“沼蛭”にいたころからの同期ですよ。」



沼蛭というのが6つ目のユニットのようです。



影「本人がそう呼んで欲しいそうで。“グレイ”と・・・。」



今村「ふぉふぉっ。そうですか,彼は“グレイ”ですか。」

影「何か気になることでも?」

今村「いえいえ,なんでもありません。」



二人の会話が続きます。影は高級ブランデーを飲みながら。



今村「沼蛭は“彼”が死んでから,

リーダー不在の期間が3か月ほどありましたね~。

残った貴方と大西君が可哀そうだったので

御前にお願いして私の部下に組み込ませていただいたのです。」



沼蛭というユニットのリーダーは

何らかの理由ですでに死亡しているようです。



影「ええ,それについては感謝していますよ。」

今村「ふぉっふぉっ。」

影「そのグレイがしびれを切らしたわけですか。」





今村「ええ,例の少年昆虫団は自分が探し出すといっていました。」

影「余計なことを・・・。今村さん,任務は私が必ず達成しますのでご安心を。」

今村「期待していますよ。・・・。おや?」



今村は影の首の後ろ側の襟に

何かついているのを見つけたようです。



今村「これはなんでしょう?」

影「何!?」



それは盗聴器でした。



影「(いつの間に!?まさか各務原山で

煙幕を張って逃げた時につけられたのか・・・。)」



今村「盗聴器ですね~,これは。」



影はその小型盗聴器を握りつぶしました。



影「安心してください。おそらくグレイが

我々の会話を聴くために取り付けたものでしょう。」



今村「そうですか,しかし一応,念には念を入れておきましょう。」



今村はどこかに電話をかけ始めました。



影「それでは私はこれで失礼します。」



影は消え去るようにその場から去りました。



一方,レオンと少年昆虫団は

この会話をバーの近くに止めた車の中で聴いていました。



「盗聴器は壊されちゃったけど色々と収穫ありだね。」

「大西,“グレイ”と呼ばれる人物が動き出すのか・・・。」

「その前に影(シャドー)がもう一度何か企んでくるかもしれないな。」

「でも御前との会話は盗聴できなかったですね。雑音ばかりでしたよね。」

「仕方ないさ。電波が拾えない場所で会話していた可能性もあるからね。」



まさらちゃんも影と今村との会話の内容をしっかりと聴いていたようです。



「大西っていうのが本名でグレイがあだ名なんだね。」

「う~ん,正確には違うんだな。」

「え?どういうこと?」

「これは組織に潜入している協力者から

得た情報だから確かなんだけどね・・・。」


「もったいぶらずに早く話せよ。」



イツキ君はレオンに対しても厳しいようです。



「奴らが名乗っている苗字はすべてコードネームなんだよ。

組織では“通り名”と呼ばれている。」


「え!?そうなんだ!さっき影と話していた“今村”っていうのも!?」

「そう,すべてそうだよ。そして幹部以上の人間が御前から“通り名”を与えられることになっているらしい。

だから例えば山犬の山本は“山本”っていう通り名なんだ。本名じゃない。」




今回の盗聴で闇組織ジャファの正体が

少しずつ明らかになったようです。



ちなみに翌日,彼らがそのバーに

行ってみるとすでに閉店していました。



どうやら今村が手を回し,

バーを他の場所に移転させたようです。



これでジャファへの手がかりは

再び無くなってしまいました・・・。



第3話 熱血神主登場!

ノアシリーズ ~第2.5章~
今日の採集場所は二宮神社です。



ここはサイズの大きいカブトやノコギリ,コクワが



採集できる時もあれば,全く何も採集できな日も



あるという当たり外れの大きい場所です。



いつものように少年昆虫団が採集をしていると

後ろから声をかけられました。



みんなが振り返ると灰色の袴をはいた神主がいました。



神主「こんな時間にこんなところで何をやっているんだい?」





彼は神主らしからぬ容貌の持ち主でした。



「だ,誰!?(この人,なんで

灰色の袴なんて着ているんだ・・・。)」




少年昆虫団は警戒して

リク君とイツキ君の後ろに隠れました。



「あんたこそ,こんな時間に何をしているんだ」



赤神「俺は,この二宮神社の神主だよ。赤神竜太という。」



「前,来たときはこんな人いなかったですよね。

今日はいるんですね,神主さん。」


「ボクたちはここで昆虫採集を

しているんです。怪しいものじゃないよ。」




赤神「はははは。別に怪しいと思って声を

かけたんじゃないよ。心配して声をかけたんだ。」



「それなら,心配無用だな。」



赤神「じゃあ,せっかくだからこの二宮神社の

カブクワ穴場スポットを紹介しようか。」



この赤神という男はカブクワにも興味があるようです。



「本当によく捕れるんですか?」



赤神「捕れるさ!まず必ず採集をするぞ!

という気持ちが大事なんだ!とにかく気持ちだ!気持ち!」



「なんかこの人,暑苦しいぞ・・・。」



そして穴場スポットに向かいました。

しかしカブクワはいません・・・。



「いないね・・・。」



すると赤神神主はその木をよじ登っていきました。



「何をやっているんですか?」



赤神「木を揺らすんだよ。上から揺らしたほうが

たくさんカブクワが落ちてくるに違いない!」



「そんなやばいことよくできるなぁ・・・。」



赤神「とにかく根性だ,根性!根性が

あればカブクワは採集できるんだ!!」



「熱血過ぎてうざいな・・・。

それにいまどき根性論って・・・。」




結局,赤神神主のおかげでカブトムシが少し採集できたようです。



「じゃ,帰ろうか。」

「赤神さん,ありがとうございました。さようなら。」



赤神「おう!またな!いつでもおいでよ~!

熱い気持ちがあればいつでも昆虫採集はできるよ~!」



少年昆虫団がその場からいなくなった直後,

赤神神主の携帯電話に着信が入りました。



赤神「おう。そうか―。・・・。

ああ,今,さっき会ったよ―・・・。」



彼は電話で誰かと会話を始めました。



一方リク君たちは帰り道で歩きながら何やら話をしています。



「さっきの人,なーんか怪しいなぁ・・・。」

「そうね。ちょっと熱苦しいもんね。」

「いや、そうじゃなくて袴の色がね・・・。」

「?」

「まぁ、いいや。今はあまり気にしないでおこう。」



こうしてリク君たちはおうちに帰りました。



第4話 新人バイトが来る!

ノアシリーズ ~第2.5章~
少年昆虫団のみんなはカブクワキングに来ていました。

今日は珍しく,たくさんのお客でにぎわっていました。



店長「やぁ,この前はなんか大変そうだったけど大丈夫だったのかい?」



「あ,うん。心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。」



リク君は適当にごまかしました。



「へぇ,ここがみんながよくいくペットショップか~。

なかなか品ぞろえがいいね。」




レオンさんも誘われて一緒に来ていました。



「(俺はこいつのこと認めてないからな・・・。)」



店長「えっと,そちらさんは確か・・・。」



「キングの裏のアパートに住んでいるお兄さんで,この前,仲良くなったんだ。」





店長「へぇ・・・。そうなんだ。」



リク君たちが話をしていると奥の方から声が聞こえてきました。



「あれ?あそこにいる彼は新人バイトさんですか?」



「だれかいるんですか?」



まりん「そうそう,昨日から新しくバイトが入ったのよ!」



よく見るとたくさんのお客にまじって

新人バイトがせっせと働いていました。



「・・・。」

「へぇ~,この店にそんな余裕があったんですね。」



店長「まぁな。これからが一番忙しくなる時期だしな。」



そういうと店長は奥から新人を連れてきました。



店長「新人の灰庭(はいば)君だ。」





灰庭「灰庭健人(はいばけんと)です。

よろしくおねがいします。」



現れたのは整った顔立ちの礼儀正しい好青年でした。



「わぁ,イケメンさんだ。」

「いやいやいや,オイラの方がイケメンだろう。」

「話にならんですね。」



新人バイトの灰庭はリク君に声をかけました。



「あ,よろしく。」



それからレオンにも声をかけました。



「初めまして。」



レオンは手を出して握手を求めました。



灰庭「初めまして,よろしくお願いします。」



レオンを見て,にこやかに笑い握手を返しました。



そして彼は奥の持ち場に戻っていきました。



「ねぇ,レオンさんってここに来たのは初めてなんだよね?」

「ん?もちろんそうだよ?」



イツキ君はさっきの新人バイトが気になるようです。



「なんか変わったやつだな。」



まりん「でも仕事も早いし,助かるわ~。」



まさらちゃんは小声で店長に話しかけました。



「あんなイケメンさん雇ったら,

まりんさん取られちゃうんじゃないの??」




店長「ぎくっ・・・。実は俺としては

雇いたくなかったんだが,

まりんがどうしてもっていうから・・・。」



「はっきり断らないからですよ!」



伊藤店長はしゅんとしていました。

この後,彼らはいつものように昆虫採集に出かけましたとさ。



第105話~第108話

2015/11/11

第5話 移りゆく川の流れ

ノアシリーズ ~第2.5章~
リク君の家から少し自転車を

走らせたところに大きな川が流れていました。



たまにはみんなで魚釣りを楽しむようです。



「いや~たくさん釣りますよ!

このだぬの“太公望”が大暴れしますよ!」


「いやいや,オイラのこの

海釣り用ロッド“海坊主”が大活躍だよ。」


「坊主じゃダメだろ・・・。」



どうやら海釣り用の竿で釣るようです。



「魚はちょっと苦手かも・・・。」



生きた魚のぬめっとした感じが苦手のようです。

まさらちゃんはみんなが釣っているのを見ています。



みんなは草がたくさん生えている土手に並んで魚釣りをしていました。



その隣で一人の老人が釣りをしていました。



その老人は見た目は70代で髪の毛は明るい灰色に染めているようでした。



「う~ん,鯉が1匹釣れたくらいか・・・。」





老人「おやおや,魚は釣れないか?」



「え,うん・・・。さっき1匹釣ったんだけどね。」



急に話しかけられて少し戸惑っているようです。



だぬちゃんやトシ君は1匹も釣れず,

諦めてザリガニ釣りを始めています。



「そういう,じいさんは釣れているのか?」



老人「かっかっ。ワシはただこの川を眺めているだけ。釣りはオマケ。」



「変わっているね。」



老人「それでその釣った魚はどうするんだね?」



「逃がしてあげるよ。楽しませてくれて

ありがとうってお礼を言ってね。」




老人「ホウ。今どきの童(わっぱ)にしては立派な心がけだ。」



老人はそういってから再び,川に目をやりました。



老人「この川はどんどん汚くなってきている。

いずれ魚もいなくなるだろう。まるで―。」



「そうかな?結構きれいな川だと思うけど。」



老人の言葉を遮るようにリク君は言葉を返しました。



老人「童(わっぱ)にはそう見えるか。

川は自分の心を映し出す鏡。

お主はさぞかし純粋できれいな心の持ち主なんだな。」



「いや,そんな・・・。」



「そろそろ飽きてきたな・・・。」



イツキ君はすでに2匹釣っていたので満足していました。



「じゃあこの後は,いつものように昆虫採集に行こうか!」

「マジですか!?」

「レオンさんも誘って,久しぶりに遠出しよう!」



みんなは帰る支度をしました。



「じゃ,おじいさんさようなら!」



まさらちゃんはあいさつをしてその場を去りました。



その直後のことです。



堤防の土手に一台の黒い高級車が止まりました。



中から二人の体格の良い男性が降りてきました。



男1「カンジさん,そろそろお時間ですが・・・。」



老人は“カンジ”と呼ばれているようでした。



カンジ「もうこんな時間か。年を取ると時間がたつのが早い。」



男2「なにやら早急に協議すべき件があるようでして・・・。」



カンジ「さてさて,仕事に戻るか・・・。」



そう言って,車に乗り込みました。



移りゆく川の流れに身をゆだねる老人。



この老人とリク君はいずれまたどこかで会うことになるのでしょうか。



最終章 1~8話

第1話 プロローグ

ノアシリーズ最終章
リク君は少年昆虫団のイツキ君,まさらちゃん,

だぬちゃん,トシ君と共に毎日,昆虫採集に励んでいました。



ある日,イツキ君が中野木図書館で謎の書物を見つけました。



彼らはその本をノアの書と名付けました。



実はそのノアの書は闇組織ジャファの研究機関から持ち出されたものでした。



持ち出した人物は小早川教授と言い,カブクワキングの裏にある

アパートに引っ越してきたレオンさんの父親でした。



小早川教授は逃亡の際,組織に殺されてしまいました。

レオンさんは組織の全貌を暴き,父の仇を討とうとしています。



一方,リク君達の担任,栗林先生は

組織の幹部である影(シャドー)が変装ですり替わっていました。



その正体をレオンさんと協力して暴き,各務原山で追い詰めることに成功しました。



しかし,結局,影を取り逃がしてしまいました。



その後,彼に仕掛けた盗聴器と今までの分析から,

闇組織ジャファには6つのユニットがあり,山犬,川蝉,海猫と

呼ばれるユニットが漆黒の金剛石の探索を担当していることがわかりました。



イツキ君の分析によると,漆黒の金剛石とは,神の遺伝子を持った特別なカブトムシのようです。



彼らが何の目的で漆黒の金剛石を探しているかはわかっていません。



そして神の遺伝子とは何かもわかってはいません。



さらに影(シャドー)と顔なじみであるグレイと呼ばれる人物も動き出す可能性があります。

物語は影(シャドー)がある人物と会話をしているところから始まります。



ここは名駅にあるセントラルタワー,

通称“バベル”と呼ばれるビルです。その50階の一室にて。



薄暗い明りの部屋に二人の男が黒いテーブルを挟んで椅子に座っていました。



一人は今村の部下である影でした。



影「・・・というわけで兵隊を少々お貸ししていただきたい。」



影は腕組みをしたまま,テーブルの向こうに対峙する

その人物にそう伝えました。



彼の名前は源田。ユニット森熊のリーダーです。





<森熊 ユニットリーダー源田>



源田「御前の勅命がなければ兵は出せない。

しかもお前はユニットリーダーですらない。

今村氏を通じて正式に要請するのが筋だ。」



立場はこの男の方が上のようです。



影「御前の許可は出ていますよ。」



影は一枚の紙を取り出して机の上に載せました。

それは御前からの許可状のようなものでした。



源田「まさか。」



彼は信じられない,といった様子で答えます。



影「ノアズアーク(ノアの書)を奪還することは

現在の最上級優先事項でしょう。そしてそのための計画は

すでに出来上がっているのです。あとはコマが少し足りないだけです。」



源田「本当に勅命が・・・?」



影「そこまで疑うのなら直接確認してみてはいかがでしょうか?

しかし,御前に恥をかかせるようなことがあれば貴方の首が飛びますよ。

いくらあなた方が組織で強大な権力を持っていようとも・・・。」



影はたたみ掛けるようにその人物に寄りかかります。



源田「む・・・。」



その男は少し悩んだ末,影の要求を承諾しました。



源田「わかった。」



影「助かります。念には念を入れたいので,

なるべく手練れの連中をお願いしますよ。

まぁ二個小隊,10人ほどいれば十分です。」



源田「言っておくが,我々,“森熊”は組織内の

治安維持と外敵からの警護が第一任務だ。」




森熊の任務は組織の中でも重要な役職のようです。



影「わかっていますよ。作戦が終了しましたら速やかにお返しします。」



そして影はその部屋から出ていきました。



果たして影は何を企んでいるのでしょうか。

これから少年昆虫団に何かが起きるのでしょうか。



第2話 家出

ノアシリーズ最終章
夏休みの夜,イツキ君は中野木図書館から家に帰ってきました。



そして自分の部屋で寝る準備を整えていると,

イツキ君の母親が部屋に入ってきました。



「母さん,どうしたの?」



母「どうしたのじゃないでしょ!

あまり言いたくはないんだけど・・・。

最近また,勉強がお留守になっているんじゃないの・・・。」



「わかっているよ。ちゃんと勉強もやっているよ。」



イツキ君は弁解しますが,お母さんは納得しないようです。



母「確かに,少年昆虫団の子たちには色々と

助けられているから,こんなことは言いたくないんだけど・・・。」



「その話はしないって約束でしょ。」



お母さんはイツキ君が勉強をしないことを心配しているようです。



「そんなに色々言うなら,もういいよ!」



母「どうしたの,急に怒り出して。

今日のあなたはちょっと変よ・・・。」



お母さんはイツキ君が急に怒り始めたので少し動揺しています。



「俺には俺のやり方があるんだ!」



イツキ君はベッドの脇に置いてあったリュックを背負い,

お母さんの横を潜り抜けて部屋から出ていきました。



母「どうするつもり!?」



「こんな家にいたくない。家出する!」



イツキ君は階段を下りて1階の玄関から出て行ってしまいました。



母「ちょっと!?」



あわてて追いかけますが,すでにイツキ君の姿は見えません。



イツキ君は深刻な表情のまま暗い夜道を歩き続けました。



「さてと・・・。どうしたもんかな・・・。」



イツキ君は道端の自販機でジュースを買いながら,そうつぶやきました。





―イツキ君の家出から遡ること1時間ほど前のこと―



六町公園のうす暗い街灯の下で影(シャドー)が電話をかけていました。



彼は携帯電話で誰かと話しているようです。



影「君がノアズアークの件であの子たちに近づこうと

しているのは知っている。・・・え,すでに接触済みだって。

ああ,そうかい。」




どうやら組織内のメンバーと会話をしているようです。



影「だが,私はすでに奪還の計画を立てている。

どうしても手柄が欲しければ,私の計画に乗ってみるかい?」



影は意気揚々と電話で話をしています。



影「・・・だろうね。君なら断ると思っていた。

しかし,それならば私の計画が終わるまでは手出し無用で頼むよ。」



そして電話を切るときに一言付け加えました。



影「結果を楽しみにしていてくれ,・・・グレイ。」



ズボンからイヤホンのようなコードを取り出し,携帯電話に取り付けました。



そして真剣な表情で何かを聞いています。

それはイツキ君とお母さんのやりとりでした。



影は,栗林先生に変装中に家庭訪問を行い,

こっそりとイツキ君の部屋に盗聴器を仕掛けていたのでした。

(第85話参照)



影の携帯電話は盗聴の受信機としての機能もあったのです。

そしてイツキ君が家から飛び出していくのを確認しました。



影「ほう。これは何かの偶然か。またとないチャンスが訪れた。」



いよいよ影(シャドー)の作戦が動き出すようです。



第3話 極めて重大な失踪事件

ノアシリーズ最終章
イツキ君は母親とけんかをして,

家を飛び出し,六町公園へやってきました。



時間はすでに夜の11時を過ぎていました。





「まぁ,この辺かな。」



イツキ君はベンチにリュックを置き,

それを枕にして横になりました。



すると,背後から突然,誰かがハンカチのような布で口を塞いできました。



どうやらいつの間にか囲まれていました。相手は一人だけではないようです。



イツキ君が暴れようとすると別の一人が両足を縛ってきました。



「(こっこいつら・・・。)」



イツキ君の意識がだんだんと薄れていきます。

彼は気を失ってしまいました。



また別の人物が袋を用意していました。



その袋に手際よくイツキ君を入れ,公園の脇に止めてあった

ワゴンまで運び,後部座席に押し込んで車を発車させました。



時間にしてわずか2分足らずでした。



???「対象物を捕獲しました。このまま指定地点へ運搬します。」



助手席に乗っていた人物が携帯電話で報告を行いました。



影「ご苦労。このままぬかりなく進めてくれ。」



連絡を受けたのは六町公園に潜んでいた影でした。



影「(なんとも幸運だった。こんな形で彼の身柄を

拘束できるとは。誘い出す手間が省けた。)」



影の計画はイツキ君を誘拐してノアの書を手に入れることだったのです。



影「(さて,私も指定地点へ向かうか。)」



影は闇に消えていきました。



その日の深夜,お母さんはイツキ君が帰ってこないことを心配して,

警察と少年昆虫団に連絡を入れました。



リク君がイツキ君のお母さんを落ち着かせ,

翌朝にイツキ君の自宅へ伺って事情を聴くことを約束しました。



―そして翌朝―



リク君とまさらちゃん,レオンさんの三人は

先にイツキ君の家に到着していました。



そしてイツキ君のお母さんにイツキ君の部屋に

案内され事情を聴いています。



母「どうしましょう・・・。

私があんなことを言ったばっかりに・・・。」



お母さんはかなり動揺しています。



イツキ君はイヤコムを部屋に置いたまま

出て行ってしまったので現在の居場所がわかりません。



リク君,まさらちゃん,レオンさんは

動揺するイツキ君のお母さんをなだめながら話を聞いています。



「それで,警察には連絡したんですか?」



母「一応捜索願は出しました・・・。

でも心配で心配で・・・。」



そこにだぬちゃんとトシ君が遅れてやってきました。



「遅くなりました。」



だぬちゃんとトシ君も合流しました。

その時,リク君がレオンさんに近づきました。



「レオンさん・・・。」



リク君は小声でレオンさんに語りかけました。



「ああ,間違いなく,奴らの仕業だろうね。」

「うん。」

「そういえばポストにこんなものが入っていましたよ?」



だぬちゃんは一枚の封筒を取り出しました。



「何かな??」

「さっきはそんなの入ってなかったはず・・・。」



リク君は封筒を受け取り,中の手紙を取り出してみました。



それは脅迫状でした。差出人は影(シャドー)。



イツキ君の家出は組織の手によって

“極めて重大な失踪事件”へと発展していったのでした。



第4話 影(シャドー)の策略

ノアシリーズ最終章
リク君はだぬちゃんがポストに入っていた

封筒の件を聞くと,窓を開けて様子を伺いました。



「どうしたんですか?」



だぬちゃんが不思議そうに尋ねます。



「イツキ君のお母さん,申し訳ないんですけど,

お茶もらっていいですか?朝から何も飲んでなくて・・・。」




イツキ母「あ,気が利かなくてごめんなさいね。

あの子のことでいっぱいいっぱいだったので。」



イツキ君のお母さんはみんなの飲み物を

用意するために下の階へ降りていきました。



「で,お母さんを席から外したってことは・・・。」



リク君は再び窓から外の様子を伺います。





「この手紙はボクたちがこの家に到着した時は確かになかったはずなんだ。

ボクもポストが気になってのぞいてみたからね。でも何もなかった。」




「ふむ・・・。」



「つまりだぬちゃんたちが到着する直前に入れられたものだ。

僕たちが全員そろったところで読んでほしい連中の仕業だってことだよ。

そのためには近くに張り付いている必要があるでしょ。

だからひょっとしたらまだこの近くにその人物がいるかもしれない。」




「どういうことなの?その手紙の内容と関係あるの?」



「ああ,これは闇組織ジャファからの脅迫状だ。

だからイツキ君のお母さんに知られたらまずい。」




実はこの時,イツキ君の家の近くにある電柱の裏に一人の怪しい人物が張り付いていました。



影が要請した実務部隊の一人でした。

リク君は手紙をみんなに見せました。



手紙にはこう書かれていました。



―親愛なる少年昆虫団諸君―



大事なメンバーの一人であるイツキ氏を預かった。



無事に返して欲しければノアズアークとの交換になる。



本日,20時にノアズアークを持って八町公園の野球場グラウンドに来たれ。



ただし,少年昆虫団以外の人間が公園にいる気配を感じたら取引は中止となる。



また,この手紙の内容を少年昆虫団以外の人間に知られた場合も同様である。



取引が中止となった場合,彼の身の安全は保障できかねる。



―栗林―



「え,そんな・・・。」

「差出人が栗林先生・・・とありますが,これって・・・。」



差出人のことにだぬちゃんが気づいたようです。



「ああ,間違いなく影(シャドー)だ。」



どうやらイツキ君は影(シャドー)の手に落ちてしまったようです。



「あれ?ノアズアークって何?」」



トシ君は物忘れが激しいようです。



「ノアズアークってのいうは君たちが言う

ノアの書のことだよ。組織ではノアズアークと呼ばれている。

むしろそっちが正式名称かな。」




レオンさんが丁寧に説明してくれました。



「でも,ノアの書っていつもイツキ君が

肌身離さずもっているんじゃないのかな?」




「そのつもりで誘拐したんだろうけど,

手元にないことが判明したから,

あんな手紙を送ってきたんだろう。」




どうやらイツキ君はノアの書を持って家出をしなかったようです。



「じゃあ,部屋のどこかにあるんじゃないですか?」



だぬちゃんとトシ君が部屋を見て回ります。



「さっきから机の上や本棚を見ていたんだけど,

どこにもなさそうなんだよね。」




果たしてノアの書はどこにあるのでしょうか。



第5話 ノアの書を探せ

ノアシリーズ最終章
イツキ君は公園で闇組織ジャファの一味である影(シャドー)と

その部下に捕まって失踪してしまいました。



影はイツキ君の身柄の交換条件としてノアの書を求めてきました。



しかし,イツキ君の部屋にはノアの書がありませんでした。



「いったいどこにあるんだろ・・・。」

「・・・。」



リク君は真剣な表情で何かを一生懸命に考えています。



「ところで,この脅迫状にある取引のメンバーって

僕はその現場にいたらまずいのかな?」




レオンさんは少し困った表情でした。



「レオンさんには他にやってもらいたいことがあるんだ。

中野木図書館へ行ってきてほしい。」




リク君はレオンさんに言いました。



「なるほど,裏をかいてイツキ君があらかじめ

図書館に隠している可能性はありますね。」


「わかったよ。それと,ここの部屋の・・・。」



レオンさんは何かの機械をポケットから

取り出して,スイッチを入れました。



そしてこの家に仕掛けられていた盗聴器をすべて外しました。



「レオンさんってホントに何でもできるんだね。」

「まぁね。こういうことは慣れているからね。」



レオンさんは得意げになりました。



「じゃあ,オイラは図書館に行ってるから。

何かあったらイヤコムで連絡してね。」




そう言ってレオンさんは出ていきました。



「さて・・・。」

「今,朝の7時だから,あと12時間くらいしかないよ!」



イツキ君のお母さんがお茶を持って戻ってきました。



「きっとイツキ君は僕たちが見つけます。

それまで,お母さんはここで待っていてください。」




イツキ母「え?」



イツキ君のお母さんは少し驚いてリク君を見つめました。



「わたしたちに任せてください!じゃあ行ってきます。」



まさらちゃんは笑顔でそう言って部屋から出ていきました。



電柱の裏にいた人物はいつの間にか姿を消していました。



時間は少し遡ります。



イツキ君は影に捕えられ,どこかわからない古い倉庫に

手足を縛られて監禁されていました。



「(くっ・・・。)」



あたりを見回すと5,6人の大人が

少し遠くからイツキ君を見張っているようでした。



しばらくすると影が入ってきました。



影「ご苦労。」



見張っていた人物に声をかけると,

そのままイツキ君に近づいてきました。



影「久しぶりだね。」



「てめぇ・・・。」





イツキ君は影を睨みつけました。



手足を縛られ,寝転がっている状態では

睨みつけることしかできなかったのです。



影「さきほど,身体検査をさせてもらったが,

ノアズアークがどこにもなかった。」



影は不敵な笑いを浮かべながら,

イツキ君の顎をしゃくりあげました。



イツキ君はどうなってしまうのでしょうか。



第6話 交渉

ノアシリーズ最終章
暗い倉庫の一室で影(シャドー)とイツキ君が対峙しています。



といっても,イツキ君は体の自由がきかない状態です。



影「久しぶりだね。」



影はイツキ君が所有しているノアの書を探していました。



「残念ながら,ここにはない。ある場所に隠してある。」



影「それは興味深いね。」



影はイツキ君の顎をしゃくりあげ,尋ねました。



影「どこに隠したのかな?」



「言うはずないだろ。」



すると影はイツキ君の顔を力づくで押さえつけました。



影「あまり,手荒なことはしたくない。」



影はそのままその場から出ていきました。



「(ノアの書・・・。大丈夫だろうか・・・。

頼んだぞ,リク,みんな・・・。)」




影はイツキ君がノアの書を持っていなくても

計画に支障がない自信があるようです。



影「(メンバーのだれかが持っているか,

どこかに隠しているかのどちらかだ。少し脅せば出てくる。)」



イツキ君は疲れもあり,そのまま眠ってしまいました。



― 一方リク君たちは ―



みんなはイツキ君が立ち寄りそうな場所を

探してみますが,なかなか見つかりません。



「疲れたよ~。暑いし・・・。」

「弱音を吐いてどうするんですか。イツキ君の危機なんですよ。」



だぬちゃんはトシ君に言い聞かせました。



「わかっているよ~。」

「少し休憩しよう。」



リク君たちは六町公園で休憩することにしました。





「そういえば取引場所って八町公園だったよね?」

「ああ,もうすぐ取り壊されるから現在は

立ち入り禁止になっている公園だね。」




八町公園はこのすぐ近くにある野球グラウンドのある公園でした。



間もなく取り壊しの工事が始まるため,

現在は柵に覆われ,立ち入り禁止になっています。



「影もなかなか考えますね。そんなところで取引とは・・・。」

「警察に知らせたらイツキ君殺されちゃうのかな・・・。」



まさらちゃんはイツキ君の身を常に心配していました。



「そうだね,警察には言わない方がいいと思う。

これは僕たちだけで解決しなくちゃ。」




その時,レオンさんからイヤコムに連絡が入りました。



「ノアの書なんだけど・・・まだ時間がかかりそう。あと1日あれば・・・。」



「わかった・・・。」



話し終わるとイヤコムを切りました。

そこにいた全員が内容を聞いていました。



「まだ,みつかってないってことかな。」



まさらちゃんは心配そうにしています。



「こうなったら八町公園に行ってみよう。

そこで影と交渉するんだ。あと,1日待って欲しいって言ってみよう。」




リク君たちは指定の時刻に八町公園のグラウンドへ到着しました。



するとそこには・・・。



第7話 影現る

ノアシリーズ最終章
八町公園のグラウンドには人影がありました。



それは影でした。



仮面をかぶっているため,素顔はわかりません。



影「久しぶりだね。少年昆虫団諸君。

約束通り,君たちだけで来たみたいだね。」



影は落ち着いた様子で話し始めました。



「イツキ君は無事なんですか!?」



だぬちゃんは影にイツキ君の安否を訴えます。



影「安心したまえ。ノアズアークさえいただければ,彼はお返しするよ。」



「本当・・・!?」



リク君は公園の茂みに気配を感じました。



万が一,影に手を出せば,組織の仲間が加勢に出るかもしれません。



「(なんとか交渉をしなければ・・・。)」



影は手を差し出し,ノアの書を要求する仕草をしました。



「そのことなんだけど・・・。」



リク君は本題に入りました。



「実は,イツキ君がノアの書をどこかに隠したみたいで,

まだ見つかっていないんだ。

だから,もう1日待ってほしい。

必ず探し出して,アンタのところへ持っていく。」




影はしばらく考えこみました。



影「そんな手に乗るとでも思ったのか?さっさと出すんだ。」



「ホントにないの!みんなで一生懸命探したんだから!」



影はまさらちゃんを見ました。



影「どうやら手元に無いというのは本当のようだ。

そもそも取引を引き延ばしても君たちにメリットなどないはずだしな。」



再び影は沈黙しました。



影「いいだろう。あと1日だけ待ってあげよう。

ただし,あと1日だけだ。

明日のこの時刻にノアズアークが手元に無ければ,

彼と二度と会うことはできないと思ってくれ。」




「わかった・・・。」



影はそう言うとその場から去ろうとしました。



「待てっ!」



影は振り返り,リク君を見ました。



影「まだ何か用かな?」



「今回の計画はアンタ一人では実行できないだろ。

他にも計画を手助けする仲間がいるのか!?」




影「仲間ではないが,今回の計画のために用意した兵隊ならいるよ。」



「兵隊・・・?」



影「そう,ユニット“森熊”の源田氏に依頼をして

洗練されたコマを用意してもらったのさ。」



「(森熊・・・。源田・・・。)」



影「世間ではジャファ警備保障となっているが,

一部のメンバーには裏で暗殺などの特殊訓練を受けさせている。

君たちがかなう相手ではないよ。だから明日までに

おとなしくノアズアークを持ってくるんだね。」






影はそれだけ言うとその場から去りました。



「怖かった~。」

「ですね・・・。」



二人はかなり緊張していたようです。



「オイラは別に緊張していないよ!」



トシ君は相変わらず,マイペースでした。



「さて,これからイツキ君の家に行こう。」



リク君はこれからすべきことを説明しました。



「そっか,イツキ君のお母さんに伝えなくっちゃ。」



リク君たちはイツキ君の家に向かい,

お母さんにあと1日待っていてほしいと説明しました。



「とりあえず,わかってもらえたから大丈夫そうだね。」



みんなは安堵しました。



「でも,明日までにノアの書が見つからなかったら・・・。」

「大丈夫。明日の7時にイツキ君の家に集合しよう。

何か動きがあるかもしれないから。」




リク君はみんなにそう伝えて,その場を解散しました。



そして,彼はその足で中野木図書館へ向かいました。



「何とか間に合え・・・。」



そして翌日の朝を迎えます。



第8話 図書館にて合流

ノアシリーズ最終章
-翌日の朝-



イツキ君のお母さんに何か連絡などが

あったか確認しましたが,特に何もありませんでした。



みんなはイツキ君のお母さんを安心させる

ための言葉をかけ,その場をあとにしました。



お昼すぎまでイツキ君が立ち寄りそうな

場所を探しましたが,ノアの書は見つかりませんでした。



「よし,そろそろかな。みんな,図書館に行こう。

レオンさんがいるはずだから。」




みんなは中野木図書館へ向かい,

レオンさんと合流することにしました。



到着すると館長さんが出迎えてくれました。



「こんにちは。」





館長「やあ,いらっしゃい。なんか大変なことになっているみたいだね。」



どうやら館長さんはレオンさんから話を聞いたようです。



「影との交渉はうまくいったみたいだね。」



リク君は小声でレオンさんに話しかけました。



「館長さんにはどこまでしゃべったの?」

「ノアの書のことで色々手伝ってもらっていたから,

それだけだよ。組織のことや影に誘拐されている

ことは触れてないから安心して。」


「そっか。」



リク君は少しホッとしました。



館長さんは奥の部屋に入り,

しばらくするとノアの書を持って出てきました。





「あ!」



まさらちゃんは思わず声をあげました。



「ノアの書,あったんですね!」



館長さんはノアの書をリク君に渡しました。



館長「なかなか大変だったよ。」



「ありがとう。」



リク君はお礼を言いました。



「でもどこにあったの?」



トシ君の疑問はもっともでした。



「とにかく,今はこのノアの書が切り札だ。

これでイツキ君を救い出す。」




リク君はトシ君の言葉を遮り,そう言いました。



「館長さん,ありがとう。後はなんとかなりそうなんだ。」



館長「そうかい。じゃあ僕は仕事に戻るね。」



館長さんは業務に戻っていきました。



「レオンさん,お願いがあるんだ。」

「なんだい?」



リク君はレオンさんに耳打ちをしました。

何か頼みごとをしたようです。



「何をお願いしたの?」

「大事なことをちょっとね・・・!

レオンさんにしかできないことさ!」




レオンさんは図書館を出ていきました。



「お~!」



トシ君も今回はやる気です。



そのやる気が空回りしなければよいのですが・・・。



そして,指定時刻になり,八町公園のグラウンドに到着しました。



最終章 9~13話

第9話 最後の交渉

ノアシリーズ最終章
八町公園のグランドは,今は使われていなく,

地面はボコボコになっていました。



ライトも点灯せず,周りはほとんど真っ暗でした。

頼りになる明かりはグランドの隅にある古い外灯が1つ・・・。



リク君たちがグランドの中央で待っていると,人影が見えました。

だんだん近づく人影に見覚えがありました。昨日もここで会っていました。



影「さて,最後の交渉の時間だよ。」



仮面の下に不気味な笑みを浮かべているのがわかりました。



「・・・。」



リク君,まさらちゃん,だぬちゃん,

トシ君の4人は声を出さず身構えています。



「影が来ましたね・・・!」



影「ノアズアークはあったのかな?」



「もし・・・なかった・・と言ったら?」



影「・・・。」



影は黙ったまま動きません。



「仕方ないね・・・。(間に合わなかったか・・・。)」



リク君は何かを呟いた後,カバンから

ノアの書を取り出し,影に向かって投げました。



影はそれを片手で受け取りました。



影「なんだ,もっているんじゃないか。」



「ああ。持っていなくてもイツキ君の身柄を開放して

くれるかと期待したが,やめた。その気がなさそうだったからね。」




リク君は悔しそうにしています。



影「賢明な判断だ。イツキ君は明朝には

自宅に戻っていることを約束するよ。」



その時,リク君のイヤコムに何か連絡が入りました。

今回はリク君のみが代表でイヤコムをつけているようです。



「・・・!?」



リク君は背中の捕虫網を2本取り出して構えました。

まさらちゃんたちは少し下がってリク君を見守っています。



「あんたをこのまま返すわけにはいかない。

ここで捕まえて公安に突き出す!」




影「ほう。公安・・・?」



影はやれるものならやってみろといわんばかりの態度でした。



影「イツキ君がどうなってもいいのかな・・・?」



「おおおおっ!!!」



リク君は自分を鼓舞し,影に突進していきました。



「お前をここで倒す!」



―大地二刀流― 瞬激の舞(ワルツ)





リク君は2本の捕虫網を巧みに操り,

舞うようにして波状攻撃を仕掛けます。



影は腰に下げていた伸縮できる警棒を取り出し攻撃を防ぎました。



影「相変わらず,いい腕だ・・・。だけど,今回は・・・。」



リク君の攻撃を防ぎきると1歩後ろに下がり,間合いを取ります。



影「君が攻撃を仕掛けてくることは予想できたからね。備えさせてもらったよ。」



手に持っていたのは伸ばすと50センチほどにもなる警棒でした。

太さは5センチほどで先になるほど細くとがっていました。



材質は鋼でかなりの硬さのようです。



影「今度はこちらから行くよ!!」



二人の攻防は続きます。



第10話 帰還

ノアシリーズ最終章
リク君と影(シャドー)の攻防が続きます。リク君が正面から

一太刀を浴びせるも,影はしっかりと防ぎます。



影の攻撃は素早く,リク君は2本の捕虫網を

使わされて防戦一方でした。



「(速い・・・。かなりの速さだ。)」



リク君は影から間合いを取るために後ろに下がり距離を取りました。

そして捕虫網を影に突き出し,持ち手にあるボタンを押しました。



―大地一刀流― 神速の打突





影「む!?」



捕虫網は一瞬で10mほど伸びて

影に突き刺さったようにみえました。



しかし,間一髪のところでよけられてしまいました。



元の長さに戻し,もう一度,接近してからの攻撃を仕掛けます。



「(この暗闇じゃ,上空からの攻撃は効果が薄いか・・・。)」



お互いの攻防がさらに続きます。



その時,一瞬のすきをついて影がリク君の左肩に攻撃を加えました。



「ぐっ・・・。」



影「どうだい?私だってそれなりに強いんだよ。」



影は余裕を見せます。



「それなりどころかかなり強い・・・ですよ。」



リク君は一瞬ひるみましたが,すぐに反撃に出ました。



―大地二刀流― 薔薇十字(ローゼンクロイツ)



面と胴の同時攻撃に影が一瞬の躊躇(ちゅうちょ)を見せます。



影「ぐふ・・・。」



右手から真横に繰り出された捕虫網“天照”が

影の脇腹に入り地面に倒れこみました。



「リク君だって負けてない!」

「うが~!血が騒ぐ!」



影はすぐに立ち上がりました。



影「君のその能力の高さには本当に驚かされる・・・。

大人顔負けだ・・・。いったい何者なんだ?」



影はリク君に尋ねました。



「平成のファーヴル,リクだ。」



リク君はそう答えると影の懐まで一足飛びで入り込みました。



―大地二刀流― 聖十字(グランドクロス)





交差させた二本の捕虫網を相手の胸元で切り開きました。



影「がはっ・・・。」



影はその場で倒れました。



リク君は少し息を切らしていました。



影「さすがだ・・・。」



影はすぐに起き上がり,何事もなかったかのようにしていました。



「効いてない・・・。」



二人はお互いにらみ合って動きません。



影「さて,もう少し遊んであげたいが,時間もない。」



そう言うと,内ポケットに入っていた携帯電話を

取り出してどこかへ連絡をしようとしました。



影「おかしいな,なぜ誰も出ない・・・?」



どうやら影は実行部隊に連絡を入れたかったようです。



影「まぁいい。この公園にも何人か配備してある。」



「え,そうだったんですか!?これはやばくないですか!?」



だぬちゃんは増援が来ると聞いて少し焦っています。



影「おい,出てきたまえ!」



影は大きな声で叫びました。



すると奥から二人の人影が見えました。



影「ん・・・?」



そこに現れた人影は・・・。



影「ばかな・・・。なぜ・・・。」



人影はレオンさんとイツキ君でした。





「やぁ,久しぶりだね。影。」

「やっと出られた。」



これは一体どういうことなんでしょうか。



第11話 意外な結末

ノアシリーズ最終章
公園のグラウンドに現れたのは影が

手配した実行部隊ではなく,レオンさんとイツキ君でした。



影「なぜ,君がここに・・・。それにお前はあの時の・・・!?」



影はレオンさんとイツキ君を交互に見ながら,睨みつけました。



「そういえば各務原山で僕の取り付けた

盗聴器はこわされちゃったね。

でもおかげで色々と聴けて良かったよ。」




影「そんなことはどうでもいい!?

イツキ君を連れだしたのはお前だな!

あそこには1個小隊の人数をかけて

見張らせていたはずだぞ!どうやって逃げ出した!」



影はイツキ君がここにいることが信じられないようでした。



「見張りの方々は僕とイツキ君で

片付けさせてもらったよ。この周辺に潜んでいた人たちもね。」




影「ばかな!?精鋭中の精鋭だぞ。海外でのゲリラ戦闘経験も

ある部隊が・・・。ありえない・・・!?」



レオンさんはリク君の前に出て影と対峙しました。



「大丈夫だった?少しやられたみたいだね。」

「うん,平気。でもかなりの使い手だよ。

アイツ,各務原山の時は全然本気じゃなかったんだ。」




イツキ君も前に出てきて影に話しかけます。



「よくもあんなところに閉じ込めてくれたな。たっぷりとお礼をしてやるよ。」

「イツキ君,待つんだ。奴にうかつに手を出してはいけない。」

「でも・・・!?」



イツキ君はレオンさんに制止され納得がいかないようです。



影「どうやって監禁している場所を探し出した・・・!?」



「さぁね。それをアンタに説明する義務はないでしょ。」



レオンさんは少しずつ円弧を描くように動きながら影の背後に移動します。



イツキ君も反対から同じような動きをして影を囲みます。



「どうやら形勢逆転だね。」

「おお,これで組織の幹部を捕まえたも同然ですね!」



だぬちゃんはさっきの絶望感はどこかへ消えて意気揚々としていました。



影「はははははは・・・。」



「何がおかしいの!?」



まさらちゃんは影に問い詰めます。



影「私はこんなところでは捕まらないよ。

もともとこのノアズアークさえ手に入ればそれでいいんだ。」



「強がりはよしたほうがいいよ。さすがにこの状況じゃ逃げられない。」



リク君は捕虫網をかまえたままその場で影が逃げるのを遮ろうとしていました。



影「果たしてそうかな?」



「ん?何だこの音?」



トシ君が何か音が聞こえると訴えました。



「これは・・・!?」



バラバラバラバラバラバラバラバラバラ・・・・・・。



「上だ!?」



全員が上を見上げるとなんとヘリコプターがいました。



サーチライトに影(シャドー)が照らされています。





リク君たちはプロペラの風で影になかなか近づくことができません。



影「リク君,君との戦闘は楽しかったよ。

今度やりあうときはお互い本気でやりたいものだね。」



影はまだまだ実力を出し切っていないようでした。



リク君もイツキ君の安否が確認できるまでは全力を

出すことをためらっていたようです。



「くそ・・・。」



一瞬のうちにヘリからロープの階段が下りてきて,

影が捕まるとすぐに上空へ上がっていきました。



影「では,ノアズアークは確かにいただいた。

またいずれどこかで・・・。はははっ!」



「まずい,逃げられる!」



意外な結末に,全員が呆然とするしかありませんでした・・・。



第12話 エピローグ 前編

ノアシリーズ最終章
影はヘリを使い逃亡してしまいました。



こうなることを見越して見通しの良い,

使われていないグラウンドを交渉の場に選んでいたのです。



その後,イツキ君は自宅へ帰り,お母さんに謝りました。



イツキ母「ああ,本当によかった。お母さんこそごめんなさい。

色々と言ってしまって。こんなに素敵なお友達のことを

悪くいってしまったお母さんを許してね。」



「もういいよ。俺も家出とかしてお母さんを

心配させてしまってごめんなさい。もうしないから。」




とりあえずお母さんを安心させることができてよかったみたいです。



イツキ君はそのまま自分の部屋にみんなを案内しました。



部屋に入って座ると,まさらちゃんはイツキ君に話しかけました。



「ホントによかったね・・・。

一時はどうなることかと思ったんだよ・・・!?」


「・・・。」



イツキ君はなにやら気まずそうにしています。



「でもノアの書が闇組織“ジャファ”に取り返されちゃいましたね。」

「う・・・ん。」





リク君も何やら言いたいことがありそうです。



「いや,実はね・・・。」



レオンさんが切り出しました。



・・・・。



・・・・。



「え!?あのノアの書はに・せ・も・の!?」

「何を言っているのか意味不明なんですけど!?」

「ゲロゲロ~!?」



三人は動揺を隠せません。



これは一体どういうことなんでしょうか。



「実は偽物の栗林先生が家庭訪問に訪れたことを聞いて,

俺の部屋に盗聴器が仕掛けられていることには

すぐ気づいていたんだ。それで近いうちにこのノアの書を

必ず取り返しに来ると思った。」


「ふむふむ。」



だぬちゃんはとりあえず相槌を打ちました。



「そこで図書館の館長にお願いして偽物の

ノアの書を作ることにしたんだ。

万が一の時にはそれを奴らに渡す作戦だったんだ。」


「え?でもノアの書ってコピーガードが

かかっていてコピーできないんじゃ?」




まさらちゃんの疑問はもっともでした。



「ああ,だからノアの書と同じ材質の紙を見つけてきて,

ほとんど全部パソコンで打ち直したんだよ。

それを印刷して専用の製本機で製本したんだ。」




イツキ君は偽のノアの書を作る過程を説明しました。



「製本機?」

「ほら,一度,図書館の奥の部屋に案内されたときに

置いてあったでしょ。あれを使ったんだよ。」
(第70話参照)

リク君は今回のことを知っていたようです。



「さすがに館長は本のことならなんでもわかるってくらい詳しいからね。

表紙から中身までほとんどそのまま作り直したさ。

ものすごい時間がかかったけどな。

途中からリクやレオンさんにも手伝ってもらったし。」


「この前,レオンさんにお願いしていた工作ってそのこと?」 (第121話参照)

「ああ,そうだよ。」



レオンさんも手伝ってくれていたようです。



「いや~結構頑張ったけど,向こうの動きが意外に早くて,

1日間に合わなかったから,交渉してもらっていたのさ。」




イツキ君が誘拐された後は,レオンさんが

メインで製作の仕上げをしたようです。



「でも,ノアの書の一部のページは手書きだったんだ。

いわゆる研究ノートみたいな感じさ。

そこはカーボン用紙なんかを使って慎重になぞったりして

書き写したからかなり大変だったんだ。」




ノアの書にはまだまだ多くの謎があるようです。



「聞いているだけで,頭が痛くなってきますね・・・。」



だぬちゃんは難しいことを言われると頭が痛くなる性格でした。



「さらに,最後の何ページかはよくわからない文章になっていて,

そこだけはなぜかコピーガードがかかっていなかったんだ。

一応,その部分も複製したよ。まぁ,それについてはまた今度な。」




イツキ君は偽のノアの書を作る過程で

わかったことなども伝えました。



ちなみに本物のノアの書は図書館で保管し,

制作をする時の参考にしていました。



そして先ほどイツキ君の手元に戻ってきました。



「ただし,USBだけは中身が確認できないし,

コピーガードもかかっていたので

そのまま返してしまったよ。

あれがないと疑われるからね。」




レオンさんが捕捉します。



「仕方ないな・・・。」



今回は相手に偽物のノアの書を渡し,

これ以上の詮索をさせないための作戦だったようです。



そして作戦は無事,成功しました。



第13話 エピローグ 後編

ノアシリーズ最終章
今回の極めて重大な失踪事件はイツキ君たちの

作戦によるものだったようです。



「俺が家出をしたことを盗聴器で聞けば,

奴らも俺を誘拐しやすいんじゃないかと思ったんだ。」


「家出することも作戦のうちだったんだ・・・。」



まさらちゃんは困惑していました。



「案の定,すぐに俺を誘拐しに来た。

向こうもそういう作戦を

立てていて,好都合だったんだろうな。

あとは,影が必ずリクたちに接触して,

ノアの書を手に入れようとするから,

そこで偽物を渡す作戦だったんだ。」




そして,うまく闇組織ジャファの影に偽物の

ノアの書をつかませることができました。





「でも,作戦なら最初から教えてよ!」



まさらちゃんはイツキ君に言いました。



「まぁまぁ,敵をだますにはまず味方からっていうしね。」



リク君が仲裁に入ります。



「最近,イツキ君がちょくちょく昆虫採集に来なかったのは

ノアの書を制作していたからだったんですね。」


(第92話参照) (第122話参照)



「まぁ,そういうこと。」



イツキ君は自分のベッドに腰掛けてくつろぎ始めました。



「ちょっと前も本屋に行っていたのは材料を買っていたんですね。」



だぬちゃんはイツキ君が忙しいそうにしていた理由に納得がいきました。



「それにただ偽の書をつかませて相手からの詮索を

受けないためだけの作戦じゃないみたいだよ。」




レオンさんが捕捉します。



「それってどういうこと?」



トシ君がイツキ君に聞きます。



「実は偽ノアの書にはちょっとした細工をしておいたんだ。」



「どんな?」



今度はだぬちゃんが聞きます。



「必要な時期がきたら説明するさ。

今,お前たちに話してもあまり意味がない。」








「うわ~,なんか上から目線で嫌な感じだわ~。」



トシ君が嫌味を言います。



「ははは・・・。」



レオンさんが立ち上がりました。



「じゃあ,今日は夜も遅いし,そろそろお開きにしようか。」

「あ,もう1個だけ気になることがある!」



まさらちゃんがレオンさんに質問します。



「なんだい?」

「どうやってイツキ君が誘拐されている場所がわかったんですか?」



まさらちゃんの疑問はもっともでした。



「簡単なことさ。」



レオンさんは頭をボリボリかきながら説明し始めました。



「まず,警察のサーバーをハッキングして,

*Nシステムの画像を見られるようにしたんだ。そして・・・。」




*道路に設置されたカメラでナンバーを照会することで

車がどの経路をたどったかわかるシステム



つまり公園前の防犯カメラの映像も入手し,

その時に映った車のナンバーを照合し,

Nシステムを活用して車が向かった方向や

おおよその位置を把握したようです。



「だいたいの場所がつかめれば,あとはその地域の不動産屋に

連絡をして,ここ1~2週間の間に借り入れのあった,

ある程度大きな部屋や建物はないかと聞いて回ったんだ。

そしたら,1か所だけあったからそこに向かったんだ。」




あとはレオンさんの予想通りだったようです。



「・・・。」



見張りについていた影の精鋭の手下を難なく制圧し,

イツキ君を助け出すことに成功しました。



「なんか,レオンさんってすごいね・・・。」

「ホント,何者なんですか!?」



だぬちゃんもびっくりしています。



「ウキキキ!ただのしがない大学院生だよ!」

「・・・。」



その後,みんなは帰宅しました。







シリーズ別へ

TOPページへ